オリックスバファローズバトルロワイアル第5章

「201・優しさの行方　2/4」 ◆UKNMK1fJ2Y [2008/07/20(日) 13:35 ID:cFwqNvDg]
ネッピーの肩に掴まり自分の両足で立とうとしてはいるのだが、眠り続けた時間と鋭い太陽光
線が菊地原の体力を奪い去っていた。震える足、揺れる視界の全てが香月を有利にしていた。
「香月……俺だ、菊地原だ」
懸命に話しかける。
「香月、どうした、落ち着け」
ゆらり、と香月はまるで炎が揺れるように体を動かす。
「香月」
菊地原が一歩前へ出ようとする。その肩をネッピーが止めた。
「菊地原さん、危ない」
「……大丈夫だ、あいつを……あいつをなんとかしないと……」
また1歩、菊地原が歩を進める。
「なあ、香月……どうしたんだ……俺に話してくれ」
矛を地面に刺したまま香月は重心をやや前に倒した姿勢で、上目遣いに菊地原を睨みつけた。
その目の下にはクマが出来、無精髭も相まって独特の迫力を醸し出している。
「香月、話してくれ。思い出せることからでいい。何があったんだ？」
真摯に菊地原が問いかける。掠れた声ではあったが、優しさに溢れていた。
「弱音を吐くだけでもいい。俺に話してくれ……」
よろりと菊地原の体が傾く。慌ててネッピーがその体を支える。菊地原は手で「すまん」と合
図をしてネッピーに微笑みかけた。そして再び香月の方を見る。
「香月……話をしよう。俺と話してくれないか」
少しだけ、香月の引き攣った目が緩んだ。
「香月、何に怯えているんだ？」
少しだけ、香月の唇が震える。
「………追われ……て…………」
「誰に？」
穏やかな問いかけに、また香月の視線が揺れる。
「…………くぼ……さんと………」
「え？誰だ？聞こえない」
子供に話しかけるように菊地原が続ける。
「話が聞こえなきゃお前を守ることも出来ない。もうちょっと大きな声で話してくれ」

※改行規制が入ったため、勝手ながらこの節２分割させてもらいました
　 ◆UKNMK1fJ2Y氏、大変申し訳ありません

「201・優しさの行方　3/4」 ◆UKNMK1fJ2Y [2008/07/20(日) 13:36 ID:cFwqNvDg]
お前を守る、という言葉に驚いたのか香月が目を見開く。一瞬ネッピーはビクリと体を震わせ
て警戒したが、菊地原はそのままだった。まだ体の不安定さはあったが、思考は今までよりも
しっかりしているようだった。香月と話しているうちに自分を取り戻してきたのだろう。
残るは香月だ。ネッピーは一抹の期待を込めて、菊地原と香月を交互に見つめた。
少しずつ、香月の表情が穏やかなものに変わってきていた。
「………大久保……さんと………谷さん………」
「大久保と……谷さんか。2人ならここにはいないぞ」
「………いな……い………？」
「ああ、香月、その2人が恐かったのか？他に何が恐いんだ？」
ずっと堪えていたのだろうか。香月の右目から、とうとう大粒の涙がひとつこぼれ落ちた。
「…………ずっと………殺して…………いつか……殺され………死にたく……ない………」
「香月、落ち着こう。俺もネッピーもお前を恐がらせたりしないから」
1歩、菊地原が香月に歩み寄る。香月もすがる様な眼差しで菊地原を見た。
「香月、もう大丈夫だな？大丈夫だ」
菊地原がまだ力の入りきらない左手を差し出す。香月は怪訝な色を残した表情ではあったが、
背中をトンと押せば泣きながら両手を伸ばして菊地原にしがみつくのも時間の問題と思われた。

（香月さん！信じて！）
心の中でネッピーが叫び祈る。その声に応えるかのように、矛を支えていた香月の両手のうち、
右手が静かに離れた。ゆっくりと、目に見えない何かに怯え震える右手が、支えを求めるよう
に菊地原へと差し出される。
（香月……！）
菊地原が微笑み、更に自分の手を前へと差し出したその時。
森のどこかから、一斉に鳥たちの大群が音を立てて飛び立った。その数は10羽ほどだっただ
ろうか。だが甲高く鳴き、その羽が枝を打ち、緑の葉をザザザッ！と鳴らす音は、この島の静
寂を破り、人々を驚かせるには十分過ぎる大きさで響いた。
ビクリ、とネッピーが体を震わせる。と同時に香月の体が一際大きく震え、
「あああああああああっ！！！！」
絶叫と共に、矛が本来の役割を果たした。
その光景はまるで、菊地原の体から矛が生えていて、その先を香月が支えているように見える
　　滑稽なものだった。

「201・優しさの行方　4/4」 ◆UKNMK1fJ2Y [2008/07/20(日) 13:36 ID:cFwqNvDg]
「………がっ！」
呻き声と共に、菊地原の口から血が吹き出す。
「うああっ！うあああああっ！！」
香月が矛を抜こうと暴れる。切っ先が引っかかってしまっているのか、菊地原の体ごと揺する。
そのたびに矛先は菊地原の腹の内部の肉を裂き、更なる出血を見た。
「敵だ！敵だぁっ！！」
再び香月は叫び、力の限り大きく矛を振り回した。ようやく菊地原の体が外れ、数メートル離
れた場所へと振り払われ、崩れ落ちた。
「菊地原さん！！」
ネッピーがその体に飛びつく。香月の悲鳴のような絶叫は木々の奥、遠くの方へと消えていっ
た。ネッピーは菊地原の頬を軽く叩いた。腹部から溢れ出る血を止めたいのだが、何をどうす
ればいいのかもわからない。ひたすら菊地原の名を呼び続けた。
「菊地原さん！しっかりして下さい！菊地原さん！頑張って！すぐ……すぐ田中さんが帰って
きてくれますから！」
田中が戻ってきたとしても、適切な治療が出来るかどうかも怪しい。だが今のネッピーに出来
ることはそれしかなかった。
いつの間にか、ネッピーの頬を涙が伝っていた。
「菊地原さん！菊地原さん！！」
菊地原の優しさが裏目に出てしまった。香月から逃げればよかったのか。
小さくゆっくりと、菊地原の唇が動く。
「………黒……田…………」
懐かしい仲間の名を呼ぶ。
「………俺………もう朝飯………1人……じゃな……い………心配……いらな………」
こぽり、とまた血の泡が口の端から零れる。
「…………元気……かな…………建……さ…………」
コフッと小さく咳き込み、それきり菊地原の唇は動かなかった。

【×　菊地原毅　残り・14人？】

「202・優しさの迷路　1/2」 ◆UKNMK1fJ2Y [2008/07/20(日) 13:37 ID:cFwqNvDg]
香月と菊地原が出会うほんの少し前、3人が立ち上がり、歩き始めた。
流れる涙を隠しもせず、肩を震わせながら何度も後ろを振り返る下山。
やはり涙を流し、その下山を支えるようにしてそれでも前へと進もうとする光原。
2人を後ろから見守るように、まるで感情を失ってしまったかのような表情で、けれど周囲へ
鋭い視線を張り巡らし、唇を震わせながら右手の銃と白い旗を離さない高木。
『Cafe Bs』は、再び静かな時間を迎えていた。
カウンターの奥、相川は珈琲を作り始める。自分用に。自分の気持ちを落ち着かせる為に。
あのドアの向こう側、一体何人の遺体が横たわっているのか。
何故自分は墓守の役を与えられたのか。
何故自分はまだ狂わないのか。
カランと氷をひとつ、グラスの中に落とす。
（戦う勇気のない人間にはお似合いの場所か）
さっき、下山たちが旅立つ時、デイビーが励ますように順番に3人の肩に手を置いた。その時、
高木の手に小さな紙片を握らせているのが見えた。見えてしまった。
（あれは何だったんだろう）
オーナーへの裏切り行為だったとしたら？
ひょっとしたら、デイビーはこの島の脱出方法を知っているのでは？
もうひとつ、グラスに氷を入れる。
「相川さーん、このマップなんですけどね」
気の抜けたような声で岸田が尋ねてくる。この青年だけは異次元だ。こんな息苦しい状態の中
で、殺戮のゲームを楽しんでいる。ある意味、外側にいることが保障されているからか。
「表示されてるのって、選手の背番号だけじゃないですか。ネッピーとリプシーも表示されま
せんかね？」
「はあ？」
「ほら、あの2人だって立派に背番号持ってるじゃないですか。だから表示されませんか？」
「バカ。この表示は選手のつけてる首輪からサーチしてるんだよ。あの2人は首輪はつけてな
いんだろ？後からこの島に来たんだろ？」
「そこをオーナーの力でなんとか」
「じゃあ自分で頼めよ」
「ちぇっ」

「202・優しさの迷路　2/2」 ◆UKNMK1fJ2Y [2008/07/20(日) 13:38 ID:cFwqNvDg]
岸田は小さく呟くと、銃をベルトに挟んで外へと出た。特にあてもなく、『Cafe Bs』の周囲を
歩く。遠くへは行けない。選手の誰かに見つかってもいけない。
ただ1人、この島で自分を見つけたのはリプシー。
（リプシー……どこにいる？）
彼女だけは無事に帰らせてあげたい。彼女に罪はないのだ。
なのに彼女は自らこの死の島へと飛び込んできた。選手たちを救い出す為に。
（本当のことを知ったら……俺は救い出してはもらえないな）
オーナーに加担したのだから。成り行きではあったが、自分を守る為、オバミュラーを殺した。
そしてこのゲームの中で特殊な位置にいる。
（リプシー……君だけは救いたいんだ）
少し開けた場所に、10数羽の鳥達が遊んでいた。キラキラした陽射しを浴びた長閑過ぎる風景
に、岸田は小さく舌打ちをする。
（いつ奇妙なウィルスが流れてくるかもわからないのに）
南からの風が吹いたらおしまい。岸田は左手をポケットに突っ込んで、自分用の青いカプセル
を確認した。
「………畜生！」
爪先で地面を蹴る。偶然小石に辺り、その石が鳥達の中へと飛び込んでゆく。途端に一斉の羽
音と甲高い泣き声。驚いた鳥達が木々を揺らして大空へと飛び立っていった。
「畜生、空を飛べる奴らはいいよな！」
どこかで誰かの絶叫のようなものが聞こえたような気がした。
それを気にすることなく岸田は『Cafe Bs』へと戻っていった。

【残り・14人？】

「203・優しい狂気　1/2」 ◆UKNMK1fJ2Y [2008/07/20(日) 13:39 ID:cFwqNvDg]
香月と菊地原が出会ういくらか前、2人はようやく出会った。
子供のように泣きじゃくっていた阿部が落ち着きを取り戻し、水口は改めて周囲を見た。
萩原が仰向けに倒れている。その体からは血が流れ出ており、明らかに絶命していた。
その横に川越がしゃがみこんでいる。虚ろな眼差しで萩原の体を見つめたままピクリともしな
い。2人の間には銀色に光る銃が落ちている。川越の手と膝には血がついている。
1匹の子猫が、萩原の体に縋ってニィニィ鳴いている。
この光景が意味するものは何か。
単純に考えれば川越が萩原を殺したと想像出来る。だが川越の様子があまりにもおかしい。
「阿部、何が起こったんだ？塩崎とガブは？」
阿部は袖で自分の目元をゴシゴシと拭うと、小屋の方を指差した。
「俺も……よくわかりません………ここに来たら、あの小屋の中で……塩崎さんとガブさんが
………見ない方がいいです。酷い状況です。グチャグチャです」
水口の袖を引きとめるようにしっかりと掴む。
「殺されたのか」
「………多分」
「オギは？」
「わかりません。俺が小屋の中で吐いてたら銃声が聞こえて、オギさんが倒れてて、川越さん
がああいう状態でした」
肩の力を落とし説明する。
「俺、【Ｋ】を集めるトラップタイムの時、川越さんのグループに合流して助かったんです。俺、
【Ｋ】をひとつも持ってないから。俺が叫んでたら川越さんが呼んでくれて……その時から一
緒に行動してたんですけど……時々、川越さん変になるんで……」
「まさか……？」
水口は鞄に手を突っ込むと、１枚の紙を取り出した。
「俺がこの小屋を出る前に、ガブが俺に渡したんだ。自分に何かあったら読んでくれって。あ
いつはずっと川越に対して謝ってた。俺たちと合流する前、ガブと川越は2人で行動していた。
ガブは……何か知ってたんだ！」
急いで四つ折りになったその紙を開いた。
殴り書きのような文字が並んでいた。

「203・優しい狂気　2/2」 ◆UKNMK1fJ2Y [2008/07/20(日) 13:40 ID:cFwqNvDg]


『川越さん、ごめんなさい。本当にごめんなさい。申し訳ありません。俺はあなたに催眠術を
かけました。生き残る為です。川越さんと俺が生き残る為です。川越さんは優しいから、誰か
を殺すことなんて出来ないと思います。だから催眠術をかけました。キーワードは【敵】です。
川越さんの【敵】だと指示すれば、川越さんが相手を殺すように、戦うようにしました。催眠
術を解く時、手を打つ音を合図にしようとしましたが、その時何か違う音がして、川越さんの
催眠が醒めました。だから、催眠術の解けるキッカケは自分でもよくわかりません。でも大き
な音を立てれば大丈夫だというようなことが説明書には書いてあったと思います。今の川越さ
んは無敵なはずです。誰よりも強いはずです。生き残れるはずです。悪いのは俺です。川越さ
んじゃありません。川越さんが誰かを殺したのは、全部俺の命令です。俺が殺したのであって、
川越さんではありません。でもこうでもしなければ川越さんは生き残れません。川越さん、生
き残って下さい。また野球をして下さい。川越さんはずっとカッコいいままでいて下さい。何
があっても諦めない、挫けないのが川越さんです。絶対に生き残って下さい。

ごめんなさい。

本柳和也』


文章を読み、水口は目を閉じた。阿部はこれまでの謎がやっと解けた気がした。
催眠術にかかっているなら、奇妙な記憶の空白の意味もわかる。時折揺らいだ川越の意識も。
その時、どこかから一斉に鳥が飛び立った。甲高い鳴き声を上げて大空へと飛び去ってゆく。
その音すらも気にならないほど、2人は文面に意識を奪われていた。
少しして、間近でサクリと土を踏む音がした。2人がようやく顔を上げる。
子猫を抱いて哀しそうな目をした川越が、水口の持つ紙面をじっと見つめていた。

【残り・14人？】

◆UKNMK1fJ2Y氏だけでなく、このバトを楽しみにされている読者の方に対しても
代行がエラー出たためとは言え勝手をしたことお詫びします
（ただ、「203・優しい狂気」が両方「2/2」だったのでそこは片方「1/2」にさせてもらいました）

◆UKNMK1fJ2Y氏、規制早く解除されるといいですね

職人さん＆代行さん乙です。
菊地原やさしいよ菊地原。
川越さんのグループはこれからどうなるのだろう。

職人様、代行様おつかれさまです！

香月は正気に戻れなかったのか……
そして川越さんは知ってしまったのか……

乙です　川越さん知ってしまったか

宮本本塁打打たれた…
がその後三者三振
最初から気合い入れろや

オリ新スレ立てようとしたら、はじかれた・・・

保守

ほしゅ

４連勝記念保守

k

スレ乱立のため保守！
勢い２を切ったらやばいよ

やばそうなので保守

ほしゅ

捕手

グランドスラム保守

a

ほしゅ

b

ほ

ＢＳ

ほっしゅ

１

新作投下期待昆布

bs

昆布

高級昆布

そこらへんの昆布

シドニー

帰ってきた昆布

山車

大輔も忘れないで＞＜

ほしゅーーーーーー

1

勝利保守

連勝保守

捕手
ひ、日高は打ったの…？

連敗　涙の保守(-_-;)

勝利保守

スカイ花火保守

１１連戦勝ち越し保守

ほしゅ

明日試合見に行くよ保守