早大が眼精疲労を解消した立体ディスプレーを開発
(日本工業新聞 2004/1/8)
http://www.jij.co.jp/news/av/art-20040107215220-KPWBHXIIMX.nwcタソ 早稲田大学大学院国際情報通信研究科の河合隆史・助教授、柴田隆
史・助手らのグループは、ニコン、有沢製作所と共同で、目が疲れ
にくい立体ディスプレーシステムを開発した。従来は、レンズの役
目をする目の水晶体の焦点調節と眼球の動きが通常に比べてずれる
ため眼精疲労が起きた。今回は装置側の光学系の工夫などで、画像
は立体に見えていながらも疲労は少ない。リラクゼーション、ア
ミューズメント向けなどに実用化を検討している。
試作したのは立体視用メガネなどをかけずに、ディスプレーだけで
立体画像を表示できるタイプ。人間が物体を見る場合、目の水晶体
の厚みを調節して焦点を合わせ、同時に眼球運動を行う。見る対象
が近ければ眼球は内側に寄る「輻輳(ふくそう)」と呼ばれる状態
に、遠ければ中央の位置に留まる。
自然の状態は、焦点調節と眼球運動がずれずに、人間が把握する対
象への距離情報は一致する。
従来型の立体ディスプレーでは、左右の目の視差を利用して立体に
見せる。ディスプレー上には右目用、左目用のそれぞれの画像が映
る。両目で見ると、ディスプレーのやや前方に立体像が浮き上が
る。焦点はディスプレー上に合うが、眼球は前方に浮き上がった立
体像に向き、焦点調節と眼球の動きがずれ、眼精疲労が起きて「立
体ディスプレーは目が疲れる」というのが定説だった。
研究グループは、右目用と左目用の画像を映し出すディスプレーを
前後に移動できる機械機構、ディスプレーが移動しても視野角を一
定に保つ「テレセントリック光学系」と呼ぶレンズ系などを組み合
わせて課題を解決。試作装置で焦点調節と眼球の動きが自然視と同
じになることを確かめた。
「眼精疲労を解消させる効果もある」(河合助教授)ため“癒し
系”立体ディスプレーへの活用も広がりそう。癒し系立体画像のコ
ンテンツ(情報の内容)の研究を進める。この成果は経済産業省、
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の産業技術研究
助成事業の一環として実施した。