★自転車乗りの今日の出来事 67日目ダパニ

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238ツール・ド・名無しさん
 オーストラリアの軍隊系のシンクタンクが「中国が民主化すると、大衆扇動
型の指導者が出てきて、反日・反欧米感情やナショナリズムを扇動する傾向が
強まって、何をしでかすか分からない国に変質する恐れがある。豪州やアジア
諸国にとっては、今の共産党独裁体制の中国の方が、国家としての行動パター
ンが分かりやすいので良い」とする分析書を発表した。
http://www.taipeitimes.com/News/world/archives/2006/03/01/2003295190

 オーストラリア戦略政策研究所(Australian Strategic Policy Institute
http://www.aspi.org.au/ )が発表したこの分析書によると、中国経済の発展
は輸出が基盤であり、世界との関係を悪化させることは自国経済を自滅させる
ので、中国政府がすすんで海外と敵対する政策を採ることはあり得ない。だが、
今後の民主化によって国内政治が不安定になった場合、どこか外国との敵対関
係を煽り、国民のナショナリズムを扇動することで、指導力を維持しようとす
る政治家が現れる可能性がある、と分析書は予測している。
http://www.aspi.org.au/publications.cfm?pubID=87
http://csmonitor.com/2006/0302/dailyUpdate.html?s=mesdu

 私も、この分析書の見方には賛同する。中国に限らず、ロシアやイラクなど
世界の多民族国家の多くは、リベラルな民主主義をやろうとすると、矛盾する
各派の主張に収拾をつけられず、国内が混乱する。

 特に中国は、表向きは「漢民族が国民の9割」とされているものの漢民族の
地域でも100キロも移動すれば話し言葉が変わるような多様性の強い社会で
あり、単一国家として維持できているのが不思議なぐらいである。中国を単一
国家として維持するには、共産党政権がやっているような、独裁的で強力な中
央集権制度が必要である。(1940年代の内戦に勝ったのが共産党でなくて
国民党だったとしても、蒋介石が強力な中央集権を維持していたら、単一国家
として続いていただろう)
239ツール・ド・名無しさん:2006/03/11(土) 00:36:10

 一般的に考えて、経済が発展し、テレビの普及や、移動(引っ越し)の自由
が人々に与えられてから時間がたつほど、国民の多様性は薄れ、単一民族性が
増すが、中国で人々が移動の自由を与えられたのは最近のことで、今でも農村
から都会への引っ越しは原則として禁止されている。中国が、民主化しても安
定を維持できる状態になるには、一党独裁があと10−20年続き、その間の
経済発展の中で単一民族性が増していく必要がある。

 それ以前に一党独裁体制が崩れて多党制に移行した場合、都会で選ばれた政
治家と地方で選ばれた政治家が対立し、南の政治家と北の政治家が利権を争う
状態になり、中央の言うことを聞かない地方勢力が各地で台頭し、中国は分裂
割拠の状態になりかねない。この混乱を乗り越えて、中央の政治家が全中国を
引きつけようとすれば、多様な国民を一つの方向に結束させておく必要がある。
その際に出てきそうな道具が「反日」「反欧米」などのナショナリズムである。

 中国は共産党体制の現在でも、国内の結束のために反日やナショナリズムを
使っているが、独裁制でなくなった場合、その傾向がもっと強まるということ
である。(中国共産党が反欧米より反日にこだわるのは、60年前に日本軍を
大陸から追い出した功績によって政権を執ったという物語が中国共産党の正統
性だからであり、反日と愛国は、ほぼ同じものである)
240ツール・ド・名無しさん:2006/03/11(土) 00:37:29
▼中国が民主化すると誰が得するか

 日本や台湾、アメリカには、中国の強大化をおそれて「中国の体制が崩壊す
ればよい」と考えている人々がいる。アメリカはすでに、中東などで脅威にな
りそうな国々に「民主化せよ」と圧力をかけ、民主化させて体制を崩壊させて
しまう、という戦略を30年ぐらい前からやっており、中国に対しても、香港
や大陸の民主活動家を支持したりして「民主化」によって中国を不安定化させ
ようとする戦略を採っている。

 この影響を受け、台湾でも独立派の人々は「中国は民主化すべきだ」と主張
している。彼らの中には植民地教育の影響で日本語が得意な人もおり、日本語
で「中国は間もなく崩壊する」「共産党政権は中国人に地獄を味わわせている。
早く民主化した方が中国人は幸せになれる」と主張する本を書いて日本で出版
したりして、意外と中国情勢にうとい日本人に「民主化した方が中国人は幸せ
になれる」と思い込ませることに、ある程度成功している。

 台湾の独立派の中には、日本のことを好いてくれている人が多いので、これ
らの動きは善意でやっているのかもしれない。しかし現実には、中国で独裁が
崩壊しても、その後、日台にとって好都合な内部分裂した状態がずっと続くと
は限らない。独裁が崩壊して民主化した後、カリスマ的な政治家が登場し、中
国内部を再統合するために、極度の反日感情や反台湾感情を扇動し、日本や台
湾の製品を中国市場から完全に締め出したり、台湾だけでなく日本にまで戦争
を仕掛けるようなことをやり出したら、それは日本人のためにも台湾人のため
にもならない。
241ツール・ド・名無しさん:2006/03/11(土) 00:39:40
 中国が混乱し、経済が悪化したら、中国人自身も、共産党独裁下よりもひど
い地獄を味わうことになる。「民主化すれば良くなる」というのは、冷戦末期
以来、米英が世界戦略の一環として発しているプロパガンダである。実際には、
ほとんどの場合、民主化は慎重にゆっくりやらない限り失敗し、混乱だけが残
る。中国の早急な民主化は、日台中すべての人々を不幸にする。(各国の扇動
政治家は得をするかもしれないが)

 さらに問題なのは今後、アメリカの世界覇権が減退し、日台の後ろ盾になっ
てくれなくなりそうなことである。すでに米政府は、北朝鮮や台湾海峡の問題
解決に本腰を入れなくなり、北朝鮮問題は中国と韓国に任せ、台湾海峡問題で
は台湾を擁護しなくなり、中国の言いなりになっていている。危機感を抱いた
台湾の陳水扁総統は最近、台中の段階的統一に向けた「国家統一綱領」の事実
上廃止すると表明した。これは「アメリカと中国が組んで台湾を譲歩させよう
としても応じないぞ」という決意表明のメッセージであると思われる。
http://www.atchinese.com/index.php?option=com_content&task=view&id=13171&Itemid=28

 こんな状況だから、今後の中国が扇動型民主体制になって日本や台湾への敵
視を強めるころには、日台はアメリカの軍事的・外交的な後ろ盾を期待できな
くなっている可能性が大きい。日本には「中国に一発かましてやれ」と主張す
る人がけっこういるが、その暗黙の前提は「アメリカの協力を得て」である。
アメリカの後ろ盾が失われたら、日本人の勇ましさも消えてしまいかねない。

(アメリカの覇権衰退後、中国に対して土下座するのを避けたいのなら、日本
人はもっと中国のことを深く分析せねばならない。今の日本は、中国や華人世
界のメカニズムを理解していない。日本人は、戦前の方が深く中国を理解して
いた。「英霊」たちは、アメリカの虎の威を借りているだけの戦後の日本人の
姿を、草葉の陰で嘆いているに違いない)
242ツール・ド・名無しさん:2006/03/11(土) 00:41:05
▼再開発で追い出されて怒る人々

 ところで実際のところ、中国の共産党体制が崩れる可能性はどのくらい高い
のだろうか。昨年以来、中国各地で、地元の役所に対する住民のデモや抗議行
動が相次ぎ、役所の側は警察や暴力団を動員して反対派の住民を弾圧するとい
う事件が相次いでいる。これが共産党体制の崩壊まで行くのかどうかを分析す
る必要がある。

 多くの場合、住民の抗議行動は、役所が進めている再開発事業に関係してい
る。中国では土地はすべて国有で私有化できないが、都会では99年リースな
どというかたちで事実上土地の販売や転売が行われ、地方都市にもこのメカニ
ズムが波及している。企業が市町村などの役所に再開発を提案し、役所の幹部
は企業から賄賂が入るのでこれを受け、農地や国有企業の勤労者住宅街を従来
の利用者から取り上げ、まとまった更地にして企業に長期リースし、企業はマ
ンションやビル、工場などを建てるという開発事業が、あちこちで展開されて
いる。

 問題は、企業も役所幹部も、自分の儲けを増やしたいので、多くの場合、従
来の土地利用者である農民や勤労者たちへの補償金をわずかしか出さないこと
である。農民には代わりの農地もしくは離農に必要な資金、勤労者には代替住
宅もしくは民間賃貸住宅を借りるための家賃補償が与えられるべきなのだが、
それが行われていない。差益のほとんどは、役所幹部と企業家で山分けされて
しまう。

 生活できなくなった農民や勤労者たちは、新聞報道やうわさで、役所幹部が
巨額の賄賂をもらっていたと知ると激怒し、役所に押し掛けたり北京に陳情に
行ったりして抗議行動を繰り返す。これが中国全土で起きている問題の経緯で
ある。
243ツール・ド・名無しさん:2006/03/11(土) 00:42:06
 こうした問題は、中国が社会主義から資本主義に転換しつつあるがゆえに起
きており、開発事業が増えること自体は異常ではない(企業の土地転がし目的
が多いのに加え、日本の第三セクター事業ブームのころと同種の無理な計画が
多いことは良くないが)。最大の問題は、役人に賄賂が入り、住民がないがし
ろにされていることである。全国的に起きているこの問題が放置されると、共
産党体制の崩壊にもつながりかねない。

 そのため、中央政府は昨年末から、地方の役所幹部の汚職を取り締まる政策
を強化し、住民の抗議行動が起きた役所の幹部は出世させない方針を採り始め
た。今年2月9日には、河北省の裁判所で、暴力団を雇い、補償が少ないと抗
議する住民を襲撃させた罪で、定州市の和風(He Feng)という名前の共産党
書記が終身刑を言い渡されるという「見せしめ」も用意された。
http://www.atimes.com/atimes/China/HB16Ad01.html
244ツール・ド・名無しさん:2006/03/11(土) 00:43:32
▼貧富格差の是正には再共産化が必要?

 こうした問題もあり、農村と都会との貧富格差が急拡大している。中国では
都会では経済がどんどん回り、人々の収入が増えているが、13億人のうち
8億人が住んでいる農村や地方の町には、この影響があまり及んでいない。
その一方で、以前は地方の役所の運営に必要な物資や資金が中央から渡されて
いた社会主義の状況が終わり、教育や医療などの行政サービスにかかるコスト
を地方の役所が自前で調達せねばならない傾向が増している。

 経済が回っていない地方では役所の収入も少ないので、学校は事実上の授業
料を徴集し、医療も受益者負担にならざるを得ない。授業料を払えないので、
農村の子供の4割は義務教育を終えられずに学校をやめていると概算されてい
る。中国政府は、農村の問題を解決する意志を示すため、最近開かれた全人代
(国会)で、農村の所得拡大政策や、教育・医療に対する中央から地方への補
助金増額などの対策を行うと発表した。
http://www.guardian.co.uk/china/story/0,,1715078,00.html

 中国は1949年から70年代まで社会主義をやったが、弊害の方が大きい
ため、80年代にトウ小平が改革開放を始め、資本主義体制に移行してきた。
だが、ここにきて貧富格差が拡大し、多くの地方住民の生活が後退している。
そのため「経済自由化を止めて、経済に対する中央政府の権限を再拡大し、昔
の社会主義に戻した方がよい」という主張があちこちから出ている。中国の貧
富格差を解決するには「民主化」とは正反対の「再共産化」が必要だという主
張である。

 開発に伴う住民の不満も、貧富の格差も、いずれも経済発展で得られた資金
が人々の間でどう分配されるかという問題である。中国経済は今年も10%前
後の高成長を記録しそうで、分配メカニズムの再構築ができれば、政権崩壊に
至る大問題にはなりそうもない。
245ツール・ド・名無しさん:2006/03/11(土) 00:44:56
▼中国の歴史教科書は歪曲されている!?

 もう一つ最近の中国では、マスコミに対する政府の報道規制の問題が出てい
る。今年1月には、役人の汚職や、住民が見捨てられていることなどの社会問
題に焦点を当てて報じてきた共産党の青年団の機関紙「中国青年報」の別冊週
刊誌「冰点週刊」が、中国で使われている歴史教科書に、愛国主義を扇動する
ことを目的とした歪曲が多いと指摘する論文を掲載したのを理由に、発行停止
処分を受けている。「冰点」は各界から高く評価されていたため、中国のマス
コミ幹部の多くが処分に反対し、最終的には編集長が更迭されるだけで再発行
を認められることになった。
http://zqb.cyol.com/gb/bd/2006-01/11/node_53.htm

 問題の論文は、広東の中山大学の教授が書いた「現代化と歴史教科書」とい
う題で「中国が欧米列強に蹂躙されていた時代の出来事に関する中学校の教科
書の記述の中に、中華文明は崇高で、外来の文化は邪悪なものであり、邪悪な
外来文明の影響を排除するために中国の政府(清朝)や民衆(暴徒)が、外国
勢力を攻撃するのは正当な行為であるという考え方に基づいた説明がいくつも
出てくるが、これは子供たちに間違った考え方を植えつける」と主張している。
http://zqb.cyol.com/gb/zqb/2006-01/11/content_118530.htm
http://www.atchinese.com/index.php?option=com_content&task=view&id=13026&Itemid=64

 つねづね「日本は歴史教科書を歪曲している」と攻撃してきた中国政府は、
こんな論文の発表を黙認していたら、日本からの反論を誘発してしまうので、
発行停止処分を行ったに違いない、というのが、日本や欧米の分析者の見方で
ある。私もその分析には同意するが「冰点」のような社会派マスコミの存在意
義を含めたもっと大きな視点で見てみると、違う背景も見えてくる。
246ツール・ド・名無しさん:2006/03/11(土) 00:47:02
▼政権を長続きさせるための暴露記事

 中国には中国青年報のほか、いくつものマスコミが、数年前から積極的に社会
問題を取材し、役人の腐敗や政策の欠陥を暴露する記事を出し続けている。
これは、中央政府だけでは地方官僚の汚職や間違いを探し出すことが十分できな
いので、マスコミにその機能を肩代わりしてもらっているという、共産党内部の
意味がある(中国のマスコミは、ほとんどが共産党員によって運営されている)。

 中国には何千もの市町村があり、それらのすべての役人の行動を中央が監督
することはできない。そのため、各地のマスコミが問題を報じることで、一般
市民からの情報提供(たれ込み)も多くなり、共産党の上層部が下部の腐敗や
間違いを見つけやすくしている。前述した各地の開発事業をめぐる補償欠如や
賄賂の授受も、このメカニズムの中でマスコミに報じられ、問題化した。「冰
点」のような社会派のマスコミは、共産党政権に自浄作用をもたらしている。
http://tanakanews.com/b0101china.htm

 マスコミにたたかれた役人の側は、反撃しようとする。地方の役人は、中央
の元上司に冰点を潰してほしいと訴える。中央の幹部の中には、現政権になっ
て冷遇されている人もいるだろうから、反対勢力は結束し、冰点のようなマス
コミを潰そうとする。こうした政治力学が潜在しているところに、教科書問題
で日本の反論を助長しそうな論文が出たため、それを口実に冰点が潰されそう
になったのだろう。

 権力闘争にさらされているものの、冰点を発行する青年報に代表される中国
の社会派マスコミは、国民の不満を取り除き、共産党政権を長続きさせるため
に存在している。報道の自由を求める中国のマスコミが、一党独裁に反対する
反政府運動を始める勢力へと発展することは、今後共産党の中央がよっぽどの
腐敗や無能な状態に陥らない限り、あり得ない話だと感じられる。

 中国では全国レベルの民主主義が行われていないものの、それに代わる目立
たない社会安定化のメカニズムが、いろいろと存在しているようだ。その全体
像はまだよく分からないので、今後さらに解明していきたい。