中国人留学生:業者が日本の審査で虚偽説明…不安あおる
日本で学ぶ中国人学生の留就学申請書類が偽造されている問題で、偽造書類を使って入国した
中国人学生が毎日新聞の取材に応じ、仲介業者の手口を詳細に証言した。「親が『農民』では
日本の入管が許可しない」。業者は学生の情報不足につけ込み、日本の審査に関する虚偽の説明を
して不安をあおったという。日本に入国する中国人留就学生は年間1万5000人超。学生を巻き込んだ
不正ビジネスの実態が浮かび上がった。【曽田拓】
福建省から来日した女子学生(26)は04年に日本語学校に入学する際、入管に偽造書類を提出して
「就学」の在留資格を取得した。
書類を偽装したのは父親の同級生だった仲介業者。父親は魚介類の養殖業を営んでいたが、
経歴上は「農民」になるという。業者はこの経歴に目を付け「農民では入管は許可してくれない」と
虚偽の説明をしたうえで「書類は全部作ってあげる」と持ちかけてきたという。偽造された書類では、
父親はスーパーマーケットの「総経理(経営者)」となっていた。報酬は、手数料を含めて15万元
(225万円)だったという。
数年後、妹(23)も同じ書類を提出したが、在留資格を認められなかった。女子学生はこれを契機に
虚偽申請を入管当局に申告、その後も在留を認められたことで、業者の説明が虚偽だったと知った。
現在も東北地方の大学で勉強を続けている。女子学生は「どの日本語学校が生徒を募集しているか
すら現地では分からず、仲介業者に頼らざるを得ない」と実情を明かした。
◇不法残留多発で審査強化
中国人留就学生を巡る環境は大きく変化している。法務省は「留就学生による不法残留の多発」
を理由に04年4月から在留資格の審査を強化。学生の経歴や日本語能力、経済力を調べるために
多くの書類の提出を求めるようになった。
この結果、3万3221件の在留申請があった03年に約75%だった認定率が、04年は約35%に急落、
05年も約52%にとどまった。日本語学校関係者の間には、提出書類が増加し、不認定率が
高まったために偽造が横行しているとの見方も出ている。
中国人学生の事情に詳しい神戸大院の浅野慎一教授(社会学)は「審査を厳しくしても、より精巧な
業者が出てくるいたちごっこの状況だ。学生の実態調査を行うなどして偽造の背景を理解し、
経済力重視ではなく学力本位の審査に変更すべき」と話す。
財団法人「日本語教育振興協会」は昨秋、中国政府の関係団体と連携した成績認証システムを
スタートさせた。学生が申請すれば、中国での高校卒業統一試験の成績などが受け入れ先の
日本語学校に直接送られる制度だ。業者が介在する余地はなく、学歴の偽造防止には効果を
上げているという。ただ、業者の実態は協会も把握していないのが現状だ。
▽News Source MSN-Mainichi INTERACTIVE 毎日新聞 2007年8月20日 3時00分
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/jiken/news/20070820k0000m040134000c.html