R134周辺地域5 【横須賀 三浦 鎌倉 湘南 大磯】

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442ツール・ド・名無しさん
 時間にして僅かに二秒。
行為自体も、これからしようと思っていることに比べれば微笑ましいレベルである。
それでも彼女はちょっとした征服感に似たものを覚えた。
コーティカルテの唾液でフォロンの口許が濡れている。
それほど長く残る痕跡ではない。
だが、そんなことはどうでもよかった。
フォロンとはいずれ、必ず、口付けよりも長く、はっきりとした二人が共にいた証を残そうと決めたのだから。
もう一度してみたい。そんな気持ちが彼女を動かす。
吸い込まれるかのようにコーティカルテはフォロンの額、耳、首と口付けていく。
まるで、これは私のものだと謂わんばかりに。
舌が這ったところや、キスをした場所が月光に照らされて、光っている。
彼女は更にフォロンの服のボタンを一つずつ外し、舌を這わせていく。
たまにフォロンの胸に自分の頬を乗せ、僅かに彼を抱き締めてみたりする。
その時彼の香りを胸一杯に吸い込んで、満足したら再度降下を始める。
だが突然に感触が変わった。
「ん?」
丁度お腹の辺りに、人肌よりも硬いものが入っているようだ。
残りのボタンを外して確かめる。
「これは」
彼女は知らないが、それはフォロンが毎朝悶えることなく起きるために必要な、防具である。
そして知らないが故にコーティカルテは、なんでこんなところに“隠した”のか、と疑問を感じた。
(内容は……)
表紙をあまり見ないでめくる。
1ページ。
また1ページ。
最初の方は、有名人の結婚や政治家の汚職の記事などが載っている、特に何の変哲もない、ありふれたものだった。
街を行き交うサラリーマンなどもよくそれを見ているし、フォロンもたまに目を通していた。
しかしだからこそ、彼女の疑惑の念が更に強まる。
(なぜ隠す)
更に数ページ進める。
443ツール・ド・名無しさん:2009/07/29(水) 02:14:45 ID:???
確かに、神曲を受けている時はコーティカルテも出ている処は出ているし、それでいてくびれもある、ナイスバディではある。
しかし、情事の最中にフォロンに神曲、歌をずっとというのは――それも心惹かれるものが彼女にはあったが――躊躇われる。
そんなわけで彼女はこれからフォロンと、この姿でしなければならない。つまり――
「お前というやつは〜〜〜」
見るからに肩や腕がピクピクと痙攣を起こしたみたいに震えている。
次の瞬間、手に持っていた雑誌が消失したのは言うまでもない。
軽い閃光でそれが精霊雷によるものだとやっとわかる程の早業であった。
だが、音をたてすぎたせいかフォロンに反応が。
「んん……」
フォロンの声に慌ててその場にしゃがむ。
(しまった……)
心の内で舌打ちする。
諸々の根源はフォロンにあるというのに、と思う彼女だが仕方がない。
隠れるにしてはあまりに幼稚ではあったが、音を発てるリスクを考えると動きは制限される。
因みに彼女に実体化を解く、という選択肢は浮かばなかった。
じっと、自分は家具だと言い聞かせ、その場に固まる。
知らないものが見れば、可愛らしい、と苦笑するところだが、平生の彼女を知るものが見れば困惑を禁じ得なかったろう。
威厳の欠片もない。
そのくらいコーティカルテは動揺していたのだ。
姿勢をそのままに、目だけでフォロンの方を見る。どうやら起きたわけではなく、寝返りをうったらしい。
念には念をと、更にもう少し彼女は様子を見た。

 秒針が半周する。
コーティカルテは細く長く、安堵の溜め息をつく。
次いで立ち上がると、最終目的地へとフォロンのズボンに手をかけた。
既にフォロンを見下ろす彼女の目は据わっている。
慎重、且つ素早く、ズボンを下ろしていく。途中、彼の表情を確認していくのも忘れない。
幸いにも今日のフォロンは仕事がハードだったせいか、起きる様子はない。
彼女はズボンを足首のあたりまで下ろすと、次に下着に指をかける。
冬のこの時期、指は予想以上に冷たいので直接肌に触れるのは避けたい。