日本、「メソポタミア湿原」復元協力 イラク支援の一環
http://www.asahi.com/international/update/0121/008.htmlタソ 政府はイラクの復興支援策の一環として、イラク南部に広がるメソ
ポタミア湿原の復元に協力することを決めた。同湿原は70年代に
は四国より一回り広い面積があったが、旧フセイン政権時代の干拓
などで乾燥が進み、4%ほどまで縮小している。政府は「環境分野
での貢献は、自衛隊派遣だけではない日本の復興支援を国際社会に
アピールできる」(外務省幹部)として、現地の治安の回復を待
ち、国際機関と協力して事業を進める意向だ。
メソポタミア湿原は、四大文明で有名なチグリス・ユーフラテス川
の下流域で、70年代には約2万平方キロの広さだった。だがその
後、乾燥化が進んだうえ、湾岸戦争後に反フセイン暴動を起こした
シーア派部族の根拠地ともなったため、政権側は環境を変えて強制
移住させようと川をせきとめた。
その結果、湿原は破壊され、湿地部分は02年には759平方キロ
にまで縮小。塩害や生態系への悪影響が出ている。国連環境計画
(UNEP)によると、このままだと5年以内に消滅する可能性も
あるという。
また、環境が変化したため、農業で生計を立てていた住民らが次々
と移住し、30万人いた人口が一時、10万人まで減少したとも言
われている。UNEPや国連食糧農業機関(FAO)が詳細な調査
や復元事業を検討していたが、治安の悪化で中断したままだ。
昨年12月に来日したイラク南部の主要部族長の子息で、民主化運
動の指導者アブドルアミール・アル・リカービ氏が小泉首相と会談
した際、「イラク南部の民衆が最も望む復興支援策だ」としてメソ
ポタミア湿原の再生を要請し、政府の支援策の一つに急浮上した。
政府は資金援助だけでなく、専門家による調査のうえ、植林、塩害
除去、かんがいや水路作りのプロジェクトなどの対策を検討してい
るが、詳細な調査には現地の治安の回復が必要となる。干拓された
土地に入植した住民も多く、環境再生とどう調和を図っていくかも
課題となる。
(01/21 13:50)