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代打名無し@実況は実況板で:
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緒方は何も言わずに、前田の咆哮を受け止める。
そしてゆっくりと、しかしハッキリとした口調で語りかけた。
「それはウチの宿命だ。諦めるしかない。
そんなことより、お前にはすべきことがあるだろう?」
「おま、緒方さんに言われんでもわかっとる!
わしは来年、必ず復活してみせる。天才と呼ばれた頃のように!
その姿を、新井やウチの若手にみせてやるんじゃ!」
彼はそう断言した。彼の目にはもはや涙は無い。
強い光だけが、そこにはあった。
それから一年近くが過ぎた。
広島対阪神。両チーム共にシーズン最後のゲーム。
広島のスタメンには首位打者を確定させた前田、
阪神のスタメンには本塁打王が決定した新井の名前があった。
「今日は負けられん。勝てば天国、負ければ地獄じゃ!」
前田は広島の若手選手をそう言って鼓舞する。
それを見た新井は阪神ベンチの新井が呟く。
「前田さん。やっぱり前田さんは凄い人だ。
だけど、今日は僕らも負けられないんです」
勝ったほうが五位。負けたほうが最下位。
少なくとも彼らにとってはとても大事な試合だ。