【事実を根拠に議論を戦わせそこから実態をあぶり出す】
私はスタンフォード大学やUCLAで教鞭を執ってきたが、「ここでバーニーのフレームワークを使って説明します」
「ポーターのバリューチェーンを使って説明すれば……」と口にしたがる学生が多いのには閉口している。
一定のフレームワークを使って知的な遊戯ができることが、エリートのたしなみだと思っているのかもしれない。
リベラルアーツを学ぶカレッジならそれもいいかもしれないが、現実社会との接点を確保しなければならないビジネススクールは、
それではいけないというのが私の考えだ。だから、私は心を鬼にしてこう叱ってきた。「君は何を信じているのか。
君がどう思うのかを聞いているのに、昔の学者の理論を持ち出してどうするんだ。人のフレームワークを使うな。
自分の考えを述べよ」と…。
私のビジネススクール「大前経営塾」「ビジネスブレークスルー大学院大学」では、もちろん並行してフレームワークを
吸収することはしてもらうが、たとえ知識は少なくとも、自分が手持ちの素材を総動員して、ともかく自分のオリジナルな
意見を言えるように指導している。ディスカッションはエアーキャンパス(AC)と呼ばれる電子掲示板を利用しているから、
自分と他人の発言録はそのまま残る。自分の発言が新しい切り口に基づくものかは一目瞭然だ。だから、入学して
8週間も経てば、「賛成・反対」の単なる感想を言ったり、人のフレームワークを持ち出したりする生徒はいなくなる。
また、夜中でも早朝でも私はコメントをつけるから、掲示板には適度の緊張感が保たれる。
それに、手持ちの知識がないことがハンディにはならない時代になった。Googleというネット上の検索エンジンが登場した今、
情報収集は非常に便利になった。ネットから情報を収集し、「この記事とこの証拠を持って、私はこう思います」と生徒は言ってくる。
すると、他の生徒も、決して証拠を持たずして意見を言わない。きちんとしたデータ・事実に基づいた見解を表明し始める。
したがって、「そんな意見は気に入らない」というような会社でよくある感情的な議論は、私のクラスでは全く起こらない。
>>1-5あたりに続く