マリナーズのイチロー外野手が、自身の持つ公式戦24打席連続無安打を上回る26打席連続無安打を記録した。未だかつて経験したことのない試練をイチローは迎えているようだ。
この不調の原因を、イチローは淡々と取材陣に話してくれた。
「僕はリッチー(マリナーズ・セクソン一塁手)と約束したんです」試合後のロッカールームで、イチローは険しい表情を崩さずに話し始める。
「新年にエイドリアン(マリナーズ・ベルトレ三塁手)とリッチーと三人で飯食べたんです。その時にどうしたら理想的な本塁打が打てるかという話になった。ムネと宣親はヒットの延長がホームランだと言う」
「でも僕は違うと思うんです。ホームランは狙って打つもの。単打は単打。内野安打も内野安打。みんな狙って打っています」
確かに、イチローの野球人生の節目を飾るヒットはホームランが多い。
「リッチーはホームランを毎年量産しているから自信があるんでしょうね。生意気に僕に突っ掛かってきた。
僕もメジャーで何年もやっている自負がありますから、怒ったんです。それでリッチーと約束した」
「とりあえず25本程度なら3割3分でも打てるから、見ていろって。まだ僕の足は元気ですが、いつ衰えるかなんてわからない。
去年の9月あたりから、内野安打より、チームの勝利に貢献できるホームランを打ちたいと考えるようになっていた」
「本塁打を量産する自分を想像するのが好きなんです。新しい自分には毎年会いたい。
そのためにフォームを微妙に調整したりしているのが、無安打という結果になっているのだと思います。
ただ、ファンの皆さんには新しい自分を見て貰えるという自信があるので、楽しみに待っていて下さい」
取材陣にはあまり多くを語らないイチローだが、今日は違った。この饒舌は、自信から来るのか、それとも不安からなのか。
日米通算3000本安打を目指す天才に心配は無用かもしれないが、「春の珍事」はどこまでつづくのだろうか…
[2008年3月12日15時20分]