俺は一定の回転数でペダルを回し、少しずつヤツとの距離を詰める。
半年前と同じ香水の香りがする。
女は相変わらずシッティングでグイグイ進んでゆく。そのフォームは半年前とは変わらず全く無駄がない。
距離を少しずつ詰め、女との距離が5m程になった時だった。
女がチラッと後ろを見た。俺との距離を確認するかのように。そして次の瞬間女は前を向き、ピストを左右に振りながら走行しだした。
ヤツのケイデンスがあがる。差が開く。
感づかれたのだ。
女の脚の回転が更に速くなる。
しかし俺は恐ろしいほどに冷静だった。ギアを重くし、回転数を上げる。何百回と登った坂だ。脚にはまだ余裕がある。
ヤツとの距離が再び詰まる。
女は再び振り向き、今度は一瞬驚いたような表情を見せた。
俺は一気にギアを一番重くした。変速の音に気付いたのか、ヤツのピストが一段と激しく揺れる。
しかし俺のトレーニングの成果は凄まじかった。
差は更に詰まり、そして急に女のスピードがガクンと落ちた。首はうなだれ肩を落とす。
しめた!俺は追い越しをかけた。
この瞬間をどんなに望んだことか。
俺はヤツを横目に追い越しながら言った―――
「性感帯どこ?」