今夏は天候不順の影響で業績がパッとしない業種が目立った一方で、映画館が人気を集めた。暑さ
寒さを忘れて夢の世界に没頭できる映画館が、その強みを発揮した。
以前の映画館は中心市街地の商店街や繁華街の一角に建設されたが、最近は郊外の大型商業施
設と併設され、一館で五つ以上のスクリーンを持つシネマコンプレックス(シネコン=複合映画館)が全
国的に急増し、映画興行も様変わりしている。これは商業地図の中心が町の商店街から郊外型ショッピ
ングセンターに塗り替わるのと軌を一にしており、現在の消費者動向を象徴する現象といえる。
シネコンは日本に一九九三年に登場して以来、十年ほどで全国の総スクリーン数の半数以上を占め
るようになった。外資系や大手の映画会社が経営し、快適な環境、大スクリーンと最新の音響設備など
を特徴とする。
同時に十本以上の映画が組め、いつ来ても何かを上映しているので足を運びやすい。その大きな集
客力を期待して地方都市の商業施設に導入される例が多い。映画の公開本数が少ない“映画過疎地”
の解消に役立つ半面、既存の映画館より快適性や利便性で有利なため、閉館に追い込まれた既存館
も少なくない。
映画館には良質な映画を提供する文化的役割と、集客の核施設として地域づくりに貢献する役割が
ある。今後、フィルムでなく通信衛星を使って上映するデジタル映画館も増えるだろうが、その形態がど
う変わっても、これらの役割は持ち続けるだろう。
http://www.nnn.co.jp/column/kaityouon0309.html の「9月1日」の部分