骨壺を掴み、振り上げた。
渾身の力を込めて、壺ごと海に放り投げる。
空中で骨の粉が飛び散り、風に舞って海に消えていった。
( ・∀・)「魚が好きだっただろう。生まれ変わるなら、魚になるといい」
好きといっても、刺身が好きというのなら、少し違うかとも思った。
岩礁から腰を上げたとき、下半身がすっかり海水で濡れていた。
手で絞ると、足下に海水がぼたぼたと落ちた。
一際大きい波が岩礁に乗り上げた。
突然の出来事であったが、割れる水の壁を冷静に眺めていた。
目はいいのだ。
刀を抜き、振り上げるまで、躊躇や迷いはなかった。
縦に割れた波は、モララーを避けるように岩礁を叩いた。
積み上げてきたものは無くなったが、かえって剣が軽くなったように感じる。
( ・∀・)「薬屋の、ドクオか」
波の音に掻き消されそうなほど、それは小さな呟きだった。
十五輪「海」 終わり
ドクオは店に入ってきた者に挨拶をしたが、その者は棚に並んだ薬には目も暮れず、
真っ直ぐに店の奥へ進んでいった。
(;'A`)「お客さん?」
男は構わず廊下を進んでいく。
ある部屋で立ち止まると、障子を勢いよく開けた。
部屋の中にいた男が、酒をあおりながら薄く笑った。
( ´_ゝ`)「よく来たな」
着流しをはだけさせ、大きくあぐらをかいて座っていた兄者は、
目線だけで座ることを促した。
( ・∀・)「昼間から、酒か。人斬りに品性が無いというのは同じだな」
( ´_ゝ`)「まあ、否定はせんよ」
モララーは、兄者の正面ではなく、横に置かれた座布団の一つに腰を下ろした。
兄者とは対照的に、座っているときでも姿勢は崩さなかった。
( ・∀・)「座布団がもう一つあるが、誰か来るのか?」
( ´_ゝ`)「さあ? そいつに訊いてくれ」
兄者が顎で指したのは、障子戸の前でもじもじしているドクオだ。
(;'A`)「今日来るかはわかりませんよ。でも声はおかけしたんで」
( ´_ゝ`)「だそうだ」
( ・∀・)「強いのか?」
('A`)「た、たぶん」
軽くドクオを睨むモララーから逃げるように、お茶を出しますとだけ言って
ドクオは部屋から駆けていった。
( ´_ゝ`)「来ないかと思ってた。お坊ちゃんには厳しい相手だからな。五百両が惜しくなったか?」
( ・∀・)「約束だ」
( ´_ゝ`)「何?」
( ・∀・)「約束があるんだ。俺が夜猿を斬ると言った。だから斬る」
( ´_ゝ`)「ふうん」
兄者はモララーの発する、数日前とは異なる剣気に気がついていた。
何が変わったのかはわからないが、一種の覚悟は感じた。
( ´_ゝ`)「夜猿と会ったことはあるか?」
( ・∀・)「ある。剣を構えることすらできず、肩を斬られたが」
( ´_ゝ`)「よく逃げられたな」
モララー逃げられたのは、飴細工のおかげだ。
つーが救ってくれたのだと思うと、いっそう剣気が漲った。
( ・∀・)「俺一人では勝てん。それは、理解できた」
( ´_ゝ`)「俺たちならどうだ?」
( ・∀・)「無理だろうな」
( ´_ゝ`)「俺もそう思う。俺も、夜猿とは一度会った。
あれは人ではない。人を捨てた者だ。まともな太刀では体を素通りするだろうさ」
( ・∀・)「勝てる当てはあるのか?」
( ´_ゝ`)「ドクオが連れてくるもう一人の男次第だな」
兄者が酒を勧めてきたが、モララーは断った。
ちょうどそのとき、廊下を走る音が聞こえ、ドクオが顔を出した。
(;'A`)「来てくれましたよ。例の人」
すぐには返事をせずに、兄者はまた酒をあおる。
( ´_ゝ`)「下らん奴だったら、お前ごと斬り捨てるからな」
(;'A`)「そ、そんなあ。勘弁して下さいよ旦那」