――――――
ミセ*;д;)リ『やだぁああああああ!!! もっとデルタと遊ぶぅううううう!!』
『わがまま言うんじゃありません! すいません、わざわざお見送りに来てもらったのに……』
(`・ω・´)『うちの孫と仲良くして貰ったんですし、全然構いやしませんって』
从 ゚∀从『この年なもんで、満足に遊んでやれなくて……本当にミセリちゃんには感謝しております』
ミセ*;д;)リ『デルタぁあああああ!! ああああああああん!!』
( "ゞ)『ミセリ、ミセリ』
ミセ*;д;)リ『?』
( "ゞ)『俺さ、毎年夏休みはこっちに来るんだ。だからさ、また会えるよ』
( "ゞ)『俺も寂しいけど、もし来年も来てくれたら、絶対にまた会えるから』
ミセ*;д;)リ『……』
( "ゞ)『それまでに絶対身長抜いてやるからな! 待ってろよ!』
ミセ*つд;)リ『……うん』
――――――
ミセ;゚ー゚)リ「来n」
(;"ゞ)「来年も来てくれればまた会えるから」
ミセ;゚ー゚)リ「えっ?」
(;"ゞ)「とか言って、慰めたんだっけ?」
脳裏に少しだけ蘇った記憶と、ぴたりと重なった。
ミセ*゚ー゚)リ「そう……だよ」
僅かな静寂の後、海から涼風が一際強く吹き荒ぶ。
それに乗せるかのようにミセリが、安堵と寂しさの色が混ざった笑顔で囁いた。
ミセ*゚ー゚)リ「ずっと……ずっと待ってたんだから」
(;"ゞ)「ご……めん」
風で舞い上がるミセリの前髪が俺の鼻先をくすぐる。
それがきっかけで、俺は互いの距離を改めて意識する。
途端に顔だけがやたら熱くなり始めて、鼓動が加速していくのを感じた。
ミセ*゚ー゚)リ「あれから毎年待ってたのに、デルタは一度も来てくれないし」
(;"ゞ)「ひゃい、す、すいましぇん」
鼻にくすぐったさを感じるたび、潮の香りとは違う香りがしてくる。
恐らく、ミセリの髪の香りなんだろう。
なんだか、夏の暑さ以外の原因で倒れてしまいそうになってきた。
ミセ*゚ー゚)リ「でも……許してあげる」
(;"ゞ)「あ、い、いいの……?」
クラクラしてきた頭で、しどろもどろに聞き返す。
ミセ*゚ー゚)リ「うん、大遅刻したのはいただけないけど」
ミセリは少しもったいぶるような仕草をして、
ミセ*^ー^)リ「デルタにまた会えたってだけでも、指折り数えて夏を待っていた甲斐があったから」
心底嬉しそうに笑いながら、そう言ってくれた。
家族以外の異性とは特に縁もなく、17年間生きてきた。
そんな俺に訪れた、二次元の中でしか見た事が無いようなシチュエーションの連続。
(;"ゞ)(美少女と運命的な再会を果たして超密着してずっと待たれててあばばばばば)
どうやら、これほどまでのときめきに耐えられるほどの体力は俺にはなかったらしい。
( ゝ)「その笑顔は……はんそkゴフッ」
ミセ;゚д゚)リ「でっ、デルタぁあああああ!?」
ギリギリのところで保たれていた俺の意識は、ミセリの笑顔でノックアウトされた。
〜〜〜〜〜〜
( "ゞ)「ん……んん?」
どれくらい時間が経ったのだろう。
真っ暗だった視界に光を感じて、そっと目を開ける。
ミセ;゚ー゚)リ「あっ、起きた……大丈夫?」
和らぎ始めた日差しと、片手に麦わら帽子を持ったミセリの顔が視界に飛び込んできた。
徐々に体の方も目覚めてきて、後頭部に柔らかな感触を感じる。
(;"ゞ)(って、これはまさかっ!)
ミセ;゚д゚)リ「うひゃっ!?」
慌てて跳ね起きて、自分の頭があった場所へ目をやる。
そこには女の子座りになっているミセリの脚があった。
(;"ゞ)(ひ……膝枕!!)
(#"ゞ)「くそおおおおお! こんな時に俺は何をやってたんだああああ!!」
美少女に膝枕をしてもらう、男なら誰もが心躍るはずのシチュエーションだ。
なのに、俺はせっかくの膝枕タイムの時に何をのんびり昏倒なんてしていたのか。
自分の愚かさを悔やんでも悔やみきれず、思わず砂浜を殴りつける。
ミセ;゚ー゚)リ「え、えっと、なんかもう元気っぽいから大丈夫かな?」
ミセリが戸惑いつつも立ち上がって、俺に恐る恐る呼びかけてくる。
そこでようやく、膝枕以外の事が頭に入ってきた。
(;"ゞ)「あ……はい……大丈夫です。ご迷惑おかけしました」
ミセ;゚ー゚)リ「日射病かと思って焦ったよー……」
とりあえず、ミセリに要らない心配をかけた事を平謝りする。
俺の謝罪をを聞いたミセリは、安心したように大きく息を吐いた。
ミセ*゚ー゚)リ「重くて運べないから、引きずって海に放り込もうかと思ってたんだから」
(;"ゞ)「はははは、はは、は……」
もっと心の強い男になる事と、日射病対策に全力を注ぐ事を固く誓った。
ミセ*゚ー゚)リ「ところでさ、デルタはまだ時間ある?」
( "ゞ)「日が暮れるまでだから、まだまだあるよ」
空を見上げると、日射しはすでに淡いオレンジ色を帯び始めていた。
身を焦がすような暑さも影を潜め、じっとりとした空気が肌を撫でる。
ミセ*゚ー゚)リ「じゃあさ、デートって事でちょっと付いてきてくれない?」
ミセリが俺の顔を下から覗きこむように身をかがめて、かわい子ぶった声で誘ってくる。
行動のひとつひとつがいちいち愛くるしくて、頬がつり上がらざるを得ない。
(*"ゞ)「喜んで付いていきますとも!」
ミセ*^ー^)リ「ありがとー♪」
二つ返事で答えると、ミセリは俺の手を握って嬉しそうに笑った。
おかげで、自分の心臓の音がどんどん大きくなっていく。
( "ゞ)「そういえば、どこに行くの?」
ミセ*゚ー゚)リ「ここから少し歩いたとこ。どんな場所かは付いてからのお楽しみ」
( "ゞ)「よーし、期待しちゃうぞー」
ミセ;^ー^)リ「あんまりハードル上げないでよー」
自信満々な表情だったミセリが少し困ったように笑い、海沿いの道の方へ歩き出す。
俺もその背中を追いかけて、そのまま砂浜を後にした。
ミセリの少し後を付いていきながら、海岸線に沿って歩いていく。
海から吹く風で、彼女の首にかけた麦わら帽子が揺れていた。
小さな後ろ姿を眺めつつ、ぼんやりと昔に想いを馳せてみる。
(;"ゞ)(言われれば思い出せそうだけど……自力じゃさっぱりだな)
不思議と、11歳の夏の記憶だけが思い出せなかった。
もやがかかっているような感覚で、見えそうで見えないのがもどかしい。
仕方ないから思い出せた記憶だけを振り返ってみた。
( "ゞ)(よくアレからこんな美少女に成長したもんだ……)
記憶の中のミセリは、男の子だと言われれば信じてしまいそうなルックスだった。
しかし今、目の前にいるミセリはワンピースの似合う見事な美少女。
面影はあるけど、時の流れというのはここまで人を変えるものなのか。
ミセ*゚ー゚)リ
(*"ゞ)(こっちの方もなかなかの成長具合ですなうへっへへへ)
強い風が吹くたび、ワンピース越しに体のラインが浮き上がる。
安産型は大好物です、本当にありがとうございました。
ミセ*゚ー゚)リ「そろそろだよー」
(;"ゞ)そ「お、おう!」
急に振り返ったミセリに話しかけられ、慌てて相槌を打つ。
とっさだったからか、なんだか自分のキャラに合わない相槌になってしまった。
ミセ*゚ー゚)リ「どうしたの? そんなにびっくりして」
(;"ゞ)「いや、全然普通だけど?」
ミセ*゚ー゚)リ「そう? まあいいや」
お尻を見てニヤニヤしてました、なんて言える訳がない。
なるべくいつもの声色で平静を装って返事をする。
どうやらごまかせたみたいで、ミセリは再び前を向いて歩き出した。
(;"ゞ)(あっぶねえ、ひやひやした)
安堵のため息を漏らして、吹き出した額の冷や汗を拭う。
これ以上危ない橋を渡る前に早く目的地に着かないかと、視線を道の先へ向ける。
( "ゞ)(あの黄色い所……なんだ?)
ちらりと、黄色に染まった一角が見えた。
それは近付いていくにつれて、どんどん広くなっていく。
( "ゞ)(ああ、向日葵か)
行きの電車の車窓から見えた、海の方まで広がっていた向日葵畑を思い出す。
もしかしたら、ここはその端なのかもしれない。
ぼんやり考えているうちに、道の片側が向日葵で埋め尽くされる。
ミセ*゚ー゚)リ「こっちこっち、もう少しだよ」
( "ゞ)「はいはい」
ミセリが海沿いの道から、向日葵畑の中に続く道へ進路を変える。
連れていきたい場所というのは、ここの事だったみたいだ。
両端を向日葵が埋め尽くす、ゆるやかな登りになっている道をふたりでずんずんと突き進んでいく。
ミセ*゚ー゚)リ「とうちゃーく!」
登りの頂上でミセリが立ち止まった。
遅れて俺も頂上に着いて、彼女の右隣に並ぶ。
ミセリの表情を窺おうとしても、少しうつむき加減でよく見えない。
ただ、ちらりと見える口元は笑っていた。
ミセ* ー )リ「なんか、会いたい会いたいばっか考えてたのに」
向日葵畑を駆け抜ける風に乗せるように、ミセリがそっと呟いた。
ざわめきに紛れてしまう声を聞き逃さまいと、聞き耳を立てて次の言葉を待つ。
ミセ* ー )リ「会えたら消えちゃってもいい、とか思ってたのに」
それは死ぬほど俺に会いたかった、という解釈でいいのだろうか。
いくらなんでも大げさだと言いかけたけど、ミセリから有無を言わさぬ雰囲気を感じ取る。
何か言うのはすべて聞いてからにしようと思った。
ミセ* ー )リ「いざ会ったら、どんどん欲が出てきちゃった」
そう言って、ミセリは顔を上げて俺を見る。
そこにあるのが分かっていたみたいに、俺の視線とミセリの視線がぴたりと重なった。
ミセ*゚ー゚)リ「また明日も会いたいな。明後日も、明明後日も」
胸の辺りがしめつけられるように痛む。
だけど、同時に言いようのない心地良さで満たされてもいた。
( "ゞ)「いいよ、お盆休みでこっちにいる間は」
ミセ*゚ー゚)リ「ほんと!? やったー!!!」
ミセリは俺から離れて、ガッツポーズしながらぴょんぴょんと跳ねまわる。
その場で回転したり、麦わら帽子を意味もなく被ったり脱いだり、全身で喜びを表す。
その姿は今すぐ抱きしめてやりたいほど、とても愛らしかった。
ミセ*゚ー゚)リ「お盆休みって16日まででしょ? その間は毎日だからね!」
(*"ゞ)「明日も明後日も明明後日も、って言われたからには当然ですとも!」
ミセ*^ー^)リ「ありがとー!!デルタ大好きー!!」
(;"ゞ)「っておああっ! ちょっ、抱きつき、あの、とても柔らかいものが、って大好き!?」
得意げに胸を張っていたらミセリが飛びついて来て、首に手を回された。
香ってくるいい匂いと、どうしても当たる柔らかい感触が頭の中をシェイクされる。
密かに飛び出したとんでもない発言も相まって、全身が一気に熱くなってくる。
(;"ゞ)「とりあえずはにゃれてください! 色々決壊するから!」
ミセ*゚ー゚)リ「何が?」
(;"ゞ)「俺の体とか、あとちょっと理性とかもおおおお!」
ミセ*‐3‐)リ「は〜い」
渋々といった様子で、ミセリは俺の首に回された手をほどいて離れる。
本当に色々危なかった。海まで引きずられて放り込まれるのは勘弁だ。
(;"ゞ)「と、ところでさ。明日はどこで何する?」
この空気を引きずらないように、早々と話題を変える。
ミセリは顎に手を添えて、唸りながら考え始めた。
ミセ*゚ー゚)リ「んー……何も考えてないや。明日会ってから考えよ?」
( "ゞ)「会うっていえば、ミセリの家知らな……いや、俺が忘れてるだけか」
ミセ*゚ー゚)リ「いいよ、いつも浜辺にいるから。これからの集合場所は浜辺ね」
(;"ゞ)「いつもって言っても、俺じいちゃんの畑手伝わないといけないんだよ」
畑仕事がいつ始まって、いつ終わるのかはまったく知らない。
いつもいるとはいえ、炎天下の浜辺に待たせ続けるわけにはいかないだろう。
ミセ*゚ー゚)リ「気にしないで、近くに日陰もあるし。とにかく、デルタが終わったら来てくれれば絶対いるから」
(;"ゞ)「そ、そう……? だったら、なるべく早く来るようにするから……」
あまりの押しの強さに、ついミセリの案を受け入れてしまう。
満足げに頷いたミセリは大きく伸びをして、背後に広がる海の方へ振り向いた。
ミセ*゚ー゚)リ「それじゃ、日も暮れる前に帰りましょうか!」
ミセリに言われてはっとして振り返ると、太陽は海の向こうに沈み始めていた。
空はすでに藍色を帯びてきている。
ミセ*゚ー゚)リ「デルタと会った場所まで送るよ。さあさあ、こっちこっち」
ミセリが一足早く、来た道を戻ろうと一歩を踏み出す。
( "ゞ)「ああ、ありが――」
お礼を言いながら振り返ろうとして、言葉を失って立ち尽くす。
思わず魅入ってしまった。
沈んでいきながら強く輝く夕日と、鮮やかな橙色に染まった海に。
藍色と橙色が混ざり合って、マーブル模様の空に。
両端を向日葵が埋め尽くした、海まで真っ直ぐ伸びる砂利道に。
海風でなびく白いワンピースの裾と、夕日に透けて綺羅綺羅と光る黒髪に。
ミセ*゚ー゚)リ「行こ?」
なにより、振り返って俺を見つめながら、逆光を背負って微笑むミセリに。
「……ああ」
何もされていないのに、とてつもなく顔が熱くなるのを感じた。
( “ゞ)は夏を待っているようです
第一話 ワン・サマーガール
終わり