【bayfm78】ビートルズから始まる。2【小林克也】
・ポールがアップルの広報担当として雇った、アメリカ人女性コピーライターのフランシーヌとの浮気現場を押さえられた夜
ジェーン・アッシャーとの長過ぎる春は終わりを告げた
ジェーンがポールの家に二度と戻ってくることはなかった
荷物をとりにきたのは、かつてポールが下宿してお世話になったアッシャー夫人、ジェーンの母親である
皮肉なことに荷造りはポールの浮気相手である、フランシーヌが手伝った
ポールが失ったのはジェーンだけではなかった
あまりの罪の呵責に苛まされたフランシーヌも、すぐにNYに帰ってしまった
フランシーヌの心に残ったポールの姿は、短期で突拍子もなく、思春期を迎えたばかりの貴公子といったイメージであった
こうして、ジェーンが去り、フランシーヌがアップルオフィスを辞めてNYに戻ってしまうと
ポールの家のベッドルームのサテンの枕にも、空きができてしまった
この空きを埋めるために、ほどなくしてリンダ・イーストマンが、NYからはるばるやってくることになった
かつての婚約者ジェーンの場合、家柄、女優としての才能、その美しさの上で、あまりにも完璧であったため
多くのポールファンは二人の間をねたむどころか、しかたなく祝福する傾向にあった
しかし、リンダの場合は違っていた
ほとんどのポールファンは、リンダのことをまったくもって、良く思っていなかったのである
熱狂的なファンになればなるほど、欠点を洗いざらい見つけては、決定的にけなしてかかった
大体、この時のポールはビートルズの、イギリスいや世界のロックの王子様と言っても過言ではなかった
そんなポール・マッカートニーの次の恋人になったとしても、当然受け入れられるはずがなかった
ポールは、ビートルズの中でも唯一の独身
それに対し、リンダは子持ちのバツイチ
どう転んでみても、ファンが納得するわけがなかった
ポールの自宅の前に、ほぼ毎日のように張り込んでは、まるでストーカーか捜査中の刑事のように見張りを続けてきたファンの一人
マーゴ・スティーブンスは語っている
「ある日、初めてリンダって女を見たのよ
そしたらあの女、ポールよりよっぽど毛深かったのよ
そんな女、誰だって許せるわけがないわ」
〜 The Beatles / Another Girl
〜 The Beatles / You Can't Do That