かつて私は父のことで、ずいぶんいじめられた。
そのことで苦悩し、批判を浴びても流儀を変えない父に食ってかかった。
最近は、「ファンサービスをしないと批判されているよ」と苦言を呈している。父は球団との契約書を見せて
「勝つことが自分の仕事だと書かれている」と反論する。
父は勝利が最大のファンサービスだと考えている。
「おれは子どものころ、巨人ファンだった。強かったからだ。
勝利ほどファンの心を震わせるものはない」と。
そんなやり取りを通じ、私は父への理解を深めていった。
私自身も世間が抱くイメージに泣かされてきた。
幼少時のやんちゃなエピソードから、ありえない話が作られて、「伝説」となって流布している。
私は「手の付けられない悪童」として見られているだろう。
でも最近、それでいいと思うようになった。
実像は違っても、気まくれな世間のイメージをすべて変えるのは難しい。
であれば50%の理解を目指そう、と。
眉をひそめる人が半分いても、もう半分が「伝説」を楽しんでくれればいい。
最近、出版した「フクシ伝説」にはそんな意図がある。
無愛想だとたたかれても勝利だけを目指す。
勝利に心を震わせるファンのために。
分かるヤツだけわかればいい。そんな父の寡黙な職人仕事を、私は愛し続けたい。
ttp://up3.viploader.net/news/src/vlnews025968.jpg