2009/04/21, 日本経済新聞 夕刊, 17ページ
バレンタイン監督の今季限りでの退任を決めたロッテの動揺が続いている。
監督続投を求める署名活動が起こり、売り上げ増に貢献してきたフロントの
職員が次々と退社を決め、人事上の扱いを不満として訴訟を起こす可能性も
出てきた。成績や球団経営にも影響しており、親会社のロッテ本社が独自の
調査に乗り出す異例の事態になっている。
千葉マリンスタジアムでは、今季開幕戦からファンが署名活動を展開し、
試合中も旗や横断幕で続投をアピール。矛先は球団幹部に向かい、試合後に
事務所前で瀬戸山隆三社長らを非難、監督の応援歌を歌い続ける集団もあった。
重光昭夫オーナー代行の紹介で入社した職員が、球団実務の経験が乏しいま
まに幹部として重用されていることなど「体制」への批判も見受けられる。
フロント内部では今年一月、売り上げ目標を達成できなかったことなどを
理由に降格・配置換え人事を実施した。この余波が収まらず、10人以上の
退社が決まり、業務に支障が出ている。今年のファンクラブ会員証に「LOTE」
(正しくはLOTTE)と印刷ミスをしたまま配布し、球団が謝罪する一幕もあった。
1年間の給与とひき換えに出社を拒否された球団スタッフや職員もいる。
その中の1人は雇用契約違反だとして球団に内容証明を送付し、訴訟も辞さない
構えを見せている。また、労働組合への参加を目指す動きもある。
ロッテは現在リーグ最下位。営業も振るわない。ロッテ本社もこうした事態を
重視。関係者から独自の聞き取り調査を始めた。
重光オーナー代行は今週、瀬戸山社長と会談する予定。同社長による球団の
運営責任と、バレンタイン監督の処遇問題は表裏一体となっており、親会社の
判断が注目される。
ロッテの観客動員は昨季約160万人と、パ・リーグ3位の人気を誇る。
だが他の球団と同様、社員は100人にも満たず、オーナー経営の色彩が濃い。
閉鎖的な経営体質と、公共物としての開かれた球団を求めるファンとのギャップが
今回の騒動につながったともいえ、球界全体に波紋を広げそうだ。(摂待卓)