@村上春樹的プロ野球@

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1村上ノルウェイ春樹
「雨の日には野球選手はいったい何をしているのかしら?」と緑が質問した。
「知らない」と僕は言った。「素振りとかシャドウピッチングなんかやってるんじゃないかな。野球選手ってよく練習するからさ」
「そんなに練習するのにどうして兵動は一軍でヒットを打てないの?」
「知らないな。でももともとが野球に向いてないんじゃないかな。つまり東出なんかに比べてさ」
「あなた意外にいろんなこと知らないのね」と緑は言った。「ワタナベ君って、世の中のことはたいてい知ってるのかと思ってたわ」
「世界は広い」と僕は言った。

2村上ノルウェイ春樹:2001/05/11(金) 17:48
「ね、ここにいる人たちがみんなマスターベーションしてるわけ?シコシコって?」と緑はナゴヤドームを見上げながら言った。
「たぶんね」
「男の子って女の子のことを考えながらあれやるわけ?」
「まあそうだろうね」と僕は言った。「パスボールとかロジンバッグとか種田のフォームのことを考えながらマスターベーションする男はまあいないだろうね。まあだいたいは女の子のことを考えてやるんじゃないかな」
「種田のフォーム?」
「たとえば、だよ」
3yuru:2001/05/11(金) 17:52
たしか日本シリーズの神宮でライトル?の右中間に抜けていく打球を
見て処女作の「風の歌を聴け」を書こうと思ったそうです。
いまでも年何回は神宮には行ってるはず。自分は一回だけ渋谷の中古
レコード屋で見た事があります。安西水丸氏のイラストそっくり(w
4代打名無し:2001/05/11(金) 17:53
ピース。橘高が言った。
5代打名無し:2001/05/11(金) 17:55
「雨の日には野球選手はいったい何をしているのかしら?」と緑が質問した。
「知らない」と僕は言った。「素振りとかシャドウピッチングなんかやってるんじゃないかな。野球選手ってよく練習するからさ」
「そんなに練習するのにどうして阪神は15年も優勝してないの?」
「知らないな。でももともとが野球に向いてないんじゃないかな。つまり中日なんかに比べてさ」
「あなた意外にいろんなこと知らないのね」と緑は言った。「ワタナベ君って、世の中のことはたいてい知ってるのかと思ってたわ」
「世界は広い」と僕は言った。
6村上ノルウェイ春樹:2001/05/11(金) 17:57
僕は草魂に電話をかけ、一軍にどうしても昇格したいんだ。
話すことがいっぱいある。話さなくちゃいけないことがいっぱいある。
世界中に野球以外に求めるものは何もない。一軍に昇格してヒットを打ちたい。
何もかもを一から最初からはじめたい、と言った。
草魂は長い間電話の向こうで黙っていた。
まるで世界中の細かい雨が世界中の芝生に振っているようなそんな沈黙が続いた。
僕はその間ガラス窓にずっと額を押し付けて目を閉じていた。
それからやがて草魂が口を開いた。『君、今どこにいるんだ?』と彼は静かな声で言った。
僕は今どこにいるのだ?
僕は受話器を持ったまま顔を上げ、電話ボックスの周りをぐるりと見まわしてみた。
僕は今どこにいるのだ? でもそこがどこなのか僕にはわからなかった。見当もつかなかった。
いったいここはどこなんだ?僕の目に映るのはいずこへともなく歩きすぎていく無数の人々の姿だけだった。
僕はどこでもない場所のまん中から草魂を呼びつづけていた。
7_
「あとは__さんね」と少しあとで緑は言った。
「そう」
「__さんは去年の_月に鎌ヶ谷に行ったまま戻ってこないの」
「鎌ヶ谷?」と僕はびっくりして言った。「なんでまた鎌ヶ谷なんかに?」