>>364 アップル効果は価格にも波及した。iTMSに楽曲を提供する東芝EMI、エイベックス・グループ・ホールディ
ングスなどは一曲当り200円以上だった価格を150円−200円に設定することで合意。他の配信サービ
ス向けの価格もiTMSと同じ価格帯に下げた。
昨秋から各社別に具体化したアップルとレコード会社の交渉は決してスムーズに進んだわけではない。
「当初は春にiTMSサービス開始を予定していたが、価格の詰めで難航した」(大手レコード会社役員)
音楽配信の価格はレコード会社など楽曲の権利を保有する側が決めるのが国内の慣例。従来の価格
水準に固執したと見られ、米で99セント(約100円)で配信するアップルとの主張の隔たりは大きかった。
−リスク少なく−
最後はiTMSの「規模」が多くのレコード会社を説得した。在庫などのリスクが少ないことが音楽配信の
特徴で、減少を続けるCD販売の収益を補うにはいずれは本格的に始めざるを得ない。「iTMSのビジネス
規模を考えると価格にこだわる必要は無い」(コロムビアミュージックエンタテインメントの広瀬禎彦社長)
とはいえ国内最大手のソニー・ミュージックエンタテインメント(SMEJ)は今回、楽曲の提供を見送った。
「価格決定権は譲れない」。SMEJでデジタル関連事業を統括する秦幸雄コーポレート・エグゼクティブの
決意は固そうだ。
約四ヶ月遅れのうえ、SMEJ抜きでの見切り発車を余儀なくされたiTMS。価格は150円と200円という
複数価格制を世界で初めて採用せざるを得なかった。アップルは今後もSMEJなどとの交渉を粘り強く
続けることになる。