1 :
代打名無し@実況は実況板で:
『2323バトルロワイヤルルール』
精神をヴァーチャル空間にダイブさせて行われるバトロワ。
参加者は互いに戦い、HP(ヘア・ポイント)を削り合う。
1.HP=頭髪の本数。
2.HPが0で脱落。
3.戦闘で受けたダメージは全て現実世界の毛根へと送られる。
4.相手に与えたダメージの1/10を自分のHPとして吸収できる。
5.上記の方法で元々の最大HPより増加した場合、現実世界では増毛効果となって現れる。
6.刺客にHPは存在しない(無敵状態)。
7.規定時間(72時間)が経過するか、生き残りが1人になった時点で試合終了。
※追加参加者募集中(23BR運営委員会・山下大輔まで)※
なお、本編中は「薄い」などの語がNGワードとなり、
自動的に「2323」などに置き換えられる仕様となっております。
例:「薄々感づいてはいたが」→「2323感づいてはいたが」
( ^ω^)僕ちんの世界なのだ
2007年1月某日
「いっぺんニューヨークをきちんと見ておいたらどうや?言うてみればアメリカ生活の予行演習や。」
遂に念願のメジャー移籍が決まり、故郷の茨城県大洗町で入念な自主トレを行っていた井川慶だが、初めての本格的な海外生活と言うこともあり、不安も多い。
元来、篭りがちで内向的な彼は、自らも新しい環境に準備もなく飛び込むことに大きな不安を感じていた。
そこで、この知人の勧めの通り、メジャー挑戦を前に一度ニューヨークを訪れる決心をした。
「俺は新しい環境に馴染むのが苦手だっぺ、"予行演習"はしておくべきだっぺな。」
さらにこの移籍までの数年間、色々と確執のあった球団も功労賞と銘打ち、井川の"予行演習"の渡航費および滞在費、滞在場所の面倒見てくれるというのだ。
「ありがたい話だっぺ・・・。この恩に報いるには何としてもメジャーで活躍しなければならないっぺ。」
井川は球団のこれまでの活躍の"功労賞"に心から感謝するとともに、恩返しの活躍を決意した。
そう、この"功労賞"こそが罠であることも知らずに・・・
渡米当日、今オフに結ばれた新妻とともに成田へ訪れた井川。
(まさにココから俺の新たな挑戦が始まるんだっぺ)
ガラス越しに拡がる滑走路と青く澄み渡った大空が、自らの未来へ繋がる道であることを実感したとき、井川は自らの体内の血が煮え滾るのを実感した。
「アナタ、そろそろ時間よ。」
新妻に急かされてはっとなり、急いで荷物を担ぎ直し歩みだす井川。
何気ない一歩一歩が、これまでの人生では感じられなかった程に大地を掴み踏みしめるのがわかる。
井川は今までにない感触に戸惑い、思わず歩みを止める。
(はは、これは"予行演習"なのにな・・・)
「どうしたの?」
心配そうに訊ねる妻に、井川は笑顔で返す。
「何でもないっぺよ、行こうか。」
余計な心配は出来るだけかけたくない。そうでなくとも、自分の挑戦はこの人にとっても大変なことなのだから。
そんな自分の夢に連れ添ってくれると言ってくれた、かけがいのない人を守る使命も井川にはあるのだ。
こんな所で不安を感じさせてはならないのだ。
そう自分に言い聞かせ、彼女の肩を優しく抱き寄せる。
「さて、待ち合わせはこの辺のはずだっぺ・・・」
球団に指定された自動販売機の前で辺りを見渡していると、黒服の男達がこちらに向かってくる。
「井川・・・井川慶さんですね?」
まさか勃つとは思わなかった。今は少しだけ反省している。
今日はこれでおやすみなさい。
ちょwこっちも驚いたww
取り合えず異色のネタバトに23しく期待
これは期待
松中しく期待してる
2323しく福浦の予感
12 :
タイトル:M:2007/03/04(日) 06:38:05 ID:Oz9jeE+k0
「えーと、12−Aは……ここか」
久保康友(M16)は機内の狭い通路を抜け、やっとチケットに書かれた席にたどり着いた。
成田空港発ニューヨーク行。そう、ここはこれからニューヨークへと向かうジェット機の中である。
ほんの一週間前、マリーンズの球団事務所からこのチケットが送られてきた。
オーストラリアのキャンプの前に、一部選手をメジャーのトレーニングに参加させるという試み。
それに選ばれたのが久保であり、こうして飛行機の座席に座っている。
右を向くと窓に顔が映っている。何をするでもなくそれを眺める。
(ちょっとヤバいかなぁ)
当年26歳のはずの彼の頭に引かれた境界線。
中央部分だけがそれを死守するにもかかわらず、その両サイドは毎年少しずつ退却を余儀なくされる。
俗に言うM字。マリーンズのMではない。予備軍である自覚をしたのは随分昔だ。
「いっそ全部剃ってスキンヘッドってことで……いや、それは逃げだ。大体その手はもうフク――」
「久保」
窓に2っ3らと映る人影に久保は呟きを止め振り向く。
そこにいるのはたった今、まさに思い浮かべたその人が立っている。
「ふふふ、ふくぁっ、福浦さん!?」
「……何を驚いてる」
「い、いいええ、ななっ、何でも」
目の前に立つ福浦和也(M9)は、いつも通りの少し眠そうな柔らかい表情だ。
ニット帽を深々と被っている。つい、それに目が行くのを久保は必死にこらえた。
あるいは自分の未来の姿。彼は既に侵攻したMを前述の方法で隠している。マリーンズのMではない。
「お前もメジャーのトレーニングってやつ?」
「あ、はい、そうです。福浦さんもだったんですね」
「それなんだがな」
急に福浦の眉間に皺が寄る。何事かと久保は耳をそばだてた。
「気付かなかったのか? 機内を見てみろ」
言われて久保は立ち上がり、機内を見回して思わず声を上げる。
何百席はあろうかという機内で見える客は僅か。まばらに座っているが、その顔を久保はみんな知っていた。
「川上さん、松中さん……あ、あっちは和田さん、黒田さん」
全員が現役のプロ野球選手たち。それも錚々たるメンバーである。
「みんな不思議がってるよ。別々の用事でこんなに乗り合わせるなんてな」
これは偶然なのか。久保は喉から出かかった言葉を思わず飲み込んだ。
ヘッドギア(1/2)
『アテンション プリーズ。当機は間もなく離陸いたします。
乗客の皆様はシートベルトとヘッドギアを忘れずご装着くださいませ』
「ヘッドギア?」
多村仁(H6)がそう呟くと、天井が開き目の前に大きな物体が宙吊りに降りてきた。
よく見るとそれはヘルメットのようなもので、紐が後ろから伸びている。
外装は何やらパーツが内蔵されているのか凸凹している。手に持つとズッシリ重い。
まるで戦闘機のパイロットが装着するような代物だと多村は思った。
『当社ではお客様の安全の観点から頭部保護のためのヘッドギアを採用しております。
サイズの合わない方は乗務員にお申し付けください』
「そうか、安全は大事だな、うん」
深々と頷くと、モッサリとした髪を片手で抑え付けながらヘッドギアを頭にはめていく。
しかしなかなかこれがしっくり来ない。
頭のサイズは合っているが、ハネた後ろ髪が中で絡まってしまうのだ。
何度か指を入れて直しながら、どうにか具合良く髪を収める。最後に首のバンドを締めた。
「大丈夫か?」
「あ、はい、なんとか」
隣に座っている松中信彦(H3)が尋ねてくる。少し緊張の面持ちで多村は愛想笑いをする。
そもそも今回の旅は、球団が移籍してきた自分のために企画したようなものだと感じている。
推しも推されぬ主砲の松中との親睦を、アメリカでの合同自主トレで深める。
更に怪我をしないための有効なトレーニング法を学んでくるという目的もある。
この経費が全て球団持ちという点は、さすがソフトバンクである。
多村の愛想笑いに、松中も笑いを返す。
「まあ、色々とプレッシャーもあるだろうが、堅くならずにさ」
自分の考えていたことが見透かされたようで、多村は少し気恥ずかしくなる。
しかし松中の悠然とした、温和な表情を見ているうちに自然と緊張は解けていった。
「すいません」
手を横に振りながら、松中は自分の前の前に垂れ下がっているヘッドギアに手をかけた。
じっと見つめると、両手で持って頭にはめていく。スルリスルリ、そしてスッポリとそれははまった。
「あ、良かった。痒くないですか? いや、これって髪が引っかかっ――」
言いかけたまま多村は止まってしまった。口を開けたまま、その顔は見る見る青ざめる。
目の前の松中の顔に浮かんでいた笑いが23くなったのは、気のせいだろうか。
「……何?」
「あ、いや、ハハハ……」
魂が抜け出そうな心持ちの多村を他所に、飛行機は離陸へ向けて動き出した。
飛行機が上昇する最中、多村はこの飛行機の乗客のことを考えていた。
何人かの知った顔が周囲に座っている。不思議なことに全てプロ野球選手である。
一体何人の選手がこの飛行機に乗っているのか、それは分からない。
この乗客に不釣合いなほど飛行機は大きく、座席も多いからだ。
なぜか胸をよぎる不安が、飛行機の加速度によるものなのかは彼にも分からない。
ルール(1/2)
『当機は安定飛行に入りました』
耳がキーンとする。短くアナウンスが流れるのを確認すると、川村丈夫(B16)はヘッドギアの首バンドに手をかける。
「あれ?」
嵌め込んだ接合部に取っ掛かりの手触りがない。どうやって外せばいいのか分からない。
このヘッドギアというやつはなかなか重いので、さっさと外したいのにだ。
外し方を聞こうにも乗務員はどこにも見当たらない。川村はため息をついた。
と、その時、機内のテレビに映されていた画像が切り替わった。
川村は仰天した。
そこに映った顔に川村は確かに覚えがあるのだが、見覚えのないものが一緒に映されている。
『やあ、みなさん、こんにちは。山下大輔です』
そう挨拶する男は、やはりかつての監督であったその男だ。
だが、川村はそこにある映像を現実のものと思えず、気付いた時には叫びが喉を突いた。
「バカな!ありえねえッ!」
『ありえないとは失礼だね。ほらほら』
画面の中の山下が返事をしてきたことに驚いている暇もない。
山下は手を頭へ持っていくと、頭部から流れ湧き出るような黒光りする線群の束を撫でる。
それはそう、髪の毛と呼ばれるもの。ロン毛。今の山下大輔を形容するのはその言葉しかない。
『言っておくけど、これ地毛だからね』
そう言うと、髪の生え際をカメラに向けてアップさせる。確かにそれは、一本一本が毛根から生えている。
『最新の技術ってのは凄いよね。さて、実はこの飛行機には特定のプロ野球選手しか乗っていません。
このように集まってもらったのは、この技術を君たちにも受けさせてあげようという話なんだ!』
ゴクリ。それを聞いた瞬間、川村は唾を飲み込む。同じ音が、機内各所に響いていた。
川村は考えていた。
知り合いに生え際をバカにされること。自分では大して禿げていないと思うのにだ。
しかし、これから先、髪は23ることはあっても増えることなどないはずだ。
『興味を持ってもらったかな、皆さん?
ただし、この技術で髪を増やすには、ある薬剤で健康な毛根を吸出して移植しなきゃいけない。
といっても10本に1本ぐらいしか使えないんだけどね。そうやって髪を増やすわけ』
ルール(2/2)
山下が長い髪をかき上げながら、こちらを見下ろしている。。
おそらくこの映像は機内各所で各選手が見ているのだろう。
『というわけで、自分の髪を増やすには他人の毛根を奪い取らなきゃならないんだよね!
もうそのための薬剤はそのヘッドギアにセットしてあるから』
「何だと?」
『そのヘッドギアはバーチャル空間への誘導器でもある。眠るとバーチャル空間でゲームが始まるよ。
そこで髪の毛の本数、つまりヘア・ポイント(HP)を相手から奪えば、現実にその人の頭へ後で毛根移植を行っちゃう。
逆に奪われれば、その分だけ薬剤を利かせて毛根を吸い出しちゃうゲームってわけさ。
HPがゼロ、つまりツルっ禿げになっちゃったらその時点で失格だよ』
「そんなバカなことが!」
川村は立ち上がって叫ぶ。山下が反応する。
どこにカメラがあるのか、どうやらこちらの様子も向こうで見ることが出来るらしい。
『制限時間は開始から72時間。あくまでバーチャルだから入り浸っちゃダメだよ。
ゲーム途中で目を覚まして、トイレに行ったり食事をしなくちゃならない。
ヘッドギアに付いてる紐は簡単に外せるから、機内は自由に動き回れるよ。
ただしその間はバーチャル空間での君の身体が無防備になっちゃうから気をつけてね』
「山下さん、アンタどこにいる!? 何でこんなことを!!」
『まだ他にも連絡事項あるけど、それはゲームの中に入ってから説明しようか。
なんかみんな落ち着きがなくなってきてるし。それでは――』
今度は天井から酸素マスクが落ちてきた。
これは機内の酸素濃度が23まると自動的に落ちてくるものである。
川村はあっという間に気を失い、椅子にもたれかかった。
そこかしこで聞こえていた他の選手達の罵声も、プッツリと止み、機内に静寂が訪れる。
画面の中の山下大輔が楽しそうに笑った。
『それでは皆さんに、髪の奪い合いをしてもらいます』
その声が山彦のように響いて聞こえる。
暗い闇の中、上下左右の感覚が消える。
そのまま渦にでも巻き込まれたように、川村の意識は闇に吸い込まれていった。
乙です!
松中しくワクワクするな。
ロン毛の山下が福浦しく見たいw
アホだwwwwwアホすぎるwwww
超期待agew
ロン毛の大ちゃんとは、つまりこうか
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ノ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ゝ,/;;;;;;;;;;;;;|
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―'| \ \ |\;;(_
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|__,\ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄〕/ 、/
続きに2323しく期待wwwwww
ちょ、まさかスレ立てるとはwwwww
せいぜい前みたいに見守るスレ内でちょっとやるだけだと思ってたのにwww
とにかく23しく期待www
とりあえず参加選手まとめてみるかね?
前やったときは
参加者:川上・福留(中)、宮本(ヤ)、和田(西)、黒田(広)、福浦(ロ)、松中(ソ)、岩隈(楽)
特別参加者:井川(神、現米)、小林宏(ロ)、小笠原(日、現巨)、三浦(横)
運営側の刺客:森本(日)
それに東出・緒方(広)、川崎(ソ)といった面子なようだが
とりあえずこれに久保(ロ)、多村(ソ)を追加してそれにラロッカ(オ)、木村拓(巨)、的場(ソ)といった所か?
あとは誰が参加するんだろう
・参加者
石井裕也 投手 中日ドラゴンズ
岩隈久志 投手 東北楽天ゴールデンイーグルス
川上憲伸 投手 中日ドラゴンズ
川村丈夫 投手 横浜ベイスターズ
木村拓也 外野 読売ジャイアンツ
久保康友 投手 千葉ロッテマリーンズ
黒田博樹 投手 広島東洋カープ
田中賢介 内野 北海道日本ハムファイターズ
東出輝裕 内野 広島東洋カープ
福浦和也 内野 千葉ロッテマリーンズ
福留孝介 外野 中日ドラゴンズ
松中信彦 内野 福岡ソフトバンクホークス
的場直樹 捕手 福岡ソフトバンクホークス
宮本慎也 内野 東京ヤクルトスワローズ
山崎健 投手 千葉ロッテマリーンズ
吉野誠 投手 阪神タイガース
和田一浩 外野 西武ライオンズ
ラロッカ 内野 オリックスバファローズ
・特別参加者
井川慶 投手 ニューヨークヤンキース
大沼幸二 投手 西武ライオンズ
小笠原道大 内野 読売ジャイアンツ
緒方孝市 外野 広島東洋カープ
川崎宗則 内野 福岡ソフトバンクホークス
小林宏之 投手 千葉ロッテマリーンズ
実松一成 捕手 読売ジャイアンツ
下柳剛 投手 阪神タイガース
多村仁 外野 福岡ソフトバンクホークス
三浦大輔 投手 横浜ベイスターズ
・運営側の刺客
森本稀哲 外野 北海道日本ハムファイターズ
23バトに登場した選手+福生コンドルズ登録現役選手+宿毛ロングスターズから数人拝借
という妄想。
すげぇぇぇeeeee、笑いの止まらないスレになりそうだwwwww
職人さん乙です!!
小笠原がヒゲ剃っちゃったのがつくづく悔やまれる…
ついに待望の23バトキタ━(゚∀゚)━!!
これはとんでもなく期待wwwww
2っ3らwwwww
特別参加にカープ長谷川を推薦
手入れの行き届かない長髪と時々延びている無精ヒゲがトレードマークのおしゃれ(と多分本人は思っている)男です
――クスクスッ、やだぁ……あの人……なのに……クスクス……
「ううっ……」
頬をかする砂埃が少し痛く、彼の目を覚まさせる。
木村拓也(G58)は目を開くと同時に、その眩しさに思わず手をかざした。
仰向けに寝転がっているらしい。上体を起こして周囲を見た木村は、言葉を失った。
ベージュの大地が濃淡を織り交ぜ、どこまでも広がっていく。360度全ての方向に。
まばらに置かれた石や、背丈の低い木や雑草が点在し、なんとか距離感覚を鈍らせずに済む。
そこはサバンナ。そう、動物モノのテレビなどで見たことがある、あの光景だった。
『みんな、起きたかな?』
耳の奥に、明るい声が響く。山下大輔の声だ。
木村はすぐに耳に手を当てた。
「あれ?」
彼の頭につけられていたヘッドギアが無くなっている。代わりに被っているのは巨人帽だ。
それだけではない。よく見ると、来ている服までも巨人のものに変わっていた。
「なんだ? 一体、どうなってるんだ?」
『今、君達はバーチャル空間の中にいます。だから服も帽子も、周りの世界も全て本当には無いんだ。
君達の脳がそれがあると感じているだけなんだよ』
「そんな……」
『それじゃ、ルールを更に説明するよ。言ったとおり、これから皆さんは髪の奪い合いをしてもらう。
まずはそのための道具を紹介しよう』
その声が聞こえると同時に、目の前の空間の一部がテレビの砂嵐のように乱れる。
次の瞬間、デイバッグが現れ、ドサッと音を立てて落ちる。
『それが支給品だよ。開けてみて』
言われるがままに木村はそれを手に取り、上部のカバーを空ける。
中には細々としたものが見え、それがバッグの動きに揺られ音を立てた。
『まずはこのバーチャル世界の地図。この世界は基本的に6つのエリアが隣り合っている』
そう言って、山下は木村の耳の奥から聞こえる声で、そのエリアを説明し始める。
強い日差しと猛獣が毛根を虐める[サバンナエリア]
昼夜の温度差と乾燥で毛根を虐める[砂漠エリア]
高音と高湿度で毛根を虐める[密林エリア]
低酸素と強烈な日差しと寒さで毛根を虐める[山岳エリア]
強烈な冷気とオゾンホールによる有害紫外線で毛根を虐める[南極エリア]
スモッグや酸性雨で毛根を虐める[都市エリア]
この6つのエリアが3×4の12ブロックに分けられ、計72のブロックが存在するということらしい。
また、6つのエリアは隣り合っており、その境界線を越えると一瞬で違う世界へと移動してしまうということだった。
『今、君たちがいるスタート地点はそれぞれが違うブロックになっている。
当分は誰にも会う心配はないよ。でも、会ったら髪の奪い合いだ。
バッグの中にバリカンが入っているでしょ? 最新の電動式なら当たりだよ』
木村はバッグからバリカンを取り出した。握ると髪を切れる、昔の床屋にありそうな代物だ。
「どう見ても外れだな」
『更に一人一人に補助アイテムがあるから、上手く使ってね』
木村がバッグを探ると、『補助アイテム』と紙の貼られた青い袋が入っている。
何かと気になったが、すぐに山下が言葉を続ける。
『そしてもう一つ、一番大事なアイテムが入ってる。赤い袋を開けてね』
補助アイテムの袋とは別に、赤い小さな袋が入っている。
それを開けると、何やら奇妙な物体が出てきた。
片側だけの耳当てにサングラスの半分がついたような物体。
そういえばこれに似たものを見たことがある。確か子供が見ていた、ドラゴンボールというアニメだ。
あれでは確かこれを耳に付け、グラスの部分を覗いて相手を見ると戦闘力とかが測れるとかなんとか。
木村はそれを思い出しながら、耳に取り付けた。ピッタリだった。
右目は少し青みがかった視界になる。
『それがこのゲームの超重要アイテム。“フサウター”だよ!
耳に装着したら、上のスイッチを押すと、そこから見える相手のHPを見ることが出来る。
下のボタンを押すと、自分の現在のHPが見られるんだ。さ、やってみて』
そう言われて下のスイッチを押すと、そのグラスの部分に光る数字が現れる。
ピピッという音と共にそこに「HP:59000」という文字が表示された。
『それが君の現在のHP、つまり髪の本数だ。ちなみに普通の人は10万本ぐらいあるんだ!』
「……」
木村は無言だった。
『支給のバリカンやその他の方法で誰かの髪を根元まで切れば、それがカウントされて反映される。
それでHPがゼロになっちゃったら失格ってわけ。
また、1時間に一つずつ禁止ブロックという入ってはいけないブロックが指定されていくけど、
その禁止ブロックに入ったら自動的にHPがゼロになっちゃう。
72時間経った時に二人以上が残っていると、当然その二人も失格になっちゃうからね。
毛根が助かる方法はただ一つ、一人だけ生き残ることだよ。その時点で終了だから。
それでは今から6時間分の禁止ブロックは……』
木村は力なく、地面にあぐらをかいて座っていた。
サバンナの日差しと、地面からの照り返しが容赦なく彼に照りつける。
帽子の中が蒸れてきたが、かといって外して頭皮をこの熱戦に晒すわけにもいかない。
出るのはため息ばかり。こんなところに一人ぼっち、突然のことに考えはまとまらなかった。
本当に、失格になったとき髪が消えてしまうのか、確かめなくてはならないのだろうが。
「寒みぃーっ!さむさむさむっ!」
突然聞こえた叫び声に後ろを振り向くと、空中から突然人影が現れた。
これが山下の言っていた境界線のことなのだろうか。
「良かったー、暖かい。暑いぐらいだ。はああ」
「健、お前ヤマケンか?」
「おおっ、タクちゃんか!」
目の前で両肩をさすっている山崎健(M47)は、同い年の元同僚を見つけ表情を和らげた。
「いや、会えたのがタクちゃんで良かったよ」
「どっから出てきたんだ?」
「いや、俺いきなり南極エリアでさ。吹雪に会うしこのままじゃ凍え死ぬと思ってとにかく走ってたんだ。
そしたらいきなりこれでしょ?ビックリすることだらけだわー」
帽子に積もった雪を払い落とす山崎を見て、木村は腕を組む。
「とにかくさ、健。せっかく会ったし一緒に行動しないか?こんなゲームに参加なんてバカげてる」
「全く。あ、でも……」
と、山崎が肩を震わせる。
「ずっと寒いところにいたから、トイレ行きたくなっちゃった」
「立ったら行って来いよ。一旦ゲームから抜けないといけないんだろう?
俺が見張っててやるからさ」
「うん、頼むよ」
そう言うと、山崎はフサウターの中央部の丸いボタンを押す。
すると魂が抜けたかのように、山崎の身体はストンとその場に崩れ落ちる。
「やれやれ」
その山崎を見ながら、木村はふとフサウターの上のスイッチを入れる。
山崎に照準を合わせると、「HP:68000」と表示が出現する。
しばし木村は沈黙し、所在無さげににバッグの中の補助アイテムに目をやる。
そういえば確認がまだだったと、その袋の紐を解いて開けた。
山崎は機内のトイレに向かっていた。途中、添乗員に機内食を頼む。
ついでに腹ごしらえをしようと考えたのだ。
木村の分も運んで置くようにとも頼んでおいた。
自分の番が終わったら、彼も食事にありつけるように交代しよう。
そう山崎が考えながらトイレの前に立った時のことである。
ヘッドギアからプシューという音がしたかと思うと、頭部に何やら冷たい感触。
液体だ、と山崎が気付いた時には既にそれが全体に拡がっていくところだった。
「え、え?何?」
背筋に寒気が走る。これは、もしや毛根を吸い取るための例の液体か。
しかし自分の身体は木村が見張っていてくれるはずだ。
山崎はすぐにヘッドギアのゲームプレイスイッチを押した。
再びゲームの中で目を覚ました山崎が目にしたのは、首の脇から落ちていく髪、髪、髪。
「なんだこりゃあ!!!」
振り上げた顔の前にあったのは、一片の暖かみもない木村の視線だった。
「やめてくれぇ、やめてくれええええええっっッ――」
木村が最後のバリカンを入れると同時に、山崎の姿そのものがバーチャル世界から消えた。
それを木村は一しきり見つめた後、フサウターで今度は自分のHPをチェックする。
HPは65800。確かに山崎のHPの十分の一が増えている。
「これが現実に増えるわけか……くく、くくく……」
木村は山崎の髪のついたバリカンをブンブンと二度振り回すと、腰のベルトに備え付ける。
「もう言わせん、俺の名前を呼ぶ奴に。あんなことはもう言わせんぞ……」
一戦を乗り越えた男の目は見開かれており、誰の目にもその狂気は明らかだった。
しかし一方で、夢見る少年のように輝いてもいる。
木村はサバンナを、山崎の現れた方とは反対に歩いていく。
彼のいたところには、山崎の刈られた髪と、そして青い袋が残されていた。
開かれた青い袋からのぞいているのは、一冊の雑誌。女性向けのそこそこ有名なものだ。
表紙には大きな文字でこう書かれている。
――SMAP木村拓哉大特集!
彼と同姓同名にして、ロン毛の代名詞。
諦めていたそれを手に入れる、木村拓也の胸は今その夢でいっぱいであった。
【失格 山崎健 残り29名】
ふさうたーwwwwwwwwwwwww
ロワ途中で席を立てるってのは新しい試みかもね
にしてもフサウターwwwwww
SMAPwwwwwww
ちょっと時間があったので
>>12-16含め、設定と説明パートだけ書かせてもらいました。
禁止ブロックは決めてません。(決める必要もない気がしますが)
だいぶ悪乗りしましたが面倒くさい設定は大体こんな感じでどうですかね。
参加選手は
>>21-22の28名(森本は除外して)+長谷川で29名なので、30名スタートにしておきました。
ということであと1人誰か足したい人がいたら足してください。
私は時間が空いたときにたまに書くかもしれない程度なので、後の部分は正直なところ他の方にお任せします。
(マリバト書いてたときほどは時間ないので)
フサウターワロスwwwwww
オリからはゼヒとも塩崎を出してほしいがもうムリかな
>>35 乙です!
ふわーりタヌラとかロンゲ大ちゃんとかフサウターとかキムタクとか、ツカミの文章だけでもうwwww
俺も書き手として参加してみたいんですが、打ち合わせ等は現時点ではせずに書いてかまわないんですか?
あと、ふと気づいた問題。
ふ く う ら の 髪 っ て ど う や っ て 刈 る ん で す か ?
そりゃ福浦もな(ry
笑いが止まらんwww山崎wwwwww
笑いすぎてハラいてーwwwwwwwwwwwwww
新作乙です。
山崎……本来なら・゚・(ノД`)・゚・ ってなる筈の所なのに笑いが止まらないwwwww
何なのフサウターってwwwww
キムタクもデラコワスだけどデラワロスwww
てゆうか作者「ぼくわ」や「ないものねだり」とかの人ですか!
よく来てくださいました!GJ!
俺も書いてみようかな
>>36 あと一人追加できるしそれにあと一人から漏れても
>>1に※追加参加者募集中とあるから大丈夫だと思う
>>37 ネタロワだしある程度は好き勝手やっちゃっていいんじゃない?
キムタク兄さんヒドスwww
ハセガーも入れてもらったことなので、暇みて参加しようかなw
>>41 とはいえ本編では飛行機に乗っちゃってるから追加は難しいかも
つーかキムタクw
数年前のオフ特番で病院とかで名前呼ばれたら周りの人が振り向いて
「なんだお前か」って顔をするって話してたがそんなに気にしてたんかw
笑いが止まらなくて腹痛いwwww
>>43 話の中で途中参加は難しいけど、思いつきでキャラクターを足すという意味での途中参加なら、
乗ってたことにすればいいんじゃない?
飛行機のシーンで全員が登場しちゃってるわけじゃないしさ
てかプロの野球選手なのに顔見てガッカリされるってカワイソスwww
>>44 >てかプロの野球選手なのに顔見てガッカリされるってカワイソスwww
広島では良くあることw
このバトロワは明らかに他のバトとは違うな。
笑い死にかけるバトは初めて見たwwwwwww
「畜生!木村ぁっ!毟ってやる!毟りとってやるっ!離せ畜生っ!」
「コイツ…大人しくしてろ!」
「ぐっ…」
武装した兵士に麻酔銃を撃ち込まれ、泣き叫びながら暴れる山崎はようやく停止した。
兵士達は山崎が気を失っている内に着ていた服を脱がし、全裸にした後、重厚な扉に閉ざされた23暗い部屋に山崎を連れ込む。
「…目が覚めたらトイレと洗面所の場所を教えてやってくれ。食事は8時間毎に差し入れてやれ。」
「はっ!」
最初の脱落者となった山崎健の回収を終え、高木大成(元L)は武装した兵士達に指示を与えると無線機のマイクを手にする。
「あ、あー…こちらSHAT(Saving Hair Assault Team)。司令室、聞こえますか?どうぞ。」
「…ガガッ…こちら司令室です。どうぞ。」
「佐野さん、山崎健の隔離室への収容が完了しました。どうぞ。」
「…ガガッ…お疲れ様、高木君。今後も脱落者の収容は速やかに。それと、現実で食事・トイレ休憩をする連中にも目を光らせておいてくれ。最悪の場合…○っちゃっても構わないそうだ。どうぞ。…ガッ…」
「わかりました。失礼します。」
高木は機内の治安維持部隊(通称:SHAT)の隊長を任されていた。
バーチャル世界で刈り取られた者が、現実に戻った時に眠っている生き残りを襲撃する可能性を考慮して結成されたチームである。
「嫌な役回りだな…」
機内の見回りを再開するため、再び機内の乗客室を訪れた高木は選手達の寝顔を見回すと、ある男を見つける。
「和田さん…」
「んむむ…」
何か悪い夢でも見ているのか、和田一浩が苦しそうな表情で小さな呻きを漏らす。
「嫌な役回りではあるけども…もう少しなんだ…もう少しで『本当の俺』を取り戻せるんだ。だから…だから待っててね、美智子(仮名)。」
瞼を閉じて思い浮かぶのは、ついこの間に結ばれた最愛の人。
「その為にも、せいぜい頑張って下さい……和田さん、俺はアナタに乗ったんですからね。」
【失格 山崎健 残り29名】
とりあえず、ルール上、後で問題になるかも知れない部分を勝手に補ってみたつもりです。
…問題なかったかな?
帰りの通勤電車から失礼しました。
>>49 全然問題無いと思いますよ!俺もそれ心配だったwww
SHATwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
あと「○っちゃって」ってどういうことだよwwwww
多分「刈っちゃって」だな
俺は「毟っちゃって」派。
>>37 大きく矛盾しなければ、好きに解釈して色んな展開を追加しちゃえるのがリレーの醍醐味ですよ。
福浦のはまあ、知恵と勇気で。
あと飛行機について補足ですが、どこかに着陸させたり
そこで新たに誰か乗ってきたり降りたりとかできると思うので、誰か乱入させようと思えばいくらでも。
「話はまあ……わかったけどサ…」
普段の生活の中では見かけたこともない、鬱蒼と茂った植物にぐるりを囲まれ、
倒木の株にしゃがみ込むと、長谷川昌幸(C42)はひとり、顎鬚を撫でながら小首を傾げた。
「人の髪かっぱらってなんかメリットとかあるわけ?」
他人の髪を刈ると、その10分の1が自分の髪になる。このバーチャル空間のことも含め、にわかには信じがたいことばかりだが、
簡単に言えばそういうシステムだということは、さすがの長谷川にもわかった。
しかし、そのシステムに何の意味があるのかが、彼にはすぐにわからなかったのだ。無理もない。
なぜなら長谷川は普段、他人の頭髪を欲しいと思ったことなんかないし、
──森笠の焼きソバ頭を初めて見た日だとか、そういう時を別にするなら──、
特に注意を払って見るようなことさえもなかったからだ。
意味がわかんねえよ。少なくとも、俺は要らないし…。
そう思って長谷川が、暑苦しく首に貼りついた後ろ髪を右手でかき上げたとき、再び耳の奥に山下の声が響いた。
『さて、ここから先は、一部の人にしか聞こえないようにこっそり話すよ。
というのは…、他のみんなはさっきの説明だけで、全部合点がいったと思うからね。
もうゲームは始まっちゃっているから、単刀直入に言うよ、キミたちは、”餌”なんだ』
長谷川の片眉が、ぴくりと動いた。うなじを掻いていた右手が止まる。
『このゲームに参加したところで君たちには何の利益もないかもしれないけど、残りのみんなは必死になるはずさ。
バッグには参加している選手の名簿が入っているから、見てごらん。
君たちを除いた彼らだけでのHPを奪い合ったところで、元が23いから、あまりご褒美にならないかもしれないだろ?
そこで各球団に協力を仰いで、君たちを推薦してもらったんだ!』
…そういえば、今回、他球団と合同の海外キャンプがあるからと言って選抜されたメンバーは、
その顔ぶれからは選考基準がいまひとつよくわからなかった。
エースの黒田はともかくとして、監督の方針から言えば東出を派遣するのなら相棒の梵も選ばれて然るべきだし、
未だ力衰えずとはいえ39歳になる緒方を武者修行に出すくらいなら他にいくらでも候補がいるだろうし、
それに加え、ここ数年、背負う期待に比べれば大した活躍もしていない自分が選ばれた理由が皆目わからなかったのだが…、
…そうか、そういうことか。そりゃそうだ、ドラ1つったって所詮昔の話ですよ、
球団にとっちゃ俺の価値なんざこの髪くらいしかないって事ですか、そうですか。
『もちろんキミたちもこの熾烈な争いを制して最後の生き残りになれば、23っ23になることなく現実世界に帰れるよ。
でも、元々23てもいないキミたちにとってみれば、そんなこと言われても嬉しくないよね』
長谷川は延びた襟足の髪をグッと掴んだ。嬉しくないどころの話じゃねえよ、能天気に人の耳ん中で喋っちゃってさ。
俺らにとっちゃ百害あって一利なしじゃないか、このボケ饅頭。
『そこで、キミたちには個別にテーマを設定してある。
HPが0になる前にそれがクリアできたら、その時点で現実世界へ逃がしてあげるよ!』
だから、騙して捕まえたあげく、『逃がしてあげるよ!』はないだろ、ほんとに…、
『個別テーマはバッグの中に入っているよ。 それじゃあ、グッドラック!』
最早脳内で悪態をつく気力も失くした長谷川は、目の前に現れたばかりのバッグを開けた。
その一番目立つところに置かれている茶封筒を乱雑に破り開け、
中身に目を通そうとして長谷川はまず面食らった。
『Dear Hassey,』
…ふざけんな、マーティー直筆かよ! 読めるわきゃねえだろ!!
その、達筆なのかどうかすらもよくわからない横文字の並んだ便箋を地面に威勢よく投げ捨て、
長谷川は念のためもう一度、茶封筒を覗いた。
…すると、果たして、もう一枚、便箋が入っている。
鼻から安堵と怒りの交じり合った長い息を吐きながら、長谷川はそれを読み始めた。
『親愛なる長谷川くんへ、お前じゃ英語が読めないだろうから、僕が気持ちで訳してあげますよ。
まず始めに謝っておくと、お前は本来参加予定じゃなかったんですよ。
でも、そのゲームの説明に来た山下さんが、ひとり余分に出してくれたらそのぶん謝礼を出すって言うもんだから、
選手会役員で気持ちで話し合ってお前の派遣を決めたんですよ。
この30万はきちんとみんなのために、宿舎のご飯のおかずをしばらく一品増やすのに使いますよ。
明朗会計ですよ』
長谷川は脱力した。本当にそんなこと書いてんのかよ…、気持ち…、しかも30万…、
そりゃちょっと安いんじゃないの、ねえ、気持ち……。
『なんでお前になったかというと、知ってのとおり、今年はなんとしても優勝を狙いたいのですよ、
それを考えるとうちのチームには信頼できる先発投手が足りないという不安がありますよ。
しかし他の誰かの成長を待つだけでは今年には間に合わないかもしれないですよ。
そこで黒田さんの髪を増やして、黒田さんに2倍3倍の気持ちで投げてもらうのが一番の近道と判断しましたよ。
だから長谷川、お前には黒田さんの護衛をお願いしたいですよ。これがテーマですよ。
黒田さんの髪が今よりも増えた状態で、黒田さんを無事ゲームに勝たせてあげてほしいのですよ。
ついでにこの戦いの中でお前も気持ちで賢く逞しく成長してくれれば儲けもんですよ。
若手はまだ指導でどうにかなりますが、12年目の三十路のお前を成長させるにはもう荒療治しかないという判断ですよ。
立場上、僕が誰なのかは書けませんが、応援していますよ。気持ちで頑張って下さいよ。
要は気持ちですよ。気持ちを強く持つのですよ』
畜生、何が少し賢くなれだよ、毛が三本足りないのはあんただって同じだろ、気持ち! 長谷川は立ち上がって足元の土を蹴った。
…しかし、選手会の独断でしかも30万という値段で売られたことは未だに悔しいが、さきに思っていたとおり、
ここ数年の成績を思えば、書かれていることに正面から反論できるような身分では決してない。
だが失敗したときのことを一切考えていなさそうなところがいかにもだ…、ていうか金で後輩を売るなよ。
しかも30万とかやっすい値段で買収されやがって…、いや、みんな貧乏が悪いのか…。
「けど、これって結局…、既定の時間が過ぎるまでは達成できないテーマじゃないのか…?」
そうだ、そもそも選手会で話し合ったなんてウソだろ、倉さんはともかく、永川がついてりゃこんなバカバカしいことになるもんか。
頭悪いテーマ押し付けやがって、帰ったらタダじゃすまないからな、首洗って待ってろよ新井さん…!
…と、憤っても仕方がない…。とりあえず黒田さんを探すか…。
「どこにいるんだろ…、黒田さん…」
たったの30万円で理不尽な戦いに投げ込まれた、赤いユニフォームの不幸な男、長谷川昌幸。
しかし、マーティーの言葉を訳しているだけの手紙のはずなのに、
訳文はどう見ても選手会視点で語られているということに気づくだけの読解力を持ち合わせなかったことは、
まだ長谷川にとって幸せなことであったのかも知れなかった…。
【残り29名】
勝手に設定増やしてすいません。
特別参加の選手は逃げ回るだけになりそうなんで、個々に課題を与えたらおもろいかなーと思いました。
自分とこのバトもあるんであまり頻繁には書けないと思いますが、
是非皆様で盛り上げていきましょう。
乙です!!
粗いさんwwwwww笑いすぎて腹いてぇwwwww
マーティの手紙はホントは何て書いてあったんだろう
『Dear Hassey,』
ツボったwwwww
NHKの土曜ドラマ「ハゲタカ」じゃなかった「23タカ」の冒頭ナレーションを
このバトロワに転用できそうだ。
冒頭ナレーション
「誰かが言った。人生の悲劇は2つしかない。
1つは毛のない悲劇、そしてもう1つは毛のある悲劇。
世の中は毛だ。毛が悲劇を生む…… 」
マリバト読んで泣いた後にあえて
大塚につかみ掛かる福浦が見たいと言ってみるテスト
長谷川豆知識
日南キャンプ休日、わざわさ広島まで往復しいきつけの美容院でカット・パーマ・セットをしたことがあるらしい。
むしられてしまえw
本人はいいと思ってるけど汚い汚い言われるのが長谷川クオリティ
去年の夏場はほんとにヤバかった むさ苦しさで井川を超えたと思った
猫平尾や鴎西岡も推薦する。
そこらへんは外側から助けだそうとする役じゃね?
プロ野球フサフサ会とプロ野球2323会。
すいません、
>>71にパスかけてました。
「2323」です。
川崎は餌枠だけど、予備軍でもあるようなw
福留編投下してみます。
他の職人さんに比べるとネタ要素は23いと思いますが、温かい目で見守っていただければ幸いです。
――これから皆さんには髪の奪い合いをしてもらう――
――会ったら髪の奪い合いだ――
――毛根が助かる方法はただ一つ、一人だけ生き残ることだよ――
説明が終わっても、福留孝介(D1)はまだ自分の置かれている状況が信じられなかった。
自主トレ先のハワイから帰ってきて幾許も経たないうちに呼びつけられたと思ったら、いきなり眠らされてこれである。
あまりにも非現実的だ。
スキンヘッドが特徴であるはずのあの男に、誇らしげに生える黒々とした髪。
ヘア・ポイントだのフサウターだのといったふざけた単語。
「いきなりこれを信じろっていわれても普通無理があるだろ」
山下の説明を思い出すと思わず吹きだしそうになる。
だが、信じざるを得ない状況なのも確かだ。
福留が今いるのは、ごつごつした洞窟の入り口付近。
入り口の向こうには鋸のように険しそうな山が広がっている。
「どうやら俺は山岳エリアとやらにいるらしいな」
どうりで目が覚めたときから少々息が苦しかったわけだ。
おまけにもたれている洞窟の内壁が硬くて背中や尻が痛い。
冗談や夢にしてはあまりにもリアリティがありすぎるのだ。
福留は自身の頬をおもいきり引っ張ってみた。
やっぱり痛い。すぐに手を離す。
しばしの間、じっくりと離した手を見つめる福留。
「……信じなきゃいけないようだな」
彼はそう結論付けた。
76 :
扇動者1/5:2007/03/06(火) 23:48:49 ID:Ijt+FouK0
「どうして…何も言ってくれないんですか?」
多村仁(H6)は震える声でそう問いかけた。
23っらとスモッグのけぶる仮想の都市は、ひっそりと偽りの夜を演出していた。
多村の顔色が青ざめて見えるのは、決して無機質な人工光に照らされているせいだけではあるまい。
焦燥に揺れるまなざしは、目の前に立つ大柄な男、松中信彦(H3)に向けられていた。
訳の解らないゲームに放り込まれ、かつての所属チームの元監督の能天気な声でルールを押し付けられ、
途方にくれて無人の街をさ迷っていた多村が出くわしたのがこの男だった。
松中――ホークスの中でも人一倍チームを愛し、仲間を愛する男――彼と親しい者は皆口をそろえてそう言った。
だが、多村にとってはWBCとトレードされて間もないホークスでのキャンプ、共に僅かな期間しか時間を共有しておらず、
まだまだ気心の知れた存在ではない。
このゲームで再会できて無条件に喜べる、とまでは行かない相手だ。
何よりも、お互いの距離が一定まで近づいてのち松中が微動だにしなくなったこと。
彼の熱に浮かされたような視線が、自分の頭部からずっと動かないこと。
このこの2つの要因が白い半紙にたっぷり墨を含んだ筆を当てた時のように、どんどん多村の心に不安の染みを作っていく。
(…さっき言っちゃった事、まだ怒っているのかな!?)
多村の脳裏に、先ほど機内で思わず犯してしまった失言が蘇る。
ホークスに移籍して最初にコーチに受けたアドバイスが『松中の前で髪とか抜けるとか植えるとかの話題禁止』だったというのに。
多村を見据えたまま松中の唇が何度か微かに動く。動くが音を発さない。何を言うか決めあぐねているようだった。
まるで一番最初の言葉が、これからの行動の全てを決めるかのように。
そうと決まればすぐに状況を整理しなければならない。
とりあえず改めて支給されたバリカンを眺める。かなり新しそうだ。説明書まで付いている。
『トップメーカー米国ウォール社製家庭用高級バリカン【ユーロカットデラックス】!
ダイアモンド研磨加工によるドイツ製精密刃を採用の本格派バリカン!
充電・交流両用・刈り高を14段階に調整可能!!』
……どうやら当たりを引いたらしい。ほっとため息をつく。
次に補助アイテムを調べてみる。
青い袋から出てきたのは、手のひらサイズの黒光りする物体。
「スタンガンか……」
相手に傷をつけずに意識を奪うことが出来る便利な道具。
これがあれば、いきなり襲われても一安心といったところか。
「やっぱりMVPを獲るほどの選手には良い武器が支給されるもんだな」
去年1年間頑張ってよかった。
福留は満足そうに大きく頷いた。
「……では、これからどうする?」
福留は一番大事な課題について考えだす。
彼も、さすがに他人から毛を奪い取るのには抵抗があった。
(確かに俺は髪が欲しい。だが俺も毛を人一倍気にしているだけに、同じように苦しむ人たちの気持ちは良く分かっているつもりだ)
そう、例えば川上さんとか。
78 :
扇動者2/5:2007/03/06(火) 23:51:19 ID:Ijt+FouK0
(も、もうヤバイ…この空気)
先に緊張に耐えかねたのは多村だった。
山中で熊に出会った人間がそうするように、松中から目を逸らさずにそろそろと後ろ歩きで後退を始めた…その時。
「あ」
ぐきり。
「痛ったぁああああああ!!!!」
何も無い所で足をひねり、地面に転げる多村。
「痛い痛い痛い痛い…」
ひぃひぃ言いながら右足首をおさえる多村に松中は僅かの逡巡の後、数歩近付く。
「ぎゃあぁああああああ殺られる刈られる毟られる掘られるアッー!!!」
突然の痛みに正気を失い絶叫する多村。
「お、落ち着け多村…」
もごもごと口の中でなだめの言葉をこね回す松中の手を振り払い這って移動しようとするが…
「あ」
ごきっ。
手首が今度は嫌な音を立てる。
「あ」
ごちん。
腕の支えを失い、この世界にもきっちり適応されているニュートンの法則に従い多村の顔は地面へと直下降した。
硬いアルファルトに顔面を強打し、大量の鼻血の海に突っ伏しながら多村は一時活動を停止する。
「………」
動かなくなった多村を困惑の見下ろす松中。
ではここを脱出するか?
「……無理そうだな」
この空間自体から23出すのは簡単だろう。主催者自身がたまには23出てこいと言っていたはずだ。
しかし思い返してみるに、この空間に移される前は飛行機の中だったはずだ。
飛行機の中。しかも『当機は安定飛行に入りました』というメッセージもあった。
つまり、今このゲームの参加者は大空の中の密室に閉じ込められているわけなのだ。
たとえ機内に戻っても、脱出する先がないのだ。
なら何とかしてパイロットに飛行機を成田に戻させるか?
それも難しいだろう。山下達が何故こんなことをするのか考えるのも馬鹿馬鹿しいが、
これだけのバーチャル空間を用意するということなどから、彼らが相当な金を使っているということが分かる。
考えるまでもなくこの飛行機も彼らがチャーターしたのであろう。
つまり、もし選手たちが反乱を起こした時、彼らが黙って手をこまねいていることは有り得ないのだ。
どんな手を使ってくるかは分からないが、いずれにしてもおそらくコックピットに辿り着くのさえ困難なのは確かだろう。
…と、言う事は、やはり言われたとおりに髪の奪い合いをするしかないのか?
不意に頭がズキンと痛む。
福留は思わず頭頂部に手をやる。
その時彼は己の髪の少なさを改めて自覚し、じわじわと暗い感情が渦巻きはじめた。
(そういえば、つい最近もこのような気持ちになった時があった。そうだ、あれはさんま御殿の収録で、VTRを見たときだった)
後に年棒の話題を出したことについて揶揄する人もいたが、嘘はつけないだけに仕方ないと思うし、悔いはない。
さんまさん達のトークも面白かったし、リクエストした黒豚しゃぶしゃぶも出してもらえて、いい気分になっていた。
だが、それもVTRに映る自分のあまりにもボリュームの足りない頭頂部を目にした瞬間に吹き飛んだ。
なんなんだ?この哀れな男は……
激しい自己嫌悪に陥ったものだった。
80 :
扇動者3/5:2007/03/06(火) 23:53:21 ID:Ijt+FouK0
「刈らないんですか?」
ふいに後ろから声が掛かる。
ぎょっとして振り向くと、そこにはひとりの男が立っていた。
「今なら簡単に奪えますよ、多村さんのHP。まぁHPより先にライフが尽きてるみたいですけど」
一度見たものに強烈な印象を残す風貌。当然松中も面識のあるプロ野球選手だった。
身構える松中に、人懐っこい笑顔で両手を振る。
「あ、待ってください。僕プレイヤーじゃないんです。運営側の人間なんです」
「何だと…!」
「ゲームがスムーズに流れるように、みんなが刈る気を出してくれるように23まして歩く仕事です…
まあ、あまりにも進行が滞ったら実力行使の参戦もありなんですけど、それは避けたいんですよねぇ」
いいながら、ニコニコと多村と松中に交互に視線を送る。
「お前、裏切り者なのか…!?」
怒気を浮かべ掴みかかろうとする松中を軽くいなしながら、男は耳元で猫なで声で囁いた。
「………欲しいんでしょ?毛。」
松中の動きが止まり、肩がぴくん、と動く。
「…虚弱のくせに、毛根だけは丈夫に産まれやがって…って多村さんに嫉妬してたんでしょ?
だからさっきも襲ってやろうかって迷ったんでしょ?」
「ち、違…」
松中は首を横に振るが、その否定は弱々しい。
「こっそり植毛したのを陰でみんなに笑われてるんじゃないかって悩んだらまた毛が抜けてまた悩んで…
23スパイラルだったんでしょ?」
「う…」
「『23はK久保さんに嫌われるんじゃないか』って心の底で不安だったんでしょ?」
「うぅぅ…」
畳み掛けられる言葉達は、松中の心の深奥を的確に抉り取っていく。
視線を落とすと、赤い小さな袋が目に入った。
そうだ、これは「フサウター」とかいうギャグ漫画の中でしか登場しないような名前の物体が入っている袋だ。
さっきは手をつける気にもなれなかったが、なぜか不意に試してみようという衝動が湧き上がった。
とりあえず取り出してみて、説明されたとおりにスイッチを入れてみる。
自身のHPのあまりの低さに、福留はさらに落ち込んだ。
「ハハ……、これじゃあなかなか結婚できないのも当然かなあ……」
――ドメも可哀想にな。顔も頭もあんなんじゃ女も逃げるさ――
誰だったか、先輩か記者かがそう言ってたのをこっそり聞いてしまった時のことを思い出した。
どれだけバレンタインでチョコをもらえても、本気で付き合ってくれる女性が現れてくれない。
いくら稼ごうと、いくらすごい成績を残そうと、やっぱり女は外見になびくということは痛感していたが、
他人にはっきりと言われた時は大きなショックを受けたものだった。
これ以来このセリフを思い出すたびに、福留は憂鬱な気分になったものだった。
今までは、それだけだった。
だが、今回のこのセリフは迷っていた福留の心の中で、ゲームに乗る決定打になってしまった。
「決めた。俺はこの奪い合いの中で生き残ってやる」
どうせここから23出すのは不可能に決まっている。
そんな無駄な努力をするくらいならこのゲームで生き残るために全力を尽くすほうがベターな選択肢のはずだ。
「別に命を奪うわけじゃないんだしな」
それに今回のゲームに生き残れば、必然的に髪に恵まれた新たなる自分が誕生するのだ。
そう、それこそ、機内テレビに出てきた山下大輔の様に。
あの男でさえあれだけの量の髪を手に入れることが出来たのだ。
ましてや俺が参加者全員分の髪を手に入れられれば―――例え2319でもせめて2323でなくなれば―――
「もう『女も逃げる』なんて言われるものか」
小さく、しかしはっきりと言い切ると、福留はテキパキと荷物を整理し、右手にスタンガン、左手にバリカンを持って立ち上がる。
この世界に来て最初の一歩を踏み出した福留の目は、23鷹のように鋭く光っていた。
【残り29名】
83 :
扇動者4/5:2007/03/06(火) 23:55:16 ID:Ijt+FouK0
「う…う、うぉおおおおおおおおおおおおおお!!」
ふいに弾けるように叫ぶと、松中は倒れた多村を抱え上げる。
「ふざけるなっ!!俺はお前らみたいな毛の亡者とは違うっ!こいつはチームメイトだ!仲間だ!」
ごきごきごきごきべきっ。ぐはぁっ。
きつく抱き締めた手の中で奇妙な音が続いていたが、松中はかまわず絶叫する。
「俺は仲間の毛を奪ったりはしないっ、仲間を守る!絶対にだ!失せろっ!!!」
ごりっごりっ、ばきばきばきばき。フワーリ。
「そうですか、だったらいいです」
反論が来ると思った松中の予想を裏切り、男はあっさりと頷いた。
「でも、9696プレイヤーとして生き残れるのは、ひとりだけだって忘れないで下さいね」
松中の心に棘を差し込むようにそれだけをいい残し、その姿は路地裏に消えていった。
「………」
残された松中は腕の中の多村を見る。
白目をむいた多村の顔面は血まみれで口からはピンク色の何かの臓器がはみ出してどくんどくんと脈打っていたが、
松中の注意はそこにはなかった。
髪の毛。
『日本一虚弱な一流アスリート』の称号には分不相応な、そこだけは人並みに強い毛根――これを…自分のものに。
「うぉぉぉおおおお!!!!何を考えているんだ俺はっ!!」
邪念を振りほどこうと再び多村を強く抱き、絶叫する松中。ポッキーのような体が、腰からありえない方向にぼきっと直角に曲がる。
「K久保さんK久保さんK久保さん!俺に理性を!勇気を!仲間を守る力をっぉぉぉおぉおお!!!」
お題目のように人の名を呼びながら、ボロ雑巾を抱えた23毛のマッチョの姿は、いつの間にか濃くなった霧の中へと消えていった。
84 :
扇動者5/5:2007/03/06(火) 23:57:47 ID:Ijt+FouK0
「毛の亡者とは酷いなぁ」
松中の去りし後、男はくすくす笑いながら路傍の空き缶を戯れに蹴る。
かんっと乾いた音を立て、缶は暗がりに転がり、闇に溶け込むようにすっと消えた。
『お疲れさーん、どうだった?』
男の後ろの空間が一瞬歪み、実行委員長の顔が空中に浮かぶ。
「時間の問題っスね、松中さんは。いいマーダー(MARUHAGE Destroyer)になると思いますよ」
『そう、お疲れさん…ところでさ』
男の報告に満足げに頷いた山下は、ふと思いついたように笑顔を潜めた。
『例の話、ホントに良いの?『円滑進行』の役目を無事果たしたらきみにも移植恩恵もらえるって…』
「ああ、いいんですよ」
男はあっさりと頷いた。
「僕このキャラで売ってますし、今更9696になったってファンが戸惑うだけですから」
『だったら何でこのゲームに?別にギャラが破格って訳でもないのに…』
「いやぁ、つーs…僕の師匠が楽しそうなことには何でも首を突っ込む人ですから、僕もそこから真似してみようかな、って」
男は何の屈託も無い笑顔を見せる。身に纏うのは日本でいちばん北にあるプロ球団のユニホーム。背には1の文字。
「楽しいじゃないですか、バトロワの進行役なんてわくわくします」
実に簡潔に、明快に、男は実行委員長の疑問に答えた。
『楽しいから…なるほどねぇ』
得心して山下は表情に笑顔を戻す。
『じゃあ、ガンガンみんなの背中押しちゃって、森本くん!』
「はーい、行ってきまーす!」
元気よく返事をして手を挙げると、森本稀哲(Fs1)はコンクリートジャングルの中へと軽快に駆け出した。
t(ry
す、すいません…
投下がかぶってしまいましたorz
被ってしまいましたね…
とりあえずこちらこそ間が悪くてすいません…
そして新作乙です!!
面白すぎますよwwwMARUHAGE Destroyerとかギガワロスwww
自分の作品がただでさえ凡作なのにさらに霞んでしまう…・゚・(ノД`)・゚・
職人様方 2323しく乙です
というかt(ry
ハラいてぇ!!!!
職人様乙です!
そしてt(ry
お二人ともめちゃおもろいっすよwww
思わず「ブフッ」みたいなヘンな声出てしまった。
MARUHAGE Destroyerにカルピス吹いた
あとタヌラぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!
ドメも乗っちゃうのか…ww
川上憲伸(D11)は迷っていた。
ルールはよくわかった。だが、人の髪を奪ってまで……という良心があったし、
本当にそう簡単に、髪の毛が増えたりするものなのだろうか、という疑問もあった。
もちろん髪の毛はほしい。年々、面積を増している自分の額のことを思えば。
「これは23じゃないッス! おでこが広いだけッス」
そう言ってごまかしても、憐れみの目で見つめられるだけ。
最近は前髪を伸ばすことによって進行を隠しているが、その前髪も、
段々と頼りなくなってきていた。
そして、そんな川上の苦悩をさらに深くしているのが、自分が未だ独身という事実だった。
髪の毛が残っているうちに結婚しろよ! なんて無神経なことを言ってくる人もいる。
俺は結婚「できない」んじゃないッス。結婚「しない」だけッス。
その気になればいつでも結婚できるはずッス。だって俺はドラゴンズのエースッスよ……
ぎゅっと唇を噛んで、川上は周囲を見回した。
空が見えないほどのスモッグに包まれた無人の都市。
等間隔に並んだ街灯が、冷たい光をあたりに投げかけている。
地面はすべてアスファルトで固められ、道路の直線は視界の果てまで続いていた。
辺りにおよそ色彩などというものはなく、無機質なコンクリートの建造物の群れが、
ただ静かに川上を見下ろしている。
どの方角を見てもその風景に差異はない。他のブロックとの境界がどこかにあるはずだが、
見た限りではわからなかった。
もっとCGっぽい物を想像していたのだが、まるで実物だ。空気のよどみさえ感じる。
川上はかがみこんで足元の道路に触れてみた。
しっとりと湿った、雨のあとのアスファルトの感触。
確か「スモッグや酸性雨で毛根を云々」と山下が言っていた。
決まった時間が来ると雨が降る仕組みなのだろうか……
それにしてもリアルだ。これなら、髪の毛が増えるというのも本当かもしれない。
ふう、と息を吐いて、足元に置いたままにしてあったバッグに手を伸ばす。
自分が誰かの髪を奪うかどうかはまだ決めていないが、やる気になっている奴は
絶対にいるだろうから、自衛の手段は確保しておかなければならないだろう。
中を探ると、まず出てきたのは赤い袋。中身は先ほど山下が言っていたフサウターだ。
さっそく右耳に装着すると、下についているスイッチを押してみた。
「HP:61000」。これが自分の髪の毛の総量。厳しい現実を突きつけられ、
川上は落ち込みそうになった。が、必死でこらえた。今は、ともかくバッグの中身を
すべて確認しなければ。落ち込むのはそれからでも遅くない。
……だが、次に出てきた物を見て、川上は頭を抱えてしまった
――もちろん、髪に悪影響を与えないよう、そっと、だが――
カミソリ。しかも眉毛用だ。悲しいほど小さな刃に、頼りないピンク色のグリップがついている。
そんな、支給されるのはバリカンじゃなかったんッスか?
こんなカミソリじゃ、バリカンにはとても対抗できないッス……
胸から腹にかけて冷たいものが広がり、頭皮にじわりと汗が浮く。
川上は藁をもつかむ思いで、最後に取り出した青い袋を開封した。
だが中に入っていたのは、何の変哲もない、一枚の写真であった。
まず目に飛び込んできたのは、少し懐かしい、筆記体による「Dragons」のロゴ。
そう、写真の中の人物は、落合政権以前に使われていたドラゴンズのユニフォームを着ていた。
白い布地の上に青のロゴが輝き、ロゴの右下には、赤で背番号がしるされている。
60。――大豊泰昭である。
わずかな期間だが、川上と大豊は同じドラゴンズの選手としてプレーしたことがある。
穏やかで、気さくで、誰よりも練習熱心だった大豊……
しかし、こんなところで「会う」とは。
バットを構えた体勢で、人のよい笑顔を浮かべ、写真の中の小さな大豊は、
川上をまっすぐに見つめていた。
夏に撮った写真なのだろう、その顔にはきらきらと汗が光っている。
……そして、ああ。なんと痛ましいことであろうか。
大豊は、帽子もヘルメットもかぶってはいなかったのだ!
その猛々しく露出した頭皮は、浴びせられた陽光をまるでプリズムのように七色に分解し、
四方八方に反射していた。
それはまさに肉色のミラーボール。ディスコの天井から大豊の頭が逆さに生え、
くるくると回転する姿まで川上は想像した。
わなわなと写真を持つ手が震える。これが23るということか。
自分もいずれはこんなにも眩しくなってしまうのだろうか。
川上は、大豊の頭を穴が開くほど凝視しながら、まばたきすることも忘れていた。
いや、もはやその目には、大豊の姿は映っていない。
優しい笑みを浮かべるその男の向こう側に、川上ははっきりと、
未来の自分の姿を幻視していたのである。
「ううううあああああ……ッス」
冷えたアスファルトの上にがっくりと手をつき、川上は弱弱しくうめくことしかできなかった。
【残り29名】
肉色のミラーボールwwwwwwwww
腹抱えてワロタ
ダメだwwww笑いしか出てこねぇwwwwwwww
ところで、このバトロワを止めようとする奴とかは現れるのだろうかw
暑い・・・・
痛いほどの日差しが、兵力の少ない頭を刺激していた。
「あっつぅ・・・・」
帽子だけではカバーできず、ヒリつく後頭部を、手で何とか守ってみようとしたが、
元からとても歩きにくい砂丘が、余計に歩きにくくなったので、直ぐに諦めた。
「何処か休める場所は・・・」
見渡す限り、砂・・・砂・・・砂・・・・・
木の一本さえも見当たらない・・・・
バーチャルだというのに、喉が渇く。
「水・・・・・」
呟きと共に、砂丘の頂上に辿り着くが、達成感などあるはずがない。
蜃気楼でユラついている地平線まで、砂丘が続いてるのだから・・・・
「・・・・・」
頂上に腰を下ろし、カバンを開けて、地図を取り出す。
右手には方位磁石。
スタート地点が、特徴などない砂漠エリアだった為か、最初の地点だけは教えてくれた。
現時点から次のエリアまで、1ブロックまたいでいかなければならない。
しかもこの地図は、今居るエリアの地図しか示さないようで、隣り合ったエリアが何なのかはまったくわからない。
「次のエリアがサバンナだったら、俺は野球選手の日干しになるな」
冗談を言っても誰も笑ってくれない。
「・・・・野球選手なんだよなぁ」
帽子を脱いで、刺繍されたMのロゴを見る。
「なんで、髪の毛の奪い合いしてるんだか?」
毛があれば良いに越した事は無いが、無くたって別に悪い事じゃ無い。
確かにネタにはされるけど・・・
でも、他人の毛をむしり取ってまで生やす価値などあるのか?
毛なんか無くても生きていけるし、野球も出来る。
「あぁ・・・・あちぃ」
考えるも億劫になる暑さが、福浦の思考を中断させた。
項垂れると、カバンの中身が見えた。
福浦の支給品は蜂蜜だ。
「何を考えてるんだか・・・」
一応、このゲームの目的は、毛を奪い合う筈なのだが・・・・
「青いなぁ・・・・・」
暑さに頭がボーっとしてくる
誰も居ない、何も無い、ただ太陽と砂だけは存在していた。
「何もねぇな」
登りきったこの砂丘は、かなり高い部類らしく、目の前を遮る砂丘はなかった。
「・・・・・・・・誰もいない」
ハッと気が付く。
このブロックはエリアと隣接してないし、かなりの距離に人がいない事は、見渡せば確認できた。
つまりは、今のうちに飛行機に戻って、水を飲むことが出来る、と言う事だ。
「そうとわかれば、水!水!!!」
急いでフサウターをつける。
因みに自分のヘヤポイントは見ていない。
見ても仕方が無い気がしたからだ。
中央のボタンを押すと、意識が遠のいていく。
「・・・・・」
涼しい風が頭の天辺を撫でていく。
見回すと、ソコは何処からどう見ても機内だった。
大量の汗を吸った服は、ずっしりと重く、着ていて気持のいい物ではなかった。
「現実でも汗かくんだな・・・・・あ、だからトイレに行かなきゃ行けないのか」
一人で納得していると、通路側の席に座っていた福浦の視界に、黒い物が入ってきた。
「どうされましたか、福浦選手」
視界に入ってきた黒い物の正体は、ガタイの良い青年だった。
さしずめ、警備と世話係をかねているのだろう。
「水を・・・」
渇いた喉が悲鳴を上げていた。
「直ぐお持ちします」
青年は、早足で通路を歩いていった。
取りあえず、野球選手の日干しになる事だけは、避けられそうだ。
「気持悪いな・・・」
三枚重ねた服が、二枚もダメになっている。
早く脱ぎたくて、ヘッドギアの紐を外して立ち上がる。
そこで、福浦は衝撃的な事に気付いたのだった。
(山崎さんが居ない!!!)
山崎さんが初めに座っていたはずの席には、誰も居なかった。
(もしかして山崎さんは刈られてしまったのか?)
福浦の頭の中に、考えたくない事が浮かんでくる。
(この中に刈った奴が居るのか!?)
思わず、周りを見渡す。
皆、何事も無い様に眠っている。
「福浦選手」
後ろから名前を呼ばれて、驚いて、勢い良く振り向く。
「お水です」
振り向くと、先程の青年が、氷の浮かんだ水を差し出していた。
水に浮かぶ二つに引っ付いた氷が、カランと二つに分離した。
もう乾ききって出ないと思っていた唾を、ゴクリと飲み込む音は、飛行機が出している機械音にかき消されていった。
【残り29名】
乙です!
>毛なんか無くても生きていけるし、野球も出来る。
さすがに達観してるな…ゼロに近い漢は…
>(この中に刈った奴が居るのか!?)
そう来たか〜。巧い!
そもそも自分は23ではない。25歳という年齢相応の、豊かな髪を頭部に湛えている。
無論、言うまでもなく23とは無縁だ。さらに言えばそもそも、まだそのようなことを気にする歳ではない。なんといってもまだ若いのだから。
そういうわけで、何故このようなわけの分からないイベント?に参加させられているのか、田中賢介(Fs3)には全くもって不可解だった。
目が覚めてすぐルール説明だとかで山下が長々と喋っていたが、彼は適当に聞き流していた。
23ではない自分には無縁のゲームだと思ったからだ。
こんな下らないことに関わっている暇があるなら、さっさと札幌の自宅に帰ってしまいたかった。柔らかいベッドが無性に恋しい。
「ったく、なんかよくわかんねぇよなー。23って言ったら俺なんかより他にもっと適任なのいんじゃん。俺全然23くないし23てないのに」
ぶつぶつと一人ぼやき、地面にどっかと腰を下ろす。
特にすることもないので、とりあえず支給されたらしいデイバックの中身を漁ることにした。確かバリカンが入っているとか言っていたか。
面倒だったので、デイバックを開きそのまま逆さにして中身を全部ぶちまける。確かにバリカンが入っていた。
理容師ではないのでよくは知らないが、見たところそれなりに高価そうなもののようだ。
もっともゲームに参加する気などないため、最新式だろうがオンボロだろうがさして興味もなかったのだが。
「こんなあほーなゲームに参加する奴なんかいんのかよ、ほんとにさあ」
バリカンで誰かの毛を剃っている自分の姿を想像して、田中は可笑しくなった。どこからどうみてもコントだ。
ついでに松中や和田が必死になってバリカンを振りかざしている様を想像してしまい、悪いと思いつつもついニヤニヤしてしまう。
やはりどこからどう見てもコントだ。
たかが髪の毛ごときのために他者の毛を刈るなど、実に非現実的で馬鹿げている。
皆分別ある大人なのだから、いくらなんでもたかが髪の毛ごときのために必死になったりはすまい。
そう考えると本当にこのゲームとやらは馬鹿馬鹿しい。
ヘタな芸人のやるコントよりはもしかしたら面白いかもしれないが。
バリカンの他にもうひとつ青い包みを見つける。開けてみると、中にはピンク色のサンバイザーが入っていた。
「お、サンバイザーじゃん、しかもピンク」
田中は弾んだ声を上げた。
彼は、あまり一般には知られていないが、サンバイザーとピンク色をこよなく愛する男なのだ。
トークショーにサンバイザーでばっちり決めて行ったこともある。無論、ファンの評判は上々だ。
サンバイザーは良いものだ、田中は思う。
おしゃれを演出するための小物としてもさることながら、特筆すべきはその機能性だろう。
太陽光から目を保護するだけではなく、装着すれば心許ない額の生え際を覆い隠すことが出来る。
なおかつ、帽子とは違い蒸れることがないため、頭皮に優しい。
(まあ、あとの方のは俺には関係ないけどね、23くないし23てないから俺)
貰えるものは貰っておくことにしよう、そう思いサンバイザーを装着する。
慣れたフィット感が心地良い。生温い風がふわりと後ろ髪を撫でた。
(そういや、ここってどこだろ)
ここに来てから妙にごたごたしていて、周りを見る余裕が無かった。
サンバイザーを右手でなんとなくいじりながらあたりを観察すると、見上げると首が痛い程に高いビルが田中の周りに無数に聳えていた。
どうやら都市の中心部らしい。
彼の現在の住居がある札幌のような地方都市ではなく、東京のそれに近いようだ。
「これがバーチャルなんたらってやつなのかな。めっちゃリアルじゃん。すげえなあ、無駄に」
ビルの合間に覗く空の色は23い灰色だった。生温く湿った風がゆるやかに田中の頬を撫でてゆく。この分だとひと雨来るかもしれない。
まあ降り始めたら移動すればいいか、それにしてもちょっと腹減ったな、ぼんやりと考える。
ついでに思い出したのは、あるチームメイトのことだった。
(あの人みたいな勇気が俺にもあれば)
三十路を過ぎそろそろベテランと呼ばれる年齢にさしかかったあの人――ファイターズの選手会長であり主将でもある金子誠は、
年齢相応の現象と言うべきか、額がやや後退の兆しを見せつつあった。
生え際から悲哀がだだ漏れている自覚があるのかないのか知らないが、
彼は普段だけでなくイベントやトークショー等の公の場ですら、惜しげもなくその切なくも儚い額をさらすのだ。
周りの哀れみの眼差しをものともしない、蛮勇とでも言うべきその勇気が少しだけ羨まし「いや俺23くないし23てないから別に金子さんの勇気が羨ましいとかそんなのは全然ないし。うん、ない全くないホント」
誰が聞いているわけでもないのだが思わず口から言い訳、いや事実が滑り出てしまった。
妙に慌ててしまい、恥ずかしさに顔が緩む。
空から水滴が落ちてくる。ぴたり、ぴたりと音を立てて、無機質なアスファルトにひとつ、ふたつ、染みを作る。
首筋に、頭皮に冷たい感触を覚えて、田中は身震いした。やはり予想通り、雨が降り始めたようだ。
まばらだった雨足は徐々に勢いを増し、すぐに土砂降りの大雨に変わった。
サンバイザーのおかげで視界だけはどうにか確保出来ていたが、他は上から下までたっぷりと濡れてしまう。
はやくどこか屋根のある場所へ避難しなければ。
ぶちまけたデイバックの中身は面倒だから捨て置こう、ゲームに乗らない自分には必要ないものだ
――だが何故か、バリカンが視界の隅でその存在を主張している。
23くないし23ていない、他者の髪を奪う必要のない自分には不用の物だというのに。
『スモッグや酸性雨で毛根を虐める[都市エリア] 』
ふと思い出す山下の言葉。
田中の動きがぴたりと止まる。酸性雨、さんせいう?
田中は今になって初めて気づいた。
サンバイザー、その機能性の裏に隠された致命的な、あまりに致命的な欠点に。
つまり剥き出しである、ということ。さらされる、ということ。そしてそれは保護されない、ということも同時に意味する。
倒壊寸前の建物が少しの刺激で崩れ落ちる様と、それは似ていた。
新たに発覚したその欠点はひどく致命的で、その事実は田中の大切ななにかを、決定的に壊した。
彼の口から弱々しい声が漏れる。飽和状態の絶望が、震えて口から溢れ出てきたのかもしれなかった。
酸性雨は無慈悲に、剥き出しの弱った頭皮に降り注いでいた。否、突き刺さっていた。
自らの毛根が死にゆく様をありありと思い描いて、田中はとうとう理性を保つのを、やめた。
「うわああああああああああああああああああああああああ!」
本能のままに、恐怖のままに、田中はあらぬ方向へ走り出した。
その右手には、バリカンがしっかりと握られている。
【残り29名】
たしか田中って毛ん透けじゃなかったっけ。
そういや金子は参加名簿にいないんだな
>>109 2323はたくさん居るからなぁ・・・・
スタートエリアまとめ
[サバンナ] 木村拓
[都市] 松中 多村 田中賢 川上 ひちょり(刺客)
[砂漠] 福浦
[密林] 長谷川
[山岳] 福留
[氷河] 山崎(失格)
毛ん透け、理性崩壊するの早すぎるよ毛ん透けwwww
温かい空気が体を包む。
飛行機内の穏やかな空気に、実松一成(G53)はほっと安堵のため息をついた。
「ふう、助かったー」
そう呟くとほぼ同時に、自分の座席に黒服を着た男が近づいてくるのに気づいた。
「どうされましたか?実松選手」
男は自分と同じくらいの年齢のようだが、その割に2っ3らと高圧的な雰囲気が漂うのは何故だろうか。
(いや、きっとおかしな状況なもんでこっちが気後れしているだけなんだ。うん、そうに決まってる)
そう自分を納得させて、ホットコーヒーを注文した。
「直ぐお持ちします」
男は早足で通路を戻っていく。その後ろ姿を見送りつつ、実松はもう一度ため息をついた。
実松は先ほどまで置かれていた状況を思い出す。
バーチャル世界の中で実松が目を覚ましたのは南極エリアだった。
「ぐおっ、さぶっ!!」
目が覚めてすぐに思わず叫ぶ。
辺りは見渡す限り白一色。しかもどうやら吹雪まで吹いてるようだ。
幸いなことにごく近くにかまくららしき物があったためすぐにその中に飛び込む。
飛び込むとほぼ同時に山下の声が聞こえてきたため、それに耳を傾ける。
かまくらの中では吹雪は防げたが、それでも強烈な寒さは防ぎようがない。
だが説明は聞かなければならない。寒さを我慢して必死に山下の言葉を記憶する。
そして山下の説明が終わったっぽいところで、実松は一旦この空間を23出したのだった。
突然物音がした。
さっと物音がした方を見ると、一人のヘッドギアをかぶった中年らしき男が機内を歩いていた。
中年男は実松には気づかず、途中でさっきの黒服の男とは別人らしい人物に何か話しかけて、トイレの方へ向かっている。
(ヘッドギアをかぶっているってことは俺と同じこのゲームの参加者ってことだよな……
ちょっとこれからどうするかとか相談してみようかな……)
そう考え実松が腰を浮かしかけた時、プシューという音が聞こえてきた。
(え?何なんだ?)
そう思うと同時に「え、え?何?」 という声がトイレの方から聞こえてくる。
目を向けた時見たのは、さっきの中年男がばたりと崩れ落ちるところだった。
(な、何が起こったんだ!?)
突然の事態で訳が分からない。いったいどうなってるんだ?
「実松選手、コーヒーです」
混乱の中話しかけられ思わず体を震わせる。振り返ると、先ほどの黒服の男がコーヒーカップを差し出してくる。
「いったい何が起こったんですか?」
カップを受け取りつつ、トイレを指差して尋ねてみる。
男は少し困ったような表情を浮かべ、考える素振りをする。
だが間もなくして乗客室に武装した兵士達がずかずかと入り込んできて、中年男を抱え運んでいく様子を目にして、平然と答えてきた。
「ああ、どうやら失格になったようですね。」
失格?そんな大事なことをこんなにあっさり?
それにあの兵士らしき人達はいったい何なんだ?
疑問を覚えた実松だが、すぐに最も大事なことに気づいた。
(そうだ、失格者が出たということはもうゲームに乗った人がいるということだ。
もう他人の毛を奪うという道を選んだ人がいるということなんだ。
ということは…俺今ピンチじゃん!)
山下は言っていた。意識が機内にある間はバーチャル空間での君の身体が無防備になっちゃうから気をつけてねと。
つまり、今の実松はバーチャル空間で襲われてもまるで抵抗できない状態にあるというのだ。
実松の顔が見る見るうちに真っ青になる。
(呑気にコーヒーなんか飲んでる場合じゃない!)
すぐにあの空間に戻らなければ。
「やっぱコーヒーいいです!すみません!」
実松はカップを男の手に突っ返すと、すぐにヘッドギアのゲームプレイスイッチを押した。
実松が目を覚ましたときも、目に入る光景は空間を23出した時とほとんど変わりがなかった。
頭に手をやるが、誰かに襲われた形跡はない。
かまくらの外に出て辺りを見回してみても、実松のほかに誰かがいる様子はなかった。
とりあえず一安心したところで、変わらぬ寒さに震えつつデイバックの中身を調べてみることにした。
デイバッグを開けてまず目に入ってくるのは白い一枚の紙だった。
何か書いてある。早速文字を追ってみる。
『は・ず・れ♡
残念ながらあなたの分のバリカンはありません。
他の選手から奪うなり、補助アイテムを使うなりして頑張ってください。 山下大輔 』
まさかの事態に、実松は頭を抱え込んでしまった。
「…何の皮肉だよ…そりゃ俺は空振りが多いけどさ……こんな時まで空振りかよ…」
思わず頭をもしゃもしゃと掻き毟ったが、まだ補助アイテムがあるとすぐ気を取り直す。
青い袋の中に手を突っ込んで出てきたのは――
「これは……メガホン?」
いや、なぜかジャイアンツのロゴこそ付いているが、普通のメガホンとは少し違うようだ。
少し重い上に何か機械らしき物が内蔵されている。
青い袋をもう一度覗いてみると、説明書らしきものが見つかる。
それを見て、実松はようやく合点がいった。
「拡声器か……」
説明書によると、この拡声器を使えば自分の声がすべてのエリアに響くらしい。
だが、それだけ。他に便利そうな機能はなかった。
「これもハズレ支給品といったところか……」
実松は肩を落とした。
ふと、実松と同じようにこのゲームに参加させられた先輩を思い出す。
「ガッツさん、俺はどうしたらいいのでしょうか」
小笠原道大(G2)。自分の打撃の師匠。
小笠原が巨人に来ることが確実になったときかつてのチームメイトやファンには悪いが嬉しくてたまらなかったものだ。
去年の暮れの自分の結婚披露宴の時は、わざわざ福岡まで駆けつけてきてくれて、「実松がいて心強い」とまで言ってくれた。
一緒に自主トレも行った。
古城さん、木村さん―――ああ、木村さんもこのゲームに参加させられてるんだったな―――と「チームガッツ」も結成した。
それだけ親しい仲だけに、小笠原の思考は分かっているつもりだ。
彼なら、例え今のような9696とした髪を持たない2323頭だったとしても、
こんな道理に合わない理不尽なゲームに乗るはずはない。実松はそう信じていた。
その時、はっと機内で起こったことを思い出し、実松は戦慄した。
思い出したのは、中年男―――あれは山崎健(M47)さんだっけ―――が力なく兵士達に運ばれていく姿。
彼はこのゲームで失格となった。ということは、あのヘッドギアをとった頭はもう完全に2323だということだ。
自分が、小笠原が、あのように兵士達に運ばれ、2323になっていく姿を想像する。
「嫌だ!」
思わず呻き声が迸った。自分がもし2323になったら、妻と息子に顔向けが出来ない。
披露宴も済ませたばかりでまだこれからだというのに2323になったら紀子と海翔がどんなに悲しむことか。
また、師匠の小笠原が2323になるのも実松には耐えられなかった。
彼なら例え2323でもゲームには乗らないと思ったが、それでもガッツさんはあの豊かな髪があってこそのガッツさんなのだ。
あの髪が無くなったら、もうガッツさんはガッツさんでなくなるかもしれない。
球界のサムライが、ただの落ち武者に成り下がってしまうかもしれない。
そんなガッツさんは見たくない。ガッツさんはカッコよくあるべきだ。
自分も2323になりたくない。ガッツさんにも2323になって欲しくない。
2つの相反する願いが混ざり合った結果、実松の方針は自ずと決まった。
「潰そう。この馬鹿げたゲームを、何としてでも」
静かに胸に誓う。
自分と小笠原が無事に家族の元へ還るためにも。
こんなゲーム、ぶっ壊してやる。
そのためにはどうすれば良いか。
高卒の自分の頭では残念ながらそう簡単にはよい知恵は浮かばなさそうだ。
だが、1人ではなく複数人いたらどうだろうか?
昔から『3人寄れば文殊の知恵』ということわざもあるではないか。
残念ながら1人乗っているのは確実だが、さぞかしこのゲームを快く思わない選手も多いに違いない。
そのような選手と会えればチャンスが生まれるはずだ。
そして彼は気づいた。そのような選手を集めるのにおあつらえ向きの道具が手元にあることに。
「これだ……」
拡声器を手に取り、実松は呟いた。
ハズレかと思ったがとんでもない。今の自分の方針にぴったりの、大当たり支給品ではないか!
考えてみればゲームに乗るはずの無い自分にバリカンなんて無用の長物だ。
つまり、自分は総合的に見れば支給品にはかなり恵まれてるということだ。
「ついてる…俺はついてるんだ……」
思わず笑みがこぼれる。勇気と力がみるみるうちに湧き上がって来るような感覚がした。
外の吹雪はいつの間にかやんでいた。
善は急げだとばかり、早速荷物をまとめてかまくらを飛び出し、実松は走り出す。
(さすがにこんな周りが白一色の所で拡声器を使ってもそんなに人は集まらないだろう。
もっと人が集まりそうな場所…そうだ、都市エリアだ。あそこで拡声器を使えばきっと俺と同じゲームに反対する人間が集まるはずだ)
このような結論にたどり着き、実松は都市エリアを目指すことにした。
(ガッツさん、一緒にこのゲームを壊しましょう!)
実松は心の中でそう叫んでさらに走るスピードを上げ…………滑って転んだ。
「あいたたた…」
むくりと起き上がる実松。
転んだ拍子に、このような状況では忘れてはならないはずの親友を思い出した。
(そういえばひちょりは今どうしてるんだろうな…ルールを適用すればあいつは最初からHPはゼロの筈なんだが…
…まあいいか、あいつにも会えたらいいな)
そして、実松は再び、今度は少しスピードを緩めて走り出した。
実松は知らなかった。彼にとっての3つの誤算があることを。
1つ目は、会えたらいいなと思っている森本稀哲(Fs1)が彼と同じこのゲームの参加者ではなく運営側の人間であること。
2つ目は、実松の予想以上にこのゲームに乗っている選手が多いということ。
実松は毛が傍目の予想以上に悲劇を生むということを完全に理解しきれていなかった。
小笠原も、髪を失ってしまうとなれば、ゲームに乗らないとは限らないのだ。
そして、3つ目にして最大の誤算。
実松が一旦バーチャル空間を23出したのは山下の説明が終わった『っぽい』時だった。
要するに、実松は山下の言う『一部の人』、いわゆる特別参加者のみに聞かされる説明を聞き逃してしまったのだ。
ゆえに、実松は知らなかった。
自分達が”餌”であること。
そして、実松も小笠原も、ゲームを潰さなくても、それぞれに課された個別テーマをクリアすればこのゲームを23出せるということを。
その個別テーマの書かれた便箋は、実松の目に触れることの無いままデイバッグの底に眠っているのだった…… 6
【残り29名】
あちゃ、やっちまった…
最後の行の6は無視してください…orz
どんどん新作が来ていて嬉しいですね。
肉色のミラーボールに名探偵風な福浦にいきなり賢介…
もう笑いが止まらないwwwww
あ、いきなり賢介ってのはいきなり狂う賢介ですからね
121 :
HELP 1:2007/03/07(水) 23:13:07 ID:mb7HiuEf0
「飲まないんですか?喉がカラカラでしょう」
あくまで事務的な言い方だった。
知ってしまったチームメイトの不幸に、青年に掴みかかりそうになるが、
その感情を何とか抑えて、ユックリとコップを受け取り、勢い良く喉へ流し込む。
「どちらへ?」
「便所・・・・水をもう1杯、席に置いといて」
感情を爆発させない様に、慎重に言葉を出していく。
焦りが滲まない様に、ユックリとトイレへ向かう。
山崎のいたであろう席を、ジッと見つめる。
(誰が山崎さんを・・・・)
少しだけ歩を早めてトイレへ向かう。
バン!
飛行機のトイレにしては随分と広いソコに入ると、ズボンも下ろさずに便座に座る。
(良く考えろ・・・・考えろ)
あと8分程度は現実に居ても平気だろう。
まずは、状況の整理から始める。
(山崎さんは誰かに毛を刈られた、もしくは何らかのアクシデントで退場させられた)
福浦は、あまり頭の良い方ではない。
しかし、こんな時は使えるものは何でも使っておきたかった。
122 :
HELP 2:2007/03/07(水) 23:13:39 ID:mb7HiuEf0
(退場させられた山崎さんは何処へ?)
飛行機が何処かに着陸したとは考えられない・・・一々、脱落者が出るたびに着陸できるはずが無い。
そんなに安々と飛行機は降りられない。
だとしたら、機内のどこかだろう・・・・助け出すのは俺一人じゃ無理だ。
(助け出したとしても、山崎さんの心も頭はもう・・・)
あまりの惨い想像に、思わず頭を抱えると、すかさずヘッドギアが、ゲームという存在を強調した。
時計を見る。
もう5分も経過していた。
(ヤバイ・・・外に連絡を取る手段)
携帯・パソコン・・・・アレコレ考えてみる。
こんな時に悪知恵の聞く、同年代の仲間や後輩が居れば・・・
無いもの強請りの妄想に、囚われそうになるのを、頭を振って必死に振り払う。
コンコン
ノックの音に、肩が盛大にビクついた。
「は、はい?」
誰か別の選手がコッチに戻ってきたのかもしれない。
『体調でも優れないのでしょうか?』
期待はずれの事務的な声。
あくまで監視の目は緩めないって事らしい。
「・・・・・今出る」
最後に確かめておきたい事があったが、それはトイレじゃなくても可能な事だった。
123 :
HELP 3:2007/03/07(水) 23:14:09 ID:mb7HiuEf0
バタン
少しはなれた所に数人、ダークスーツの男達が待機していた。
「・・・・」
ソレを特に気に留めるそぶりもせずに、自分の席へ戻る。
席の隣には、後輩の久保がヘッドギアを付けたまま、スヤスヤと眠っている。
ヘッドギアの間からは、福浦から見たら十分に豊富な黒髪が見えていた。
(若いお前を・・・コレからマリーンズを担うお前を、そんなむごい目には合わせないぞ)
固く決意をしなおした後に、最後の確かめておきたい、事を試してみる。
「・・・・・・」
パーカーを脱ぎ捨て、中の長袖とさらにその下のTシャツごと、体から引き抜こうとする。
ビーーーーーーーーーーー!!!!!!
けたたましい警告音の後に、凄い力で両腕を掴まれる。
「イタタタタタタ!!!!」
あまりの力に、悲鳴が上がってしまう。
『何でそんな事するの?』
聞き覚えのある声が、暗闇の中から聞こえる。
「服を脱ぎたかっただけです。汗でビショビショですし」
両腕への拘束は、まだ解かれない。
『嘘だー』
「嘘じゃ無いですよ。服、メチャグチャ汗臭いですもん」
服が汗臭いのは本当の事だ。少し前まで砂漠に居たのだから仕方が無い。
124 :
HELP 4:2007/03/07(水) 23:15:08 ID:mb7HiuEf0
「早く戻りたいんですけど、そろそろ自分の体が気になりますし」
コレも一応、本当である。
『んーじゃあ、今回だけだよ!次したら・・・えーと、HP減らしちゃうからね』
(今考えただろ・・・・最初から決めておけよ?適当だなぁ・・・)
ユックリと、視界を遮っていた服が取り除かれる。
画面には、ご立腹の山下が、シュウマイ片手に映っていた。
『折角のシウマイタイムだったのに・・・』
その小さな呟きを無視して、アンダーシャツ一枚で席に戻り、水を一口だけ飲んでから、ヘッドギアにコードを繋ぎなおす。
意識は再び過酷なバーチャル世界へと沈んでいった。
(絶対に助けてやるからな)
23くなっていく意識の中で、美しくナイターの光を放つ、マリスタが『フックーラ!!フックーラ!!』と声援をあげていた。
『次は絶対に邪魔されないように、他の選手にも言っておこっと!』
山下の大きな独り言は、誰一人にも相手される事無く、再び静かになった機内に、空しく響いた
【残り29名】
おおっフクーラなんかカッコ良いぞ!
…見守るのネタでは、チームメイトに……だったがw
職人の皆様には毎度笑わせて貰ってます。
森本はあくまで参加選手ですよね?
参加選手の数に入ってますよね?
そうなると
>>21のメンバー表に長谷川を足して30人になるのか?
>>126 書き込み時間が03072323
…ミナフサフサ
128 :
代打名無し@実況は実況板で:2007/03/07(水) 23:46:29 ID:88D7hzgvO
すんませんあげちゃった
>23くなっていく意識の中で、美しくナイターの光を放つ、マリスタが『フックーラ!!フックーラ!!』と声援をあげていた。
何故かここツボった
たぶんその声援の中には俺もいるだろう。
131 :
126です。:2007/03/08(木) 01:53:09 ID:hwefozl40
>>35に森本は除くって書いてありました・・・orz
あと一人の参加者は、人数が多い、中日・広島・ロッテ・ホークス
以外からの参戦の方がバランスが良いかもしれませんね
>>36で塩崎の希望が出ているけどどうでしょうか。
>>132 それで話しが書ける方が居るのなら・・・・
私はあまり詳しく無いので・・・
吹きすさぶ吹雪の音を聞きながら、26歳らしからぬ、落ち着いた風貌の男が、
家の中に置かれた、一脚の椅子に座っていた。
久保 康友 松坂世代、最後の大物といわれている男だ。
(23か・・・・)
切なげなM字の生え際、左頂上に優しく触れる。
室内なので、帽子は既に脱いでいる。
「あぁ、そうさ・・・・」
今度は少し強く触る。
髪を触る左手には何か、チューブみたいな物を持っていた。
「俺は23てるさ!!!!」
誰も居ないのに、何かに怒るように大声を上げる。
左手に持っていた、チューブを思いっきり床にたたきつける。
それは最近CMなどでやっている、生え際用の育毛ジェル、それは、久保の補助アイテムだった。
(封が開いていたから、きっとこれは俺の育毛ジェルに違いない!なんて嫌味なんだ)
頭に血が上った久保は、ココがバーチャルの世界だという事を忘れている。
「26歳で結婚したばっかりなのに23てるさ!!この生え際のジェルだって塗ってるよ!!朝晩きちっとな!!」
あの時の恥ずかしさや惨めさったらない・・・もちろん妻には秘密にしている。
「それでなくても老けてるとか言われるのに、さらにハゲるなんて嫌だ!!まだ子供だって生まれてないんだ!」
立ち上がり、怒りに任せて椅子を蹴る。
右手にはすきバサミが握られている、コレが久保の武器だ。
「何人がバリカンを貰ったのかなぁ?」
自分はハズレなんだろうか?
「大体コレじゃあ、何度も切らなきゃいけないじゃないか・・・」
しかも、髪が少ない人にはとても使いにくそうだ。
「・・・・・・・・・・・・」
自分だけが不公平な気がしてきて、右手に握ったすきバサミを、床に叩き付けようとしたが・・・
『みんなー元気?』
すっとぼけた声が、ソレを踏みとどまらせた。
『今回は一遍に話しかけてるから、返事できないけどごめんね!
そうそう用件なんだけど、機内に戻った時に、ヘッドギアを外そう何て考えない方がいいよ。
そんな人はHPを0にしちゃうからね!』
割と大切な事だと思うのだが、何故こんなに知らせるのが遅れたのだろう?
誰か外そうとしたのか?
このゲームに参加して、メリットの無い23てない誰かが・・・・・
機内で、豊富な髪を見せ付けていた面々の顔が、頭に思い浮かんだ。
(何故、俺だけ23ているんだ・・・・・)
『それから!提示連絡の時間じゃ無いんだけど、ついでだから言うね〜山崎 健が脱落だよ』
久保の体に電流のような衝撃が走った。
(刈り合いは始まってるんだ・・・・)
『のこり29名だね、頑張ってね!!』
最後の方の言葉は、久保の脳には届いてなかった。
他の人間は、既に一人のHPを奪い、自分のHPを増やしているというのに、自分はココで何をしているんだ・・・
「こんな所で、吹雪がやむのを待ってる場合じゃ無い!!!」
すきバサミをベルトに挟み、デイバックを拾い上げる。
もちろん、育毛ジェルをバックの中に入れるのも忘れない。
デイバックには可愛いマー君のアップリケが貼ってあった。
「マー君はいいよね、全身毛だらけだもんね」
自傷気味の笑顔で、物言わぬマスコットに語りかける。
「君がこのゲームに参加してたら、俺を哀れんで、毛をすかしてくれたかい?」
いくら話しかけても、返事など返ってこない。
この場にマー君が居たとしても、喋れる設定では無いのだ。
「おっと、設定とか無いよね、マー君はマリスタに住んでるんだから」
扉を開けると、先程より、吹雪がましになっている気がした。
「俺は23てる・・・だから刈るんだ!」
23氷一枚下の狂気を感じさせる、気合の一叫びの後、
久保は走って、先の見えない吹雪の中に消えていった。
【残り29名】
乙です!
久保が動き出したか…ってお前、自分のこと23てる23てる言いすぎwww
138 :
実松編作者:2007/03/08(木) 08:31:22 ID:ieoI6NTE0
新作乙です。
久保もゲームに乗っちゃうのか…
チラ裏
悲しいとき〜
朝起きたらせっかく一生懸命書いた自分の作品に感想レスがひとつも付いてないとき〜
マジで自分の作品がネタスレにおけるアレ様や稲田程度の存在感しかない気がして怖い。
ぶっちゃけ福留編の時よりも自信が大きかっただけに余計に。
極端な話「つまらん」でもいいから感想レスが欲しいです。
いやいや、まさかサネがゲームを壊そうとするなんて・・・と思いましたよww
スラガガーだから小笠原と会えるのかどうか?
>>138 投下ペースが速いとこういうこともあるよ、
気持ちはわかるけど、感想おねだりしちゃダメだじぇ
ヾ(・ 否 ・)ノ
ちょ、ごめん確認。
72時間後に複数人残ってると失格、って 失格=HP0 だよね?
ルール的にはゲームが無事敢行されたら最後の1人以外全員HP0になるって事?
それだとHPの削りあいってか単にラス1へのつぶし合いだけになるような気が…
仮に今から変更できるなら複数生き残りにできないっすかね。
あと生き残り枠は特別参加者枠は除外でいいのかな。そこも含む?
人並みの10万へアポインツになったらおkとか?
優勝者が2323になったあとの残りのHPは賭の支払いに使われるとか、
大ちゃんのロン毛は進行料の前払いで選手のHP稼がないとあとで返却しないといけないとか、
いろいろ展開が出来るので一人でいいような気もするよ。
>>141 あーそこらへんなんも考えてなかった。どうすんべ。
髪の奪い合いってことを考えるとたしかに複数でもいいなー
特別参加者が枠に入らないとすると、72時間逃げつづければいいことになると思う
課題クリアで勝ち23できることになったから、
72時間経ってもクリアできない、かつそこまで生き残ってる人は枠に入ってきても良さそう
まあ、ルールの途中変更は大ちゃんのせいにしちゃえばよくね?
ついでに聞いていい?
もしキムタクが刈られた場合、刈った人は木村の現在HPの1/10=6,580HP増加で、
現実では木村と山崎の素のHPの1/10ずつ=5,900+6,800=12,700の毛根が確保されてるってことでおk?
刈るたびに1/10になると思ってた
>>144 それでいいと思う、既に1つルールが追加されてるし
参加者募集とかしてるし・・・
ところで、無茶にも保管庫的なものを作って見ました
http://2323.hagewasi.com/ 作品はまだ保管してません・・・・・
今後は取りあえず、作品の保管と、
参加選手表に出発エリアを書く事を目標にしています
どなたか、もっとレベルの高い保管庫が出来るのであれば、
そちらの方にお願いしたいですが・・・
>>145おk。少なくとも自分はそういうシステムだと思ってた。
たくさんヘアポイント持ってるやつは狙われそうだね
一度の対決で、すべての毛が刈られる(HP0になる)とも限らないんだよね?
半分刈られた時点でマーダーから逃げるとか、そういう展開も考えられる。
そうなればHPの細かい計算もふまえなきゃならない訳で、大変そう‥‥
見切り発車で進んでるのが少し恐い。
‥‥‥なんて職人でもないのに偉そうなこと言ってすいません。あくまで一住人の意見ととらえて下さい。
>>145でいいと思う、てか
>>146だと資源の枯渇の速度が半端ないことになるのに気づいた
HPの計算については、フサウターが人から奪ったHPと元々持ってるHPを分けて表示できればいいのかな?
同じに刈り取っても還元率が違うわけだから、混ぜると混乱のモトになると思う
最後に刈り上げた人が、
奪ったほかの人のHPまで奪えるというのはどうだろうか?
それまでは自分のHPで戦う
>>148 >>150 この解釈だとゲーム内と現実でHPの計算が微妙に違うわけで、
参加選手が気づいたら面白いことになりそうだなと思ったんだよ。
キムタクの場合、差の6,120本はどうなるのかとかね。
確かに混ぜると危険・・・じゃなくてめんどくさいな、いろいろと。書き手じゃないけど
↑にも出てたネタだけど、仮に大ちゃんの2323が前借(選手の刈り合い成功の報酬の前借)ネタにも活用できると思うんだけど
刈ったポイントは一旦ストックされるとか、別計算のほうがわかりやすいかも。
自分のヘアポイントは、一旦他者の手に渡ると1/10になってストックされる。取り戻しても1/10は変わらない
刈ったらストック分から減っていく、とか。
混ぜるとわかりにくい
ネタスレが見切り発車じゃなくてどうする!
>>154 オーケイ目が覚めたよ
でも髪の数え方だけは決めさせてくれ
とりあえずここまでまとめると、
・最初のHP(今ある地毛)と奪ったHP(ストック)に分けてカウント
・刈られたらストックから優先的に減る
とゆーことかな
ストックから減らないと、奪い合いが活性化しないしな
増えたぶんはせっかくバーチャル世界だし、見た目に反映させようぜ
仕切ってすまんが、これで決定ってわけじゃないんで意見求む
えーと・・・
要するに、キムタクを例にすると・・・
木村HP = 59000(元HP) + 6800(山健HPストック) = 65800
キムタクが仮に"X"(HP50000)に刈られたとする・・・
"X"に入るHPは、6800までは、ストック本数を実数計算なわけだ。
キムタク本来のHPに差し掛かると、59000の1/10計算になるわけだね。
"X"が木村を全殺しにしたとすると、"XのHPは・・・
"X" = 50000("X"HP) + {6800(山健HP) + 5900(木村HP)} = 62700
こういうことだね、いいと思う。コレなら刈った奴がどれだけストックを持っているかだけの話で済む。
後々は複数人の相手を刈っていても、ストック本数さえチェックしておけば良いわけか。
これが
木村HP = 65800 で計算すると確かにわけわからないね。闘いが進むにつれ、絶対本数がどんどん減ってしまうわけだから。
さっきの計算をすると、
"X" = 50000("X"HP) + 6580(木村HP) = 56800
さらに"Y"(HP60000)が"X"を全殺しにすると、
"Y" = 60000("Y"HP) + 5680("X"HP) = 65680
この後、"Y"が"Z"に半殺しされたり、"Z"が"A"になんてことになるとさぁ大変、後々わけわからなくなるかもね。
>>155に賛成です。
もはや、私には解らない世界に行ってしまったorz
フサウターがこんな悲劇を招くとは(笑)
誰かが一遍に全選手のHPを出してくれるとありがたい
小出しされて判明するのが面白いんじゃないか
生き残り条件に関しては
23組=72時間経過後HPが10万以上になっていること
餌組=個々の課題をクリアor72時間経過後までHP10万以上を守ること
※72時間経過時点でHP10万以下のプレイヤーは全員アウトで0になる。
というのはどうだろう?
このルールだと23組は少なくとも4〜6人の毛を丸々奪わないとアウトだから(人によってはもっと)生き残り人数も絞れるし、
タイムアウト迫ったら10万に足りない面子がだんだん焦りる様子とか(組んでいた同志が仲間割れ、とか)話を作りやすいんじゃいかと。
和田さん辺りには少々きついがw
さんすうができないために実例を出せなかった俺にかわってスレに救世主が
>>156マジありがとう
しかしフサウターの悲劇はまだまだ続く気配www
>>159 個人的にはおもしろいと思う
「ふぅ、全く油断も隙もないね。」
「お疲れ様です。」
放送室から戻った山下はプリプリしながら中央のテーブルに腰掛ける。
「ったく、せっかくのシウマイタイムを邪魔するんだから!」
モニターを監視していた佐野重樹(元Bu〜D〜米独立リーグ〜メキシカンリーグ)は兵士達に監視を続けるよう指示を与えると、自らも山下の向かいに腰をかけた。
「しかし、始まりましたね・・・まさか、いきなりあんな事になるとは思いもよりませんでした。」
「木村君のことかい?」
「えぇ。」
(2323が2323を刈るとは・・・しかもあんな卑劣な形で。)
その事実に、現役時代、2323プレイヤーの地位向上に尽力した佐野は少なからず衝撃を受けていた。
「2323同志の争いはそう簡単に起こらない・・・そう思っていたんだね。」
「はい、2323は2323の心の痛みを知る・・・そう思っていましたから。」
「・・・まぁ食べなよ、美味しいよ。これはね、真空パックだから日持ちもする優れものなんだよ!」
「あ、頂きます。」
「あ、ソコの君、こっちのお皿を渡辺君達の所に持って行ってあげて。あと、大成君に適当に交代で休憩取るように伝えておいて。それと、くれぐれもさっきみたいな事には気をつけるようにともね。」
「はっ!」
声をかけられた青年は、山下が指差したシウマイの乗った皿を持って部屋を出て行く。
「・・・佐野君、木村君くらいの2323はね、ある意味でまだ余裕があるってことなんだ。」
「余裕・・・ですか?」
「うん、まだ伸ばせば隠せるんじゃないか、まだケアすればどうにかなるんじゃないか・・・ってね。でもね、それは裏を返せば臆病になってしまう時期でもあるんだ。」
「・・・わかるような気がします。」
(俺もそうだった・・・自分の頭に異変が起きていることに気づいた頃、様々な工夫でその侵略に立ち向かった。そう・・・運命とはそう簡単に受け入れられないものだ。)
(だが、そうだとすると・・・彼等は・・・)
佐野は山下の言葉である疑問にたどり着く。
「山下さん、そうなると、逝くとこまで逝った・・・限りなく"0"に近い者達は、それこそゲームに参加しないのでは?」
「ふふふ、そんな発想になるなんて、佐野君は本当に優しい心の持ち主なんだね。」
そう言いながら、山下はシウマイを口に運ぶ。その時、シウマイと一緒に線状の束が口に入り、山下はうっとおしそうにそれを手でよける。
「あ・・・」
佐野は山下のその仕草に思わず心を奪われる。
「ははは、ロン毛もなかなか不便なものだね。」
そう言いつつも、山下の表情は至福そのもであった。佐野はそんな山下の頭部から目を離せなくなってしまっていた。
(ロン毛、ロン毛・・・アレが・・・アレが・・・っ)
「そんなにもの欲しそうな顔をしなくても、もう少しで君の手に入るじゃないか。」
「え、あっ!いや・・・私は・・・その・・・」
(うぐぅっ・・・俺としたことが・・・)
佐野は顔を真っ赤にしてうつむき、山下と目を合わせられなくなってしまった。
そんな佐野を見て、ニヤニヤといやらしい笑みを浮かべながら、山下は席を立ちメインモニターの切り替えボタンをいじくりだす。
「話の続きだけど・・・僕は君の言うようにはならないと思うよ。彼らを招待したのはその為でもあるんだからね。」
井川、大沼、小笠原・・・次々とモニターに映し出されるのは、ロン毛・パーマ・カラーリングを施した9696プレイヤー達。山下はある男が映し出されたところでその手を止める。
「僕はね、この中でも特に彼が嫌いなんだ。知っているかい?彼が一昨年のシリーズでしていたヘアースタイルを。」
メインモニターに映し出されたその男を見て、佐野の眼光が鋭くなる。
「小林・・・宏之・・・っ!」
(忘れられるものかっ!一昨年のシリーズをテレビ観戦していた時に、奴が現れた時のあの衝撃は!)
『 コ ー ン ロ ウ 』
編みこみという技法を用い、2323な男には到底実現不可能して、ナイーブな頭髪に多大なストレスを与える恐るべきヘアースタイル。
おそらく、現存するヘアースタイルの中でも、屈指の難易度を誇るヘアースタイルである。
その珍しさから、実況アナウンサーもたびたび彼のヘアースタイルを取り上げた。
「アレは・・・アレはなかった・・・っ!」
みるみるうち佐野の顔が紅潮する。
「他にも銀髪にしたり、ファンから次のヘアースタイルを募集したりしているらしいよ。」
(何?何だそれは・・・?そんなものはファンサービスではないっ!ただの自己満足じゃないかっ!)
「そう言えば、佐野君は彼に何てオファーを出して呼んだかは聞いているかな?」
「えぇ、彼はロッテですから・・・たしか、メジャー球団の最新トレーニングに参加させるという話ではないのですか?」
「実はね、彼はそれを断っているんだ。」
「え・・・?」
「自分のペースでやりたいってね。仕方がないから、再度、女性向けファッション誌の海外ロケってオファーを出したんだ。そうしたらね・・・出てきたよ、ノコノコとね。」
(女性向けファッション誌???何だって???オマエは野球選手ではないのか?メジャーのトレーニングがNGで、女性向け・・・ファ・・・ッション誌ぃぃぃぃっ!!!???)
そこには先ほどまで居たはずの、かつて23魔神と呼ばれた心優しき男の姿はなくなり、一匹の鬼が居た。
「ホントはもう一人その手でおびき出す予定だったけど、そっちには逃げられちゃったけどね。ちなみに、送られてきたデータによると彼のHPは・・・107000だね。」
「っ!い、意外に多いですね。ふざけたヘアースタイルですが、多い方ではないと思っていました。」
「恐らく美容院でスいてもらって、髪のボリュームを減らしているんだろうね。」
「減らす!?バカなっ!!!いったい何のためにっ!?」
彼のこれまでの半生を全否定するような行為に、佐野は声を荒げずにいれなかった。
「今はそれがナウいんだろうね。彼の他にも、キャンプ中に地元に帰って美容院に行ったり、"餌"はそんな連中ばかりさ。」
「ぐっ・・・」
ワナワナと肩を震わせ、怒りを露にする佐野。
「優しい心の持ち主である君ですらそうなってしまう・・・例え"0"に近い者達であっても、彼らに出会って、果たして餓狼にならずにいられるものかな?」
「っ!?・・・くふふふ・・・そうか、そうですよね。」
「佐野君、昔、誰かがこう言ったそうだよ・・・
『人生に悲劇は2つしかない。1つは毛のない悲劇、そして・・・もう1つは毛のある悲劇である』
・・・ってね。」
「うふ、うふふふふ・・・山下さん。私は何としても見たくなってきましたよ。この・・・"餌"達がその豊穣な束を無惨に刈り取られながら泣き叫ぶ姿をね・・・。」
モニターに映し出された、座り込んでデイバックを漁る小林宏之(M41)を見つめる二人の瞳には、明らかな狂気が宿っていた。
「そうだ、佐野君。君には想像がつかないかもしれないけど、僕は"0"に近い者達同志の争いも起こりうると思っているよ。」
「えぇ!?まさかそんな・・・」
「・・・どうせ残りわずかの惨めな残骸を刈り取るだけの事。それは、豊穣な頭髪を刈り取るよりも心が痛まないだろうから・・・」
佐野は山下がモニターを遠い眼で見つめながら、冷たく言い放った言葉に思わず身震いする。
「ところで山下さん・・・」
「・・・」
「あの、生き残りに必要な最低HPラインについての説明ってしましたか?」
「あ―――――――――――っ!!!!!!」
「・・・どうします?」
「とりあえず・・・・・・まずはシウマイを食べようよ、早く食べないと冷めちゃうよ。後でもいいじゃん、その話は。」
「そうですね、後々、こう着状態になった時に使えるかもしれませんしね。」
テーブル中央に鎮座するシウマイは、ホクホクと湯気を立て、美味しそうな香りを漂わせていた。
リアタイktkr
なんだ・・・シリアスのはずなのに笑いがこみ上げてくるw
言動は冷酷のはずなのに穴が開きまくりなのも大ちゃんの人徳のなせる技か
GJでした
さ、佐野さんが鬼に――――――。・゚・(ノД`)・゚・。――――――ッ wwwww
>>147 あと、保管庫さん感謝です!よろしくお願いします。
乙です
て・・・適当すぎる・・・
なんて適当さなんだ!23てるなぁ・・・皆
169 :
代打名無し@実況は実況板で:2007/03/09(金) 01:35:57 ID:FIemPJlz0
投下乙です!w
ああもう、どれもこれも笑いをこらえるのに必死だ・・・w
うはwコバヒロこうして書かれるとヤな奴だなw
逃げられたもう1人はあの選手かな?
そして大ちゃん、怖いけど色々抜けてるよw
「ナウい」に吹いたww
それにしても、職人さん方の文章力半端ないなあ。
皆様のネタにかける心意気が素晴らしい。
>>170 ばかっ!抜けてるなんて言うな!奴らに聞かれたら・・・・
>>171 ああ〜ヤバい、23てました。
大ちゃんのうっかりが感染ったかな。
173 :
Pawn 1:2007/03/09(金) 02:15:15 ID:SycK5XmB0
小林 宏之は震えていた。
何にかは解らない。
怒り?悲しみ?恨み?
小林宏之は震えていた。
左手にディバックを握り。右手に小さな紙を持っている。
「嘘だ・・・・」
小さな紙には無機質な印刷の文字で、とんでもない事が書かれていた。
『小林 宏之君。君の脱出条件は松中 信彦・川崎宗則
両人の半分以上のHPを奪う事である』
宏之には初めから、刈る運命が定められていたのだ。
何故そんな事をさせられるのかは、その続きに書かれていた。
『両人が所属するホークスは、我チーム優勝の一番の壁となる
君を、このような危険な場に送り込む非礼を許してくれ』
何が許してくれだ・・・心にも無いことを印刷で綴りやがって。
『条件をクリアーした後は、君は自由の身だ。
もし、それまでに少しでも失ったHPが有れば、それはコチラが賠償しよう。
奪ったHPはゲーム参加している、ロッテの選手へ配分される
クリアー報酬としてコチラもそれなりの物を用意している
報酬については、もう一つの紙に書いてある。条件クリアーまでに選んでおいて欲しい』
封筒に同封された紙を広げると、ソコには魅惑的な報酬の数々が書かれていた。
こみ上げてくる感情に、紙が歪む。
174 :
Pawn 2:2007/03/09(金) 02:18:14 ID:SycK5XmB0
「ちくしょう・・・・」
16歳のモデルの子との、海外ロケだと聞かされて、既婚であるが少し心躍らしていたというのに・・・
勝手に訳もわからないゲームに参加させられて、自分の事を『餌』呼ばわりされ、
更に、決める自由さえも奪われた。
(俺は球団の小間使いじゃねぇ!野球選手だ!!!)
苛立ちを隠そうとはせず、鬱陶しそうに長い前髪を指で横に流す。
高い湿度に、更に苛立ちが煽られる。
自分の様に、他の『餌』にも、各々の球団に利益があるクリアー条件が出されているのだろう。
「誰が言う事なんて聞くか・・・」
プライドはズタズタに切り裂かれていた。
球団は軽い気持で、自分を選んだであろう。
そりゃあ、自分は髪形募集の企画も立てたし、髪型で注目される事もあった。
毛さえあれば、誰でもよかった筈だ・・・・・
頭の中に浮かんだ、毛のある仲間達。
「俺が一番軽んじられたって事か」
その仲間達・・・いや、ココに参加してる23の奴等よりも価値が低い自分。
卑屈になった男の目は、ギラギラと光っていた。
「俺はこの瞬間から、ロッテの選手で有る事をやめた」
右手で、心無き命令文を握り締め。
左肩にデイバックを担ぐ。
「素直に言う事を聞くと思うなよ」
己を卑下した駒がゲームをスタートさせる。
ますは2マス進もう。
後は1マスずつ。確実に。
「絶対に許さない」
【残り29名】
宏之マジロリwwwwww
しかも騙されてキレてるwww
ロリの中ではMLB<<<<16歳モデルかw
しかも地味エース化してるしwwwww
耳障りな甲高い鳥の声が木々にこだまする鬱蒼とした森の中、黙々と腹筋をする男。
暑苦しいまでの9696とした体毛に覆われた体からはうっすら湯気すら上がっている。
「・・・・・・498・・・499・・・500・・・、っと。ふう・・・。」
1日のノルマをとりあえず終え、草の上に仰向けに体を投げ出した。
バーチャルな世界で行う筋トレの成果が現実世界の体に還元されるのかは知らないが習慣としてこれをやらないと落ち着かないのだ。
覆い茂る葉の隙間から覗く空に視線を泳がせながら足を上げクールダウンのストレッチへとうつったその時、耳の奥に脳天気な声が響いた。
「やあ緒方君。ご機嫌いかがかな〜?」
「・・・機嫌、ですか?別に良くも悪くもありませんよ。」
ストレッチの動きは止めず、呼吸を整えながら緒方孝市(C9)はぶっきらぼうに返答する。
「あれえ、そっけないなあ。ダメだよ野球選手はファンサービスとか愛想よくマスコミ対応するのだって仕事の・・・」
「何の用なんです?」
放っておくといつまでもいらん事を喋り続けそうな山下の言葉を容赦なく遮った。
「んもう、しょうがないなあ。君には便宜を図ってるのにい。とりあえずの業務連絡だよ。どう、不自由はない?」
「ああ・・・ええ、道具類は一通りチェックしました。問題なさそうですね。」
「そう、良かったあ。何か困った事があったらすぐに連絡してね。何しろ君は・・・」
「分かってますよ。お気遣いどうも。」
「うんうん。君には期待してるからね。じゃ〜ね〜。」
やっと通信が切れたようだ。この頭に直接響いてくる音はどうにも心地が悪い。
緒方は軽く頭を振ると更に黙々と30分以上ストレッチを続け、仕上げとして体を伸ばし立ち上がった。
(さあて、どうするかな。奴等を油断させておくためにもまずは大人しく計画にのったフリをして・・・)
―ガサリ
ぴくりと長い睫毛が動き黒目がちでキュートな瞳が油断なく音の方向に流れる。
全身からその瞬間青白いオーラが発されたかのように周囲の空気が凍り付いた。
しばらく前から2323気づいてはいたがどうやら誰かがこちらを伺っているようだ。
面倒な事だがウォーミングアップとデモンストレーションにはちょうどいいかも知れない。
口元に23っすら笑いを浮かべながらゆっくりと口を開いた。
「――かかってくるのかい?」
―ガサッ!ガサガサガサ!ザザザザザ・・・
どうやら身を潜めていた誰かは逃げていってしまった。
(おやおや)
まあいい。無駄な殺生・・・じゃない、殺毛根をしてもしょうがない。
俺には目的がある。そのためにここにいる。
(見ていてくれ、かなこ)
見ている訳もない最愛の妻にそう語りかけると緒方は再び背筋をはじめた。
【残り29名】
>>178 ちょwww
緒方そっちに引き込むのかよwwwwww
>「――かかってくるのかい?」
戦うスレかよwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
ひちょりってマジモンの23じゃないよ。
毎朝剃ってるだけ。
どーすんだろ、健全な毛根は存在するのに剃るべき毛が無い。
無敵状態じゃん。
小雨が降り注ぐ空の下を、一人の男がゆっくりと歩いていた。
男の名前は和田一浩(L5)。西武ライオンズの頼れる主砲であり、精神的主柱である。
顔に垂れて来そうな水滴を一旦払おうと、和田は頭に手をやる。
彼の姿は至っていつもと変わりがなかった。ただ一箇所を除いて。
彼をよく知るものは、今の彼を見れば驚くことだろう。
何故なら、まだゲームは始まったばかりなのに、和田が手をやった先は彼のトレードマークでもある23上がった頭ではなく、
まるでアイドルスターのように豊かに膨らんだ茶色の髪の毛なのだから―――
和田の目が覚めたのは生い茂る雑草と荒れた土の上だった。
2っ3らとした意識の中、山下の説明を聞いて和田は呆然とする。
「とんでもないことになったな…」
バトルロワイヤルという映画については知っていたが、
まさか自分が実際に、命の代わりに髪を奪い合う形でやらされることになるとは思わなかった。
「まあ本当に命の奪い合いをするよりはましかな」
苦笑する和田。元来心優しく争いごとを好まない性格の彼は説明を聞いてもゲームに乗る気が起きなかった。
いくら自分の髪がこんなんでも、例え命でも髪の毛でも他人の大切な物を奪う気にはあまりなれない。
とはいえ、プロの世界で生きる人間なだけに、なす術もなくゲームから姿を消すのもまた気が引ける。
とりあえずさっきあけてみた赤い袋の中身に眼を落とす。
和田はそれをじっと睨み、やがてバッグの中に戻した。
自分の髪の量は自分が一番分かっている。いまさら確認する必要がない。
そしてバッグの中を探る。バッグの中から出てきたのはバリカンではなく、金物屋で売られているような大きな鋏だった。
「バリカンが入ってるって言ってなかったか?」
和田は首を傾げる。最新の電動式なら当たりだと言っていたが、バリカンですらない場合はどうなんだろう。
まあバリカン以外の物の中ではこれは充分当たりの部類の方に入るだろうが。
「まあいいや、えっと、後は…」
そう言って鋏をしまい、青い袋を取り出す。
青い袋を開けようとした時、突然小さな物音が聞こえてくる。
目を上げその物音の方向を見た途端、和田の体内で驚愕が駆け巡った。
視線の先にあるのは、立派な鬣、鋭く光る目、獰猛な牙。
山下の言葉が脳内で甦る。
――強い日差しと猛獣が毛根を虐める[サバンナエリア] ――
そう、和田が目にしたのは、彼の所属チームのマスコットのモチーフでもある動物、ライオンだった。
「うわああああぁぁぁぁ〜〜〜〜っ!!!!」
まさかの事態に思わず大きく叫び声を上げつつ、急いで青い袋をしまいバッグを引っ掴んで逃げ出す和田。
叫び声で和田の存在に気が付いたのか、ライオンは和田の方を向き、和田を追うようにして走り出した。
「ひいぃぃぃぃぃっ!!」
ライオンが追ってくるのに気づき、和田は今にも泣き出しそうな表情になった。
(何でだよ!何でただの髪の奪い合いでこんな死にそうな目に遭うんだよ!!こんな目に遭ったらますます23るだろうが!!)
火事場の馬鹿力とはまさにこの事だろうか、一般的にはそんなに俊足のイメージのない和田だが、
この時ばかりは誰も想像のつかないくらいのスピードでエリア内をひた走る。
しかしいくら速く走ろうが人がライオンに勝てるはずがない。
どんどん和田とライオンとの距離が縮まっていく。
「だ、誰か、誰か助けてくれぇっ!!」
思わず和田が叫んだその時だった。
突然今までいたサバンナの景色が消えていく。
すると不思議がる間もなく代わりにスモッグに包まれた街が見えるようになった。
(な、何だ!)
周りを見回してみるが、あれだけ迫ってきていたライオンの姿はもうどこにも見当たらない。
和田はもう一度山下の言葉を思い出した。
――6つのエリアは隣り合っており、その境界線を越えると一瞬で違う世界へと移動してしまう――
「助かった、のか…?」
ぜいぜいと息を切らしつつ、和田は呟いた。
都市エリアに来て暫くたった時雨が降り始めた。
尚もぜいぜいと息を切らしながらも、和田は近くの喫茶店みたいな建物に身を寄せる。
雨から逃れるとほぼ同時に、再び山下の脳天気な声が聞こえてきた。
『――機内に戻った時に、ヘッドギアを外そう何て考えない方がいいよ。そんな人はHPを0にしちゃうからね!』
あまりにも脳天気な声のためについ聞き逃してしまいそうになる。
聞き逃したらうっかりやってしまいそうなことだ。和田は気を引き締める。
『それから!提示連絡の時間じゃ無いんだけど、ついでだから言うね〜山崎 健が脱落だよ』
もう脱落者が出たのか。早いものだなあと和田が思っているうちに山下の連絡は終わった。
(あと29名か……そういえば、まだ青い袋の中身を見てなかったな)
ライオンに襲われた所為で青い袋の中身を知らないままだった。
バッグを開け、青い袋を取り出す。中身を見た瞬間和田は目を見開いた。
「…俺をなめてるのかよ……」
なんと皮肉な事か。
なんと嫌味な事か。
そこに入っていたのは、茶色く輝くロングヘアーのかつらだった。
「これのどこが補助アイテムなんだよ!当てつけ以外の何物でもないじゃないか!」
さすがにこれには怒りを隠せなかった和田は、思わず建物の壁を蹴りつける。
何度か蹴ってようやく気が済んだのか、和田はかつらを見つめ直し、その用途を考えてみることにした。
(落ち着け、落ち着け。髪にこだわるなんて小さなことじゃないか…。
…そうとも、これには当てつけ以外の用途がちゃんとあるはずだ。
……そうだ。これはきっと護身用だ!
このゲームに乗った奴が後ろから襲い掛かってきたとき、このかつらを被っていればダメージを和らげることができるかもしれない!
これだけ髪の量が多ければ、なおさら被害も少なくなるはずだ。
それにわざわざ補助アイテムとして配られるくらいだ。もしかしたらなにか特殊な能力を内蔵しているかもしれない!)
早速かつらを被ってみる和田。どういうわけか、茶髪のかつらは和田の頭のサイズにぴったり合った。
(うん、これなら役に立つかもしれない)
そう考えると、和田はガラス張りの窓の方を見る。
雨の勢いが弱くなったのに安堵した次の瞬間、和田の動きが止まった。
和田が見ていたのはガラスに映る自分の姿。いや、正確には自分の頭に乗っているかつら。
ガラスは和田がとっくの昔に捨てたはずの夢、しかし本当は和田の心の奥底でずっとくすぶっていた夢を見事に映し出していた。
そして、そのガラスに映る和田の夢を具現化した姿は、和田の理性を徐々に侵食していく。
(そうだ、俺はやっぱり髪が欲しいんだ……もう他人に哀れまれるのは嫌だ…
皆が思わず涎を垂らすぐらい、羨望の目で見られるぐらい髪が欲しい…俺はこのような姿になりたい!)
自分の本当の気持ちが心底から溢れ出て来るのを自覚する和田。しかし、その一方で和田の心に残る良心がそれを必死に押し留める。
(俺はこのゲームに…乗ってしまうかもしれないな…)
そう、あたかもシマウマに襲い掛かるライオンのごとく、自分も他の選手に襲い掛かるかもしれない。
和田はこのゲームの恐ろしさをはっきりと悟った。
動かないでいるとこのまま理性が欲望に蹂躙されてしまいそうな気がした和田は、すぐに建物を出る決心をする。
建物を出てから、もう一度ガラスに映るかつらを見る。
これはこの醜い本心を引き出すためのアイテムであったのかもしれないということに、和田は気づいた。
小雨の中、和田は葛藤に苛まれつつ歩き続ける。
十字路に差し掛かった時、進行方向から見て左側数十メートル先で突然空間に人影が現れだした。
和田は思わずさっと物陰に隠れる。
「はあ、はあ………良かった、意外と早く着いて…」
声がする。どうやら誰かがやってきたらしい。物陰からこっそり姿を確認する。
名簿を見て確認した結果、その人影が実松一成(G53)であることが分かった。
「…よーし…これでゲームに反対する人を仲間にできる…」
実松は息を切らしつつそう言うと、23る心配のない豊かな髪を持つ頭に触れた。
その様子を見て、再び和田の心の中に潜む悪魔が奴の髪を奪えと囁く。
和田はそれを必死でこらえ、再び実松をちらりとだけ見た。
(あいつはゲームに反対しているのか…?それなら俺は出て行ってあいつの仲間になってやらなきゃいけない…
しかし…しかし今あいつの前に出て行ったら、俺はあいつの毛を刈らずにはいられないだろう…
今豊かな髪がすぐ近くに迫ってきたら、到底俺の理性が我慢できるとは思えない…
どうすればいいんだ…)
考えた末、和田は実松を尾行することにした。
このまま出て行くと自分の理性が崩壊するかもしれない。
かといってこのまま実松と距離を取るのも躊躇われた。
ただ都市エリアにいるだけでゲームに反対する人間を集められるような気はしない。
恐らく、実松は何らかの大きな行動を起こす気だ。その行動が気になる。
もしかしたら藪蛇となるかもしれない。
だが和田特有の優しさが、起こした行動により危機にさらされるかもしれない実松を放っておけなかった。
実松がきょろきょろと辺りを見回しながら歩き始める。
それを見て和田も尾行の準備をした。
(落ち着け、落ち着け…髪にこだわるなんて小さなことじゃないか…。
一流のアスリートは、髪なんて気にしないで堂々としているべきなんだ…)
必死に自分に言い聞かせつつ、やがて立ち上がる和田。
(とにかく、バレない様にしなきゃ…)
豊かな(かつらの)髪の毛を靡かせつつ、和田は尾行を開始した。
【残り29名】
188 :
代打名無し@実況は実況板で:2007/03/09(金) 20:47:56 ID:K1VTN1kcO
色々と思案を巡らせていると、三浦は手に持っている増えるワカメちゃんにある疑問が生じる。
(ていうか飯は現実で食えって言ってたけど…これは食えるのかな?たしか今見えてるのは全部幻なんだよな…?)
「食ってみようかな…」
袋を開けて試しに一掴み口に含んでみる。
「ん…んめぇなほぇ…ぅぉ…ぉ……ぉごぉぉおおおっ!!!」
口に含んだワカメは三浦の唾液でみるみるうちに膨らみ、口に含みきれない程になると、三浦とうとう吐き出してしまう。
「ぐほっ!ごほっ!ぼぇぇっ!…かはっ、はっ……危ねぇ、ワカメに殺されるところだった…。」
「いらねーよ!畜生っ!」
増えるワカメちゃんの脅威に恐れをなした三浦は、その悪魔の食物を投げ捨ててしまう。
「アウチっ!」
「!!!」
すると、三浦が投げ捨てた方向から悲鳴がする。
「だだ、誰だっ!?」
「オウ…ユーアークレイジー。フーアーユー?」
「あ、おま…ラロッカ!?」
「アイ ライク ヤキニク、ギューカク…」
「な、何を言ってるんだ?え、英語、英語か…あ、あー…ユーはぁ、ジャッパニーズ…ワカーリますか?」
「オウ…ニホンゴ…ワッカリマセーン…。」
2323な和田さん想像したら吹いたwww
(うちからの参加者は俺だけか…)
参加者名簿を片手に岩隈久志(E21)は溜め息をついた。
もわっとした密度の濃い空気が体にまとわりつく。高温多湿のジャングルを模したという空間で、
岩隈は人目を避けて潅木の陰に座り込んでいた。
それにしても何故自分なのか。確かに自分の頭皮の状態が決して楽観視できるものではない、と
2323は感じていたが、しかし自分よりよっぽど切羽詰ってる選手は他にもいるはずだ。
あの人とかこの人とか…と複数の選手の顔を思い浮かべつつ、岩隈はディバッグの中身を探る。
赤い袋に入っていたのは電動のバリカンだった。とりあえず当たりと言えるだろう。
そんなことを考えながら岩隈は、今度は青い袋を開けた。
中にあったのは、某女性向け野球雑誌が数冊。そして、白い封筒が一通、入っていた。
『岩隈くんへ。
君をこの戦いに参加させるのは我々としても断腸の思いです。
しかし君が真のイケメンエースとなるために、どうしても戦ってもらわなければならない相手がいます。
ジーンズショップからCMのオファーが来てしかもそれがサマになる君ならば、
必ずや敵を倒し、球界一のイケメンエースの称号をほしいままにできると信じています。
チームの仲間のため、自分のため、頑張ってください。 山下
P.S.君のフサウターは特別仕様になっていて、半径3キロ以内の範囲で、
誰がどこにいるか背番号が表示されるようになってるよ!上手く使ってね!』
(戦わないといけない相手って…こんなもんでどうしろっていうんですか!山下さん!!)
バリカンと特別仕様のフサウターがあるだけ他の選手よりもだいぶ有利なのかもしれないが、
雑誌をいったいどうしろというのか。角で頭を叩くとか丸めてひっぱたくくらいしか使い道がないではないか。
雑誌を地面に叩き付けたい衝動をこらえながら、岩隈はとりあえずページをめくった。
なにか重要なものが挟まっているかもしれないとかすかな望みを抱いてのことだったが、その望みも打ち砕かれた。
隅から隅まで見ても、栞はおろか書き込みのひとつも有りはしない。
だが、岩隈はあることに気付いた。入っていた雑誌は最新のものではなく、1年ちょっと前の号―――
―――ちょうど、ロッテが日本一になった頃のものだった。巻末の人気ランキングではロッテ選手の
順位が軒並み上がっていて、自分はといえばだんだんと順位が下がって、ついにはランクアウトになっていた。
「……。」
岩隈はもう一度、山下からの手紙に目をやった。
“イケメンエース”。
23っぺらい紙切れの無機質な字の中で、その言葉だけがぽぅっと浮かび上がって岩隈には見えた。
球界にエースと呼ばれる投手は少なくとも12人はいるし、イケメンと言われる投手だって何人もいる。
しかしイケメンエース、といわれる投手はそうはいない。
エースとはチームの柱であり、チームの浮沈を握る存在だ。それだけ肉体的にも精神的にも負担が大きい。
はかりしれない重責は、知らず知らずのうちに頭皮と毛根にダメージを蓄積させる。
エースでイケメン、しかも9696となると、歴史的に見ても極めて希少な存在といえるだろう。
岩隈は傍らに置いた参加者名簿と、雑誌巻末のランキングとを見比べる。
エースだけど2323な投手、イケメンだけどまだエースとはいえない投手などが入り混じるランキングの中で、
岩隈は遂に、山下の言う“戦わなければならない相手”を見出した。
厳密にいえば彼はまだエースではないが、一昨年はまさにエース級の働きで一躍注目され、
次のエース候補と目される投手だ。投手のくせに非凡な打撃センスを見せ付けて交流戦初代MVPに選ばれ、
さらにはWBC日本代表にも選ばれた。
「…そういうことですか、山下さん…」
岩隈の顔にどこか自嘲めいた笑みが浮かぶ。
既婚で子持ち、という点では相手と自分の間に差は無い。しかし岩隈には負けられない理由があった。
仙台に本拠地を構える楽天は、首都圏のチームに比べるとどうしてもこの手の雑誌の取材が少ないのだ。
ただでさえ楽天はスター選手がいないとか選手層が23いとかキャラが弱いとか
監督ばかり目立つとか言われているのに、このうえ女性人気までやすやすとヨソにもっていかれてたまるか。
チームに注目してもらうためにも、いま一度自分が球界一のイケメンエースとならなければ…!
暗い決意を秘め、岩隈はフサウターを装着した。もしここに福盛さんがいたら、目を輝かせて喜んで
ギニュー特戦隊ごっことかするんだろうな、と思いながらスイッチを入れる。
ピピッという短い起動確認音のあとに、それとは違う電信音が鳴った。
青い視界の右上に文字が表示される。
HP107000。
M41。
「…見てて下さい、山下さん」
呟いて、岩隈は手の中のバリカンを握り締めた。
【残り29人】
『万が一このゲームに乗るとしたら、誰相手なら刈れるか』
頭によぎったそんな疑問を解決するため、東出は参加者名簿とにらめっこをしていた。
こんなくだらないゲームに乗るつもりなんかない。
大体自分は髪にこだわりなんてないし、気にするほど23では無いはずだ。
…ここ数年の成績の低迷で、大きなストレスを感じたのは確かだけど。
特に、額に。
無意識に額に当てた手で、何気ない様に帽子を被りなおしながら、再び名簿に視線を落とす。
「年上の選手は後が面倒くさい。なんだかんだで年功序列だからなぁ、この世界」
特に緒方には絶対手を出してはいけない、と思う。
デッドボールで激昂した緒方から食らった裏拳は未だに忘れられない。故意ではなかったにしても。
(刈られるだけで済むわけがない。ぶっちゃけ殺される)
脳裏に浮かんだ鬼緒方の残像を、東出は必死で振り払った。
「…あと、セリーグの選手はしょっちゅう顔合わせるからやめた方がいいか。
ブラッシュボールで怪我とか洒落にならない」
自分は至極冷静だと、東出は思う。
万が一ゲームに乗る羽目になったときに、刈っていい人と刈ってはいけない人を
きっちりと判断することが出来ているのだから。
「パリーグは交流戦4試合しかないしなんとでもなる。
…けど年上とか、あまりに可哀想な人はやめておいてあげるかな?
井川さんはもう対戦することないし、サネは当分一軍来ないだろうから刈っちゃっても報復されない。
じゃ大体このくらい…」
一通り確認し、東出は満足そうにうなずいた。
「この辺は万が一があったら刈る、と。…あれ、長谷川さんも参加してるんだ」
同じチームの長谷川の名前が改めて視界に入る。
そういえば、何時だったか、オフのローカル番組で長谷川はこんなことを言っていたはずだ。
『試合中でもカメラに映ってるなって時には髪型や服装をさりげなく整えてテレビ映りをよくする。
たとえばもみあげが変な方向に流れていたら直したりとか』
(もみあげより球のコントロールをきっちりしろよ)と脱力したものだ。
他にもキャンプ休日に広島に戻って散髪していたりとか、自主トレに遅刻してきたりなど、
どうも長谷川には「いい加減な先輩」のイメージが付きまとう。
もし彼が2323になったらもう少し真面目に野球に取り組むようになるだろうか。
そう考えて東出ははたと膝を打った。
「そうだ、長谷川さんを刈ってあげればいいんじゃん!長谷川さんが化けたらカープのためになるよ!」
袋の中からバリカンを取り出す。
ごくありふれた型の電動バリカンを手に、東出は子供のように笑った。
こんなつまらないゲームに乗るつもりはない。
大体自分は髪にこだわりなんてないし、気にするほど23では無いはずだ。
だけど、長谷川だけは間違いなく刈ろう。
万が一ゲームに乗るようなことになったら、さっき『刈ってもいい』と判断した人だけは刈ろう。
―自分がゲームに乗ることを選んだ事に、東出は気づかなかった。
【残り29人】
裏拳は緒方を止めにいった中村武(当時YB)じゃね?
東出打算的でワロス
どんどん新作投下されて感想書く暇が無いという嬉しい嘆き
クマーをさりげなく煽動するあたりは大ちゃんなかなか策士だな、基本的は23てるけどw
そして『刈りたい頭』タイトルでもう爆笑ww
>>198 一日で6話も投下されるんだからすごいよなw
あとせっかくなのでスタートエリアまとめ更新
[サバンナ] 木村拓 和田
[都市] 松中 多村 田中賢 川上 ひちょり(刺客)
[砂漠] 福浦
[密林] 長谷川 小林宏 緒方 岩隈
[山岳] 福留
[氷河] 山崎(失格) 実松 久保
? 東出
こんなもんかな?
間違いあったら訂正お願いします。
「今光っているヒーローたち」って聞いたことあると思ったら、プロ野球aiの
ランキングページのタイトルか!!わろたWWWW
しかし…お前らよくこんなバカな話思いつくな。
全職人ハズレがないのが恐ろしい。
日常生活で実際に声出して笑うことってそうそうねえぞ?
30人目はオリの塩崎って話になってるみたいだけど彼は2323組?9696組?
ググると9696っぽい写真があるけど
このスレは職場で読むとえらいことになるぞ
気を付けろ
コバロリ色んな人に恨まれすぎwwwww
やっぱり西岡欲しかったなー
鴎ファンではないけど、キャラとしていじりがいあると思うし
「・・・」
三浦大輔(YB18)の右手には、カシュカシュと不気味な動きを繰り返す不思議な生物があった。
「これって、ガキの頃によく捕まえたりしたアレだよな・・・」
「なぁ・・・言いたい事はわからなくもねぇけどさ、何か違うんじゃねぇのコレ?」
三浦の支給品は昔なつかしのカミキリ虫であった。
体を摘まれて、身動きの取れないその小さな命は、己の命の危険を本能的に察知しているのか、懸命にもがき続ける。
「オメェも可哀想な奴だよな・・・わけもわかんねぇでこんなのに参加させられてよ・・・おら、行け。」
空中に放り出すと、その小さな命は勢いよく大空に飛び立っていく。
「・・・で、こっちはいったい何のつもりなわけ?」
左手には『増えるワカメちゃん』と刻印された袋が握られていた。
(あのよぉ・・・ワカメでどーしろってんだよ・・・)
「ひょっとしてあの23、俺のこと嫌ってたのか?」
そう言うと、三浦は数年前、"23"が指揮を執った2年間を思い出してみる。
(・・・・・・まぁ、たしかにちょっと可哀想なことしたかもな。でも、あの頃は俺達だって悔しかったし、それとこれとは話が別だろぉ?)
「・・・にしても山ばっかだなココは。山岳エリアって奴か。」
三浦は岩山の頂上にただ一人立っていた。
岩のゴツゴツとした質感、容赦なく照りつける陽射しの眩しさに、三浦は少なからず驚嘆していた。
(これがバーチャルってのかよ・・・すげぇな。あ!じゃぁさっきの虫もバーチャルなわけか!?)
一通り感心した後、三浦は自らに課せられた個別テーマをもう一度見直してみた。
―三浦へ―
突然こんな企画に参加させてて悪かったな。
これを開ける頃には、もう話は一通り聞いていることだろう。
君の個別テーマだが、横浜市が今年開港100周年を迎えることはオツムの足りない君でも知っていることだろう。
横浜は古くから異人との交流を通して発展してきた街だ。
そうなると、横浜に拠する我がベイスターズも国際交流を活発にすべきだと思う。
そして、今回の企画にはただ一人、異人が参加している。
そこでだ、君にはその異人の護衛をお願いしたい。
無事、その異人が勝ち抜けるようフォローしてやってくれ。
責任感の強い君ならわかっているとは思うが、もし、失敗するようなことがあれば、君には春から東京湾で海水浴をしてもらうことになると思う。
一人じゃ寂しいだろうから、その時は川村も一緒にな。
まぁ、まさか君に限って失敗なんて事はないと思うが、心してかかるように。
(いや、「そこでだ〜」って、全然意味わかんねーから・・・どうせ書くならチームのプラスになるようなこと書けば良いじゃねぇかよ、川上を○れとか、小笠原を○れとかさ・・・って、名前ないけど、これ、絶対アノ人だよな・・・。)
「そもそもいらねぇから、他人の髪の毛なんか。」
先月33歳になり、そろそろそういった心配を始めてもおかしくはない年齢ではあるが、三浦の魂のリーゼントは、依然、揺ぎ無い威容を示していた。
「ぺっ!」
(ふざけやがって!誰がてめぇらの言うとおりになるかよ!俺を誰だと思ってやがる!)
「はんっ!こんなゲームそっこーで叩き潰してやんよ!そうと決まりゃぁ、さっさと現実に戻ってあの23凹しに行くぜ!」
三浦は景気づけに『増えるワカメちゃん』を空に向かって思い切り放り投げる。
「アウチっ!」
「何!?」
三浦が増えるワカメちゃんの袋を投げ捨てた方向の山の麓に、額を押さえながらうずくまる男がいた。
「お、おう悪ぃ!大丈夫かぁ!?」
「オウ・・・アイムオーケー・・・」
「悪かったな、むしゃくしゃしててよ・・・って、おま・・・ラロッカか!?」
「っ!!!ミウラサーン!」
三浦に増えるワカメをぶつけられたのは、昨年、広島に昨年まで広島今年からオリックスでプレーすることになったグレゴリー=マーク=ラロッカ(Bu30)であった。
「まさかこんな所で・・・そういやオマエ、今年からオリックスらしぃじゃねぇか。」
「ホワット?アイライク ヤキニク・・・」
「え、あ・・・え、英語?日本語わかんねーんだっけ?あ、あー・・・ユーは、ジャパニーズ・・・わかーりマスか?」
「オウ・・・ニホンゴ・・・ワカリマセーン・・・」
「そうか、そうだよな・・・っ!?じゃ、じゃあ、ひょっとしてオマエ・・・さっきの説明も全然わかってないんじゃ!?どうしてココにいるかも・・・?」
「アァ・・・フジヤーマ ニンジャ・・・」
ラロッカは自分の身にいったい何が起きているのかわからない様子で、頭を抱えこんでしまう。
(そうだったのか・・・あの23も惨いことをする。異国にたった独り、己の体一つで渡ってきた男をこんなゲームに巻き込むなんて・・・)
不安そうに身を震わせるラロッカを見て、三浦は反乱をあきらめる。
(このままコイツを放っておいたんじゃ、わけのわからないうちに誰かに襲われてしまう可能性もある。俺が・・・俺が守ってやるしかないんだ。)
そう決意し、三浦はラロッカの両肩にその両手を乗せ、懸命にラロッカに語りかける。
「ラロッカ・・・ラッカルと呼んでも良いかい?俺のことはダイスケと呼んでくれ。ダ・イ・ス・ケだ。わかるか?」
「ダイ・・・スケ・・・?」
「そうだ、ダイスケだ。ラッカル、俺はオマエの味方だ。ミーとラッカルはフレンド。・・・わかるか?」
「ア・・・ハハハ、マイ フレンド・・・ダイスケ。」
表情はやや強張りつつも、小刻みに震えながらにっこりと微笑むラロッカの瞳が2っ3らと涙で滲む。
(こんなに震えて・・・さぞ不安だったんだろ・・・)
三浦もそんなラロッカを見て、思わず涙腺が緩くなる。
今、二人の心は国境を超え、確かに通じ合った・・・・・・・・・かに見えた。
そんな時、ラロッカの腹の虫が鳴る。
「何だ、腹減ってるのか?」
「オウ・・・アイム ハングリー。」
三浦は先ほど投げ捨てた増えるワカメのことを思い出した。
「ちょうど良い物があるぜ、ちょっと取ってくるから待ってな!」
(あ・・・バーチャルのワカメって食えるのかな?まぁいいや、食えなきゃ現実で機内食を取ってきてやろう。ラッカルが食ってる間は俺が見張っててやればいいのさ。外人だからやっぱり洋食がいいよな。)
その時、三浦に課せられた個別テーマが三浦の脳裏をよぎる。
(そういや、異人ってもしかして・・・)
考えとをしながら無防備な背中を晒す三浦。この時、三浦は知る由もなかった。
実はラロッカがすでに日本生活4年目に達していたこと、オフは日本語学校で日本語の勉強を欠かさない勤勉な男であること、そして、微笑を交わしたとき、その表情は相手に悟られないように何かを堪えていた事に…
この物語は、ある狂気のプログラムに戦いを挑んだ男達の記録である。
日本球界において、ライバル球団の敵同志でしかなかった二人が、
凄惨な戦いの中から強靭な絆を培い、
わずか数日で、真の友情を築きあげた奇跡を通じて、
その原動力となった、信頼と愛を、余すところなくドラマ化したものである。
「やはり、そうですか・・・・」
一本の電話が、麗かな黄昏の時を、深海の様な息苦しい雰囲気に変えた。
「いえ・・・そちらには迷惑はかけませんよ。それでわ」
手短に会話を済ませて、携帯の通話を切る。
「どうしてこう、悪い予想ってのは外れないんですかね」
柔らかなソファーに身を沈めているのに、心に安息は無かった。
「と、言う事は・・・」
向かいに座る男は、身を乗り出して、わかりきっている返事を待つ。
「メジャーに行くなどと言う話は、向こうでは何処にも出ていません
根の深いところまで探りましたが、それらしい話も有りませんでした」
仲間思いの男は、目に見えて動揺をしている。
もちろん、一見物静かな男も、心の中では動揺をしている。
「だとしたら、あいつ等は・・・三浦さんたちは何処におるんですか!?」
「わかりません・・・情報が少なすぎます」
メジャー思考の高まる今、
球団が率先して、選手をメジャーの練習に参加させるなど、おかしな話だった。
何処も野球人気低迷に苦しんでいるというのに・・・
異変をいち早く察知した二人は、もてるコネクションを持って探ったが、
解ったのは、選手派遣が偽りな事だけ。
「とにかく、他の球団にも探りを入れましょう。
しかし、下手に動いては不味い事になるかも知れません」
「どないするんですか?」
腕を組んで考え込む。
「・・・・信頼できる者を
仲間の為に暗闇に立ち向かえる人を集めてください」
仲間思いの男は、少し考えた後に、慌てて部屋から飛び出していった。
部屋に残った男も、携帯を暫くイジリ、耳に当てる
「私です・・・・・アナタの大切なチームメイトが、行方不明です
今から言う所に、できる限りの速さで着てください」
携帯からは、落ち着いた声が聞こえる
「嫌ならいいんですよ強制では無いですから」
フフ、と23笑みを浮かべる顔は、とても堅気の者とは思えなかった
ドラマ化…って大映テレビかwww
そしてくみてふキター
話進むの速すぎワロタwww
三浦ピーンチ!
おふたりともGJ!
…ただセは詳しくないけど、ラロッカって去年ヤクルトかどっかにいなかったっけ?
>「オウ・・・ニホンゴ・・・ワカリマセーン・・・」
この時点でわかれよ三浦ww
>>214 仕事中に失礼します。
ラロッカの経歴は
一昨年まで広島で活躍し、昨年はヤクルトで活躍、今年から〜
ですね…orz
帰ったら書き直します…
結局30人目は檻の塩崎ってことでいいのかな?
良ければもうそろそろ書いてみようかなとは思うんだけど
「まいったなぁ」
面倒くさそうに、髪の毛に手を突っ込み、引っ掻き回す。
「なんか、嫌な予感してたんだなよなぁ・・・」
球団から労をねぎらう為だと、外国への格闘ツアーを提案されたのだ。
こんな時期にだ、おかしな提案に首を傾げたが、
あまりに魅力的なツアー内容に、二つ返事で乗ってしまった自分を恨んだ。
「まさか、毛刈り戦争につき合わされるとはなぁ」
せめて何か、面白そうな物を一つでも見つけようと、荷物を引っ掻き回す
見慣れた、黄色と黒の縞々がプリントされた封筒が、目に付いた。
先程山下が説明していた、課題が書かれた手紙だろう。
『シモよ・・・嘘ついてまで、そな訳も解らん事に巻き込んですまんなぁ
そらお前、あれやで?俺かて嫌やったで
けどな、あっちが指定してきた人間の中で、お前が一番適任やったんや
お前の脱出条件は、吉野がこのゲームをクリアーできるようにしたってくれ
アイツは左腕やし、なんかあったら、以外に繊細な安藤が倒れるかもしれんしな
それじゃあ、吉野と仲良くやれや
PS.福留か川上の髪を毟り取っておいてください』
手紙の内容はやはり面白い物ではなかった。
「昼寝でもするかぁ?」
乾燥したサバンナでは、日陰はそれなりに涼しい。
幾つもの大きな岩が重なり合って出来たこの洞窟は、身を隠すのにも適しており、
昼寝するにはもってこいだった。
落ち着けていた腰を持ち上げ、荷物を背よい、
昼寝のペストポイントを求め、さらに洞窟の奥へ進もうとする・・・・
ウガァァァァァァァ!!!!
耳を劈く、大きな叫び声が、洞窟内を震わした。
「!!!」
パラパラと砂粒が落ちてくる。
暗闇の奥に、ギラリと何かが光った
("何か"・・・・居る!?)
機械だらけの部屋に、二人の男が居た。
「本当にあんなの、作っちゃって良かったんですか?」
頬のこけた青年が、隣の中年に話しかける
「仕方ないだろ、あの人、毎日シュウマイ持ってくるんだ・・・・」
吐き気を収めるように、口に手を当てる。
「あ、もう直ぐ禁止エリアの時間ですよ」
画面には、幾つもの点が動いていた。
「なんで自動じゃねぇーんだろうな・・・それでなくても開発で疲れてるって言うのに」
「予算増やしてくれるって言うんですから、我慢しましょう」
二人の疲れた果てた様な男は、カタカタとキーボードを打ち始めた。
「くっ!!!」
ズンッ!!
光を確認したと同時に、暗闇の"何か"は、コチラに向かって突進してきた。
洞窟の壁にぶつかったのか、また砂粒が落ちてくる。
第一撃はなんとか避けられたが、次はどうなるか解らない。
しかも、出口への道は、"何か"の突進を避けた事により、塞がれてしまった。
(背中を見せて、構造の解らない洞窟を逃げるのも無謀、
正体不明の獣と戦うのも無謀)
どうやら、この"何か"は鋭い爪は持ち合わせていないようだ。
避ける際に少しかすったが、服には何も変化は無かった。
「のらりくらりとは行きそうにないな・・・」
目は離さずに、ゴソゴソと荷物を探る。
緊張感に吹き出た汗が、アゴを伝って地面に落ちる・・・・
「!」
ソレを合図に"何か"が猛スピード駆け出し、目前で跳躍する。
「くらいな!!」
"何か"が跳躍で産んだロスを突いて、目の前に懐中電灯の光を当てる。
「ギャッ!!!」
そのまま飛び掛ってきた"何か"に押し倒されるが、
突然の光に驚き、力の抜けたタックルは、大した物ではなかった。
ブンッ!!
23く浮かべた安堵の笑みを、かき消すように、強烈な薙ぎが懐中電灯を吹き飛ばす。
「ウウッ・・・」
光の効果は消えていない、出来る限りの力で"何か"の体を押しのける。
「うらっ!!!」
体重はかなり重く、デカイ。
半ば這い出るような形で"何か"から逃げ出す。
「はぁ・・・はぁ・・・」
後ろは一切振り返らずに、出口の光に向かって走る。
「ウゥー!!」
うめき声が後ろから聞こえてくるが、我武者羅に外を目指す。
程なくして、強烈な太陽の下に、姿を現した。
広い場所であれば、もう少し事態が好転するだろう。
「フー!!フー!!」
コチラに向かってくる。
第三者がこの場に居れば『何故逃げない!?』と叫んだだろう。
「ちょっとは楽しんだっていいだろ?」
バーチャルだ、命は取られない。
相手は何だ?
"何か"が光の下に姿を現す。
「・・・・・・・」
驚愕に声も出なかった。
戦慄く口で、拙く言葉が零れる。
「デ・・・・デニー」
そう、光に暴かれた"何か"は、横浜のユニフォームを着た、
中日の投手、デニー友利だったのだ!
>>203 実況スレ
http://live24.2ch.net/test/read.cgi/livebase/1173504303/l50 より
23 名前:どうですか解説の名無しさん 本日のレス 投稿日:2007/03/10(土) 14:32:24.38 Zf6FmN22
塩崎は実は2323だったりする
26 名前:どうですか解説の名無しさん 本日のレス 投稿日:2007/03/10(土) 14:33:26.12 J0XNqN4l
>>23 去年のあの事件さえなければずっと9696だと信じれたんだけどな…
ホント衝撃的だった…
57 名前:どうですか解説の名無しさん 本日のレス 投稿日:2007/03/10(土) 14:41:59.26 J0XNqN4l
>>27、28
去年のスカスタプレ最終戦で塩崎が1000試合出場かなんかで表彰されたんだが
その日は風が強くてな…
帽子を脱いで礼をしたときに突然突風が吹き
彼の前髪を浚っていったんだ…
そしてあらわになった彼の額は…常人より遥かに…
川上とかそんなレベルじゃねえ、正直ぼぶひこ(ry
しかも運のないことにその瞬間がスカスタスクリーンの大写しに…
あの瞬間の球場中のざわざわが忘れられない…
流れ速杉ww
刈ってあげればいいんじゃん!って東出ヒドスww
カプのチームワークがとても不安だwww
>>226 帽子さえ被ってれば9696だし2323という事実は広まってないから
9696側として間違えられて連れてこられて事にしてはどうだろう
塩崎・・・そのまんま東かとおもったぞ。
なんだ…これは…たまげたなあ。
選手名鑑じゃバリバリの9696なのに・・・ww
被れば9696、脱げば2323…ということか…ww
考えたんだが、塩崎が他人を一番刈りやすいんじゃね?
9696と装っておいて安心させてバッサリww
>>208 それは涙で始まった(2/4) ですが、最後の
>三浦に増えるワカメをぶつけられたのは、昨年、広島に昨年まで広島今年からオリックスでプレーすることになったグレゴリー=マーク=ラロッカ(Bu30)であった。
を
三浦に増えるワカメをぶつけられたのは、一昨年まで広島で活躍し、昨年はヤクルトで活躍、今年からオリックスでプレーすることになったグレゴリー=マーク=ラロッカ(Bu30)であった。
に訂正しますね。
塩崎ジョーカーの資質ありすぎwwwww
石井裕也を書いてる職人さんいらっしゃいますか?
いなければ書きたいんですが。
あと、的場も使いたいんで、もしいずれかを書いていらっしゃる方がいましたら、
言ってください。
週末になると投下ペースが極端に落ちるなんて…
みんな職場で書いているのか…
>>239 あなたがそれを言うことによって、あなたがいつそれを書き上げられるか未定にも関わらず、他の人はそのキャラを書きにくくなる。
おそらくそんなつもりではないのだろうが、雰囲気的に予約したような感じになりかねない。
その2人に関してあなた待ちの状態が発生する。
現状は予約なしの早い者優先システムなわけで、歩調を合わせて頑張ってください。
242 :
輝ける愚行:2007/03/12(月) 04:54:48 ID:Gexm3CDu0
――――― フックーラ!! フックーラ!! ―――――――
あぁ、心強いファンの声が聞こえる。
リズムを取るように体が動く感覚がある。
――――― フックーラ!! フックーラ!! ―――――――
暗い夜に、ソコだけが夢のようにキラキラと光る。
ボールがバットに当たる軽い音。
ソレをかき消す、大きな歓声。
――――― フックーラ!! フックーラ!! ―――――――
声援に応えようと、二塁で手を・・・
――――― ャー!! ―――――――
ん?
それまでとの声援とは違う声が聞こえる。
――――― ゲ!! プギャー!! ―――――――
聞き覚えのある声。
――――― ハーッゲ!! プギャー!! ―――――――
「コラ!今江!!!!」
怒りと共に、跳ね起きる。
「・・・・・夢か」
急な覚醒に、少しボヤッとしてしまう。
バーチャル世界に戻ってきたようだ。
相変わらず幾つもの砂丘が、行く手を阻んで居る。
再び太陽の光に虐められ、機内の快適な環境との落差に嫌気がさすが、
何時までも砂丘の頂上に座り込んでいても、何も始まらない。
「さ、もう直ぐ境界線のはずだ」
水分も取り、自分のすべき事を決めた。
(後はただ進むだけ)
頬をペチペチと叩き、気合を入れる。
雲ひとつない非情な砂漠の空が、丸く切り取られたマリスタの青空を思い起こさせた。
救わなきゃならない。
若きマリーンズの戦士達を。
方法はまだ決らない、情報も数少ない。
それでも・・・・
砂に埋まった足を引き出し、慎重に砂丘を下っていく。
「三人集まれば文殊の智恵っていうしな」
砂による動きにくさと重さ、
太陽による暑さと痛みにより、直ぐに息が上がってきたが、歩みは止めない
「山崎さん、俺はきっと守ります・・・・あいつ等を」
最初の犠牲者となった山崎を、マリスタの青空に似た砂漠の空の下で、そっと思う。
「だから山崎さんも、きっと立ち直ってください」
ソッと当てた左胸には『M』のロゴ。
砂から足を引き上げ、一歩先に進む。
その単調な重労働を、福浦はただひたすら続けた。
【残り29人】
>>243 すいませんよく読めてなかったです。何でもないです…
保管庫が見られなくなってる…
大丈夫かな
>>247 いや、やっぱ見れん
パソコンによって違うのかな
249 :
246:2007/03/12(月) 20:18:36 ID:Xw57kg9g0
もう見られるようになってた
保守がてら
フサウターの機能まとめ
・上のボタンで相手のHPを計測
・下のボタンで自分のHPを計測
・中央部のボタンでバーチャル世界からログアウト
このバトって地図はあるけど自分の現在位置を把握できるのかな?
>――――― ハーッゲ!! プギャー!! ―――――――
>「コラ!今江!!!!」
夢に出てくるほど日常風景なのかww
石井裕也は、とまどっていた。
合同自主トレと言われ、一流選手と一緒に飛行機に乗せられたのはいいが、何やらおかしなことが起こっているらしい。
(何が起こっているんだ?)
前の方にあるスクリーンには、楽天の監督だった山下大輔氏が映っていて、何事か話しているらしい。
しかし、機内がざわついていることもあり、石井はよく聞き取ることができなかった。
(何?何?川上さんと福留さんはどこにいるんだろう?)
状況はよく分からないが、何か異常な事態が起こっていることだけは何となく感じ取れる。
同じチームの先輩である川上と福留を探しに行こうと、座席を立った瞬間、上からヘルメットのようなモノがぶら下がってきた。
「何、これ」
思わず呟いてしまったが、周りを見ると、他の選手もためらいながらかぶっているらしい。
空気が23い訳でもないのに酸素マスクも降りてきて、それも装着している。
石井はますます訳が分からなくなってしまった。
(早く川上さんと福留さん探さなきゃ)
眠っている選手もいるようなので、起こさないようにそうっと通路に出ようとしたが、黒い服の男とぶつかった。
「石井選手、どちらへ?」
「えと、川上さんと福留さんとこへ」
「川上選手と福留選手なら、もうバーチャル空間に行かれましたよ。先程の説明、お聞きになりましたでしょう?」
「説明?何の説明ですか?」
「説明を聞いていなかったのですね」
男が顔色を変えた。
しかし状況の分からない石井は、ますます困惑するだけだ。
「しかたない。これはできるだけ使うなとのお達しなのですが…」
男が取り出したのは、女性が使うような可愛らしいデザインのシェーバー。
男はスイッチが入ったそれを、石井の頭部に近づけてきた。
「え?え?ちょっと、」
「ちょい待ち!」
石井の髪が数本削がれたところで、石井と男の間に別な男が入ってきた。
日焼けした、温和な顔つきの、如何にもいい人そうな男。
「ごめんなさいねー。俺がよく叱っときますから、俺に免じて勘弁して下さい」
「しかし」
「あ、説明なら向こうで俺がしますから、ご心配なく!さ、早くヘッドギアかぶって、マスクして」
口の動きがよく見えるように話してくれる辺り、この選手は自分のことを知っているのだろう。
しかし、誰か思い出せなかった。
彼の言う『向こう』がどこなのかは分からなかったが、説明してくれるという言葉を信じて、とりあえず従ってみることにした。
「ジャングル…?」
「ジャングルみたいだね」
今まで飛行機内にいたはずなのに何故こんな場所にいるのか、勿論石井は理解できなかった。
「あの、僕のことご存じで?」
「知ってるよ。中日の石井くんでしょ?ウエスタンで対戦したことあるよ?」
「すいません、僕あなたのこと知らなくて…」
「ホークスの正捕手、的場直樹だよ?知らないのはショックだなー」
「すいません」
「ま、いいや。それより説明だよね」
的場は機内で説明されたことを、掻い摘んで石井に話して聞かせた。
やっと石井の中で、先程の状況と黒服の男といきなりジャングルに来てしまったこととが、繋がった。
「……僕、気にしたことなかったです」
「だよねえ。でも、うちの宗も若いのに結構きてるからな。油断しない方がいいぞ。同じ年くらいだろ?」
「僕は25ですけど…ムネって誰ですか?」
「あれ、宗リンも知らないの?川崎宗則を知らないなんて、ちょっとパリーグ疎すぎでしょー」
「え、川崎くん『ソウリン』だと思ってました」
「あ、字96じゃ分からないか」
豪快に笑う的場を見て、石井もつられて笑ってしまった。
後ろから、忍び寄る影があることに全く気付かずに。
「お、コレコレ。」
三浦は先ほど投げ捨てた増えるワカメを拾うと、すぐにでもラロッカに食べさせてやりたい気持ちで一杯になる。
「おい、ラッカル!こっちに来い・・・よ・・・?」
三浦が振り返りラロッカを呼び寄せようとすると、不意に後ろから逞しい二の腕が三浦の首を包み込む。
「ダイスケ・・・」
「ラッカルどうしたんだ?食い物がそんなに嬉しいのか?」
「ダイスケ・・・ククク・・・フフ、ふはははは・・・」
「そうかそうか、わかったよ。今袋開けてやるから、とりあえずその手を離し・・・で・・・ぐほっ、らっがぅ・・・じめづけ・・・づよず・・・ぎ・・・」
ラロッカの腕は見事に三浦の首に入り、締め付ける力が徐々に強くなる。
「お゛、お゛い・・・ぞれ以上は・・・ぐるじ・・・」
三浦はラロッカの腕を軽くたたき、タップで合図を送る。だが、その締め付けは緩くなるどころか、その力は増すばかりである。
「や゛め・・・らっがぅ・・・」
「フ、ハマの番長ともあろう者ガ、無様なものダナ。」
「っ!?・・・らっがぅ・・・お゛まえ゛・・・?」
「貴様がバカで助かったヨ、俺はもう日本に3年以上暮らしているんダゾ・・・オフでも母国で日本語の鍛錬を欠かした日はナイ。まさか、本当に何もわかってないとでも思っていたノカw」
ほぼパーフェクトな発音で流暢な日本語を操るその男は、先ほどまでの前後すらわからない遠い異国で、独り孤独な戦場に送り込まれた哀れな外国人と同じ人間ではなかった。
「!!!・・・じゃぁ・・・ざっぎのは・・・すべでえ゛んぎ・・・?」
「くくく・・・貴様の熱血ドラマに付き合うのは大変だったゾ。危うく笑いを堪えきれなくなるところだったヨw」
(じゃぁ、さっき震えていたのは・・・わけもわからないうちにこんな世界に送られた不安からじゃなくて・・・噴出すのを我慢していただけ・・・・・・俺を騙し討つために・・・)
「こんなものが支給品でどうしようかと思っていたガ、この作戦なら案外使えそうダナ。」
そう吐き捨てると、ラロッカは片手で三浦の首をロックしたまま、もう一方の手でガムテープを取り出す。
―びぃぃぃぃぃぃぃっ―
あらかじめ折ってあったテープの切れ目を口に咥え、テープを引っ張り、粘着面を三浦の魂のリーゼントに巻きつける。
「おしゃべりは終わりダ、髪に祈レ。グッバイ・・・・・・ハマの番長サン!!!」
「ぅぉおおおおおっ!させるかよぉっ!!!」
ラロッカがガムテープを勢いよく引き剥がすその隙に、三浦はガムテープの巻きつけと反対に回転しながら宙を飛ぶ。
「ナニぃっ!?」
三浦の機転により、ラロッカの手に握られていたガムテープは、わずか数本の毛を毟るにとどまった。
ラロッカの攻撃を間一髪で回避した三浦は、すぐにラロッカとの間合いをとる。
「げほっ・・・ラッカル、何故こんなことを・・・オマエも・・・オマエも毛が欲しいのか?」
「フン・・・今さら毛などどうでもイイ。俺はこの大きな額に愛着すら持ってイル。」
「それなら、どうして?どうしてこんな事をする!?」
「オマエには関係ない話ネ。さっきは巧くかわされたガ・・・これならどうカナ?」
ラロッカはガムテープの粘着面を表にして自らの手にぐるぐる巻きにする。そして、両手にガムテープのグローブを作り上げる。
「行くゾ!」
ラロッカが三浦のリーゼントをめがけて猛烈なラッシュを繰り出す。
「ちぃっ!」
しかし、三浦はその攻撃を全て髪一重でかわす。
(Fuck!・・・当たらナイっ!?)
連打をことごとくかわされたラロッカは、スタミナ切れを起こす前にその手を止める。
「どうした・・・もう終わりか?」
「フゥッ・・・フゥッ・・・やるナ、さすがはハマの番長。頭は弱いようダガ、ファイトはお手の物ってわけカ。」
肩で息をしながらも、未だ殺気を剥き出しにするラロッカを、三浦は寂しそうな瞳で見つめる。
「・・・ラッカル、俺がオマエを信用したのは、お前の境遇に同情したからだけじゃない。オマエの・・・そのバファローズのユニホーム姿を見たからさ。」
「何ダト?」
三浦はラロッカの全身を上から下へ
「新品のはずのユニホームが、キャンプも始まっていないのに泥だらけじゃないか・・・。オマエがこのオフ、どれほど体を虐めて来たのかがすぐにわかったさ。そして今シーズンに賭ける決意もな・・・」
「・・・」
「そんなオマエだから、おそらく日本球界を・・・野球を心から愛しているオマエだと思ったから、俺はオマエを疑いもしなかったのさ。なぁ・・・いったいどうしてなんだ?ラッカル・・・」
「Shut up・・・どんなに俺が日本ヲ・・・野球を愛してモ・・・日本球界は俺に何も応えてくれなかったじゃないカ・・・これハ・・・これは復讐ダ!!!」
「復讐?復讐ってどういうことだよ?教えてくれよラッカル・・・」
「・・・フン、オマエから毟り取るのはなかなか骨を折りそうダ。とりあえずの今の所は退いておこウ。」
「お、おい、待てラッカル!」
「俺は参加者全ての毛を毟るつもりダ・・・そして、それが終わったらこんなゲームを考えた連中もダ。日本球界を丸23にしてやるノサ!!!」
「なっ!?」
「・・・貴様ともいずれまた会うことになるだろウ。その時は容赦しナイ。」
そう言い残すと、ラロッカは背を向けて走り去る。
「お、おい待て!ラッカル!」
呼び止めても、ラロッカは振り向きもせず岩山を駆け下り、すぐにその姿は視認出来なくなってしまった。
「ラッカル・・・」
(どうして・・・何がオマエを鬼にしたんだ?オマエは日本を愛しているはずだ。でなければあんな泥だらけのユニホームは・・・)
(復讐って何だ?3年あまりの日本生活の何がオマエを苦しめたというんだ・・・)
三浦は呆然と立ち尽くすしかなかった。
だが、再び三浦の脳裏にあの個別テーマがよぎる。
(ラッカルを守れ・・・か・・・インテリヤクザの命令にしては不可解だし、そもそもこのくだらねぇゲームの目的は何なんだ?)
しばらく考えた後、三浦はある結論に達する。
「いいだろう、23達の思惑通り、このゲームに乗ってやるよ。」
「俺はラッカルを守りきる。ただし・・・ラッカルには誰一人として毟らせやしない!23やインテリヤクザがどういうつもりか知らねぇが、全てがオマエラの思い通りになると思うなよ!」
そう決意した三浦は、ラロッカが去った方向へ走り出した。
この物語は、ある狂気のプログラムに戦いを挑んだ男達の記録である。
日本球界において、ライバル球団の敵同志でしかなかった二人が、
凄惨な戦いの中から強靭な絆を培い、
わずか数日で、真の友情を築きあげた奇跡を通じて、
その原動力となった、信頼と愛を、余すところなくドラマ化したものである。
続々投下ktkr
「字23」
「髪に祈レ」
腹痛いwww
この世界の今江は鴎ネタスレのキャラなのかw
だれか番長版X作ってくれw
字96って読めなかった…
字96
俺はじづら(字面)って読んだけどな。
だいちゃんって楽天の監督だったことあったけ?
石井バカすぎる…w
そしてラッカル野望すげえwww
「日本球界を丸23にしてやるノサ!!!」
吹いたww
本当にこんなんで真の友情を築きあげられるのかよww
>>264 確かに楽天の監督はやってないよね
あと
>>252のヘッドギアの描写が気になる…
ヘッドギアって離陸前に必ず被ってなければならないんじゃないのか…?
職人様大変乙です!
的場さんいい人だー(´ω`)
私もヘッドギアは
>>252みたいに離陸して水平飛行になる辺りだと思ってたけど、一応統一した方がよいのかな?
>>264二軍だっけ?
楽天での大ちゃんは
スキンヘッドコーチ → 2軍監督 → 編成部長
だね。
石井に関しては、イマイチわかってないって事だからヘッドギアを着けるタイミングが遅くなってしまったと。
ただ、多村の場面とヘッドギアそのものが落ちてくるタイミングが違うのは不味い・・・かな?
「ヘッドギア」と「ルール」を読む限りでは、
ヘッドギアが降りてきて、選手がそれをつけてから大ちゃんの説明が始まっている。
アナウンスでヘッドギアの装着を指示しているので、
読唇術を使う石井が状況を飲み込めず警戒してヘッドギアを装着しないのはアリだと思う。
(周りが装着してればそれにならって装着しそうな気もするが)
しかし「妙な2人連れ」では大ちゃんの説明途中にヘッドギアが降りてくたという描写がされているからややこしいことになっているのでは
e
こまかいことゆーなよ
>>252-255を投下した者です。
設定がおかしくなっているとのご指摘を受けましたので、
一部文章を変えます。
まとめ収録時に、お手数ですが管理人の方、訂正お願いします。
楽天の監督→楽天の2軍監督
ヘルメットのようなモノがぶら下がってきた→ぶら下がっていることに気付いた
273 :
代打名無し@実況は実況板で:2007/03/14(水) 01:53:06 ID:Ug0d3ilQ0
>>273 23しくGJwwwwwwwwwwww
フサウターワロスwwwwwwwwwwwwwwww
275 :
球団の顔1:2007/03/14(水) 05:15:18 ID:TpIpb+1b0
「やっぱり俺は23てるんか…」
黒田は一人ごちた。
「そりゃ確かに長谷川みたいにブワっとは
しとらんけど」
プロに入ってから髪型が著しく変わった時期が
あったわけではない。
もともとこういう髪型なのだ。
「でもそれってやっぱり23ってことなんかな」
チームの成績は低迷する中、黒田自身の成績は年々
良くなっていった。
一昨年は最多勝、昨年は最優秀防御率のタイトルを
手中に収め、今では誰もが認めるカープのエースに
なった。
年俸も他球団の選手から見ればそれほどでもないかも
しれないが、うちの球団からすれば本当に精一杯の額を
提示してもらった。
いうなれば「球団の顔」と言っても過言ではないだろう。
276 :
球団の顔2:2007/03/14(水) 05:16:30 ID:TpIpb+1b0
「やっぱり顔というからには9696しとったほうが…」
他球団の顔となる選手達を思い浮かべる。
「ホークスは松中さん、西武は和田さん、ドラゴンズは
ケンシンや福留…」
23な人ばかりだ。
そんな人しかすぐに思いつかない自分に対して少し
寂しさを感じてしまう。
自分を落ち着かせるために鞄の中身を確認する。
「これで髪をきれるんかね?」
出てきたのは小学校で使うような工作用のはさみ。
自分の手では使うだけで疲れそうだ。
「赤い袋がフサウター、じゃあ青い袋は?」
その中には新聞の切り23が数枚入っていた。
どうやらスポーツ欄のようだ。
「こ、これは…」
277 :
球団の顔3:2007/03/14(水) 05:17:19 ID:TpIpb+1b0
それはカープが強かった時代の中国新聞の切り23だった。
写真には当時活躍していた川口や大野、山本浩二や
衣笠が写っていた。
川口はとても9696した髪をなびかせている。
いっぽう衣笠はなんとなく物悲しい。
黒田は現在の二人を思い出す。
川口は色こそ白いものが多くなってきたものの、
その量感は非常にたくましい。
一方衣笠はアレである。
なれるものなら川口のようになりたいと考えてしまうのは
自然なことだろう。
球団の顔になるということは、選手を引退した後も
いろいろな方面に顔を出すことになる。
衣笠のような2323にはなりたくなかった。
でもそのために他人の髪を傷つけるようなことは
できることならしたくない。
いや、してはならない。
とりあえず何とかして負の連鎖が起こることだけは
阻止しなければ。
278 :
球団の顔4:2007/03/14(水) 05:18:12 ID:TpIpb+1b0
しかし自分はやはり常人と比べて髪が23いのだろうか。
フサウターで確認できると説明していたことを思い出す。
『HP:58,000』
「まじか!」
思わず叫んでしまった。
現実を突きつけられるのがここまでの衝撃とは想像を
していなかった。
辛うじて常人の半分はあるもののそれでも六割にみたない。
「まあ、長谷川に会ったら少しおすそ分けしてもらう
分には怒らんやろ。ちょこ〜っと襟足の部分とか、
ちょこ〜っと伸びてきた部分があったりとかな。うん。
しっかし、俺がこれならケンシンとか大変なことに
なっとるんやろなあ」
他人事のように23ら笑いを浮かべてしまう。
黒田は知らない。
川上のHPを。
言葉が変だったらすみません
直せるかたいたら修正ヨロです
新作キター
乙です!
チームメイトに狙われまくる長谷川が哀れw
長谷川そんだけうざったいって事か(髪の毛が)wwwww
283 :
代打名無し@実況は実況板で:2007/03/14(水) 11:52:27 ID:CawZSweDO
>>273 バリカンバリエーションありすぎwwwwwwwwww
他の職人さんが書いた選手は使わない方がいいのかな?
リレーですのでご自由にどうぞ
かぷ出揃ったな。
黒田、(・ε・)=23
ハセガー=餌
緒方=刺客
でいいのかな?
憲伸のHP見るのが楽しみだwwww
ケンシンもう出てるよ〜
>>289 ホントだ。読み落としてたよ。
ありがとう
個人的には2323ネタのみならず、M中とK久保ネタが出てたのにワロタ
すげぇな、野球板を知り尽くしている。
「まぁ、とりあえずルールはわかったかな。」
吉野誠(T47)は支給品の手動バリカンをにぎにぎしながら、これまでのルールのおさらいをする。
「俺、こういうのを待ってたんだよ・・・。」
2003年のセリーグ制覇の原動力となったタイガース中継ぎ陣の中核を担った男も、最近はフォーム改造で苦しみ、結果を出せずにいた。
その原因は、吉野の額がもう誤魔化しが効かない所まで来ていたことに一因した。
そう、それまでのオーバースローではどうしても頭の上下移動が大きいため、その上下運動の反動で帽子が脱げてしまう恐れがあった。
その問題を解決すべく、頭のぶれの小さいサイドスロー転向や、フォームのマイナーチェンジに取り組んでいた吉野。
しかし、どれも思うようにはいかず、帽子のツバに受ける風圧を気にしすぎるため、フォームそのもの崩してしまっていた。
(これ以上は球団も待ってはくれない・・・しかし、4万の大観衆が見守るあの大甲子園で・・・晒すわけには・・・っ!)
苦悩する吉野はパリーグへのトレード志願も考えたことがあった。
しかし、近年のパリーグは不人気・弱小と言われて久しかったロッテや日本ハムの大躍進によるフィーバーが多発し、さらに新規球団東北楽天の参入で盛り上がっており、最早、
パリーグ=不人気=観客少ない=安全
の神話は途絶えてしまったと言っても過言ではなかった。
(もう野球は潮時かもしれない・・・そう思っていた矢先の今回のゲーム。これは・・・天啓っ!)
9696プレイヤーに、それほど強い憎しみや妬みはないが、支えなくてはならない家族や、何より野球が大好きで続けたい自分の気持ちに正直にならざるを得ない。
(俺だって・・・俺だって、思いっきり腕が振れればそうそう打たれやしねぇんだ!まだやめるわけにはいかねぇんだよ!)
「・・・ただ、まぁ、そうは言ってもやっぱり同リーグの選手は気が引けるよな・・・あんまり多くの人に恨みをかいたくもないし・・・」
ぶつぶつと呟きながら、吉野はフサウターを耳に当ててみる。
「コレ、やっぱり遠くの奴もわかるのかな?」
お馴染みの某アニメのアイテムを思い浮かべながら、先ずは自らのHPを確認してみる。
―74000―
「・・・。」
深いため息をつき、気を取り直して今度は上のボタンを押してみるが、反応はするが、何やら検索しているようで、何も表示されない。
(・・・測れるのはすぐ近くの奴だけ?)
しばらく待っていると、フサウターが電子音を発し、幾つかの光点をあらわす。
「お、コレか?」
光点はそれぞれ短いアルファベットと数字、そして4桁の数字を表していた。
「おぉ〜・・・っぷ、皆大したことないなwこっちは木村さん、こっちは・・・ロッテの山崎さんかな?・・・ぷはっwww誰コレ?光点が今にも消えそうなくらいぼんやりして見えないんすけどwwwwww」
幾つか映し出された光点の、自分よりも悲惨な現状に思わず噴出してしまう。
(・・・おっと、笑ってる場合じゃねぇ、俺はこうなる前に、大衆に惨めなものを晒してしまう前に何とかするんだ!)
しかし、すぐに冷静になり吉野は現状の分析を始める。
(これって・・・一つのエリア全体をカバーしているのか?それとも、半径何百メートル程度のものだろうか・・・?)
吉野が地図とフサウターの位置関係を照らし合わせて分析していると、フサウターに異変が起こる。
「何だこりゃ!?」
光点が一つ消え、近くにあった光点が若干輝きを増し、数字が増えていくのがわかる。
「これは・・・」
一瞬と惑ったが、すでに参加を決意している吉野が、事態を把握するのにはそう時間はかからなかった。
(そうか、そういうことか・・・すでに始まってるって事か・・・)
(そうとなりゃぼーっとはしてられないな、このエリア、ライオンとかも見かけたし、木村さんはゲームに乗ったらしい。)
最小限の獲物で、なるべく戦いを避けた形での生き残りを狙う吉野は、ある結論に達する。
「ココは、ひとまず良いカモのいるエリアに移動した方うがよさそうだな。木村さんがゲームに乗った以上、ココは危険だ。」
エリアを23出そうと移動を始める吉野のフサウターにまたしても異変が起こる。
電子音はこの周辺への何者かの侵入を知らせていた。
「ぅぉぉお・・・っ!!!何だこりゃ!?・・・ヘアポイント・・・144000・・・すげぇ、こりゃ"メインディッシュ"だな・・・。」
「・・・っ!!!」
その光点が何かに気づいた吉野の表情が歪む。その表情は、何か邪悪なものにとり憑かれたかのように醜悪であった。
「そうか・・・そうだよ・・・オマエが居たんだよな・・・うはwうははははははwwwオマエなら構わないよな、アノ球団に移籍したら、そのうっとおしいモノともオサラバしなきゃならないんだからw」
「そう、これはむしろ良い事をしてやるんだ。オマエはすっきりさっぱり、日本男児らしい頭でアピールすべきなんだからwむしろ感謝されてしかるべきなんだよwww」
「間違いない・・・もう、コレは髪が"刈れ"と仰っているとしか思えねぇ!元チームメイトってだけで油断が誘えるし・・・それにオマエなら問題ねぇ!どうせオマエは移籍しちまうんだから、それも・・・海外になぁっ!!!」
狂気に支配され、"メインディッシュ"の方角に喜び勇んで走り出す吉野。その方角には、日本にはない球団の頭文字 「 N Y 」 の文字が煌々と輝いていた。
そして、興奮のあまりに吉野は気づかなかった。今にも消えそうな光を放っていた光点が、突如、猛烈なスピードで移動し、フサウターから消えていった事を。
その日、ドームは、いつもの数倍濃密な人々の熱気で大きく膨張しているように見えた。
「福岡ソフ……念願の…日本シリー…優勝に大手……同点9回の裏…サヨナ…4番M中…解説のひがし……は…どうでしょう?」
「あふぉが…だくぁらしょれで…くぁわせdrftgyふじこ」
何故か、ここまで聞こえるはずの無い実況と酔っ払った様な解説者の声が歓声に混じって微かに届く。
「フォォオオオオ…」
松中信彦(H3)は、大きな深呼吸をするとゆっくりと打席に立つ。
この回で、勝負を決める。その細い目は飢狼のごとくぎらついていた。
対する投手はすでに半泣きの表情だった。許されるのなら、今すぐ背を向け脱兎のごとくベンチに逃げ帰りたい、と表情が告げている。
松中は小麦色の肌と筋肉を見せ付けるような裸体に黄色の六尺ふんどし一丁。
むき出しの背中には豪快に『3』の文字が太筆で大書されている。
これはより漢らしさを追求するため、今期途中から鷹戦士に推奨された戦いの装束である。
そしてもう一点。天を突くたっぷり直径70cmはある巨大な剛毛アフロが松中の頭を覆っていた。
ヘルメットが入らずに頂上にちょこん、と載っているのが愛嬌だが、それを差し引いても威圧感は相当なものである。
この髪型とユニホームが功を奏したのか、クライマックスシリーズおよび日本シリーズでの松中の活躍は目覚しく、
『秋深し チャンスに弱い 23正座』の汚名は完全に過去のものとなりつつあった。
セカンドベース上には、今年新たにホークスの一員となった男の姿が見える。
前評判を覆し、見事シーズンをフル出場してみせたその勇姿。超一流のパートタイマーと揶揄されたかつての面影は無い。
アバラと両足の骨は複雑骨折、内臓一部損傷、常時38℃近い熱にうかされながら痛み止めを打って戦うという満身創痍のその姿に、
多くのホークスファンが涙した。
今も、見事なセンターへの二塁打を放ち、点滴付き車椅子に座りながら二塁上でこちらを見つめている。
その顔はすでに土気色であり、最後の命の炎を意志の力で繋いでいるように見える。
早く試合を終わらせ、球場の外に待機している救急救命医療チームの所に連れて行ってやらねばならない。
ネクストバッターサークルには、今年数年ぶりにチームに復帰したチームリーダーが小さく、しかし力強い動作で松中に頷いてみせた。
こちらもふんどし一丁。背中に大きく『9』の文字。松中はそれをうっとりと見つめる。
(……K久保さん、やっぱりその六尺黄ふん最高です)
因みにベンチに待機する連中も、監督以下全員これに準ずるいでたちである。
(N彦…解っているな…?)
(もちろんですK久保さん。あいつの……T村の遺志を、無駄にはしません)
一瞬、目と目でそんな会話を交わした後松中は視線を投手にもどす。ありありと腰の引けたフォームで第一球が投じられる所だった。
「もらったアッーーーー!!!!!!」
鋭い刃のごとく振り込まれた棒、そして小気味の良い手ごたえが松中の体を駆け巡る。
白いタマが恐ろしい勢いで松中のバットから放たれ、放物線を描いて一直線にスタンドへ――。
「…つ中さん。松中さん?」
背後から低い声で話しかけられ、松中ははっと我に返った。
辺りを見回せば、そこは熱気溢れるスタジアムでは無く、にび色の壁に囲まれた殺風景な室内である。
窓の外には色彩と個性に欠けた建築物がぞろぞろと並び、先ほどから振り出した陰鬱な雨に濡らされていた。
部屋の唯一の家具である、これも愛想の無いパイプベッドに横たわった多村仁(H6)が、怪訝な表情で松中の様子をうかがっていた。
「どうしたんスか?」
「あ、スマン、ちょっと考え事をしていたもんだから…」
「………『アッー』とか、思いっきり叫んでましたよ?…一応、俺達隠れているんですから…その…」
怒っている、というより何かを恐れているように言いよどむ多村に、松中は再度頭を下げる。
「悪かった………何だ、その…気分はどうだ?」
「もう少ししたらなんとか動けるようにはなりそうです。
アバラ逝ったり、内臓口からはみ出たりしたのに、やっぱり回復早いですねバーチャル世界は……」
「そ、そうか…ま、まだ1時間も経ってないのにな」
ぎこちなく頷くと、松中はうつむく。再び室内に沈黙が訪れた。
(――とにかく、この人から離れるのが先だな)
まだ痛む腰をかばいつつ、なるべくそろそろと寝返りを打ちながら、多村は忙しく思考を巡らせた。
自分のものだろうが他人のだろうが毛の本数などにミジンコほどにも関心が無い多村はフサウターを身につけていない。
それは自分をこんな状況に一方的に追い込んだ2323BR委員会とやらに対する僅かな反抗でもあった。
だが、同行する23毛のマッチョはといえば、さっき初めてフサウターを取り出して身につけたと思いきや、
「49000…」と呟いて急に硬直し、それ以来しきりに機械をいじっては「ウソだろ…故障だろ」と呟いたり、半泣きになったり、
かと思えば急に現実逃避するように23ら笑いを浮かべ
「…保さん、やっぱりその六尺黄ふん最高です」だの
「……の遺志を、無駄にはしません」だのブツブツ呟きはじめ、挙句の果てには「アッー」と大絶叫である。
ただでさえ先ほど一度殺害されかけた身である。挙動不審23をこれ以上相手にしたくなかった。
ゲームに参加する意思の無い多村にとって、2人の支給武器が毛狩りには役に立たない、いわゆるハズレ武器だった事は幸いだった。
多村は眉毛用のミニカミソリ(三本セット)、松中は鼻毛カッター。
どちらも身だしなみを整えるのには使えるが、それだけである。
松中に毛を刈る手段が無ければしばらくは2人きりで居ても――素手で毟ってこようとしない限り――この身は安全であると言える。
(だからって、この人と居たら、多分残機いくらあっても足りないし…)
残機――その単語に多村は小さく溜息を付く。
脳裏に、出発直後に読んだ山下からの手紙の文面が蘇る。カバンの中の青い袋に『補助アイテム』と一緒に入っていたものだ。
『やあ多村君、今回はこんなゲームに引き込んじゃってゴメンね。君の元上司としては本当は心が痛みます。
でもね、君をこれに参加させたのには、ラーメンどんぶりより深い訳があるんだ。
君の近くに居る人…名前は言えないけど、イニシャルだけ、仮にO監督としておくけど、その人が君の心身の弱さをとても心配しててね。
このゲームを通じて、どうしても君には逞しくなってほしいんだって。
獅子は千尋の谷に我が子を突き落とすって奴だね!君を本当に突き落としたら死んじゃうけどね!
そ・こ・で。君の課題は他の人よりとっっっても簡単なものです。
【残機を48時間死守すること】
残機というのは、君が致命傷を負ったと判断されたら減っていく数値です。この世界は怪我とかしてもどんどん治っちゃうけど、君は油断
禁物という訳です。
48時間して残機が0になっていなければ、君はいち早くこのゲームから抜けることが出来ます!
もちろん、その前に0になっちゃったら72時間戦わなきゃいけなくなるよ!
自分の残機があといくつなのかはこの袋に同封した『残機カウンター』で見ることができます。じゃあ頑張ってね!』
(…0監督ってイニシャル化する意味ねーじゃん)
内心突っ込みを入れながら、多村はポケットから携帯電話のような大きさと形状のものを取り出す。
折りたたみ式の画面を起こすと、液晶画面にはドット絵のキャラクター――多村も確か小学生の頃に友人の家で遊んだ記憶がある。
スペなんとかというゲーム、の主人公がちょこちょこと往復していて、その上に大き目のドットで『×9』と表示されている。
支給直後に見たときにはこの数字は『×10』だったのだが――。
(残機、大事にしないと…)
「多村、誰か来る」
その時、松中が聞こえるか聞こえないかの声で囁きかけて来た。フサウターを通じて何者かがすぐ近くまで接近した事を知ったようだった。
――雨の音に混じり、獣の遠吠えとも人間の嘆きの叫びとも付かない音が、徐々にこちらに近付いてくる。
松中がそっと窓際に近付き、外の様子を伺い、すぐに振り向く。
「ファイターズの3…田中だ。雨宿りできる所を探しているようだが…様子がおかしい」
あんたよりおかしい人が居るんですか、とまぜ返したくなるのをぐっとこらえ、多村はゆっくりと身を起こす。
「ここに来ますかね」
この偽りの街の建物は、ドアに鍵が掛かっていて窓ガラスを壊さなければ入れないものと、入口フリーなものがある。
2人が居る小ビルは後者で、田中賢介(Fs3)がこのまま容易に進入できる建物を探しているのなら、鉢合わせする可能性があった。
「……移動した方が良いかもな。多村、これをかぶって俺の背中におぶさってくれ」
厳しい表情で頷きながら、松中はベッドの上に自らの補助アイテムであるヘルメットをポンと置き、多村に背を向けて屈む。
「え、これ、俺が使っていいんですか?」
ヘルメット――野球用のではなく、工事現場用。しかも丁寧にも『松中土建』と印字されている――。
補助アイテムとしてはかなり『当たり』の部類に入るだろう。
これをすっぽり被り、ストラップを顎の所で結べば、例え不意の襲撃を受けたとしても容易なことでHPを奪われる心配は無い。
「松中さんが使わ…」
「お前の方が必要だろ。それに……パニックだったとはいえ…仲間を怪我させたのは俺だからな。仲間は、守る」
多村の言葉を遮り、松中は妙に熱のこもった声で静かに言った。
「問答は後だ、急ぐ」
広い背中におぶわれて、頭に松中土建メットをかぶりながら、多村はほんの少しだけ笑う。
自分を背負った生真面目な男に悟られないように。
(やっぱり、しばらくこの人に頼るのも…悪くないかなー?)
松中が思わず口に出した「『仲間は』、守る」の言葉の意味を、深くは考えずに。
廊下に出ると、田中賢介の叫びがぐっと近くに感じられた。
その悲憤の篭った雄叫び――改めて毛に狂った男の怨念を肌で感じ多村の背筋が寒くなる。
松中が、一瞬だけ立ち止まり、声の方角をちらりと見やってから何かを振り払うように首を動かし、再び走り出す。
裏口の戸を開けた。
何の設計ミスなのか、それとも仕様なのか、出口は地面より少し高くて1mほどの所に作られている。
「とぅっ」
気合いの声と共に松中が扉から外に飛び出し――
「あ。」
ぐきり。
松中の着地と同時に、嫌な音が雨音の中でも確かに聞こえた。
「おっおっ…」
少し遅れてえづく声。必死で痛みをこらえるような。
「え、えぇっ?」
一瞬何が起きたのか解らず、首を捻じ曲げ後ろを振り向く松中の目に、ヘルメットの重さと着地の振動で頚椎をずらした多村の顔が映る。
「…ま、まさか今の段差で!?」
松中の突っ込みに返答は無く、代わりに多村の顔色だけが見る見る青ざめていく。
そのポケットの中。『残機カウンター』の表示は『×8』へと減少していた。
(多村:残機残り×8)
【残り29名】
23ててもかわいいよ俺の吉野。
タヌwwwwww
タヌラwwwwヨワスwwwwwwwww
開始1時間で既に残機マイナス2・・・
つまりあと4時間でタヌラしゅーりょーwwwww
松中で49000なら、フクーラと和田さん(漢の方)はいくつなのだろう。
長谷川昌幸(C42)は未だ密林を彷徨っていた。
樹木の生い茂ったこの場所では視界がきかず、自分が進んでいるのか、同じ所をグルグル回っているのかさえわからない。
黒田さんを見つけるなんてムリじゃないか?
そんなことを考えながらチッと舌打ちをした。
その時、後ろから聞き覚えのある声がした。
「長谷川さん」
振り向くとそこにはチームメイトの東出輝裕(C2)が、彼特有の23笑いを浮かべて立っていた。
「何だ?」
長谷川は少し警戒した面持ちで訊いた。
ここでの自分の立場は「餌」。
毛に飢えたオオ髪たちにいつ刈られるかわからないのだ。
「そんな怖い顔しないでくださいよ。
俺、長谷川さんの毛が欲しいなんて思ってないですから。それ程毛に執着も無いですし。」
東出は23笑いを崩さずに言った。
そう言われて長谷川は、今は帽子で隠れている彼の頭を思い浮かべた。
確か後退しつつある生え際が露わになることもかまわず髪を短くかり、毛根へのダメージも気にせず髪を23色していたはずだ。
成る程、東出は髪に無頓着なのかも知れない。
そう思うと、長谷川の中で東出に対する警戒心が23れていった。
東出は一瞬で自分への警戒心を解いた長谷川を見て、内心ほくそ笑んでいた。
新井さんをはじめとして、どうしてカープはお人好しが多いんだろう。
やっぱり長谷川さんには丸刈りになってもらおう。それでハングリー精神が出て、才能が開花するかも知れないし。
体格で劣る自分が長谷川さんの頭を刈るには、奇襲しかない。それにはまず油断させることだ。
「俺、どうしようかと思ってたんです。長谷川さんに会えてよかった。」
嘘はついてませんよ?
この広い空間でターゲットに会えなかったらどうしようかと思ってましたから。
それがこんなにすんなり会えてよかった。
「じゃあ、お前はこの23バトに乗ってる訳じゃないんだな?」
長谷川の問いかけに、東出は曖昧な笑みで返した。
長谷川は、その23笑いを肯定と解釈した。
「丁度よかった。ちょっとこれ読んでくれ。」
そう言うと、マーティから、もとい新井さんからの手紙を東出に渡した。
「何ですか、これ。・・・個別テーマ?」
一通り手紙を読み終えた東出は、ハァとため息をついた。
ダメダメじゃないですか、新井さん。あなたも参加してたら絶対丸刈りにしてあげましたよ。
「読みましたよ。で、俺にどうしろって言うんですか?」
「これだと俺はどっちみち規定の時間が終わるまで23出できない。
特にすることもないし、だったらただ逃げ回るより、条件通り黒田さんの護衛をしようと思うんだ。
お前も手伝えよ。黒田さんのモチベーションがあがったら、カープのためになるだろ。」
「・・・長谷川さん、本当に黒田さんの手伝いするんですか?」
東出の口調が険を帯び、表情が消えた。心の中でドス96い感情が芽生えはじめたのだ。
餌として連れてこられて、同じピッチャーの黒田さんの世話係まで言いつけられてるのに、この人悔しくないのか?まるで他人事じゃないか。
・・そうか、やっぱり9696だからいけないんだ。9696だから自分は余裕があるって勘違いするんだ。
9 6 9 6 は 悪 な ん だ 。
東出はさりげなさを装いつつポケットに手を入れた。
長谷川はそんな東出の様子に気づいていなかった。
「それにしても密林って蒸すよなー。」
ヴィィィィィィィィィン!!!!
それは、長谷川が額の汗をぬぐおうと帽子を脱いだ瞬間の出来事だった。
東出は、一瞬のうちに電動バリカンで長谷川の生え際をなぞると、素早く飛び退いた。
「東出ぇぇっ!!テメェ最初から俺の毛が狙いだったのかぁ!!」
そう叫んだ長谷川の額は、無惨にも生え際から3p程刈り取られていた。
「さっき言ったことは本当です。俺はあなたの毛が欲しいなんて思ってませんよ。」
東出は、じりじりと後ずさりして間合いをとりながら言った。
「俺はね、長谷川さんに闘争心を持ってもらいたいんです。」
「お前何言ってんの?!23毛んなよ!」
「23毛てなんかいませんよ?
本当は一思いに丸刈りにして、リタイアしてもらうつもりだったんですけど、気が変わりました。
奪われたものは奪い返してください。
ポジションも、ローテーションも、・・・そして毛もね。
ま、今の長谷川さんの生え際は、ギリギリおでこが広いってことで人で通せるぐらいですから、自分をだましながらイイヒトでいるっていうのもアリですけどね。
どっちにするかはお好みでどうぞ。」
そう言うと、東出は密林の23闇の中へと走り去った。
追っても奴の足には追いつかないだろう。
長谷川は呆然と消えていく後ろ姿を見送った。
【残り29名】
小悪魔発動
とりあえず目的を果たした東出がこれから何をしでかすのか気になる…
>>309 >23毛んなよ!
読めるまで10秒くらいかかったwww
長谷川 → 東出 のHP推移が気になるw
前線の3cm後退ってけっこう酷いぞ・・・
松中のふんどしアフロwwww
まさに「男、打つ」ww
>>306-309です。
×おでこが広いってことで人で通せる
○おでこが広い人ってことで通せる
でした。
他にも誤字脱字あったら修正よろしくです。
>>311 HP推移考えてなかった・・・。
後から書かれる職人さんにお任せしていいですか?
>>305 今回の話の中に入れられなかったのですが、松中のHPが見た目より少なめな理由は
自 前 の 毛 が 少 な い、からとお考え下さい。
後の方のHP設定に影響が出るとまずいので一応…
そして吉野が腕振れない理由とか、「毛に飢えたオオ髪たち」「23毛んなよ!」いちいち バロスwww
なにこれおもれーwww
フサウターの設定とかめんどそうだけど頑張ってください>職人様
これほどラストが気になるバトロワも久々だww
「流石に暑いな」
黒田博樹(C15)はまだもとの場所から動けずにいた。
黒田のいるエリアは砂漠エリアのうちの一つ。
しかしそこは小さな池があるオアシスだった。
少し大きめの木が一本生えているので、
直射日光はなんとか避けていたが、気温だけは
どうしようもなかった。
見渡す限り周りには人影がない。
時々フサウターで確認も怠ることはなかった。
「しかしなあ」
そう、黒田はゲーム開始直後に気付いたことがあった。
大ちゃんの説明を聞いた限りではこの30人のうち、
髪の毛を守ることが出来るのは一人だけ。
「それってやばくないんか?」
ペンも紙もない状況、且つ暑さでどうしても頭がぼーっと
してしまうためちゃんとした計算はできない。
そこで出来るだけ単純にして考えてみる。
参加人数:30人
うち半分が毛を狩りに行く選手で、半分がその必要のない
選手とする。
狩人のHPを50,000、常人を100,000とする。
そうすると狩人の合計は75万。
常人の合計は150万。
合計で225万。
例えば(するつもりはないが)自分が全員を狩ったとして、
奪うHPは約220万。
実際に収穫できる分に直してみると22万本。
「に、22万っ!!」
現在のHPを足すと約28万本となる。
「常人で10万本ってことはいくら多い人でもせいぜい14、5万やろ…
その倍の髪の量になったらそれは人間と呼べるもんかね?」
「山下さん聞こえますか〜」
…
……
………
「ダメか」
このバーチャル世界では一方通行なのか返事はない。
しかしなんとか確認しなければならない。
もしかするとそこにこのふざけた奪い合いをとめる手段が
あるのかもしれない。
自分のチームの参加人数が多いからではない。
こんな下らないことを思いつく人間が許せない。
人のコンプレックスを弄ぶなど言語道断だ。
例えお空に眩しく光るお天道様がが許そうとも、
黒田の中の漢気はそれを許さなかった。
「どうすればいい…」
出来る限りの記憶を辿り、なんとか大ちゃんとコネクトする方法は
ないか必死に探す。
飛行機に乗って…
シートベルトとヘッドギアをつけて…
離陸して安定したところで大ちゃんがモニターに…
そう9696とした大ちゃんがでてきた…
誰もが違和感を感じていたのはあのざわめきでわかる。
そして…
「飛行機の中は監視されている!」
そう、川村さんがあの時何か叫んだのに対して大ちゃんが反応していた。
そして、この世界から現実にはすぐに戻ることができる。
「とりあえずもう一度周囲を確認して…」
周囲は砂漠であり、比較的視界が広い。
小さい池の周りに沿いながら全方向に人がいないことを確認した。
「よし、あと5分や10分なら大丈夫だろう」
…ブゥゥン…
「う……」
周りを確認する。
どうやら機内に戻ってきたようだ。
すかさずモニターを見るがそこには今は何も写っていない。
スーツを着た青年が近寄ってくる。
「黒田さん、いかがされましたか」
「ルールの確認をしたい」
「何か説明に不明な点がありましたか?」
「ああ。ほんの些細なことで聞き逃したのかもしれんが、気になって
とてもではないがゲームに集中できない」
(下手な嘘だな。しかし気になるのは事実だ)
本心を悟られないように続ける。
「基本的には72時間以内に他の全員のHPを奪えば生還できるんだよな?」
「その通りです」
「そして奪ったHPは自分の髪になる」
「その通りです」
「そこまではお前に言われんでもわかっとる」
「はあ」
どうやら青年はこちらの本心には気付かなそうだ。
「全員分奪ったら髪はどれくらい増えるんだ?」
「それにはお答えできません」
(ちっ…まあしょうがないか)
「そうか。奪った分は全部自分に植え付けられるのか?」
「その通りです」
「余りに極端に増えすぎるとそれはそれで嫌なんだけどなあ。
なんとかならないか?」
「え…と、少々お待ちいただいてもよろしいですか?」
(今だ!)
「余り時間をかけたくないんだ。向こうの体が心配だし。
できるならモニター越しでいいから山下さんに直接聞けるとはやいんだが」
「少々お待ちください…本部応答願います…
実は…ええ…はい…わかりました」
突然モニターが点きそこには大ちゃんが写っていた。
「もう、黒田君どうしたの?今髪をとかすので忙しいんだ〜手短にね」
「山下さん、条件についてです」
「…ギクッ!!どどど、どうしたの?せ、説明はもうしたよ!」
(あからさまに怪しいですって…)
大ちゃんの反応に苦笑いしそうになったがなんとか押さえ込んだ。
「山下さんのその髪、全部で何本くらいなんですか?」
「あ、これ。う〜んとねぇ、大体12万本くらいかなぁ?
いいでしょぉ、キミもこんな風になりたいから思わ…」
「なるほど、やはりそうですよね。もし20万本の髪があったなら、
どんな頭になりますかね?」
「アッハッハ、黒田君おもしろいこというねぇ。
そんなに髪の毛があったらモジャー星人になっちゃうよ。」
「やっぱり」
「やっぱり?」
「はい。僕もそんなに多くは欲しくないんですがもし最後の一人になった場合、
その選手はモジャー星人になってしまいますよね?」
「…ギクッ!!!」
「もしみんながそれに気付いたらですよ?
誰もモジャー星人にはなりたくないんじゃないかと思うんですが」
「はわわ〜」
(大ちゃん落ち着いてくれよ…)
だんだんと面倒くさくなってきてしまったが続けなくてはならない。
「もしそうなると必然的にみんながHP0になってしまいます」
「ゴメンッ!!」
「え?」
急に大ちゃんが謝ったため思わず驚いてしまう。
すると大ちゃんの脇から見たことのある顔がでてきた。
「佐野さん、ですよね?」
「ああ。そうだ。
実は先ほどのルール説明の時にこちらの説明で不足部分があったんだ」
(ナ、ナンダッテー!って落ち着けよ、俺)
「どんなことです?」
「最後の一人にならなくてもこのゲームを勝ち残ることが出来る方法がある」
(ナ、(ry))
「そんな重要なことなんで言ってくれないんですか!」
佐野は思わず大ちゃんを見つめる。
大ちゃんはというと自分の髪をいじくりまわしている。
「すまなかった。こちらも色々と忙しくてな。
もう一つの条件とは、72時間経過後までHP10万以上を守ること。
これだ」
「そんな重要なことを!」
「すまなかった。君が戻り次第一斉放送を入れる。
君の質問はそれだけかね?」
他に聞いておくべきことはないかと逡巡したがすぐには思いつかなかった。
「ええ」
「ではゲームに戻ってくれ。今回は質問に応じたが今後何かあっても
そちらから質問を受け付けることはない」
「わかりました」
結局黒田にわかったことは生き残れるのは一人だけではないということ。
ただその一つだった。
しかし、うまくすればより多くの人たちの髪を守ることが出来る。
再びゲームの世界に落ち行く意識の中で決意を新たにした黒田であった。
【残り29名】
なんだか長くなってしまいました。
勝手に追加ルールの説明を入れてしまいました。
もし何か不備があれば手直しします。
>>316-322 おおお!うまく新ルールを
組み込んでくれてありがたい!
お前に(ryって、某チームメイトが伝染してますよ黒田さんwww
モジャー星人wwバロスww
「しかしそれにしても…なかなか奪い合いが起こりませんね。
いきなり木村が山崎を脱落させた時は速いペースでゲームが進みそうだなと思ったんですが」
モニターを監視していた佐野が不意に山下に話しかけた。
「仕方ないさ。まだゲームは始まったばかりなんだからね。焦る必要はないさ。じっくり待てば必ず奪い合いが起こるはずだよ」
シウマイを口の中に放り込みながら山下は事も無げに応える。その顔には一欠けらの焦りも見られない。
あまりにも泰然とした様子の山下を佐野はまじまじと見つめる。
その視線に気づいたのか、山下は再び口を開いた。
「まあ落ち着きなよ佐野君。……そうだ、折角だから君に面白い事を教えてあげるよ」
そう言って山下は箸を休めて、モニターの切り替えボタンを操作する。
映し出されたのは、一面に広がる砂漠。そしてその中にぽつんと存在する一人の男。
佐野は画面に映し出された男に見覚えがあった。確か一時期チームメイトだった男だ。
「これは…オリックスの塩崎じゃないですか。彼のどこが面白いんですか?彼は確か“餌”として連れて来られた筈ですよね?」
画面に映る塩崎は、いかにも豊富な髪が帽子の中に入りきらず、溢れ出た後ろ髪が大いにその存在を主張しているといった風である。
佐野等運営側にとっては、面白いどころかむしろ憎むべき存在であるはずだ。
「ふっふっふっ……。ねえ佐野君、彼はいったいどの位HPを持っていると思う?」
山下が楽しそうに問いかけてくる。
聞くまでもない。どうせまたこちらがうんざりする位大量のHPを持っているのだろう。佐野はそう思っていた。
「驚かないでね。実は彼のHPはね…66000なんだよ」
「なっ……」
佐野は言葉を失った。どういうことだ。66000じゃあ一部の求毛者として招待した選手よりも少ないではないか。
「う、嘘でしょう!?人を担ぐのも程々にしておいて下さいよ山下さん!」
「驚かないでって言ったじゃん。…きっと少ない分長く伸ばして体裁を取り繕っていたんだろうね。すごい執念だよ」
「…何てこった…。とんでもない選手が連れて来られたものだな…」
「それだけではないよ。恐らくこの状況の中“餌”は戸惑っていることだろう。そこに塩崎君が現れたとする。
“餌”は恐らく23てる人間を見ればある程度は警戒するだろう。だが塩崎君は一見では彼らと同じ“餌”である人間に見える。
彼らは塩崎君の姿を見て安心して、油断したり共に行動しようとしたりするだろう。
つまり…塩崎君は他の求毛者よりも“餌”である選手の毛を刈りやすい立場にいるんだよ!」
そういう考え方があったか。佐野は納得する。
「……なるほど…確かに面白い立場ですね…」
「塩崎君はさぞや『本当に』豊かな髪を持つ人間を嫉んでいる筈だからね。きっとゲームに乗ってくれるさ。
そうなればさらに楽しみが増える。仲間だと思っていた塩崎君に裏切られ、絶望感を滲ませながら刈られていく“餌”達。
考えただけでもぞくぞくする光景だと思わないかい?」
山下に言われたシーンを思い浮かべる。小林宏之が、井川が、塩崎に騙されて無残に毛を刈られていく様子を――
体中にエクスタシーが湧き上がってくるのを佐野は実感した。
その時、突然ピピッと音が鳴る。
山下は音の出所らしい携帯電話のような機械を見て、よりいっそう顔をほころばせる。
「密林エリアで動きがあったようだよ。東出が長谷川の髪を刈ったらしい」
そう言って山下はまた切り替えボタンに手を伸ばした。
灼熱の光が一人の男の身を焦がす。
塩崎真(Bu31)は、目の前に広がる砂をじゃりじゃりと踏みしめて歩いていた。
塩崎の手にあるのは一枚の手紙。
その手紙には、まるで書いた当人の冷酷さを表すかのような無機質な印刷の文字で、こう書かれていた。
『塩崎君へ
こんな所へ騙して連れて来て申し訳ない。だがこれもFAでオリックスを出ようとしたことに対する贖罪だと思って諦めてくれ。
さて、肝心の君が脱出するための条件だが、単刀直入に言おう。
合併問題の時にオリックスに反旗を翻した岩隈久志をこのゲームから脱落させること。
そして、昨年オリックスを大いに苦しめた日本ハムにいた選手、田中賢介か小笠原道大。
この両名のうち“どちらかの”半分以上のHPを奪うこと。
これだけが条件だ。これがクリア出来れば君はここから脱出することが出来る。
簡単な条件ではないかもしれないが、君ならやってくれるだろうと信じている。
では、健闘を祈る』
「23毛やがって。大体本当に贖罪なら何故日高がここにいないんだ。なんで俺だけが連れて来られてあの昆布野郎が無罪放免なんだよ」
手紙をもう一度ちらりと見返して塩崎は毒づく。
だが、セリフとは裏腹に彼の顔は満更でもなさそうな、むしろ楽しそうな表情だった。
(でも感謝するぜ。俺をこんな素晴らしいゲームに連れて来てくれてさ。このゲーム、まさに俺のために開かれた様なもんじゃねーか…)
自分の生え際が目に見えて後退していったのと、9696とした髪のイメージを植えつけるのに成功したのは一体どちらが先だったか。
実を言うと塩崎は23に悩みつつも楽観していた。自分が23だということはばれるはずがないだろうからと。
だが、去年スカイマークスタジアムのバックスクリーンで彼の額が映し出されて以来、
塩崎はファンの自分を見る目が変わっていくような感覚に襲われ続けていた。
練習していても、ファンの視線が自分の額に集中しているような気がしてしまう。
23の癖に見栄っ張りな奴だと自分を嘲笑っているのだろうか。そんな気がして仕方がない。
妄想から逃れるためにも、このチームを出て行き新天地で気分を一新しようとも思った。
だが、結局はこのチームに残らざるを得なかった。そうなれば自分の頭と向かい合うしかない。
正直に23だということを白状するか、それとも事実を隠し通すか、塩崎は悩み続けていた。
このゲームが開かれたのは、まさにそんな時だった。
(今まで俺は偽りの9696キャラだった。だが、このゲームに勝てば俺は正真正銘の9696キャラに戻れるんだ)
突然訪れた千載一遇のチャンスを、塩崎が見逃そうとするはずがなかった。
(岩隈や田中だけで満足できるかよ…)
塩崎にはただ単に個別テーマだけ済ませてこの空間を23出そうという気持ちは毛頭なかった。
塩崎にしてみれば正真正銘の9696キャラになるには岩隈らの分を奪っただけでは到底足りないのだ。
(なるべく多くの毛を刈ってやる。特に、この素敵なゲームを止めようとする奴。そして…)
黒田博樹。そして小笠原道大。
どうしようもなく嫉ましい奴ら。
去年の暮れ、塩崎はFA宣言した。にもかかわらず、塩崎には他球団からの連絡はなかった。
俺はこの程度の価値しかない選手だったのか。虚しい思いにとらわれたものだった。
しかしその一方で、彼ら2人は他球団から必要とされ、マスコミの寵児となっていた。
黒田に至っては、結局FA宣言しなかったにもかかわらず、残留会見での発言が美談として、更なる注目を集めたものだった。
塩崎は自分と違い必要とされる彼らに対して23しく嫉妬したものだった。
彼らのことを思い返すと、塩崎の心に更なるやる気が湧き上がって来る。
(…野球では奴らに負けてしまった。だから今回はその借りを奴らに返す時なんだ!奴らの毛を刈るまでは死んでも帰るものか!)
その為には岩隈なんか後回しだ。2人の髪を奪い尽くし、十分な髪を稼いで、やっと岩隈がターゲットとなる。
(せいぜいそれまで生き残ってろよ岩隈…)
そう祈り、塩崎はすっとカバンの中に手を突っ込む。手紙の代わりに中から出てきたのは新品の電動バリカン。
輝くその物体を見て、塩崎はさらに邪悪な笑みを広げた。
(この手で、この手で、あいつらに借りを返すことが出来る…)
「毛毛毛毛毛毛毛毛毛毛……」
狂った笑い声が塩崎の口から漏れた。
「はい、塩崎選手と岩隈選手の様子には特に変わった様子はありません」
「そうか、分かった」
男はそう言って2323バトルロワイヤル運営委員との通話を終えた。
そして、手元の一枚の写真に目を落とす。
その写真に写るのは23上がった額を晒す背番号31のユニフォームを着た男。
(最初から分かってたんだよ。君が本当は23だということは…)
そう、塩崎が23だということにこの男は気づいていたのだ。
でも23として参加させると個別テーマを設定できないので、あえて餌として参加させたのである。
彼がこの企画の参加者を知ったとき真っ先に思い浮かべたのは、少し前の球界再編問題の際に、オリックスから逃げ出した男。
(それにしても岩隈君が参加しているとはね…これは彼にオリックスというチームを侮った報いを受けさせる良い機会だ)
しかし、このゲームの進行役は山下大輔。岩隈の所属チームの編成本部長である。
彼なら、岩隈に有利になるよう便宜を図ろうとして、岩隈を潰せという個別テーマは認めないかもしれない。
そこで、男はあらかじめ偽のテーマを山下達に知らせた上で運営委員の1人を買収して、
山下達に気づかれないように塩崎の個別テーマを書き換えさせたのである。
山下達が知る偽の塩崎のテーマは『田中賢介と小笠原道大、この“両名の”半分以上のHPを奪うこと』
(書き換えは成功した…山下達はまるで気づく様子がない…万事うまくいっている…)
くくっと笑う男。その時電話が鳴った。
「オーナー、中村選手の件について伺いたいと新聞記者が…」
やれやれ、またか。それにしてもあの男も厄介事を起こしたものだ。
そう思い、秘書に指示を出しながらふと山下達のことを考える。
(万が一全てが終わる前に山下達に気づかれたときの事を考えておかないとな…)
事実に気づいた山下の表情を思い浮かべつつ、その男、オリックス・バファローズのオーナー宮内義彦は電話を切った。
【残り29名】
土曜日の流れも考えて、結局30人目はオリックスの塩崎としました。
また、この話は「モジャー星人」よりも前の話という設定です。
>>323 正直まさかこんなに早く生き残りのためのもうひとつの条件を
全選手に公表する機会が出てくるとは思ってませんでした…
それまでにどうしても書きたい話があるので、早く書き上げなきゃと思います。
塩崎キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
>「毛毛毛毛毛毛毛毛毛毛……」
怖すぎwwwww
塩崎ktkr
職人さん乙!
>「毛毛毛毛毛毛毛毛毛毛……」
お粥噴いたww
職人さん超乙です!
黒田が言うとおり、かぷからの参加者多いw
しかし実際は参加者以外にも23や23予備軍がいるという事実。
恐るべし、ネタ球団。
(・3・)「毛毛毛毛毛毛毛毛毛毛毛……」
なんて見たら何か別のゲーム思い出しそう
それなんてひがしでのなく頃に?wwww
もう駄目だ、このスレ携帯で見れない
もうおかし杉www
最初の川村のマジの驚きよう
>「バカな!ありえねえッ!」
だけで腹痛もんだったがその後の
>2っ3ら
にやられ、
>MARUHAGE Destroyer
でパソコン壊しかけ、ついには
>「毛毛毛毛毛毛毛毛毛毛……」
これかよwwww
川村のマジ驚きは俺も笑った
愕然とした表情が目に浮かぶようだった
そろそろ戦うスレのように閲覧中の飲食禁止の注意書きが必要だなw
このスレ読み始めてから腹筋が鍛えられました、本当に(ry
俺は笑いをこらえる忍耐力が鍛えられたw
通勤電車の中で携帯で覗いているので・・・
344 :
代打名無し@実況は実況板で:2007/03/16(金) 20:21:31 ID:9PswRwJFO
たぶん一番自殺率の少ないバトロアだろなこれww
だって自殺なんて自分で髪を狩るしか無いしなww
求毛者がするわけが無いし、餌もしないだろうww
>>293 > パリーグ=不人気=観客少ない=安全
> の神話は途絶えてしまったと言っても過言ではなかった。
クソワロタwwww
髪>野球かよwwww
切れることなく続く密林、そしてところどころぬかるんでいる足元。
潅木の枝を払いながら、道無き道を進む。
ごくふつうの人間なら数分で音を上げてしまうであろう悪路を、小林宏之は無言で歩み続けていた。
憎悪を胸にたぎらせながら。
小林はただひたすら前だけを見つめ歩いていた。
だから気付かなかった。
己の背後に忍び寄る影に。
不意に前方の草むらがガサッと音を立てて揺れた。
小林が思わずそちらに目を向けた次の刹那、何者かが背後から小林に飛びかかってきた。
「ぐぁっ!」
顔面から地面に倒れこんだ小林の頭を押さえつけ、襲撃者は小林の背中に馬乗りになる。
ヴィィィィン!
突如響いた無機質なモーター音。そしてジジッ…ジジッという断続的な音。
刈られている、と認識するのに数秒かかり、小林は慄然とした。そして渾身の力を振り絞って起き上がる。
「っの、やろぉっ!!」
「くっ!」
身体が軽くなった小林は横へ飛びのき、頭に手をやりながら即座にフサウターで自分のHPを確認した。
HP:94000。
(1万も刈られただと!?)
焦りながら何度も頭を撫でる。頭頂部がまだらに23くなっている感触に身体が震えた。
「畜生!誰だッ!!」
もんどりうって転がった襲撃者も起き上がって後方に飛びずさる。白地に臙脂色のユニフォーム。そして背番号21。
「岩隈…!?」
その声には応えず、岩隈は立ち上がった。
右手に握られたバリカンから金色の毛がハラハラと落ちてゆく。
「ごらん、佐野くん!!さっそく小林宏之が敵と接触したよ!」
興奮のあまり頬張ったシウマイを吹き出しつつ、山下は目を輝かせてモニターに見入る。
一方の佐野はどこか不満げな表情を浮かべている。
佐野が見たかったのは持たざる者が持つ者を駆逐する姿であって、持つ者同士の争いではないのだ。
「あれぇ?なんか佐野くんテンション低いよ??」
「いえ、その……山下さんは、よろしいのですか?」
「何がだい?」
「岩隈を参加させていることが、ですよ」
「なんだ、そんなことか」
「彼は“餌”ではないのですよね?確かに2323予備軍ではありますが、
他の求毛者たちに比べればまだ恵まれているほうでは…」
「ふふふ、君は本当に優しいね、佐野くん」
「は?」
「君はそう言うけれども、僕は彼以上にこのバトルロワイヤルに相応しい選手は
うちのチームには居ないと考えてるよ」
山下はサラサラの毛先の感触を楽しむように、髪を弄びながらモニターを見つめ続けている。
佐野はモニターよりもその指先から目を離せなかった。
「あの子が楽天に来た経緯は、君も知ってるよね?」
「…はぁ、まぁ、人並みには」
「あの子は、チームのためだと言えば、どんな無理難題だってやってくれるさ。
よその選手の毛を刈ることなど、造作も無いだろうね」
ふふっ、とまた小さな笑い声が聞こえた。
「今回、楽天から誰を参加させるかはもちろんモメたさ。うちは茶髪・長髪・ヒゲは禁止だからね、
9696枠での参加者は供出せずに済んだけど、2323枠でも決め手に欠けてね。
結局、岩隈くんのチーム愛に賭けたというわけさ。彼なら必ずこのゲームに乗るだろう、とね」
佐野は言葉を失った。
(獅子は千尋の谷に我が子を突き落とす、って言うけど…
イヌワシは23タカの群れにヒナを放り投げるっていうのか…!?)
「いいねぇ、イケメンどうしが泥にまみれながら毛の奪い合い。絵になるねぇ」
腕組みをして、山下はうんうん、と頷く。
「密林エリアはなかなか動きが盛んみたいですね」
「うん、やっぱり程よく暑いと選手も活発になるみたいだね。密林エリアには“彼”もいるし、この先が楽しみだよ」
山下は頬にかかる髪を手で払いながら、最後のシウマイを口に放り込んだ。
【残り29名】
乙です!
緊迫シーンキター(゚∀゚)―!
(1万も刈られただと!?)
駄目だ、シリアスシーンのはずなのに笑いがwww
>イヌワシは23タカの群れにヒナを放り投げるっていうのか…!?
誰が上手いことをw
>>347-349 本当にこれシリアスシーンかよwwww
内容で笑うわ大ちゃんは緊迫した場面に似合わないからまたそこで笑うわww
>(1万も刈られただと!?)
>山下はサラサラの毛先の感触を楽しむように、髪を弄びながらモニターを見つめ続けている。
>佐野はモニターよりもその指先から目を離せなかった。
23藁wwww
密林エリア 岩隈・的場・小林・緒方・石井・長谷川・東出
都市エリア 田中・松中・多村・川上
サバンナエリア 木村・井川・下柳・吉野・和田
砂漠エリア 黒田・塩崎・福浦
南極エリア 実松・山崎・久保
山岳エリア 三浦・ラロッカ・福留
25人まで登場しました。
72時間のフライトなら給油のための寄港地で参加者や餌の追加ができそうw
普通に寄港地まで行く→乗り換えを指示されたのが23バト会場
ギュム・・・・・・ギュム・・・・
輝かしい銀世界の中を無言で進む。
吹雪はすっかり止んでいる。
空には雲ひとつ無く、余すことなく太陽の光が、銀世界を融かさんとばかりに降り注いでいた。
ギュム・・・・ギュム・・・・
方向を見失わない様に、逐一方位磁石を確かめながら進むと、
やがて、大きな段差にぶち当たる。
高さは6M程、もちろんココから下へは降りられるはずが無い。
「・・・・・」
久保は段差の際に立ち、もう一度地図を見る。
地図の通りならば、このまま段差に沿って南下すると、
段差が低くなっている所があるらしい。
ピッ・・・
フサウターをつけて、上のボタンを一回押す。
フサウターの画面には何の変化も無い。
(この辺りには誰も居ないのか・・・・)
見える位置の相手のHPを表示すると説明されたので、
遠くに誰かが居れば、フサウターが反応すると考え、
ちょくちょくボタンを押して、あたりを見回すのだが、
まだ、誰かのHPが見えると言う事は無かった。
(もしかしたら、まだ何か隠された機能があるかもしれない)
ハァー。
感覚が無くなりつつある指先に、暖かい息を吹きかけ、
その暖かさを分け合うように、指先を擦る。
しかし、そんな事で冷え切った手が温まるはずは無く、
指先はいまだに固く感じる。
「ハハ・・・」
指先の冷たさに笑い声が漏れる。
指先の感覚が少し無くなる程度で済んでいるのだ。
ココは南極。
そして、久保の格好はユニフォームにデイバック。
普通なら、耐えられるはずがないのだ・・・・
「死なれちゃ困るんだ」
映画の様に、殺しあう事を望んでるわけではない。
選手達が毛を刈りあうのが、アチラの望みである。
"何故"かなんてどうでもいい。
(俺は毛が生えればそれで良い)
暫く無心で景色を眺めた後。
興味を無くしたかのように、体の方向を変え、歩を進める。
(最後の一人になれば・・・最後の)
自然とベルトに刺したすきバサミに目が行った。
最後の一人になるには、どうしても電動バリカンが必要だった。
(まずは、電動バリカンをどうやって手に入れるかだな・・・・)
『ピンポンパンポーン!!
9696した僕からの緊急連絡だよ』
能天気な声に、足が止まる。
(緊急連絡?提示連絡じゃなくて?)
『皆さんにお伝えし忘れてた事が有りますモジャー
皆には生き残るには、72時間以内に最後の一人になる事といいましたが、
実は、生き残る方法はもう一つ有ったりしますモジャ』
「ナ、ナンダッテー!!」
思わず大声で叫んでしまった。
ゲームを根底から覆す話しを、何故か『モジャ』と、
語尾に付けられながら話されているのだから、仕方が無いだろう
『それは72時間経過した時に、君たちのHPが10万以上になってる事モジャ
コレを君たちに伝えわす・・・・伝えなかったのには、
ライトとレフトを交代するぐらい深い訳があったんだよ!
教えられないけど・・・・ほ、本当なんだよ!!!』
(今、明らかに伝え忘れ・・・って言おうとしただろう)
『それじゃあ、皆!頑張って刈り合いヨロシクね!!
モジャッジャッジャッジャッジャー!!!!』
プツ
耳の奥の方で、何かが切れたような音がした。
一方的な通信は、終わったらしい。
(どこまで23けてるんだ・・・・・)
頭が痛いのは、山下の最後の変な笑い方のせいだと思っておこう。
「72時間経過時に10万・・・・」
新たな生き残り条件に、久保は暫く思案する。
「刈るだけじゃなくて守る事も考えないと・・・・」
誰かと手を組むか?
久保はデイバックから参加者表を引っ張り出した。
「うーん、やっぱり同じチームが良いよな、その方が信用されやすいし」
参加表の中から、二人のチームメイトの名前を見つけ出す。
福浦 和也。
小林 宏之。
(性格的には福浦さんの方がいけそうだけど・・・・
あっちも刈るのに躍起になってたら、俺のHP奪いにきそうだし)
久保は慎重に、自分を守らせる為の人物を選ぶ。
(その点では宏之さんの方が安全かな。
9696だから刈ってくる心配は無いし。
信用はされにくいけど、チームメイトだから大丈夫だろう)
ゲームに無理矢理参加させられた、哀れな23だと思わせれば、
髪に対する執着など、毛ほども解らない9696だ、
それだけで十分に騙せるだろう。
(・・・・決めた!!)
『23ちゃってる悲惨な皆にだけ、秘密を教えちゃうよ!』
「!!!!」
漏れるかと思うぐらい、ビックリしてしまった。
『実はね、髪の毛が恵まれてる人にはね。
個々に生き残り条件が設定されてるんだよ。
その条件さえクリアーすれば、時間もHPも関係なくこのゲームから生還って訳さ!
髪の毛があれば良い事尽くめだね!じゃーね!!』
明らかに煽る様な言葉も、久保は冷静に聞いていた。
山下の言葉を聞いて、もう一度、思案しなおす。
(個々の条件・・・・)
9696の生き残り条件には未知の部分がある。
しかし、2323達の生き残り条件は一つ。
毛量10万!
(目的がわからないより、解ってる方がいいか・・・・)
選択の針は、決めかけていた方とは別の人物を指しはじめる。
久保自身は気づいてないが、久保の中の9696への劣等感が、それに拍車をかけた。
もし、福浦が毛刈りに躍起になっていたら、協力を申し出れば良い。
生き残れるのは一人だけじゃなくなったのだから。
(やっぱり・・・・)
少し傾いた太陽の眩しさに目を細めながら、口元に笑みを浮かべる。
「この世界は優しい・・・」
毛を刈る側の人間にだけ・・・・・だけど。
「ハハ・・・ハハハ」
堪えきれない笑みを漏らしながらも、
日が傾く前に、南極エリアを23けるべく、止めてしまった歩を三度動かす。
【残り29名】
>>356-360 大ちゃんバカスwwwwwwwなんなんだwwww
段々ネタキャラロワイヤルの様相を呈してきたなwwwwww
『モジャ』って言葉気に入ったのか大ちゃん…w
>>361 23ネタだけだと話の作りにも限界があるからね
>モジャッジャッジャッジャッジャー!!!!
ダメだ笑い死ぬwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
>>317 (・ 鏡 ・)<黒田さん、気持ち悪いですよ
∠二`-=-''"<~,,_
,,=''"~ =
,/ \
_,,_ __ lイ ● ● 'l,
`ヽ=、\/~ ,// ,, .(⌒ ,,_. `lヽ
∠ ̄ < レ ー'"'"(⌒ ``''' '‐ N
/ `V"  ̄ |'
レ ・ ・ て,,/ (_,人
(_,,. ε ┌'"レ| ,, /
'l, i, 、 , i,,/ 火 ,;_ .,, ,. ,, ,/"
゙(_/`'"\) (ニニ!`ヽ'"-'"!ニニ)
\____________________/
o
。
。
彡⌒ミ
[・ ε ・;]?
>>356 最初のギュムギュムは大ちゃんのキュムキュムにかけてんだなww
強い風雨が頬を叩く。
実松一成は都市エリア中で一番高いビルの屋上にいた。
都市エリアに来てから実松はこのエリアの中で一番目立ちそうな場所を探した末、このビルに目をつけたのだ。
23しい風が吹き荒れる中、実松は手元の拡声器をじっと見つめる。
(やっぱ雨が止んでからにしようかな……いや、駄目だ!こんなゲームは一刻も早く打ち壊さなきゃ!
いつ止むか分からないものを待ってられるか!ゲームを壊すためにもみんなで集まらなきゃ!
みんなを集めることが出来るのは俺だけなんだ!俺が自分の役割を果たさなきゃいけないんだ!)
気分を落ち着けるために一回深呼吸をし、そして気合を入れる。
「ちょっと怖いけど、頑張らなくちゃな……よしっ」
実松は拡声器のスイッチを入れた。
相変わらず雨の音がうるさい。
小笠原道大は窓の外を睨みつけ、うんざりした表情を浮かべた。
(やれやれ…まあ例え雨が止んでもここを動くつもりはないがな)
小笠原が今いるのは、5階建てマンションの内の一室である。
ほとんどゴーストタウンに近いエリアのはずである割には意外と家具が揃っていて、
部屋の風景は小笠原に馴染み深い我が家を思い起こさせた。
(茉由や汐梨は俺が23頭になったらどうするかな?泣き出しちゃうかもしれないな…
そのときはうまく慰めてやってくれよ、美代子……)
愛しい家族に想いを馳せる小笠原。
今回のニューヨークへの招待も、家族のことを考えると本当は断りたかった。
しかし、律儀な性格の小笠原は折角の行けないわけではない招待を断る気にはなれなかったのである。
(やっぱ断ればよかったなあ…)
後悔に苛まれつつ、小笠原はテーブルの上の一枚の手紙に目を向ける
『小笠原君スマン!移籍して来てくれたばかりなのにこんな目に遭わせてしまって本当に申し訳ない!
山下さん達に直々に頼まれてどうしても断れなかったんだ。どうか許してくれ!
せめてものお詫びとして君の脱出条件をなるべく簡単にしておいたよ!
巨人以外のセ・リーグ5球団の選手の内の2人の選手の3分の2以上のHPを奪いさえすればいいんだ!
たった2人だけだ!きっと君なら楽にこなせるはずだよ!
それじゃあ木村君と実松君にもよろしく!
彼らと共にジャイアンツ愛を発揮して頑張ってくれ!』
(たった2人っていってもなあ…簡単そうに言うけど、結構大事だと思うが…
相手も抵抗するだろうし、第一こんな支給品じゃあどうにも出来ないだろ…)
手紙の横に置いてある自分の武器と補助アイテムに目を移す。
カッターナイフ。そして『もずくスープ』と印された紙パック。
紙パックの中ではまるでシーズン中蓄えていた自身の髭の様にもずくがうようよと蠢いている。
それを見て小笠原は大きな溜息をついた。
(天罰なのかな、これって…)
ふと小笠原の頭にそんな考えが過ぎる。
去年の暮れ、日本ハムに残留するか、それとも移籍するかで、小笠原は日本中の関心を集めていたものだった。
結局小笠原は、家族、そしてよりよい環境のために巨人を選んだ。
だが、折角日本一になったにもかかわらず新庄どころか小笠原にまで出て行かれるファンとしてはたまったものではない。
日本ハムファンの中には小笠原に失望したり、恨んだりしているファンも多いことだろう。
自分はファイターズを見捨てたも同然だ。彼らのことを考えると小笠原は胸が痛くなる。
(もし今からファイターズに復帰すると約束したらこのゲームを脱出できるのだとしたら俺はどうするかな…
そうしたらそれはそれで巨人ファンに申し訳ないしな…)
現実と向き合うのを嫌がって、しても仕方がない妄想に逃げ込む。
突然でかい声が響いてきたのはそんな時だった。
『皆さーん!どうか僕の話を聞いてくださーい!』
いきなり聞き覚えのある声が耳に飛び込んできたのに小笠原は驚愕した。
(この声は…実松!!??)
『皆さん、戦うのを止めてください!僕は都市エリアで一番高いビルの屋上にいます!
ここにみんなで集まりましょう!そしてこのゲームから23出す方法を一緒に考えましょう!』
(アイツ何やってんだ!?わざわざ自分から襲ってくださいって言ってるようなもんじゃないか…)
実松の余りにも無謀な行動に小笠原は混乱した。
『皆さん、考えてみてください!人が人を無理やり23にするなんて間違ってます!
他人を23にした結果、一体何が待っているというのでしょうか!
他人を丸23にしてしまった人間が本当に幸せになれるわけがないでしょう!
そこには23にされた者、そして、彼と親しい人々の悲しみが待ち受けているだけです!
こんなゲームを受け入れてしまったら、この中にいる29人がそのような23という悲劇を被るのです!
こんな理不尽なことがあっていい訳がないでしょう!例えこんなゲームでただ1人だけ生き残っても虚しいだけです!
戦いましょうよみんなで!このゲームの主催者連中と!』
どうやらかなり興奮してるらしい。戦うのか戦わないのかどっちなのか分かりにくいのは俺だけか?と小笠原は心中で突っ込む。
実松の必死の呼び掛けを、小笠原は半ば夢心地で聞いていた。
その時、不意に小さな雑音がした。それは足音のようであった。
どうやら誰かが実松のもとに駆けつけて来たらしい。実松の嬉しそうな声が聞こえてくる。
『あっ!来ました!来てくれましたよ!早速仲間が出来たようです!この調子で仲間を集められれば必ず主催者を打倒出来ると思います!
…来てくれて有難うございます!一緒に頑張りまsy…』
ドガッ
鈍い音が拡声器を通じて響いた。
ガシャン!バタッ!
機械が、そして人間が屋上に叩きつけられる音が続いた。
その音を聞いて小笠原はようやく我に返った。
(サネ!まさか襲われてるのか!いや、明らかに襲われてる!)
『…な、何をするんdグハッ!…や、やめてくdグエッ!』
聞こえてくるのは実松の哀願の声と、無機質な殴打音。
その不吉な合奏に小笠原の胸が騒ぐ。
(とにかく、助けにいかなきゃ!)
あわてて荷物をまとめ、玄関へ向かおうとする小笠原。
そのうち殴打音が微妙に音色を変えた。
ゴンッ
『グガアッ』
まるで猟師に仕留められた時のクマのような唸り声が流れた。小笠原は目を見開いた。
ゴンッ
再び鈍い音が響く。
そして、それきり実松の声が響くことは無かった。
聞こえるのは何者かの息遣い、そしてその者が立てているらしき物音のみ。
(サネ!!嘘だろ!!)
小笠原は体中を凍りつかせる。
そして、唐突に無情な旋律が鳴り響いてきた。
ジャキッ
ジャキッ
ジャキッ
ジャキジャキッ
ジャキジャキジャキッ!!!
(な…!!)
小笠原は聞いてしまった。実松の髪が刈られる、その瞬間を。
やがて鋏の音は止み、代わりに足音が聞こえだす。
足音はだんだん大きくなっていったが、突然ブツッという音がしてそれきり何も聞こえなくなる。
どうやら拡声器のスイッチが切られたらしい。
小笠原の顔が見る見るうちに蒼ざめていく。
(サネ…お前一体…)
小笠原は呆然とその場に立ち尽くすことしか出来なかった。
「ついに出ましたね…2人目の脱落者が…」
「ふふふ…しかも“餌”からは初の脱落者だ…ついに待ち望んでいた場面が来たってところかな、佐野君?」
山下と佐野は食い入るようにモニターを眺めていた。
2人はまるでこの世にこれ以上にない幸福を味わっているかの様な表情をしていた。
「…しかしそれにしても、なぜあんなものが支給品に入っていたんですか?うまくマーダーが来てくれていたから良かったものの、
もし万が一あのまま奴のいうようにみんなで団結してしまったらこちらは困るのでは…」
「ふっ。何言ってんだい佐野君。“餌”となる様な奴らならともかく、
我々のような立場の人間で、あのような呼び掛けに賛同する人間が本当に現れると思うかい?」
言われてみれば確かに現れるはずが無いと佐野は思った。
実際に、先ほどの実松の演説は佐野の癇に障っただけだったのだ。
「僕はね、見てみたかったんだよ。この企画の基になった映画のように、仲間を信じた挙句裏切られる選手を。
だからあえて仕込んだんだ。まあまさか本当にやってくれる人間が出てくるとは思わなかったけどね…」
まるで2323の小学一年生のように無邪気に笑う山下。その笑顔を見て、佐野はまた1つ山下という男の恐ろしさを垣間見た気がした。
「…それにしても実松はツキが無かったようですね。
あの口ぶりではどういう訳か生き残れるのは一人だけとは限らないということを知らなかったみたいです」
「ふふ、これからしようと思っていた放送を聴けば、彼もあんなことはしなかったかも知れないだろうにね。ついてないね。
…そんなことよりさ、まだ生き残っている方に注目しようよ」
山下がモニターを指差した先に映るのは、ロングヘアーのかつらを被った背番号5を背負う狂戦士。
「和田がついに覚醒しましたね。彼はいいMARUHAGE Destroyerになりそうですね」
「ふふふ、彼はもうすでに十分素晴らしいMARUHAGE Destroyerさ。これでさらに楽しみが増えるよ……」
楽しそうに髪を撫で付けながら、山下は放送の準備を始めた。
強風が吹き荒れる中、和田一浩は仁王立ちしていた。
狂気の篭った目で彼が見据えるのは、大量の髪の毛。
その髪の毛の本来の持ち主は、すでにこの世界に存在しない。
(俺が馬鹿だった…やっぱりあの場ですぐに襲い掛かるべきだったんだ!)
十字路で実松を見かけたときから、和田はずっと実松を尾行していた。
その結果、和田もこのビルの屋上付近までたどり着き、間近で実松の呼び掛けを聞いたのだった。
実松の起こした行動は和田がある程度予想していた通りだった。
だが、実松の口から23という言葉が連呼されていく刹那、不幸にも和田の理性は完全に崩壊してしまった。
(お前の言うとおりならすでに23てしまっている人間は一体どうすればいいというのだ…!)
実松の無遠慮な呼び掛けは和田にわずかに残っていた良心を奪い尽してしまったのだ。
和田はたまらず実松のもとへ駆け出した。
そして、和田を信じきった彼の横顔を、素手で殴り飛ばした。
戸惑う彼にのしかかり、さらに殴り続けた。
殴り、そして、頭を屋上の床に叩きつけてやったら、彼は呆気なく気絶した。
あとは、ただ奪い尽すだけだった。
和田は、フサウターのスイッチを入れてみた。表示されたHPは55900。
(1万900も増えたか…くく、やったぜ…)
不気味な23ら笑いを浮かべる和田。その顔には優しかった頃の面影はない。
(俺はもう誰も信じない…奪って奪って奪いまくって生き残ってやる…)
そして和田は荷物を持ち、ビルの階段を駆け下りていった。
(奪ってやる……うばってやる……ウバッテヤル……!)
眠れるライオンが、ついに目を覚ました。
【失格 実松一成 残り28名】
保管庫の避難所スレにあげられてたものを、代理投下いたしました。
ぉぉぉおおお、意外にシリアスになるものだな…
ネタのみでなく、ついに凄惨な死闘が始まった感じだ。
そういえば刺客が刈ったHPってどうなるの?
>>375 刺客の分は佐野さんにいくんじゃないの?
何となくだけど。
和田の基本HP45000かよ…
>>375 それだと刺客が活躍するほど資源が枯渇してしまうわけだが・・・
そこでシアトルかバンクーバーで餌追加ですよ。
長谷川が現役でないのが悔やまれるな
サネはここでも空振りか…
和田さんテラコワス
保管庫管理人です。
和田さんの恐さにガクブルしつつ
『目覚めた獅子』は『優しい世界』より若い数字で・・・
つまり、『優しい世界より』前に投稿された様に保管してもいいでしょうか?
時間軸のズレ等気にならないとか、ありのままで保管して欲しい場合は、
そのまま保管します。
>>375、378
1/10しか本物の毛にならないのではなく、ホントはもっとなるけど、それは選手達には反映されないっていう大ちゃん達の嘘とかどうだろう?
385 :
375:2007/03/18(日) 10:24:40 ID:9kHKf60L0
選手達には反映されないってことにすると、HPが足りなくなって最終的に10万以上残せるかどうか怪しくなるから、
>>380の通り適当なところで餌追加するのはどうだろう?
一人じゃ決められないけど。
>>378 ひちょりが刈った毛はボッシュートでよくね?
資源量が減る→生き残れる人数少なくなる→刈り合いが23しくなる
そういう意味での「刺客」という感じで。
しかしいろいろ設定出てくるなぁ、ネタバトなのにw
387 :
代打名無し@実況は実況板で:2007/03/18(日) 13:05:04 ID:RYDATytkO
時間がたつにつれて段々ともらえる毛の割合を増やしたらどうだろう
最後の20時間は奪った分だけ手に入るとかさ
刺客が刈った分はプールしといて、ボーナスタイムがあるとかどうだろう?
換算レートがHPの10%→30%になるとか。
>>388 それいいかもw
問題はひちょりがあんまり刈る気なさそうなところかな
386に賛成
エサをめぐってひちょりと2323のバトルとか出てきそうw
ロム組の意見は意見として、あとは書き手さんに任せるしかないな。
あんまりガチガチにルール決まっててもおもしろくないし。
保守
最初から一気に読んだけどテラワロスwww
「!?・・・何かいる。」
頭頂部が周囲の空気がピリピリと緊張感を帯びてきていることを感じ取り、福留はフサウターで周囲を伺う。
電子音と共に表示される光点には、「Bu 30 60000」と表示されている。
「バファローズ・・・誰だ?」
光点が中心のすぐソコにまで来ていることに気づき、福留は周囲の警戒を強める。
「!・・・誰だ?ソコにいるのはわかっている。」
後ろを振り向き、福留は後方30mほど離れた所にある岩に語りかける。
すると、岩陰に隠れていた男はのこのこと福留の前に歩み出てきた。
「ラロッカ・・・」
「フクドメサーン・・・」
「隙をみて俺を刈るつもりだったのか?悪いがコレの使い方はさっきまで弄っていて覚えた。奇襲は通用しないぞ。」
「ホ、ホワット?ワタシ、ココイル、ドウシテ?ヒコーキ、ドコ?」
ラロッカはまたしても何もわかっていない振りをして福留に近づく。
「アタマニヒトノコエヒビク・・・ジャパニーズ?・・・サッキモネ・・・」
「・・・」
「ジーザス・・・コレハキットアクムネ・・・」
ラロッカが両手で顔を覆い、嘆き震えだす。
その瞬間、福留は素早く後ろポケットからバリカンを取り出し、ラロッカの頭めがけてそのバリカンを繰り出す。
「っ!!!、Shit!」
間一髪で首を傾けてソレをかわしたラロッカは、驚いたような表情で福留を罵倒する。
「ナニスルーデスカ!?ワタシナニモシラナーイ!ヒドイヒト!」
福留はラロッカの罵倒を鼻で笑い、殺気のこもった目で睨みつける。
「つまらない芝居はやめてもらおう・・・もう3年以上も日本にいるオマエだ。ある程度の日本語ならわかるだろう。そして、コレほどまでの設備を用意して行われているゲームだ。オマエにだけ、英訳の同時放送がされていてもおかしくないくらいだ。」
福留の一喝にラロッカの口元が歪む。
「フフフ・・・流石ダナ、貴様はあの熱血馬鹿とは一味違うということカ。」
「ふん・・・誰のことかは知らないが、あれほど殺気を垂れ流しにしておいて何を言うか。」
「なるほどそうカ、貴様はすでにこのゲームに乗っていたというわけダナ。」
(そうなると不味イ・・・ミーはガムテープ、コイツはバリカン・・・コレは不利ダナ。)
(体格はほぼ同ジ・・・パワーはほぼ互角といった所カ、しかしコイツは確かスピードも・・・)
「どうした?来ないなら・・・行くぞ!」
福留はかがんだ体勢からラロッカに向けて一気に飛びかかる。
「!!!、速イ!」
福留の壮絶なスピードで繰り出されるバリカンを横のステップでかわすも、福留はすぐさま軌道修正してついてくる。
(!?、マズイ!)
2撃目がラロッカの左側頭部を襲う。ラロッカの耳元にバリバリと頭髪が刃に刈り取られる音が響く。
続けざまに福留は3撃目を横から繰り出し、ラロッカはしゃがんで回避を試みるも、頭頂部からはまたもザリザリと嫌な音を奏で、コレまで以上に頭頂部が空気に晒される感覚が鋭敏になる。
「Fuck!」
ラロッカは福留の腹部に前蹴りを繰りだし、何とか福留との距離をとる。
急いでフサウターでHPを確認すると、すでに14000本が福留の凶刃によって刈り取られていた。
「げほっ・・・くくく、コレが・・・この減った分の10%が現実で俺のものになるというのか。」
福留もラロッカのHPを確認すると、至福に満ちた表情で自分の頭を撫でている。
「クッ・・・(このままではマズイ、態勢を整える時間が欲シイ!)」
「オ・・・オ、オマエは何故毛を求めるンダ?」
「痴れた事を・・・同じ23であるオマエならわかるんじゃないか?」
何とか時間を稼ごうと、苦し紛れに語りかけるラロッカに対して、あっさりと福留は乗ってくる。
それは武器の違いや現在の状況からして、明らかに優位に立っていることからの余裕の表れでもあった。
「別に俺はそこまで毛が欲しいわけじゃナイ。目的はもっと高みにあるノサ。」
「ふん、どういうつもりかは知らないが・・・・・・なぁラロッカ、オマエは・・・その・・・結婚はしているのか?」
突然何を言い出すのかこの男は、と思ったが、態勢を整えたいラロッカは素直に応じる。
「してイル。俺はもう35歳だゾ。それがどうシタ?」
すると、福留はふと天を仰ぎ、遠い目流れるバーチャルの雲を見つめる。
「当然のように言うんだな・・・俺は今年三十路・・・・・・俺は・・・俺はっ・・・っはぁぁっ・・・っ!」
福留が何やら別の世界に旅立っているのを察知し、その隙にラロッカはガムテープグローブを作り出す。
「俺は・・・お、お嫁さんが・・・欲しぃっ・・・っ!」
そう呟くと、福留は目じりが熱くなり、涙目になっていた。
「ぅ・・・くっ・・・ふぐぅぅっ・・・」
「フ、福留?」
急いで右手にガムテープグローブを作り上げて襲い掛かろうとしていたラロッカだが、福留の異変に不意をつかれる。
「ぢぐじょぅ・・・お゛れば・・・ま゛いどじドラゴンズでは一番ヂョコ貰ってるんだぞ・・・なのに゛・・・送ってくれるだけで、寄っでぎてくれな゛いんだ・・・」
――ドメも可哀想にな。顔も頭もあんなんじゃ女も逃げるさ――
福留の心に深く突き刺さった棘。その棘は福留の繊細なハートにはあまりにも鋭く、そして冷たかった。
ラロッカの目の前には、つい先ほどまで自分の脅威であった恐るべき戦士は居らず、ソコには純真無垢な心を傷つけられた不憫な少年が立っていた。
「どうシタ、何故泣くんダ?」
「お、俺が23でちょっと2319だがら・・・おんな゛のコがよらない゛って・・・先輩がいうんだ・・・」
「どういうことダ?」
「俺、人よりぢょっどだげ顔が良ぐないじ・・・だがら、ファンに゛はただがれでもおがねもいっぱいかぜごうと・・・髪の毛もいっぱいな゛いとだめだじ・・・そうずれば・・・」
(何ということダ・・・言葉とハ、こうまで相手のハートを傷つけてしまうことがあるノカ・・・)
ラロッカはいたたまれない気持ちで一杯になった。あまりの不憫さに、彼だけは自分の標的から外してもいいのかも知れない。そう思い始めていた。
「・・・福留、髪の毛なんて関係ないヨ・・・オマエは素晴らしいアスリートじゃないカ。それは女のコに対する強烈なアピールポイントなんだヨ。」
「ぅぅぐぅっ・・・ひっ、ひっ・・・・・・ほんど?」
「あぁ本当だトモ、そんなオマエにヘアーが必要だと思うカ?」
「・・・あっだほうが・・・い゛い・・・」
「よく聞きなサイ福留、オマエはヘアーなんてなくても大丈夫ダ。ホラ、オマエはあんなに大きなホームランが打てるじゃないカ。」
「・・・ぐすっ、ずずっ・・・そうかな゛?」
「アァ。」
「ぐず・・・もっど・・・ホームラン40本打てばモテるかな゛?」
「モテるトモ。ホームランよりもその脚をアピールするともっといいゾ、アスリートの基本は脚だからナ!」
「じゃあ、30盗塁すればもっとモテるかな?」
「アァ、モテるヨ。打点も一杯稼がないとナ。チャンスに強い男の方がもっとモテるゾ。」
「そっか!じゃあ俺、150点くらい取るよ!俺、今よりもっともっと頑張るよ!」
「フフフ・・・そうダ!ドラゴンズはずーっと日本チャンピオンになってないらしいじゃなイカ。オマエの活躍でドラゴンズを歴史的な日本チャンピオンに導くんダ!」
「あああああ!そっかぁ!それでそれで、しかも9696になると名古屋中のギャルが入れ食いなんだね?」
「いや違ウ、9696ヘアーは関係ない。」
「え・・・?」
「いいカイ、9696ヘアーは関係ないんだゾ。あくまでアスリートとして超一流を目指すんダ。」
「・・・」
「だから、ヘアーにはもうこだわらるナ。それによく考えてみロ、例えオマエのヘアーが9696になったところでどうなるって言うんダ?」
「・・・どういうこと?」
「オマエは元々2319じゃないカ。」
「う・・・うん・・・」
「アジアの女のコの顔の趣味はよくわからないガ、俺が見たところオマエはけっこう2319ダ。」
「・・・うん・・・(だから今より一杯活躍して、それで9696になれば僕は生まれ変わるんじゃないの・・・?)」
「う〜んそうだナ・・・例えバ・・・ア、アイツダ!ムネ・・・ムネりん!ムネりんの顔は日本の女のコにモテモテなんだよナ。アイツとオマエじゃ明らかに顔が違うじゃないカ。」
「・・・ぅん、知ってる・・・(だから僕は9696になってすこしでも・・・)」
「だから髪の毛だけが増えたところデ、きっと今と何も変わらないヨ。デブがやせるのとはわけが違うんダ。」
「っ!!!???(9696になっても・・・・・・今と変わらない・・・?????????)」
「わかるだろウ?だからオマエはそんなことよりモ、より優秀な超一流のアスリートとしテ(ry」
(9696になっても・・・変わら・・・な・・・・・・い・・・・・・?)
「くそぅ、まだ追いつかないのか?」
その頃、三浦はひたすら走っていた。走り去ったラロッカを追って。
ラロッカの位置を探そうと必死にフサウターのボタンを色々押してはみたものの、三浦のフサウターは何故か時刻修正画面になってしまっていた。
「クソ!使えねぇな!」
舌打ちフサウターをバッグに仕舞い込む。すでに、ラロッカを追って30分あまりが経過していた。
周囲を注意深く見回しながら走っていると、前方で道が分岐している。
「どっちだ?」
土気のない硬い地面のせいか、足跡も残っておらず、ラロッカがどちらに行ったかを知らせる標は何一つ残ってはいなかった。
「駄目だ・・・あの時すぐにラッカルを追いかけるべきだった・・・」
頼みのフサウターは使えず、三浦は途方にくれるしかなかった。
ぉぉぉ…
「!!!」
人の雄叫びのような声が聞こえ、三浦は足を止める。
(何だ!?今の声は・・・まさかラッカルが誰かを!?)
「・・・こっちだ!そんなに遠くないっ!」
(何だ・・・とてつもなく嫌な予感が・・・胸騒ぎがする!)
声のした方へ三浦は再び走り出す。
「くそっ!頼む・・・間に合ってくれぇっ!」
―ラッカルを守りきる、そして、ラッカルには誰も刈らせやしない―
もう一度自らの誓いを胸に刻み込み、トレードマークのリーゼントで風を切り裂きながら三浦は駆けていった。
職人さん新作GJ!
駄目だ腹痛ぇwww
ラッカル何げに言ってる事ひでぇwww
ドメ可哀想だけどクソワロタww
>>393-397 職人さん超乙です!
ラッカル親切なようでヒドスwww
ドメも純真無垢な少年が「名古屋中のギャルが入れ食い」とかいうなよwww
あああ続きが気になって仕方ねえええ
>「オマエは元々2319じゃないカ。」
>「う・・・うん・・・」
wwwwwww
>「俺は・・・お、お嫁さんが・・・欲しぃっ・・・っ!」
全米が泣いた
こんな良スレ見逃してたなんて。
>>75-76 偶然重なった投稿が
ゲームに乗るドメと乗らない松中の
対比になってて、ドラマチック。
脳内で場面転換されて、より楽しめました。
404 :
代打名無し@実況は実況板で:2007/03/19(月) 12:20:10 ID:Hjpaz9a9O
2319連呼ワロタw
地下鉄の中で吹いたwww
職人さんたち乙です!
これからが楽しみだw
てかなぜ福留はケコーンしないのか(できないのか)謎だ。
自分は女だが、あんなに財力あれば喜んでケコーンしたいと思うんだが。
そんなに2319とか2323って嫌なもん?
ホモか結婚するのが勿体ないほど遊びまくってるかどっちかだろう
まあ後者だと思うが……
ドメは愛が重たいタイプっぽい。
福留はドアラの中の人と結婚したらいいんだよ(´・ω・`)
理想が高いんじゃない?
いくら23でも2319でもあれだけ稼いでれば
選びさえしなければすぐ結婚できるはず
縁とかタイミングとかもあるしな。
特に深い理由もなく、ズルズル独身生活が長引くパターンも多いよ。
今日からここは「福留の結婚を心配するスレ」になりました
山の頂上に、どこからか黒い雲がモクモクとわいてきている。一雨来るのかもしれない。
このバーチャル世界では、天気の変動も自由自在なのだろう。
身を隠すのにちょうど良さそうな洞窟を見つけ、川崎宗則(H52)は中を覗き込んだ。
「…誰か居ますか〜」
声をかけてみても中からは何の反応も無い。川崎は洞窟の中へ小石を投げ込んでみたが石が転がる音しか聞こえない。
意を決して中へと進んでみる。
入り口は狭いが中は四畳半くらいの空間が広がっていた。23暗い洞窟の中で、川崎はフサウターの光を頼りに荷物の確認を始めた。
まず手に触れたのは一通の手紙である。
『ムネへ。
俺かお前か和田かナギのうち誰か一人を出せという向こうさんの強い意向だったので、
年功序列でお前にした。悪く思うなよ。
まぁお前にとっても悪い話とちゃうやろ、お前も最近だいぶデコが後退してるみたいやからな。
さてお前のクリア条件やけども、とりあえずこの三年、POで苦杯を舐めさせられた西武とロッテと日ハムの選手の
HPをトータルで40000ほど刈ってこい。それでクリアや。必ず3球団ちゃんと刈れよ。
ほな頑張れよ。』
川崎はがっくりと肩を落とした。
(ひでぇー!!和巳さんのオニ!鬼畜!!年功序列なんて大ッ嫌いだばかやろー!!!!)
名は書かれていないが、こんな文章を書きそうな人間といえば、ホークス最恐と怖れられる選手会長しかいない。
条件達成できなければ、クリアどころか罰金を取られそうな勢いである。
しかし、クリア条件の達成は非常に困難であろう、と川崎は結論づけざるを得なかった。
川崎の支給武器は、ヘアムースとヘアワックスであったのだ。これでは毛を刈ることなど到底できはしない。
(ってゆーか西武とロッテと日ハムってなぁ…みんな2323な人ばっかりじゃん。トータルで40000も行くかぁ?
山崎さんはもう脱落したっていうし、賢介は同期だからなぁ…あ、まだ宏之さんがいるか…)
名簿とにらめっこしながら川崎がブツブツ呟いていると、
「誰かおるんか?」
入り口のほうから声がして、川崎はぎょっとして振り返った。
チチチ…と小さい音を立ててフサウターが反応する。画面には「YS6」という表示が現れた。
「み、宮本さんですか?」
「そういうお前はムネやな?」
フサウターというのはなかなか厄介な代物のようだ。これでは隠れる、ということができないではないか。
「ムネ、お前は…」
「え、あの、お、俺は、セリーグの人は攻撃する気無いです!」
「…セリーグの人は?」
「あ、いやその…」
「…まぁええわ、雨降りそうなんよ、中に入れてもらうけどええな?」
這うようにして宮本が洞窟の中に入ってくる。川崎は念のためヘアムースの缶を握り締めた。
いざとなったらこれを顔面にお見舞いしてやれば、逃げるくらいの時間は確保できるだろう。
「おお、結構広いな」
宮本が感嘆したような声をあげる。川崎は慌てて荷物を片付け、宮本が座るスペースを確保した。
洞窟の中で、向かい合って座る形になる。フサウターの光だけが23く辺りを照らしていた。
「……あの、宮本さんは…」
「俺か?俺はなぁ、武器がこれやねん」
カチ、という音とともに低いモーター音が洞窟内に反響する。
(バリカン!?)
思わず川崎はムースの蓋に手をかけたが、宮本はおもむろにそれを自らのアゴにあてた。
「え?」
呆気に取られた川崎を見て、宮本が笑った。
「はは、ヒゲ剃りやって、これ」
「な…っ、なんですかもう、ビックリさせないでくださいよ!」
「フェイクには使えるかもしらんけど、奪毛力はちょっとなぁ」
再びカチ、と音がして耳障りなモーター音が消えた。
「僕の武器なんてこれですよ」
川崎がムースの缶を見せると、宮本は心なしか目を輝かせた。
「お前コレで髪の毛ガッチリ固めとったらええんちゃうん」
「いえこれはボリュームを抑えるやつで、固めるタイプのじゃ…」
「え、ムースってそんな種類があんの!?」
「はぁ…あ、ちなみにこっちは毛先をねじって立てるタイプのやつで…」
「ほぉほぉ」
(な、何だこの食いつき…)
川崎が怪訝な眼を向けていると、それに気付いたのか宮本はひとつ咳払いをして、手元の電動シェーバーをポケットに押し込んだ。
「まぁ、その、なんだ。このままあの人らの言いなりになって毛の奪い合いするのもシャクやと思ってな。
このゲーム自体をなんとかできへんかと考えてるんやけど」
「どうするんですか?」
「とりあえず仲間を探そ思って。ムネはどうする?」
川崎は考えこんだ。
今の武器ではクリア条件を満たすことはできそうにない。
条件を満たすには誰かの武器を奪う必要があるだろうが、首尾よく武器を奪えたとして、
どこにいるか判らない3球団の選手を探し出して毛を刈る、なんてことができるだろうか?
それにこの世界から23出す際には、こちらの身体は無防備になる。どこかに隠したとしても、皆がフサウターを持っている限り、
さっきのように発見されてしまう恐れがある。
信用できる仲間がいるなら、それにこしたことは無い。
「僕も一緒に行きます」
「よし決まりや。そうと決まれば…」
宮本は参加者名簿を取り出して広げた。川崎もそれを覗き込む。
「とりあえず誰が信用できそうやと思う?俺は黒田とか、ガッツとか、三浦あたりええんちゃうかと思ってるんやけど」
「そうですね、僕はやっぱ、ま…」
松中さん、と言いかけて、川崎は口をつぐんだ。
ふと、ある記憶が脳裏に甦ったのだ。
あれは試合後に二人で居残りウエイトをして、帰るときのことだった。
川崎が風呂に行って戻ってみると、誰もいないロッカールームで松中が川崎のロッカーを何やら漁っていた。
何故か声をかけるのがためらわれて、川崎は物陰に隠れてその様子をこっそり見ていると、
松中は、川崎のロッカーに置いてあったヘアワックスをこっそり手にとり、慣れない手つきで髪に塗りたくっているではないか。
そんなに量つけなくたっていいんですよ、付けすぎで逆にベッタリしちゃってるじゃないですか!
川崎が心の中でそう叫んでいるのにも気付かず、松中は鏡を覗き込んではご満悦そうである。
見てはいけないものを見てしまった、と川崎は思った。
だから早く忘れなければ、今俺は何も見なかった…!と自分に言い聞かせ、きれいさっぱり忘れたつもりでいたのに、
なんでこんなときに思い出すんだ。
「ムネ?どうした?」
「あ…っと、ま、的場さんとかどうでしょうね!?あの人優しいですから!」
「的場か…。確かにあいつはいいキャラやったな。あれくらい突き抜けた奴なら信用できるかもな」
顎をさすりながら宮本は頷いた。
「じゃ、とりあえずそのあたりの奴らを探しに行ってみよ」
はい、と頷きながら、川崎は突如として沸き起こった胸騒ぎを振り払えずにいた…。
【残り28人】
通し番号が若干変ですけど気にしないでください…orz
松中www
しにゃ食いつき杉ワロタ
松中wwwwww想像して噴いたwwww
松中・・・w
職人さんGJです!
松中wwwwwwwww
笑いがとまりらんwwww腹筋がイタスwwwww
寝る前に見るんじゃなかったwwwwww
23しく後悔www眠れねぇwwwwwwwww
呼吸するのも苦しい。
肺さえも焼いてしまいそうな、暑さの中、もうどのぐらい歩いただろうか?
「ゼェ・・・・ハァ・・・・」
呼吸音が少しおかしい。
それでも、バーチャルを23け出し、機内に帰る事はできなかった。
「もう・・・・少し・・・・」
エリアの境界線はもう直ぐソコなのだ。
ザク・・・ザク・・・ザク・・・
『あと少し』
その気持だけが、今の福浦の足を動かしていた。
このエリアを23けた先が、なんのエリアかなど、考えたくなかった。
ザク・・・ザク・・・ザッ!!
「おわ!!!」
それは一瞬の事だった。
青と黄色。
2パターンだった世界の色が、突然に変化したのだ。
ついでに、地面の感触も、砂漠の柔らかいモノとは真逆の、固い感触。
思っても見ない感触の変化に、思わず体を引くと、重力に引っ張られ、
あれよあれよと言う間に、体が後ろへと倒れていった。
ザッ
転倒の衝撃に、目を瞑った福浦の体を、柔らかい砂が優しく受け止める。
「・・・・今の?」
体を起そうともせずに、転倒した体勢のまま、空中を見つめる。
先には無限とも思わせるほどの、砂丘の連なりしか見えない。
「・・・コレがエリアの境界線か?」
視線の先には、別に戦が引いてあるわけでも、目印が置いてあるわけでもない。
しかし、福浦がたった今、体験した事を基にすると、コレがエリアの境界線である。
「・・・・・」
ユックリと腰を持ち上げる。
何故か、心臓がドキドキと音を早める。
砂漠を行進していたせいではない。
「お?・・・・おぉ??」
ゆっくりと、実にゆっくりと、体を横から境界線に近づける。
まずは手だけ。
目では未だに手は砂漠に存在しているのだが、手から感じる感覚はは明らかに別の所のだった。
「手だけ涼しいなぁ」
福浦の顔はキラキラと輝いていた。
子供が新しい玩具を見つけた時の様な顔だった。
続いて、足だけ入れてみる。
ザッ
固い地面の感触が、福浦の脳に伝わる。
しかし、福浦の目には、砂を踏みしめる自分の足しか見えていない。
「妙な感覚だな」
不思議な現象に、ゾワゾワと背中の辺りが粟立つ。
「次はいよいよ・・・・」
ゴクリ。と唾を飲み込み、ジリジリと顔を境界線へ近づけていく
耳が涼しくなり、頬に風を感じ・・・・
まるで、ペンキで下の色を塗りつぶして行くかの様に、ドンドンと景色が変化していく。
それでも、体の半分しか、境界線を越えていない為。
砂漠の景色と、淡く物寂しい景色とが、ダブって見えていた。
ココは山岳エリアだろうか?
寒さが火照った福浦の体から、グングンと熱を奪っていく。
「スゥ・・・」
境界線が、体のほぼ真ん中に来た所で、深く息を吸ってみる。
吸った息は、ごく普通の空気だった。
熱くも寒くも無い。
「丁度真ん中だからか?」
首を傾げると、岩だらけの景色が割合を増す。
「つーか今、そっち側から見たら俺ってマヌケ?」
初めに手と足を入れた時の事を考えると、
どちらからみても、大の字で立っているマヌケな福浦が見えるだろう。
「だって・・・県境とかで、皆するだろ?体の半分は何県でーみたいな事!」
誰も見ていないのに、何故か大きな声で言い訳をしてしまう。
「そんな事、やってる場合じゃ無いでしょ」
福浦の言い訳が止まった隙に、スルリと別の声が聞こえてきた。
「!!!」
声のした方に、慌てて顔を向けると・・・・
「・・・・・ピッコロ?」
「ちがいますよ!森本ですってば、クリリン」
「いや、だって・・・・」
まるで、福浦の事を待っていたかの様に、少し離れた場所に立っている森本は、
肌が緑で、オデコからは触覚が生えていた。
その上、衣装まで漫画のソレと同じ物だった。
「折角バーチャルなんだから、オールスターの時みたいに不完全じゃなくて、
完全なピッコロさんになってみたくて」
どうですかと言わんばかりに、マントを翻している。
「・・・・・・・・・・」
何とも言えない沈黙。
「やっぱりダメかぁ・・・・・元に戻してください」
唇を尖らせて、拗ねた様に呟くと、一瞬の内に森本の格好が、
ファイターズのユニフォーム姿に変わる。
もちろん、肌も元の色に戻っている。
「・・・・・どういう事だ?」
森本は、姿を変えられるような道具でも持っているのだろうか?
フサウターも有りなら、ドラえ●んの未来道具も有りかもしれない、と考える。
「僕はね、運営側の人間なんですよ」
驚きに、目が見開かれる。
「え・・・?」
もしかしたら聞き間違えたのかと思い、尋ねるような視線を森本に向ける。
「僕は、運営者側の人間で、皆が毛を刈り合うように23まして回ってるんですよ」
聞き間違えのフリは許さないとばかりに、しっかりとした声で告げられる。
「どうして!?」
「面白そうだったからですよ・・・・まぁ、今の福浦さんも結構、面白いですけど」
クスクスと小刻みに肩を揺らして笑う。
「あ、いや・・・これは!!」
自分の馬鹿みたいな体制を気付かされ、慌てて半身を砂漠エリアから引っこ抜き、
取り繕う様に笑顔を浮かべながら、森本の正面に体を持っていく。
「言い訳なら、さっき聞きましたから」
福浦は森本と仲が言い訳ではない、むしろ殆ど何も知らないに等しい。
それでも、森本の浮かべる人懐っこい笑みは、シーズン中に何度か見たモノと同じ様に感じた。
「なぁ森本」
「僕は自らの意思で、運営側を選んだんです。
説得して仲間にするなんて無理です。そして、一介の求毛者が僕に勝つ事も無理です」
森本が手の平を差し出すと、空中から電動バリカンが現れ、森本の手の平に着地する。
「思いのままって訳か・・・・」
それもそうだ、このバーチャル世界は、運営者側が管理しているのだから・・・・。
「まぁ、あまりつまらなくならない程度にですけど、プログラムの関係も有りますし」
手に持った電動バリカンを放り投げてしまう。
地面に落ちる前に、消える電動バリカン。
「所で福浦さん、アナタはどうして自分のHPを確認しないんですか?」
福浦は、このゲームが始まってから、一度だってフサウターで自分のHPを見ていない。
それどころか、フサウター自体も殆ど出していなかった。
それは、福浦がこう言う電子機器が良く解らない事もあるのだが、
フサウターなどを使うと、まるで自分がゲームに乗るように感じてしまう事が一番の理由だった。
「・・・・恐いんですか?」
森本が無遠慮にコチラに近づいてくる。
「恐い?」
コチラの武器は蜂蜜。しかも、カバンの中である。
「自分のHPを知るのが・・・恐いんですよね?」
普通に会話するような距離まで、間を詰められる。
「教えてあげましょうか?福浦さんのHP」
逃げるのは無理だろう、アチラにはこの世界の神様が付いているのだ。
「知ればきっと、福浦さんもこのゲームに乗りたくなりますよ」
23なら誰も彼もが毛の亡者の様な森本の言い方が、福浦の癇に障った。
「福浦さんのヘヤポ・・・」
「俺は!このゲームには乗らない!!」
鋭い声が、森本を刺し抜く。
「俺は!皆を守る!!仲間を!必ずこのゲームを壊してみせる!」
興奮でみるみる顔が紅潮していく。
「俺は・・・・千葉ロッテマリーンズ所属のプロ野球選手だ!!!!!」
言葉尻の勢いのままに、福浦は走り出す。
いきなりの却走を避けられずに、鉄砲玉の様な福浦にぶつかり、尻餅をついてしまう。
森本を倒した事に気付いていたが、福浦はあまり早くない足で、必死に走り去った。
「・・・・・・」
尻餅をついて一人取り残された森本は、やれやれといった感じで、タメ息をついた。
「皆は、仲間は、ゲームに乗ってないとでも思ってるのかな?」
クスクスと、微かに肩を震わせて笑う。
【残り28人】
途中で増えましたorz
通し番号が・・・・
フクーラ………w
25000位とみた
乙です!
ピッコロひちょりw
福浦の髪を刈るのも難しそうだな…
あーこれ本当に面白いなあ。
選手の個性が楽しくデフォルメされてて…
また、悲しくないのがいいなあ。
黒田博樹(C15)は、オアシスで「どうやってこのゲームを止めるか」、その方法を考え続けていた。
ふと顔を上げたとき、砂漠の中に人間の姿を見つけた。
「!誰や!?」
急いで立ち上がってフサウターのスイッチを押すと、【C42 103000】の文字が表示された。
「長谷川・・・?」
「黒田さーーーん!」
長谷川もフサウターで確認するような仕草を見せた後、大声で呼びながらこちらに向かって走ってきた。
「はぁ、はぁ、やっと、見つかった。」
長谷川は、黒田のもとにたどり着くと、肩を弾ませた。
その様子からは、敵意は感じられなかった。
「やっとって・・・お前ずっと俺を捜してたんか?」
「はい、俺の、個別ルールは、黒田さんが、毛が増えた状態で、ゲームに勝つまで、護衛することです。」
「そうか、それじゃ結局お前は最後まで23られないんやな・・。
とりあえず、座って休め。」
長谷川の呼吸を落ち着かせるために、二人は木陰に並んで腰を下ろした。
しばらくそうしていたが、不意に強い風が吹いた。
そしてその風は、長谷川の前髪を持ち上げた。
何の気無くそれを見ていた黒田は、驚愕した。
「っ!・・・は、長谷川・・そのデコはっ・・・!!」
「う、ぅわぁ、ぅわあぁ・・・。」
長谷川は呻きながら頭を抱えてうずくまってしまった。
彼の頭は、後ろ毛の多さでHP10万以上を保ってはいたものの、生え際は23か9696かまさにギリギリのラインだった。
「どうしたんや!?お前そんなんやなかったやろ!誰にやられた?」
「ひ、東出に・・・。」
「そうか、あいつ・・・。」
「俺は、俺は自分が怖いです。」
長谷川はうずくまったまま語り始めた。その肩はガクガクと震えている。
「お、俺、無理なカラーリングやパーマをした後は、十分トリーメントしました。
日南キャンプの途中で、髪のためだけに広島に帰ることもしました。
自分で思いつく限りケアしていたわって、思いつく限りオシャレな髪型にしました。」
黒田は軽くムカついてきたが、漢気エースの名にかけて、我慢強く話を聞き続けた。
「俺はできる限りのことはしてきたつもりだったんです。
でも、そんな大切なものも、一瞬で7000も奪われてしまった・・・。
そんな兆候もなかったし、自分が23ることなんて考えもしなかったのに・・・。」
――髪をいじるだけで最高に幸せな気持ちになれた。
自分から離れていくなんて、想像もしていなかった。
髪がそこに生えてくれるのが、当然だと思っていたから――
「俺は、知ってしまったんです!
少しずつ23ていくことの恐怖を!!
23ていくことの悲しみ、苦しみを!!!
・・俺は・・・人の毛を・・・刈ってしまうかもしれない・・。」
震える声は、いつしか嗚咽に変わっていた。
「・・・これ、預かってもらえませんか?」
長谷川は、自分の武器であるペット用電動式バリカンを差し出した。
黒田は、そんな長谷川をじっと見つめていたが、おもむろに前髪をかきあげた。
「ところで俺の生え際を見てくれ。こいつをどう思う?」
「すごく・・・2323です・・・。」
「いや、これは23やない。これはデコや。
大丈夫や、長谷川。おまえのそれも、デコやで。」
「・・・は、はい。(いや、アンタのはどう見てもデコじゃねえだろ)」
「俺はこのゲームを止めようと思う。
他の選手の毛も、お前の毛も、救ってみせる。
だから安心しろ、それは持っとけ。」
「でも一応、」
「大丈夫やって。・・俺はお前を信じる。」
黒田は悟りを開いた高僧のような頭、いや、笑顔でそう言った。
「・・はい!俺も手伝います!」
俺はこの人に懸けよう、長谷川はそう思い、バリカンをバッグにしまうことにした。
その途中、偶然バリカンの金具部分に自分の生え際が映った。
『奪われたものは奪い返してください。』
突然、東出が残した言葉と共に、邪悪な考えが頭をよぎった。
(何考えてんだよ、俺。黒田さんについてくって決めたばっかりだろ。)
長谷川はそんな考えを振り払うように、バリカンをバッグの一番奥深くに沈めた。
【残り28人】
>「ところで俺の生え際を見てくれ。こいつをどう思う?」
「すごく・・・2323です・・・。」
某糞味噌が思い浮かんだのは俺だけではあるまいwwwwwwwWWwwww
境界線って怖いな・・・・・・ww
ひちょりが福浦に向かって、サラッと
クリリンって呼んでるのにワロタw
保守
多毛に定評のある小坂が餌にされてないのは
職人各氏の愛ゆえのようか気がするが、いかがか。
小坂は毛ネタよりプチネタのほうがメジャーだからか?
ネタ強力度
2323ネタ>>>>>>超えられない壁>>>>>>チビネタ
プチネタ>多毛ネタ
なんでこのスレは休みになると過疎るんだよww
刈った髪の毛を自分の物にできるってあるけど、どのくらいの長さまで刈ればいいんだ?
根元から、ごっそりと
そういえば、バーチャル世界では刈ったり切ったりした毛は伸びないのか?
まあ72時間しかないんだけど。
バリカン類の性能にもよるだろうけど、一分刈りくらい?
「49000…4万9千…よんまんきゅうせん………か、やっぱり」
ふーっ、と盛大な溜息を付いて、松中信彦(H3)は目を閉じ、弄りまわしていたフサウターを地面に置いた。
散々逆さにしてみたりボタンでモードを切り替えたり振ってみたりしたその機械は、非情にも表示される松中のHPを1ポイントたりとも変化させることは無かった。
23な作業に飽いて、松中は虚ろな目で視線を宙にさ迷わす。
「そんなに減ってたのか…自毛」
考えてみれば、月イチお忍びで通う23ランスヘア○ポートでの注文はいつも、「不自然にならないように減った分だけ植えてくれ」。
実際に自前の毛が何本かとは問うことは無く、気が付けば本人の自覚以上に松中の頭髪は人工毛へとすりかわっていたのだ。
頭上で名も知れぬ極彩色の鳥がギャアと鳴く。
暑い。ヘルメットの間から、ぬらぬらとナメクジが這うようにゆっくりと汗が額を滴り落ちる。
じっとりと湯気が立ちそうなほど湿気に満ちた高温のジャングルを逃げ場に選んだ事を松中は後悔し始めていた。
(まあ、何処に行ってもそれなりのリスクと不都合はあるわけだし…)
高山は酸素が23そうなので連れが高山病を起こす恐れがある。
サバンナは乾燥した風が頭皮から潤いを奪いそうで避けたい。
南極と砂漠は言わずもがな。
どれかと言えばまだ快適と言える都市部を離れざるを得なかったのは、先ほど耳にした放送が原因だった。
放送といっても運営側のそれではなく、愚かな『餌』の自殺行為と、その最期を図らずも拡声器が実況した音。
2323と連呼して松中の神経を思う存分逆撫でしたジャイアンツの捕手の声は、何者かの手で断末魔の鋏音へと取って代わられていった。
実松を襲ったMARUHAGE Destroyerを、松中はシンパシーを感じこそすれ責める気にはなれなかった。
もしその場に居たのが松中であれば、恐らく怒りで理性の飛んだ人間の雄叫びと、実松の髪が素手で毟り取られる音を拡声器は実況したに違いない。
だが、その思いとは別に、完全に狩る気のジャック・ザ・リッパーが確実にうろついているエリアに、怪我人を抱えて長居する気にはなれず、
こうして場所を移動することになった次第である。
側の木の下のしっとりした緑の苔が作る布団の上に横たわる多村仁(H6)を見やる。
頚椎損傷のダメージは大きいのか、1時間近く経った現在も意識は回復しない。
ただ、呼吸は規則正しくなって来ているし、顔色も蒼白から通常に戻りつつある。復活も遠くないだろう。
本人の話だと、23でない者達にはそれぞれ課題が与えられ、多村の場合は48時間に10回致命傷を負わなければいち早くクリアできるらしい。
それまではどうにか守ってやらねば、と心に誓いつつも松中の視線はついついあらぬ所へ飛ぶ。
フサウター越しの23青い視界には、H6の文字と『HP:101000』の数字が浮かび出ていた。
(課題に失敗した所でこいつには充分なアドバンテージがあるじゃないか…他人の毛を刈る必要が無いという…)
ついさっき、唐突に『ルール追加』が全員に連絡された。
タイムリミット経過後に10万HPを保っていた場合にも生還が可能なのだという。
(逆に言えば10万以下の人間は問答無用で2323の刑という訳か)
ふーっ、と松中は再び溜息を付く。
生き残りたければ問答無用で他人の毛を奪い取らなくてはならない自分と、ただ身を守るだけで良い多村。
2人の間には厳然たる格差があるのだ。『持つ者』と『持たざる者』の差が――。
ごくり。と松中の喉が鳴る。
(101000…つまり1000本くらいは貰っても、こいつは困ら…いやいや何考えているんだ俺は!そう言う問題じゃないだろ)
さっきから何度こね回したか解らない自問自答を放り投げ、気を紛らわすために松中はバックから自分の支給武器を取り出した。
電動式の、鼻の穴に突っ込む円筒タイプの鼻毛カッター。
特に珍しいものでも無いのだが、暇にあかせてじっくりと手にとって眺めてみる。
(一応動くか確かめるか…)
シュイーンと軽い電動音の後、松中の手のひらに鼻毛がパラパラと落ちる。
(結構伸びてたな……鼻毛は順調に生育するのに…)
背を丸め、手のひらの上の鼻毛を見つめる横顔は、演歌の歌詞でもひとつ書き上がりそうなほど23の哀愁に満ちていた。
――植えれども植えれども 我が頭皮楽にならざり ぢっと手を見る。
生涯赤貧で有名な歌人の歌が、妙な改変を加えられて松中の脳裏をよぎる。
感傷的な気分になり、続けて詩が口を付いた。
「我泣き濡れて髪とたわむる…っていうのもあったよな、確か」
――取り合えず、その間違いを正す人間はその場にはいなかった…はずだった。
「今の歌ちょっと違うんじゃない?」
「っ!!!」
突然濃緑の茂みがガサガサと動き、その向こうから人影が現れるまでに、松中はヘルメットの顎ストラップを確かめながら身構える。
(鼻毛に気を取られている内に接近されたか――!)
フサウターを確かめる間も無く。
ビビットカラーの多いジャングルの中ですら際立つ赤いユニホームを身に纏い、ゆっくりと姿を見せたのは、緒方孝市(C9)だった。
【残り28人】
緒方(*´Д`)'`ァ'`ァ
緒方たまらんな
前身のプチ23バトの緒方も最高だった
おとなしく刈られてくれそうもない選手ばかりだな
サネは今頃ヤマケンに慰められてるんだろうかw
しかしヤマケンは23だったがサネは9696だからなぁ・・・
前の23バトでは緒方は黒田にFAを放棄しての残留を迫ってたんだよなw
黒田は残留して緒方から少し髪をもらっただろうか
スマンわろたw
これはひそかに好きだった秋の風物詩スレの流れを汲んでいるの?
だとしたらGJ!!
春はあけぼのの改変が大好きでした…
>>456 自分も思った。入り浸ってたなあ、あのスレ。
職人さんのクオリティ高杉。敬礼
誰かログ持ってる人、春はあけぼのの改変貼ってほしす
春は多村…だった気が…
背骨のたなびきたる、だっけ
今の松中多村ペアにピターリなんだがw
春は、多村。やうやう薄くなりゆく軟骨 少し治りてまた再発したる腰痛の細く長びきたる。
夏は、川上。8月の頃はさらなり。9月もなほ。白星の多く飛び去りたる。
また、本塁打の浜中鳥谷など、ほのかに連なりて飛ばし行くもをかし。福川など打つもをかし。
秋は、松中。斉藤打たれて、頂点いと遠くなりたるに、
鷹のベンチにおるとて、2000,2004、2005,2006など、呆然とするさへあはれなり。
まいて四球などの選びたるがいと得意げに見ゆるは、いとをかし。
力尽き果てて、グランドで正座など、はたいふべきにあらず。
冬は、福留。優勝したるはいふべきにもあらず。
球団会計のいと赤きも、またさらでも、いと懐寒きに、
年俸増を当てにして、購入予定のメルセデスもて臨むも、いとつきづきし。
翌年になりて、ぬるくゆるびもていけば、キャンプの費用も、自費参加になりて、わろし。
貼ってから気が付いたが、全員23バト参加者だww
ちょwwwwww
>まいて四球などの選びたるがいと得意げに見ゆるは、いとをかし。
とか
>翌年になりて、ぬるくゆるびもていけば、キャンプの費用も、自費参加になりて、わろし。
とか、作ったやつの才能凄いww
>年俸増を当てにして、購入予定のメルセデスもて臨むも、いとつきづきし。
おいwwwwwww
凄いよ、これ考えた職人ネ申w
ここはまさに髪職人のつくる髪スレだな
これってものすごい才能じゃ…
関係ないけど吉野家コピペの古代文バージョン思い出したw
>>459 ちょwww
インフルエンザで咳止まんねーんだから
あんまり笑わせてくれるなwwwww
最初から通し読みさせてもらったけどすげえ名作www
K久保とM中出張乙wwwwww
とある、場所にある、くたびれた屋台。
薄汚れた暖簾を潜って、ヒゲ面の中年が姿を現す。
「いらっしゃい、ご注文は?」
情けない表情をしてはいるが、それなりのイケメンの店主が男を出迎えた。
「・・・・・ドラム缶を一つ」
席には座らずに立ったまま、小さく呟く。
その小さな呟きを聞いた店主は、コチラから見ても解るぐらい、一気に顔面が白んだ。
「すっすっすっすっ直ぐに買ってきまぁすぅぅぅぅぅぅ!!!!」
おかもちを引っつかみ、凄い速さで夜の横浜港に消えていく。
クツクツと煮立つスープ鍋を残して。
「古木は出前に行ったようですね」
古木が居なくなったタイミングを見計らうように・・・
いや、古木が出て行くように、仕向けたのは彼だろう。
何せ、『ドラム缶』のキーワードを指定したのは彼自身なのだから。
「それで、話しって何ですか、牛島さん」
「座るぐらいしたらどうですか、小宮山君」
物腰は柔らかく、声も落ち着いている。
しかし、小宮山を見上げた目だけは恐ろしいぐらいに据わっていた。
「行方不明とはどういう事ですか?」
牛島の肝の据わった目に、屈するように、ボロイ屋台の椅子に座る。
「解っている事は少ないです。ただ・・・プロ野球選手が数人、行方をくらましてます。
もちろん、あなたのチームメイト達も」
この時期は自分も含め各選手、それぞれのトレーニングをしており、連絡を取る事は少ない。
だから、チームメイトの現状を全て把握している訳ではないが、それでも、行方不明とは・・・
「アナタの所は、メジャーの練習体験で2人、アメリカに行っているはずですね?」
ピクリ。と小宮山の眉が動いた。
小宮山自身も、メジャーの件では疑問が残る所があったのだ。
「ロッテからは、久保と・・・」
久保はわかる。
去年、2年目のジンクスを破ることが出来ず、不調であったし、彼はこれからの人材である。
その彼に、より良い経験をさせる事は解る。
しかし・・・・
「福浦だ」
何故、福浦?
練習体験の話を聞いた時から、小宮山は心の何処かで、引っ掛かりを感じていた。
何故わざわざ福浦を選んだのかが、解らない・・・・
もっと、行かしてみたい選手は居るだろう。
更なる成長を望む選手や、不調を抜けて欲しい選手。
彼らを差し置いて、レギュラーでコンスタントに成績も残している、32歳の福浦を、
自主トレの時期に海外へ行かす理由が。
「他の球団も、メジャー練習に選手を派遣しています。
ご存知ですよね?」
そんな事、言っていた様な気はする。
何せ、派遣選手は球団が勝手に決めた上に、
派遣選手にしか話しを持ちかけてない為、情報が少ないのだ。
かく言う小宮山も、派遣を断った宏之から話しを聞いていなければ、
今回の件について、知らないままだったかもしれない。
「話だけは聞いています。細かい事は知りませんが」
フム・・。
少し俯き加減で、何処を見るのでもなく考え込む。
「わた・・・・ベイスターズからは三浦と川村が行っています」
『私の所からは』
思わず出かかけた言葉を押し戻す。
自分はもうベイスターズの監督ではない。
(まぁだからこそこの様な事態に気付けたんですがね)
きっと今も監督だったなら、もっと巧妙に隠されて、騙されたままだったかもしれない。
"元監督"だったからこそ、今回の異変に気づく事ができた。
その皮肉さに思わず笑みが出てしまった。
「・・・・牛島さん?」
牛島自身は運命の皮肉とやらを嘲笑しただけだったのだが、
ソレを見ていた小宮山には、体を硬直させ、声を震わせるだけの、怒気を感じさせた。
「なんでもないですよ・・・・。
私は今回の派遣に妙な物を感じてね、独自に調べたんですよ。
そうしたら、海外に行ったはずの三浦・川村・多村、三人の消息が途絶えていたんですよ。
更に調べると、海外派遣の件は嘘と言う事が解りました」
落ち着き払った声。
しかし、今の牛島に『元部下が居なくなったのに落ち着いてますね』なんて、言う者は居ないだろう。
一見、落ち着いている様に見えても、牛島の纏うオーラのザワつきに、
その考えは直ぐに消えていくだろう。
よっぽど空気が読めない者でない限り・・・・。
「あえて、調べ先は聞きませんが・・・・・どうして、異変を感じたんですか?」
「・・・・派遣する選手を選ぶのに、相談が無かったんですよ。
引継ぎは済ませてるとはいえ、前監督に相談も無いのが癪でね?
アラは無いかと探ってみたら、ある事実が出てきたんですよ」
探る為に使ったコネクションについては、一切触れないほうが身の為だろう。
「この派遣の殆どは部外者禁になっているんですよ。
部外者って誰の事でしょうね」
怪しげな笑みを浮かべる牛島は、脈略も無く立ち上がり、腕時計を見た。
「もう、そろそろ古木君が帰ってくる頃です。
騒がしくなる前に、私は行きます」
話すだけ話して、小宮山には何も振らずに、牛島は歩き出す。
「待ってください!そんな事を俺に聞かせて、俺にどうしろと?
それに、牛島さんの手に入れた情報を100%信じていい根拠は?」
闇と光。
その丁度中間に牛島は立っていた。小宮山に背を向けたまま。
「強制では無いと言ったでしょう。
私の言っている事で危機感を感じないというならそれでもイイですよ。
ただ、小宮山君が居れば、私も大変助かるというだけですから」
振り向き、小宮山を一瞥した。
「もし危機感を少しでも感じたのなら、ココに書いてある場所へ来てください」
手渡されたのは、解説者となった牛島の名詞。
「詳しい事はココで進めるつもりです」
名詞をひっくり返すと、都内の住所と、8桁の数字の羅列が並んでいた。
「それでは、暗闇の城で待ってますよ小宮山君」
ユックリ、ユックリと闇と同化していく牛島の背中を、小宮山はただボーっと見つめていた。
思考は既に遠く深く沈んでいた。
「お待たせしました!ドラム缶です。
い、一時間以内に持ってきましたよ」
必死にドラム缶を探してきた店主の声が、小宮山に届く事はなかった。
ちょwwww古木wwwwww
本当他ネタスレがつまってるなぁww
474 :
769:2007/03/24(土) 09:54:15 ID:xPT1xj0L0
名詞ではなく名刺ですね・・・
くみてふとラーメン屋キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!
バイトのバネ君は?
ラーメンFM砲wwwwww
先生!ヤマケンが忘れられてます…
どれだけの時間、うなだれていたのか。ぽつ、ぽつ、雨の降り始める音を聞き、
川上は、がば、と体を起こした。確かこの雨は酸性雨……帽子に雨水がしみこむ前に、
酸が頭皮に触れる前に、屋根のあるところへ避難しなければ!
荷物を引っつかんで視界をめぐらすと、近くのビルから飛び出ているひさしが目にとまった。
光の速さで突っ走り、ひさしの下に駆け込んで、ほっと息をつく。
慎重に帽子に触れてみたが、ほとんど雨粒に濡れた様子はないようだった。
これなら、酸性雨の害は髪の毛には及ばないだろう……
川上は深呼吸をして、冷たい空気を胸いっぱいに吸い込んだ。
心は落ち着きを取り戻しつつある。
未来のことで気をもむくらいなら、毛根をもんだほうがまだ生産性があるだろう。
大豊の写真をもう一度見た。微笑んでいる。そうだ、大豊は自分よりもっと2323なのに、
カメラの前に頭皮をさらけ出し、あまつさえ輝かせてまでいるではないか。
なんという勇気。なんという漢気であろうか。
そう思うと、かの頭部に反射する光は後光のようにさえ見えてくる。
後光。考えてみれば、神に近い存在たちは、必ず後光とともに描かれる。
つまり……彼らもまた2323だったということではないか!
おおおお、と川上は己の発見に歓喜した。
そうッス、2323だって悪いことばかりじゃないッスよ!
川上は目と額を、特に額を輝かせて得意のガッツポーズを決めた。
しばし、ビルの窓ガラスを鏡代わりに、自分なりのカッコいいガッツポーズを決めることに没頭する。
考えつく限りのポーズを決め終わると、ようやく川上は満足のため息をついた。
きらり、その広々とした額に汗が光る。
「ふう、いい汗かいたッス」
でもやっぱり、周りにチームメイトがいたほうがいいッスね……
ん? チームメイト……ッス?
川上ははっとなった。自分のことばかり考えていたが、この「男の戰い」
(川上は、ゲームをそう呼ぶことにした)
には、同じドラゴンズの選手が二人も巻き込まれていたのだった。
福留と石井。
彼らはどうしただろうか?
川上は写真を、そっと、イコンを扱うようにうやうやしく、
デイバッグにしまいながら考えてみた。
性格から考えて、福留はたぶんゲームに乗ってしまうだろう。
まあ孝介はしかたないッス。俺なんかとは23の進行度が違うッス。
つむじがつむじと呼べる範囲を超えてるッス。
あと、俺がやめろって言っても絶対聞かないッス。
モテるためには髪の毛が必要なんです! とか言って刈ってくるに違いないッス。
喪男なんだから今さら髪くらいどうでもいいことじゃないスか。
そのくせバレンタインのチョコは俺より多かったッス。生意気ッス。
絶対、あいつより先に毒男を卒業してやるッス。
べ、別に気になんかしてないッスからね! 勘違いしないでくれッス!
……それより問題は石井である。
「サイレントK」。生まれつき聴力が極端に低いチームメイト。
補聴器はつけているが、それでも今ごろ苦労しているのではないか。
川上も、かつて突発性の難聴に苦しめられたことがある。
だからほんの少しなら、石井の大変さを理解できるつもりだ。
この上、さらに髪の毛まで奪われるのはさすがに不憫すぎる。
何とか探し出せないだろうか? 止まない雨を見つめながら川上は考えた。
そうだ、フサウターにレーダーのような機能があるかもしれない。
機械を耳からはずし、川上は改めてじっくりと眺めた。
「ええと、このボタンが……自分のHP確認ッスよね……こっちは……」
『皆さーん!』
「うわぁッス!」
突然の大声に、川上はフサウターを落としそうになった。
「な、な、なんスか?」
『どうか僕の話を聞いてくださーい!』
一瞬宙に舞った小さな機械をどうにかキャッチすると、あわてて周囲を見回す。
が、人影はない。
遠くから拡声器か何かを使って叫んでいるのかもしれない。
しかしこの雨だ、離れた人間の声など雨音にかき消されてしまうのでは? 一瞬そう思ったが、
考えてみればここはバーチャル世界。声が聞こえるよう措置をほどこすくらい簡単なことだろう。
バクバク動いている心臓を胸の上から押さえ、川上は声の聞こえてくる方角を見た。
だが、雨とスモッグで視界が悪く、何も見えない。ただ声だけがはっきりと聞こえてくる。
『皆さん、戦うのを止めてください!』
戦ってないッス! ビックリさせるなッス。毛根ちぢみあがったッス。
思わず心の中で、見えない声の主に毒づく。
もう少しでフサウターを落とすところだった。
落下の衝撃で壊れでもしたら、どうなっていたか。
いや、それよりショックで髪の毛が23ていないだろうか。
髪の毛一本は血の一本。23た髪は戻ってきはしないというのに。
481 :
雨の中へ(4/5):2007/03/24(土) 19:33:43 ID:JCOMqdUH0
――だが憤りは、すぐに川上の心から消えた。
呼びかけている者……実松の演説に感動したから、では、ない。
演説自体はまったくの空振りだった。しかしその直後。
ドガッ、ガシャン。
ジャキッジャキッジャキッジャキジャキッ。
ブツッ。
拡声器のスイッチが切られ、物音がしなくなるまで、
川上は身動きもとらずに、一連の出来事を「聞いて」いた。
じっとりとした汗が頭ににじんでくる。
ほとんど無意識のうちに帽子を取って頭皮を扇ぎながら、川上は眉を寄せた。
何が起こったのかは、推測するまでもない。
見事なものだった。実松は今ごろ23ッ23になっているだろう。
一体、誰だ。あの冷徹ぶりは外道、いや毛道とさえ言える。思い出しただけで身震いしそうだ。
もし今の自分が、この「刈りうど」に出会ったら、おそらく……
負ける。自分と奴では気迫が違いすぎる。ぎゅっと両手を握りしめた。
恐るべき毛の探求者が、この戦いに名乗りを上げてしまったのだ。
となるとやはり、石井のことが気にかかる。先ほどの放送がどれくらいの範囲に流れたのかは
知るよしもないが、たとえ全エリアに聞こえていても、石井にだけは聞こえないだろう。
もう、刈る気になっている人物がいる。それを知らないでいるのは危険だ。
川上は帽子とフサウターを装着しなおし、デイバッグを背負った。
カミソリは一応、ベルトに挟んでおくことにする。
アテはないが、探してみたいと思った。
気にしながらじっとしているより、行動したかった。
髪の毛だって、どんなに気にしていても、何も行動しないでいたら23てゆくばかり
ではないか。川上の場合は行動しても23てゆくのだが。
しかし、先ほどの毛に飢えた23タカは、まだ近くにいやしないだろうか。
それに眼前には酸性の雨が降り注いでいる。
ああ、と川上は目を閉じた。
写真の大豊の姿をまぶたの裏に思い描く。あの輝かしい頭部を。それをさらけ出す勇気を。
大豊さん、俺に、大豊さんのような勇気を、漢気をくださいッス。
七色に乱反射する光の中、ディスコの天井から頭を出した大豊が、
力強くうなづいてくれた気がした。
その頭から伸びる光の条は、23暗い目の前を照らしてくれる。
ひとつ、ウッス、とつぶやくと、川上は雨の中に一歩、歩を進めた。
大豊が23をさらけ出しているのは、単にカツラがバレちゃったからに過ぎないのだが、
川上は知らない。
知らないほうが幸せなことは世の中に色々とあるものだ。
【残り28人】
誤ってあげてしまいました……ごめんなさい。
スゴいw
芸が細かいw
どこから突っ込んでいいのやらwww
毛道www
>>469-472 古木www
そしてくみてふの後輩コミーキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!
>>477 ヤマケンは別の口実で連れて来られたとかは駄目かな?
まだ故障が治りきってないし、アメリカの最新医療を受ける、とか。
>>478-482 ネタ多すぎwww
素晴らしいwww
「刈りうど」ってw
「刈りうど」のところで爆笑しますた
ネタに満ち溢れたこのバト面白すぎる
ケンシンとくみてふバロスw
ヤバイ笑い止まらねーwwww
毛道のところで「まさに外道」の画像が浮かんで
コーラ吹いたwwwwww
毛道
刈りうど
喪男
毒男
どこからつっこめばいいのだwwwwwwwwww物語中にさりげなく語彙が使われてるのが素晴らしいwww
刈りうどwwwwwwwwwwwww
>七色に乱反射する光の中、ディスコの天井から頭を出した大豊が、
>力強くうなづいてくれた気がした。
想像したら23ワロタwww
川村丈夫(YB16)は落ち着いていた。
「フサウター」で自分のHPが70000だという現実を知ったときは小一時間取り乱したが、
今は落ち着いていた。落ち着き払っていた。
ここは都市エリアであろうか。今のところフサウターに反応はないし、焦る必要はない。
それより、気になったのは他の参加者のことだった。
川村も今年でプロ11年目。プロを11年もやっていると、△△は最近育毛剤をリ○ップから
アデノゲ○に替えたらしい、錦糸町のアデ○ンスから出てくる××を見た、
などという球界の23い人情報にも自然と詳しくなってくる。
だから、このゲームにどんな選手が参加させられているかは2っ3らとではあるが想像がつく。
和田、福留、松中、今岡、宮本さん、福浦……
川村はふと、松中、今岡、福留という三人の23具合を思い浮かべていて、
松中、今岡、福留と同じチームでプレーした、夏の日を思い出す。
1996年。4人はアトランタオリンピック野球日本代表チームの一員だった。
川村丈夫24歳、松中信彦22歳、今岡誠21歳、福留孝介19歳。
あの頃、まさか自分達の髪が23くなるなんて、誰が考えていただろうか。
あの頃は、髪の事なんて気にせず、毎日風呂上りに鏡の前で生え際の後退状況を確認したりせずに、
野球のことだけを考え、野球に打ち込んでいられた。金メダルだけを目指していられた。
結果、決勝では松中の同点満塁ホームランもむなしくキューバに負けてしまったが、
それでも銀メダルである。悔しかったが、立派な成績だと思う。
川村の思考は飛躍する。夏のアトランタでの戦いは、毛髪に多大なる負担を強いる23しいものだった。
だとすると、これ(23)が銀メダルの代償だというのか!
いや、代表チームには谷、井口、三澤といった選手も参加していたが、
彼らはあれから10年たっても23てはいない。特に、井口などの髪型は、
今もあの頃と同じ、堂々たるセンター分けである。川村も昔はセンター分けだった。
だとすると、毛の髪、いや神はわれらを見放したのだ。
井口、谷、三澤と俺たちアトランタ23カルテットを分けたたものは何だったのか。川村は考え込んだ。
しかし、当然いくら考えてもそんな下らない問題の答えは出るわけなく、
とりあえずこのゲームに参加するしかない、という方向に川村の心は固まっていった。
自分のHPが70000だというなら、他の参加者、たとえば福浦などのHPは50000もないであろう。
自分(の生え際)は参加者の中でも比較的勝利に近い位置にあるはずだ。
気を取り直し、カバンの中から取り出した補助アイテムという紙の貼られた青い袋を開けると、
出てきたのはテープレコーダーだった。
カセットが入っていたので、再生ボタンを押すと、聞こえてきたのは山下の声だった。
「やあ、川村くん!キミには元監督のよしみで、僕から特別にメッセージを送るよ!
ちゃんと最後まで聞いて、メッセージを23みにして頑張ってね!」
しばらくの間の後、聞き覚えのある音楽が流れてくる。
中学生のとき、合唱コンク−ルで歌った、確か『あの素晴らしい愛をもう一度』という曲だ。
歌っているのは……山下ではないか。あの23め!
山下大輔55歳ロン毛。心を込めて歌います。
『あの素晴らしい髪をもう一度』
髪を賭けると 誓った日から
すてきな前髪 残してきたのに
あの時 同じ髪を見て
欲しいと言った二人の
髪と髪を 今はもう奪い合い
あの素晴らしい髪をもう一度
あの素晴らしい髪をもう一度
23い奴の髪を 刈った後も
あんまり変わって いないけれど
あの時 ずっと餌を
追いかけていった二人の
髪と髪が 今はもう少ない
あの素晴らしい髪をもう一度
あの素晴らしい髪をもう一度
広い頭皮に ぽつんと一本
涙が知らずに あふれてくるのさ
あの時 風が流れても
なびかない刈られた二人の
髪と髪が 今はもうほぼない
あの素晴らしい髪をもう一度
あの素晴らしい髪をもう一度
「ふざけるなッ!何が特別なメッセージだッ!歌いたかっただけじゃないのか!」
律儀にもフルコーラスを聞き終えた後、川村は叫び、テープレコーダーを地面に投げつけた。
何が「あの素晴らしい髪をもう一度」だ。失ったものは戻ってこない。
センター分けだったあの頃の自分は、髪はもう戻ってこないのだ。
……しかし、あの23の話を信じるとすると、事情が変わってくる。
とりあえず、フサウターと補助アイテムばかりに気をとられていて、
肝心の武器とやらをまだ見ていなかったので、バックの奥から取り出してみる。
「これは……」
川村に与えられた武器、それは「脱毛液」と書かれたボトルとライフル式の水鉄砲だった。
川村は考える。実松の断末魔を聞く限り、他の選手の武器はバリカンかハサミであるはずだ。
それに対して、自分の武器は遠距離から相手を狙撃することができる。
このゲームでは、核に匹敵する兵器であろう。これこそ「大量破毛兵器」ではないのか。
そういえば、あの23は23は23でも川村に中継ぎ転向を勧めた23である。
あれは自分にとって良い意味での転機だったと思う。
今回のことも自分にとって良い意味での転機となるはずだ。
きっとそうだ。うん。23を信じてみよう。去年また子供も生まれたし、
物心ついたら親父が23てたっていうのは嫌だろうし、せめて成人するまではなんとかね、うん。
などど考えていると、突然フサウターに「YB18 130000」と反応があった。
「13万!いや、三浦!?」
一瞬毛に目がくらんでしまったが、うちのエースだ。
それより、23でない三浦がなぜここにいるのだろうか。
とりあえず、うちのチームに23キャラは自分だけなので
同じチームの仲間で共闘はできないと思っていただけに、僥倖だ。
それにしてもなぜ三浦がここに?
「まあ、とりあえず合流しよう。番長と二人なら心強いし」
川村は走り出した。
しかし、川村は、山下が歌の後に本当に特別な、
「あ、キミの武器の水鉄砲のことなんだけど、さっき遊んでたらなんか壊れちゃった!
ごめんね!でも液を直接相手にかけちゃえばいいんだから問題ないよね!」
というメッセージを残していたことを知らない。
いや、番号とか、本当にすいません。改行多すぎとか言われちゃって……
文章もアレで、誤字とかを直してたら日を跨いでID変わるし…
>>478-482 刈りうどに吹きましたw
うおぉ、ついに武器に飛び道具が…!
ところで、三浦ってラッカルを探して山岳エリアにいたはずでは?
飛び道具は23バト界の革命だな
細かいこと言って申し訳ないんだけど、
いまんとこ今岡は参加してなかったような…
川村は参加者を把握していない(リスト未見?)ため、今岡も参加してるのではと推測してるだけだから問題ない。
三浦は移動して都市エリアに侵入したと解釈できる。
替え歌バロスWW
声出して歌っちまったWWWWW
505 :
501:2007/03/25(日) 01:26:13 ID:o0l3IZi3O
>>502、504
なるほど、そういうことか。
イチャモンつけるつもりはなかったけど、雰囲気悪くしてたらゴメンね。
「デ、デニー、お前も参加していたのか・・・?」
「・・・」
デニーの右手には少し大きめのバリカンが握られていた。
デニーは23ではない。むしろ96だ。
そんなデニーがバリカンを持って下柳をにらみつけている。
「くそ、あいつの23出条件に俺がからんでいるのか?」
デニーが一直線に下柳に向かっていく。
「うわっ」
下柳はなんとか横に飛んでバリカンを避けた。
「ん?」
下柳は軽い違和感を感じた。
「なっ!?」
下柳が左に逃げる際、デニーのバリカンが頭の左側をかすめていったのだ。
幸い少し23った程度で致命傷には至らなかった。
「くそっ」
相手がやる気である以上、こちらも負けていられない。
いくらバカバカしいとはいえ、むざむざ2323になるのは勘弁だ。
下柳はフサウターを装着し、自分のHPを見た。
「117000か。どのくらい刈りとられたのかはわからないが、まだ大丈夫みたいだな。」
「デニーのHPはどれくらいだろうか・・・。」
下柳はボタンを押してデニーのHPを見た。
しかし、『YB41』
と表示されているのみだった。
「ん?おかしいぞ、横浜?それにHPが・・・」
「うわっ!」
またもデニーのバリカンが襲い掛かる。
今度は完璧に避けたが、バリカンが帽子のつばにあたり、後ろへ飛ばされてしまった。
下柳を守るものはなくなってしまった。
下柳の豊かな髪が姿をあらわす。
「くそっ、とにかく武器を・・・。」
下柳が袋を開けると、そこには家庭用のバリカンが入っていた。
「よし・・・、これなら応戦できる。」
「お前には悪いが、23てもらおうか。」
そう言いつつバリカンを手にデニーの頭を狙った。
―ガシッ―
下柳はデニーに左手首をつかまれた。
「なに!?」
必死にデニーの手から逃れようと、デニーの手はビクともしない。
「おかしい・・・、なんだこの力は・・・。それになぜ横浜のユニホームを着ているんだ?」
下柳はデニーに問う。
「な、なんでお前は横浜のユニホームを着ているんだ・・・?お前は中日にいるんだろ?」
「・・・」
デニーは無言で手に力をこめた。
「ぐわぁ!」
ミシッという音と共に悲鳴をあげる。
「お前は一体何なんだ?なぜ横浜の選手として参加して・・・」
―ドスッ―
「ぐっ」
デニーの右拳が下柳の腹に入った。
下柳はその場にくずれ落ちた。
デニーは尚も無言で下柳の髪にバリカンをあて、スイッチを入れた。
ビィィィィンという音が洞窟内に響き渡る。
『80000・・・50000・・・30000・・・2323・・・』
下柳の豊富な髪が地面に落ちていく。
「あぁ・・・、俺の髪が・・・」
意識が髪と共に23れていく。
『1000・・・0』
『0』
フサウターが0を示したとき、下柳の意識は途絶えた。
下柳の周りには黒い髪が散乱していた。
【失格 下柳剛 残り27名】
「やったね!デニー君の勝ちだよ!」
ロン毛の男はモニターを指さして笑った。
長い髪が上下に揺れる。
「しかし、いいんですか?あんな強くて・・・。」
「いいんだよ!だってデニー君は本当に強いもん!!」
山下はシウマイを口いっぱいにほお張りながら言う。
「本当は本物のデニー君に参加してほしかったんだけど断られちゃったし、それによく考えてみると、本物のデニー君が参加しちゃうと彼も23る可能性があるってことで嫌だからね、しょうがないから僕がつくったバーチャルのデニー君に仕事を頼んだんだよ!」
「しかし、運営者側のデニーが刈った下柳の120000はどうなるんですか?
このペースでいったら刈る髪もない不毛な戦いになってしまいますよ。」
「今から考えるから待っててね!」
そういうと山下は再びシウマイに手を伸ばした。
【残り27名】
ちょw
バーチャルデニー!?
一瞬鯉心スレかと思った。替え歌ワロスwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
大ちゃんが歌ってるの想像したら腹痛くなったわw
わりと我慢しながら読んでたけど替え歌で吹いた
電車内なのにorz
バーチャル空間なんでもアリかよww
大ちゃんやりたい放題だなw
悪の首謀者にも拘らず、憎く思えないのは
大ちゃんの人徳というか23徳と言うか。
これどんな終わりを迎えるのかなぁ。
職人様方、23しく期待しております。
>「しかし、運営者側のデニーが刈った下柳の120000はどうなるんですか?
> このペースでいったら刈る髪もない不毛な戦いになってしまいますよ。」
>「今から考えるから待っててね!」
おいっww考えてなかったのかよっww流石大ちゃんクオリティwwww
大抵のことは泣きべそAA付きで「ごめんねグスン」で済むのも大ちゃんクオリティ
宮本慎也(YS6)がこの世界のルールを把握したとき、彼もまた人並みに葛藤はしたのだ。
確かに、ただ単に生え残れというだけなら誰よりも上手くやる自信はある。しかし、
なんと言っても自分は選手会会長なのだ。他人の毛を奪って自分のものとするような人間に、誰が付いて来るだろうか。
それに宮本は、このゲームの大前提である『他人の毛を奪えば自分のものになる』という点を、どうしても信じる気にはなれないでいた。
だって、あの山下に髪が生えるなんて、そんなことが本当にあるのだろうか?
相手はこれだけ完璧なバーチャル世界を構築できるのだ、あの山下の映像だって巧妙なCGじゃないのか?
誰も生身の山下に会って、その髪の感触を確かめたわけではない。
だいたい、そんな『画期的な新技術』ならばさっさと売り出せば大もうけできそうなもんじゃないか。
そうしないということは、その新技術とやらには何か問題があるのではないか?
考えられる可能性としては、その新技術には何らかの問題があってまだ実用段階に至っておらず、
自分たちはその実験の一環としてここに集められた、といったところだろうか。
宮本は左右に首を振った。
他人の毛を奪ってほんとうに自分の物にできる、なんて保証はどこにも無い。
そんな不確実なゲームに乗る気は、宮本には起きなかった。
それに、もし仮に自分が生え残ったとして―――自分が急に9696になったら、世間はどう思うだろうか?
急に9696になった選手がいて、一方に急に2323になった選手が大勢いたら、どう考えても不自然ではないか。
その2つの事象を結びつけて考える者だっているかもしれない。もしかしたらこの“ゲーム”の存在が明るみに出て、
「あいつは他人の毛を奪って、自毛を増やしやがったんだ」
と世間から生温かい眼差しで見られるかもしれない。
別に気にしない、という選手もいるだろうが、自分なら耐えられないと宮本は思った。
そんなことを考えながら、とりあえずの落ち着き先を探して山道を歩いていたときに、
宮本は川崎を見つけたのである。
「なあムネ、このゲーム、どうして南極やら砂漠やらあるんやと思う?」
「え?」
荷物の確認を再開していた川崎が手を止めて顔を上げた。
川崎の補助武器は手鏡だった。つくづく嫌味だ。
「俺はな、このゲームはなにかの実験ちゃうかと思ってる。
だからデータをとるために、こんないろいろな環境を設定したのかと初めは考えたんやけど…」
「でも僕がもし砂漠とか南極スタートなら、そんなトコさっさと出ようと思いますよ」
「せやな、俺らたまたまこの《山岳エリア》が出発地だからまだええけど」
「初めにスタートした人がそこ出たら、わざわざ砂漠とか行こうなんて思う選手もいないですよね」
「そう思うやろ?ならそんなエリア、作るだけ無駄やないか」
二人は顔を見合わせた。
「もしかして、それが狙いか?」
「僕らがそこに近づかないように…?」
「何か、システム管理上重要なものがあるとか…」
地図を広げながら宮本は考えこむ。
「…手分けして探るにしてもやっぱり仲間が必要やな。頭数が要る」
「どこか、人の多そうなところに行ってみましょうか」
「そうやな…ここは割とエリアの境界に近いみたいやし…」
地図上ではこの辺は山岳エリアの端っこで、山道ということを差し引いても
隣のエリアまでは歩いて15分もかからないだろう。
「行くか。雨が降る出す前に隣のエリアに行けるやろ」
慎重に外を確認しながら二人は洞窟を出た。
二人の向かう先に、毛の亡者と化した恐ろしい奪毛鬼たちが待受けているとも知らずに。
【残り27人】
>生え残れ
ワロスww
言葉遊びの要素もかなり強いなw
>>516 生え残り、謀反を起こした選手たちにバリカン片手に詰め寄られ、
「ごめんねグスン」で終わりを迎えたら、23バトルは伝説になる。
だつもうき・・・w
デニーこええなw
そして「生え残れ」爆笑wwwwwwwwwwwwwwww
生え抜きの選手って微妙じゃね?
「ラッカル!!!」
「三浦!?」
ついにラロッカを見つけた三浦だったが、そこにはラロッカともう一人の男が立っていた。
「・・・福留!?」
「ぁぁぁぁ・・・ぅぅ・・・」
福留は生気を失った虚ろな瞳で天を仰いでいた。
「コレは・・・?ラッカル、コイツは・・・それにその頭・・・」
ラロッカを見やると、側頭部と頭のてっぺんに刈り取られた無惨な痕が残っている。
「コイツに刈られタ。しかし争いはすでに終わってイル。俺はただ彼を救おうとしただけダ。」
「救う・・・?」
「あぁ、彼は自分の2319にひどく心を痛めてイタ。だから9696ヘアーになってギャルをキャンキャン言わせたいんだ、とな・・・いくら何でも、そんな男からは俺は刈れないヨ・・・」
「・・・ラッカル、それでオマエは何と?」
「あぁ・・・彼にはここまで2319では9696ヘアーになっても仕方ナイ。だからもっともっと活躍しろと言ったんダ。望みは23いが、その方が彼のためダ。」
「うん、適切なアドバイスだな。ではなz!?」
「ぅぁぁああああああああああああああああっっ!!!!!」
「福留!しっかりするんダ!」
「あっぁぁあああああああああああああっ!!!・・・ぅぅ・・・」
福留の咆哮が空を切り裂く。その声は、酷く悲しみに満ちていて、三浦にはそれが悲痛な魂の悲鳴に聞こえた。
「福留・・・」
(やはりこのゲームは悲劇しか生まない。きっとコレに勝ち残った男がいたとしても、それは勝利者ではないんだろう。それはきっと、もっと哀しい・・・何か・・・)
福留の瞳は、このバーチャル空間の空を流れる雲を映し出していた。
しかし、その瞳は雲を捕らえてはおらず、もっと遥か彼方に向いているようだった。
福留は光に包まれていた。優しい、暖かな光。
やがて光は晴れ、福留の眼前に様々な情景が映し出される。
(コレは・・・?今までの・・・俺の記憶?)
(考えてみれば・・・今まで良い事なんて・・・)
(父さん・・・)
「孝介、オマエには力がある。脚も強い肩もある。」
「僕、胸の中がドキドキワクワクしてるよ。野球ってこんなに胸が熱くなるものなの?」
「そうだ!大きくなったら、きっと人に夢を与える選手になれるぞ。」
(T浪さん・・・)
「新人の福留です!よろしくお願いします!」
「新人か・・・どうりで下手だと思った。」
「え・・・どうして?」
「だって球際に弱い弱いwこんな下手なショートをいったい誰が獲得したんだ?」
(Y本さん、I上さん・・・)
「愚劣なことを言う。」
「お肌の手入れもせずに、生の2319を晒すようでは、プレーで玄人を唸らせても、ミーハーギャルには通じんな!」
「外見ばかりで実力を大事にしない球界を作って、何になるんです!?」
「野球が上手いだけの2319共に何が出来た!?常にお客さんの脚を球場に向かわせたのは、我々一握りのイケメンだ!」
「違うっ!(少なくとも、I上さん・・・アナタは・・・っ!)」
(A木・・・)
「自分は2319だって気づけないほど愚かなのか?」
(オマエだって馬づr(ry)
(K上さん・・・)
「この23が・・・っ!」
(ちょwww)
(社長・・・)
「どうしてアップしてくれないんです!?私の成績の何が不足なんですか!?私は・・・もうベンツを買ってしまったんですよ!」
「それは君の勝手じゃないか。」
「そんな困ります!私はあのベンツにギャルを侍らせてキャンキャン言わせないといけないんです!」
「君は・・・自分のグッズが女性ファンにどれくらい売り上げがあるか知っているのかね・・・?」
「え・・・?」
「くだらん・・・全くもってくだらん売り上げだ。・・・君もプロなんだ、成績を上げるだけでは・・・わかるだろう?」
(ぁぁぁっぁあぁああああっー!!!)
「福留、ちょっとこれ借りるヨ。」
ラロッカはそう言うと、放心状態の福留から電動バリカンを取り上げる。
「お。おい!何をしているんだ?」
「さっきHPを14000も刈られてしまったんダ。その分だけ今のうちに刈ってオク。」
「ラッカルっ!駄目だ、そんなことはさせねぇぞ!」
掴みかかる三浦だったが、ラロッカの優しい瞳に射抜かれる。
「心配は要らナイ。俺はコイツの髪を全て刈り取りはしナイ。刈られた分だけダ・・・俺には・・・コイツから全てを奪うような真似は出来ないヨ。」
ふぅっとため息をつくと、三浦はフサウターを取り出し、装着する。
「・・・ちゃんとカウントするからな。上ボタンだっけ・・・・・・今がHP59400。えーと・・・45400までだからな。」
「わかってるヨ。」
放心状態の福留の頭上を電動バリカンが踊る。
ラロッカは、刈り過ぎないように、額のラインを徐々に後退させるように慎重に刈る。
「HP58000・・・57500・・・・・・55500・・・・・・・・・ラッカル、ひとつ気になったんだが・・・」
「何ダ?」
ラロッカは手を止めずに応じる。
「福留にはオマエのHPは1400しか反映されてないんだよな・・・?」
「1/10が自分のものになるからな、そういうことだロウ・・・・・・・・・っ!?」
「てことは・・・福留の元のHPは・・・?」
「58000・・・・・・今ハ?」
「48000・・・」
「・・・・・・そ、そろそろやめようカ。」
「・・・そ、そうだな。・・・・・・ところでコイツどうしようか?」
「放って置くわけにはいかないしナ・・・」
「そうだな、このままでは誰かに刈り取られてしまうだけだな。」
「仕方ない、しばらくはココに居てや・・・・・・・・・っ!!!???」
その時、三浦の背筋に凍りつくような戦慄が走る。周囲を包む空気の質が先ほどまでとまるで違う空間にいるような悪寒を覚える。
「ラッカル・・・離れろ・・・」
「何ダ?どうしタ?」
三浦の全身がガタガタと震え、歯もガチガチと音を立てる。それほど寒くもないのに全身に鳥肌が立つ。
「は・・・離れろ!今すぐ福留から離れるんだラッカル!!!」
「どうしたというんダ?」
「いいから来い!!!」
そう叫ぶと、三浦はラロッカの手を引っ張り全力で走り出す。
「何がどうしたんダ三浦!?」
「わからない・・・っ!でも・・・俺の投手としての勘が、とてつもない何かを・・・っ!」
プロの一流ベテラン投手は、打者の雰囲気やふとした動きから危険を察知し、それをかわす投球術を身につけていると言われている。
横浜のエースとして数々の修羅場を潜り抜けてきた三浦にも、当然それは備わっていた。
そして、その"勘"が今、とてつもない脅威を三浦に知らせていた。
(これか・・・っ!駆けつける前に感じていた嫌な予感はっ!)
ラロッカは福留の方を振り返るが、福留に動く気配はない。
「お、おい、何処まで逃げるんダ?」
「アイツの目の届かなくなるところまでだ!!!」
そして、二人は全力で走り続けた。見えない恐怖を振り切るように。持てる限りの体力を消費して・・・
「はぁっ・・・はぁっ・・・・・・ココは・・・?」
「はぁっはぁっはっ・・・・・・ゲホっ・・・ビル・・・都市エリア・・・」
【生存者27名】 ラロッカHP=46000→48400(福留ストック1400+刈った分10000×1/10) 福留HP=59400→48000
わかる人にはわかる某アニメのパクリだらけですが・・・
書いてて気になったのが、自分の分を取り戻したときのHPの変移。
自分が書いたように進めると、資源の枯渇はかなり早い段階で訪れるかも。
まぁ、その辺は元々あまり生き残らせるつもりがないからいいと思うんですが、今後の大ちゃんの裁量次第ってとこでしょうか。
指先が膨らんだ様な感覚と共に、ジンワリと暖かさが浸透していく。
「・・・・」
久保は機内に戻ってきていた。
トイレと早めの夕食を取る為だ。
体は幾つもの小さな雪山の間に隠してきた。
幸い自分のユニフォームは白いので、見つかると言う事は、早々ないだろう。
それに、久保は見つけたのだ・・・・広範囲のフサウティング方法を。
フサウターの簡易地図と、手持ちの地図を見比べて考えた結果。
どうやら、フサウティングの範囲は、2ブロック分らしい・・・。
つまり、今自分が居るエリアと、縦横に隣接するブロックの半分のフサウティングが出来るみたいだった。
「夕食を持ってきてもらえる?魚がいいんだけど、ある?」
トイレから帰る途中に見かけた添乗員に夕食を頼む。
添乗員はにこやかな笑みで、シュウマイ弁当もあるのだと宣伝したが、久保はそれを丁重にお断りした。
「さっさと食べてもど・・・・」
思わず顔の筋肉が制止した。
トイレに行く時は、尿意を我慢するのに必死だったので気付かなかったのだが、自分の隣の席に座っている福浦が、何故か半裸なのだ。
(アッー!)
福浦の額にはビッシリ汗が付いている。
(何処か、暑いエリアに居るのか?)
暑いエリアは、サバンナ・砂漠・・・・密林もだろうか?
取りあえず、自分の居る南極には居ないみたいだ。
「久保様、ご夕食をお持ちしました」
柔らかい声が、久保の背中にぶつかった。
「あ、ありがとうございます」
慌てて、半裸の福浦を跨いで自分の席に座り、前の座席の背についた机を出す。
「海老シュウマイ弁当です」
「え?魚を頼んだんですけど・・・・・」
目の前に置かれた海老シュウマイも中々美味しそうだったが、久保は魚が食べたかった。
「申し訳ありません。
お魚はご用意するのに、あと15分ほどかかってしまうんですが・・・・
それでもよろしければ、早急にご用意させていただきます」
そんなに待てるわけが無かった。
自分の体も心配だし、態と他の人と夕食時間が被らない様にしたのに、意味がなくなってしまう。
(結局シュウマイなのか・・・・)
海老シュウマイをジッと見つめてみる。
半透明の皮に包まれたサーモンピンクの海老団子が透けて見えいた。
ホカホカと湯気を立っていてとても美味しそうだ。
「まぁシュウマイでもいいか・・・・」
付属のタレをタレ入れに流し込み、割り箸をパキッと割る。
海老シュウマイを箸で挟んで、タレに少しだけ浸してから口の中に放り込む。
噛むと、海老のプリッとした感触の後に、海鮮のなんとも言えない味が口の中いっぱいに広がった。
「あ・・・・あつぅ・・・ハフハフ」
静かな機内で一人、シュウマイの熱さにハフハフしているなんて、はたから見ればアホみたいなのだが、
久保自身は、海老シュウマイの思わぬ美味しさに幸せいっぱいだった。
「海老シュウマイでよかったかも・・・・・」
海老シュウマイ6つをあっと言う間に平らげて、一服しようと背もたれに背中を預けた。
「あーお腹いっぱい」
満足げにお腹を擦る。
腕時計を確認すると、バーチャルから23出てきてから、15・6分程立っていた。
(結構たってるなぁ)
満腹から来る怠惰感に、ついつい身を任せてしまう。
うんうんと唸るように顔を左右に振っていると、半裸の福浦がどうしても視界に入った。
(まぁこの際、半裸の事は置いといて、
福浦さんは今何処にいるんだろう?)
何とか場所を知れないものか?もしくは集合場所なんかを教えられないものか?
久保の頭からは、バーチャルでの自分の体の事は、頭の端っこに押しのけられていた。
「・・・・・」
そんな久保は、割り箸袋に爪楊枝が付いている事に気が付いた。
(コレを使えば・・・・)
映画の様に血文字で場所を教えられるのではないか?
チラチラと周りの様子を窺う。
見張りが巡回しているが、隙はたくさんある。
素早い動きで爪楊枝の入った箸袋を取り、爪楊枝を左手の指先に当てる。
プツッ
「・・・・・!!」
かなりの痛さに、思いっきり前のめりになって唇を噛む。
足をバタつかせたい気持を必死に我慢して、痛みが散るのを待つ。
やがて、指先のジンジンとした小さな痛みを残して、体から痛みが23けていった。
(ふー、コレで準備はOK)
目論見通り、指先には小さな血の球が出来ていた。
爪楊枝で血をすくい、紙製の箸袋の白い部分にメッセージを書いていく。
『M16
とし B―2』
箸袋の白い部分はあまり多くないので、簡潔にメッセージを書いていく。
昼過ぎ頃に始まったこのゲームも、もう直ぐ夕飯の時間に差し掛かってきている。
福浦も他の選手達も、近くこちら側に戻ってくるだろう。
(あ!自分の体!!!)
結構な時間放ったらかしの自分の体の事を思い出した。
血に濡れた爪楊枝を隠すように弁当の中に捨て、血文字を急いで乾かし、箸袋を折りたたんで福浦の手の間に差し込む。
小さく畳んだので、たぶん汗で滲んでしまう事は無いだろう・・・・・多分だが。
(俺と合流するまでに刈られないでくださいね福浦さん)
アナタには俺を守るって言う、役目があるんですから。
23ら笑みを浮かべて、ヘッドギアにコードをつなぎ直す。
リラックスして目を閉じると、直ぐに意識が遠のくのが解った。
何か睡眠を誘導する物が出てるのかもしれない。
指先のジンとした痛みが、最後まで久保の意識に残っていた。
【残り27人】
>>526 回想シーン23ワロタwwwwwwwww実写で脳内再生したw
>>530 アッー!
このスレのおかげで海老シウマイ買って来たじゃないかw
>「てことは・・・福留の元のHPは・・・?」
>「58000・・・・・・今ハ?」
>「48000・・・」
>「・・・・・・そ、そろそろやめようカ。」
ラッカル優しいよラッカルww
『それじゃあ、皆!頑張って刈り合いヨロシクね!! モジャッジャッジャッジャッジャー!!!!』
山下の通信を聞き終わった時、大沼幸二(L15)はため息をついた。
(やれやれ…それにしても本当に髪の奪い合いなんてやらなきゃいけないのかな)
大沼がいるのは別荘らしき建物の中である。
どうやらここは南極エリアらしく、外は吹雪が収まったものの、それでも窓の外に広がる銀世界が外の世界の冷たさを主張している。
それゆえに大沼は外に出るのが億劫で、ゲームが始まって以来、今までずっと別荘らしき建物の中に引き篭っていたのだ。
(大体後付け設定多すぎだろ…最初からちゃんと決めとけよな…)
そう思いつつ、大沼は床に置いてあった支給品に目を向ける。
(それにしてもよくぞまあこんな物をカバンの中に入れることが出来たな…)
大沼が見つめたのは銃器よりひとまわり大きな砲身だった。
その馬鹿でかいタンクに貼り付けられた手紙にはこう書かれてあった。
『これは火炎放射器だよ!
ホースの取っ手にあるスイッチを押したらホースから炎が吹き出て来るんだ!凄いでしょ!
といっても特殊なガソリンを使っているから髪の毛以外の人体だけは燃えることは無いから安心してね!現代の技術って凄いよね!
中身のガソリンは無限にあるからジャーンジャーン使っていいよ!
もちろん、燃やした分の髪の毛は君のHPに加算されるから、頑張ってね!』
「いやはや、なんちゅう武器をよこすんだ…」
思わず呟く。余りにも強力かつ危険すぎて実感が湧かない。
そもそも火炎放射器って時点で一軍に上がるたびに炎上を繰り返している自分を皮肉っているようで面白くない。
さらに深いため息をついてソファの上に置かれた青い袋に目を移す。
(青い袋には…確かアレが入ってたんだったな)
もう一度袋の中身を探る大沼。
中には、先ほどとは全く変わらぬ形の白光りする手のひらサイズの物体とこれまた一枚の手紙が入っていた。
『大当たり!!
君には補助品としてもう1つ武器を追加しちゃうよ!
これは銃は銃でもレーザー銃っていうんだ!
中から弾ではなく光線を発射するんだ!その名も名づけて“2323光線”!!
発射された2323光線は髪の毛以外の物質に当たっても効果は無いけど、
髪の毛にさえ当たれば当たった分だけHPを奪うことが出来るよ!凄いでしょ!
ただし一旦撃ったら暫くエネルギーが充填するのを待たなきゃもう一度撃てないから気をつけてね!
それじゃ、グッドラック!(言ってやった、言ってやった)』
「そんなふうに23まされてもなあ…」
またしても呟く。2323光線とは、なんて23けたネーミングであろうか。
それに、“餌”であるはずの自分にこんな凄まじい武器ばかり集まってていいのだろうか。
他の選手が地道にバリカンだけで刈らなきゃいけないであろう一方、自分にあるのは強力な飛び道具2つ。
火炎放射器。そして、レーザー銃。
もし自分が本気でこのゲームに参戦したならば、圧倒的な強さで優勝してしまうかもしれない。
(まあ俺は別に髪は要らないんだけどさ)
大沼は自分の髪に手をやる。
『ライオン丸』の異名で知られる頭部の髪は、さっきフサウターで計測したところでは確かHP131000を記録していたはずだ。
(そりゃまあ未練はあるけど…別にこんな馬鹿馬鹿しい戦いで生き残ってもなあ…)
さらにまたため息をつき、袋の横に置かれていた緑色の封筒を見やる。
確かあれの中にある手紙には個別テーマが書かれていたはずだ。その内容を思い出す。
『大沼へ
この企画を知ったとき真っ先に思い浮かんだのが和田とお前だった。お前なら豊かな髪を持つし刈られても別にどうでもいい。
むしろ坊主になってすっきりして欲しいぐらいだ。まさにこの企画にぴったりな人材だ。
それはともかく、お前の脱出条件は、我がチームの主砲である和田を護衛して、
彼の髪が10万を越えた状態で彼にゲームで勝たせることだ。
ベンも今年でFAだから少しでも彼の機嫌を取ろうということでこのテーマにした。
それでは、この機会に少しは精神を鍛え直して来い。とにかく頑張れ』
(どうでもいいなんてひでえし…)
大沼は思わず頭を掻き毟る。
大体精神を鍛えるのならこんな変な戦いやってるよりは普通に自主トレやる方がよっぽど効果が大きい気がする。
「精神か…」
大沼はこれまで以上に大きなため息をついた。メンタル・タフネス。それは自分の最大の弱点。
いつもそうだ。二軍ではいいピッチングが出来るのに、一軍に上がるたびに大事な場面でKOを繰り返してまた二軍に落とされる。
そんな無限ループのような状態が続いている最大の要因は、ひとえに大沼の心の弱さに他ならなかった。
(いい球は投げられるはずなのに、大事な時にはいつもおかしくなっちゃうんだよな……情けないよな…)
自嘲気味に笑う大沼。ファンもこのように自分のことを笑ってるような気がした。
ふと大沼は顔を上げた。
(そういえばまだ支給品使ってないな…ちょっと試してみようかな?)
思いつくや否や、早速銃を手にとって、壁に掛けられたダーツの的を狙って撃ってみる。
ビーッという音を発して光線は的の中心付近に当たった。
(やるじゃん、俺)
思いの外うまく的に当たったことに驚きつつ大沼は的に近づく。的には焦げ目ひとつ無かった。
「へえ〜、よく出来てるなあ」
大沼は感心した。確かに説明書の通りだ。
恐らく髪の毛に当たったら当たった分だけ髪の毛が無くなるのだろう。大沼はそう確信して、銃をまじまじと眺めた。
(そうだ…よく考えたら折角こんな大当たりの武器もらってるってのに家の中に閉じ篭ってるなんてもったいないよな…
どうしてすぐに気が付かなかったのだろう…)
大沼は考え込む。
その答えはすぐに見つかった。自らのチキンハートだ。
(そう、本当は寒い中外に出るのが面倒だったからじゃない、俺はビビッてたんだ…
外に出て、誰かに刈られるのが嫌で、それで自分を必死に誤魔化して…
……なんて情けないんだ、俺は…!)
忸怩たる思いにうなされる大沼。
ふと先ほどの手紙の内容を思い出す。
――この機会に少しは精神面を鍛え直して来い――
(そうだ、ひょっとしたらこのゲームで生き残れれば、俺のハートはかなり丈夫になるかもしれない。
これだけいい武器なんだ。生き残るチャンスは十分にある)
元々素質については太鼓判を押されていた身だ。
強いメンタルさえ手に入れれば、小野寺から守護神の座を奪い取ることも夢ではない。
このゲームに乗ってみるのもいいかもしれないと思い始める大沼。髪の為ではなく、心の為に。
しかしその一方でまたしても弱気が顔を覗かせる。
(でも、万が一不意打ちで襲われたりしたらなあ…やっぱ怖いなあ…どうしよう…)
大沼は頭を抱えた。悪魔のささやきと弱気の虫が頭の中で鬩ぎ合う。
やがて、大沼は思いついた。この葛藤から脱出する方法を。
(こうなったらもう踏ん切りをつけよう。ここを出るんだ)
荷物をまとめ、重そうに火炎放射器を背負う大沼。
その時になって、大沼はまだこの恐ろしい武器を試していないことを思い出した。
やがて大沼は、カバンを持って別荘を出る。徐々に名残惜しい感情が大沼の心に湧きあがってきた。
(やっぱり戻りたいなあ…でも俺はもうここへ戻ってくるわけにはいかない…だが…)
この別荘は本当に居心地がよかった。だから、この別荘がある限り、俺は迷いが残ったままなのではないか。
いつかここに逃げ帰ってしまうのではないか。大沼はそう感じた。
(…ならば、この別荘が無くなれば、俺はもう吹っ切れる。大丈夫なはずだ)
大沼はゆっくりと、ホースの先を別荘に向ける。
そして、スイッチを押した。
ゴウッ!
思いの外強い炎の威力に大沼は驚き、危うくホースを取り落としそうになる。
何とか持ち直した大沼は、目の前の炎を見て、感嘆の声を上げた。
「わお…」
目の前の炎は、大沼の心に何とも言えない感慨をもたらして来た。
寒空の中瞬く炎は、まるで自分の昔馴染みの親友であるかの様に温かく大沼を照らす。
大沼は今までに味わったことの無い快感が魂の底から膨れ上がりつつあるのを感じた。
(これだけじゃ足りない…もっともっと燃やさなければ…)
火をつけたばかりなので、今のところはせいぜい小火といったところである。
もっと火を広げなければ。
大沼はスイッチを押す指に力を込めた。
数分後、そこにあったのは完全に紅蓮の炎に包まれた別荘と、恍惚に満たされた表情をした大沼の姿だった。
炎が広がっていくにつれて、大沼の心の迷いは完全に消え去っていったのであった。
(このように他の選手の髪も燃やし尽くしていけばいいんだ…)
今や大沼の心は自信で溢れていた。
ガソリンは無限にある。これを所持している限り、いつでも炎を吐き出させることが出来る。
しかも万が一放射器が使えなくなっても、そのときは銃がある。
火炎放射器よりもさらに遠距離からの攻撃を可能とするそれは、それこそ火炎放射器と並んでこのゲーム屈指の威力を誇るに違いない。
2大最強武器を持った自分が、負けるなんてありえない。大沼はそう信じ込むことが出来た。
(…しかし残念だったな山下。俺にこんな最強武器を与えるなんて、とんだ采配ミスだぜ)
ふと山下のことを思い出す。山下の口調を思い返せば、どうやら彼はこのゲームを楽しんでいるようであった。
どういうわけか、山下たちをもっと楽しませたいという思いが大沼の心に湧きあがってきた。
自分以外の奴らの髪が奪われていく様を、炎上する様を、奴らに見せ付けてやりたい。
そんな思いが突き上げてくるほど今の大沼はクレイジーになっていた。
すっと太陽が輝く空を見上げる。そして大沼は天に向かってはっきりと宣言した。
「OK、俺達に任せろ。さらに楽しいショーを見せてやるぜ」
そしてくるりと振り返り、尚も燃え盛る別荘に背を向ける。
やがて大沼は、後ろを振り返ることもなくどしどしと歩き始めた。
大沼にはもはや寒さなんか感じる余裕は無かった。彼の体内では灼熱の炎が燃え滾っていた。
(和田なんかどうでもいい。俺は自分の実力で生き延びさせてもらうぜ)
その様は、かつてインボイスドームで、そしてつい先ほどまで別荘の中で、
子猫のように怯え切った姿を見せていた男とは完全に別人のものとなっていた。
【残り27名】
総帥…
なんてバランスブレーカーなんだ…
こんだけ与えられても全然安心感がないのは総帥ならでは
総帥、待ってたぜ!
髪の毛以外燃やせないなら別荘も燃えないんじゃ…
>髪の毛以外の人体だけは燃えることは無いから安心してね!
とありますよ
人体以外は燃えるんだろう
13分もかけて被った・・・
総帥キタコレ
これで現参加者は全員登場したことになるのかな
種子島に鉄砲が伝来したときもこんな衝撃だったのかな…
>>552 俺も思ったw危うくかぶるとこだったwww
>お前なら豊かな髪を持つし刈られても別にどうでもいい。
あまりの酷さにしょうゆ噴いたwwww
ちょwww
しょうゆ飲むなww
最近投下多くて嬉しいなぁ
がんがってください!
ごめん、ちょっと気になったのだが
>>530 広範囲のフサウティングができるのは岩隈の特別仕様のフサウター(3kmの範囲)だけでは?
2ブロックって、何キロ?
>>536 毛を焼いてしまったら毛根もダメージを受けるのでは?どうやって移植手術するの?
@大ちゃんだし
Aバーチャルだし
559 :
代打名無し@実況は実況板で:2007/03/27(火) 00:48:35 ID:wn33K31v0
「バーチャルだから」で済むならそれでいいんだけど。(イチャモンつけてるわけではないので悪しからず)
どっかで大ちゃんが「根元からごっそりと(毛根ごと刈れ)」みたいなこと言ってたし、
それに何より「毛根を虐める6つのエリア」の存在意義がなくなるのでは?
…と考えていたら、ふと思ったのだが
苛酷な環境のせいで抜けた毛も、カウントする?運営側でストックするとか。
細かいこと言ってスマソ。でも流れから言って、みんな割と整合性を求めてるようなので…
投下された職人さんには申し訳ないが、「某アニメのぱくりです」というのは……
バトロワ・パロなんだから選手の来歴やら性格付なんかも職人さんにお任せするのが筋でしょう。
自分も職人さんの肉付けに「違う!」と主張するつもりは更々無いです。
でもそれと「ぱくり元のキャラに選手名をかぶせているだけ」というのは、違うと思うのですが如何ですか?
>>560 現実では薬剤で吸い出すとかだから、バーチャルでの毛刈り手段はなんでもいいように思うが?
で、それとエリアの存在意義と何がどう関係するのかがよく分からないのだが、どういうこと?
自然に抜けた毛や事故や自刈りで失った毛は運営にストックとかでいいんじゃないかな。
>>561 もう少し文章を整理してくれないと言いたいことが分かりづらい。
そもそもパクリ元って何?
>>525-528はパクリと本人が言ってるが、前後の展開やキャラ付けとも違和感ないし、上手く組み込んであるように見える。
それはパロと言って差し支えないような。
563 :
530:2007/03/27(火) 02:21:38 ID:FjYkcMBO0
>>557 『待ち合わせ』を書いたものです。
岩隈に与えられた特別仕様のフサウターの存在をすっかり忘れてました・・・
吉野なんかもフサウティングみたいな事をしてたので、
てっきりみんなできるのだと・・・
一応、久保が広範囲フサウティングできる理由はあります。
>>560 毛根ごと、というのは主要武器がバリカンな限り無理だと思います。
まぁ大ちゃんの行き過ぎた表現って事で
エリアは、参加者の毛狩りを煽る為のものじゃ無いですか?
毛根に負担がかかる状況なら、自然と23を考える心情になると思うので・・・
実際に賢介はそれで狂いましたし
>>562 >>561は、バトロワの設定を基にして職人さんが一から文章を作り上げていくのと、
何かのアニメを元にしてキャラと選手名を入れ替えただけのパロディは違う、
と言いたいんじゃないか?(これもうまく説明できてないな・・・スマソ
多分「ぱくり」の言葉に過剰反応したんじゃないかと思うんだけども。
自分はネタ元のアニメがわからないので、どこまで反映されてるのかわからないけど、
上手く組み込まれてるならいいんじゃないか?
>>525-528の本人ですが…
ちょっと前にバトロワのパクリが話題になってたんで、何も言わずによりはって思ってパクリと書きました。
話の流れの中で福留の回想は入れたいなと思っててちょうど良いと思って使いました。
パロディレベルのつもりでいましたが・・・流れとしてはおかしくないかな、と思ってます。
ちなみに引用したアニメ(アニメといって良い代物か微妙ですがw)は「リアルアンパンマン 第3-2話」です。
雰囲気悪くしちゃったみたいですいません。なるべく自分の脳味噌使います。
>>564 ちなみにかなり反映されてます。
総帥が最強の武器を持ってても、最強のキャラに思えないのは何故だ・・・
フサウターをあんまり広範囲見渡せるようにすると、
ゲームに乗る気がない選手は逃げ回るだけになるんジャマイカ?
狩りうどが仲間のふりして近付いても、
二回目以降は通用しないだろうし。
そういうチェックが厳しいと敷居が高くなって職人減るぞ
ネタなんだから笑って済ましてほしい
つじつまの合わないことは全部大ちゃんのせいにすればおk
細かい事ばっか気にしてっと
23るぞお前ら
岩隈のフサウター設定について書いた者ですが…
岩隈のフサウターは半径三キロの範囲内で、他の選手より詳しい地図(カーナビ並に)が表示されるということでどうでしょう?
ついでに言うと、餌側は刈りうど側に比べてフサウティング範囲が狭い、というのはどうですかね。
大ちゃんならそれくらいはやりそうです。デニーとか大沼とか強そうなので、それでバランスとれるかな、と。
読み手も書き手も一生懸命ということで、まあええことよ
23時23分23秒
フサウターにも当たりはずれがあるってのはどう?
つかバーチャルだからなあ
バーチャルを作り出す機械もまたポンコツとかw
>>570 選手の番号やHPは半径200M以内に入らないと解らないとか・・・・
でも、それだと吉野のフサウターも特別仕様になってしまいますね
『待ち合わせ』保管時に、フサウティング範囲を狭めるとか?
1ブロック(2キロか3キロぐらい?)だけとか
このスレなんか楽しいね
馬鹿馬鹿しいことをマジで議論することほど楽しいことは無いよ
「そうそう、このバッグの中に武器が入ってるらしいんだよね」
的場は自分のバッグの中をあさると、中から理髪店でよく見るような手動のバリカンが出てきた。
石井も自分のバッグをあさったが、出てきたのは髭剃り用と思われるT字カミソリだった。
「……ハズレかな」
「的場さんのはいいと思いますけど」
「他にも何か入ってないか?」
的場が注意深くバッグを探ると、数珠が出てきた。
「こんなとこに来てまで『住職』かよ!」
「最後は祈れということなんですかね?」
「俺が僧籍持ってて、あだ名が『住職』だから、向こうは粋な計らいしたとか思ってんじゃねえの」
「あぁ…」
怒り心頭な的場に対し、石井には返す言葉がなかった。
自身はまだそれほど気にするほどではないが、的場は結構深刻そうだ。
そんな悩みがあるから、『住職』というあだ名は受け入れられないのだろう。
(僕もあんな風に額が広がっていくのか…)
石井は深い溜息をついた。
と、自分のバッグの中にも、まだ何か入っていることに気が付いた。
「「あ……」」
バッグから出てきたのは、タスキだった。
しかも恐らく宴会などで使われるネタタスキで、手書きでデカデカと『僕は王子様!by Daisuke Yamashita』と書かれていた。
妙に達筆なのが、脱力感を生んでいる。
(山下さんって、こんなキャラなのか…?デニーさんに聞くところによれば、『変わった人だけど、俺のことを毎回使ってくれたからいい監督☆』らしいけど、かなり変な人かも…)
「……俺たち、からかわれてるんじゃねえ?」
「僕そう思います……」
2人は盛大に溜息をついた。
「ま、取り合えずそのタスキと数珠、交換しない?俺はそっちの方が性に合ってる」
「いいですよ。スポーツフェスタのこと、朝倉から聞いてます」
「俺、祭りとか大好きだから。田口さんとかトリさんとか、世話になった先輩がみんな大騒ぎ好きだったしね……」
と、そこまで言って、的場は口を噤んだ。
(そういや、どっちも俺よりかなり9696だよな……トリさんなんか、引退してパーマかけてるし……
そもそも同じ年の和巳は23る気配すらなくて、3つ上のシバさんも染めてるのにエンジェルリング、ジョーさんは白髪生えてたけど23くはなかったし、
23って俺ぐらいじゃん…)
気分が大いに沈んでしまい、そこで先輩たちについて考えることは止めた。
松中が2323であることは、すっかり忘れてしまっていた。
「的場さん、大丈夫ですか?」
「……やっぱり髪がほしいなぁ。同じ『住職』でも、有髪がいい」
「うはつ…?」
フサウターには、『石井HP:69980』『的場HP:50000』と表示されていた。
住職ワロスwww
これのせいで塩崎見たら笑っちゃうじゃないかw
どうしてくれるwww
>>582 おれもwww
明日スカイマーク行くのに本人見て耐えられるかなorz
スカイマークか・・・風が吹くな
住職www
ヤクルト吹いたw
今日スカイマークに行くみんな、がんばってこらえてくれ!
三浦・・・3HRくらったな・・・・・・
23バトでは死なないで(刈り取られないで)くれよ・・・
(思ったより刈れなかった…)
背後から不意撃ちするという手段に出たにも関わらず、それほどの効果をあげられなかったことに岩隈は内心舌打ちし、
改めてターゲットの小林宏之を観察する。二人は数メートルの距離をおいて対峙していた。
身長は岩隈のほうが若干高いが、体格はほぼ互角。
スラリと細い手足の長さも同じくらいで、リーチにもほとんど差はないだろう。
ほんとうに、普通に考えたらこんな戦いに呼ばれるいわれのない、いわゆるイケメン投手であることは間違いない。
だが、岩隈の奇襲を受けた頭頂部は無残に地肌を晒しており、その目は鋭く岩隈を見据えていた。
と、フッ、と鼻から息の漏れる音がして、小林の表情が笑みの形に歪む。
「HP90300か。意外と23いんだな、お前」
「……」
「今オレから13000も刈ったくせにそれしか無いのかよ」
その口調は明らかに哀れみの色を含んでいた。
「てことはお前、元は90000も無かったってことか。そりゃぁ後ろから襲うなんて卑怯な手も使うよな。
岩隈、必 死 だ な w」
長髪いや挑発されている、と岩隈は思った。落ち着け、挑発はあの球団の得意技じゃないか。
2年前の開幕時、『初勝利は仙台でどうぞ』とか腹の立つポスター貼っといて、
楽天に歴史的初勝利をプレゼントしてくれたのはどこのチームでしたっけね。
その翌日26対0なんてこれまた歴史的大虐殺をやってくれたのもそういやこのチームだったけど。
ああ今思い出してもハラワタが煮え繰り返る思いが…ってムカつくこと思い出してどうする、とにかく落ち着け!!
そんな岩隈の内心を見透かすかのように小林はスッと目を細めた。
「ま、お前も弱いとこで苦労してるみたいだからな、そりゃ23くもなるよな」
頭の中が急速に白くなってゆくのを、岩隈は感じた。
わき起こって来たのは、強烈な、怒り。
「あんたに何がわかるッ!」
叫ぶと同時に岩隈は小林に向かって駆け出した。小林が身構える。
低い体勢で、岩隈は左手人差し指を前方に伸ばし―――
「あ!あそこに14歳猫耳Tバックグラドルが!!」
「何ッ!?」
脊髄反射で己の背後を振り返った小林の右側頭部ががら空きになる。
「もらったぁぁぁぁぁぁ!!!」
ヴィ―――ンジョリリリッ。
金色の毛が空中に舞い散った。
信じられない、というように小林が目を見開く。
その表情を見ることなく、岩隈は小林の脇を駆け抜け前方の茂みへと飛び込んだ。
「っ、岩隈ァ!」
慌てて小林も後を追ったが、岩隈はまるで進む道が見えているかのようにスイスイと密林の中を駆け抜けてゆく。
やがて岩隈の姿は小林の視界から完全に消えた。
(あの野郎…絶対許さねぇ…!)
震える手で小林はフサウターを操作する。画面には『HP:87000』という数字が厳然と表示されていた。
岩隈は高揚した気分を抑えられず走り続けていた。
現在の自分のHPは91000。小林のHPを20000ほど削ったことになる。
(すぐに脱落なんかさせてたまるか)
小林は自分だけでなくチームをも侮辱した。許せない。
やはり彼だけは自分が倒さなければならない。
そのためにはもっと武器がいる。次は小林も警戒するだろうから方法も考えなければならない。
誰かと組む必要があるかもしれない。
(せいぜい逃げ回ってくださいよ、小林さん)
唇の端に笑みを浮かべつつ、岩隈はジャングルを駆けて行った。
「岩隈が小林宏之から離れてしまいますよ」
モニターを見ていた佐野が残念そうに振り返る。
「まぁいいさ、彼に簡単に退場されたらつまらないじゃないか、佐野くん」
シウマイタイムを満喫した山下は、今度はデザートの時間とばかりに『萩の月』をパクついていた。
「それはそうですが…」
佐野は釈然としなかった。
つい先刻、“バーチャルデニー”が下柳を呆気なく葬り去ったばかりではないか。あれは“つまらなく”ないのか?
下柳といえば、鬱陶しいばかりの髪にヒゲと、ムサ苦しさでは球界随一の存在だったはずだ。
それをあんなあっさりと脱落させてしまって―――それに何より、120000ものHPを無駄に刈ってしまって。
毛に恵まれた輩が刈られてゆく姿に対しては、微塵も心を動かしはしない佐野だったが、
無情にも刈られていく毛たちの姿には胸を締め付けられるような思いを抱いていた。
毛たちには何の罪もないのに。
あの毛たちは、整髪料やパーマ液を塗りたくられるのに耐え、ドライヤーの熱風に耐え、
あまつさえ染色だの脱色だのといった無体な行為にも耐えて、それでも健気に生きてきたというのに!
佐野は毛を愛していた。決して報われることは無かったが、それでも佐野は一途に毛を愛していたのだ。
どんな毛でも、太さや色や硬さやクセの有無に関わらず、全ての毛を平等に愛し、慈しみ、見守り育てるのが
真の愛毛者魂ではなかったのか?山下は、あの髪とひきかえに、毛を愛する心を無くしてしまったのだろうか?
無邪気に萩の月を頬張る山下の頭を、佐野はじっと見つめた。
モニターの光を受けてツヤツヤと輝く髪。いわゆる『天使の輪』がはっきりと見える。
…嗚呼『天使の輪』!
佐野が憧れ続けてやまなかったものがそこにある。それは佐野の目には眩しすぎた。
「…お茶を淹れてきます」
居たたまれなくなって、佐野はモニター室を後にした。
【残り27人】岩隈HP=89000→91000 小林宏之HP=107000→87000
14歳猫耳Tバックグラドルwwwwwwwwwww
このじわじわ攻めていく感じもたまらんねw
>「あ!あそこに14歳猫耳Tバックグラドルが!!」
>「何ッ!?」
ちょwwそんな古典的な手に引っかかるなよロリw
しかし佐野が良い味だしてるなぁ。乙。
毛への愛激しいなw
526 :代打名無し@実況は実況板で :2007/03/30(金) 23:22:53 ID:LhLg5q4pO
公式サイトの広報レポより
>今日、川村選手がかなり短く頭を刈り上げてきました。
>ロッカーでそれを見た加藤選手はすかさず「先輩、やってきましたね〜」とひとこと。
>川村選手自身は、「ちょっと板前みたいだろっ」と話していました。
>ロッカーの和やかなひとときでした。
新作キテタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!
コバロリわろすwww
佐野wwwww
「ところでお前さっき俺を守ることが脱出できる条件って
言ったよな」
黒田博樹(C15)は長谷川昌幸(C42)に問い掛けた。
「はい。そうですよ?」
「条件って山下さんから聞いたのか?」
問われて自分がまだ手紙のことを言っていないことを思い出した。
(黒田さんは大卒だしマーティーの直筆でも読めるかな)
実際どうでもよかったことなのだがなんとなく先にマーティーの
手紙を黒田に渡した。
「これです」
渡された手紙を見た黒田は瞬間愕然としてしまう。
(マーティー直筆やん!)
しかし長谷川はこれを渡してきたということは、きっとこれを読んで
内容を読み取ったということだろう。
(とりあえず目を通してみるか)
黒田の顔がどんどん強張っていく。
長谷川は思わず吹き出しそうになったがあまりに真剣なので声を
かけるタイミングを逸してしまった。
(あかん!まったく読めん!)
黒田は焦っていた。長谷川は高卒、自分は大卒。しかも年下である。
聞いた手前渡されたものが読めませんでしたでは立つ瀬がない。
「あの〜、黒田さんこれ読めます?」
(グハアッ!このタイミングで声をかけるか!)
「もうちょっと待ってくれ」
内心を悟られないように声を落ち着かせて話す。
(いかん、いかんぞ!先輩の、エースとしての沽券にかかわる!)
「筆記体って読みにくいな」
「黒田さん読めるんですか!」
「なんやお前、これが条件なんやろ?」
「実は読めなくて落胆してたらもう一つ手紙があったんです」
(ナ、ナンダッテー!…って今回何度目なんだか…)
「先にそっちを見せてくれればいいじゃないか」
「いや、一応両方見てもらったほうがいいかと思って」
「マーティーのやつは俺にもよくわからんな。
で、もう一つのほうは?」
長谷川は「気持ち」のこもった手紙を見せた。
「随分と気持ち気持ちって書いてある手紙だな」
「きっとあの人ですよね?」
「新井だな」
(やっぱりか…)
長谷川は再び落胆した。先輩に30万で売られたのだから仕方がない。
「あの、じゃあやっぱり新井さんは…」
「なんか変やな」
「?」
黒田の言葉に思わずきょとんとしてしまう。
自分が読んだときには何も気付かなかった。
「何が変なんですか?」
「この手紙を読んだ限りやと新井もこの計画を知っていたことになる」
「そうですね」
「まあ選手会の方は臨時収入があったといえばどうにかなるとしても
新井本人はこの計画を知っていたわけだ」
「はあ」
いまいち要領を得ない長谷川はただ聞いているだけになってしまう。
「新井がこんな企画を許すか?」
なるほど、あの人はこういった人を騙して金を得るようなことを
よしとしないだろう。恐らく参加者を知っているのであれば黒田や
緒方を激励してしまう、そんな人だ。
「でももしかしたら山下さんがうまく話を持ちかけたのかも…」
それは確かにありえることだった。
「そしたらこんな感じか?」
黒田は語りだした。
…
……
「やあ新井君。こんにちは」
「山下さんどうもお久しぶりですよ。今日はどうしたんですか?」
「もう、山下さんなんて堅苦しいから大ちゃんでいいよ!
いやあ今度ね、ちょっと秘密のゲーム大会をやることにしたんだよ」
「秘密のゲーム大会ですか。怪しい響きですね」
「秘密の理由はね、ちょっと髪の毛が2323な人達を集めてやるからなんだよ」
「なるほど、2323な人たちを集めるなら秘密がいいですね」
「そうでしょ?だから秘密なの。それでね、参加者を増やしたいんだけど
2323な人はもういいから9696な人を探してるんだけどいい人いない?」
「9696ですか?9696なら誰でもいいんですか?」
「誰でもいいよ!でも例えばちょっと気持ちが足りなくて、あんまり
成績が良くない人に、もっと気持ちを強くして成績を良くしてもらいたい
っていうような人がいたらよりいいかな?」
「気持ち!」
「そう!気持ちだよ!」
「気持ち!気持ち!」
「誰かいるかなあ?」
「気持ち!気持ち!きも…」
「あらいく〜ん」
「はっ!取り乱してすみませんでした。気持ちと聞くとなんかこういい知れぬ
熱い気持ちがこみ上げてくるんですよ!」
「じゃあそんな気持ちを誰に注入してあげたい?」
「う〜ん、9696、気持ち、9696、気持ち、気持ち、気持ち…」
「もしいたら君たちの選手会に謝礼として30万程イベント参加料を考えてるんだよ」
「じゃあ、長谷川はどうでしょう?あいつは気持ちが足りないから中々試合に
勝てないんですよ!だから気持ちを…」
「長谷川君かあ、いいねえ。とっても9696だし」
「いいですか!じゃあ是非とも彼に気持ちを!」
……
…
「…」
「…」
「ありえる…」
「そうですね…」
「結局何も解決しなかったな…」
「はい…」
【残り27人】を入れ忘れましたorz
保管庫さんすみません
KIMOTI にtanisigeを感じるw
気持ちって聞くだけで笑えるようになってきたw
ロリコバといいかぷの連中といいなんてヤツらだwwwwww
ダッダッダッダッダッ!!!
福浦はただひたすら走った。
後ろも振り返らず、景色は目に入っているけど、考えはしない。
ただ直感で進んでいく。
「ハァ・・・・ハァ・・・・」
息が苦しい・・・・・。
酸素の少ない山岳エリアを爆走すれば誰しもそうなるだろう。
「・・・・・・ハァ・・・・ハァ」
限界とばかりに足が止まり、膝をついてしまう。
(逃げなくっちゃ・・・)
彼が本気を出せば自分など、ものの数秒で刈り上げられるだろう。
(まだ、23落するわけにはいかない)
クラクラする頭と体を叱咤しながら、隠れる所は無いかと辺りを見回す。
大きな岩の隙間から、人がかがんでやっと入れるような洞穴が見えた。
(しめた・・・)
フラ付く体を叱咤しながら、洞穴の中に入っていく。
ズッ・・・・ズズッ・・・・・
フラ付いて、体の右側が固い岩肌に擦れたので、左へ体を傾けると、今度は体の左側が岩肌に擦れた。
見つからない様に、奥へ奥へと進んで行く。
「・・・・・ココまで来れば大丈夫だろう」
どのぐらい奥まで進んだだろう、壁に右手をついて進んできたので、迷わず出る事はできるだろう。
洞穴の中はだんだん広がっていっているらしく、福浦の今いる所は、腰を屈めて立てるぐらいの広さになっていた。
少し頭痛がするので、座り込んで、ゴツゴツとした岩肌に背中を預ける。
「ハァ・・ハァ・・ハァ・・ハァ」
呼吸が速い。
空気の通り道なのか、篭ったような息苦しさは無いが、空気中の酸素が少ない為か、少し胸に圧迫感を感じる。
辺りは真っ暗、時折風の通る音が福浦の耳に届く。
「ここ・・・何処・・・だ」
呼吸はまだ整わないが、少しだけ意識がしっかりしてきた。
体は脱力させたまま、気だるげに背中からデイバックを外して、腹の上に乗せ、手探りで明かりを探す。
ピッ
フサウターのスイッチを入れると、オレンジ色の23ボンヤリとした明かりが、暗闇を少しだけ退ける。
『HP:40000』
「はは・・・こりゃキリがいいや」
小さな数字は省いてあると思うが、コレが福浦の戦力らしい。
「今更数字で表されてもなぁ・・・・」
鏡を見れば凄惨な状況であるのは解る。
なんつーかアレだ、産毛にも満たないような毛なのである。
凄惨な光景は、見慣れていた。
かなり前から凄惨だとも思わなくなっている。
完全に認める、というのは時間がかかるが、幸か不幸か自分は若23であった。
ピッ・・・・ピッ・・・・ピッ・・・・ピピッ
何度、ボタンを押しても画面上の数値は消えなかった。
こうなると、暗闇の中で電源が付いた事が奇跡に思えた。
「地図・・・地図っと」
目の前に数字が出ていると邪魔なので、フサウターを耳の位置からずらして、明かりだけを利用する。
解っているのは、エリアを入ったところまでだ。
指で森本と会ったであろう場所を指す。
それから左に走ったことだけは覚えている。
「・・・・・ヒントが少ない」
ヒントは曖昧な方向と洞穴しかないのだから、現在位置が割り出せるはずも無い。
取りあえず、山岳エリアの禁止エリアは、初めの場所からかなり離れているので大丈夫だろう。
「外に出ないと無理だな」
しかし、もう暫くはココに隠れていたかった。
森本の事もあるが、体が少し重い。
「あー目つぶったら寝そう・・・・」
何処ででも直ぐに寝れる自分の体質を今は少し恨む、寝てはいけない・・・・。
「だいたい、バーチャル内で寝るって・・・・」
いや、でも72時間もいるのだから寝る事も必要だと思う。
その場合、現実で寝た方がいいのか?
必要かどうかもわからない思考をただ無意味に繰り返す。
安全の為にも寝る事は避ける為、カバンの中を漁る。
漁っても蜂蜜やら参加表やら方位磁石とか、そんなつまらない物しか出てこないのだが、眠気を飛ばす為にはそれも必要だった。
「そういや、コレって何なんだ?」
青い袋の中から取り出したのは、時限爆弾の様なそうでない様な・・・・真ん中には赤くて大きなボタンが付いている。
ボタンは鉄のケースに守られている上に、プラッチックで守られており、ソレを割らない限り押す事はできそうにない。
傍から見ても危険なのが解る。
それから、時限爆弾的な物とチェーンで繋がった鍵の掛かった小箱。
鍵は5桁のダイヤル式だ。
入る数字は膨大すぎてよくわからない、手当たり次第番号を入れても開く事は無いだろう。
(開けさせる気あんのか?)
ちょっと、怒りの篭った目で小箱を睨み付ける。
箱には『BEJJU』と意味の解らない英語と、『Kから始まる隠れ言葉をジュリアス・シーザーは何度回した?』と更に意味の解らない言葉が書かれていた。
「びっじゅー????・・・・あーーーー!解らん!!!!!」
イライラを発散させる様に、少し元気を取り戻してきた四肢をバタつかせる。
「俺は考えない方がうまく行く人間なんだ!」
乱雑に補助品をバックの中に突っ込み、その後に地図も続かせる。
バックの中は早くからグシャグシャだった。
さすが、ロッテ内で断トツの汚さを誇るロッカーを所有している事だけは有った。
福浦は怒りに身を任せて、体を起し、ズンズンと洞穴の奥に進んでいった。
「どうせあっちに出ても森本がいるかもしれないしな」
風が通り抜けているのなら、進んでいけば出口があるかもしれない・・・・無いかもしれないけど。
それでも、運営者側の森本がいるかもしれない場所へ戻るよりは、何倍も気が楽だった。
自分にはやらなければいけない事があるのだ。
アチラには、自分がゲームに乗らない側の人間だという事はバレているだろう。
もしも今度、森本に遭遇したら刈られてしまうかもしれない・・・・それだけは避けたかった。
真っ暗な中を、フサウターの頼りなさ過ぎる明かりを頼りに進んでいった。
【残り27人】
昨日見ないうちに一気に三作品キター!
14歳猫耳Tバックグラドルやら気持ちやらにご飯噴いたw
ふっくらさんの話はますます探偵小説みたいになってきたな…先が楽しみ
一気に3作来たか…
>「あ!あそこに14歳猫耳Tバックグラドルが!!」
これやられたら恐らく引っかかるだろう自分が情けないwwww
分かりやすくスタートエリアまとめ更新
[サバンナ] 木村拓 和田 下柳(失格) 吉野 井川 5人
[都市] 松中 多村 田中賢 川上 森本(刺客) 小笠原 川村 6(7)人
[砂漠] 福浦 黒田 塩崎 3人
[密林] 長谷川 小林宏 緒方 岩隈 東出 石井 的場 7人
[山岳] 福留 三浦 ラロッカ 川崎 宮本 5人
[氷河] 山崎(失格) 実松(失格) 久保 大沼 4人
あとスタンスまとめ
対主催(?):(´-_-`)[・ ε ・]〔´ー`〕(-Θ-)
MARUHAGE Destroyer(?):丶・ω・>[…ε…](・ ε ・) (´゚ぺ`)(´Д`)(〒U〒)〈´・_・`〉( ’ー’)ヽ‘=’)
あとはまだ微妙といったところか
所持武器&アイテムをまとめてくれる髪はおらぬか
>>612 保管庫さんが参加選手一覧のところにまとめてくださってる。
保管庫さんが見つからない・・・。
見つけました・・・。
すみません
>>611 MARUHAGE Destroyer達も顔文字表記だとなんか怖さが失せるなw
そういや井川がバーチャル世界ではまだ出てきてないね。
山下「さって、君も参加してもらうよ!!」
???「ここはどこなんですか???」
山下「いいからいいから、武器はこれで防具はこれね、じゃ、がんばって!!」
山下「岩瀬君、召還陣ありがとう。川上君にはHP+1000しておくからね」
岩瀬「ありがとうございます。あのひとアレでなやんでますし・・・」
新しい参加者が現れた。
ttp://vista.jeez.jp/img/vi7532506138.jpg 【残り27+1人】
参加者増やしたりしたら終わりが見えなくなりますが。
620 :
617:2007/04/01(日) 00:45:14 ID:uVMHP4yK0
アレを見たら、ネタにしないと・・・・
正式にするか、ネタLVでいいかは職人さんにオススメします
正直設定はネタ職人が好き勝手に変えてもいいわけですし
例えば、沼者の武器もいまのやつから俺達無限召還にかわっても
>>618 実際
>>617はギャグだろうが参加者増やすという案自体は前にも出ていたはず
終わりが見えなくなるなんてことは無い
(P)は気にしないでください・・・・orz
楽天実況スレより
606 名前:どうですか解説の名無しさん[] 投稿日:2007/04/01(日) 15:59:20.91 ID:Z0X7Md/q
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\
/ \
/ ヽ
l:::::::::. | (育毛剤)
|:::::::::: (●) (●) | 使用前
|::::::::::::::::: \___/ |
ヽ:::::::::::::::::::. \/ ノ
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\
/ノノ 〇⊂⊃\
/ノノノ ヽ
l:l:l:l:l:l. |l
|:l:l:l:l:l. (●) (●) |l| 使用後
|:l:l:l:l:l:::: \___/ |;l;|
ノ;ノ;ノノノ::::::::. \/ ノ|;|;|
ここは洞窟の中。本来なら真っ暗なはずだが、バーチャルという都合の良い世界に
おいては薄暗い程度にとどまっている。デニーは壁を背に座っていた。
ふと、デニーは気絶してる下柳に視線を落とした。バリカンを使ったにも関わらず、
髪はきれいになくなっている。下に散らかっているはずの髪もなくなっている。
本当に都合の良い世界だ。
つるっ23の頭、ボーボーの髭。バランスが悪いような、むしろワイルドに見えるような。
普通の選手なら何かしら思うだろう。しかしデニーは思わない。思えない。
彼はこの都合の良い世界の住人。山下の命令を遂行するのが最優先である。
他人に対する感情はプログラムされていない。
デニーには『とりあえずここにいて、襲ってくるやつがいたら刈ってもいいよ』
という命令が下されている。
デニーはその命令に従っただけのことであった。
もっとも下柳に自ら襲う意志があったのかは不明だが、
どうやらデニーはそう認識したようであった。
一瞬、デニーにある言葉がよぎった。
「お前は中日にいるんだろ?」
『デニー君、デニー君!!』
デニーが考え込んでいた最中、間抜けな明るい声がデニーの頭に直接響いてきた
。すでに下柳の体は完全に消えていた。突然の声にハッとしたデニーは、
「マスター、何でしょうか?」
少し驚いたような声で返す。
『そろそろ、君にも本格的に動いてもらうよ!!このプログラムを盛り上げてね!!』
「はい、わかりました。」
『あっ』
山下は突然ひらめいたように続ける。
『ただ刈るだけじゃつまらないから、デニー君には・・・』
嬉しそうに話しかける山下の横で、佐野はうつむきながら山下の言葉を聞いていた。
「ただ刈るだけじゃつまらない・・・か。」
本当に山下は髪の毛に対する忠誠を失ってしまったのか、
悪魔に髪と引き換えに魂を売ってしまったのか、髪を裏切るのか、
銀30枚でキリストを売ったユダのように。
佐野には山下がこのプログラムを毛ー無として楽しんでいるようにしか思えなかった。
デニーは山下から横浜の最強ピッチャーという風にプログラムされていた。
それがデニーに伝達されようとした時、下柳の言葉がそれを遮った。
―お前は中日にいるんだろ?
デニーの思考回路が動き出す。
「絶体絶命のあの状況で嘘をつく余裕があるのか。
あそこで何か言ったところで何が変わるでもないだろう。つまり、嘘ではない―」
「では、俺は何者なんだ?本当に横浜の・・・」
「―いや、そんなことはどうでもいい。マスターの命令に従うのみだ。」
バーチャルの住人であるデニーにとって山下は神に等しい存在である。
その山下を疑うなどあってはならない行為であった。
その時、下柳の体が消えていくのを見た。足の方から少しずつ光を纏いながらゆっくり消えていく。
デニーの思考回路が再び動き出した。
「こいつらは例え23ても“ゲンジツ”という世界で生きていくのだろう。
俺はどうなる?このプログラムが終わったら俺は・・・―」
「―消えていくのだろう。今目の前で起きている現象が俺にも起こるのだろう。
ただ、帰るところはなく。」
「このままただ消えていくのを待つのか?いや、消えることはもともと覚悟している。
そうプログラムされている。」
「ただ」
「・・・自分のことを知りたい―」
「俺は何者だ。デニーだ。
―違う、そのデニーという人物は“ゲンジツ”という世界ではどういう人物なんだ。
それを知りたい。」
628 :
訂正:2007/04/02(月) 06:52:36 ID:SUQ7vJdr0
ミスりました・・・。
2と3の順序が逆でした・・・。
申し訳ありません。
『・・・っていう感じで動いてもらえるかな?』
「はい、わかりました。」
『じゃあよろしくね♪』
「はい、わかりました。」
「・・・あの、」
『どうしたの?デニー君。』
「・・・いえ、なんでもありません。任務に移らせてもらいます。」
そう言うとデニーは足早に洞窟を去った。
「ふっふっふ、これでまた毛ー無がおもしろくなるよ。」
「なっ!?」
佐野は驚愕した。確かにこの男は毛ー無と言った。
本当に、ただ髪が死んでいく様を楽しんでいるようにしか思えない。佐野の体が震えだした。
「どうしたんだい佐野くん、あっ、わかった。
君も『萩の月』が食べたいんだね?いいよ、あげるよ。」
そういうと山下は『萩の月』を佐野に差し出した。
「・・・いえ、結構です。」
佐野はどうしても受け取る気がしなかった。
【残り27人】
「くそっ、井川の奴何処に行ったんだ?」
このゲームにおいて最大のメインディッシュとも言える井川を追っていた吉野だったが、動き回る井川を見失い、だいぶ経っていた。
「コレ、そんなに遠くまでは把握できてないのか・・・?さっきは木村さん達も実はけっこう近くにいたということか?」
「それとも、井川もフサウターで俺の動向をチェックしていたのか・・・?近づいてきたから逃げた・・・?」
自分が襲うつもりであっても、仮にもチームメイトである自分を避けたのかと思うと、嫌な気分になる。
(信用ねぇのかなぁ・・・あの野郎・・・・・・って、まだ決まったことじゃないがな。)
しばらく誰も映し出さなくなったフサウターに苛立ちを隠せない吉野。さらにその苛立ちが空腹と疲労を促進させる。
「・・・とりあえず誰もいないことだし、20分くらい飯にするか。現実は昼頃だろうか・・・皆起きているかもしれないな。」
吉野は近くに木陰を見つけ、そこにもたれかかり目を閉じる。
「う・・・」
サバンナから目覚めると、静かな機内に戻っていた。
(機内・・・だな。先ずは便所に・・・・・・?)
席を立とうすると、出発のときは隣にいたはずの下柳がいないことに気づく。
「!?・・・えぇっ!・・・・・・まさか・・・な。」
格闘技経験も豊富で、恐らく、この中ではトップクラスのファイターである下柳である。
襲い掛かかる求毛者も、ことごとく返り討ちにあってしまうであろう猛者。
(髪の毛のみならず、全身9696の”ごちそう”であったとしても、仮に別のチームの所属選手であっても俺は狙わないね。)
周囲を見ると下柳以外にも数名が席をはずしている。食事をしている選手も見える。
(やはり、皆休憩を取っている時間か・・・・・・アレは・・・シウマイ弁当・・・?俺もアレにするか。)
美味しそうなシウマイを頬張る選手を遠目で見つけると、自分もそれを食したくなる。
「あ、ちょっと」
ちょうど黒服の男が近づいてきたため、吉野は彼に声をかける。
「吉野様、何か?」
「あの、向こうの選手が食べてるのと同じモノを置いといてよ。俺はちょっと用をたしに行くからさ。」
「かしこまりました。」
(これでよし・・・と、下柳さんもトイレかな。井川は・・・?)
見回すと、自分の席で眠る井川の姿がある。井川の席には食べ終えた弁当箱が置いてある。
(!?・・・アイツ、いつの間に食事終わらせてたんだ?・・・まぁいい、アイツはまだ誰にもやられてなかったようで安心だな。)
ひとまず、自分の狙いをつけた獲物の無事を確認したため、吉野は安心してトイレへ向かう。
トイレへ向かう途中、パリーグの選手とすれ違うが、言葉を交わすことはなく、お互い軽く会釈するに留まった。
それもそのはず、通路には明らかに何か格闘技などをやっているであろう、体格の良い男達がこちらの動向を監視していた。
(そんなに警戒しなくても、ぶち壊したりしないよ。コレは・・・俺にとっちゃ復活のかかったチャンスだからな!)
トイレにたどり着くと、そこには誰一人選手がいない。
(え・・・てことは下柳さんは・・・)
用をたしていると、後ろの閉まっていた個室から水を流す音が鳴る。
出てきた男は、同じ縦じまでも、タイガースのそれではなく、赤い縦じまのユニホームであった。
(!?・・・じゃぁ、下柳さんはホントに・・・いったい誰が・・・?)
「・・・吉野君か。君も朝の排便をして来なかったのかい?」
「え・・・ぉお、緒方さん・・・っ!」
出てきた男は広島東洋カープの緒方であった。
(まさか・・・この人もいたとは・・・この人なら下柳さんとやり合えてもおかしくない・・・っ!)
「どうしたんだい?僕の後じゃ嫌かい?きちんと消臭はしておいたよ。」
「えっ・・・あ、いや、小便ですから。」
「そうかい。きちっとしておいた方がいいよ。ついバーチャルでしちゃうと、この年でお漏らししたことになってしまうからね。」
「・・・お、緒方さんは9696ですから、このゲームに・・・乗ってないですよね?」
思い切って吉野は聞いてみた。
しかし、緒方はそれには応えず、ふっと笑うと吉野の背中をぽん、と叩き去っていく。
「あ・・・緒方さn」
呼び止めようとすると、黒服の男がトイレに入ってくる。
「吉野様、お食事の用意が出来ました。」
「・・・あぁ」
(あんな人まで居るとなると・・・このゲーム、刈るのはもちろんだが、刈った跡に身を守ることこそ重要になってくるかもしれないな・・・)
トイレから戻ると、席には海老シウマイ弁当が置いてある。
食事をしながら作戦を練り直す吉野。
(バーチャル世界での資源(毛)が無くなる前の早い段階で10万本以上に乗せて、その後は10万本以上の"仲間"を見つけて共闘する・・・それも強力な仲間を・・・これだな!)
(仲間・・・緒方さんはさっきのはどういう・・・いや、俺のHP次第では乗ってくれるかもしれない。9696を味方にするには、先ずは自分が9696にならないとな!)
「そうと決まれば急がないと!」
急いでシウマイをかきこみ、ほおばっていると、突如、頭に冷たい感覚を覚える。
しゅわ・・・しゅわ・・・
「え?・・・何?冷て・・・」
突然の感覚に戸惑うも、少し考えてある結論に達した吉野は顔面蒼白になる。
(ちょっ!!!誰だ!?)
急いで食事を中断し、目を閉じゲーム開始スイッチを押す。
再びバーチャルで目を覚ました時、吉野の眼前には毛むくじゃらの生暖かい巨大なモノが乗っかっていた。
「ちぃっ!何なんだ!?」
払いのけようとしても重くてびくともしない。しかもその生物は、あろうことか吉野の頭髪を食べているではないか。
「わぁぁぁあああああっ!!!どけぇっ!!!!!」
吉野はその生物の胴体に拳を叩き込むと、その生き物は吉野から飛びのく。
飛びのいてそれが何者であったかがわかる。
「ちょ・・・嘘だろ・・・」
吉野の頭部に喰らいついていたもの。それは自然界最強のハンター、百獣の王である獅子であった。
緒方セリフも怖いよ緒方w
毛ー無が一瞬なんだかわからんかったw
ひどい当て字だな・・・w
635 :
己との戦い:2007/04/02(月) 19:38:50 ID:eIdZvXAM0
「今の歌ちょっと違うんじゃない?」
声と共に茂みの向こうから現れたのは、緒方孝市(C9)だった。
「っ!!!」
思わぬ他者との遭遇に、松中信彦(H3)は失神している多村仁(H6)をかばうように立ち上がって身構えた。
「確か『我泣き濡れて蟹と戯る』だったと思うよ。
石川啄木でしょ?」
松中とは対照的に、緒方の態度は泰然としたものだった。
(考えてみれば、こんな剛毛な人が他人の毛を刈る必要なんて無いよな。
だったらやっぱり『餌』として参加してるのか?)
松中が考えを巡らせていると、緒方が無表情で多村の髪を見ながら話しかけてきた。
「多村君の髪は、なかなか頑丈なようだね。」
「・・??」
たぶん『餌』だと思われる緒方が不用意に自分たちに近づいてきた理由も分からないのに、さらに唐突な言葉をかけられて、松中は混乱した。
「全身いたる所怪我が絶えない多村君なのに、髪だけは頑丈。
おかしいと思わない?」
「何が言いたいんですか!?」
松中は先ほどから緒方が何を考えているのかさっぱり分からないことに焦れて、思わず声を荒げた。
「・・・多村君の体に必要な栄養が、全て髪に取られてるとしたら?」
「何っ!?」
「そんな馬鹿なこと、あるはずn」
「これだけのスペ体質なのに、髪だけは23知らず。
・・これは不自然だよ。」
緒方は淡々と言った。
「刈ってあげたら?」
「え・・・?」
「本人はよく手入れして大事にしてるみたいだけど、もしかしたらこれはとんでもない代物かも知れないよ。
そう・・多村君の頭にからみつく寄生樹ってとこかな。」
松中は思わず緒方の顔と多村の髪を見比べた。
緒方の端正な顔には何の表情も浮かんでおらず、そこから意図をくみ取ることは不可能だった。
「多村君にとっては、丸23にしてあげるのが優しさじゃないかな。」
松中は、もはや多村の髪から目を離すことができなくなっていた。
―――髪を手に入れることができる。
しかも、『本人の健康のため』という大義名分があるから、罪悪感を持たなくて済むのだ。
松中は、その甘い誘惑に完全に心を奪われていた。
「ああ、君の武器はその鼻毛カッターなのか。
・・バリカン貸してあげようか?」
その問いに『はい』と答えようとしたとき、松中の脳裏に誰かの声が響いた。
―――・・・こ・・、・・彦・・・、・・N彦。
「!その声はK久保さん!?」
「K久保さん!K久保さんでしょう、どこにいるんですか!?」
突然虚空に向かって叫びだしたM中に、緒方は目を見張った。
「あああ・・・K久保さん・・。」
そのうち、M中は空中の一点だけを見つめだした。
M中には見えているのだ。
白い光の中で、剛毛アフロに六尺ふんどし一丁で、腕を組んで仁王立ちしているK久保の姿が。
そしてそのK久保は、厳しい表情で何も語らずM中を凝視していた。
「K久保さん・・・どうして何も言ってくれないんですか・・・。」
M中はいたたまれなくなって顔を伏せた。
自分は何かK久保さんを怒らせるようなことをしただろうか。
―――何か、怒らせるような―――
そこまで考えて、M中はハッと我に返った。
今年のHークスはK久保さんが4年ぶりに復帰、O監督も大きな病気を乗り越えて現場に戻ってきた。
今年こそ我らがHークスは悲願の日本一にならなくてはいけない。
そんなときに仲間の髪を奪ってチームの和を乱すなど、あってはならないことだ。
(くっ・・一瞬でもあんな甘言に惑わされるとは!
こんな俺のままではK久保さんに会わせる顔がない・・!!)
K久保の幻はいつの間にか消えてしまっていた。
しかし、キッと顔を上げたM中の目にもう迷いはなかった。
「俺は、仲間の毛を刈りはしない!!多村を守り抜いて漢の証を立ててみせる!!」
「・・ふーん、よくわからないけど、誘いには乗らないってことだね。」
緒方はそこで初めて少しだけ笑みを浮かべた。その表情は、どこか満足げにも見えた。
「真に受けられなくてよかったよ。俺も冗談で言っただけだから。」
緒方は、悪びれる風もなくさらっと言い放った。
「なっ!?悪い冗談ですよ緒方さん!!」
「ハハハ・・。
・・ところで、君たちはこれからどうするの?」
「どうするって?」
緒方は松中に近づくと小声で耳打ちした。
(何人かこのゲームを止めようとしてる連中がいるようだよ。
乗る気がないなら君も)
その時、密林の奥からガサガサと物音がした。
緒方は松中からサッと離れると、何かを警戒するように視線を彷徨わせた。
「少し長話しすぎたようだね、もう行かないと。
俺もしなきゃいけないことがあるから。」
緒方は、松中に背中を向けると、また茂みの向こうへと消えていった。
「緒方さん結局何がしたかったんだ?」
松中には、最後まで緒方の思惑は分からなかった。
【残り27人】
佐野さんと大ちゃんの間に不協和音か?
吉野がどうなっちゃうのかも気になる・・。
話のつながり上、よろしかったら『必勝法』より前の時間の話に
していただきたいんですけど、いかがでしょう?
そうだ・・・緒方は今、松中たちと・・・
すいません、機内での吉野との遭遇は緒方登場〜今の歌、違うんじゃない?
の間にあったということでどうでしょう?吉野との遭遇が後のほうが都合良ければそれで。
自分のミスでした、すいません。
それにしても開始早々から大ちゃんと佐野に軋轢が生じてるwww
じゃあ、機内での吉野との遭遇は緒方登場〜今の歌、違うんじゃない?の間ということで。
後からうpしたのに、こまいこと言ってすいませんです・・。
運営側のもめ事でゲーム中止になったら23バトは伝説に(ry
職人の皆様方乙です。
アフロでフンドシのK久保さんの仁王立ちw
だめだ笑いが止まらん
毛ー無ってwww
職場で昼休みに読んでてお茶吹いたwwww
手が震えている。
今度のは間違いなく怒りでだ。
「アイツ・・・・アイツ・・・・アイツ・・・・」
震える指先で、眺めの前髪を横に流す。
帽子は先ほどの戦いで、何処かに落としてなくしてしまった。
何度も何度も、前髪を横へ流していく。
「アイツ・・・アイツ・・・・アイツ・・・・」
小林の右手には小さなペティナイフが握られていた。
もちろん髪の毛以外には、人体にはまったく無害な物だ。
「何処だ!何処へ行った!!!!」
地図も確かめずに闇雲に、密林の中を進んでいく。
左目に付けたフサウターには何の反応も無い。
矛先を失った怒りと苛立ちは、耐え切れずに体から声からあふれ出し、正常な思考を蝕んでいく。
「いわくまぁ・・・・」
生暖かい二酸化炭素と共に、低い声が出る。
道なき道を猛スピードで進んでいる為、ユニフォームのズボンは泥を吸い込み、手には小さな擦り傷がたくさん出来ていた。
(何故、俺ばかり馬鹿にされる・・・・)
先ほど、岩隈を馬鹿にした事など、頭の片隅にも無かった。
ただ、暴れまわる怒りに身を任せて、怒りを煽るだけの思考を繰り返す。
(俺は球界一のイケメンピッチャーだ!足も長くて八頭身だし、妻も若い!!)
長い腕が蛇の様に撓り、行く手を塞ぐ草を切った。
本当に髪の毛を除く、人体以外には有効なようだ。
小さいが、自分は大きな武器を貰った。
「俺を馬鹿にしたお前には、丸23じゃ優しすぎる波平の様な素敵な髪型にしてやるよ!!!」
あの優男の頭が見事な波平ヘヤーになっている所を想像すると、堪らなく愉快だ。
「覚悟してろよ、球界二位の弱小チームのイケメンエースさんよぉ!!!」
ピタリ。と小林の足が止まった。
ピッ・・・・ピッ・・・・ピッ・・・・ピッ・・・・ピッ。
手足の震えはもうすっかりと治まっている。
興奮で紅潮した頬はそのままだが、目は冷ややかな感情を湛えていた。
ピッ・・・・ピッ・・・・ピッ・・・・ピッ・・・・ピッ。
フサウターに映る『H52』『YS6』の文字をじっくりと観察する。
ただ、小林の目には『H52』の文字しか目に入ってはいなかった。
「ムネリンか・・・」
川崎がファンになんて呼ばれてるか・・・・。
この毛ー無の勝利条件も自分の23出条件も、勝てなかった者がどうなるかも、小林の頭の中には既に無かった。
「球界一のイケメン内野手を、坊ちゃん刈りにしてやるってのもいいなぁ」
楽しそうに口角を上げて、笑みを浮かべる。
自分を小間使いとしか思わない球団、2323で弱者の中で強者を気取ってるくせに、俺の計画を邪魔する腹が立つアイツ。
つもりに積もった怒りは、やがて『イケメン』への憎悪へと姿を変えていった。
球界で『イケメン』と称される選手達を、無残な姿にする。
それだけが自分の中に沈んだ、ヘドロの様な怒りを吐き出す唯一の方法だった。
「それより岩隈を波平にするのが先か?まぁどっちでもいいかぁ・・・・時間はある、武器も」
また、指先が長い前髪を横へ流す。
「『イケメン』に23より辛い苦しみを」
もはや正気を失った瞳は、ボンヤリと焦点を失い、暗く淀んでいた。
瞳に光が差し込む事は無い。
【残り27人】
アイツじゃなくてあの野郎です。
修正するの忘れてました・・・・・orz
一思いに丸刈りにするより残酷な髪型なんて…。
コバロリはサド侯爵だなぁwww
コバヒロ壊れちゃったw
フクーラは一人で大変だなあ。
久保や(現時点での)コバヒロなんて、福浦の苦労に比べれば…なのに。
駄目だwwwwww
さっきから笑いが止まらないww
コバヒロもMARUHAGE Destroyerとなってしまったか…
>球界二位の弱小チーム
俺の好きなチームは一位かorz
コバヒロwwwwww怖いよwwwwwww
>足も長くて八頭身だし、妻も若い!!
妻 も 若 い ! !
バロス
> それより岩隈を波平にするのが先か?
ポンジュース吹いたwwwww
コバヒロの人気に嫉妬w
このスレ読んでると咳が一向に止まりません
でも続きが気になって結局全部通して見ちゃった
ああジレンマ
緒方が見守るスレとは違った感じでいいなww
K久保とM中も某スレのことなんだよね?wそんで、塩崎www
もうここまで完成度高いネタ書かれると俺もうネタ書けないwwww
いろいろ吹いたwwww
そういや井川OPだけしか出てないな
M中スレと風物詩スレは俺の大好きスレだから、ネタ元があれだとかなり嬉しい。
あとマシーアスのやすめの形は神スレもwwww(スレちだが…)
ログ持ってる人うPしてホシス…
コバヒロは9頭身あるとの説も…。
にしてもコバヒロはこっちでもブチ切れキャラなのかwww
実物はどっちかというとぼやっとしてるのになw
今日の中継でデニーを見たが、ヒゲが…ヒゲが…!!
あんな9696としてたなんて…っ!!
660 :
644:2007/04/04(水) 01:01:38 ID:alC8bfQQ0
>>651 球界で二番目のイケメンエースで、弱小チームのエースだという事を
一遍に表したくて、その台詞にしたのですが
そうですね・・・そう言う風にもとれますよね
日本語難しい・・・・orz
661 :
651:2007/04/04(水) 11:26:03 ID:WINXXTpX0
>>660 いえいえww面白かったので全然おkですwww
それにしてもその俺の好きなチームの参加者は2人から1人増えたようだが(ry
一応保守。
>>663 一瞬「育成に失敗した選手」かと思ってよく見たらそっちかよwww
捕手
>>666 23しく乙です!
AAと名ゼリフで振り返る2323な戦いw
そして最後の人マジで忘れてましたwwゴメソ
>>666 やべぇwwww
笑い死にかけたwwwwwwwww
だっぺwww
>>666 髪すぎるwwwww
イガー忘れててマジサーセンwww
>>666 23しくGJ!!
超ワロスwwww
BGMもナイスだね
>>671 憲伸乙
早く石井に会えるといいね
>>666 すごく・・・・GJです・・・
血文字の再現がいい!
それに・・・・小久保ワロスwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
(´・Å・`)カワイソスw
>>666 2323しくワロタwwwwwwww超GJ!!!
>毛っ頭
>毛ー無
原いてぇwwwwww
>>666 にやにやが止まらないwww
どうしてくれるwwwwww
ごめんね、イガー。
気が向いたらお前の話作るからね。
>>666 マジで乙です
23ワロタwwwwwwww
保守がてらここで振り返る名場面、名台詞↓
>「バカな!ありえねえッ!」
>「あ、あー…こちらSHAT(Saving Hair Assault Team)。司令室、聞こえますか?どうぞ。」
>『Dear Hassey,』
>「26歳で結婚したばっかりなのに23てるさ!!この生え際のジェルだって塗ってるよ!!朝晩きちっとな!!」
>「――かかってくるのかい?」
> 君の近くに居る人…名前は言えないけど、イニシャルだけ、仮にO監督としておくけど、
>「毛毛毛毛毛毛毛毛毛毛……」
>「13万!いや、三浦!?」
多杉てスマソ
とりあえず個人的お気に入り
>「減らす!?バカなっ!!!いったい何のためにっ!?」
>「ところで俺の生え際を見てくれ。こいつをどう思う?」
あたりかなぁ
泣きじゃくる福留が大好きww
684 :
代打名無し@実況は実況板で:2007/04/07(土) 22:17:15 ID:bsjGn9e90
かわいそうだけど幼児退行をおこしたドメにはワロタwww
>(俺は球界一のイケメンピッチャーだ!足も長くて八頭身だし、妻も若い!!)
妻も若い!!に撃沈wwww
やっぱり
>MARUHAGE Destroyer
>「毛毛毛毛毛毛毛毛毛毛……」
といったあたりかな……
あと松中の見た夢と実松の演説もかなw
多村やば過ぎwwww
サネスラガガーすぎwwww
宮本( ´-_-`)と川ア( ”ー”)のやり取り。
flashでも左上端っこに小さく「え、ムースってそんな種類があんの?」て出たからワロタw
(*´-_-`)「はは、ひげそりやって、これ」
のあたりはもう実写で浮かんできたw
>「俺は・・・お、お嫁さんが・・・欲しぃっ・・・っ!」
>「9 6 9 6 は 悪 な ん だ 。」
>七色に乱反射する光の中、ディスコの天井から頭を出した大豊が、
力強くうなづいてくれた気がした。
出てないところから選ぶとこんな感じ。
「あの素晴らしい髪をもう一度」の替え歌も(・∀・)イイ!!ついついフルコーラス歌ってしまったw
あと個人的には石井と的場のペアが好き。なんか和む。
話からそれてしまうが今日スカイにオリ西武戦を見に行ったら
練習中に23和田さんに嬉しそうに手を振って話しかける塩崎を見た。
…やばい刈られる!和田さん逃げてええええええええ!!!
と思わず叫びかけてしまったorz
>>690 マジで?あの二人て何か接点あるのか?
やはり2323どうし通じるものがあるんだろうか…w
やめてくれww23バトラー全員、リアルでそういう目で見そうだwwww
>>690 和田さんもMARUHAGE destroyerだからむしろ・・・
刈りしろのあまりない和田さんに塩崎が油断して
「わださ〜ん!」
「・・・」「?」
・・・
ジャキッ!ジャキジャキジャキッ!
>>691 バックネットからしっかり確認したから間違いないw
ただあまりのショックで写真撮るの忘れてたorz
マジで何しゃべってるのか聞きたかったよ
>>693 刈りしろバロスwwwwwwwwwww
でも正直和田さんはマーダーイメージないんだよなあ…
練習中も惜しげもなく頭皮さらしてたしな。
言うなれば髪をも超越した存在と言うか…
しっかし23・リアルアッー!・連絡梨とネタ三拍子そろった塩崎がこうも地味なのは
やっぱり球団が地味だからなのか…惜しいことだ
まさか塩崎このスレ見てて話題作りに話しかけたんじゃないだろうなw
塩崎はプロ野球板住人にとってはまさに生きたネタ神なのね・・・
(ネタスレ住人の)熊本県民にとっては、塩崎と前田神は郷土の誇りです。
MARUHAGE Destroyerズが保守だ!
丶・ω・>[…ε…](・ ε ・) (´゚ぺ`)(´Д`)(〒U〒)〈´・_・`〉( ’ー’)ヽ‘=’)(ёдё)
おお、もう700だ
保守
塩崎がいた…
でも帽子かぶってるのが残念なような安心したような。
お絵かき板に23バトの絵が投下されてる事に今気づいた。
↑URLうpお願いできますか?
ちょっと23りすぎにつきage
707 :
704:2007/04/12(木) 22:22:20 ID:oXZsZm150
9696になぁれ♪
この間、京セラDで塩崎を見た。
帽子をかぶったまま、ベンチに座る塩崎を暫く観察していると・・・
塩崎が右手にヘルメット、左手は帽子のツバをもち
とても素早い動きで、帽子からヘルメットへ被り替えた・・・・
塩崎は2323を隠し始めて、どのぐらい立つのだろうか?
素早い動きww
その技術に関しては大ちゃんもすごかったらしいぞ
>>711 大ちゃんは大リーガー直伝だからな
最も現役晩年になると隠すことすら諦めつつあったらしいが…
捕手
塩崎顔面ケガしたらしいね…大丈夫かな…
今日普通にHR打ってたな
「ねえ的場さん、『うはつ』って何ですか?僕、字96でしか見たことない言葉が多くて……書いてくれれば分かるんですけど」
石井の髪の毛にしか意識がなかった的場は、ふと我に返った。
(こいつ、本気で言ってるのか?)
いくら危機感も警戒心もないとは言え、この状況でこの質問はヤバすぎる。
石井が属するチームの正捕手ならともかく、目の前の男はそこまでバカだとも思えない。
「漢字で書くと……こうだ」
的場は近くに落ちていた小枝を拾い、地面に『有髪』と書いた。
石井は感心したようにその文字を眺めていたが、急に顔つきを変えてその隣に文字を書き込み始めた。
『後ろに誰かいます。このまま筆談して下さい』
(後ろに誰か…!?)
全く気付かなかった的場をよそに、石井は更に書き込んだ。
『口では、別の会話をして下さい』
「へえー、こういう字を書くんですね。漢文から来てるんだろうな」
「あ?あぁ…仏教用語は中国語っぽいのが多いからね…」
後ろから来ている何者かが気にはなったが、全く気配すら感じ取れない的場は、ただひたすら石井に様々な仏教用語の解説をした。
石井はまるで子供のような頷き方をしつつ、後ろの状況を逐一地面に書き、これからの対策を提案してきた。
『後ろにいるのは多分1人。襲っては来ないでしょう』
『捕まえる?刈(や)る?』
『的場さんがちょっと刈ったら、逃がしてあげましょう』
『了解』
「川上さんどこにいるんだろう…」
「え?」
急に、石井が泣きそうな顔をした。
今の今まで真剣な顔つきで対策を練っていたのに、口をついて出たのは自チームのエースの名だった。
「川上さん会いたい……川上さんとこ、連れてって!」
「そりゃ無理だって。どこにいるか分からないのに」
「じゃあ、1人で行きます」
その言葉に反応してか、後ろの茂みがガサガサ揺れだした。
次の瞬間、石井はその茂みに飛び込んでいった。
呆気にとられている的場の前で、時折男の悲鳴らしき声が聞こえてきた。
それが石井なのか、もう1人の誰かなのかは判別がつかなかったが。
「的場さーん、手伝って下さーい」
茂みの下から、にょっきり足が出ていた。
注意深く足を引っ張り、出てきた顔を見た的場はまた呆気にとられた。
「おい、こいつってもしかして…」
「はい。この人、ちょっとくらい平気でしょう?」
「いや、そうだけど……」
石井はそんなに力が強そうなイメージではない。
『サイレントK』の通り名が示す通り、物静かな人物だと的場は思っていた。
しかし、葉っぱまみれで気絶している男は、紛れもなく井川慶であった。
ちょww石井かっこいいんだがwww
そして『捕まえる?刈(や)る?』 爆笑wwwwww
あかん、もういちいち笑えるwww
そしてイガー危機一髪
>石井が属するチームの正捕手ならともかく、目の前の男はそこまでバカだとも思えない。
何気にひでえwww
tanisige・・・
ってことは緒方の時もコイツかw
久々の登場なのに、OP以来いまだに井川の台詞が聞けねぇwww
722 :
代打名無し@実況は実況板で:2007/04/16(月) 21:32:54 ID:NDPSFjHwO
テス
723 :
まとめ1:2007/04/17(火) 01:09:40 ID:msUSQw740
平日に3連休という暇人の俺が、とりあえず、ココまでの全選手動向まとめてみた。
―求毛者―
田中【F3】
第一回放送終了後に初登場。自分の23には気づいていない。
ピンクのサンバイザーに心躍らせるも、酸性雨を防げない機能的欠陥に恐怖し崩壊。
都市エリアで徘徊中、松中・多村に遭遇しかけるもニアミスに終わる。
現在は都市エリアで徘徊中。
いや、崩壊早すぎだろコレw
福留【D1】
第一回放送終了後に初登場。早くも自分の気持ちに正直になる。
―ドメも可哀想にな。顔も頭もあんなんじゃ女も逃げるさ―
先輩の言い放ったこの言葉が、後に彼を苦悩に導く。「俺は・・・お、お嫁さんが・・・欲しぃっ・・・っ!」
ラロッカと交戦し優位に立っていたが、先の言葉とラロッカの優しさが福留の精神を崩壊させてしまう。
現在は山岳エリアで精神崩壊後、ラロッカ・三浦に中途半端に刈られ放心中。
三浦の"勘"によると、何か恐ろしいものに目覚めつつある…?
川上【D11】
第一回放送終了後に初登場。ごまかしの効かない自分の23と支給品の肉色のミラーボール(T豊)ブロマイドに苦悩する。
しかし、初めは自分を苦悩せしめたミラーボールだったが、無惨な23にも関わらず、堂々としていた漢の生き様が川上に勇気を与える。
―単にカツラがバレちゃったからに過ぎないのだが―
ガッツポーズ開発中に聞こえた実松を襲った毛道に恐怖を覚える。
現在は都市エリアで石井を保護すべく捜索中。
石井【D30】
離陸直後の第一回放送中に初登場。いきなり放送内容がよくわからない。
放送内容が理解できずに、SHATに○っちゃわれそうな所を的場に救われる。
ハンデを抱えるが、それを補うクレバーさが垣間見る。
井川捕獲時には優しいんだか冷たいんだかよくわからない一面を覗かせる。「はい。この人、ちょっとくらい平気でしょう?」
現在は密林エリアで井川を捕獲し、的場と処遇を協議中。
724 :
まとめ2:2007/04/17(火) 01:11:25 ID:msUSQw740
和田【L5】
第一回放送終了後に初登場。サバンナエリアでいきなりライオンに追いかけられる。
鏡に映るカツラをかぶった己を見て、とうの昔に捨て去ったはずの気持ちを思い出す。
ゲーム阻止に動く実松を見つけ尾行するが、実松が訴えている最中、その気持ちは抑えられなくなり…
ジャキッ ジャキッ ジャキッ ジャキジャキッ
ジャキジャキジャキッ!!!
現在は実松を襲撃後、都市エリアで行動中。
眠れるライオンが、ついに目を覚ました。
吉野【47】
第一回放送終了後に初登場。待ってましたと言わんばかりに参加を決意。
帽子が脱げるのを恐れて、思い切り腕を振れないイップスから抜け出す好機とばかりに張り切っている。
刈るのに都合の良い移籍選手・井川を追うが見失う。「どうせオマエは移籍しちまうんだから、それも・・・海外になぁっ!!!」
休憩中に緒方に遭遇するも、はぐらかされてしまう。
現在はサバンナエリアでライオンに捕食されている最中。
松中【H3】
離陸時に初登場。席は多村と隣同士で行動も共にしている。
彼のK久保への心酔は、多村を苦しめる要因にもなっている。(……K久保さん、やっぱりその六尺黄ふん最高です)
森本や緒方の甘言に惑わされ苦悩しつつも、今のところ己の信念を貫いている。
何やら不審な田中と遭遇しかけたが、いち早く現場を離れる。この時、おぶっていた多村が大破。
実松の訴え中のアクシデントもあり、密林エリアへ身を隠す。
現在は密林エリアで遭遇した緒方の不審な行動に不信感を抱きつつも多村と行動中。
的場【H26】
石井がSHATと揉めている時に初登場。石井を○っちゃわれる危機から救う。
若干暴走気味の石井を止める役割を果たしている。
支給品が数珠な辺りは何という皮肉か…
石井とのコンビは意外に良いかも知れない。
現在は密林エリアで井川を捕獲し、石井と処遇を協議中。
725 :
まとめ3:2007/04/17(火) 01:12:37 ID:msUSQw740
宮本【YS6】
川崎が洞窟内で荷物確認中に初登場。スワローズで唯一の参加者。
ゲーム阻止を表明し、仲間を集う。
黒田・小笠原・三浦ら国際試合でチームを組んだ心の知れている人間を求める。
松中の名前が出なかった辺りは…
川崎のワックスにやたらと食いついたのは何だったのか…?
現在は山岳エリアで、川崎と共に的場らを仲間にすべく捜索中。
久保【M16】
離陸前に初登場。席は福浦と隣。大ちゃんの放送に触発され、早々に参戦決意。
チームメイトの福浦との共闘を目論見、メッセージを残す。
『M16 とし B―2』
現在は福浦を探すべく、南極エリアを脱出中。
吉野がえびシューマイを食べたくなったのは、彼のせいか?
山崎【M47】
第一回放送終了直後に初登場。ゲームで最初の犠牲者。
元チームメイトの木村に刈られる。刈られた後に、高木大成率いる「SHAT」に捕らえられ、全裸にされたうえ収容される。
現在は隔離室に幽閉。
福浦【M9】
第一回放送終了後に初登場。席は久保と隣。スタートが砂漠エリアで日干しになりかける。
機内にすでに山崎がいないことに気づき、ゲームが既に始まっていることを知る。
ヘッドギアを外そうとするも、大ちゃんに警告を受ける。
砂漠エリアと山岳エリアの境界で、体半分は〜県ゲームをしているところを森本に見られる恥辱を味わう。
現在は森本の甘言に惑わされながらも、山岳エリアでゲーム阻止のため行動中。
726 :
まとめ4:2007/04/17(火) 01:13:52 ID:msUSQw740
木村【G58】
第一回放送時に初登場。元チームメイトの山崎を裏切り、ゲームの口火を切る。
同姓同名の超有名人の存在は、彼の心に大きな影を落としていた。
「もう言わせん、俺の名前を呼ぶ奴に。あんなことはもう言わせんぞ……」
現在はサバンナエリアで行動中。
彼の行動は、その後の選手達の動向に大きな影響を及ぼしている。
ラロッカ【Bu30】
第一回放送終了後に初登場。三浦をだまし討ちにする。
しかし、三浦にはてこずると判断し逃走。
新たに福留と交戦し劣勢に追い込まれるが、福留の哀しい心に触れ、彼を救おうと決意。
だが、ラロッカの優しさは福留を精神崩壊させてしまう。
福留に奪われた毛の幾らかを取り戻した後、三浦に促され逃走。
現在は都市エリアで三浦と共に行動中。
塩崎【Bu31】
東出が長谷川を襲撃する直前、大ちゃんと佐野がモニター観察時に初登場。宮内によって送り込まれたジョーカー。
スカイマークスタジアムでの"事故"がトラウマになっている。
FAで話題になった黒田・小笠原に対して、嫉妬の炎を燃やす。
現在は砂漠エリアで笑ってる最中。「毛毛毛毛毛毛毛毛毛毛……」
東出【C2】
第一回放送終了後に初登場。当初から計画的に参加を決意。
理不尽な理屈で長谷川刈りを決意。
9 6 9 6 は 悪 な ん だ 。
密林エリアで長谷川を見つけ、生え際を3cm後退させた後に逃走。
現在は長谷川を襲撃した後、逃走中。
727 :
まとめ5:2007/04/17(火) 01:14:43 ID:msUSQw740
黒田【C15】
第一回放送終了後に初登場。まったり阻止を決意。
自らのHPに驚きを隠せないものの、負の連鎖には巻き込まれない意思を持つ。
ゲームの不備を大ちゃんに突っ込み、ルール改正を促すなど、影響力は強い。
東出により生え際を後退させられた長谷川を慰める言葉には無理があった。
「いや、これは23やない。これはデコや。
大丈夫や、長谷川。おまえのそれも、デコやで。」
現在は砂漠エリアで長谷川と共に行動中。
岩隈【E21】
第一回放送終了後に初登場。イーグルスで唯一の参加者。
大ちゃんの手紙に触発され、元祖イケメンエースとして小林刈りを目論む。
小林奇襲時には、見事に小林の弱点をつき奇襲に成功。クレバーな一面を見せる。
「あ!あそこに14歳猫耳Tバックグラドルが!!」「何ッ!?」
現在は密林エリアで小林奇襲を中断し逃走。更なる恥辱を小林に与えるため行動中。
川村【YB16】
離陸直後に初登場。大ちゃんの変貌に驚愕。「バカな!ありえねえッ!」
"銀メダルの代償"に苦悩しているところで、大ちゃんから特別に贈られた『あの素晴らしい髪をもう一度』を聞きぶちキれる。
現在は都市エリアで13万…もとい三浦をフサウターで確認。合流すべく捜索中。
ちなみに、支給品の脱毛液入り水鉄砲は壊れているらしい。
―餌―
井川【NY29】
ゲーム開始前に初登場。空港で新妻とともにいる所を黒服に声をかけられる。
バーチャル空間では結構移動してそうな雰囲気。
現在は密林エリアで石井・的場に見つかり、捕らえられ気絶中。
バーチャルに入ってから未だ台詞なしw
728 :
まとめ6:2007/04/17(火) 01:15:52 ID:msUSQw740
多村【H6】
離陸時に初登場。席は松中と隣同士で行動も共にしている。
窺い知れない松中に不信感を覚え、いきなり足を挫いてスペる。
その後も妄想気味の松中に不信感を覚えつつも、その優しさに触れる。
都市エリアで不審な田中と遭遇しかけるも、松中におぶわれ離脱(残機−1)。
都市エリアで残機をハイペースで破壊した後、現在は密林エリアで松中に保護されつつ気絶中。
川崎【H52】
第一回放送終了後に初登場。暴君・斉藤の一存で2323BRに送り込まれる。
名だたる23を擁するH・L・MからHP合計40000を奪うという、ハードルの高い課題を課せられる。
洞窟内で宮本と遭遇し、行動を共にする。
松中に得体の知れない何かを感じている。
現在は山岳エリアで、宮本と共に的場らを仲間にすべく捜索中。
下柳【T42】
第一回放送終了後に初登場。バーチャルデニーによる最初の犠牲者。
見えない"何か"に遭遇したときでも、冷静に戦況を分析している辺りはさすが。
吉野曰く、球界でもトップクラスのファイターの片鱗だけは見せたが、あっけなくデニーに葬り去られる。
この人があっさりやられるくらいだと、デニーを倒せる男はいるのか…?
現在は恐らく収容室に幽閉。
小林【M47】
木村の山崎襲撃直後、大ちゃんと佐野がモニター観察時に初登場。ファッション誌で16歳モデルとの海外ロケに釣られ参加。
自分に対するチームの扱いにキれる。知らないうちに佐野や岩隈等に恨みを買っている。
密林で岩隈の奇襲され、刈られるも岩隈は逃走。
「あ!あそこに14歳猫耳Tバックグラドルが!!」「何ッ!?」
身に降りかかる数々の不幸により、「『イケメン』に23より辛い苦しみを」という逆恨みに発展。
現在は密林エリアで川崎を見つけ、坊ちゃん刈りにすべく狙っている。
729 :
まとめ7:2007/04/17(火) 01:17:05 ID:msUSQw740
実松【G53】
山崎収容時に初登場。2人目の犠牲者。
今のところ収容シーンを目撃した唯一の人物。非道な収容シーンを目の当たりにし、ゲーム阻止を決意。
拡声器でゲーム阻止のため訴えかけている最中に和田に襲撃される。
武器はハズレ、放送を聞き逃し、訴えも空振り。一通り三球三振した所で失格するあたりはさすが。
現在は恐らく収容室に幽閉されている。
小笠原【G2】
実松の訴え直前に初登場。家族想いな一面を覗かせる。
このゲームはファイターズから移籍した天罰かも、と落ち込む。
実松が襲撃される様を映し出す視点になっていた。(サネ!!嘘だろ!!)
現在は都市エリアで呆然と立ち尽くしている。
長谷川【C42】
第一回放送終後に初登場。マーティー直筆のメッセージはやはり読めなかった。『Dear Hassey,』
A井に自分が30万(宿舎のおかず)で売られたことを知り、落ち込む。『要は気持ちですよ。気持ちを強く持つのですよ』
東出に理不尽な理屈で生え際を3cm上げられ、23れゆく恐怖を生まれて初めて実感する。
現在は砂漠エリアで黒田と合流し、生え際について慰められつつ共に行動中。
(いや、アンタのはどう見てもデコじゃねえだろ)
東出の行動は、長谷川の心の深層に一片の影を落とした…?
三浦【YB18】
第一回放送終後に初登場。当初から参加拒否。
ラロッカに心を許し、その隙をつかれ襲撃されるも回避する。「ラロッカ・・・ラッカルと呼んでも良いかい?」
ゲームに参加表明するラロッカを追って、ラロッカと福留に遭遇。
投手の"勘"が精神崩壊した福留に底知れない何かを感じ取り、ラロッカと共に逃走。
現在は福留から逃走後、都市エリアで行動中。
何故か前監督の牛島?らしき人物からメッセージを受け取っていたが、当の牛島は三浦が消息を絶った理由を知らない…?
730 :
まとめ8:2007/04/17(火) 01:19:52 ID:msUSQw740
―運営―
大ちゃん(山下)【E編成部長】
離陸直後の第一回放送で初登場。このゲームの主催者。
球界の2323の象徴的人物であったが、ロン毛に生まれ変わった。
佐野や黒田に突っ込まれながらも、その人徳?で何とか運営している。
バーチャルデニー開発からジョーカー塩崎の招聘、ひちょりを飼いならすあたりはやはり只者ではない。
現在はシウマイタイムを終え、萩の月でおやつタイム。
『それでは皆さんに、髪の奪い合いをしてもらいます』
佐野【解説者】
SHATからの山崎収容完了報告時に初登場。大ちゃんの補佐的役割。
小林等9696プレイヤーに対する憎悪は計り知れない。「減らす!?バカなっ!!!いったい何のためにっ!?」
大ちゃんの闇に畏怖しつつも、何かと23ている大ちゃんに的確な突込みを忘れない。
毛に対する愛ゆえに、大ちゃんのたなびかせるロン毛に心を奪われるシーンもちらほら。
そして、その深い愛ゆえに、毛に対する愛情を失った大ちゃんに不信感が目覚めつつある。
現在は司令室でお茶を淹れている。
高木大【L営業部】
失格した山崎収容時に初登場。機内治安維持部隊「SHAT」のリーダー。
かつてのイケメン9696な"本当の自分"を取り戻すために参加。
現在は機内で治安維持活動中。
彼の報酬は和田に関係があるのかないのか…?
ひちょり(森本)【F1】
多村スペ直後に初登場。運営の刺客としてマーダー啓蒙活動を主な任としている。
実際、彼の23ましの言葉に松中や福浦は大いに惑わされる。
「………欲しいんでしょ?毛。」「自分のHPを知るのが・・・恐いんですよね?」
バーチャル界において、彼の意思は神の意思とも言える無敵に近い存在。
現在は砂漠エリアと山岳エリアの境界付近で活動中。
ちなみにゲームが円滑に終了すれば彼にも恩恵を約束されていたが、「キャラに合わない」という理由で断っている。
731 :
まとめ9:2007/04/17(火) 01:22:18 ID:msUSQw740
緒方【C9】
大ちゃんからの業務連絡時に初登場。運営の刺客だが、役割は明らかにされていない。
どうやら緒方自身は別に目的があるらしい…?(見ていてくれ、かなこ)
何者かに監視されていたが、すぐに見破るあたりはさすが。「――かかってくるのかい?」
吉野や松中に接触するも、意味深な言動で彼等を悩ませる。「今の歌ちょっと違うんじゃない?」
現在は松中に意味深な言葉残した後、密林エリアで活動中。
バーチャルデニー【YB41】
下柳の洞窟侵入時に初登場。大ちゃんによって生み出された強力なバーチャルファイター。
大ちゃんにより、"横浜最強のピッチャー"として作り出された。故にユニホームもドラゴンズでなくベイスターズ。
その実力は凄まじく、格闘技経験者の下柳をあっさりと葬り去るほど。
プログラムは完璧ではないせいか、下柳の言葉に心を動かされる場面も…「では、俺は何者なんだ?本当に横浜の・・・」
現在は大ちゃんに何らかの指示をもらい、サバンナエリアで活動中。
―その他―
牛島【元YB監督】
ベイスターズ球団の不審な行動を察知し、動き出す。
古木の屋台に小宮山を呼び出し、選手失踪の真相解明の協力を申し入れる。
宮内【Buオーナー】
ジョーカー塩崎を2323BRに潜入させた張本人。
隠れ23の塩崎を既に見抜いていた恐るべき男。
岩隈を葬り去ろうと画策している。
小宮山【M14】
牛島に呼びかけられるも、どうするかは不明。
古木【YB33】
屋台店主。ドラム缶を買いに行かされる。
渡辺【運営?】
大ちゃんが兵士にシウマイを持っていくように指示をした、その行き先の人物の名前。
まとめ職人お疲れ様です! でも大沼総帥がいません!!!
733 :
まとめ10:2007/04/17(火) 01:55:23 ID:msUSQw740
>>732 あ・・・
―餌―
大沼【L15】
大ちゃんのルール改正放送直後に初登場。南極エリアの寒さが億劫で別荘に引きこもっていた。
参加者中、最強の武器「火炎放射器」と「2323光線」を支給される。
I東の半分諦められているようなメッセージが哀しい。
自分の弱点については自覚しており、これが生まれ変わる機会ではと思う。
意思を固めるために引きこもっていた別荘を放火。参加を決意する。
これだけお膳立てされて、ようやく決意する辺りはさすがというか…
「OK、俺達に任せろ。さらに楽しいショーを見せてやるぜ」
>>723-730 まとめ乙さまです。わかりやすくて(・∀・)イイ!!
これ見るまで川崎が求毛者だと勘違いしてたのは秘密だw
>>734 どもです
自分で見直してたら、色々修正点が…
福浦の初登場は離陸前だし、川崎の課題はF・L・Mの3チームですね。
けっこう登場人物が多いので、人物相関がややこしい。
コレで職人様がほんの少しでも書き易くなれば…
736 :
代打名無し@実況は実況板で:2007/04/17(火) 02:29:01 ID:NwGPSL0fO
あと経過時間とか書いてくれれば完璧なんだけどなぁ
>>723-730 わかりやすい、ホントありがとうございます!
さり気に鋭いツッコミが混じってるのがワロスw
乙であります
重箱の隅ですがキムタクの背番号は0に変わりましたよ。
あと自分も「渡辺」が気になってました。たぶんあの人…ですよね…
あと塩崎等はBuじゃなくBsと書いてもらえると有り難い。
740 :
代打名無し@実況は実況板で:2007/04/17(火) 10:11:04 ID:HzHfv5Fw0
741 :
代打名無し@実況は実況板で:2007/04/17(火) 17:55:28 ID:6muH6gM8O
四月中旬になって投稿が減ってしまったな
職人さんは学生さんが多いのだろうか
時代はついに一桁にwwww
>>743 マジレスになるが、酷い親だな・・・。
自分の子供で金儲けするなんて最悪だよ。
流れトン切ってすまん。
>>723-731 >>733 遅くなったがGJ!!
ただのまとめのはずなのにいちいち面白かったぞwww
こうやって改めて見てみるとどの選手もいい味出してるなあw
>>743 「あ!あそこにTバックはいた9歳グラドルが!」
「・・・」
「!? 何故反応しない・・・ロリコンという話はデマだったか?」
「いや別に否定はしないけど、流石の俺も一桁はねえわ・・・」
748 :
代打名無し@実況は実況板で:2007/04/18(水) 19:23:50 ID:gx7+0/JqO
久々に読み返してみたら井川の茨城弁にワロタ
毎月18日は頭髪の日なんだってよ
実は10月20日は頭髪の日らしいぞ
実は2月3日も(ry
23月が無いのが悔やまれるな
さっき携帯の時計を見たら23時23分だった
こんばんは保管庫管理人です。
勝手ながら、
>>723-731を保管庫に保管させていただきました。
面白かったので、是非残しておきたいなぁ・・・と思いまして
削除、もしくは修正のご要望があれば、保管庫BBSまでお願いします。
>>754 管理人さん乙です。
ついでに
>>666のFlashもお願いします、と思ったらすでに収録されてたw
「このへんがエリアの境界のはずやけど…」
宮本と川崎は立ち止まっていた。目の前には周囲と何も変わらない風景があり、
この向こうが別の世界になっているとはとても思えない。
「…あの僕、先に行って様子見てきましょうか」
「いや、二人で同時に行こう。もし敵がいても二人いたらなんとかなるやろ」
敵、という単語に緊張を覚えた二人は軽く膝の屈伸をし、深呼吸をする。
「…よし、行くぞ。1・2ーの…」
二人が目の前の空間に思い切りよく飛び込むと、途端に周りの空気が濃密に感じられ、
一瞬息が詰まった。例えるなら、クーラーがキンキンにきいた室内から
いきなり真夏の屋外に出たときのような感覚と言えるだろうか。
周りの景色は先ほどまでの荒涼とした岩山ではなく、樹木が鬱蒼と生い茂り、
その幹には23植物がからみついており、地面にはシダやコケが生え、原色の花々が
咲き乱れる世界へと変わっていた。
「…どうやら《密林エリア》みたいですね」
「ああ、誰もいないみたいで良かっ…」
そう言いかけた宮本の表情が強張る。ピピッと短い電子音がするのと同時に、
宮本がフサウターへと手を伸ばした。
「…誰かこっちに来る」
「え!?」
川崎のフサウターには何の反応も無い。慌ててボタンをいろいろいじってみたが
何も変わらなかった。
「僕のは何も映りませんよ?」
「え?そんなはずは……M41、HP:87000?」
「M41って、ロッテの宏之さん?にしてはHP87000って少なくないですか?」
「・・・てことは、もう、誰かにやられた後ってことか…?」
二人の身体にまた緊張が走った。
小林宏之らしき人物が何処でやられたかは判らないが、さっきまでは遭遇しなかった
"敵"がやはりこの世界には存在するようだ。
「行ってみよう」
宮本が光点の示す方向へ歩みかけたとき、
「あ、いま僕のにも反応出ました!」
川崎が小さく声をあげた。
「なんだろ、このフサウター調子悪いのかな」
移動していた光点の動きが一瞬止まり、こちらに向かってくるようだ。
ということは、向こうも今こちらの存在に気付いたということか。
前方の森の中からガサガサと草木をかきわける音が近づいてくる。
宮本は川崎の前に立つと、前方の薮の中へと呼びかけた。
「おーい!ヒロユキ!宏之か?!」
「・・・もとさ・・・」
「宏之!無事か!?こっちは戦う気はないから安心せぇ!」
「・・・やもとさん!川崎!」
「宏之!!」
茂みの中から現れた小林宏之のその姿に、宮本と川崎は絶句した。
顔とユニフォームは泥で汚れ、帽子をかぶっておらず剥き出しになった頭部は
てっぺんの毛が無く、まるで河童か中世ヨーロッパの修道士のような髪型になっていた。
「…そんなに酷い頭ですか?」
小林が寂しそうに笑う。
「あ、いや、すまん…誰にやられた?」
「岩隈です。あいつ、後ろからいきなり襲ってきたんです」
「岩隈が!?」
もっと切羽詰った連中ならともかく、まだ十分な毛量を保っているはずの岩隈が刈る側に
回ったということは、この毛゛ー無に乗る人間は宮本の予想よりずっと多いのかもしれない。
そして川崎は、宮本とはまた別のことで動揺していた。
(ロッテの選手と会っちゃった…)
簡単に会えるとは思っていなかったロッテの選手に、意外とあっさり出会えてしまった。
しかも、岩隈に襲われたとはいえ小林のHPはまだ87000もある。HP40000なんてすぐ…
いや、だめだ。手紙には「必ず3球団」と書いてあった。ロッテ1球団だけでは条件に満たない。
それに何より今の自分には刈る手段が無い。宮本の電動シェーバーならどうにかなるかもしれないが、
宮本が貸してくれるはずがない。
と、そこまで考えて川崎は23しく頭を左右に振った。
宮本はこの23な毛゛ー無をどうにかしたいと言った。これは毛゛ー無ではなく、
なにかの怪しい実験なのではないか、とも。
なのに、自分だけが23出することを考えてどうする。自分は条件をクリアして23出したとしても、
まだチームメイトやたくさんの選手たちが、この世界で過酷な毛゛ー無を続けさせられていることに
変わりはないのだ。それを見て見ぬふりするような腰23な奴にはなりたくなかった。
「ムネ、どうした?」
「なんでもないです!」
「そうか?……それでな、宏之。俺ら、このしょーもない毛゛ー無に乗る気は無いんよ。
俺らと一緒に行かへんか?俺ら仲間を探してるんや」
小林は端正な顔を少し歪めた。
「…でも、僕と一緒にいると、宮本さんまで狙われるかもしれませんよ」
「!」
川崎は愕然とした。
自分は宮本と会えたことですっかり安心していたが、誰かが自分を狙ってきたら、
宮本も巻き込まれる可能性は十二分にあるのだ。
「別にそんなん気にしてへんよ。誰が敵に回ってもおかしくない世界なんや、
誰と一緒におってもどっちみち危険なことに変わりはあらへんし…」
宮本は背後の川崎を振り返り、苦笑いを浮かべた。
「だからお前もそんなこと気にせんでええよ」
川崎は声が出なかった。だから無言で頷くことしかできなかった。
―――うまくいった。
宮本、川崎とともに歩きながら、小林は内心ほくそ笑んだ。
自分の姿を見た時の宮本と川崎の反応には少々傷ついたが、ともあれ二人の同情を買うには
充分だったようだ。
こんな酷くやられた人間が、まさか他の人間を狙っているなんて考えはしないだろう。
それが人間の心理というものだ。あとはなんとか二人を引き離し、隙を見て川崎を坊ちゃん刈りに…
「そうだ、宏之さん」
「ん?」
隣を歩いている川崎が自分の顔を見上げている。
「何?」
「あの、さっき、宏之さんのフサウター、どのへんで反応しました?」
「どのへんって?」
「距離にしてどのくらいっていうか…」
「距離?森の中だからはっきりしないけど、十数メートルってとこかな」
「じゃあ僕のと同じくらいですね…」
川崎は何かを考え込むかのように顎に手をやった。
「どうかした?」
「さっき、宮本さんのフサウターは僕のよりも早く反応したんですよね」
「へぇ…」
「だから、僕のフサウター調子悪いのかなって思ったんですけど…」
(……待てよ)
小林の頭の中で、急速にある考えがまとまり始めた。
―――宮本のフサウターは川崎のよりも早く反応した。
―――そして、さきほど自分は岩隈の接近に全く気が付かなかった。
これらの事実を考え合わせると、もしかしたら、宮本や岩隈といった"ハンター"達と、
自分や川崎といった"餌"達とでは、フサウターの索敵能力に差があるのではないか。
あの饅頭野郎のやることだ、それくらいのハンデをつけることは大いにありえる。
しかし、そうだとすると状況は変わってくる。
川崎を刈ったらさっさとトンズラしようと思っていたが、自分よりいいレーダーを持っていて
しかも敵意が無い宮本と離れるのは得策ではない。
(作戦を変えるか…)
甘いマスクの裏に企みを隠し、小林は静かに牙を研ぎ始めた。
【残り27人】
>>754 保管庫様いつもありがとうございます。
今日の中継を見ていて長谷川の予想以上のむさくるしさに驚いたのですが、
それより何より今季のサブローの髪型をどう思うか皆さんのご意見を伺いたいです
うお、乙です
ムネリン逃げてー!
うおお、リアルタイムで投下に立ち会ったぜ…
新作乙です!
コバヒロ今日勝利投手になったばっかりなだけにタイムリーだな…
ステルスコバヒロが楽しみだぜ…
あと腰23ワロスwww
職人様、23しく乙です。
どーでもいいことだが、
フサウターの索敵能力を素敵能力と読み間違えてしまった・・・
書き手さん乙です!
そして、保管庫さんいつもありがとうございます。
>>761 モバイル選手会の写真が、コバヒロより凄い件
縮毛でもかけたような頭ですよね。
職人さんいつも乙ですwクソワロタwww
ところでみんな、聞いてくれ
昨日までの合計で今年のプロチを3袋買ったんだ
そしたらカード6枚のうち5枚が、
黒田、川上、福浦、松中、和田だったんだ
しかもその内4枚がキラカードだったんだ
眩しすぎて目がくらんだぜ
職人さん乙です!
ロリ、狂ってる割には冷静だなw
>>766 よく確かめたほうがいいぞ。もしかしたら全部普通カードかもしれない。
その5名だからキラカードに見えるだけなのかもしれn・・・・・
あれ?こんな夜中にだれk
ジャキ!ジャキッジャキッジャキッ!
今までのエリア移動記録です。
南極→サバンナ
南極→都市
砂漠→山岳
山岳→密林
山岳→都市
サバンナ→都市
エリアの配置だけでも決れば、もっと書きやすくなると思うんですけど・・・
バーチャルだから。
平面上に並んでいるのではなく、どこでもドアみたいに境界がそれぞれ独立しているエリアを繋いでいると考えれば。
>>771 もちろんその様に考えてるのだが、
最低1つのエリアにはいけない様になってる筈なので、
ソコの所をキチッとしてないと、うっかりいけないエリアに行ってしまいそうで・・・
とりあえず、休みだからといって徹夜している暇人が案を出してみる。
エリア案1
|都市|
|砂漠| |密林|
|山岳| |サバンナ|
|南極|
≪利点≫
・様々なエリアへの移動が可能
・真ん中の部分が今後何かに使えそう
≪問題点≫
・この場合だと山岳から都市エリアに行けないwww
ただし、山岳の端から南極を一瞬通れば、山岳から都市に行く事は可能
エリア案2
|サバンナ|
/ | \
|南極| --- |都市| --- |密林|
ヽ / \ /
|砂漠| -------- |山岳|
≪利点≫
・都市エリアへ行きやすい為、都市エリアでの戦いが起こりやすい。
・辻褄が合っている
≪問題点≫
・エリアが対角線上に無い為、エリアが繋がっていない面が出来る
・無理矢理対角線を繋げたとしても(砂漠⇔密林・南極⇔山岳)サバンナエリアがあぶれる
>>772 そこを考え方を変える
協会は適当に五分割になってるのでどのエリアにもどのエリアから行ける
ランダムでどこかの世界に飛ばされて、体の一部が触れてればその人と同じ世界に行けるとか
ザビエル風宏之を想像したら笑いがとまりません
ダイス振ってその目に応じたエリアに移動
シャドウハンターズ方式
ごめん、マジメに考えてくれてる皆には悪いけど
真剣に考えれば考えるほど笑えてくるwww
なんという思考能力の無駄遣い…でもないかwww
あと自分が気になっとるのは地図
それぞれのエリア内の地図はあるけど、どこのエリアとリンクしてるかはわかってない、ということでおk?
あと、バーチャルの世界でHPに応じて
髪が増えたり減ったりすることにしないか?
そうじゃないと一旦刈られてから取返したりすると
全員ひちょり状態になってしまう。
現実世界で反映されるのは
毛゛ー無終了後ということで。
この辺りから出るとあのエリアに繋がってるっていうことだけ分かってるってのは?
エリア同士の位置関係ではなくて
あー、バーチャルだからそういうのも可能だね
>786
クソワロタ
787 :
代打名無し@実況は実況板で:2007/04/22(日) 19:20:31 ID:Q644KkbiO
>786
自分に笑う意味が分からん
四面で移るエリアが違う
ちょっと見ないでいるうちにFlashまで出来てたのかwwww
見守るスレの暇ネタで調子に乗って和田vs松中とか書いてた頃はまさかこんな大事になるとは思わなかった
職人さん頑張ってください
エリア案
八面体みたいにすれば何とかなりそうな希ガス
頂点6個だし、どうせヴァーチャルなんだし
職人さんにもリベロ、セッター、アタッカーがいるような気がする。
なんとなく。
792 :
代打名無し@実況は実況板で:2007/04/24(火) 21:56:21 ID:bnLe874J0
>>791 ヒットで出塁職人、コツコツ繋ぎ職人、圧倒的破壊力職人ということですか?
793 :
第二の人生(1/6):2007/04/25(水) 03:53:54 ID:KzbgQAOf0
「っぅあああぁぁっぁぁ!!!!やめろっやめてくれぇぇっぇ!!!」
吉野の頭髪に襲い掛かる牙。それは吉野のHPを容赦なく削り取っていく。
52000・・・50000・・・49000・・・
もみくちゃになり、偶然ボタンが押され自分のHP計量モードに入ったフサウターは非情のカウントを始める。
「あ、だめっ!あっ、ぁあっ、あっー!」
吉野が必死にもがこうとも、百獣の王はその暴虐を止めようとはしない。
44000・・・43000・・・
「誰か!誰か助けてぇぇぇっぇぇ!!!」
巨体にのしかかられどうにも身動きもとれず、吉野は遂に自分の最後を覚悟した。
(最早これまでか・・・・・・あぁ・・・引退したら大阪でたこ焼きの屋台でも始めようかな・・・)
(安くて美味しいたこ焼きにしよう・・・100円6個入りで、外はカリカリの中は熱々のじゅわっと・・・)
目を閉じ、引退後の身のふり方を考えていると、閉じた瞼の暗闇が突如紅く照らされる。
「きゃいん!きゃいん!」
「なっー!」
目を開けると、先ほどまで自分に夢中で食いかかっていたライオンが、紅蓮の炎に包まれ走り去っていく。
「これは・・・」
「ふ・・・さすがだよな、俺。」
「・・・?」
「危ないところでしたね、大丈夫でしたか?」
「お、オマエは!?」
吉野の視線の先には、巨大なタンクとホースを抱え、ライオンズブルーに身を包んだうっとおしい金髪のデブが立っていた。
「・・・吉野・・・さんですっけ?」
「えっと・・・」
「あぁ、知らなくて当然ですよ。俺はライオンズの大沼って言います。ピッチャーやってます。」
「あ、あぁ・・・ありがとう、大沼君。助かったよ・・・」
大沼が差し伸べた手につかまり、ゆっくりと立ち上がる吉野。
「何と言うか・・・すごいね・・・それ・・・」
「あ、コレですか?すごいですよね。」
「でもそれ・・・下手したら死んじゃうよね・・・」
「はははは、吉野さん、襲われて気が動転して忘れちゃいましたか?コレはバーチャルですよ。それに・・・ほら、見てくださいよ。」
大沼が指さす先には、先ほど丸焼きにされたはずのライオンが、哀れ丸裸になり、怯えながら遠巻きにこちらを伺っている。
「え・・・あれ?」
「コレ、相手の体には無害なんですよ。体以外を焼き尽くす仕組みになっているんです。」
「ふ、ふぅーん。すごいね・・・」
「でしょー。たぶんこの世界で最強の武器ですよ、コレ。」
「そうだろうね・・・」
(コレは・・・コイツは使えるかもしれない・・・しかし、仲間にするにはどうやってコイツの信頼を得ればいいんだ・・・)
9696にして強力な力を持つ味方を作る。吉野が考えた目的どおりの男が目の前に現れた。
しかし、まだ2323な自分を味方にしても、大沼にはリスクだけで何のメリットもない。
現段階では、男との出会いは早すぎるのだ。
(コイツ、見た感じは能天気そうで抜けている印象を受けるが・・・何かコチラから条件を提示できれば・・・)
「それにしても、結構やられましたね。」
「ん?・・・あぁ・・・」
「見てあげますよ・・・あ〜・・・酷いですね、37000ですか・・・」
吉野は自分のHPをフサウターで見られ、あげく無神経にHPを告げる目の前の男に怒りを覚える。
(しかし、今この男を刺激してはならない・・・)
「・・・大沼君はやっぱりソレで俺を見つけてくれたのかな?」
「ん?いや、反応したのはすぐソコに来てからですよ。」
「!?・・・そうなのか?俺のはそこそこ遠くまで反応するんだけど。」
「え!?・・・そこそこってどれくらいですか?」
「そうだな・・・200〜300mくらいかな?もっといくかな?正確なところはまだわからないけど・・・」
「すごいですね。ソレがあれば奇襲も危機回避も思いのままってことですか。」
「まぁ、休憩中に襲われたから、今のはどうしようもなかったんだけど・・・」
「へぇ〜いいなぁ・・・」
(・・・これは・・・)
吉野は欠けていたピースにぴったり当てはまるモノを見つけ出す。
「・・・大沼君、よかったら一緒に行動しないか?」
「え〜・・・」
「本来、君くらい9696ならこの毛ー無に乗る必要はない。君もそんな強力な武器を得たところで、持てあましていたんじゃないのか?」
「・・・そうですね。」
「そうだろう。まぁ、君くらいなら誰とも戦わずに3日間やり過ごせればベストだろうからね。」
「・・・えぇ。」
「だが少し考えてみて欲しい。君に戦う意思がなくとも、毛ー無にノリノリな奴等は容赦なく君に襲い掛かるだろう。」
「え・・・」
「君がいかに最強の武器を持っていても、そのフサウターじゃ奇襲を防ぐことは出来ない。
さっきもこのエリアで山崎さんが木村さんに刈られたんだ。乗っている人間は意外に多いんだよ。」
「そんな・・・」
「9696な君は気づかないだろうが、君の豊潤な毛は、無い者にとってあまりに魅力的なんだ・・・」
「そうなんですか・・・」
「考えても見るんだ、君はこれからの3日間ひと時も気を抜けない状況なんだ。残り67時間・・・一瞬も気を抜かずにいられるかい?」
「それは・・・ムリですね・・・」
「だろう!そこで僕とこのフサウターの出番さ!コレがあれば未然に危険を回避できるし、危険分子に逆に奇襲をかけることも出来るんだ!
美味しい条件だと思わないかい?」
「う〜ん・・・」
「・・・そうだ!食事休憩の時は必ず僕が君の食事を取ってこよう。そして、休憩の時は同時に休憩に入ろうじゃないか。
休憩に入る前に僕のフサウターで確認しておけば、今回のようなケースを除けば、危機回避の確率かなり高められるだろう?」
「なるほど・・・いいかも知れませんね。」
「そうだろう!そうと決まれば・・・」
「でも、人の恨みを買うのはなぁ・・・」
「そう!そこなんだよ!そこで刈る人間はセリーグに限定しよう!
僕も本当はセリーグの人間に恨みを買いたくはないんだけど、そうも言ってられない状況になってしまったから。
君に害のないような人選を優先しようじゃないか!」
「そうですか・・・」
(くくく・・・実際に刈るのは俺じゃないからな。俺が恨みを買うことはない。セリーグの人間も標的に出来れば、かなり目的の達成は楽になる。くくく・・・)
「うんうん、・・・まぁ、大沼君は他人の毛なんか刈りたくないだろうけど、今の僕のHPからすると・・・5〜6人だけ!頼むよ!
ソレまでは僕が君の身の安全を保障するから!」
「う〜ん・・・」
「悩むことじゃないと思うんだけどなぁ・・・その9696過ぎる頭髪を持つ君はきっと狙われる。
しかし、リスクを賭してまで刈る必要のない君は出来る限り安全にゲームを進める必要がある。
そのためには僕のフサウターが必要だし、僕には君の力が必要だ。」
「う〜ん・・・」
大沼は腕を組んで考え込んでしまった。
(ちっ!図体の割にはチキンだな、何を悩んでやがる・・・こうなれば仕方ない・・・)
「俺は・・・この頭のせいで思い切り腕が振れなくなってしまった・・・君も投手なら経験があるだろう?
縮こまった腕で投げても良いボールはいかない・・・そのせいで俺は・・・
でも、大勢の人の前でこんな惨めな頭は晒せない・・・増してや以前より酷くなってしまっている。」
「・・・」
「もうプロ野球選手を続けるのは駄目かも知れない・・・大阪でたこ焼き屋の第二の人生を歩むしかない・・・
そう思っていた矢先の・・・これは・・・僕の最後のチャンスなんだ!力を貸して欲しい!」
「吉野さん・・・」
「もう一度、あの甲子園のマウンドに立ちたいんだ!毛のせいで思い切りプレーが出来ずに引退なんて僕には我慢ならないんだっ!」
「吉野さん、わかります・・・実は俺も気が弱くて、ストライクが入らないのが続くと、ビビッてボールを置きにいってそれを・・・」
「そうだろう!・・・そうだ!これは僕にとっても君にとっても良い転機じゃないか!
名だたるセリーグの強打者達をこの世界で蹂躙すれば、きっと君にも自信が芽生えるはずだ!
想像してみるんだ、例えばパリーグで誰もが抑えられなかった小笠原君が君の前に屈する姿を!これは大変な自信になると思わないか!?」
「・・・あの小笠原さんが・・・」
「あの小笠原君を倒せば、だいたいの選手なんてカスみたいなものだろう?松中君やカブレラとも対等に渡り合えるようになるよ!」
「なるほど〜・・・」
「ふふふ、よし!そうと決まれば先ずはこのエリアを脱出しよう、君が倒してみたい強打者を優先して探しに行こうか!」
すると、しばらく腕を組んで目を閉じて考え込んでいた大沼がかっと目を開く。
「わかりました。」
「そうか!」
吉野が喜んで大沼の手を掴もうとすると、吉野の目の前に噴射口が現れる。
「え・・・」
sien
「確かにそのフサウターがあればとても便利ですね。」
「そ、そうだろう・・・だから・・・」
「ですから、そのフサウターを僕が身に着けていれば無問題ですよ。」
「あ・・・いや・・・」
「実はね、俺、とっくに乗っているんですよ、この毛ー無。」
「ちょ・・・や・・・」
「ありがとうございます、吉野さん。小笠原さんかぁ・・・確かにあの人を蹂躙出来れば相当な自信になりますよ〜。」
「だ・・・だから・・・」
「だから、そのフサウターさえあれば、アナタは必要ありません。」
「ば・・・やめ・・・っ」
「見事な話術でしたよ・・・決意する前の俺なら、きっと乗っていたでしょうね。」
「はわ・・・ぁぅぅ・・・」
「・・・吉野さんのたこ焼き屋さん、食べに行きますからね。マヨネーズは多めに付けてください。」
「っ!ちょっ、待っ!わあああああああああああああああっっっっ!!!!!」
紅蓮の業火が吉野の身を包む。業火は吉野の残り僅かとなった頭髪だけを燃やし尽くす。
炎に包まれながら、吉野は大阪の下町でスキンヘッド(リアルスキンヘッド)の名物タコ親父として汗を流す自分の幻を見たような気がした。
そして、残ったのは吉野の身に着けていた高性能フサウターだけになる。
大沼はそのフサウターを拾うと、自分のつけていたフサウターと取り替える。
「えっと、周りの検索はこのボタン・・・と・・・・・・ん?あれ?・・・G58・・・どんどん遠ざかってく・・・?」
辺りを見渡すと、米粒大の人が一目散に走り去っていく姿があった。
「ぷっ・・・はははははははっ!!!さっきまでこっちを伺ってたんだ!ははっはははははははっ!!!」
青空の下、大沼の笑い声が響く。
「こりゃぁいいや。これがあれば相当有利に戦いが出来るじゃないか!」
「さぁ〜て、と・・・そろそろお腹も空いてきたし、危険なこのエリアは早々に退散して飯にでもしようかな♪
・・・う〜ん、小笠原さんかぁ・・・まぁいいや、飯食いながら次の獲物でも考えようかな♪」
最早恐れ知らずの暴君は、地図を片手に次のエリアを求めて歩きだした。
【失格 吉野誠 残り26名】
沼者始まったな。いろんな意味で。
>「あ、だめっ!あっ、ぁあっ、あっー!」
クソワロタ
ぅぁぁ・・・吉野は小笠原・松中より年下でした・・・
「小笠原さん」「松中さん」ですね・・・
阪神勢が全滅か・・・orz
>>801 そう言えば井川はヤンキースか
だがちょっと待って欲しい、彼等は機内で生きている。
エェェ(´д`)ェェエ
バーチャル世界の体が消えてもフサウターは残るのか…
804 :
代打名無し@実況は実況板で:2007/04/25(水) 08:26:48 ID:RXPm3rwnO
俺の吉野がぁぁぁ...
G58ってだれ?
807 :
代打名無し@実況は実況板で:2007/04/25(水) 16:21:28 ID:sjgBhAgm0
>>803 相手を倒して装備を奪うのはロワの常套手段だし別に気にならなかったけど
バリカンとフサウターは別扱いにしたほうがいいのだろうか
>>808 いや、フサウターってバーチャル世界からのログアウトにも必要でしょ?
交換しても大丈夫なのかなと思ってさ。
そういや今まで脱落した相手の装備を奪った例ってのは無かったんだな、
全部一緒に消えてしまうのかと思ってたんだが。
>全部一緒に消えてしまうのかと思ってたんだが。
そこで三秒ルールですよ
>>うっとおしい金髪のデブ
ちょwwwバロスwww
>>809 失格になったら強制ログアウト、バーチャルの世界には屍(?)が残るってことでいいんじゃない?
今回の沼者の場合は吉野のフサウターを索敵用、自前のフサウターをログアウト用に使い分けるってことで整合性は取れそうだけれど。
沼者おっとろしいよ沼者(((( ;゚Д゚)))
>>812 おおむね賛成だが、屍が残るのは勘弁してほしいな・・・。
生々し過ぎ
>>814 >>812は「フサウター=しかばね」と読み取れたんだが。
「遺体」ってことじゃないっしょ
都内の繁華街から少し外れた所にある雑居ビル。
「596・・118・・93」
小奇麗な身なりをした小宮山が、小さな紙を見ながらユックリとボタンを押している。
一見普通の雑居ビルだが、裏口には暗証番号式ロックが付いていた。
それに牛島の名刺の裏に書かれた番号を打つ込むと、ピーっと小さな音の後に、扉の鍵が開いた。
牛島が指定したのはこの雑居ビルの3階、
『Death Castle』と言う、なんとも縁起の悪そうな名前の事務所だった。
エレベーターは無い。
狭い階段をただ無言で上がっていく。
寒々しいコンクリートの廊下を進んでいくと、一番奥に味気ない文字で『Death Castle』と書かれた白いプレートが貼ってある扉があった。
ガチャ
ドアノブに手をかける寸前に、扉が独りでに開いた。
「うお・・・」
幸い扉はユックリと開いたので、開いた扉に激突する事はなかったが、かなり際どい感じに避けた。
「良くきてくれましたね」
扉の向こう側から、柔和な笑みを浮かべる牛島が顔を出した。
入り口から続く廊下はかなり狭いようだ。
扉の間から覗く牛島の姿で、廊下はほぼ埋まり、奥の様子を知る事はできなかった。
「朝早くからお手数かけました、散らかってますが入ってください」
ラフな格好の牛島の後を追う様に、狭い廊下を歩いていく。
「ココをこれから、私達の拠点とします
必要な物は揃えておきました」
閉塞感を感じる狭い廊下が終わり、視界を塞いでいた牛島の体がずれて、散らかった室内が見えた。
「おはうようございます、小宮山さん」
書類やパソコン、様々な物が置かれた室内の真ん中、ガラスの入った机と安物のソファー、
ソコには真剣な表情をした佐伯がポツンと座っていた。
「・・・佐伯」
「彼には少し前から手伝ってもらっています」
乱雑に散らばった書類の中から、一枚の紙を引っ張り出してくる。
「コレが、今現在消息が解らなくなっている選手です」
渡された紙には、数十名のプロ野球選手の名前が書いてあった。
「不確定な者も居ますが、解ってるだけでそれだけの選手が行方を暗ませています」
目で文字を追っていくと、行方不明の選手一覧の中に『小林 宏之』『山崎 健』の名前を見つける。
「な、ヤマケンや宏之まで!?宏之はメジャー派遣を断ったはず・・・」
「小林君は、雑誌の取材で渡米したそうです。
山崎君は怪我のリハビリで渡米したそうですよ、何やら画期的なリハビリ方法が受けられるとかで」
"外国"と言う隠れ蓑
それは、選手達の連絡不通を上手く隠していた。
「私が気が付いた時は、既に選手達は飛び立った後でした」
自分の無能さを悔やむように、少しだけ眉を寄せる。
「それで、これからどうするおつもりですか?」
小宮山は牛島の悔しげな表情に何と言えばいいのかが解らず、見てみぬ振りのまま言葉を続けた。
「もしも本当に選手が行方不明なら、警察に任せるべきだと思いますが」
「間違いなく球団が・・・それも12球団全てが絡んでいます。
何も考えずに警察に駆け込むのは無謀だと思いますが?
球団の後ろにはそれなりの企業が付いているわけですから」
「ではなお更、俺達に何が出来るって言うんですか!?」
何もかもが不確定、真実なのか嘘なのか、牛島の言葉を信じていいのか?
まるでフワフワと重力を奪われた自分の心情と現状に苛立つ。
小宮山から重力を奪った張本人が、目の前にいる。
苛立ちを隠せずに口調が強まり、腹立ちを隠せずに牛島を鋭い目で睨む。
静かで重たい沈黙が部屋の中を包む。
「やるしかないんちゃいます?」
「まぁ、そうだな」
「そうですね」
一気に増えた声に、慌ててあたりを見回す。
「西岡!!それに金子に石川・・・」
佐伯を挟む形で、いつの間にかソファーに座っていた金子と石川。
西岡は、大きなビニール袋を抱えて、小宮山の後ろに立っていた。
「何せ早急にココに集まれるメンバーだけでの急造チームですが、
他の場所にも別働隊として、仲間は置いてますからご安心を」
西岡は小宮山と廊下の間を通り抜け、大きなビニールを雑に机の上に置き、中身を乱暴にぶちまけていく。
中からは週間雑誌やおつまみ、栄養ドリンクなど様々な物が散らばって出てくる。
「何で俺が買い出しにいかなアカンのですか?」
そう言いながらも西岡は、自分用のスナック菓子を手元に集める。
「年功序列ってやつだな」
金子は楽しそうに袋の中を漁っている。
「ありがとうね西岡君・・・・
あれ?俺が頼んだのってカレーパンじゃなくておにぎりなんだけど?」
「へ?おにぎり買ってきたはずなんすけど」
「コレ俺のー」
佐伯までもそれに混じって、スルメやらお菓子やらを漁っている。
先ほどまでの真剣な面持ちは何処へ行ったのだろう?
「あれ?俺が頼んだビールは?」
金子の発言に、小宮山は頭痛がしてきた。
「酒は全部片付いてからにきまっとるでしょ!?」
「冗談、冗談だって!全部片付いたら皆でビールをあビール程のもう!!」
先ほどとは質の違う、寒々とした沈黙が部屋の中を包む。
石川は張り付いた笑顔で、愛想笑いをしていた。
「なーんてな!わっはっはっはっはっは!!!」
「山田君、金子君に座布団一枚や!」
無邪気な金子と佐伯の明るい笑い声が、部屋の中に響く。
(本当にこんなに呑気で大丈夫なのか?)
室内の緊迫感の無さに、小宮山はソッとタメ息をつきこめかみを指でグッと押した。
「小宮山君が居れば、私も大変助かります」
言葉の真実を認めたくなくて、小宮山は必死に牛島の言葉を曲解することにした。
「晩飯は20:00だ。朝飯は明日の4:00。その後も8時間おきに差し入れてやる。
トイレと洗面所は奥にある。変なことは考えても無駄だ、このドアは例えボブ=サップ10人居たところでビクともしない。」
兵士は吉野を橙色の僅かな灯に照らされた薄暗い部屋に吉野を放り込む。
「イテェ!」
「なぁに、あと3日足らずの辛抱だ。大人しくしているんだな。」
そう告げると、兵士は重いドアを閉め、外から鍵をかける。
「お、おい!嘘だろこんなの!何で全裸にするんだよ!これじゃあんまりだ!」
吉野の悲痛な叫びに応じるはずもなく、嗤い声を上げながら兵士達は立ち去っていく。
「ちくしょう…っ!」
怒りと屈辱で体が震える。ぶつけるあてのない激情は雫となり、吉野の瞳から溢れ出る。
(口惜しいっ…こんな奴等にっ…でも、抵抗できない…っ!)
「オマエ…吉野か?」
「!?」
奥から声が聞こえ、吉野は涙を拭って振り向く。頭こそ見事なずる23ではあるが、ヒゲ面のむさくるしい声の主は、機内で隣に座っていたはずの下柳だった。
「下柳さん!?…やっぱりやられてしまっていたんですね…」
「…あぁ、俺は3人目…オマエで4人目だよ、この別室送りは。オマエは誰にやられたんだ?」
「…ライオンズの…大…沼…くそっ、あの豚野郎がっ!切り刻んでたこ焼きの具にしてやる!」
思い出すと怒りがまたふつふつと湧き上がる。火炎放射器を向けながら薄ら笑いを浮かべる憎たらしいあの顔を。
「おいおい、それじゃたこ焼きにならないだろう…。大沼?アイツはそれこそ9696じゃないか?…いや、かく言う俺もデニーにやられたんだった…」
「ドラゴンズのデニーさんですか!?…ちくしょうっ、9696の連中もずいぶんやる気な奴ばかりじゃないか!完全に読み違った!」
「それが…おかしいんだ…デニーの奴、横浜のユニホームを着ていたんだ。それにあの強さは…」
「へぇ……まぁ、もう泣き言を言っても仕方ないですがね…俺の野球人生はもう終わりですから…」
「吉野…」
「良いんですよ、日本一も経験できたし…これからはしばらく大阪のたこ焼き屋を食べ歩きます……ん?そう言えば僕で4人目って…」
吉野はふと、角の方に座っている二人に気づく。二人はうずくまりぶつぶつと呟いている。
「あぁ…この二人は…こっちは実松、俺の元後輩だ。こっちは山崎だな。この二人は…もう駄目かも知れない。」
吉野は二人の常軌を逸した様子を見て背筋が寒くなる感覚を覚える。
「カーイショウ♪パパですよー。どうしたの?海翔?パパだよ?どうして怯えているの?」
「木村木村木村木村木村木村木村木村木村木村木村木村木村木村木村木村…」
「おいサネ…しっかりするんだ…山崎も…」
「あぁ…」
下柳が二人をなだめる様を見て、吉野はようやく自分のしようとしていた事の重大さに気づく。
(これが…これが「刈る」ということ…俺は…)
ついさきほどまで、自分がどれほど軽い気持ちだったのかを思い知らされる。
自らの希望と毛を燃やし尽くされ、そして自分以外の刈られた人間を目の当たりにし、初めて自らの行おうとしていた行為に恐怖する。
「俺は…何てことをしようとしていたんだ…」
(コレは…罰なのか…?)
「海翔?どうして逃げるの?パパがわからないの!?パパが2323だからなの!?パパが2323になっちゃったからなの!?ぅぁああああああああああああっ!!!」
「サネ!落ち着け!しっかりするんだ!」
実松が興奮して暴れだす。それに呼応するかのように山崎も暴れだした。
「たくちゃぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!」
「サネ!…山崎もしっかりしてくれよぉっ!」
半泣きになりながら二人を必死でなだめる下柳。
阿鼻叫喚の地獄絵図さながらのその様子を眺めながら、吉野は願わずにはいられなかった。
(ムシのいい願いなのはわかってる…でも…神よ!願わくば日本を巣立つ勇敢な後輩を守ってやって欲しいっ!)
その頃、密林エリアでは―
「…じゃぁ、両サイドだけ刈っちゃいますか?カッコ良くないですか?迫力も出て、アメリカ行ってもナメられないですよ!」
「いや、だから刈っちゃうのはちょっと…」
>勇敢な後輩
ミシノ`・Å・´)イガーのことかあああああああああああああああああああああああああ
ともあれ、
>>816、
>>820両氏おつです。
新作ktkr
石井ノリノリじゃないかwww
それにしてもくみてふの人選は…
あれ?宅急便てこんな早い時間に来るもの…
ターン
デニーの話書いてて大事なことを忘れてた・・・。
デニー 今年40歳
下柳 今年39歳
デニーの方が年上だったのをすっかり忘れてた。
面と向かって「デニー、お前」はまずいよなw
どうにかならないだろうかorz
新作連投ktkr職人さん乙です!
脱落組みの話が読みたかったのでGJ
ところで、救援部隊の人選で金子と西岡はわかるとして
パオタなんであまりわからないんだが、石川(燕のだよね?)って髪に何か特徴あるの?
新作の流れ切るのと長文でスマソ。
>>814 確かに遺体がゴロゴロ転がってるのはイヤだけれど、通常ログアウトはこんな感じ(↓)で、
(通常ログアウトのイメージ)
_ _
/_Shヽ_
彡 ´ー`) ←機内に戻る
と( 6 )っ
ノ ノ
( (
)ノ
_ _
/_Shヽ_
⊂⌒~⊃彡 ゚ー゚) ←バーチャル世界に残る
強制でもログアウトするのは変わらないから、死(?)後5分程度で体だけ大ちゃんが消して「遺体」が残らないようにするのはどうだろう。リュックの中身に入ってたもの(武器・フサウター・青い袋の中身)はそれまでに奪えば残って、放置されたら消えるとか。
イメージとしては沼者の火炎放射器で燃えないものは大ちゃんが操作したら消える、装備品その他は身につけている間だけ火炎放射器でも燃えなくてそれ以外の場合は燃える(リュックを背負った人間を燃やしてもリュックは残る、地面に置いたリュックは燃える)感じですかね。
t(ry
>>816-819 暗証番号でしょっぱなからワロタ
石川にカレーパンってなんて嫌がらせwww
>>816-821共に乙です。
新しい登場人物も大量に入ったので、どなたかプロフィールの更新ヨロです。
ログアウトのイメージワロスwww
さほど大きくないオフィスビル風の建物の中には、ちゃんと机と椅子があった。
殺風景なこの部屋は会議室らしく、長机の周りに、パイプ椅子がばらばらと並べてある。
壁際にはキャスターのついたホワイトボードと、たたまれ折り重なったパイプ椅子が
無造作に立てかけられていた。
狭く、ほこりっぽい室内は、天井の蛍光灯がしっかりと照らしているはずなのに、
どこか暗く、灰色をした影で覆われているようだ。
いや、そう思うのは、心が沈んでいるからかもしれなかった。
何のアテもなく人探し、という行為がどれほど無謀なものか、川上は思い知らされていた。
雨の中、とりあえず都市エリア内をしらみつぶしに歩き回ったものの、手がかりはゼロ。
歩き疲れてこのビルに入り、今度は別の方向から攻めてみようと思いつき、
パイプ椅子に座ってフサウターを色々といじくってみたのだが、
川上が望んだレーダーっぽい画面は、一度も現れてはくれなかった。
「あー……ダメッス……」
ぐったりとパイプ椅子の背に上体をもたせかけ、川上はうめいた。
考えてみれば、フサウターは全員に支給されている物である。レーダー機能なんかついていたら、
全員が自分以外の参加者の位置を把握できることになってしまうわけで。
「ありえないッスよね……そんなの」
やはり、一定の範囲内の人間を探知するのが精一杯ということか。
天井を見つめ、はああああああ、と深いため息をもらす。
腹……減ったッスね。トイレにも行きたいッス。
気が抜けると、原始的な欲求が頭をもたげてくる。
いったん、現実世界に戻るべきか。危険と隣り合わせの行為ではあるが。
ちら、と道路に面した窓に目を向ける。無人。ただ雨だけがザーザーと降り続いている。
あんなに歩き回ったのに誰にも会わなかったんスよ?
ちょっとの間くらい、大丈夫ッスよね。
疲労と空腹と尿意で思考力の下がった川上は、ほとんど躊躇することなく
フサウターのボタンを押していた。
「う……ッス……」
次に意識を取り戻したとき、川上は自分が硬いパイプ椅子ではなく、ゆったりとした
広い椅子に座っていることに気づいた。
ゆっくり体を起こし、辺りを見回すと、確かに飛行機の機内である。
現実世界に戻ってきたのだ。
体のあちこちが少し痛む。ずっと座っていたからだろう。
軽くノビをしながら、何気なく隣の福留の席を見た。
こいつも、今ごろ、あの世界のどこにいるッスかねえ。
ヘッドギアをかぶり、まぶたを閉じ、静かに夢を見ている福留。
だが、川上は次の瞬間、ぎょっ、と顔をこわばらせた。
眠る福留の、そのいささか2319な顔面に、あまりに似つかわしくないものが
光っていたのだ。目元から頬へ、そしてアゴまで続いている線。
どう見ても、涙の流れたあとなのである。
それもひとすじ、ふたすじではない。ぶっちゃけ滂沱なのだ。
はっきり言って、福留は感情表現が豊かなほうではない。
孝介がこんなに涙を流すなんて、よほどのことッス。
きっと、モテないことに関して何かあったんスね……
そのへんは毒男同士の以心伝心というヤツで、少し川上の胸も痛んだ。が。
ぐうううううううううきゅるるるるるるぅぅぅぅ。
胃袋が悲痛な叫び声を上げたので、とりあえず胸の痛みは忘れることにして、
川上はすくと立ち上がった。のんびりしている時間はない。
いくら周囲に人の気配がなかったといっても、こちらに長居するのは得策ではなかろう。
「川上様、どうされましたか?」
すぐに黒服の添乗員が歩み寄ってきた。
「何か食べるものがほしいんスけど」
「かしこまりました。何かメニューのご希望はおありですか?」
「さっさと済ませたいんで、一気に胃に流し込めるようなやつ頼むッス!
……あと、トイレどこッスか?」
教えられた後方のトイレに向かって通路を移動しながら、川上はさりげなく周囲を眺め回した。
……空席がある。どきり、と心臓が跳ねた。もちろん、元々空いていたわけではなく、
明らかに、座っていた人間がいなくなったために空いてしまった席である。
それも一箇所ではない。やはり、あの毛道の例を挙げるまでもなく、
すでに戦いは始まっている……毛で毛を洗う戦いが!
だが、だがそれでは、自分の探し人は――
頭皮に嫌な汗をかきつつ、川上は注意深く歩を進めていく。
――石井は、いた。だいぶ後ろのほうの席だったので焦ってしまった。隣には的場が座っている。
ほ、と息をつく。と同時に、意識の外にやっていた尿意が蘇り、川上はあわてて
トイレに駆け込んだ。
ふう、危ないところだったッス。だからおしっこを我慢するのは嫌いなんス。
かつて自分が契約更改で言った言葉など思い出しつつ、川上が席に戻ると、
トイレに立つ前とは少し様子が変わっていた。前の座席の背に収納されていた机が引き出され、
その上には、何やら銀色の物体が二つ、乗せられている。
どっしりと台形をした幅広のチューブ。上部にプラスチックの口がついている。
そう、川上の大きな手のひらにスッポリとおさまってしまうサイズのそれは、
「10秒チャージ」でおなじみの、ウイ○ーinゼリーそっくり、なのだった。
ただしパッケージに大書された商品名は……「シウマイinゼリー」。
なんスか、シウマイinゼリーって。あやしいッス。しかもマズそうッス。
ドロドロの状態のシュウマイがそのまま入っていることを想像してしまい、
別のものに変えてもらおう、と、川上は立ったままそれを取り上げる。
そのとき、ふとパッケージ裏に書いてある文字に目がとまった。
『もずく、わかめ、こんぶエキス配合!』
「すいませーん……ッス」
「お呼びですか? 川上様」
「あの、これ、もっともらっていいッスか?」
「はい。すぐにお持ちいたします」
五分後。海藻エキスたっぷりのシウマイゼリーで胃を満タンにした川上は、
ちょっと気持ち悪くなりながらも、バーチャル世界に再び突入した。
しばしの混濁ののち、寒々しい会議室で目を覚ます。
だが。そこには、川上がまったく予想していなかった、ある変化が起きていたのだ。
川上が座るパイプ椅子のすぐ目の前に、人間が立っている!
身にまとっているユニフォームは、左肩だけが黒い。
去年の秋、嫌と言うほど見せ付けられ、ちょっとトラウマになっているファイターズのものだ。
そして、彼の右手に握られたバリカンは、嫌な音を立ててうなっている……
一体何が起こった。なぜここに人が。川上は混乱しながらも何とか、完全に据わった目で
こちらを見下ろす男……田中賢介との会話を試みることにした。
「ウ、ウッス。田中くんじゃないッスか! いやあ日本シリーズではお世話になっ」
「ううううううわああああああああ!!」
あ、ダメッス。これは話ができるような状態じゃないッス。
しかも、敵意むき出しって感じッス。逃げたほうがよさそうッス。
って! そのバリカンは、あ、あ、俺に向けるのはやめるッスーーーーーーーーーー!
「あqwせdrftgyふじこlp;ッス」
椅子から跳ぶように立ち上がり、川上は田中の、帽子をはぎ取ろうとする手を
辛うじてかわした。
「ま、待ってくれッス!」
ビュン! ビュン! 田中の振り回したバリカンが空を切り裂く。
「うわああああああああああああああああああああああ!!」
遠い世界にイッてしまっている田中は、もちろん川上の制止など聞かない。
川上はアタアタとバリカンをかわしながら、狭い部屋の中を逃げ惑うしかなかった。
己のうかつさが呪わしい。道路に面した一階の部屋で、照明まで点いていたら、
外から見てください、と言っているようなものだ。
――ジョリッ! ジョリリッ!
田中の繰り出すバリカンが、帽子を引き裂かんばかりの勢いで、川上の両もみ上げを奪う。
「あばばばばばばばッスううう!」
応戦しようにも、支給された武器は眉毛用のカミソリなのだから、どうしようもない。
壁際に追いつめられ、いきなり最悪の状況に陥った川上の手に、何か冷たいものがふれた。
折りたたまれたパイプ椅子。とっさに川上はそれを盾代わりにして田中のバリカンを防いだ。
ガツン!
瞬間、田中の動きが止まった。その隙に川上は身を翻し、廊下に通じるドアを開けはなつ。
ともかく、ともかく逃げなければ。だが、足は田中のほうが速いに決まっている。
一瞬の逡巡ののち、川上は廊下の奥に見えるエレベーターに向かって駆け出した。
田中が我にかえり、追いかけてきている気配が、びりびりと背中越しに伝わってくる。
【残り26人】
川上HP=61000→57000
あばばばばwwwwwwwwちょwwww
職人さんGJwwwwww
ъ( ;;;;゚ー´ ) あばばばばばばばばッスうううwwwwwwwwwwww
大ちゃんはどこまでシウマイを薦めたがるんだw
>毛で毛を洗う戦いが!
バロスwwwwww
川上ケンシロウwwwwww
>>825 狂ったあまり息子の名前までサネったってことにすればいいんじゃない?
いちいち「ッス」を付ける憲伸の律儀さに惚れたww
>>826 燕ファンだけど、石川の髪ネタは聞いたことないなぁ。
髪型も中学生みたいな短髪だし。
>832
乙ッス!
憲伸のうろたえぶりワロスwww
ところで気が抜けるは23るでなくてよいのだろうか
シウマイinゼリー・・・想像しただけで吐きそうだ
しかし背に髪は変えられんということか
846 :
決意1:2007/04/27(金) 01:08:47 ID:ZjePLp1c0
こんなものは終わらせる。
目の前を歩いているエースが言った。
具体的にどうするかはわからない。
でもこんなことは断じて許せない。
確かにあなたならそう言うだろうと信じていた。
だからあなたを探していた。
もちろんそれが自分の条件だったからということも
あったが、やはり信頼できた。
(じゃあ俺は信頼されているんだろうか…)
「黒田さん」
長谷川昌幸(C42)は目の前を歩いている男に話し掛ける。
「どうした?」
黒田博樹(C15)。広島カープのエース、いや、いまや
球界を代表する投手といっても過言ではないだろう。
その男がこちらを振り返る。
「とりあえず今は仲間を探すってことですけど」
長谷川にはどうしても迷いがある。
同じチームの東出に攻撃された。
そのことが判断を鈍らせる。
847 :
決意2:2007/04/27(金) 01:10:15 ID:ZjePLp1c0
「どうやって信頼できる人を探すんですか?」
「そうやなあ…」
実際既に参加している選手がいることは事実だった。
それを見分けるのは非常に困難なことだろう。
「もし既にやる気になっている相手と遭遇したら
どうするんですか?」
「……」
長谷川は黒田の表情を伺う。
(ああ、この人は本当に真剣に考えているんだ。
自分の髪の毛が9696するとか2323になるとか、
そんなことで自分を見失ったりしないんだ)
昨年のFA騒動を思い出す。
その時も黒田は真剣に悩んでいただろう。
複数の球団が宣言をする前から獲得に名乗りをあげ、
一部の球団では既に獲得できるものとして考えているような
話が新聞に載っていた。
しかし黒田はFA権を行使せず、そのまま広島に残った。
「他球団のユニフォームを着て、広島市民球場でカープファン、
カープの選手を相手にボールを投げるのが自分の中で想像が
つかなかった。」
この言葉に彼の気質が全て集約されていたのだろう。
(自分にはこんな言葉は言えないな)
「まず話してみるしかないやろな」
黒田がそういった。
「話してみて、それでも駄目なら、」
848 :
決意3:2007/04/27(金) 01:11:40 ID:ZjePLp1c0
「ダメなら?」
「全力で逃げようか」
笑って黒田はそういった。
「まあ狩る気のあるやつならこっちが二人いる時点で、
近寄ってこんだろうしな」
なるほど。確かに考えられる。
しかし相手が正気であるならだ。
見境もなくなっていたらどうなるかわからない。
「黒田さん」
「どうした?」
「あなたは俺が守ります。あなたがいなければカープは
だめになってしまう。俺のかわり位ならできるやつは
まだまだいるだろうけど、黒田さんのかわりは誰にも
できません」
(そう、今が決意の時だ)
「黒田さん、俺の髪を刈ってください」
849 :
決意4:2007/04/27(金) 01:12:24 ID:ZjePLp1c0
「!」
「説明します」
長谷川は自分が考えていたことを語り始めた。
黒田がクリアーできれば自分もクリアーできること。
仲間を増やすことには異議がないこと。
でも戦わなくてはならないときがあるということ。
そのときに黒田に戦ってほしくないということ。
「すなわち僕があなたの盾となり剣となります」
「長谷川…」
「刈る気があるかどうかは既に刈ったかどうかで判断します。
増えている人と出会ったなら僕は全力で立ち向かいます。
そこで増やした分をまた黒田さんに刈ってもらいます」
「お前の髪はどうなる?」
「10万本あれば問題ないでしょう。
だから今黒田さんに10万を下回るまで刈ってもらいたいんです」
「だめだ!」
「お願いします!」
「絶対にそれはダメだ!」
「お願いします!」
「…」
850 :
決意5:2007/04/27(金) 01:12:57 ID:ZjePLp1c0
「お願いします」
長谷川の悲壮な決意は黒田にも伝わっていた。
しかしそれではこの企画に参加してしまうことになる。
長谷川を見ると真剣な目で自分を見ている。
「わかった」
「じゃあ…」
「しかし今はやらん」
「え?」
「あと一人以上仲間を増やしてからや。その一人と話してみて
それでもいい案が浮かばなければ…」
「わかりました。仲間は2323側ですか?9696側ですか?」
「信頼できる人なら誰でもいい。できれば緒方さんか、たくやさん。
あとは小笠原さんか松中さん、宮本さんあたりかな」
「なるほど。じゃあ早速探しにいきましょう。」
【残り26人】
>>845-850乙
念のため確認したがさん付けの人全員黒田より年上だった。
最近お笑い系が多い中でのシリアス系にGJ
職人さんがたGJです
何このきれいなハセガーw
毛で毛を洗う戦いクソワロタ
「ハァ、ハァ…ッス!」
23暗い空の中、川上憲伸(D11)は高層ビル群の大通りを走っていた。
大通りであるだけに、見通しが良く、逃げる川上にとっては思わしくない状況である。
チラリと後ろに目を向けると、微塵の疲れも見せずに必死の形相で追いかける田中賢介(F3)がいた。
「あわわ、まだ追っかけて来るッス!」
出来れば路地裏にでも逃げ込みたいところだが、行き止まりだった場合、川上の髪は終わりを告げることになるだろう。
それだけは何としても避けたい。他人の毛を狩るのは嫌だが、狩られるのもごめんである。
「うぷ…ッス!」
突然川上の胃から何かがこみあげてくる。さっき機内で飲んだ『シウマイinゼリー』だ。
もずく、わかめ、こんぶなどといった、一部の人達に大人気の海藻エキスを配合したゼリー飲料である。
川上も例外ではなく、海藻エキスという言葉につられ、不味いのを我慢しつつも大量に飲んでいた。
「うぅ、つらいッス!」
同時にわき腹も痛くなってきた。『シウマイinゼリー』のパクリ元であろう『ウィ○ーinゼリー』は
「10秒チャージ2時間キープ」などと謳っているが、こちらは10分も持たなかった。
「キムタクの嘘つき!ッス!」
川上は『ウィ○ーinゼリー』を飲みながら走るキムタクのCMを思い出し、心の中で叫んだ。
走りが鈍ってきた川上と田中の距離が縮まっていく。川上は一か八か、路地裏へ入っていった。
「そんな・・・ッス。」
川上の目に飛び込んできたのは灰色の大きな壁であった。
「あああああぁぁ!!川髪ぃぃ!!」
田中が叫び声を上げながら路地裏へと入ってきた。川上は覚悟を決めた。
「大豊さん、待っててくださいッス!」
その時、右手にあるビルに、裏口のようなドアがあるのを発見した。
川上はとっさにドアへと近づいた。幸い鍵はかかっておらず、ビル内に逃げることができた。
素早く鍵をかけ、安堵の表情を浮かべる。田中が扉をたたく音が激しく鳴り響くが、
今の田中に表口から回りこむという冷静な判断が出来る状態でないという証であった。
川上は、とりあえず表口から出てこのエリアを去ろうと思い、表口を探していた。
裏口と繋がっていたのは厨房らしき所で、様々な調理器具が置いてあった。
食料はないようだ。厨房をでると、質素なテーブルとイスがいくつもおかれた食堂に出た。
どうやら社員食堂のようだ。川上が歩みを進めるごとに扉を叩く音が小さくなっていく。
川上は食堂の扉を開けた。そこにはある選手が仁王立ちしていた。
「うわぁ!ッス!」
「やだなぁ川上さん、そんなに驚かないでくださいよ。」
そこにいたのは森本稀哲(F1)だった。
【残り26人】
タイトル、秒が抜けてました。orz
正しくは、「10秒チャージ、10分キープ」です。
857 :
代打名無し@実況は実況板で:2007/04/28(土) 00:55:38 ID:pf+bSJ9yO
>842
ご指摘thxです。うっかりミスでしたorz
保管庫さんには修正をお願いしてきました。
>>「川髪ぃぃ!!」
ちょww賢介字違うww
ひちょりが厨房にいたのは、ひちょり厨房とかけた?
あ、ひちょりがいたの厨房じゃないか、食堂かスマン
「ちぇっ、失敗したな……」
既に傾きかけている日の下で、東出は小さく呟いた。
長谷川の下から逃亡した後、東出はいつの間にか砂漠エリアまで来ていた。
余りにもあっさり長谷川から髪を奪うことに成功した東出は、心に余裕を持つことが出来ていた。
この毛ー無に積極的に乗るつもりがないのは変わりがない。
だが、折角の機会なんだ。つまらない毛ー無だと思ってたが、毛に飢えた人間を見るのも案外面白いかもしれない。
とりあえず、いろいろな場所を廻ってみつつ、できるだけ生き残ってみよう。長谷川さんがどうなるかも気になるしね。
そう思って東出は砂漠エリアを一通り探検してみることにしたのだ。
だが、しばらく歩いたところで東出は後悔し始めていた。
もう夕方になっているとはいえ、それでも砂漠に降り注ぐ太陽の光の強烈さは東出の予想を遥かに上回っていて、彼の体力を容赦なく奪っていく。
おまけに、歩けども歩けども東出の目の前には相変わらずまるでどっかのチームの主軸打者の頭頂部のように荒涼とした砂漠が広がっているばかりで、ちっとも面白みが無い。
「やっぱつまんないなあ。もういいや、このエリアを出ちゃおっとプップクプー 」
東出がそう決意しかけたその時、不意に前方から誰かがこちらにやってくるのに気づく。
フサウターの反応を確かめる事も忘れたまま、東出は人影を凝視した。
「おーい……君…東出君…だよね?」
前方から走ってくる人影の正体が徐々に明らかになってくる。
「あ、はい、東出です…。そちらは塩崎さんですよね…?」
東出は脳の底から名前を引きずり出す。塩崎真。確か前田さんの高校時代の後輩だったはずだ。
「ああ、そうだ、塩崎だ……」
一瞬沈黙が走る。もともと自分と塩崎はそこまで面識のある関係ではないはずだ。
なのに何故わざわざ話しかけてきたのか。東出がそう問おうとしたら、先に塩崎が口を開いた。
「……東出君は、この毛ー無に乗ってるのかい?」
どこと無く怯えたような表情で塩崎は訊いてくる。
2323に属される自分が9696なあんたをすぐに襲わない時点で乗ってないと言ってるようなもんじゃないかと心の内で嘲笑いつつ、東出は答える。
「…いいえ、乗ってませんよ」
「……そうか、よかった……今までずっと砂漠を1人で彷徨ってたから心細くてね……早く誰かに会いたいと思ってたんだ」
心底から安堵したような表情で塩崎は言った。どうやら仲間を探していたらしい。
いったい俺が毛ー無に乗ってたらどうするつもりだったんだろう。この人も結構お人好しだな。
そんな東出の思惑にはまるで気づかないといった風に塩崎は提案する。
「…とりあえず、情報交換でもしないかい?それでこれから如何するかとかも決めようじゃないか」
「東出君の武器は何なんだい?」
気軽な調子で塩崎が尋ねる。
ここは隠していても仕方が無い。東出はポケットからバリカンを出して塩崎に見せてみる。
「ごくありふれた型ですよ。これといった特徴はありません」
「へえ、偶然だな。俺もそれと一緒の武器なんだよ」
そう言って塩崎もカバンの中からバリカンを取り出してみる。
出てきたバリカンは、確かに東出の持っているバリカンと同じ型のようだ。
「……参加者全員に同じバリカンが支給されてるのかな?」
「それは無いでしょう。確か山下さんが支給品には当たり外れがあるというような話をしていた筈です」
「そうか、つい失念してたよ……。そう言われると確かに違いがあるな。
俺のが新品っぽいのに対して東出君のは若干中古っぽい感じだもんな。
…ほら、髪の毛まで付いてるし……」
東出はドキッとした。その毛は恐らく、先ほど刈った長谷川の毛だろう。
とりあえず毛ー無に乗っていると思われるのはまずい。
「……何か気持ち悪いですね。支給する前に髪の毛ぐらいちゃんと掃っておいて欲しいですね」
気づかれないようにさらりと受け流す。
「うん、確かにそうだよな。誰かの使いかけだと思うと使うわけではないにしてもやっぱなんか嫌だな」
幸いにも疑念を抱かれることは無かったようだ。やっぱこの人お人好しだなと東出は思った。
「ところで支給品といえば……、塩崎さんの補助アイテムは何ですか?ほら青い袋に入ってるやつ」
「ん、ああ…、俺のはこんなんだ」
そう言って塩崎はカバンの中の青い袋に手を突っ込む。
袋から出てきたのは、23赤色の液体が入った注射器だった。
「…なんか不気味な感じがしますね、それ……」
「だろ?説明書も入ってないしさ……正直使いようが無いよ」
塩崎がお手上げのようなポーズを取る。それを見て東出は考える。
効果は一体何なんだろう?果たしてこのゲームを進める上で有利になるものなのか……?
「……で、そう言う東出君の補助アイテムは何なんだい?」
「はあ、それが……」
東出は少しだけ眉を顰めて袋の中身を取り出す。
その中身を見て、塩崎の顔が失望で埋まっていくのが東出にも分かった。
ベース。
どこからどうみても一塁ベース。
しかもご丁寧にもブラウン監督らしき人物のサインまで書かれている。
「ははは……、いかにもカープらしい武器だね…」
いささか呆れ返ったような口調で塩崎が苦笑する。
その様子を見て、思わず東出はため息をついた。
「ところで東出君はもう誰かに会ったのかい?例えば黒田君とか」
東出は一瞬、どうしようかと迷った。長谷川さんに会ったことを言うべきか。
やっぱ黙っておいた方がいいかな。
一応長谷川さんの髪を刈ったのは事実だから下手に合流されると困るし。
「いいえ、俺もこの世界で見た選手はあなたが初めてです」
「そうか……」
塩崎は少し黙り込んだ。砂漠に微風が吹き始める。
「塩崎さんはどうするつもりなんですか?なんか仲間を探していたようですが……」
不意に東出は訊いてみた。
思えば、先程から塩崎の態度が緩過ぎる気がしてならない。
髪の奪い合いに参加しているにも拘らず、2323で面識の少ない自分をあっさり信用した上に、
いくら見通しのいい砂漠エリアとはいえ全然周囲を警戒する様子が無かったりと、まるで危機感が感じられないのだ。
東出の心には、既に疑心が芽生えていた。
もしかして、この人も長谷川さんと同じ種類の、勘違い9696人間なんだろうか……。
「俺は……正直、あんまり他人の毛を刈る気にはなれない。
だから、とりあえずある程度選手達で集まり、後はなるべく守りあって隠れてようと思うんだ。」
「……でも、それではHPが10万に満たない選手は失格するんじゃ……」
「大丈夫だって。なんで山下さん達がこんな事を起こしたかは分からないけど、
いずれにせよこんな事になって世間や監督達が黙っているはずが無いよ。
どうせこんな馬鹿げた戦いはすぐ中止される。だからそれまで我慢して守り23ばいいんだ」
「はあ……」
「心配は要らない。とりあえず東出君、君の髪は絶対に守ってみせるさ」
「…………」
――東出は、塩崎に罰を与えることを決意した。
まさかここまで酷い答えが返ってくるとは思わなかった。
なんという楽観主義。しかも完全に人任せ。
ルールこそ行き当たりばったりだが、完璧に構築されたバーチャル世界等を見ても、山下達が周到な準備をしていることが分かる。
それなのにどうしてそうも簡単にゲームが中止されると思えるのだろう。
だから9696はいけないんだ。
このような愚か者の9696には、例え年上の人であってももはや我慢が出来ない。
制裁を下さなければならない。そして正しい道へ導いてあげるんだ。
「……分かりました。俺も塩崎さんに協力します」
ふっと23笑いを作って東出はそう言った。
「そうか、分かってくれてありがとう。それじゃあ早速仲間集め……と行きたいところだが、その前にせっかくだから少し休憩しないか?
今まで1人ではおちおち休憩も出来なかっただろう?俺が見張ってやるから安心して機内で休んでこいよ」
「え、いえ、俺は後でいいですよ。俺が見張りますから塩崎さんお先にどうぞ」
「遠慮することないさ。東出君も疲れてるだろ?」
「いや、俺は途中密林エリアから来たので、ずっと砂漠エリアにいた塩崎さんよりはまだましです。
それに俺はまだ若いですし、体力には自信があるつもりです」
「そうか……。それじゃあお言葉に甘えさせてもらうよ」
東出は心の中でほくそ笑んだ。
仲間になったと見せかけて塩崎が機内に戻ったところを狙おうと思ってたが、まさか向こうから言い出してくれるとは。
これほど都合のいい展開があるだろうか。
……そうだ、これはきっと天の神、いや髪の思し召しに違いない。
そもそも、自分よりもこの毛ー無に23わしく、やる気もあるにもかかわらずリストから漏れた選手も大勢いるはずだ。
それにもかかわらず、何故自分が選ばれたのか。その答えがきっとこれに違いない。
己の欲望のために醜悪な毛の強奪をするのではなく、愚かな9696の罪を暴き正しき道を示す。
そしてこの世界の選手を皆プライドと闘争心と真面目さを持つ理想的な野球選手にしてあげるのだ。
それが、この世界での自分の使命。そう確信する。
長谷川さんを丸刈りにしなくて正解だった。彼に悔い改める機会を与えることが出来た。
これからは、塩崎等の愚かなる9696にのみ罰を与え、理想的な心を持つ選手を陰ながら23まし助けていく。
例え年上やセリーグの人であっても罰を与えるべき人にはしっかり与えよう。どうせいつか感謝される事になるのだから。
そして、自分はこのバーチャル空間という新世界の髪となるのだ。
(…とりあえず塩崎さんをどうしてあげようかな。あの今度新しく宮崎県知事になった人みたいにするのなんか面白そうだな……)
東出は気づくことが出来ない。自らの思考がすでに常軌を逸しているということに。
そして塩崎が本当は2323である上に毛ー無に乗っていて、情報を得るためにお人好しという仮面を被り、
仮面の下に狂気に歪んだ素顔を隠し虎視眈々と東出を狙っていたことに。
ペルソナが剥がれ落ち素顔が剥き出しになる時は、もうすぐそこまで迫っていた。
【残り26人】
「も…森本君ッスか。」
「やあ川上さん、日本シリーズではお世話になりました。」
川上は森本の言葉を最後まで聞くことなく引き返そうとした。
しかし、森本に袖口をつかまれる。
「待って下さいよ川上さん。僕は川上さんの毛を狩る気なんてありませんよ。」
「じゃあ・・・、何ッスか?」
川上は怪訝な様子で森本に問う。
「僕はこのプログラムのプレイヤーではありません。」
川上はあっけにとられているような顔をしていた。
じゃあなんでこのプログラムに参加しているのかを聞こうとしたが、森本はさらに続けた。
「僕はこのプログラムの…進行役と言ったほうがいいですかね。
このプログラムに参加している人達の様子を見て回っているんですよ。」
「そうッスか、僕は大丈夫なんでもう行くッス。」
そう言うと川上は再び方向を変えて森本の横を通り過ぎていった。
「57000、少ないですね。」
森本がポツリそう言うと、川上が森本に向かって言った。
「いいんッスよ、人の毛を狩るくらいなら、23たって構わないッス!」
いくら川上が2323とはいえ、髪が全くない男に言われたので腹が立った。
「本当にいいんですか?その髪が投球に影響していても?」
川上はピタリと歩みを止めた。
「川上さんはすごいピッチャーですよ。ノーヒットノーランもやっていますしね。
でも、川上さんは夏場に弱いですね。それに試合の後半に突然崩れることもありますね。」
「そ、それがどうしたって言うんッスか!」
少し荒れ気味の声で川上が返す。
「いや、夏場は頭も蒸れますしね、試合後半は夏じゃなくても汗が出て大変ですよね?
集中できないんじゃないかなあっと思って。頭のことが心配で。」
「うっ、いやっ、そんなことはない…ッス。」
森本は得意の猫なで声でさらに続けた。
「どうしたんですか?あのドラゴンズのエースである川上さんが随分弱気じゃないですか?」
「違うッス!そんな関係ないッスよ!第一、僕はノーヒットノーランだって…」
川上は声を強張らせるが森本が遮った。
「ノーヒットノーランを成し遂げたは確か2002年ですよね、あの頃はまだ髪にも余裕がありましたよね。
そして川上さん、あなたは2005年と昨シーズンに完全試合を達成するチャンスがありましたよね?」
「ま、まぁ、そんなこともあったッスね。」
「川上さんはいつも試合の中盤からしきりに帽子を気にしていますよね?
でも2002年のときにはこんなことはしていなかった。
だから偉業を成し遂げることができた。
でも、最近は頭のことを考えるばかり、投球に気が回らなかった。
それで2005年はスンヨプさんにホームラン打たれたり、
昨シーズンには福浦さんにフォアボールだしたり、挙句にサブローさんにヒット打たれて、
2度も完全試合を逃した。」
「だから違うッス!!あれは僕が至らなかっただけッス!髪のことは関係ないッス!
もう僕は行くッスよ!?」
再び川上が歩みを進めようとしたが、森本に今度は肩を掴まれた。
「そうとも限らないんですよ。昨シーズン山本さんがノーヒットノーラン、やりましたよね?
阪神が猛烈な追い上げを見せる中、川上さんも阪神にノックアウトされた。
そんな中、阪神の息の根を止めたともいえるあの神のようなノーヒットノーランですよ。」
「それがどうし…」
川上は森本の手を振り払おうとしたものの、森本の手はビクともしなかった。
「なんで山本さんができて、川上さんができなかったのか、わかりますか?それは髪…」
「違うッス!!違うッスぅぅ!!」
川上は森本の言葉を聞かまいとするかのように暴れだした。
しかし森本は動揺することもなく、見計らったかのようにさらに声を甘くし、
「川上さん、現実を見ましょうよ、山本さんには髪があって、川上さんにはないから。
それが答えなんですよ。山本さんには髪を心配する必要がない、だから、最後まで集中して・・・」
「やめろ!!やめろぉぉッス!!」
完全に理性を失った川上は、森本の言葉を拒絶するかのように頭を激しく左右に振った。
その時、デイバックから1枚の写真が床に落ちた。そこに映るまぶしい笑顔。
川上は激しく振っていた頭をピタリと止めた。
「・・・そうだ、僕には大豊さんがいるッス!もう頭のことなんて気にしないッス!それでまたいいピッチングをするッス!」
川上は正気を取り戻し、ハツラツとした声で森本に言った。
「もう僕は23てもかまわないッス!大豊さんのようになれるならそれでいいッス!」
「そうですかぁ。でも、大豊さんはカツラだったんですよねぇ…。」
森本は残念そうに呟いた。しかし内心ではほくそ笑んでいた。
「・・・ッス?」
今の今まで知らなかった事実を告げられた川上は目を見開いた。
「川上さん、知らなかったんですか?」
森本はわざとらしく聞き返した。さらに森本は続ける。
「大豊さんはカツラがばれちゃって、それで仕方なく、23をさらしたんですよ。」
森本は川上を揺さぶるために「仕方なく」を強調した。
「そんな、大豊さん・・・ッス。」
川上の頭の中に描かれていた大豊の肉色のミラーボールに亀裂が走る。
「川上さん、考えてみて下さいよ。だれでも23は嫌ですよ。
ボクみたいにそれがキャラになるならともかく、川上さんが23たってただの23で終わりですよ。
みんなの笑いものになるだけです。おもしろいから笑われるんじゃなくて、
哀れだから、みじめだから笑われるんですよ。」
川上の中のミラーボールが音を立てて崩れ落ちた。あれだけ輝いて見えたミラーボールが、
今となっては醜く映った。川上を支えるものが無くなってしまった。
「あqwせdrftgyふじこlp;ッス・・・、あqwせdrftgyふじこlp;ッスぅぅ!!」
森本は川上が何を言っているかわからなかったが、川上の耳元で呟いた。
「川上さん、ほら、向こうで賢介が扉を叩いている音が聞こえますよね?
狩っちゃったらいいじゃないですか。理性を失っている人間は弱いものですよ?」
「・・・器が弱い、武器が弱いッス。」
「武器ならこれ、あげますよ。予備ならいくらでも持っていますし。」
そう言うと森本はどこにでもありそうな、至って普通のバリカンを川上に差し出した。
「バリカン・・・ッス。これがあれば・・・ッス。」
「そうですよ、日本シリーズの恨みもありますし、刈ってしまいましょうよ!」
日本シリーズの恨みといえば森本も言えたことではないのだが、もはや川上には関係なかった。
ただ毛が刈れればそれでよかった。
「田中毛んすけぇぇ!!覚悟するッス!!」
川上は毛ダッシュで田中のいるドアの方へと向かっていった。
「川上さん、がんばって下さいよ・・・。」
森本はそう言い残しビルを去った。
【残り26人】
ミスで4レスで終わってしまいました。
>>857氏の指摘どおり、前の話が短いので、「10秒チャージ」の続きに入れてください。
題名は出来れば「髪の偉業」でお願いします。