ミセ*゚ー゚)リ
(;"ゞ)(動いて、動いてよ! 暴走しない程度に!)
向こうが動かないから、つい俺まで固まってしまう。
この浜辺で、波だけが時間の流れている証明のようだった。
(;"ゞ)(……お?)
固まり続けてどれくらい経った頃だろう。
まず、瞳が飛び出てしまうそうなくらいに大きく目が見開かれた。
ミセ;゚ー゚)リ
次に、ゆっくりと桜色の唇が開かれた。
それから、金魚みたいにぱくぱくと開いては閉じてを繰り返す。
ミセ;゚д゚)リ
(;"ゞ)「な、に? その――」
幽霊でも見たような顔は、と。
そう問いかけようとした瞬間だった。
ミセ;゚д゚)リ「デルタぁああああああああっ!!??」
(;"ゞ)「はいいいいいいいいいぃ!?」
あの子は、俺の名前を叫びながら押し倒すという暴挙に打って出た。
ミセ;゚д゚)リ「そうなの!? ねぇ!!」
(;"ゞ)「そうですけどおおおおおおお!?」
真夏の砂浜で馬乗りになって俺の肩を掴んで、がくがくと前後に揺さぶる美少女。
なんでこんな事になったのかも分からず、視界が揺れる度に思考がぐちゃぐちゃになっていく。
とりあえず訳が分からない状況から逃れたい一心で、彼女の問いに応えた。
ミセ;゚д゚)リ「やっぱり!」
俺の肩を揺さぶる手が止まって、景色が彼女の顔のどアップで固定される。
しかし、まだ俺の体の上からどいてくれる気配は無い。
それどころか、何かを探るように見つめてくる。
(;"ゞ)「あ、の、ところで……やっぱり、って……なんですかね?」
下心は完全に消え失せて、警戒心で胸が満たされる。
自分でも驚くくらいどもりながらも、恐る恐る疑問をぶつけてみた。
ミセ;゚д゚)リ
ミセ;゚ー゚)リ
それに対する返答はなく、代わりに驚きに満ちていた表情が困り顔に変わった。
ミセ;゚ー゚)リ「もしかして、さ」
(;"ゞ)「なんでしょうか?」
ミセ;゚ー゚)リ「覚えて……ない?」
(;"ゞ)「……?」
さっきまでの騒がしさはどこへ行ったのか、波が寄せては返す音だけが流れる。
だんだん冷静になっていく頭の中で、ひとつひとつのピースが組み立てられていく。
(;"ゞ)(そういえば、この子はなんで……俺の名前を知ってるんだ?)
俺と彼女は初対面のはずなのに、名前を知っているはずがない。
加えて、俺の顔を見た時の反応といい、俺に覚えていないのかと聞いたり。
ミセ;゚ー゚)リ
(;"ゞ)(まさか……)
あるひとつの可能性が頭をよぎって、汗が一気に引っ込む感覚を覚えた。
よりによって、こういうケースで一番あってはいけない可能性だ。
(;"ゞ)「えーっとですねー、はい、あの」
ミセ*゚ー゚)リ「?」
口に出した後の事を考えると、喉に綿が詰まったような息苦しさを感じる。
何度か咳払いをしてようやく決心が固まり、非常に聞きづらい質問を彼女に切り出した。
(;"ゞ)「もしかしてですね、わたくしとあなたさまは……」
ミセ*゚ー゚)リ「はあ……」
(;"ゞ)「前にどこかでお会いした事があったのでしょうか、なんて……」
もし、本当にそうだったなら失礼極まりない事態だ。
だけど正直な話、こんなに可愛い子なら俺が覚えていないはずがない。
小中高全ての可愛い子の顔と名前は、全員覚えているのが数少ない俺の自慢なんだから。
ミセ*゚ー゚)リ
ミセ*゚−゚)リ
ミセ#゚−゚)リ
(;"ゞ)(アウトおおおおおおおおおおおおおお!!)
口元を尖らせて、誰にでも分かるくらい不機嫌そうな表情に変わる美少女。
そんな顔をしてても可愛らしさは変わらないけど、それを堪能する余裕がない。
場を取り繕うために熱暴走寸前の頭を回転させる。
(;"ゞ)(うわあああああ頑張れ俺えええええええ!!)
ミセ* − )リ「ほんとに……覚えてないの?」
(;"ゞ)「……え?」
怒っていたかと思うと、彼女はすぐに顔を伏せて残念そうに呟く。
打って変わってしおらしさ全開の態度に、自責の念がこみ上げてくる。
(;"ゞ)「ごめん……なさい」
気付くと俺は、自然と謝罪の言葉を口にしていた。
数瞬して再び顔を上げた彼女は、改めて俺の目を真っ直ぐに見つめる。
それから、視界の端に見えていた桜色の唇がゆっくりと動いた。
ミセ;゚ー゚)リ「……ミセリ」
(;"ゞ)「へ?」
ミセ;゚ー゚)リ「あたしの、名前」
(;"ゞ)「ミセリ……ミセリ……」
うわごとのように何度も繰り返しながら、頭の中の引き出しを開けていく。
しかし、やっぱり思い出す事が出来ない。
ミセ;゚ー゚)リ「10歳の時、実家から来たけどここに独りでいたあたしに、遊ぼうって声をかけてくれて」
俺を見かねてか、謎の美少女改めミセリが口を開く。
ミセ;゚ー゚)リ「あちこち連れて行ってくれて、家に呼んで一緒にスイカ食べたりして」
(;"ゞ)「う……ん……」
何も無い真っ白な空間に少しずつ下描きがされていく感覚。
それはやがて綺麗な線画になって、極彩色で染まっていく。
ミセ;゚ー゚)リ「あたしが帰る日になって、泣きながらわがまま言ってる時に」
(;"ゞ)「くっ……ん……」
描かれた絵がアニメのように動き始めて、声が付いていき。
そして、