NHK将棋トーナメント part25

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324名無し名人
迷っているところへ声がかかった。
「内藤さんーというの? ボクと一番指してみましょうか」

(中略)

しかしこのときの誘いは冗談に思われた。
声の主があの加藤一二三だったからだ。
奨励会に入って間もない、末席の私の名前を知っていることからして不思議に思ったくらいである。
それにもし二人が指すとすれば三段と五級。
七級差で手合いは飛車落ちとなる。
その頃の私は神戸の道場でアマ三段の人にも負けないようになっていた。
奨励会に入った二ヶ月の間で香一本は確実に強くなったと自分で感じていた。
いくら加藤一二三でも自分に飛車を引くなんて無茶なことはやらんだろう、と思った。

しかし加藤さんは本気だったのである。


内藤国雄 「私の修行時代」より