他でもありません。マイケルのことで筆を執ろうと思った次第です。
今さらながら、巨人にトレードが決まったと聞いた時は驚きましたよ。
チームのクローザーがいなくなる訳ですからね。
なにより、オレはバッテリーコーチという肩書きがある。
つまり、来るべきシーズンに向けて、マイケルの後釜に誰を起用するかを
梨田監督とともに考える必要がある訳です。
この話については、抑えは武田久に無事決まったので、もはや語る必要は無いでしょう。
今年は開幕2戦目でずいぶんと派手にやってしまったし、
その後も首が痛いということで、しばらく登板の機会が無かった。
マイケル本人は「春先に調子が悪いのはいつものこと」と言っているらしいけれど、
オレが見ている限り、単なる春先云々の話では無いような気がしてきた。
(特に2006年なんかは、開幕からバリバリ投げていたんですからねぇ。)
これはね、悪いけれど断言させてもらいます。
巨人の首脳陣がマイケルのことをまるで分かっていないんです。
開幕2戦目の失敗は、マイケル本人も移籍後初登板で力んでいた節があるので
多少は割引いて考えなければならないのだけれど、
その後も、調子が上がってくる気配がまるで感じられない。
何しろ、昨日のカープ戦でも点を取られている。
あまりに心配になったので調べてみたのですが、これはどうもマイケル本人の問題ではなく
巨人の捕手のリードに問題があるような気がしてきた。
手始めに昨日のカープ戦を調べてみたら、1イニング24球中16球とストレートが極端に多い。
オレは「これでは、どうにもならんなぁ」と思わずため息をついてしまった。
(昨日の捕手は1軍経験の少ない星君でしたから、
多少は目を瞑ってやらないとイカンのかもしれませんが。)
マイケルのことをよく知っている人は、思い出してもらいたい。
彼の最大の武器は何なのか。
そうです。打者から「分かっていても打てない」と言われるスライダーです。
困ったことに、これを巨人の捕手が活かせていなんですよ。
一般的には、「ストレートがあってこその変化球」ですが、
マイケルの場合はそういう考えは捨てないといけないのです。
確かに、マイケルのストレートは速いですよ。
その気になれば、150km近いストレートを投げることができますからね。
ただ、マイケルの場合、ストレートを軸にしての投球なんて考えたらイカンのです。
仮に、マイケルに10球投げさせるとしたら、
「スライダー、スライダー、カーブ、スライダー、スライダー、
スライダー、チェンジアップ、ストレート、カーブ、スライダー」
こういう組立てで投げさせないと駄目なんです。
「150km近い真っ直ぐを持っているのに、そんな投球をしなければならないのか?」と
考える人がいるかもしれないけれど、マイケルのストレートは基本的に見せ球という認識で良いんです。
要するに「変化球あってのストレート」です。
これは極論だけれども、松坂と同じレッドソックスに在籍してるティム・ウェークフィールド投手、
この人を連想してもらえれば良い。
彼は、よほどのことが無い限りナックルボールだけを投げるでしょう。
そして、たまに投げるストレートは120km前後だそうです。
つまり、ウェークフィールド投手にストレートを軸にした投球は無理なんです。
これと同じことで、マイケルの場合は、変化球がナックルではなくスライダーやカーブで、
あとは、たまたまストレートが150km近く出るというだけの話なんです。
それから、ランナーを一人や二人出したぐらいで騒ぐのも良くない。
ファイターズのファンには馴染みのある光景だったと思いますが、
ヒットなり四球なりでランナーを出した後に、
マウンド付近で帽子を取って汗をぬぐうような仕草をするでしょう。
あれは、「さあて、これからどう試合を盛り上げようか」と考えているのです。
そして、徐々に集中力を高めているのです。
マイケルの言葉を借りれば「concentration」です。
特に、ファイターズファンの人たちに思い出してもらいたいのですが、
彼がランナーを一人や二人出したところで、その後ガタガタと大崩れしましたか?
オレが受けていたから言う訳じゃないけれど、
4年間で片手で数えられるほどの回数しかないでしょう。
「投手の基本はストレートである」という考えも、分からなくはないですよ。
(自分で言うのもなんですが、オマリーへの14球はほとんどストレートでしたから。
ただ、あれは小林宏がストレートに一番自信を持っていたからこその投球です。)
だけど、巨人の首脳陣はそこに囚われすぎている気がして仕方が無い。
今後もストレートを軸にした配球を続ければ、マイケルは力を発揮できないまま
シーズンが終わってしまう危険も十分に考えられるんですよ。
巨人には古くから球界に携わってきたOBの方々がたくさんいますが、
多くの人たちは、「真っ直ぐを軸にした投球」が正しいと思っている人も多いし、
マスコミもどういう訳か「変化球の多投=良くない投球」と考えている節がある。
だから、マイケルにもストレートを軸にした投球を求めるのかもしれないけれど、
それは先にも述べたように、ウェークフィールド投手に、ストレートを軸にした投球を要求するようなものなんです。
つまり、土台無理な話なんですよ。
せめて、今日これを読んでくれた巨人ファンだけでも、そこを理解してもらいたいなぁ。