【bayfm78】ビートルズから始まる。3【小林克也】
□ジョージの目から見たビートルズ史?
・ビートルズにとって、ロックの歴史において、1964年は特別な年である。この年の1月に「I Want to Hold Your Hand」が全米
第1位に輝き、2月には初めてアメリカに降り立った。そして、大人気番組「エド・サリバン・ショー」が最高の視聴率を記録し
ビートルズは全米の、そして全世界のアイドルとなった。アメリカでの扱いは、まさにVIP待遇。空港からの移動はリムジン。
最高級のスイートルーム。出歩くことは御法度であるが、ルームサービスは何でも頼み放題。その上、上玉のプロの女性も毎晩
のようにやってくる。リンゴは語っている。「俺たちは、身も心も太っていった。なにせ、スモークサーモンなんてもの、初めて
食べたんだからね。とにかく、食べて食べて、食べまくったね。」事実、ビートルズが話題にならない日はなかった。ボブ・ディラン
も敬愛する、ビート音楽の詩人アレン・ギーンズバーグは、うまく表現している。「ビートルズは、全宇宙の意識の中心にいる」
まさに言い得て妙。ビートルズの強みは、明らかなリーダーがいないことだった。ビートルズが登場する以前の、音楽の走りは
クリフ・リチャードとシャドウズ ── リードシンガーとそのバックバンドというスタイル。もしくは、ディブ・クラーク・ファイブ
といった、ハッキリとしたリーダーがいるタイプの二つであった。ところがビートルズは、それまでの常識を覆した。4人全員が
演奏し、全員が歌った。ファンはお気に入りのメンバーを変えながら、グループ全体に対する忠誠を維持することが出来た。
ビートルズを知って間もないファンには、グループのまとまりが何よりの魅力のポイントだった。しかし、その裏を返すと
4人の個性のちがいが、この何ともいえない調和を保っていたともいえる。例えば、リンゴのどこかとぼけたようなウイットが
アメリカでのビートルズの人気に貢献したことはまぎれもない事実なのである。
〜 Ringo Starr / Only You
〜 The Beatles / Ob-La-Di, Ob-La-Da