【必勝不敗】能代工業 十九冠目【V58】

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401バスケ大好き名無しさん
ζ(^ー^*ζ「えへへ……、ごめんなさーい」

 
先ほどの不審な様子はどこへやら、ドクオは優しい笑みをたたえてデレの頭を撫でる。
その笑顔は純粋で、どこにもやましいものは感じられなかった。

そしてその笑顔は、ブーンの笑顔とはどこか違った雰囲気をデレに感じさせた。


川 ゚ -゚)「怪しい男がいると聞いてきたが……お前か」

('A`)「ああ、クーか。デレを頼むとブーンに言われてな」

川 ゚ -゚)「それはこちらも把握している。不本意だが頼むぞ」

('A`)「おい、不本意ってなんだ」


ζ(゚ー゚*ζ「ドクオおじさん、おうちかえろ?」

('A`)「あ、ああ。そうだな。……じゃあな、クー」


川 ゚ -゚)「ああ」

 
まだ太陽が高い位置にあるままに帰宅することは、デレにとって久しぶりのことだった。
ドクオの手をしっかり握り、しきりに彼に話しかける。
ドクオもその都度笑顔で応答していた。


ζ(゚ー゚*ζ「ねぇドクオおじさん。おとーさんはどうしてこれなかったの?」

('A`)「あぁ、仕事でトラブルがあったみたいだ」

ζ(゚、゚*ζ「とらぶる?」

('A`)「なんでも、仕事で使う機械が壊れたりしたらしい」

ζ(゚ー゚*ζ「ふーん。おとーさんもたいへんだね」

('A`)「……」


ドクオは「大変なのは君の方だ」と言おうとして、やめた。
今言っても意味がない。
デレには理解できないことだろうし、それは彼に伝えるべき言葉なのだ。

 
ζ(゚ー゚*ζ「おうちかえったらなにしてあそぶー?」

('A`)「おー、何でもいいぞ。俺は遊び相手になるくらいしかできないから」

ζ(゚ー゚*ζ「じゃーねー!うーんとねー……」


あごに手を当てて何をするかを一生懸命考えるデレの姿は、年相応の子供らしい物だ。
楽しそうにニコニコ笑って、あーでもない、こーでもないと考えを巡らせている。
402バスケ大好き名無しさん:2013/01/08(火) 22:34:25.58 ID:???
デレの母、ツンはあまり笑わない人だった。
……いや、笑った顔を人に見せないと言った方が正しいか。


('A`)(でも……よく似ている)


ドクオはツンの幼少の頃の姿を知らない。
だがそれでも、デレはツンによく似ている。
そう思ったのだった。


('A`)(似ているから……か)


小さく呟いた言葉は青空へゆっくりと溶け込んでいく。
まだまだ日は高い。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


それは、中三の夏のことだ。
その日は良く晴れていて、学校が終わったらみんなでどこかに遊びに行かないかと話をしていたところだった。

突然、担任に呼び出されて、僕はそのまま車に乗せられた。
車の中で担任から聞いた言葉についてはよく覚えていない。
あまりに突然の事だったので思考がついて行かなかったのだろう。

辿り着いたのは市内の病院だった。
そこから少し歩いて、僕が通されたのは薄暗い、嫌な空気の場所だった。


父が死んだ。


仕事場で機材に押し潰され、搬送先の病院で息を引き取ったらしい。
連日の仕事で疲れが溜まり、それが事故に繋がったとか。

まだ若い僕に、父親の死を通達した医者はどんな顔をしていただろうか。
自分の教え子が父親の遺体と対面している間、担任はどんな顔をしていただろうか。

その時僕は、どんな顔をしていただろうか。
父との別れ際、ちゃんと笑えていた自信はない。

 
翌日、父の葬儀が行われた。
と言っても、お金も無かったし、他に親族もいなかったから小さな葬儀だった。

そんな葬儀だったがみんなも来てくれた。
みんな父とは一応面識があったからだろう。
特に彼女は、ずっと小さい頃から父と顔を会わせている。

その時のみんなの顔を、僕は覚えていない。

父との最期のお別れが済んで、数少ない参列者が去っていく。
途中、「頑張れよ」とか「何かあったらいつでも相談に来い」と父の仕事仲間に言われた。