5分と立たないうちに規則的な寝息が聞こえ始め、クーとドクオは一度顔を見合わせて小さくため息をつく。
('A`)「明日も仕事なのに飯も食わずに寝やかって……。何考えてんだ、あいつは」
川 ゚ -゚)「……あいつ、昼はちゃんと食べたのだろうか」
('A`)「いくらなんでもそれは……」
ドクオは途中で口を噤み、ブーンの鞄に目をやる。
ボロボロで、傷や汚れが目立っているが、まだ鞄としての役目は果たしているようだ。
('A`)「あいつ、確か弁当持ってってるよな」
川 ゚ -゚)「ああ。デレちゃんの分と一緒に自分のも作っていたはずだ」
ドクオはブーンの鞄を開け、弁当袋らしき物を引っ張り出そうとした。
が、鞄から取り出す前に動きが止まる。
そのまま弁当袋を鞄に戻し、先ほどよりも大きなため息をついた。
('A`)「……弁当、重かったぜ」
川 ゚ -゚)「……今から起こして、無理にでも食べさせるべきだろうか」
('A`)「……いや、あいつ、相当疲れてたからな。ちょっとやそっとじゃ起きないだろう」
('A`)「……今は、休ませてやろう」
川 ゚ -゚)「……そうか」
再び部屋を訪れた静寂。
聞こえるのは時計の音と、二人分の寝息だけ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
クラスメート達が次々と進学先を決めていく中、僕は1人色んな企業を東奔西走していた。
そして、町外れの小さな工場に勤めることができるようになった。
給料は安いが、それでも十分生活を賄えるだけの額はあった。
みんなには散々祝福された。
僕も辛く苦しい時期を乗り切ることができ、やっと肩の荷が降りた心地だった。
一方のみんなも、無事志望校に合格できたようだった。
ドクオは近所の、クーは隣の県の、彼女は県内だがここから少し距離のある大学に行くことになった。
みんなの合格を喜ぶ反面、バラバラになってしまうことを悲しむ気持ちもあった。
ドクオはいいが、クーと会う機会は激減するだろう。
そして、小さな頃からいつも一緒にいた彼女とも……。
離れるのは嫌だった。
つなぎ止めておきたかった。