馬鹿やろう!
さっきから黙って聞いていればラスペネとかベネトンとか好き勝手言いやがって・・・
お前らはそれでいいのか!?本当に自転車海苔だと言えるのか!?
自転車板に来てそんなことしか書き込まないようじゃ、お前らはオタ、いやヲタ以下だ!!
ここのところトレーニングに忙しく、この板を留守にしていたら、
トレーニングもろくにしないくせにふぬけたことばかり言う奴がはびこってるようだな。
どうやらここまで大口をたたいてしまったからには、
俺の過去の経験を語らなければ収拾がつかないだろうな・・ ・
あれは10年程前のことだ。俺は柔道のオリンピック強化選手であったが、
トレーニングのため導入したロードバイクにのめりこみ、体重が二階級も落ちていた。
「今日走るコースは海沿いだから、FINISHLINEのクロカンルブかな。
いや、ワコーズのメンテルーブがいいか・・・おっと、その前にチェーン洗浄だ」
デヤァァァァーーー
俺の持つバルビエリのトルネードがうなりをあげ、
チェーンにこびりついたガンコな油汚れを落としていく。
「ふっ・・・並みの自転車海苔ならここで満足するところだろうな・・・」
ヌオォォォォーーーーーー
トルネード本体からにごった色の液体が飛沫となって飛び散り、
チェーンのピンの間までもきれいに洗浄されたことを物語っている。
ここまで完璧に洗浄せねば、完璧な潤滑は得られないのだ。
その日も俺は地元の福岡で、西浦〜芥屋の海岸線で強烈な向かい風と戦っていた。
ゴォォォォォォーーーー!!
玄海灘から吹き付ける強烈な潮風が、俺の巨体を押し戻そうとする。
「ふ・・・並みの自転車海苔なら、ここでくじけるところだろうな。だが見よ!!」
デヤァァァァァァーーーーーーーーー!!!
俺の強靭な太腿四頭筋がオランダ村の風車のごとく力強く回転し、
フロントをインナーに落としただけでリアはトップのまま、ケイデンス90を越えている。
オホーツク海の流氷のように盛り上がった腹筋と丸太のような腕が俺の上体を支え、
力強くも美しいクラウチングフォームを維持していた。
重いギアをものともせず踏みつける俺の足は、樹齢千年を越える屋久杉を思わせ、
一目でそれとわかるように浮き出た血管は、
これまでの人類の営みを子細漏らさず見届けてきた年輪のようであった。
はるか前方に地元ショップの壮行会のメンバーが現れた。
みると、どいつもこいつも注油がなっちゃいない。
油切れを起こしてチェーンがきしんでいるか、ふき取りを怠っているせいで
プーリーにまで真っ黒い汚れをつけている。こんなことでは脚力を効率よく
駆動力に変えることは出来ない。俺の敵ではないな。
俺は完全に無音のままのチェーンで、あっというまにそいつらを抜き去った。
「な、なんという剛脚・・・さすが『博多のアームストロング』とよばれるだけのことはある」
という驚嘆の言葉が聞こえた。
「フハハハハハ!!!どうやらこの海岸線も制圧したな!
おっと、海岸線を走ったら防錆のために注油をしないと・・・」
俺が道端に愛車のCAAD8を停め、FINISHLINEのチェーンクリーナーを
バックパックから取り出したところで、ひとりの自転車海苔が俺を抜いていった。
「ふっ。このあたりでまだ俺に勝負を挑むものがいるとはな。よし、注油はあとまわしだ!」
ヌオォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーーー!!!
走り出すや否やインナー・トップのダンシング8回でトップスピードに乗せると
シッティングに切り替えて猛追を開始した。
「九州のバハモンテス」と怖れられる俺の猛追に耐えられる者などいない・・・はずだった。さいごの50メートルがどうしても詰められない。
「ばかな・・・俺より重いギアを踏んでいるというのか・・・」
ガチャャャーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!!
俺は最後の手段に出た。フロントをアウターに上げたのである。
デヤャャャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!!!!!
その時、信じられないことが起こった。
俺のトルクに耐え切れず、チェーンが切れてしまったのである。時速50km超からの落車。
しかし俺は柔道で鍛えた受身で、奇跡的に軽傷であった。
道端に投げ出され、呆然と俺は呟いた。「ばかな・・・俺のマシンのメンテはいつも完璧なはず・・・さっきの注油を怠ったのがいけなかったのか・・・」
「大丈夫ですか?」
ふと気付くと頭上に人がいた。さっき俺をちぎっていった男だ。我に返った俺は、男に疑問をぶつけた。
「い、いったい君はどんなオイルを使っているんだい?そ、それと使っているディグリーザと、注油頻度も教えてもらえるとありがたい」
その瞬間である。その男の右腕が巨大な岩山のごとく隆起し、固く握り締めた拳が俺の顎に向かって放たれた。不意を突かれた俺は顔面に致命傷を負いなすすべもなく吹き飛ばされ、「響山ハイキングコース」の看板にブチ当たって崩れ落ちた。
「馬鹿野郎!!!それだけの脚力がありながら何が注油だ!!!ディグリーザだ!!!!!お前に足りないのはオイルではない!高率のよい走りでもない!!!『年間10万キロ走れば速くなる』という信念なんだよ!!!!!!!」
朦朧とする意識の中、俺は男の言葉を聞いていた。
そうだ。最近の俺はFINISHLINEだのワコーズだの、ショップに入り浸って実走距離が激減していた。雑誌の宣伝文句を真に受けて脳内妄想で満足している者と、ごたくは述べずとも年間10万キロの剛の者。
勝負はおのずから決していたのだ・・・
自転車海苔として強くなりたければ、四の五の言わずただ走る。それだけなのである。
前回チェーン注油してから3週間ぐらい経つしそろそろまた注油すっぺ
ポエムは一日中引きこもってこれ書いてたのか
アンチポエマー乙