「今年は始めから全くいい結果を出せていないし、何をやってもうまくいかない。
投げる機会が少ないのも理由の一つかもしれない」
6月14日に共同通信社の記事に掲載されていたマイケルの試合後の談話です。
巨人へ移籍してからは、どうもパッとしないので気になっていたんですが、
まさかこれほどまで悲痛な声を聞くとは思いませんでしたよ。
春のキャンプではカットボールの習得に取り組んだりして、調整は順調だと聞いていたのですが、
開幕2戦目がケチの付き始めだった。
これが単なる1敗なら「たまにはこんなこともあるさ」で済ませられたのですが、
そういう話だけで終わらないのが巨人というチームの体質なんでしょうねぇ。
開幕戦に負けたこともあって、開幕2戦目は何が何でも勝たなければならない、
開幕カードの負け越しは絶対に許されないということで、
試合後は、まるでこの世の終わりかと思われるぐらい大騒ぎになりました。
この環境はマイケルにとって、文字通り「カルチャーショック」だったと思うよ。
ファイターズにいたときは、ランナーの一人や二人出したって誰も文句は言わなかった。
ヒルマン監督は「一番得意なボールを投げていれば打たれないんだから、言うことはない」と言って
スライダーを多投するマイケル(というか、オレの配球ですね)に何も言わずに任せてくれたし、
梨田監督も監督になりたての頃こそ、
「おい、中嶋。マイケルはもう少し何とかならないのか。
いくら何でもアイツの投球は心臓に悪すぎる」と言っていましたが、
オレが「いや、アイツはこれで問題ないんです。ランナーを出せば出すほどコントロールが良くなりますから」
この返事に梨田さんは、ちょっと考え込んだ後「そうか。それなら問題無しだ」と納得してくれました。
さすがは、現役時代強肩強打の捕手だった梨田監督です。
現役時代に数多くの投手を見てきたから、マイケルと同じような投手のことを思い出したんでしょう。
それが誰なのかを言ってもらえなかったのが残念ですが。
さて、オレが何を言おうとしているのか、読者の皆さんはもうお分かりでしょう。
そう、巨人の環境はマイケルには合わないということです。
これはね、巨人軍に存在する鉄よりも硬いと言われる巨人軍投手陣憲法が原因です。
1.投手の投球は直球を中心に組み立てることを尊しとする
2.救援のマウンドに立つ投手は、その場面と理由を問わず走者を出してはならない
巨人軍投手陣憲法が実際には何条あるのか知らないけれど、
外から見ていると、この2か条の存在は確実です。
オレは前回、マイケルはスライダーを投げさせてナンボの投手であり、
そういうことがまるで分かっていない捕手のリードは大問題だと書きました。
しかし、よくよく考えてみると、根本的な原因はもっと別のところにありました。
トレードの原因でもあるマイケルの代理人、ダン野村さんです。
こうなった以上、言わせてもらいます。
まだシーズン途中ですが、ダン野村さんは一刻も早くマイケルから手を引くべきです。
少しでも良い契約条件を引き出すというのがこの人の哲学のようだけれど、
マイケルを巨人へ行かせた事は、大間違いも大間違い、大失敗ですよ。
確かに、巨人に行けばマイケルはファイターズ以上の年俸で野球が出来ます。
しかし、ファイターズよりも上なのは、実は金銭面での条件だけです。
ファイターズには先に述べたような投手陣憲法は存在しませんし、
投球の組み立てについてもオレが受けている限りは、スライダーを軸に組み立てが出来る。
つまり、マイケルのパフォーマンスを妨げるものは何もないということです。
ダンさんは巨人というチームの体質だとか選手を取り巻く環境だとか、
野球評論家・近藤唯之さんの言葉を借りれば「鬼姑」である巨人軍OB会の存在について
ちゃんと調べていたんでしょうかねぇ?
支援
なるほど、巨人という球団は日本球界で最も伝統があり、一番高い年俸の見込める球団です。
この点については間違いないから、少しでも良い条件を得るというダンさんの哲学からすれば、
この選択は当然のことなのかもしれない。
(ファイターズのフロントも、マイケルの年俸については頭を悩ませていたそうです。
ただ、この話は夕刊フジがもっともらしく書いていただけに過ぎないのかもしれないけれど)
だけど、そのファイターズより高い年俸以外に何かマイケルのためになったことがありますか?
ハッキリ言って何一つとして無いでしょうが。
巨人というチームの環境を調べた上で、マイケルにとってベストの選択だと巨人移籍を決めたのか、
それとも年俸が高いというだけで巨人移籍を決めたのか、それが今一つ見えてこないのです。
代理人の役割とは何か。
とどのつまり、選手にとって野球をする上で最高の条件を整えること。これに尽きるのです。
しかし、大切なのは「条件」が金銭的な条件だけに限らないということです。
金銭的な条件以外の条件については、選手によって様々(チームの雰囲気や生活環境など)ですが、
言うまでも無く選手本人の考えが最大限に尊重されなければならず、
そのためには選手と代理人との意思疎通が物を言うことは言うまでもありません。
逆に言えば、それができなければ代理人失格と言われても仕方ないでしょう。
そして、選手本人が望んでいることと代理人個人の考えは
必ずしも一致しないということを理解していなければならないのです。
マイケルの「投げる機会が少ない」というコメントについても話がしたかったのですが、
紙面が尽きてしまいましたので、今日は一言だけにしておきます。
要は、原監督が開幕前に話していた「マイケルには8回を任せる」をちゃんと実行していたら
こんなことにはならなかったというだけの話です。