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名無し名人:
森内の将棋には人の目を引くところがない。一見、冴えがないのである。
仮に中盤で有利になったとする。プロなら、それを探し出して一気に勝とうとする。
ところが、森内はそういった常識に囚われない。
有利な態勢になっても、決して勝ちを急がない。
名人に対して、ゆっくり指そう、などと考えるのは大変な素質で、
恐るべき底の深さを感じる。
全盛時代の大山は、「最初のチャンスは見送る」と言っていた。
何となく似ているではないか。
底の深さと言えば、もう一つ感じたことがある。
それは、人生経験が将棋にプラスするだろう、と思わせる点で、
森内は三十歳くらいまで年々進歩するはずだ。
もしかしたら、ここ数年がピークなのではないか、
という感じの羽生と違う、人間的なスケールの大きさがある。
「たくさん勝つのは羽生君でしょうが、ここ一番で勝つのは森内君のような気がしますね」
先崎少年の言である。恐らく当っているだろう。
河口俊彦 谷川名人を全日本プロトーナメント決勝で破った、18歳の森内四段を評して。