人口激減社会で「消えていくもの」一覧
長崎県は五島列島の最北端にある宇久(うく)島。人口3000人規模のこの島から、昨年夏、町民の楽しみがひとつ消えた。県立宇久高校野球部が、甲子園予選大会の1回戦で負け、廃部となることが決まったのだ。
理由は部員不足。島の人口減少が進むのに比例して、野球部は近年、慢性的な部員不足に悩まされていた。最後となった大会には、サッカー部や陸上部などから部員を借りて出場。これ以上の存続は不可能だった。
人口減少で、野球部消滅―いまのところ、これは「離島の特別なケース」かもしれない。しかしそう遠くない将来、部員不足に悩む高校野球チームは確実に増えていく。18歳以下の人口が年々減っていく中、高校野球人口も比例して減少。
日本高野連によると、2011年5月時点で硬式野球部員数は16万6925人。前年から1563人減り、2年連続の減少となった。加盟校数は1年で25校減少、6年連続の減少である。人口減少・少子化の波は、高校野球界にも押し寄せている。
とはいえ高校野球そのものは、学校がなくならない限り消滅することはない。だがプロ野球はどうか。
観客動員とテレビ放映料の収益に依存するプロ野球。セ・リーグの'11年の観客動員数は約1179万人で、前年度比95.8%。パ・リーグは約978万人で、前年度比99.4%。「一時的な減少」と強がったとしても、10年後、20年後の人口減少を考えたとき、この規模の観客動員数を維持できるだろうか。
さらに、プロ野球の視聴率は年々下がる一方である。プロ野球ファンの絶対数が減りつづければ、視聴率はますます低下し、テレビ局はプロ野球中継を止めるだろう。そうなれば、プロ野球は存亡の危機に立たされることになる。
野球人口が減れば、バットやグローブの需要も減る。野球用具に触ったこともない子供が珍しくなくなる。野球やキャッチボールができる広い公園は「税金のムダ」と考えられ、姿を消す。
(後略)
週刊現代 2012/2/25号(2月13日発売)
http://wgen.kodansha.ne.jp/article/detail.php?uid=1&sid=EG24&pid=P345&id=2870&s=Ku5Des34Ah2tJqV,6nqS41