【必勝不敗】能代工業 十九冠目【V58】

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423バスケ大好き名無しさん
僕は思わず、ずっと言えなかった言葉を口にしていた。
そこにみんながいることも忘れて。

彼女は一瞬キョトンとした後、顔を真っ赤にしてパニクっていた。
一通りパニクった後、彼女は急にしおらしくなって、僕の問いかけに頷いてくれた。

嬉しさのあまり、僕は彼女を抱きしめてしまった。
殴られるかと思ったが、その時だけは全く抵抗されなかった。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


(-A`)「むにゃ……んあ?」


なにか美味しそうな匂いがして、ドクオは目を覚ました。
寝ぼけ眼をこすり、大きなあくびをしながら起き上がる。
時刻はまだ5時だった。


('A`)(そうだ。昨夜はブーンの家に泊まったんだ)


だんだんと頭が冴えてきて、昨夜の事を思い出す。
遅くまで仕事をしていたブーンを心配して、クーも残ると言ったのだが、
ドクオが半ば無理矢理家に帰して、その後自分も床についたのだ。


( ^ω^)「お、ドクオ。起こしちゃったかお」

('A`)「ブーン、早いな……って今日は6時から仕事か」

 
( ^ω^)「これ、デレのお弁当だお。渡しておいてくれお」


可愛らしいデザインの弁当箱を指差してブーンはそう言った。
すでに作業服に着替えており、鞄も玄関口に置いてあるので、もう仕事へ行く準備は出来ているようだ。


( ^ω^)「じゃあドクオ、デレの事頼んだお」

('A`)「あ、おい……」


言うが早いか、ブーンは荷物を持ってさっさと部屋を出て行ってしまった。
部屋に一人残されたドクオはポリポリと頭を書きながら部屋のカーテンを捲り、外を見る。
まだ日は昇っておらず、東の空がうっすらと明るくなっている程度だった。

デレはまだ寝ているようで、ドクオも二度寝しようと布団に潜りこんだが、すっかり目が冴えてしまって眠れそうにはなかった。


('A`)「……そういやブーンの奴、朝飯食ったのかなぁ」

 
昨日昼も夜も食べてないのだから相当腹を空かせているはずだ。
そんな状態で朝食を抜くとは考えられないことではあるが。
424バスケ大好き名無しさん:2013/01/08(火) 23:28:37.55 ID:???
('A`)(でも、ブーンは昨日から様子がおかしかったしな……)


昨夜、布団に入ってすぐに眠ってしまったあたり、かなり疲れていたのだろう。
だがそれでも、昨夜のブーンの行動には違和感があった。
夕飯を食べるようクーが言ったのにブーンはそれを聞かなかった。
遠慮した、と言うより頑なに拒んだような感じで……。


('A`)(何やってんだあいつ。もう自分一人の体じゃねぇんだぞ……)


ドクオはふと、ブーンの父親の事を思い出した。
父一人子一人……今のブーンと同じような環境で生きていた人のことを。

何度か顔を合わせたことはあった。
痩せこけていたが、いつも明るい笑顔を浮かべていた。

……そして、疲れのせいか倒れてくる機材に気づかずそのまま下敷きになり、死んでしまった。

ブーンの父の葬儀には、もちろんドクオも参加した。
その時のブーンの顔をドクオは今も覚えている。



( ^ω^)



ブーンは笑っていた。
父の遺影を見つめて。

いつものような明るさや暖かさのない、壊れたピエロのような笑顔。
……今のブーンの笑顔。

ドクオは、ブーンに声をかけることが出来なかった。
クーも同様だ。
なんと声をかければいいかわからないという面もあったが、単純に声をかけることが憚られるような気がした。

ツンもその日は一言も喋ることはなかった。
それでも、彼女はずっとブーンの隣にいた。
みんなが解散しても、その場に留まるブーンにずっと付いてやっていた。

……ツンだけが、傷ついたブーンの心を癒すことが出来たのだろう。

 
('A`)(ツンは……いつもブーンの心の支えだったんだな)


布団から起きあがると、ドクオはツンの写真の前に立った。
そして写真の中の彼女に語りかける。


('A`)「なぁツン。やっぱり、今のブーンを助けられるのはお前だけなのかな」


当然、返事はない。
何故、彼女は死んでしまったのだろう。
もし彼女が生きていたら……。
425バスケ大好き名無しさん:2013/01/08(火) 23:33:10.01 ID:???
('A`)「……ごめんな。情けない友達でよ」

('A`)「っと……。こんな事言ってたらお前に殴られちまうな」


死んでしまった者は、もう帰って来ない。
……生きている者でどうにかするしかないのだ。

 
('A`)(……でも、俺は何もできちゃいない。……何も出来ない)

('A`)(中学までの俺と同じ……。ブーンがいなきゃ何も出来なかった)

('A`)(俺は……一人じゃ何も出来ないのか)

窓の外に雀が一羽舞い降りてくる。
チチチ、と小さくさえずると、すぐに飛んでいってしまった。

時計の針は中々進まない。
ここまでの時間はあっという間に過ぎて行ったのに。

デレが起きてくるまで、こんな情けない気分でいなきゃならないなんて。
そう考えると、自然ため息がこぼれた。


('A`)(デレはまだ寝てるよな……)


隣の部屋を確認しようと、戸に手をかけた時だった。
ドクオが手に力を込めるより早く、戸が勝手に開いた。

 
(;'A`)「おわっ!?」

゚。ζ(ぅー`*ζ「んー……?」


開いた戸の先ではデレが寝ぼけ眼を擦りながら立っていた。
二本足で立ってはいるが、ちゃんと起きているかは怪しい。


(;'A`)「デレ……?どうした、まだ起きるには早いぞ?」

゚。ζ(´ー`*ζ「……おしっこ」

(;'A`)「え?あ、ああ何だ。トイレか……って待て待て!そっちはベランダだ!トイレはこっちだろが!」

゚。ζ(´ー`*ζ「むー……?」

(;'A`)「ほらほら、こっちこっち」

゚。ζ(´д`*ζ「ふひゃー……」

 
寝ぼけるデレをなんとかトイレまで連れて行って、ドクオはまたため息をついた。
……だが、何故か先ほどよりも気分は晴れていた。


(;'A`)「まったく……。こういう所は歳相応だな」