(`・ω・´)「荷物置いてちっと休んだら、畑行くからな」
( "ゞ)「あ、はーい」
玄関先で追いついたかと思うと、じいちゃんはそれだけ言って奥に見える倉庫へ行ってしまった。
大きなトラクターらしき物が見える辺り、畑仕事の準備をしに行ったんだろう。
( "ゞ)「とりあえず荷物でも置いてくるか……」
家の中に入ろうと引き戸に手をかける。
鍵はかかっておらず、がらがらと音を立てて玄関が目の前に現れた。
(;"ゞ)「……これは、いいのか?」
意識の違いに戸惑いつつも、とりあえず中に入って靴を脱ぐ。
脱ぎ終わって顔を上げると、ちょうどばあちゃんが帰ってきた。
从 ゚∀从「ごめんねぇ、ばあちゃん歩くの遅くて」
( "ゞ)「いいっていいって、無理される方が困るよ」
从 ゚∀从「待っててね、部屋まで案内するから」
家に上がったばあちゃんの後に付いて廊下を歩いていく。
足を踏み出す度に木材の軋む音が響く。
从 ゚∀从「ここだよ」
案内された部屋の戸を開けると、すぐに青草の匂いが漂ってくる。。
ひとりで使うには広すぎる程の部屋一面に、青々とした畳が敷かれていた。
( "ゞ)「こんな広い部屋、俺ひとりで使っちゃっていいの?」
从 ゚∀从「いいんだよ。掃除したけど、使ってなかった部屋だから埃っぽかったらごめんね」
( "ゞ)「ううん、ありがとうばあちゃん」
この広さを曲がった腰で掃除するのは、きっと大変だっただろう。
俺が倒れなければ、畑仕事以外も手伝ってあげようと思った。
( "ゞ)「さて、と」
とりあえず部屋の中央に荷物を置いて、その横に寝転がる。
さっきぶつけた部分はまだ少し痛いけど、気にするほどじゃない。
天井の木目と見つめ合いながら、これからの事に想いを馳せた。
( "ゞ)(畑仕事と家の手伝いは決まりとして……)
手伝いが主な理由とはいえ、せっかくの田舎の夏休みだ。
ただ畑で土をいじって帰るだけじゃ味気ない。
(;"ゞ)(高2の夏休みだぞ、青春だぞ!?)
プールで水着の女の子を堪能するのも、所詮はその場限りだ。
大人になっても覚えているような、ひと夏の思い出を作らないでどうする。
そう考えると、俄然やる気が出てきた。
( "ゞ)(よし、畑が終わったら遊びに行くぞ……!)
だけど、計画を練ろうとしてはっとする。
(;"ゞ)(……しまった、どこに何しに行こう)
遊ぶための物も持ってきてないし、一緒に遊ぶ相手もいない。
さらに言えば、遊ぶ場所の当てもない。
(;"ゞ)(考えろ、俺! ここでくじけたら俺の17歳の夏が何の思い出もないまま終わる!)
振り返れば夏休みに入っての一ヶ月間、特に何もせずゴロゴロしてた記憶しかない。
こんなに悩むなら、キッズウォーの再放送とか見てないで遊びに行ったりすればよかった。
ミセ*゚ー゚)リ
ふと、空白だった頭の中にさっきの女の子の顔が浮かんだ。
(;"ゞ)(そうだ、さっきの子に会いに行ってみようかな)
俺がよほどのナルシストでなければ、あの子は確かに俺を意識していた。
記憶にないだけで昔の知り合いだったりするかもしれない。
今を逃せば、あんな可愛い子と知り合える機会なんてこの先ないだろう。
(*"ゞ)(そしてふたりは恋に落ちて……うえっへっへへっへへ)
从 ゚∀从「デルタ、顔赤いけど大丈夫かい?」
(;"ゞ)「ばっばばばばあちゃん!? な、なにっ!?」
妄想の世界に旅立っていた俺の眼前に、ばあちゃんの顔が現れた。
慌てて跳ね起きて、手遅れな気はしつつも平静を装う。
从 ゚∀从「暑かっただろうから、麦茶持ってきたよ」
(;"ゞ)「あ、ありがとばあちゃん。俺平気、うん。全然なんともない」
从 ゚∀从「そうかい?」
(;"ゞ)「そうそう、そうだから、うん」
从 ゚∀从「さっきね、おじいちゃんも準備出来たみたいだから。
デルタがよければいつでも畑に行けるって」
もう少しだけ畳に転がって休んでいきたい気持ちはあった。
しかし、早く手伝いを終わらせないとあの子が帰ってしまう可能性もある。
それだけはなんとしても避けないといけない。
( "ゞ)「よっし、すぐ行くから!!!」
持ってきてくれた麦茶を一気に飲み干す。
通り過ぎていく気持ちいい冷たさが、火照った全身に広がっていく。
心も体も元気を取り戻した俺は、鞄から作業用セット一式を取り出す。
从 ゚∀从「あらま、もう休まないでいいのかい? これも若さかねぇ……」
( "ゞ)「そうだよばあちゃん!! これが若さ、青春だよ!!」
帽子を被り、タオルを首にかけて、最後に軍手をぐいっと引っ張って手にはめる。
今となっては、ほんの一秒すら何物にも代え難いくらい惜しく感じられる。
( "ゞ)「じいちゃあああああああん! 畑行こおおおおおおおおおおおおおお!」
準備の出来た俺は、大いなる目標に向かって駆け足で部屋を飛び出した。
〜〜〜〜〜〜
::( ゝ)::「や、や、やっと、終わった……」
(;`・ω・´)「なんでぇ、威勢よく飛び出してったってのにだらしねぇ」
全ての作業を終えた家へと向かう車内。
揺れに抗う体力すら残っていない俺は、寄りかかった窓ガラスに頭をぶつけ続けていた。
::( ゝ)::「聞いてない……あんなに広いなんて、聞いてない……」
(;`・ω・´)「俺んとこは都会の家庭菜園じゃねえっての」
::( ゝ)::「まったくです……」
意気揚々と手伝いに出かけた俺を待っていたのは、地平線まで広がる畑だった。
広い場所なんてせいぜい校庭くらいしか知らなかったから、ただ絶句するしかなかった。
::(; ゝ)::(死んじゃう! これがあと3日続くとか死んじゃう!)
かごを持って畑を練り歩き、じいちゃんに言われるがままに雑草や悪くなった野菜を取る。
満杯になったら軽トラまで持っていって、また畑へと戻る。
単純作業の繰り返しだけど、これが精神的にも肉体的にもきつい。
::(; ゝ)::(なんかさっきから、生まれたてみたいに全身ぷるぷるしてるし!)
疲れのせいか、あきらかに俺の体がヤバいサインを発している。
これは俺の今後についてじいちゃんに要相談だ。
(`・ω・´)「そうだ、家に帰ったら荷台のゴミを全部捨てといてくれ。
最近は重い物持つと腰が痛くなってな。捨てる場所は後で教えるからよ」
(; ゝ)「」
(`・ω・´)「デルタが腰かがめる仕事をしてくれて助かったぜ、今日は腰が幾分か楽だ。
大変だろうが明日も頑張っちゃくれねえか?」
(; ゝ)「……うん、任せて」
(`・ω・´)「わりぃな、頼むぜ」
まだ仕事が残っているのを知って諦めたのか。
それとも、嬉しそうに話すじいちゃんを見たからか。
いつの間にか口をついて出たのは、了承の言葉だった。
(;"ゞ)(今は美少女を……あの子を支えにして、頑張ろう)
遠くに見える向日葵畑の、さらに奥に見える海岸線に想いを馳せる。
気付けば、体の震えは止まっていた。
(`・ω・´)「よっと、到着だ」
どれくらい時間が経っただろう。
空を見上げて入道雲がちぎれていくのを眺めていたら、不意に車が止まる。
視線を正面に移して、そこでようやく家に着いたことに気付いた。
(`・ω・´)「デルタ、荷台のゴミはあっちに行けばゴミの溜まってる場所がある。
そこに全部捨ててきてくれ。これで今日の仕事は終わりだ」
じいちゃんが指差す方を向くと、ちらりと汚らしい一角が見えた。
( "ゞ)「ん、分かった。ところでさ……」
(`・ω・´)「なんだ?」
念には念を入れて、出掛ける旨も言っておく事にする。
( "ゞ)「これが終わったら、その辺プラプラしてきていい?」
(`・ω・´)「ああ、日が暮れる頃までには帰ってくりゃあいい。ちょうど晩飯の時間だ」
それだけ言うと、じいちゃんはさっさと家の中へ入っていく。
じいちゃんの背中越しに、微笑みながら出迎えるばあちゃんの姿が見えた。
可笑しい光景でもないのに笑みがこぼれて、少し心臓の辺りが軽くなる。
( "ゞ)「よし……」
携帯をポケットから取り出して時間を確かめると、午後3時半を過ぎていた。
すでにあの子は帰っていてもおかしくはない。
だけど、一縷の望みに賭けてみるほどの価値はある。
( "ゞ)「さっさとやりますか」
大きく伸びをして、荷台に積まれたゴミの山を睨みつける。
異性に縁がない俺にとって今回は大きなチャンスだ。
そのチャンスを潰そうとする障害は、何であろうとすべて叩き伏せる。
( "ゞ)「今の俺の前に立ちはだかった事……後悔するんだな!」
この山を乗り越えた先には美少女が待っている。
そう思うと、体の内側から力が湧き出てくるような気がした。
〜〜〜〜〜〜