矢内はなぜ穴熊を指さないのか？

コラム　トラウマ？　（矢内理絵子「矢内理絵子の振り飛車破り」より）

　私は対振り飛車で居飛車穴熊を指していませんが、これには理由があります。
（…と言うほど深刻な理由ではありませんが）。
　もちろん、今までに一局も指したことがない、なんてこともありませんし、
今後も指さない、なんてことも言ったりしません。本書でも穴熊に組み替える
手順を書いてるくらいですから（笑）。
　でも、初めて居飛車穴熊を指したときのことはよく覚えています。まだ小学校
四年生頃、将棋会館にある道場で指していたときのことでした。いつもは勝っ
たり負けたりの繰り返しだったのですが、その日はあっというまに六連敗して
しまったのです。
　今なら、いえ、当時でも普段ならこんなに負けがこむ前に、休憩を取るとか、
気分転換をするなどしていたのですが、この日は｢何とか勝たなくては」と
気持ちが焦っていたのです。
　そして迎えた『気付かなかったで図』。手番は…そう、後手。
　なんと△８七桂不成！（痛い目にあった図）まで。
　子供ながらにびっくりしました。
　穴熊って逃げ道がないんだ、とわかった瞬間、目から鱗ならぬ、目から涙が
こぼれました。
　みなさんはこんなことがないように『安心で図』のようなしっかりした穴熊を
作ってくださいね。

『気付かなかったで図』…　先手　７９金　８７歩　８８銀　８９桂　９７歩　９８香　９９玉
　　　　　　　　　　　　　　　　後手　 ３３角　７５桂

『安心で図』…　先手　７６歩　７８金　７９金　８７歩　８８銀　 ８９桂　９７歩　９８香　９９玉