きっとみんなは、僕を心配してくれていたのだろう。
父親を亡くしたショックはその時には大分薄れていたけど、みんなの気持ちは嬉しかった。
高校生活は大変だった。
バイトと学業を両立させるのは本当に骨が折れた。
そんな僕に、彼女はお弁当を作って来てくれた。
「べ、別に深い意味なんてないから。あんたが忙しいだろうから作ってあげたんだから感謝しなさいよ!」
真っ赤になりながら早口でまくし立て、弁当箱を押しつけてきたことはよく覚えている。
それからしばらくはクーとドクオにからかわれ続けた。
彼女はその度に真っ赤になって二人を追い立てたり、時には僕を叩いたりなんかした。
それでも、みんなと一緒にいる時間は、忙しい日々の中で唯一心が休まる時間だった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
(-A`)「……ん?」
(;'A`)「やべ……。寝てた……」
ドクオが目を覚ました頃には、外は薄暗くなっていた。
時計を確認して、すぐにデレの方に目を向ける。
デレはまだ眠っていた。
('A`)(そろそろ夕飯か……。どうしよう、俺料理作れないし……。コンビニでいいかな)
ζ(-、-*ζ「くー……くー……」
('A`)(……とは言ったものの。デレを一人にするのはなぁ)
デレはこの歳にしてはしっかりしている。
ドクオがどこかに行ったとしても取り乱したり、危険なことをすることはないはずだ。
しかしブーンから任された手前、デレを放置して買い物に行くのは気が引ける。
『ピンポーン』
ドクオが悩んでいると、チャイムが鳴った。
もうブーンが帰って来たのか、ドアを開けるとよく見知った顔が見えた。
川 ゚ -゚)「む。ドクオか」
('A`)「なんだクーか……。ブーンが帰ってきたのかと思った」
川 ゚ -゚)「ブーンはまだか……」
クーは小さくため息をついて、玄関から部屋の中を覗き込んだ。
その手にはスーパーのレジ袋が握られている。
川 ゚ -゚)「デレちゃんは?」
('A`)「部屋で寝てるよ」
ζ(ぅー`*ζ「……おとーさん?」
物音で起こしてしまったか、デレが寝ぼけ眼を擦りながら玄関にやってきた。
まだ頭がちゃんと起きてないのか、ドクオをブーンと勘違いしているらしい。
川 ゚ -゚)「すまん。起こしてしまったか……。それと、ブーンは……」
ζ(´ー`*ζ「…………おかあさん?」
川; ゚ -゚)
(;'A`)
空気が固まった。
気まずさと、どう返答するかの困惑が混じり、2人の背中を冷や汗が伝う。
しかし、デレは母親の顔を知らないはずだ。
一体何を思って「おかあさん」と言ったのだろうか。
ζ(゚ー゚*ζ「……あれ?クーせんせー?」
ようやく覚醒したか、玄関にいた2人をデレが認識した。
先ほど自分が何を呟いたかは覚えていないようで、2人はホッと胸を撫で下ろした。
だが、そもそも何故自分たちはこんなに緊張しなくてはならないのか。
そんな疑問が2人の頭に浮かぶ。
ツンが死んでからもう5年経つのだ。
積極的に話題に出すことはなくとも、ツンの話をすることに抵抗はほとんど無い。
それでも、この父娘の間に彼女の話を持ち込むのはタブーのように思えた。
ζ(゚ー゚*ζ「せんせーどうしたの?」
川 ゚ -゚)「ああ、いや。この男が悪いことをしてないか心配になってな」
('A`)「そんなことしねぇよ……なんで信用がないんだ、俺は」
川 ゚ -゚)「顔が悪い」
(;'A`)「余計なお世話だ!」