厳格な両親に対する娘の反乱。由香里にとってそれは知性に乏しく、経済的に先行きも無い、無学で屈強な体躯を持つディオニソス的な若い青年と結婚することだった。
以前より、親の希望する棋士との結婚を否定する発言をインタビュー等で繰り返し、母親の落胆・失望する顔を見ては自身の自我の確立が揺るぎ無いものであれと切望する由香里であった。
しかし、由香里の学生時代に亡くなった厳格な父の影は、いつまでも由香里の行動を厳しく監視する。
「このままでは、私は本当の私でなくなる、、」
そこでこの世間知らずな良家の娘の取った行動とは、、。自分に全く不釣合いな身分の男との交際。それは鍛え上げた六尺一寸もの体躯を誇らしげに、由香里の貧乳を貪る無学の青年、吉原慎也であった。
「見て、天国のお父様、そしていつも私を束縛するお母様。私は貴方達の希望する娘じゃなくってよ」
この夜、由香里は生まれてはじめてオルガズムの音色を聞いた。私はこの人とケコーンするわ。思考よりも先にサッカーボールに飛びつくこの青年と」
由香里の帰ったサッカー寮で、吉原は紫煙を燻らしている。
「へッ、とんだ糞ババアだぜ。俺に合わせているつもりだろうが、時々育ちの良さを自慢しやがる、全く鼻につく女だ!しかし、糞ババアだが結婚しない手は無いな、フフフ」
吉原は以前知り合ったカフェの女給、萌子に電話を入れた。