(;゚∀゚)「へ、言っておくけどな。
俺がこんなひょろい奴一人でお前をしとめようとしていたなんて考えるなよ、モララー」
ジョルジュは今なおにやりと口の端を引き上げる。
_
(;゚∀゚)「この校舎の周りの森のなかにはなあ
俺の味方してくれる奴らがたくさんいるんだよ。
まあ全員あいつの繋がりなんだけどな。とにかく、お前らがこんなところで俺を始末したところで
お前らはその怪しげな奴らにつかまって、やられちまうんだぜ」
ジョルジュは叫ぶように言い放ち、モララーを指差した。
モララーは眉を顰め、ジョルジュを見つめる。
口を開いて、思っていることを言ってやろうとしたときだった。
森が叫んだ。
いや、叫び声がはっきりと聞こえてきた。
幻聴でも何でもない。
確かな人間の声である。
その声は一つじゃない。
何人もの声が、そこかしこから聞こえてくる。
誰かが誰かに襲われている、そんな声だ。
( ・∀・)「お前こそ
俺が一人で来るなんて思っていたんじゃないだろうな」
_
(;゚∀゚)「は!?」
モララーはそのジョルジュの驚きようを見て、思わず吹き出してしまった。
よほど予想外だったのだろう、ジョルジュの眼は同様をあらわにしている。
( ・∀・)「てめえがバカにしたおっさんは、確かにバカみたいに暗い奴だが
やることはちゃんとやってくれる良い奴なんだぜ」
_
(;゚∀゚)「おい、おいおいおい
まさか機動隊でも呼んだなんでふざけたこと言うんじゃないだろうな?」
喧しいほどの叫びが三人を包んでいく。
( ・∀・)「んなわけあるか。もっと現実的な話だ。
ちょっとこの前な、お前さんのおばさんの家に厄介になったとき
いろいろと懇意にさせてもらってな、モナーさんの連絡先ももらっておいたんだ」
( ・∀・)「で、きっとお前は俺を殺すためにいろいろ策を練ってくるだろうと思ったから
俺としてもなんとか殺されないように仲間を呼ばなきゃだなって思った。
だから、モナーさんに連絡したんだ」
( ・∀・)「モナーさんは射撃が趣味だという話をたまたま耳にしていてな。
しかもあれだけの見栄っ張りだ。きっと優秀な射撃の選手たちとも交流があったに違いない。
射撃の選手ってのは、自衛隊とか、警察官とか、その筋の人たちがなることが結構ある。
だから、その気になればモナーさんのコネで強力な助っ人を呼べると踏んだ。かなりの賭けだが、うまくいったようだ」
( ・∀・)「ほら、子どもを叱るのは親の役目ってよく言うだろ。
それにあやかったっつーわけだ」
_
(;゚∀゚)「……あれ、親じゃないんだけど」
( ・∀・)「親族なら似たようなもんだろ」
_
(;゚∀゚)「い、いつだ! いつあんなの呼んだんだ」
( ・∀・)「お前らと会う少し前。
ショボンが、機動隊なんてだせないよーなんて言うもんだから、モナーさんの連絡先を教えたんだ」
強い強い風が吹く。
その風から、嫌な雰囲気を感じたのだろう。
ジョルジュは上を見上げ、きょろきょろする。
_
(;゚∀゚)「な……な、な……」
黒いシルエットがはっきり眼に浮かんだようだ。
モララーにとっては、これもまた予想外だったのだが。
いつの間にか接近していたのは、ヘリだった。
(´・ω・`) 到着したヘリから、下りてくる男。
( ・∀・)「うわ、空飛ぶおっさんだ」
(´・ω・`)「くたばれ40代」
( ・∀・)「いつヘリなんて持ったんですか? つかなんでヘリで来たんすか。憧れですか」
(´・ω・`)「ふふ、羨ましいだろ。貸してくれたんだ」
( ・∀・)「……ガチかよ」
モララーとショボンのやりとりが交わされる。
その軽妙な言葉の応酬に、ジョルジュもドクオも面食らったようだ。
( ・∀・)「や、悪いねお二人さん。
特にジョルジュ君は、せっかく張った俺包囲網を崩壊させちゃってもうしわけないね」
(; ∀ )「……ざっけんな」
ジョルジュは声を震わせる。
拳をわなわなさせて、モララーを睨みつける。
_
( #゚∀゚)「ふざけんなよこのやろぉ!!」
ジョルジュの叫び。そしてモララーへと歩んで、拳を振り上げる。
だが、その拳にするどく、黒い物体がぶつかる。
投げたのは、ドクオ。
('A`)「観念しろ。ジョルジュ。
もうお前の望みは終わりだ。次に何か、モララーさんにしようもんなら、俺が黙っちゃいない」
_
( #゚∀゚)「この……腰ぬけの癖にッ」
('A`)「……なんで俺、お前なんかを信じちゃったんだろうな」
ドクオが、自分に呟くように言う。
('A`)「もう終わりなんだよ。ジョルジュ。
始まるべきでもなかったんだ。こんな虚しい弔いなんて」
_
(; ∀ )「わかってるよ」
ジョルジュは、少しずつ力が抜けていったようだった。
しぼんでいく声。
モララーもショボンも、その様子を見守っていた。
_
(; ∀ )「わかってんだよ。そんなこと。
でもよ、やり場のないこの想いを、いったいどうしたらいいって言うんだよ。
俺は……俺は……」
ジョルジュは一度、大きく息を吐いた。
それから、思いっきり歯を噛みしめる。
吐きだしたい気持ちがいっぱいあるのだろう。
恐らく小さい頃から抱え込んだ、とても大きい感情が。
その感情をこめて、ジョルジュは再び、モララーを睨みつけていた。
モララーはまっすぐに、それを睨みかえす。
( ・∀・)「ジョルジュ、頭を冷やしてこい。
お前はまだまだやり直せるんだ。まだ若いしな」
モララーは冷静に言った。
それでもジョルジュは、食い下がらない。
_
( ゚∀゚)「俺の考えは、さっき言った通りだぜ。
変える気なんてない。ブーンに嘘をつく一生を負わせたのはお前だ。
だから俺は、お前を許す気なんてない」
( ∀ )「おい、よく聴けよ、クソガキ」
モララーはずいっとジョルジュの前に立つ。
ジョルジュは一瞬たじろいたが、それでも眼はモララーを睨んだままだ。
_
( ゚∀゚)「なんだよ、説教でも垂れるつもりかよ」
吐き捨てるように言い放つジョルジュ。
モララーは動じない。
やや沈黙があった。
ジョルジュは少しだけ、身を引いた。
モララーは俯き、それからジョルジュの顔を見る。
( ∀ )「俺の考えも変わらねえよ。
てめえはただの独りよがりだ。独善的なだけのあほだ。
そして、そんな考えに縛り付けられて一生を棒に振るのを辛くも逃れられただけの野郎だよ」
( ∀ )「人の気持ちってもんがなあ
そんなに簡単に他人によって代弁することが、できてたまるかってんだ。バカ野郎。
代弁出来ねえ言葉を必死こいて紡ぐために、俺は探偵やってんだ」
眼が潤むのを、モララーは感じた。
アホか、俺は。何泣いてんだ――情けねえな――
そう心に釘を刺し、目を閉じる。歯をかみしめながら。
( ∀ )「連れてけショボン。もう言うことはねえよ、そんな奴」
(´・ω・`)「手錠はないが、大人しくついてきてくれるかな」
ショボンの言葉がジョルジュに届いているはずだが、ジョルジュはあまり反応しない。
ジョルジュが不審そうな顔を向けてきているようだ。
どうやら眼がうるんでいるのを見られたのかもしれない。
それは恥ずかしいが、まあ仕方のないことだ。
自分の心はまだとらわれているのだろう。
モララーは自嘲気味に、自分に言い聞かせた。
(´・ω・`)「おい、のってくか?」
ショボンがモララーに声をかける。
( ∀ )「いいよ、電車くらいあるだろ」
(´・ω・`)「……そうか」
その後、ショボンはドクオを誘った。
ドクオはショボンの乗ってきたヘリに同乗することに決めたようだ。
ジョルジュと、ドクオを先に乗せて、ショボンが少しだけモララーに近づく。
(´・ω・`)「余計なお世話だったら、聞き流してくれ。
お前も、逃れられるといいな」
余計なお世話だよ、おっさん。
283:第六話 ◆GIfZM2iQHE:2012/03/09(金) 00:54:13 ID:VYI7AA360
長岡ジョルジュは逮捕された。
この事件は、終わりを迎える。
あと少し、残されたものを回収すれば。
だけど、このときモララーは気付いていなかった。
自分の心に抱いている違和感が何なのか。
そしてそれは、たとえ気付いていたとしても、どうにもならないことだったのである。
〜〜第七話へ続く〜〜
東京 23時を過ぎたあたり――
(*゚∀゚)「夜中に連絡してくるなんてね」
会社の就業時間はもう終わっており、つーは自宅にいた。
連絡があったのは、21時頃だ。
ジョルジュが逮捕されたことについてとあれば、夜中であろうとも、会わなければならないだろう。
(´・ω・`)「もうわかっているのでしょう?」
つーの自宅の玄関に、ショボンは立っていた。
ジョルジュとドクオを警察署に届け、自らはつーに連絡をした。
息子のジョルジュが逮捕されたことについて、お話をするために。
そして、ショボンはもう確信していた。
(´・ω・`)「あなたが、ジョルジュに加担していた。そうなのでしょう?」
(*゚∀゚)「否定する気にもなれないね。
どうせすぐにばれちゃうさ。あたしがやっていたことは。
だから認めるよ。あたしはジョルジュの犯行に加担した」
つーはやれやれと、肩を竦める。
(*゚∀゚)「もっとも、最初にブーンの恨みを晴らすなんて考えたのはあいつだけどね。
あたしの知らないところで、ツンの息子と出会い、勝手にことを進めていた。
あたしがジョルジュのやろうとしていることをはっきりと知ったのは、つい昨日のことだよ」
(´・ω・`)「モララー殺害の為に警備員を使わせるまで、知らなかったのですか」
(*゚∀゚)「どうやら、勝手にあたしの名前を使って、そっちの世界の人たちと連絡を交わしていたみたいだよ。
あたしはあいつがモララーを殺そうとするなんてことはまったく知らなかったね」
(´・ω・`)「ずいぶん自由に育てていたんですね」
(*゚∀゚)「うちは放任主義だからね。
息子を縛り付ける気なんてさらさらない」
ショボンは「なるほど」と、顔を俯かせる。
そのまま話を進めることにした。
(´・ω・`)「ツンの住んでいるアパートが爆破されていたことはもう調査でわかりました。
さて、教えていただけますか。
我々が立ち退いた後で、あそこを爆破した理由を」
(*゚∀゚)「そうだね。長話をするとしようか」
つーは一息ついて、目を細める。
笑顔というには、あまりにも遠くを見過ぎた眼。
ショボンのずっと後ろを見ているかのような表情だった。
(*゚∀゚)「放任主義とは言ったが、あいつがブーンのために何かしようとしていることは知っていた。
あいつは勝手にあたしの友人と連絡を取って作戦を立てていたんだ。
その気になれば、あたしには簡単にあいつのやろうとしていることがわかったよ」
(*゚∀゚)「あいつがアパートに赴くことは知っていた。
なんでそこに行ったのかはその時は知らなかったがね。
あたしはそれを利用させてもらった」
(*゚∀゚)「あんたたちはどう思ったか知らないが、あの爆発は、本来誰も傷つけるつもりはなかった。
あたしは、警告のつもりだったんだよ。
ツンへのつもりもあったが、本当はジョルジュへの警告だったんだ。あいつに見える形で爆破させたかった。
それが思った以上に威力が大きくなってしまった。細かいところは専門家にまかせっきりだったから、こんなことになったのかもね」
(´・ω・`)「ジョルジュへの……ですか」
(*゚∀゚)「そう、あいつが誰かを殺そうとしているのはわかっていた。
だから殺す前に、何かしら示してやりたかったんだ。
それであいつにどんな変化が生じるかを見たかった」
(*゚∀゚)「その日の夜。
あたしはあいつから話を正式にきいた。
あいつがモララーの命を狙っていることを」
(*゚∀゚)「あのアパートに行った理由は、ツンのことを調べたかったそうだよ。
ツンの息子とは連絡が取れて、取り入ることができたが、ツンの話はまだ聞いていない。
だから少しでもブーンの話をして、昔のことをどう思っているのか探りたかったらしい」
(*゚∀゚)「ブーンの話をあたしから聞いていたから、ツンにもブーンの行動の非があることは知っていたんだ。
だけどあんまり話を聞けなかったから、保留って言ってたね。今は話せないし、なんて言ってた。
それから、今はモララーを殺すことに専念する、なんて言い出したんだよ」
(*゚∀゚)「そこであたしはジョルジュに少しだけ待ったを掛けた。
モララーの話もきいてみたらどうだ。あいつにもツンと同じことをするべきじゃないかってね。
あいつは渋々あたしの考えを飲んだ。それで今日、モララーを呼び出して何かやったのだろう」
(´・ω・`)「……失礼ですが
何故あなたはジョルジュの犯行を止めなかったのですか。
それだけ多くの話をしたというからには、時間はあったのでしょう」
(´・ω・`)「それなのにどうして、ジョルジュの犯行を止めもせず、あろうことか援助したのですか」
(*゚∀゚)「親らしくない、ってあんたは思っているんだろうね」
(´・ω・`)「……平たく言えば」
(*゚∀゚)「あんたは、子持ちかい?」
(´・ω・`)「今は、離れて暮らしています」
(*゚∀゚)「そうかい。悪いことを聞いたね」
一息つく、つー。
また遠い目をしている。
それは愛おしそうな顔だ。ショボンにはようやくわかった。
親の顔だ――ショボンはそんな感想を抱く。自分にはできなかった顔。
(*゚∀゚)「……あたしは、子どもを束縛するのが嫌いなんだ。
だからジョルジュがやりたいって思っていることを通してあげたくなった。
実際モララーのことを憎く思っていた面もあった。そこしか怒りのやり場が無かったから。
心のどこかで、ジョルジュを応援してしまっていた、ただのとてつもない親ばかさ」
つーはショボンに近づいた。
ほほ笑んでいる、今度のその顔は、もう何もかも諦めた顔。
(*゚∀゚)「さあ刑事さん、もうあたしを逮捕してくれよ。
あたしももうおかしかったんだ。あたしも、ジョルジュも、感情がおかしなことになっちまった」
(´・ω・`)「私はもう警部ですよ。
それに、今日は休みです。交番まで行きましょう」
そう言って、ショボンはつーを連れ出した。
もう夜中、雲は出ているが、星がちらほら見える。
その淡い光の下、ショボンは車を操り、つーは助手席に座って、交番へと向かっていた。
(´・ω・`)「結局あなたは、足を洗わなかったのですね」
(*゚∀゚)「洗いきれなかった。正直に言うとそうなるね。
ま、立場が違うよ。前はやられる側、今はやれる側だ。
金があるがどうかで、人間はどっち側にでもなれるもんなのさ」
(´・ω・`)「内藤ホライゾンは、あなたに足を洗ってほしかった。違いますか」
(*゚∀゚)「そのはずさ。でもね。
そのためには、あたしの脚はあまりにも汚れていて、ブーンと共にいた期間はあまりにも短かったんだ。
元々お父様とはそりが合わなかったしね」
(* ∀ )「それでも、あんな事件をブーンが起こさなかったら
もうちょいマシな人生を送れたのかもしれないねえ」