【必勝不敗】能代工業 十九冠目【V58】

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395バスケ大好き名無しさん
ξ(ФωФξ「クー先生。デレちゃんのお父さんからお電話ですわ」

川 ゚ -゚)「ん、わかった」

 
川 ゚ -゚)「もしもし、私だ」

『あ、クーかお。今晩デレを頼めるかお?』

川 ゚ -゚)「どうしたんだ、突然」


『実は機械のメンテしてたら欠陥が見つかって……。
パーツが届くのは5時以降って話だし、そこから修理してたらどれだけ時間がかかるかわからないんだお』

川 ゚ -゚)「その修理はどうしても今日しなくちゃならないのか?」

『明日現場で使うんだお。修理の代わりを他の人に頼もうにも、みんながみんな自分のことで手一杯だから……』


川 ゚ -゚)「……むう。それは困ったな」

『ダメかお?』

川 ゚ -゚)「今晩は私も外せない用事があるんだ。一応園長にも掛け合ってはみるが……まぁ無理だと思ってくれ」

 
『そうかお……。ありがとうお。仕方ないからドクオにでも頼んでみるお』

川 ゚ -゚)「ああ、わかった。……すまないな」


『こちらこそ仕事中にごめんお。じゃあ、バイバイお』


通話が切れ、ツー、ツーと電子音が一定の間隔で流れ続ける。
それなのにクーは受話器を持ったまま動かなかった。


川 ゚ -゚)(……今日も遅くまで仕事か。あいつはちゃんと休んでるのだろうか)


クーは中学の頃、今のデレとそっくりな家庭を見ていた。
産まれた時に母親を亡くし、父一人子一人で、生きてきた親子を。
それでも幸せそうに生きてきた親子を。

その人の父は、明るい人だった。
クー達が突然家に押しかけても笑顔で迎えてくれた。
痩せこけていて、笑った顔が素敵な父親だった。


川 ゚ -゚)(とりあえずデレちゃんには言っておかねばな……)

 
ζ(゚ー゚*ζ「いーとーまきまきいーとーまきまき」

从'ー'从「ひーてひーてとんとんとん」
396バスケ大好き名無しさん:2013/01/08(火) 21:44:55.69 ID:???
川 ゚ -゚)「デレちゃん、ちょっといいか?」

ζ(゚、゚*ζ「どーしたの?せんせー」


川 ゚ -゚)「ブーンだが……今日は迎えにこれないらしい」

ζ(゚、゚*ζ「えー」


川 ゚ -゚)「本当なら私が一緒にいてやりたいのだが……生憎仕事がな」

ζ(゚、゚*ζ「ひとりでおるすばん?」


川 ゚ -゚)「いや、ドクオが来るには来るみたいだ」

ζ(゚ー゚*ζ「ドクオおじさん!

 
少し沈み気味だったデレの顔がパァと明るくなった。
一方のクーはこめかみを抑えてため息をついている。


ζ(゚ー゚*ζ「ドクオおじさんいっぱいあそんでくれるからすきだよ!」

川 ゚ -゚)「む……まぁ、デレちゃんがいいならあまり口出しはしたくないが……」


ζ(゚ー゚*ζ「?」


川 ゚ -゚)「……まぁ、あまりドクオと仲良くしないことだ」

ζ(゚、゚*ζ「なんで?」


川 ゚ -゚)「あー……それはだな……。デレちゃんがドクオと仲良くしてたらブーンがデレちゃんを取られたと思うだろ?」

ζ(゚ー゚*ζ「じゃあおとーさんといっしょにドクオおじさんとなかよくする!」

川 ゚ -゚)「……まぁそういうことでいいか。とにかく、ドクオと二人きりの時はあまりドクオと仲良くしないことだ」

ζ(゚ー゚*ζ「はーい」

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


二年生になっても、相変わらず僕は人気者になれた。
ある日、誰の輪にも入らずにいつも一人でいる男を見つけた。
そういうのがほっとけない性分だった僕は、彼に積極的に話しかけた。

でも言葉は返ってこない。
時おり「うぜぇ……」といったボヤキが聞こえてくる程度だった。
397バスケ大好き名無しさん:2013/01/08(火) 21:46:15.97 ID:???
周りのみんなは彼が嫌いなようだった。
彼も周りのみんなが嫌いなようだった。
だから、みんなは僕に彼に構うのはやめろと言ってきた。

彼がいじめに遭うのも時間の問題だった。
彼は泣かなかった、けれど笑いもしなかった。

僕は彼がかわいそうに思えた。
いじめられてるからじゃない、笑わないからだ。

そう思った日から僕はできるだけ彼と一緒にいるようにした。
鬱陶しがられても関係なかった。

ある日彼は「どうしてお前なんかが俺に構うんだ」と聞いてきた。
僕は君の笑った顔が見てみたいからだと答えた。
彼は一瞬キョトンとしていたが、やがて小さく笑って「そんなクサい台詞、男に言うもんじゃないだろ」と言った。
口調は相変わらずだったが、初めて彼の笑った顔が見れたので満足だった。

友達は少し減ってしまったが、代わりに大切な友達が出来た瞬間だった。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

園児達が母親に連れられて家路に向かっていく。
男は、その様子をぼんやりと眺めていた。
時折門から園内の様子を覗いては、そそくさと路端に戻り、降園中の園児達へと視線を送る。


(*゚ー゚)「ねぇ、ママ。あそこにヘンなひとがいるよ?」

イ从;゚ ー゚ノi「こら!指ささないの!」


(;'A`)「…………」

ボサボサの髪に、中途半端に伸びた髭。
服はヨレヨレで、痩せこけた体躯に合っていない。
明らかに不審なその男を横目に、母親達は早足でそこを通り過ぎていく。

男も自分がどのように思われているのか気づいているらしく、くたびれた顔をさらにくたびれさせてため息をついた。

 
「ドクオおじさーん!!」


('A`)「あ……」


そんな男のもとへ元気よく駆けてくる少女が1人。
暗く、沈み気味だった男の顔が一気に明るくなっていく。


ζ(>ー<*ζ「だーいぶ!!」


(;'A`)「おわっと!?」

デレはタックルをするかのような勢いのままに男……鬱田ドクオの胸に飛び込んだ。
ドクオは少しバランスを崩しながらも、しっかりとデレを受け止めた。

('A`)「おいおい。危ないじゃないか」