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しかし一方で、巨人も変わったな―と強い感慨も抱いた。
『適材適所は才能集団をしのぐ』。
これは私の信念でもあるが、巨人でも今シリーズで活躍したのは鈴木、亀井、坂本、脇谷、西村、越智、山口…と、適材適所に配置された選手だった。
9つの守備位置は「ポジション」と呼ばれてそれぞれ役割が違う。攻撃でも打順のひとつひとつは「ポジション」でありそれぞれ役割がある。
巨人は長い間、努力の方向性を誤ってきた。4番の補強ばかり全力を注ぎ、時に制度さえ変えてきた。適材適所を軽視した編成によって、チームは弱体化した。
「チーム作り」に不可欠なものは、「管理」「育成」「教育」であるが、今回活躍した「陰の部分」で働く選手たちの出現に、私は「変わったな」と感じたのである。
シダックスの監督をしていた04年、対戦相手の東京ガスに、俊足で思いきった攻撃をする選手が東京ガスにいた。片岡である。
西武が獲得すると聞いて、「いかにも機動力を重視する西武らしい補強だ」と納得した。
この日チームの『気勢』を上げて、日本一に輝いた姿を見て、西武の伝統はこうして作られていくのだと感心した。栗山、中島、中村も1位指名ではない。
私はスカウトに「努力してできないものを持っている選手を集めてほしい」と要望するのだが、歴史に裏打ちされた西武の編成方針には感嘆する。
日本シリーズは、選手育成の絶好の場―。
経験に即した、私の実感である。若い選手が、大きな貴重な体験をして、大きく成長する。
楽天の選手は何を感じたか―。
来季こそ、これを味あわせてやりたいものである。