乳業メーカーや関連団体が牛乳の海外輸出に力を入れ始めた。その中
でも狙いは経済発展で高所得者層が拡大し、食の洋風化が進む中国だ。
価格差など課題は多いものの国内の牛乳消費が一向に上向かない中、
関係者は手探りで新たな活路を見いだそうとしている。(東京政経部 佐藤宏光)
明治乳業は昨年十一月下旬、中国・上海向けに冷蔵牛乳の輸出に
踏み切った。常温で長期保存できるロングライフ(LL)牛乳以外の輸出
は国内メーカーでは初めて。中国に近い福岡で生産し、通関手続きの
特例措置を受けることで賞味期限内に店頭に並べられるようにした。
発売から一カ月、同社は「上海在住の日本人を中心に、まずは予想通り
の売れ行き」(広報室)と手応えを語る。
ホクレンは一九九六年度から香港にLL牛乳の輸出を始め、今では
年間二百トン強に。二〇○五年度には台湾への輸出も開始。ほかに
九州乳業(大分県)が香港、台湾にLL牛乳を輸出、らくのうマザーズ
(熊本県)もLL牛乳を香港と中国に輸出する準備を進めている。
メーカーの関心の高まりを受け、乳業団体も動き始めた。日本酪農
乳業協会は昨年六月に輸出促進検討委員会を発足させ、中国の北京、
大連でスーパーの店頭などをめぐる市場調査を行ったほか、三月には
上海の百貨店で初の牛乳・乳製品フェアを開く。ホクレン、雪印乳業など
九つの乳業メーカーや団体が参加し、牛乳やチーズなど数十種の乳製品
の試飲、試食やアンケートで中国の消費者に強くアピールする。
また、同協会などはLL牛乳の賞味期限を延長する実証実験にも
取り組む。国内の六十日から、中国で流通しているLL牛乳の大半の
賞味期限である九カ月程度に延ばして競争力を強める狙い。
メーカーや団体がこぞって輸出に力を入れる背景には国内需要の
低迷がある。国内の○五年度の牛乳消費量は前年度比3・7%減
(農水省調べ)で、減少傾向に歯止めがかかっていない。一方、中国の
牛乳消費は食の洋風化に伴って急増し、国際酪農連盟の調査では
○五年の消費量は○一年の五倍弱になった。
日本からの輸出は製造、輸送コストが大きく、販売価格は地元生産品
の数倍になるなど、課題は多い。それでも「需要が伸びているところに
出て行くしかない」(林勝行・日本酪農乳業協会普及グループ部長)と、
中国への輸出拡大に活路を見いだそうとしている。
ソース(北海道新聞)
http://www.hokkaido-np.co.jp/Php/kiji.php3?&d=20070101&j=0024&k=200612316407&ref=rs