('、`*川「暗っ」
ボゥ
('、`*川「提灯…?」
( ∵)
Σ('、`;川
( ∵)「ようこそいらっしゃいました」
('、`;川「…係員さん?」
( ∵)「はい。『和の庭』の係員、ビコーズと申します」
('、`*川「ああ…『和』だから提灯…」
( ∵)「どうぞ中へ」
('、`*川「うわー…畳なんて何年振りかしら」
( ∵)「如何でしょう?」
('、`*川「癒されるわ」
( ∵)「何よりです。どうぞお座りください」
('、`*川「(正座のほうがいいわよね)」
( ∵)「楽にしてくださって構いませんよ」
('、`;川「あ、はい」
('、`;川「(何故読まれた…)」
('、`*川「これはご丁寧に…」
( ∵) シャカシャカシャカシャカ
('、`*川「本格的ね」
( ∵)「これぐらいしか出来ないものですから。お茶菓子もどうぞ」
('、`*川「…マナーとか、わからないのだけど」
( ∵)「興味がおありなら、お教えしますが」
('、`*川「…止めとくわ。この先お茶を嗜む気はないし」
( ∵)「皆さんそう言われます」
~旦('、`*川 ズズ…
('、`*川
('、`*川「美味しい」
( ∵)「ありがとうございます」
('〜`*川 モグモグ
('、`*川「…はぁー。こんなに美味しいなら、茶道も悪くないかも」
( ∵)「それでは、人心地ついたようですし…参りましょうか」
('、`*川「え?どこに?」
( ∵)「ここは『和の庭』ですから」
('、`*川「なんとまぁ」
( ∵)「少々季節感がないのが困り物ですが」
('、`*川「…綺麗な庭ね」
( ∵)「ええ。我ながら、そう思います」
('、`*川「…あら」
('、`*川「あのあたりの雑草は抜かないの?」
( ∵)「雑草ではありません。あれはオオバコです」
('、`*川「名前あったんだ…」
( ∵)「ええ」
('、`*川「どうして?雑草なのに」
('、`*川「他の花が育つのに、邪魔じゃないの?」
( ∵)「邪魔になることも、ないわけではありませんね」
('、`*川「じゃあどうして?」
( ∵)「彼らには彼らの美があるからです」
('、`*川
( ∵)「私は美しく咲く花も好きですが、たくましく育つ彼らのような草も好きなのです」
( ∵)「彼らの生き様は、大輪の花には決して真似できるものではありません」
( ∵)「大きな花、綺麗な花…それはもちろん、素晴らしいことです」
( ∵)「ですが、道端に咲いている小さな花や、どれだけ踏まれても尚そこに根を張りつづける草も」
( ∵)「同じだけ素晴らしいと私は思うのです」
('、`*川「…でも、やっぱり」
('、`*川「憧れはあるんじゃないかしら」
('、`*川「大きな花を咲かせたい、綺麗な花を咲かせたい」
('、`*川「…そんな憧れは」
( ∵)「自分の生まれを選ぶことはできませんから…草木も、人間も」
( ∵)「それを嘆くことは簡単でしょう」
( ∵)「しかし、嘆く前にやれることもあるのではありませんか?」
( ∵)「歌になるほど月並みな台詞ですが」
( ∵)「人は皆、世界に一つだけの花です」
( ∵)「あなたにしか咲かせられない花もあるのではないでしょうか」
('、`*川「私が咲かせる花は、他の人も咲かせる花かもしれないじゃない」
( ∵)「それはわかりません」
( ∵)「咲いてみなければね」
( ∵)「だから、咲く前から諦めるのは…どうか、止めてください」
( ∵)「咲くことを諦めてしまった花を見るのが、一番悲しいですから」
('、`*川「…じゃあ、私を見てたら悲しくなるかもね」
( ∵)「いえ」
( ∵)「あなたは諦めていないじゃないですか」
( ∵)「そう見えるからです」
( ∵)「これでも人を見る目には自信があるつもりですが」
( ∵)「間違っていましたか?」
('、`*川
('、`*川「ここに来る前だったら、間違ってたわ」
('、`*川「今は…間違ってるとは言いがたいわね」
( ∵)「それは良かった」
('、`*川「自分が咲かせられる花を咲かせればいいわけか」
( ∵)「私はそう思います」
('、`*川「…お茶、貰っていい?」
( ∵)「どうぞ」
('、`*川「ありがとう」
~旦('、`*川 ズズ…
('、`*川「…ふぅ」
('、`*川「ありがとう」
( ∵)「お気になさらず」
('、`*川「美味いお茶も飲んだし、お菓子も食べたし、綺麗な花も見たし」
('、`*川「おまけに一歩前進できたし」
('、`*川「そろそろお暇するわ」
( ∵)「ええ、わかりました」
( ∵)「また来てください…と言いたいところですが」
( ∵)「できれば、戻ってこないでくださいね」
('、`*川「ん」
('、`*川「これからはできるだけ、立ち止まらないようにするわ」
( ∵)「だからといって、気を張りすぎないでくださいね」
('、`*川「同じドジは踏まないわよ。背伸びは自分の少し上までにしておくから」
( ∵)「そうしてください」
ガラガラ
('、`*川「じゃ、これで」
( ∵)「はい。さようなら」
バタン
('、`*川「何よ」
( ^ω^)「僕もお茶菓子食べたいお」
('、`*川「知るか、中で食べさせてもらえ」
( ^ω^)「それはできんお」
( ^ω^)「あんたを出口に送り届ける仕事が残ってんだお」
('、`*川「マスコットも大変ね」
( ^ω^)「大変なんだお」
('、`*川「いや」
('、`*川「派手になるのは合わないから」
( ^ω^)「んじゃどうやって見返すんだお?」
('、`*川「私なりに咲いてやろうと思う」
('、`*川「あの時の私はまだ双葉だったのだと」
('、`*川「フルパワーではなかったのだと」
('、`*川「思い知らせてやるわ」
( ^ω^)「なんでバトル物みたいになってんだお…」
( ^ω^)「何度も出てくる中ボスみたいな心がけされても」
('、`*川「うっせ」
( ^ω^)「ま、来た時よりはやる気出てるみたいだおね」
('、`*川
('、`*川「まぁ、ね」
( ^ω^)「なら文句はないお」
( ^ω^)「中ボスみたいだけど」
('、`*川「中ボス言うなや」
( ^ω^)「ここを真っ直ぐ行けば元の世界だお」
('、`*川「そこも曖昧なのね…」
( ^ω^)「戻れりゃいいんだお、戻れりゃ」
('、`*川「それには同感」
( ^ω^)「気張って咲いてくるといいお」
('、`*川「言われなくてもそうするわ。じゃ」
( ^ω^)「もう二度と来んなおー」
( ^ω^)ノシ
( ^ω^)「ここを真っ直ぐ行けば元の世界だお」
('、`*川「そこも曖昧なのね…」
( ^ω^)「戻れりゃいいんだお、戻れりゃ」
('、`*川「それには同感」
( ^ω^)「気張って咲いてくるといいお」
('、`*川「言われなくてもそうするわ。じゃ」
( ^ω^)「もう二度と来んなおー」
( ^ω^)ノシ
( ^ω^)「確かに『地味』は酷いけど」
( ^ω^)
( ^ω^)「閉めるかぁ…って言うと」
「……」
( ^ω^)「大体人が来るんだおね」
( ^ω^)「…んじゃまた、話を聞かせてもらうかお」
( ^ω^)
( ^ω^)「ブンダーランドへようこそ」
( ^ω^)ブンダーランドのようです 番外編 ('A`)
('A`)
一体これはどういう状況なのでしょうか。
いや、私より皆さんの方がきっと状況を理解できていませんね。失礼しました。
では、状況を少しだけ説明させていただきます。
私の周囲には、どこか懐かしさを覚える建物達が所狭しと並んでいます。
自分の記憶を辿ってみて…それが昔遊園地で見たような建物なのだと気付きました。
つまりきっと、ここは遊園地。
( ^ω^)「んー…なるほど、なるほど」
目の前にいる少々太った着ぐるみも、懐かしさに拍車をかけます。
恐らく、彼はここのマスコットか何かなのでしょう。
('A`)「あの…私は何でここに…」
( ^ω^)「ま、それは追々。とりあえずこれだけ言わせてくれお」
軽い咳払いをすると、着ぐるみは先ほどより幾分か明るい口調でこう言いました。
( ^ω^)「ブンダーランドへようこそ」
しかし、そんな名前の遊園地は聞いたことがありません。
これだけ大きな遊園地なら、名前ぐらいは聞いたことがあっても良さそうなものなのですが。
( ^ω^)「立てるかお?」
何がなにやらわからずへたり込んでいる私に、着ぐるみが手を差し伸べてくれました。
その手を借りてようやく私は立ち上がります。
('A`)「ありがとうございます…えっと」
お礼を言おうとして、彼の名前を聞いていないことを思い出します。
( ^ω^)「名前?呼びたいように呼べばいいお。悪口でなければ」
('A`)「はぁ…わかりました。私は」
( ^ω^)「鬱田ドクオ」
…何故、私の名前を知っているのでしょうか。
もしかして中に入っているのは私の知り合いなのでしょうか。
彼の手に握られていたのは、一枚の紙。
('A`)「それは?」
( ^ω^)「履歴書みたいなもんだお。さ、着いてくるお」
その履歴書をポケットに突っ込み、着ぐるみの彼は歩き出しました。
私も後に続きます。
('A`)「どこへ行くんですか?」
( ^ω^)「面接会場だお」
…訳がわかりません。面接を受けに来た覚えはないのですが。
何が何だか結局わからないまま、彼は一つの建物の前で止まりました。
周囲のレトロな建物とは明らかに造りが違う建物です。
着ぐるみの彼は、懐から鍵束を取り出し、その中の一つをドアノブに差し込みました。
鉄製の扉が開く無骨な音が、無音の周囲に響き渡ります。
( ^ω^)「どうぞ」
壁と床、天井には何の装飾もありません。
あるのは、椅子が二つと長机が一つきり。まさに『面接会場』といった様相でした。
( ^ω^)「座ってほしいお」
そう言いながら彼が机側の椅子に座るのを見て、私は空いているほうの椅子に座りました。
随分久しぶりに座った気がするのは何故でしょう。
着ぐるみの彼は、再びあの履歴書を取り出しました。
( ^ω^)「まずは…ここに書いてあることが正しいかどうか、確認させてもらうお」
('A`)「どうぞ」
( ^ω^)「鬱田ドクオ、32歳。某中小企業のサラリーマン」
('A`)「ええ、その通りです」
それ以降も訥々と語られる私の情報に偽りはありませんでした。
( ^ω^)「…おっけー、確認は終了だお」
('A`)「そうですか」
如何せん着ぐるみなので、上辺の笑顔以外の表情を窺い知ることは出来ません。
ですが、私はその笑顔がほんの少し引き締まったように感じました。
( ^ω^)「それじゃ、本題に入らせてもらうお」
( ^ω^)「さっきも言った通り、これは面接試験だお」
( ^ω^)「あんたがここで働ける人間かどうかを試験する、ね」
('A`)「…何が何やら」
素直に思ったことを口に出しました。
一体全体、何がどうなって私はこんなところで面接を受けているのでしょうか。
そろそろ教えてもらってもいい頃だと思うのですが。
( ^ω^)「とりあえず、うちの説明だけさせてもらうお」
私の脳内抗議も虚しく、『ブンダーランド』の説明が始まりました。