男なら大道１０

その男、大道典嘉
男なら大道

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男なら大道９
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/base/1281147153/

「バット短く息長く」の大道さん１軍昇格へ

巨人のドラフト１位ルーキー長野が１７日、プロ入り後初めて出場選手登録を外れた。

　長野は開幕１軍入りを果たして外野の一角を担い、ここまで打率２割８分６厘、１８本塁打、５０打点と好成績を残している。しかし９月に入ってからは、２５打数１安打と不振に陥っていた。

　代わってプロ２３年目、４０歳の大ベテラン、大道が１軍に合流する予定。
ttp://www.sanspo.com/baseball/news/100917/bsa1009171719004-n1.htm

10 名前：代打名無し 投稿日：04/02/21 02:58 ID:g+YEnir4
小学生時代、勤めから帰った親父がキリンラガービール片手に見るナイター中継を一緒に見た。
王選手以外名前は知らなかったけれど、そこに出てくる選手達は皆いかつい顔をしていた。
ビールの香りのように大人の世界を感じさせた。

20年経ち、俺は2児のパパとなった。学生時代野球部を経験し、プロ野球選手になることを夢見たけれど、
その夢も脆くも破れ、俺は普通のサラリーマン。
父がそうであったように帰宅後のナイター中継観戦は欠かせない。
画面のプロ野球選手は脚も長く、今風で格好いい。

NHKマンデーパリーグ中継で俺はある選手に目を留めた。
濃い髯の剃り跡、へんてこな構え。
「女子供なんて関係ねぇ。」というオーラを醸し出しているダイエーの選手。
その男、大道典嘉。

俺はその選手を見て一目で好きになった。

男なら大道。

13 名前：代打名無し 投稿日：04/02/22 02:44 ID:vM7C1Z7V
俺は日本中の誰もが知っている電器メーカーの工場がある街の借家で生まれた。
俺の父はその借家の中でも少し変わり者で通っているようだった。
小さい時の俺はそうは思わなかったが、俺の友達と時々する喧嘩の時に必ず
父の事を持ち出して攻撃しいていたので、俺の父は変わり者だったかも知れない。

特別趣味の無い父は家では寝転がってテレビばかり見ていた。
何故かダイエーの「大道」という選手が特に好きなようで、
彼がの打順になると横になっていた身体を起こすのであった。

家族にも無愛想な父だったが、母は父と喧嘩もしたことも無いし、悪口を言った事もない。
母は父のことについて、
「貴方のお父さんは無愛想だけど、昔は男前で女の子に持てたのよ。」と時々言っていた。

今年高校受験の俺は父の良さも父が好きな大道の良さもわからない。

右の代打の切り札age

15 名前：代打名無し 投稿日：04/02/23 01:59 ID:PBWdeq1i
私は三重の海岸沿いの街に生まれた。
自分で言うのもなんだが小さい時からかわいくて、頭も良かったから
学生時代はモテたし、友達も多くて人気があった。
私は皆に良く思われたくてにこにこしているような女の子だった。

大学は東京の一流校に入学し、上京した。
私の同級生のほとんどは地元の短大に入学し、少し頭のいい子は名古屋の大学に行った。
私程の学力を持つ子は地元では居なかった。
私は上京すれば、頭が良くて、かわいいことが東京でもっと生かされると思っていた。
こんな片田舎の男達では無く、東京の格好いい男にちやほやされて、
そのことを地元の女友達にさりげなく自慢してやろうと思っていた。

8年後私は地元に帰ってきた。
東京で生活するのに疲れて帰ってきたのだ。
学生時代は楽しかったが、背伸びを常に強いられているようだった。
東京には私と同じ位かそれ以上に頭のいい子はたくさんいて、かわいい子も大勢いた。
私は負けるわけにはいけないと虚勢を張りながら大学生活はやり過ごした。
格好いい男の友達もたくさん出来、夏休みに帰省した際はそれをさりげなく自慢した。
しかし、社会人になって私は立て続けに男に騙された。
一人は同期の男で、一人は妻子持ちの先輩に。
私は、ただの女性としてしか見られていないことに20代半ばにして気付いた。

地元の同級生の殆どが結婚していた。子供も居る子もいたし、同級生同士で結婚している子もいた。
「家事手伝い」の私に地元の人が投げかける視線は冷たいようにも見えるし、
昔の私のままで声をかけてくれる人たちもいる。

私は少し老けた父の晩酌に付き合ってナイター中継を見た。
ある時私の視線はある選手にいった。
不恰好な構えに今なら流行らない濃い顔。
若くてスマートな選手が多いダイエーの選手の中にあって
一人浮いている中年男。
しかし、その選手は2塁1塁のチャンスに西武松阪の球に必死に喰らいついている。
バットを短くもってチームのために粘っている。

その男、大道典嘉。
男なら、大道。

20 名前：代打名無し ﾒｪﾙ：sage 投稿日：04/02/24 02:33 ID:ACci+qcR
俺はあせっていた。
明日手形の引き落とし期日にも関わらず、金の工面が全く出来てなかった。
万事窮す。
必死に働き上り詰めて来た人生もここでお終いになるのか…。

俺は必死に働いてきた。同年代奴らの倍は働いたと思っている。
そうしなければ生きていけなかったのだ。

実家は自営業でそこそこの生活をしていた。
俺が高三の秋、家業の倒産によって故郷を追われ、
当然するのものだと思っていた大学進学を諦め、働くことになった。

俺は必死に働いた。家族の為だけではない。
急に手のひらを返すように冷たくなった周りの大人たちや、
俺より成績が悪かったのに大学に進学し、ちゃらちゃらしている友人達を見返すために。
時代は「バブル」と後に言われる時期だった。

俺は時代に背を向けて必死に働いた。
真っ当といえない仕事もしたこともある。
金こそが正義だと真面目に思い込んでいた。

90年代初め、株のカラ売りで種銭を得、こつこつ貯めたお金が数千万になった。
多くの人は株を買いつづけた為に多くのものを失った。
欲をかくからだ。ざまみろ、と俺は思った。
俺はその金で会社を興し、商売を始めた。
商売は低迷する時代の逆を行くように右肩上がりの成長を続けた。
俺は勝った、と思った。真実を見据え続けたから成功者になり得たと思った。

しかし俺は「ババ」を掴んだ。
友人の保証人になり、その友人がビジネスが上手くいかずにケツをまくったのだ。
俺のオヤジが会社を潰したのと同じ原因だった。

俺は笑うしかなかった。
因果応報なのか？俺が何をした？
俺を馬鹿にした奴らを馬鹿にしたからか？
一人きりの事務所で俺は想いをめぐらせていた。

「このバッターは88年入団のベテラン選手。今はバットを短く持っていますが
入団当初は巧打の長距離バッターとして期待されていました。
いかつい風貌ですが若い頃は顔立ちの整ったいい男だったんですよ。」
「今の彼の姿からは想像出来ませんねぇ・・・」
つけっ放しだったテレビからアナウンサーと元プロ野球選手の解説者による
コミカルな実況が聞こえてきた。

俺は画面に目をやった。

その男は69年生まれで俺と同い年であることがその実況からわかった。
三重の高校をでて16年目のシーズンだという。

俺と同い年なのか･･･
こいつはどんな人生をこれまで送ってきたのだろう･･･。

その男、大道典嘉。
男なら大道。

26 名前：代打名無し 投稿日：04/02/27 19:28 ID:/SQ07+9w
ぼくは少し太っちょだ。
じぶんではそんなふうに思ってないけれど、みんなが
「デブ」とか「ぶた」とか言う。
ぼくはそれが少しいやです。

ぼくは町内のやきゅうチームにはいっています。
ポジションはキャッチャーです。打じゅんも9ばんです。
かんとくはぼくが太っちょだからといって、キャッチャーをさせました。
打じゅんもデブだからといって9ばんにします。
たまにほ欠になることもあります。
山田くんや田中くんより打つのがうまいのに9ばんなのは、少しいやです。

ぼくは松さかせん手がすきです。
しょうらい松さかせん手のようなプロやきゅうせん手になりたいです。

ぼくはある日テレビのやきゅう中けいをみました。
ライオンズたいダイエーのしあいでした。
ダイエーのベンチを見ていたら、うしろの方で「パン」をたべているせん手がいました。
ぼくは少しびっくりしました。
おじさんみたいなそのせん手は「大道」というせん手でした。
ダイエーのこうげきになり大道せん手の打じゅんになりました。
大道せん手は少し太っちょでした。
バットを短くもって松さかせん手の投げるボールをねばっていました。
まるでぼくたちがかんとくにいわれるように短くばっとをもって、
ミートしようとしていました。

８きゅう目に大道せん手は２るい打を打ちました。
２るいベースでハアハアといきを切らせながらガッツポーズをする大道せん手はカッコよかったです。
ぼくも大道せん手のようにまわりを気にしないでやきゅうのきほんをまもれるせん手になりたいです。

あれから僕は毎日すぶりをするようになりました。
大道せん手のようにバットを短くもって、一日100回すぶりします。
まえよりヒットを打てるようになり、今では６ばんを打っています。
体じゅうも５キロやせました。
やせたらなぜだか、かたまでよくなりました。
この前のし合いでとうるいを２回アウトにしました。

プロ野きゅうがはじまりました。
大道せん手がでていないのはさびしいですが、
ぼくは大道せん手をおうえんします。

がんばれ！大道！
男なら大道！

60 名前：34歳・主婦 投稿日：04/04/01 01:53 ID:UTZkZPoW
宗タン、和田サン、私はイケメンが多いダイエーが好き。
野球はそんなに知っている訳ではないけれどダイエーのテレビは必ず見て応援する。
そんな時はダンナの前でも平気で「宗ターン！！」と声を張り上げて応援するの。

本当は私を構ってくれないダンナへのあてつけなんだけど。

私のダンナは結婚14年目。今は家であまり会話がない。
私とは生活に必要な最小限の言葉しかまじわせない。
今は家でごろごろするだけのダンナだ。

私たちは高校のサッカー部のキャプテンとマネージャーという間柄だった。
ダンナはかっこよくて、プレイもスタイルもスマートだった。
時の経つということはこういうことかと思うぐらいダンナは変わった。

ある試合で鳥越クンの代打で背番号55の選手がでた。
ダイエーファンだけど、正直カッコいい選手の名前しか知らないにわかファンなので
私は彼の名前を知らなかった。

彼は無骨で、昭和の香りがした。

打席で不敵な顔をしてガムをくちゃくちゃさせた彼ははっきりいって不快だったけれど、
彼は短くもったバットから鋭い当たりの2塁打を打った。
2塁上でふてぶてしい顔をしながらベンチを見た彼の顔が少しうれしそうだった。

その顔はどこかで見たことがある・・・・。

そう、私のダンナの顔。つっぱってカッコつけながらもはにかみ屋の私のダンナ。
私はそんなダンナが好きで結婚したんだっけ。

55番の選手をはじめて(注目して）見たそのゲームの晩、私はその選手の名前をネットで調べた。

その男、大道。
男なら大道。

80 名前： 代打名無し＠実況は実況板で 投稿日： 2005/10/29(土) 16:29:25 ID:keGc+bb+O
先日、『平成の心のオアシス』初芝清選手が引退しました。
彼は日々の仕事と東京〜大阪の遠距離恋愛で疲れた私を優しく癒してくれました。
彼の引退が決まった時、私の心にぽっかりと穴が空きました。彼は月に二度しか会えない彼女より私の心に入り込んでいたようです。
途方に暮れていた私が、つい１５分前にバスの待ち時間に携帯で覗いた掲示板がココです。
その掲示板ではある一人の漢について皆が語り合っている。私は皆のコメントを熟読すればするほど漢が気になって仕方なくなっていました。
抜け殻になっていた私に心の支えが出来ました。早く漢をこの目で見てみたいと思うようになりました。『昭和の残り火』の様な空気を感じる漢の虜になりそうです。
あぁそうだ、決め台詞はこうで良いのかな？

その男、大道典嘉
男なら、大道

99 名前： 代打名無し＠実況は実況板で [sage] 投稿日： 2005/06/15(水) 04:32:09 ID:2Jv/irQt0
僕はパナマの貧しい村で生まれ育った。
それでも両親や村のみんなはとても温かく、
大切に育てあげてくれて大学にまで行かせてくれた。
だから僕は一生懸命勉強して、力もつけて恩返しがしてやりたいと思った。
けれども、メジャーリーガーを目指して渡ったアメリカでは中々上手いように
チャンスを掴むことは出来なかった。
そろそろ焦りの見え始めた28の春、日本からの誘いがあった。
言葉の壁の不安はあったけれども、祖国のみんなの顔が頭に浮かんだ瞬間、返事は決まった。
実際にホークスのチームメートと対面してみると、
ペドロやタダヒトなど国際色豊かなチームですぐにみんなと馴染むことができた。ただ一人の男を除いて。
その人はオオミチさんといった。彼はいつでもふてぶてしかった。
でも、彼を見ていると何故だか祖国の父を思い出すんだ。
そんなことをぼんやり試合中の外野でも考えていたせいで、守備ではムラマツに迷惑をかけたりしたが、
その年、僕は13本のホームランを打って給料も上げてもらい、念願の故郷への大量の仕送りも実現した。
僕がある時、何を送ってやろうかとニコニコ考えていると、
そばをあのオオミチさんがパンをくわえながら歩いてきた。

100 名前： 代打名無し＠実況は実況板で [sage] 投稿日： 2005/06/15(水) 04:37:46 ID:2Jv/irQt0
「オオミチサン、ドコイクンデスカ？」
オオミチさんはそれには答えず無言でパチンコ屋へと入っていくので、
僕はフラフラと吸い寄せられるように後を追った。
すると、そこでのオオミチさんの顔つきは試合中のベンチとはまるで違った。
射抜くような鋭い目つきで玉を弾き、時々何かをメモしている。
僕はハッとした。僕は今年の成績に慢心していたんだ。
それをオオミチさんは見抜いていて、こういう形で教えてくれたんだ。
オフにもっと身体を絞ろう。来年からはメモをとろう。

サイコウバイ、オオミチノリヨシ。
男なら大道。

150 名前： 代打名無し＠実況は実況板で [sage] 投稿日： 2005/11/02(水) 15:19:17 ID:dTvtOzKy0
あの時、俺はせっぱ詰まってた。
俗にいう崖っぷち・・・。

このままでは、やり残した事があまりにも多すぎる。

しかし、その原因は俺自身にあった。
『ケガだけには勝てない。』・・・ありきたりな言葉だが
そのケガを理由に周りから励まされている自分自身に、腹立ちばかりをおぼえていた。

それは、友人の解雇がひとつのきっかけとなり、
この球団に首の皮一枚で居場所を与えられてからも、状況はまったく同じだった。

「自分には残された時間が無いんだ。」
焦り、ひとり憤ることが日課となりかけていたある日・・
練習中の風きり音、そして、
ひとりの不恰好な選手が繰り返す、鬼気迫るスイングが目に入ってきた。
最初はぼんやりと眺めていたが、
それを見つめ続けるうち、俺の中で何かが弾けた。
俺に足りなかった何かが、その時、目の前にはっきりとその姿を現わした瞬間だった。

その後、徐々に成果に数字がついて来るようになり
念願だったオールスター出場を、自分の出した成績で手にすることが出来た。

「生活のかかった打撃をする」
監督からの評価だが、最高に嬉しいほめ言葉だ。
しかし、まだ、
あの「精魂のかかった打撃をする」人の域には達しきれていない。

その男、大道典嘉。
男なら、大道。

166 名前： 代打名無し＠実況は実況板で 投稿日： 2005/11/04(金) 02:00:26 ID:IIX840LR0
懸賞で大道使用済みグッズが当たった。
それを持って、去年の春のキャンプを見に行った。
サインをそれにしてもらいたかったからだ。
「大道さ〜ん」と私が言うと、男・大道が近づいてきてくれた。
「これどおしたの？」と大道が言うと「懸賞で当たりました」
「よかったねー」を繰り返し言ってくれ、嬉しかった。
２日後また違うグッズを持っていくと、「またお前か」と言って
サインしてくれた・・・。
あの思い出は一生忘れない。
男、大道・・・。

164 ：代打名無し＠実況は実況板で ：2005/06/27(月) 23:47:59 ID:kzXipuFj0
「ここで代打？あ、やはり代打ですねぇ、王監督、代打を送ります」
実況がそう言った直後、僕は確信した。
3連戦、1勝1敗で迎えた3戦目、あの男が帰ってきた。
2-0で迎えた9回裏、2死、2･3塁、完封される直前の最後のチャンスが、
孤高のバットマンの復活の舞台だった。

男は、ピンチヒッターを告げた監督の後からゆっくりと現れた。
その目は鋭く、相手の散発4安打のエース左腕を、真剣に見据えていた。
その体躯も、決してスマートではなかったが、ある種の迫力に包まれている。
だだ、彼がバッターボックスに入った時、「コイツが今日の獲物か」とでも
言いたそうに、口の端を軽く上げ、笑ったように見えたのは気のせいだろうか？

ボックスに入り、足元を軽く慣らし、その男はバットを誇らしげに掲げた。
何年も振り続けたのだろう、きっと血が滲むまで、振り続けたのだろう。
努力が自信となり、彼が放つ自信が、見る者に「何か」を期待させていた。
バットを握った左手は、グリップエンドから遠く離れている。

その男、大道典嘉。
男なら、大道。

212 名前： 代打名無し＠実況は実況板で [sage] 投稿日： 2005/11/06(日) 06:34:06 ID:6jHOmect0
俺の娘が今月9歳の誕生日を迎えた。
親馬鹿かも知れないが、
トンビが鷹を生んだと冷やかされるほど、俺の子らしからぬ良い子に育っている。

でも、いちばん嬉しいのはホークスファンに育ってくれたこと。
もちろん、俺がドームへ子連れで通ったこともあるが、
若鷹軍団の応援歌をかわいい声で歌うあの入れ込んだ眼つきは本物だった。

「なあ、亜衣、ホークスの選手で誰が好きか？」
「亜衣ねぇ、あのオジチャンが好き・・」
なんと、娘は俺が一番入れ込んでいる選手の方向を指さして教えてくれた。
「なんで？どこがいいと？」
「あのね・・お仕事のお父さんに見えるもん」
たまらなく嬉しくなって、思わずその場で抱きしめてしまった。

俺は、地元の小さな建設業の現場担当者。
ずいぶん前に、娘が妻と一緒に弁当を現場へ何回か持ってきたことがあって
その時の職場の俺をそう思ってくれたのだろうか。
いまは公共工事が大幅に減少して、仕事の愚痴が多くなっていたのだが・・。
娘は、あの選手に俺を重ねて見てくれている。

よし、もう少し頑張ってみよう。
父親として、この娘の信頼を失わないためにも・・・
そして、娘がライバルにしてくれたあの憧れの選手に負けないためにも・・・

「あのライバルに負けたくない。会社を続けることに決めた」
　帰ってから、その決心を妻に伝えた。


その男、大道典嘉。
男なら、大道。

259 名前： 代打名無し＠実況は実況板で [sage] 投稿日： 2005/11/08(火) 02:10:34 ID:NsF6cwld0
野球はおぼろげにしか知らなかった頃、友人に連れられて初めて球場を訪れた。
内野席ということもあってか、意外なほど球場は静かだった。
実況も解説もなく、どこか淡々と試合が進む。
選手を詳しく知っていれば、盛り上がりようもあったのだろうが。

「よっしゃ！」
隣の席の友人が声をあげた。見れば、一塁と三塁にランナーがいる。
チャンスなんだ、と理解したとき、ウグイス嬢が代打を告げた。
その瞬間――

わっと、球場が大きな歓声につつまれた。
友人も自分を置き去りにして、一人盛り上がっている。
放送が聞き取れなかったが、尋ねることもできない。
しかたなく、スコアボードを見た。

そこには大道という名があった。

出てきた選手は「のっそりと」という形容が似合うような選手だった。
どんな選手なのか、自分は知らない。
しかし、周りの歓声が否応なく心を熱くさせた。

あまり見たことのない構えに目を惹きつけられる。
一球目はボール、二球目はファウル。
三球目、小気味良い音を響かせて、ボールは守備陣の間をすり抜けていった。

気付けば自分も、周りとともに歓声を上げていた。

その男、大道典嘉。
男なら、大道。

261 名前： 代打名無し＠実況は実況板で [sage] 投稿日： 2005/11/08(火) 11:39:44 ID:6NqMAEc60
かつて幼い頃のわたしはコンプレックスのかたまりだった。
じぶん自身にまったく自信を持てなかったわたしは
「ボクの親戚のオジサンは大きなオモチャ会社の社長なんだ。」
「ホクの先祖はエライ武将だったってパパが言ってた。」
などど、友人が確かめようのない空しい虎の衣にすがって
極力、わたし自身から目をそらす方向で
友人と対等なポジションを保ってもらえてると勘違いしていた。

しかし、その破綻の時期がきた。
父の転勤で引っ越すことになったのだ。
転校先の中学校で同じようなコミュニケーションを試みたら
その日から、転校した先のクラス全員から激しいイジメを受けることになった。
それからの毎日は地獄だった。

そんな毎日で、唯一の楽しみが野球観戦だった。
ボクは西武の松坂選手が好きで、
「あの完投するカッコいい姿がじぶんにあれば、イジメなんて遭わないのに・・」
といつも思う度に、よけい今のじぶんが嫌になっていった。

その日は、西武対ダイエー戦
松坂キラーと呼ばれているその不恰好な構えの打者は
好投している松坂投手の唯一といえるピンチの場面に代打で登場した。
すると場内から割れるほどのどよめきと歓声があがり
主役が松坂からその選手に入れ代わったような錯覚をおぼえた。
案の定、渋いセンター前へのヒットがタイムリーとなり、
その後、リズムを崩した松坂はマウンドから降りていった。

262 名前： 代打名無し＠実況は実況板で [sage] 投稿日： 2005/11/08(火) 11:40:03 ID:6NqMAEc60
いま、わたしは平凡な二流大学の学生としてフツーに学生生活を満喫している。
あの頃のような片意地張った窮屈なじぶんでなくなってから
友人もいつのまにか多く回りに増えてきて
そんな奴らが、ダメなじぶんの性格の中から
希少な長所とおぼしきところを見つけ出したりしてくれる。

でも、なにがきっかけでイジメから立ち直り、
古い友人から、「人間が変わった」とまで言われるように性格が変化したのか
わたし自身にもよくわからない。
ただ、あの時の球場で出会った感動が、なぜか大きく記憶に残っていて
それが、みっともないじぶんを気にしなくなった原点のように思える。

いまも西武そして松坂が大好きで、憧れていることは変わらないけど
たまにしか見かけなくなった、あの代打が出てくると
不思議と胸がときめき、じぶんがなぜか素直になれる。
やっぱり、野球は球場に出かけて観るにかぎる。


その男、大道典嘉。
男なら、大道・・。

314 名前： 代打名無し＠実況は実況板で [sage] 投稿日： 2005/11/14(月) 21:49:02 ID:BqHouDzC0
俺は相手チームにファンタジスタと恐れられている。
俺が吼えた試合（たまにだけどね）は、我がホークスが必ず勝利する。
たぶん、このままゆけば、型破りの思いがけぬ打法という戦術を球界に持ち込んだ
プロ野球史上稀に見る創造性豊かな選手として俺はプロ野球史に名を残すはずである。
ぐふふ・・

そんな俺もこのチームに移籍する前は、華麗に球場を舞う蝶（・・・いや蛾かな？）
そんな守備ｳﾏｰだけが取り柄の男だった。
だけど、守備だけでは誰からも一流とは認めてくれず、以前いたチームの味噌くさい監督から、
あの年、三下り半を突き付けられてしまった。
トホホ・・

でも、このチームには驚かされた。
さっきまでベンチの奥でパン食ってた選手が、突然打席に立ち、ボテッとした安打を放つ。
それに驚いてると、役目を終えてさらっと奥に消え、またパンを食う。

「ちぇっ、打席で気合入れまくってた俺ってバカみたいやん。」
「今度から打撃の方はテキトーに手を抜いてやろーっと」

それから、肩の力が抜けた俺は、なんか知らんけど勝負強くなった。
テキトーに気合を抜いていたから、大事なところで集中できるようになったし
「ここで突然打ったら、監督がマンガの顔と一緒になるなｗ」
などと、様々なイマジネーションが湧いてくるようになった。
なんだか、自分でも魔法が備わったような・・・
そう、あのパルプンテみたいな

ただ・・
あのパン野郎、最近ちょっとじゃべり杉

その男、大道典嘉。
男なら、大道。

698 名前： 代打名無し＠実況は実況板で 投稿日： 2005/12/16(金) 17:47:21 ID:4MiV/saOO
大きな瞳をほそめ、
寒風吹き荒れる玄界灘を彼は見つめていた。

「仰木さん…」

南海時代からの好敵監督を尊ぶと、そっと荒波に一礼し、白球を投げ込んだ。
それが不器用な彼流の別れ方だった。

白球は荒波に乗り、仰木さんの地元、北九州を通り、下関を抜け瀬戸内海を通りやがて神戸に着くだろう。
そして白球は、一人の名も知れぬ少年が広い上げるのだ。
おもむろにボールを壁に投げて遊びだすだろう。跳ねる白球。飛び付く少年。

それが道となり少年はやがて野球に目覚めるだろう。

一人の巨星が落ち、一人の名も無き彗星が現われる瞬間だった。

大道は願う
少年よその手でビックロードを掴め！
そして超えてゆけ！

監督なら仰木
男なら大道

野球よ永遠に！

704 名前： 代打名無し＠実況は実況板で 投稿日： 2005/12/17(土) 00:43:26 ID:NRQMh3M3O
近鉄から合併騒動で開幕してもなかなか居場所が見当らず彷徨ってた俺。
地元の近鉄の隣りは南海が走ってる、関西で試合の時は今も南海の緑のユニホームのファンに支えられるホークス。
気付いた時にはホークスが負ければ悔しくて勝てば嬉しくて曲がりなりにもホークスファンになった俺。
そして仰木さんは敵将となった…
忘れていた野球を応援する楽しみをホークスで取り戻した
ここ一番の場面で代打の渋い右打ちで逆転勝ち
たまには代打も失敗する事もある
そして毎日勝った負けたを繰り返し非情なプレーオフ
来シーズンはホークス３度目の正直で完全優勝を成し遂げて欲しい。
だが俺の心は永遠に「近鉄」ファン
だからこそ漢なら仰木
男なら大道

744 名前： 代打名無し＠実況は実況板で 投稿日： 2005/12/21(水) 22:39:12 ID:Ywwh8AuQO
小坂が巨人へトレードしましたが―

大道「野球は野球だからな。道は違えど、頑張るものにはいつか日が当たるものさ。」

もし大道さんがトレード通告されたら？

大道「俺はかまわない。それが野球以外でもな。」

野球以外ですかぁ？

大道「ああ。もし球団に『Jﾘｰｸﾞとトレードだ』と言われたとしても俺は華麗にﾍﾟﾅﾙﾃｨを決める準備は出来てるし、トリノに女子フィギアで出てくれと言われれば、無駄毛の処理さえ、ばっちりやるさ。」

さすが一流ですね

大道「一流？ふふ…お譲さん、俺はまだひよっ子だよ。」

謙遜さえ輝かしい！

その姿にインタビュアーは芽生えた恋心を押さえるのが必死だった…。

さすがは大道
男なら大道

782 名前： 代打名無し＠実況は実況板で 投稿日： 2005/12/24(土) 17:46:33 ID:oTqQK/e4O
「ガサゴソ…ガサッ！」

僕は眠い目をこすりながら考えた。
「さっきケーキ食べたよなぁ…」
そう考えると今日が特別な日とゆう事をすぐに思い出した。
「サンタだ…サンタが来てる」
その瞬間、目を見開いて布団に潜り込んだ。一瞬“赤い”布地が見えた。

「友達のゆう坊は『サンタなんていないんだぜ！俺見ちゃったんだよな、父ちゃんがおもちゃ置くとこ！』って言ってたけど、信じない！確かめてやる！絶対にサンタだから」
半分頭を布団から出し音のする方へ目をやった。
赤い服に赤い帽子見たこと無い顔だった！
「本物のサンタだぁぁぁ！」
心でガッツポーズを作り、帰るサンタをそっと覗きこんだ…

五年、十年少年は言い続けた。
「サンタは甘い‘ガム’の薫りがするんだぜ！赤い服の背中は‘55’って書いてあるのが本物のサンタなんだよっ」と。

子供のヒーロー大道
男なら大道

833 名前： 代打名無し＠実況は実況板で [sage] 投稿日： 2005/12/29(木) 02:51:32 ID:fWSc2yTyO
今なら言える。


初めは投手。
その後野手転向。
ｽﾄｯｷﾝｸﾞを露出するｽﾀｲﾙ。
守備固めでﾌｪﾝｽに激突したこともあった。

もう退団してしまったが、記憶に残るその男、大越


男なら大越。

38 名前： 代打名無し＠実況は野球ch板で 投稿日： 2008/08/27(水) 22:58:12 ID:NXoT72xm0
第2回WBC決勝戦
前回と同じ日本VSキューバの闘いとなった。
お互いに死力を尽くした闘いは最終回を迎えていた。
9回裏、スコアは3-4でキューバ1点リード
日本は先頭の西岡がヒットで出塁、続く川崎が送りバント、3番青木が
四球を選び、日本は1死1塁2塁のチャンスを迎えた。
ここで日本ベンチが動く。監督の野村が主審に歩み寄り、短く代打を告げた。
『代打　大道』
湧き上がる日本の応援団、そして固唾を飲む両軍のベンチ。
その中をゆっくりと大道は打席へと入っていった。
マウンドにはキューバのクローザーが1点もやらないとばかりの気迫をみせる。
そして第1球、ストライク。150kのストレートがミットに納まる。
第2球も同じ球でストライク。あっという間に追い込まれる。
だが、ここから大道は驚異の粘りを見せる。
3球目、4球目の際どい球を見極めた後、なんと10球連続ファールで粘り、
11球目を見極める。そして運命の12球目。
100マイルのストレートを鮮やかに振り抜く、打球は右中間を深々と破った。
2塁ランナーの西岡に続き1塁ランナーの青木も生還！
日本サヨナラ勝ち！WBC連覇！
選手たちが大はしゃぎで大道を祝福する。
照れ臭そうにはにかむ大道。
大道の背中をポンと叩く野村監督の目には涙が溢れていた。
表彰式
居並ぶ選手たちにメダルとトロフィーが授与される。
静かにそれを見守る大道、そして流れる『君が代』に大道の目頭は熱くなった。

その男、大道典嘉
男なら大道

47 名前： 代打名無し＠実況は野球ch板で [sage] 投稿日： 2008/08/28(木) 03:16:41 ID:C2LtHmFI0
2016年 オリンピックに復活した野球が東京ドームで開催されていた。
その決勝戦、1点を追う9回裏2アウト1、2塁、最後のチャンスに
初芝・日本代表監督がベンチを出てアンパイヤに代打を告げる。
「ピンチヒッター、大道」

やや白髪の交じった、妙に日焼けした46歳の男の登場に
米国代表の若いピッチャーは驚きを隠せなかった
こぶし2つ分短く握ったバットをゆらゆら揺らしながら、
気持ちオープンスタンスでかがみ込む
――メジャーではまず見かけない奇妙なスタイルだ

いとも簡単に1ボール2ストライクに追い込まれた大道だが
そこからがこの男の見せ所だった。
ファール、ファール、ファール、ボール、ファール・・・・
　「俺は一体こいつに何球放ったんだ？」
集中力がやや途切れたまま、若いピッチャーが投じた13球目は
見入られたかのようにど真ん中へと吸い込まれる
――その失投を大道のバットが逃すはずがなかった。

静寂から一転して沸き起こった大歓声の中、
大道はゆっくりとした足取りでダイヤモンドを回る
そしてテレビで観戦していた世界中の人々は思わずこう呟いた
「あの男が大道か・・・・
　男なら大道」

853 ：代打名無し＠実況は野球ch板で：2009/11/18(水) 21:29:01 ID:VCfbO2ZN0
２００９日本シリーズ第５戦、８回裏。１対０。
試合序盤、日本ハムファイターズに１点のリードを許したまま点が取れず、
巨人軍ベンチには重い空気が流れていた。

この回、先頭バッターのイ・スンヨプが死球を受け、巨人のスピードスター・鈴木が代走で一塁へ。
直後、鈴木が初球で２塁への盗塁を決めたが、坂本は空振り三振に倒れ１死２塁となった。
次のバッター・松本の打席の所で日本ハムベンチが動いた。

そんな中、緊迫した巨人軍のベンチが映し出された。
入り口通路近くのベンチに座り、バットにもたれ掛りながら眼を輝かせ、グラウンドを眺めている大道が居た。
左ピッチャーの林がコールされると大道の眼は力強さを増し、
ゆっくりと立ち上がってヘルメットを覆ると大道はそのままベンチを出ようとしたが、ふと立ち止まり、
ベンチの真反対側に居る原監督に、まるで代打を催促するように目線を送った。
原監督はその気迫に満ちた大道に一瞬押されたようにも見えたが、直ぐに代打の合図を送った。

「バッター、松本に代わりまして、大道」

そして試合は振り出しに戻った。

96 名前： 代打名無し＠実況は実況板で 投稿日： 2005/06/15(水) 02:40:16 ID:Hw2sEUYe0
私の旦那は実直さだけがとりえの男。
仕事は多分、東京の人は知らないローカル線の駅員（駅長）。
この度、この線は廃止されることになったのです。

旦那は旧国鉄時代からの駅員。
JRになってから社内の価値観の変化に大変そうだったけれど、
旦那なりに「自分のやれることをやる」と言って頑張っていた。
JRになってからの職員とは上手くいってそうでなかった様だけど、
そんなことはおくびにださず頑張っていた。


廃線の日、職場の人たちと飲んで旦那は帰ってきた。
あまりお酒は強くないほうだけど、上機嫌で家に帰ってきた。
家に帰ってきたからずっと空かないでいたウィスキーのボトルを飲み干し、
そのまま寝てしまった。

97 名前： 代打名無し＠実況は実況板で 投稿日： 2005/06/15(水) 02:41:00 ID:Hw2sEUYe0
寝転がっている旦那の前にあるテレビは野球中継を放送していた。
「ソフトバンク・ホークス対西武ライオンズ」。
旦那が小さい頃から好きだったホークスの野球中継だった。

「さー、ホークスのチャンスに代打。南海最後の生き残り大道選手です。」

いびきを掻きながら眠る旦那に布団をかけながら私はテレビを注視した。
その男は無骨で、決して器用な人間に見えなかった。
野球はすっかりわからない私。でもこの選手は見入ってしまった。
この選手にある「何か」を感じたのかも知れない。

男なら無骨。
男なら、大道。

109 名前： 代打名無し＠実況は実況板で [sage] 投稿日： 2005/06/16(木) 01:57:21 ID:/jKrhkQ00
ちゃーす！　僕の実家は宮崎の、すっごい山ん中です。
うちの実家には牛が１００頭ぐらいいます。
高校のときは同級生のエースが物凄いやつだったんで甲子園にも出て、
おかげで僕も念願のプロ野球選手になっちゃいましたぁぁぁ☆
でもスペランかー体質の僕は一軍と二軍の往復の繰り返し！
故障もしちゃって、すっかりクサってたとですよ！

ある二軍戦、ベンチにいた僕はある選手の打席にく・ぎ・ヅ・ケ！？
もー腹は出てるしヒゲは濃いし、うちの父ちゃんよりおっさんくさい！
見るからにパワア☆ありそうなのにバットはチョー短く持ってる。
そしたら、相手の球をドォォォォン！　とかっ飛ばしてツーベース！
すげぇー！　かっちょいー！　これぞプロって感じじゃん☆☆☆

この人だ！　僕の打撃の師匠となる人はこの人しかおらんと！
そう思った僕は考え方を変えたっち。
ホームランねらいはやめてまずは短く持ってヒットを打つ。
そしたら二軍戦でもどんどん結果が残せたとですよみなさーん！

そしてついに今日、あのフェンスが１００ｍもある福岡ドーンで
プロ入り初ホォムラアアアアアン☆☆☆☆☆☆
これも大道さんの教えを守ったからです！

その男、大道。
男なら、大道ちゃーお♪

353 名前： 代打名無し＠実況は実況板で [sage] 投稿日： 2005/11/16(水) 10:19:16 ID:ecDbq8GE0
「ねえ、あなたの仕事ってなあに？」

あたしがこんなことを客に言ったのは初めてのことだった。
昨夜の濃密な時間が原因なの？
ううん、そんなはずはない。だってあたしはプロだもの。
仕事中に絶頂を味わったことだって、一度や二度ではないわ。

やはりこれは、この男が放つ「臭い」のせいかもしれない。
今まで嗅いだことのないような、危険な「臭い」。
そう、例えるならば火薬のような・・・。

「・・・・・・やめておけ」

ふいに男が重い口を開いた。
男はガムを噛みながら葉巻をくゆらせている。変わった男だ。

354 名前： 代打名無し＠実況は実況板で [sage] 投稿日： 2005/11/16(水) 10:20:01 ID:ecDbq8GE0
「うふふ…、さしずめ刑事さんってとこかしら？　ひょっとして逃げる側だったりして」

男は無言で宙を見つめていた。まるであたしの言葉など耳に届いていないかのように。
あたしは返事を促すように、男に視線を這わせた。
濃い顔、濃い眉、濃い髭、濃い体毛…。
瞬間、昨夜の絶頂がフラッシュバックし、体の芯がぴくりと疼いた。
否定しようのない欲情の証が体の中からあふれ出てくる。

あたしは戸惑った。

この気持ちは何？
こんなことってあるの？　あたしはプロなのに…。

「……不思議なひと……」

やはり男は何も言わない。
あたしは男の腕にしなだれかかり、静かに瞳を閉じた。
言葉の代わりに、男は優しく、そして強くあたしを抱き寄せてくれた。

（これでいいの……）

あたしは自分に言い聞かせた。

ほかに何もいらない。
朝になればあなたともお別れ。それでも構わない。
だから、今だけはあなたの胸で眠らせて……。

355 名前： 代打名無し＠実況は実況板で [sage] 投稿日： 2005/11/16(水) 10:22:34 ID:ecDbq8GE0
数日後、偶然にもあの人と再会した。
あの人はテレビの中にいた。
野球なんてほとんど興味のないあたしだったけど、その瞬間だけは画面に釘付けになっていた。

男がアップになった。
あの目、あの鼻、あのガムの噛みかた…。
間違いない。あたしは確信した。

画面に「大道典嘉」と出ていた。何と読むのかわからないけど、男の名前なのだろう。

あの人はバットを半分くらいの長さに持ち、ユラユラと体を揺らし、相手ピッチャーを凝視していた。
解説者の話だと、相手は球界を代表するピッチャーなのだそうだ。近い将来、メジャーリーグ行きが確実視されているという。
そんなエースピッチャーが大きく振りかぶった。素人目にも美しいフォームから、豪快に腕を振り下ろした。

356 名前： 代打名無し＠実況は実況板で [sage] 投稿日： 2005/11/16(水) 10:23:02 ID:ecDbq8GE0
「あっ！」


あたしは見ていられず、目を伏せてしまった。



……数秒後、テレビから大歓声が聞こえてきた。
おそるおそる目を開けてみると、あの人が一塁ベース上でにこやかにガムを噛んでいた。

打ったんだ……。
大エースからヒットを打ったんだ！

轟く歓声に、あたしの目は熱くなった。


ありがとう、あなた…。
ありがとう、優しいひと…。

「大道典嘉」
その名前を胸に刻んで、あたしは今日も夜の街で客をとる。


その男、大道典嘉。
男なら、大道。

257 名前： 代打名無し＠実況は野球ch板で 投稿日： 2010/04/22(木) 02:29:26 ID:5sbYGFce0
木村拓也コーチの追悼試合の日、男はキャッチャー星に代わって一軍登録された。

阿部、鶴岡に次ぐ、第三の捕手の出場機会は極めて少なく、
ファームで実戦勘を養わせたいというのが表向きの理由だが、
真相は、木村コーチの盟友に対する指揮官の気遣いによるものだった。

その試合、巨人の選手たちの気合いは凄まじく、序盤で試合を決定づけた。

大量のリードにより、主力を休ませる余裕が生まれたため、
阿部に代わり、８回表から鶴岡がマスクを被ることになった。

その裏の攻撃、鶴岡に打席が回った。

数十秒後、デジャヴュのような光景にチームメイトは声を失った。

死球を受け、打席にうずくまる鶴岡…。蒼ざめるベンチ…。

その瞬間、慌てる首脳陣を尻目に、男は無言でブルペンに向かっていた。

その男、大道典嘉。

男なら大道。

1軍登録という情報を見たので反射的にスレ立ててしまいました。
テンプレは前スレを参考に適当に貼りました。

大道さんが来シーズンも現役続行できますように・・・。

>>1乙

つうかプロ野球板って連投規制ないのかｗ

>>1乙
鷹ファンだがこれはwktk

このスレの前半のやたら長い自分語りのようなのはテンプレなの？
昔はこんなのなかったと思うけど

大道スレなんて初めて見たけど、なんだこのテンプレ
>>22の奴はちょっといい話だと感動してしまったじゃないか

まあ、大道が今年で引退するとしても、最後に一軍登録されるのは嬉しいね。
ファームでも腐ることなく野球に取り組んでいた証拠でもあるし。

スレ立て乙ｗ

相変わらず糞長いテンプレで吹いたｗ
今年で引退にしても一回くらい良い活躍見せて欲しいな

右の谷が全然ダメだし、打率だけなら昨年の大道さんの方が上なんだし

ついに大道とエドガーの共演が見られるのか
胸熱

出番なかったか
7回ゴンザレスの前にランナーさえ出ていれば・・・

師匠の活躍が観たい

9月18日の出場選手登録、登録抹消公示 （13時6分現在）

出場選手登録
読売ジャイアンツ　内野手　44　大道　典嘉
阪神タイガース　投手　20　筒井　和也
広島東洋カープ　投手　39　梅津　智弘

試合出たんだし書こうぜ

原監督使ってくれてアリガトウ

大道ど真ん中だったんだけどな…

決めれなくはない球だった