【珈琲飲料】スズキ変態スレ52【引換券】

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世の中の流れを変えよう<82> 元スズキ二輪車設計者 横内悦夫

[婆ちゃんの教え]熱境界層を破壊する
 エンジンの軽量化で最初に出た問題が、エンジンの冷却方式だった。エンジンの冷却方式には、空冷
と水冷の二通りしかない。空冷式だと軽量化は容易だが、百馬力エンジンには冷却不足だ。水冷式にす
れば、冷却の問題は解決する。しかし、重量が目標値をオーバーする。あちら立てればこちらが立たず、
である。二者択一でなく、何とか“第三の方法”はないものか、と悩んだ。
 そんなころ、ふとしたことから第二次世界大戦で日本が誇ったゼロ戦を負かしたアメリカの戦闘機P
51ムスタングが社内で話題になった。エンジンの冷却方式に話しを向けると、誰かが「あれは液冷だよ」
と言った。
 私は「液冷だよ」の“液”の一言に気持ちを奪われた。そしてこう考えた。水冷式の水は液の中の一
つにしかすぎない。水以外の液はないものかと。すると、エンジンには潤滑用のオイルがあるではない
か。これも“液”だ。このようにオイルを使った“油冷エンジン”はできないものか、と発展していっ
たのである。
467774RR:2008/06/08(日) 18:52:31 ID:WQfO+OOH
 ならばシリンダーヘッドの燃焼室の上部に、冷えたオイルを思いっきりぶっかけてやればよいではな
いか。私たちはそれまであったGSX750Eの空冷式シリンダーヘッドを洗車場に持ち込んで、水道
水を思いっきりぶっかけてみた。すると、“うん、これはよく冷えそうだ”と直感した。そのとき、私
は一瞬、山路の婆(ばあ)ちゃんの教えを思い出した。この教えでいけるのではないかと思ったのであ
る。
 前にも書いたが、「熱境界層を破壊すると熱はよく伝わる」というのを教えてくれたのが、山路の婆
ちゃんである。五右衛門風呂を沸かすとき、竹の棒で二、三度かき回すと早く沸くというのである。
 母型の祖母、山路セイ(故人)は、とても優しい婆ちゃんだった。私が遊びに行くと、よくあられを
炒(い)ってくれた。あられは特大の茶筒に入れられ、テーブルの上に置いてあった。開けると、砂糖
をまぶしたあられはいい香りがし、歯ごたえがよくて本当においしかった。
 そんな婆ちゃんの教えを思い出すと、ますます気合いが入ってきた。水道水の量を変えたり、向きを
変えたり、ホースをつまんで勢いを変える。三人ほどのスタッフとやったが、皆夢中でやったせいか、
下半身がずぶぬれになってしまったのにも気付かずにやってしまった。
 浜松でも一月は寒い。私たちは生活協同組合の売店へと走り、作業ズボンなど新しいのを買った。

【写真】ホースを持ち、カバーをはずしたシリンダーヘッドの上面に水をかけているのが私(右)だ。