もう嫌なんです。
思えば、スヨンを出したのが運の尽きでした。
ヒカルのもう一人のライバルのつもりで、むしろ破竹の勢いの
韓国の棋界に敬意を表す意味で登場させたんです。敵愾心の強い
「ちょっとヤナ奴」にスヨンを描いたのは確かです。でも、それは
個性を際立たせたつもりで、自分自身はお気に入りのキャラクターでした。
勝敗については、物語の流れ的にヒカルが僅差で勝つのが自然で、
それは特に気にしてませんでした。
でも、編集部を通して抗議が来たんです。スヨンをヤナ奴に描いた点は
ちょっと「来るかな?」と覚悟していたのですが、全然違って
「韓国人が勝たないのはおかしい」という首を捻りたくなる様な内容でした。
編集部の意見で、しばらくは韓国には触れないようにということで話を進め、
しばらくは何事も無く進んでいたのですが、中国の話を出した際に、
「何故、韓国の話をしないのか、中国を出して韓国を出さないのはおかしい」
「スヨンの敗北が未だ単行本で修正されていないのは何故か」という抗議が
来るようになりました。どうも、前の抗議が来た時に、編集部の方で
勝手に、修正する様な回答をしてたみたいなんですね。
それについては編集長に謝ってもらったんですが、やはり韓国に対しては、
慎重に対応して欲しいということで、その頃から担当者のチェックも
詳細なものとなってきました。特に私よりも、健さんに厳しいチェックが
行ったみたいで、ヨンハの顔はああなりました(笑)。あれ自体は私も
別に嫌いじゃないけれど(爆)。
北斗杯が始まると、編集部も相当気を遣ってるみたいで、指示が細かくなり、
スヨンもいい子になりました。さて、問題は勝敗なんですが、ヨンハ戦は
僅差でヒカルが勝つか、引分けを想定していました(迷ってました)。
奇妙な言い方ですが、故にヒカルは中国戦で負けておく必要がありましたし、
中国は韓国に全敗させる必要があったのです。バランスと云っては
それまでですが、ヨンハ戦で負けさせる展開なら、中国戦でヒカルを勝たせ、
増長させるところです。
でも、北斗杯戦が掲載される頃から、また抗議のメールが増えてきた様で、
しだいに編集部の態度も落ち着かなくなってきました。結局、アキラを
勝たせる代わりに(副将で負けてはあまりにも不自然)、ヒカルと社は
負けさせるということで折り合いを付けざるを得ませんでした。
そして、一部の変な人の意見に左右される漫画を続ける自分が嫌で、
こんなことが続くなら原作者としてはもう続けられないと思い、
健さんも理解してくれたので、悩みましたがあそこで終わりにしました。
ファンの皆さん(そしてヒカル達)には大変申し訳ないと思ってます。