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代打名無し@実況は実況板で:2008/04/28(月) 09:06:16 ID:kffJ6vD0O
に
35.強者の論理
昔からアクション映画が好きだった。
人間同士で派手に傷つけあい、時には殺しあったりする姿。
テレビ画面の向こう、自分の居る場所とは別次元で繰り広げられるそれを、ドキドキワクワクしながら見ていたものだ。
今にして思えば、それはやっぱり不謹慎だったのかもしれない。
何せ今、こうして罰が当たったような事態に巻き込まれているのだから。
僕――高井雄平(背番号41)は今、バトルロワイアルという恐ろしいゲームに参加しているのだった。
住宅街の路地裏の荒れた道に蚊がぶんぶん飛んでいる。
とても不気味でうっとうしい。
それでも僕はめげずに歩く。
僕の耳には、一つの足音が届いている。
薄紫に近くなっている空の下、僕のものではない、誰かの足音が。
これだけならまるでホラー映画だが、それでも僕が何とか怯えないでいられるのは、それが僕の味方らしいということがわかっているからだ。
「どうした? 元気ないぞタッキー」
場違いなまでに明るい声で、ワタさん――度会博文さんが話しかけてくる。
度会さんと会えたのはほんの偶然だった。
ほんの一時間近く前まで、どこへ行ったらいいかわからず、僕は生い茂る草木の中で途方に暮れていた。
そこへ現れたのが度会さんだった。
それからは、とりあえずまずは夜を越すための仮住まいを探そうという度会さんの意見に僕が同意し、
島中心部の市街地を目指した結果、今こうしているというわけだ。
「そ、そんなことないですよ」
「嘘つけ! 俺だって、明るさだけがお前の取り柄だってくらいよーく知っている」
「それワタさんのことじゃないっすか」
微笑みながらさらりと僕をいじろうとしてくる度会さんに、僕はすぐに反撃する。
度会さんと出会えたのは僥倖だったと思う。
明るい選手が多いヤクルトの中でも、ひときわ目立つ明るさとおもしろさを持つ人。
いつもニコニコ笑っている、誰よりも明るく大きな声を出すムードメーカー。
こんな恐ろしい状況の中では、ある意味誰よりも一緒に居て心強い存在の人だった。
どんなに不安でも、この人の明るさが全てを吹き飛ばしてくれる。それがこの人のキャラクターなのだ。
「何を言う。俺の目を見ろ。俺はいつでもこの二重まぶたを一重にできるというりっぱな特技があるのだ」
「それ野球と関係ないでしょ」
バカバカしい自慢をする度会さんに、僕はさらにツッコミを重ねる。
度会さんの様子には無理をして空元気を出している様子は見えない。どこまでもいつも通りだ。
しかし、底抜けの度会さんの様子に対し、僕の声にはどこかハリがないことが自分でもわかる。
その理由は、何となく自分でも感付いていたのかも知れない。
そう、確かに度会さんに出会えたのは僥倖“だった”のだ。
少し前までは、僕もそれを疑わなかった。
だが、分かるのだ。奇妙な不安が奇妙な形で僕の心に徐々に入り込んできているということに。
「お、あそこに良さそうな家があるな。あれにすっか」
路地裏を抜けると同時に、出口のはす向かいにあった家屋を指差して度会さんが言った。
洋風の一戸建ては割と小粋な感じで、確かに度会さんのようなマイホームパパが気に入るのもわかる気がする。
僕は何も言わなかった。
度会さんは鼻歌を歌いながら、そのままやや広くなった道を突っ切り玄関の門に入っていった。
自然に。そう、自然すぎるほど自然に。
「ただいまー、パパ帰って来たよー」
ホームドラマのような台詞を冗談めかして言いながら彼は敷地に侵入する。
その瞬間、僕の心の何かが限界点を越えた。
まるでそこが我が家である様にふるまう度会さんを見て、僕は一つの決心をした。
度会さんがドアノブを掴む。何の確認も、ためらいもなく。
僕は彼の背後にそっと近づき、そして。
「ワタさん、動かないで下さい」
ずっと持っていた僕の武器の日本刀を構え、彼に突きつけた。
そして聞く。
「ワタさんは、この状況が怖くないんですか?」
動かないで、と言ったにもかかわらず、平気で振り向いてこちらに正対してくる。
そんな度会さんの表情は、相変わらずの穏やかな笑顔だ。
「おやおや、穏やかじゃないねー。何の冗談?」
「冗談じゃありません!」
震える腕を押さえながら、僕は日本刀をがっしりと握りしめる。
緊張で今にも取り落としそうだ。体育の剣道、もっとちゃんと習っておけばよかった。
「おかしいんですよ。そんなに落ち着いていられるなんて」
顔を上げ、意を決して度会さんと目を合わせる。
度会さんの存在は確かに心強かった。
恐怖を浄化するかのような、さわやかな笑みはまるで聖母のようで。
だが、一歩一歩進むごとに、それは段々疑問に変わっていった。
――どうしてそんなに、いつも通りでいられる?
僕は怖かった。ただ怖かっただけでなく、いろんなものも見て、聞いて来た。
部屋で聞いた銃声。そして、それを聞いて別人のように取り乱していたマツケンさん。
外に出たばかりの所に、おどろおどろしく広がっていた血痕。
全てが僕に、これが映画の中とかでは無く実際に今おこっていることだというのを教え、突きつけてきて。
とうてい、いつもの様に明るくしているのなんて無理に決まっていた。
なのにこの人はずっとそうだ。
日本刀を持ってふらふらしている僕に平気で声をかけてきて。
何度も銃声が聞こえてきているのだって分かっているにもかかわらず、人の多そうな市街地を目的地として。
誰に聞かれるかも分からないのに、無頓着に大声を出して。
誰かが中にいるかも知れないのに、おくめんもなく家の中に入ろうとして。
何より、その間中ずっと手ぶらのまま、いつもと何一つ変わらないニコニコした顔のままであって。
「何で笑っていられるんですか? 怖いのが当たり前でしょう!
俺は今も怖くて仕方がない、いや、俺だけじゃない、
亮くんもマサさんもヤタローさんもゴリさんも他の人達も、みんな今すっごく怖い目にあってるんじゃないかと、すごくすごく心配なんです。
度会さんはそういうのとかないんですか? 怖くないんですか?
仲のいい人が心配だとかなんとか、そういうようなのが、普通あるべきなんじゃないですか!?」
「おいおい少し落ち着けよ。近所迷惑だぞ?」
なだれのように次々と言葉をぶつける僕に対し、尚も笑みを崩さずに度会さんがなだめる。
しかしその笑みはいつの間にか固まっていて。
僕はもはや、彼が本当に僕の味方なのかどうか分からなくなっていた。
とりあえず彼の忠告を素直に受け入れつつ、深呼吸する。
そして先程から少しずつふくらんでいた疑念を静かに尋ねる。
「ワタさん、ホントは全部知ってるんじゃないですか?」
「全部知ってるって、何を?」
「だから、このゲームについての、すべてです」
根拠などあるはずがなかった。自分でもいいかげんなことを言っていると思った。
ただこれならば説明がつきそうな気がした。
その奇妙な疑念のみが僕を舌ごと突き動かした。
表面だけでも優位に立っているという事実が、僕をじょう舌にさせたのかも知れない。
度会さんの顔に一瞬だけ戸惑いが浮かぶが、それもすぐに消え、笑顔が構成され直していく。
心強いはずの笑顔、しかしそれには、魔性の、という形容詞が当てはまるのかも知れない。
「すべて、ねえ。ある意味そうなのかも知れないな。俺は何もかも知っているし、何もかも知らないとも言える」
「ふざけないでくださいよ。こっちは真剣なんです」
「真剣とか言うわりにはすごく面白すぎる気がするけどね。要するに、俺がいつも通り元気がいいのは、俺が殺される心配がないから。
つまり、俺が伊東さん達の仲間だから、と言うわけだろ?」
「……察しがいいですね。ええ、そうですよ。俺はそれを恐れてるんです」
「この俺を? 本当に?」
「……はい」
声が震え、顔が強張るのが自分でも分かった。
もしかすれば、自分はとんでもない怪物を相手にしているのかも知れない。そんな考えが頭をもたげてくる。
これはアクション映画のように、最初から主人公が勝つと決められているイベントではない。
言うならばまさに野球の試合。
誰が勝つか分からない、そんな緊張感がそこかしこに漂うのがデフォルトだ。
そんな中でも、あんな風に、清々しいまでに笑っていられるのは、悪魔か、怪物か、あるいは……
と、その時。
「……プッ、アハハハハハ! だめだこらえ切れねー、ワハハハハハハ!」
彼の笑顔が、感情が。せきを切ったように、爆発した。
僕は思わずぽかんとなる。
展開が読めない。こうなるともうわけがわからなくなる。
気勢をそがれて、日本刀を持つ腕がだらりと下がった。切っ先が足元を削って少し隠れた。
「まさかとは思ったけど、ホントにそんな目で見られるとはねー。
俺にそんな悪役なんてできるわけないことぐらい、みんなが一番よく知ってるって思ってたのに」
ようやく爆発がおさまり、自分が怪しまれてるという状況なのにむしろ嬉しそうな様子で度会さんは言う。
実際、僕はまだ度会さんへの疑いを解いてはいない。なのに彼はまるで僕にとりあってくれない。
真実なのか、それとも演技か。
どちらにしても恐ろしいと思う中、彼は続ける。
「まあね、疑われるのは別にかまわないよ。
ただ知っておいてほしいのは、俺は別にただ安心してるから笑っているわけじゃないんだ。
これでもまあ俺なりに頑張っているつもりなんだけどね」
「……意味がわかりません」
「ただあいつ等の希望通りにしかめっ面してるのもしゃくだと思わない?
それに俺はみんなを信用してるから。みんな誰でもちょっとした間違いくらいするもんさ。今のタッキーのようにな」
そう言ってこめかみを掻きながらはにかむ度会さんには、僕を責める様子はない。
信頼できるのだろうか。それともまるめ込まれているのか。
「銃声はちょっとした間違いで済まされるんでしょうか?」
「一度本物の銃を試し撃ちしてみたかったってだけかもしれない」
「試し撃ちにしては多くてまばらすぎる気がしますけど」
「細かいことは気にしないの。
いずれにせよ、俺はあんまり怒ったり悲しんだりもしたくないし、何よりムードメーカーが落ち込んでたら話にならないだろ?。
だから深く考えずに、とりあえず笑っていることにしたんだ」
不安材料を並べても次々と跳ね返していく彼の笑顔は、夕方の日差しの中うさんくさいほどに輝いていた。
この分では血痕のことを言ってもむだだろう。
そして度会さんは最後にこう付け加える。
「とりあえずさ、タッキーも笑おうよ。タッキーにはそんな顔は似合わないよ」
それにほら言うじゃん、笑う門には福来たるって。
そう言うと、彼は返事も待たずにドアを開け、家に入っていった。
「笑う門には福来たる、か」
土に刺さった日本刀に目を落とし、小声で呟く。
僕はそんなに頭がいいわけではないから、どんな意図をもってその言葉を使ったのかはどうにも推し量れない。
だけど、もしそれが、裏切りの言いわけなんかではなく、純粋意志によるものならば。
それはもしかしたら、一番の強者の論理なのかもしれない。
だってそうそうあり得ないじゃないか。笑っているだけで何かに打ち勝つなんて、それこそ最強だ。
そう、どっかの映画の主人公のような都合のいい、でも夢のある、そんな話。
「ふふっ」
僕は笑った。唇を吊り上げ、その状態を維持した。
もしかしたら手中にはまっているのかも知れない。マツケンさんとかの変わりようを見た今、この変わらなさを信じるのは危険なのかも知れない。
だが今はそれでもいいような気がした。
今は深く考えるのをやめよう。そして安心しよう。
少なくとも今すぐに殺されたりはしない。
それに、彼が正しければ、やっぱり僕は最強の味方をつけている。
嫌な事を何もかもすべて吹き飛ばしてくれる最強の味方。そういうことになるのかもしれないのだから。
ぶ厚そうなドアの向こうの、ニコニコ顔を思い浮かべる。
俺はこの笑顔でこの世界を生き残る。そんな元気な声が聞こえた気がして、少しおかしかった。
【残り44名】
新スレになりました。
完走は目標だっただけにdat落ちは無念でしたが、今度こそ頑張りたいと思います。
これからもよろしくお願いします。
乙ですよ
乙!!!
dat落ちさせてしまってすまないです・・・
統合に新作読まないでdat落ちしてしまったという方がいたので貼ってみました
乙です。
dat落ちしない条件ってどれくらいですか?
スレ建て&新作、慎也しく乙です!
度会さんがとりあえずニコニコ( ^ー^)してて安心
hosu
乙です
いつも楽しませてもらってます
保守
22 :
代打名無し@実況は実況板で:2008/04/30(水) 01:59:38 ID:DE7PE6Hq0
>>1 r:::.:.::_:::(:::::::::::::::... ::::.ヽ..
{ :::::;:;:;リ^|,ヾヘ..:::::::::::ヾ辷_
(.::;r' ' ヽ:::::::::::::::-=
j:;} ..,,_ヾ::::::;;:;;z::|
___/ ̄/ 1::|,;r'".._ _ _. ‐_ "''._ヾ.,;:::}
/___  ̄/ __ __ __ {(i'' ,.⌒、_'.`'ン' ̄ ::';`_ミ こ、これは別に乙じゃなくてオッケーイの途中なんだから
_ノ ,: / // /// / `;:{` ´.; :, .:: ::';{_,;リ` 変な勘違いしないでよねっ!
/_ノ,___/  ̄  ̄/_/ {l:. ;、,_:.) ..: ;;';._,イ`
ヘ ;',_,,,_ 、 , j" |:::{
ヽ: `゙-‐` :'; ,ソ /ヾ、
ヾ、,_,,,/// / \
試合前保守
捕手
川本
福川
米野
小野・・
30 :
代打名無し@実況は実況板で:2008/05/02(金) 10:58:33 ID:N4jxlmgI0
衣川
水野
小山田
青柳
秦
八重樫
君波
ふ・・・ふる・・・古田!
根来
鮫島
細見
吉見
はた
ほ
44 :
代打名無し@実況は実況板で:2008/05/05(月) 15:43:19 ID:JNEBQ687O
飯田
野口
46 :
おがわまち:2008/05/06(火) 11:04:23 ID:ew9ahnpk0
青木が離脱!?
アトムズのユニフォームをかっこわるい発言した罰があたったねー。
手塚先生とあのVANの名デザイナー石津さんの怨念かもね?
今年の青木はダメでしょ(笑)。
大矢
中西
芦沢
イシカー月間MVPおめ捕手
ほしゅ
高橋
江花
ほ
奥宮
金森
ほ
期待保守
59 :
代打名無し@実況は実況板で:2008/05/11(日) 10:49:20 ID:7e2SVlsNO
捕手
城石…も万が一の時のため練習中らしい捕手
保守
保守
ほ
土橋…もかつては万が一の時のため練習してたな捕手
ho
shu
ho
shu2
H
ほ
71 :
代打名無し@実況は実況板で:2008/05/17(土) 23:52:19 ID:195Os0hG0
hosyu
72 :
代打名無し@実況は実況板で:2008/05/18(日) 21:24:32 ID:kfAt38900
kinugawa
ho
真中さんのデイバッグに入っていたのが
アボカドに似た手榴弾じゃありませんように…
イチゴのきもっち♪
保守
ほしゅ
hoshu
78 :
代打名無し@実況は実況板で:2008/05/23(金) 10:05:15 ID:6sBogLD+O
へしゅ
ほしゅ
h
81 :
代打名無し@実況は実況板で:2008/05/25(日) 11:25:50 ID:eR8NGUUrO
ほ
燃料投下マダー