【携帯/コラム】ソフトバンクの「安売り」戦略が破たんするのはどんな時?[07/05/09]

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1窓際店長見習φφφ ★
(略)
 企業として広いターゲットを狙おうと思ったら、「Cost Leadership」(安売り)でいくか
「Differentiation」(差別化)でいくか2種類となります。狭いターゲットでいいなら「Focus」
(焦点を絞る)で、これはニッチ市場狙いの戦略となります。
(略)
 安売り戦略をとっているIT系企業の代表例として、ソフトバンクに注目してみましょう。
同社はADSL事業に参入する際、衝撃的な低料金を打ち出し「価格破壊だ」と騒がれ
ました。これはまぎれもなくコストリーダーシップの考え方です。初期にはユーザー
サポートが悪いなどと言われましたが、そうしたデメリットを補ってあまりあるほど魅力的
な価格だったからこそ、一時は月間20万人という加入者増を達成したわけです。

 安売りは時として、シェアを取る目的でも行われます。チャンスがある場合には、少々
赤字だろうがなんだろうが安売りを仕掛けて、顧客シェアを取ってしまった方がいいのです。
ADSLモデムを街頭で“配ってしまう”という大胆な戦法をとったソフトバンクですが、これは
実は教科書通りの動きでした。

 実は、MBAの教科書では安売りなどで「とにかくシェアを取りに行くべき時」という項目が
列挙されています。いくつか紹介しましょう。

・市場が拡大しているとき
・買収が可能なとき
・競争者が反撃する気がないとき
・競争者が反撃できないとき

 ADSLの場合、ブロードバンド市場は拡大している最中でしたし、スタート時には東京
めたりっく通信の買収もありました。競争者はISPやNTTといったことになりますが、ISPは
体力不足もあってかどこもソフトバンクほどの大胆な行動に出られず、優位に立っていた
NTTも事業者としての自信からか、FTTH戦略(光ファイバー)へのこだわりからか「じゃあ、
うちもモデムを配ろう」という動きにはなりませんでした。ソフトバンクがほぼゼロからトップ
シェア企業に伸し上がれたのは、競争事業者が失敗したからとも言えます。

 逆に言うと、これらの条件に適合しない時は、シェアを取りに行っても旨みが少ないわけ
です。市場が成熟していて、これといって企業の買収が可能なわけでもなく、敵が競争を
「受けて立つ」用意があるとき……。こんな時に値下げ競争を仕掛けると、自分が下げる、
相手も下げる、市場規模もシェアも変わらず……ということで無意味な叩き合いになって
しまいます。前回ご紹介した「囚人のジレンマ」を思い出してください。互いに値下げする
ぐらいなら、双方何もしないほうがマシでしたね。
(略)
 ソフトバンクが差別化するとしたら、携帯を家の中では固定電話の子機として使えるFMC
(Fixed Mobile Convergence)対応を出すとか、海外の企業と一緒に何か企画するとか
でしょう。どう出てくるか楽しみですが、くれぐれも中途半端になって「スタックインザミドル」
にだけはならないように、気をつけてほしいところです。

http://bizmakoto.jp/makoto/articles/0705/08/news062.html