196 :
瞳を閉じて1:
「2四歩、同歩、同飛車…」
「なーにしてるのっ?!」
「あっ、おねえさん」
「一人で部屋に籠もって…不健全ね」
「黙って入って来ちゃ…困るよ」
「いいでしょ?きょうだいなんだもん」
「今度目かくし将棋するから、練習してたんだ」
「そーなんだ」
「おねえさんも出るんだろ?将棋まつり」
「日が違うから残念ね。ゆかたのわたし、見たかったでしょ?
でもどーせ目かくししてるから関係ないか」
「ずっと目かくししてるわけじゃないよ」
「そっか。でも、練習ならちゃんと目かくししなきゃだめよ」
「盤を見なきゃ同じだよ」
「視界が遮られてるとねー、感じが違うの。
…縛ってあげようか?」
「し、縛る?」
「そう。手ぬぐいで、縛るの」
「あ、そうか…目かくしね…」
「縛ってあげる。そっち向いて」
「…うん」
「縛るわよ…どう?痛くない?」
「痛くないです…」
「見える?」
「見えない」
「よし。じゃあ…わたしが相手してあげる」
「あ、相手?」
「そうよ。一人でしちゃだめ。二人でしないと…ね?」
「う、うん…ありがとう」
「いいのよ」
「あの…おねえさんも…縛るの?」
197 :
瞳を閉じて2:2007/08/12(日) 16:17:27 ID:j7A5G4vD
「何言ってんの?!それじゃあ太刀打ちできないわよ。
わたしは、ばっちり見るわよ」
「なんか…恥ずかしい…」
「変な子。…で、どこ?」
「え?」
「盤と駒」
「ああ……そっち」
「あった。待っててね。並べるから。
ねー、先がいい?後がいい?」
「…どっちでも…」
「そー。じゃあ、ちゃんとやるかー」
シャカシャカシャカ…
「あーっ!」
「どうした?」
「たっちゃった!」
「え?」
「すごいたってる!こんなの初めて!」
「いやそれは」
「ね、こういうとき、どうなるの?」
「それはその」
「どんだけー、って感じよね!歩が全部たったの!」
「ああ……そうなの…」
「わかんないから、わたし先ね。いいでしょ?▲7六歩」
「あ」
「早くー」
「じゃあ…△3四歩」
198 :
瞳を閉じて3:2007/08/12(日) 16:18:56 ID:j7A5G4vD
〜中倉宏美です。この対局は長くなりましたので、途中を省略し、終盤の局面から再びご覧下さい。〜
「△2七桂」
「…」
「…詰んで…ません?」
「桂があればねっ」
「あ…桂、持ってなかった?じゃあ負けだ!」
「投了…でいいのね?」
「参りました。ひゃー、やっぱり難しいなー!」
「何年ぶりかな…勝つの。目かくしでも、うれしい」
「楽しかった…それになんか、ドキドキした。
…もう目かくし、取ってもいい?」
「待って。片付けるから。
…ねえ、将棋まつり、誰といっしょに出るの?」
「名人とF先生、それと…」
「女流は?」
「Sさん、Yさん…」
「Iたんもよねー」
「そうそう。Mさん」
199 :
瞳を閉じて4:2007/08/12(日) 16:20:57 ID:j7A5G4vD
「Iたん、かわいいわよねー」
「そうかな」
「かわいいでしょ?かわいいよね?」
「そうだね」
「あっそっ。やっぱり若い子がいーんだ」
「え?」
「今やプロ棋士先生だもん、もてもてのよりどりみどりよねー。若い子がいーんだよねー」
「そ、そんなこと…」
「ないの?」
「う、うん…」
「そーよねー。昔っから年上にしか興味ないもんねー。
君のパソコン、『Kっ娘のS風日記』間違ってお気に入りに登録されてるから、削除しておくねっ」
「あ」
「何?」
「…り、がとう…」
「いいえ。どういたしまして。かわいい弟のためだもん」
「い…いつの間に…」
おしまい