キヤノンは,「SED量産工場白紙」という2006年12月30〜31日の新聞各紙の報道に対し,
「粛々と2006年10〜12月のSEDテレビ発売に向けて努力していく。2008年度の本格量産開始に
間に合うように準備を進めていく」(同社広報部)と,従来の方針を繰り返し述べた。
「特許訴訟が難航しているため,量産工場新設の計画を白紙に戻すことで,東芝と最終調整に入った」
という報道内容については,「訴訟があるのは事実だが,係争中であるため特許については
コメントできない。また,量産工場新設の計画を白紙に戻すなどの報道内容については,
キヤノンから話したものではないためコメントしにくいし,コメントできない」(同社広報部)
と述べるだけで,否定も肯定もしなかった。
今回の新聞各紙の報道からは,さまざまな疑問がわいてくる。例えば,「特許訴訟が解決した後の
SED量産はどうするのか。どこで量産するのか」,「量産工場計画は訴訟解決後に延期するだけなのか。
解決後も白紙のままなのか」といった疑問である。これらについてキヤノンに見解を求めたが,
「コメントできない」(同社広報部)という回答にとどまった。
SEDの量産工場計画については,競合となるPDPや液晶の価格対性能比の急速な向上やSEDの
歩留まり改善の観点から,疑問視する見方が依然として多い。今回の報道内容についてキヤノンが
ノー・コメントを続ける限り,「量産工場計画を白紙にするための格好の理由を見つけたと
いうことではないか」(自発光ディスプレイ技術の専門家)という憶測が出るのもやむを得ないだろう。
キヤノンがかつて経験した強誘電性液晶事業の失敗を繰り返さないように,パートナ企業との協力関係を
拡大していくうえでは,こうしたネガティブな憶測が出るのはマイナス材料である。こうした憶測や
疑念を払拭するためにも,キヤノンにとって今後のSED量産工場の具体的な計画を速やかに示すことが,
ますます重要になってきたといえそうだ。
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20070104/126047/