1 :
ウグイス嬢:
2 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/11/25(土) 17:51:39 ID:g4+uPwWA0
(・◎・)僕ちんの世界なのだ
3 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/11/25(土) 17:52:33 ID:Pdy+NLKm0
乙です
バトロワSSリレーのガイドライン
第1条/キャラの死、扱いは皆平等
第2条/リアルタイムで書きながら投下しない
第3条/これまでの流れをしっかり頭に叩き込んでから続きを書く
第4条/日本語は正しく使う。文法や用法がひどすぎる場合NG。
第5条/前後と矛盾した話をかかない
第6条/他人の名を騙らない
第7条/レッテル貼り、決め付けはほどほどに(問題作の擁護=作者)など
第8条/総ツッコミには耳をかたむける。
第9条/上記を持ち出し大暴れしない。ネタスレではこれを参考にしない。
第10条/ガイドラインを悪用しないこと。
(第1条を盾に空気の読めない無意味な殺しをしたり、第7条を盾に自作自演をしないこと)
リアルタイム書き投下のデメリット
1.推敲ができない
⇒表現・構成・演出を練れない(読み手への責任)
⇒誤字・誤用をする可能性がかなり上がる(読み手への責任)
⇒上記による矛盾した内容や低質な作品の発生(他書き手への責任)
2.複数レスの場合時間がかかる
⇒その間に他の書き手が投下できない(他書き手への責任)
⇒投下に遭遇した場合待つ事によってだれたり盛り上がらない危険がある。(読み手への責任)
3.バックアップがない
⇒鯖障害・ミスなどで書いた分が消えたとき全てご破算(読み手・他書き手への責任)
4.上記のデメリットに気づいていない
⇒思いついたままに書き込みするのは、考える力が弱いと取られる事も。
文章を見直す(推敲)事は考える事につながる。過去の作品を読み込まず、自分が書ければ
それでいいという人はリレー小説には向かないということを理解して欲しい。
テンプレは以上です。
抜けがありましたらすみません。
10 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/11/25(土) 21:04:54 ID:Pdy+NLKm0
割り込んでごめんねorz
参加選手一覧
・セントラルリーグ
読売ジャイアンツ
順位 氏名 年俸(万)背番号
4 清原和博 38000 5
5 上原浩治 35000 19
6 高橋由伸 34000 24
9 工藤公康 29000 47
17 小久保裕紀 24000 6
27 桑田真澄 21200 18
28 仁志敏久 20000 8
32 清水隆行 18000 9
41 江藤智 15500 33
47 二岡智宏 14000 7
55 阿部慎之助 12000 10
59 前田幸長 11000 29
62 岡島秀樹 10600 28
64 元木大介 10000 2
計14名 合計年俸 29億2300万
横浜ベイスターズ
順位 氏名 年俸(万)背番号
1 佐々木主浩 65000 22
17 斎藤隆 24000 11
25 三浦大輔 22000 18
25 鈴木尚典 22000 7
28 石井琢朗 20000 5
50 佐伯貴弘 13000 10
59 若田部健一 11000 14
計7名 合計年俸 17億7000万
中日ドラゴンズ
順位 氏名 年俸(万)背番号
12 谷繁元信 25000 27
12 立浪和義 25000 3
19 岩瀬仁紀 23000 13
19 山本昌 23000 34
19 川上憲伸 23000 11
28 福留孝介 20000 1
47 井端弘和 14000 6
59 落合英二 11000 26
63 野口茂樹 10080 47
計9名 合計年俸 17億4080万
阪神タイガース
順位 氏名 年俸(万)背番号
11 金本知憲 26000 6
12 今岡誠 25000 7
19 井川慶 23000 29
32 片岡篤史 18000 8
38 矢野輝弘 17000 39
46 下柳剛 14300 42
50 赤星憲広 13000 53
55 桧山進次郎 12000 24
計8名 合計年俸 14億8300万
ヤクルトスワローズ
順位 氏名 年俸(万)背番号
8 古田敦也 30000 27
32 宮本慎也 18000 6
37 岩村明憲 17400 1
39 五十嵐亮太 16400 53
計4名 合計年俸 8億1800万
広島東洋カープ
順位 氏名 年俸(万)背番号
41 前田智徳 15500 1
45 緒方孝市 14500 9
50 佐々岡真司 13000 18
58 黒田博樹 11500 15
64 野村謙二郎 10000 7
計5名 合計年俸 6億4500万
・パシフィックリーグ
ソフトバンクホークス
順位 氏名 年俸(万)背番号
2 城島健司 50000 2
7 松中信彦 32000 3
43 柴原洋 15000 1
43 斉藤和巳 15000 66
57 大村直之 11600 7
計5名 合計年俸 12億3600万
西武ライオンズ
順位 氏名 年俸(万)背番号
12 松坂大輔 25000 18
12 和田一浩 25000 5
19 豊田清 23000 20
28 西口文也 20000 13
54 森慎二 12500 11
計5名 合計年俸 10億5500万
北海道日本ハムファイターズ
順位 氏名 年俸(万)背番号
3 小笠原道大 40000 2
40 金村暁 16000 16
計2名 合計年俸 5億6000万
千葉ロッテマリーンズ
順位 氏名 年俸(万)背番号
19 小林雅英 23000 30
32 福浦和也 18000 9
47 清水直行 14000 18
計3名 合計年俸 5億5000万
オリックスバファローズ
順位 氏名 年俸(万)背番号
9 谷佳知 29000 10
64 村松有人 10000 3
計2名 合計年俸 3億9000万
東北楽天ゴールデンイーグルス
順位 氏名 年俸(万)背番号
32 岩隈久志 18000 21
50 礒部公一 13000 8
計2名 合計年俸 3億1000万
総参加人数 66名 年俸総額 134億8080万
年俸額順位表
順位 氏名 年俸 球団背番号
1 佐々木主浩 65000 YB22
2 城島健司 50000 H2
3 小笠原道大 40000 F2
4 清原和博 38000 G5
5 上原浩治 35000 G19
6 高橋由伸 34000 G24
7 松中信彦 32000 H3
8 古田敦也 30000 S27
9 工藤公康 29000 G47
9 谷佳知 29000 Bs10
11 金本知憲 26000 T6
12 立浪和義 25000 D3
12 谷繁元信 25000 D27
12 今岡誠 25000 T7
12 松坂大輔 25000 L18
12 和田一浩 25000 L5
17 小久保裕紀 24000 G6
17 斎藤隆 24000 YB11
19 川上憲伸 23000 D11
19 岩瀬仁紀 23000 D13
19 山本昌 23000 D34
19 井川慶 23000 T29
19 豊田清 23000 L20
19 小林雅英 23000 M30
25 鈴木尚典 22000 YB7
25 三浦大輔 22000 YB18
27 桑田真澄 21200 G18
28 仁志敏久 20000 G8
28 福留孝介 20000 D1
28 石井琢朗 20000 YB5
28 西口文也 20000 L13
32 清水隆行 18000 G9
32 片岡篤史 18000 T8
32 宮本慎也 18000 S6
32 福浦和也 18000 M9
32 岩隈久志 18000 E21
37 岩村明憲 17400 S1
38 矢野輝弘 17000 T39
39 五十嵐亮太 16400 S53
40 金村暁 16000 F16
41 江藤智 15500 G33
41 前田智徳 15500 C1
43 柴原洋 15000 H1
43 斉藤和巳 15000 H66
45 緒方孝市 14500 C9
46 下柳剛 14300 T42
47 二岡智宏 14000 G7
47 井端弘和 14000 D6
47 清水直行 14000 M18
50 赤星憲広 13000 T53
50 佐伯貴弘 13000 YB10
50 佐々岡真司 13000 C18
50 礒部公一 13000 E8
54 森慎二 12500 L11
55 阿部慎之助 12000 G10
55 桧山進次郎 12000 T24
57 大村直之 11600 H7
58 黒田博樹 11500 C15
59 前田幸長 11000 G29
59 落合英二 11000 D26
59 若田部健一 11000 YB14
62 岡島秀樹 10600 G28
63 野口茂樹 10080 D47
64 元木大介 10000 G2
64 野村謙二郎 10000 C7
64 村松有人 10000 Bs3
乙です!
『善意と後悔と』(前編)
マグライトで足元を照らしながら、ゆっくりと階段を降りる。
少しでも視界を良くしようと帽子は後ろのベルトに押し込んだ。それでも闇はどろりと重く、気を抜けば体ごと
押し包まれて消えてしまいそうだった。
一歩踏む度に古びた階段は軋む音を立てた。ましてスパイクで踏んでいるのだから仕方ない。もっと無造作
に降りても同じ気がするが、恐怖心がそれを許さなかった。
意外と気ィちっちゃいな、と三浦は静かに自嘲する。
湖の傍のこの小さな家に辿り着いたのは、18時の放送を聴いて間もなくのことだった。屋内の探索は途中で
終わっている。鈴木が倒れてしまったからだ。
三浦が1階、鈴木が2階と分担して、手近なリビングルームから見終わったところで、階上で何か大きなもの
が倒れる音がした。
駆け上がると寝室の前で鈴木が頭を抑えて転がっていた。先客に襲われたかと肝を冷やしたが、それは鈴木
がやっと声を絞り出して否定した。急な頭痛なのだと言う。
大したことはない、もう治まったと嘘を言って無理に動こうとするのを押しとどめて(立っていられない程の頭痛
が大したことない訳がない)、今は布団に寝かせている。
ようやく大人しく眠ってくれたところで、今度は下に物音を聴いたのだった。
動かずに遣り過ごすこともできただろう。本当に誰かが入ってきたのかどうかも定かではない。
結局、誰かに会いたいのだった。
上原や宮本のように笑いながら命の選別をするような奴らではなく、まともな神経の誰かに。
こんなのは変だ、間違いだろうと問いかけ、間違いだと応えて欲しい。
『みんなそうなのか…?』
2度目の放送を聴いて、鈴木が零した小さな呟きが忘れられない。
それきりあまり喋らなくなってしまった鈴木に、そして自分自身に、大丈夫だと示してやりたかった。
階段を降り切ると、廊下というほどの距離もない廊下を奥へ進み、さっきは引き返した和室の襖の前で
じっと耳を澄ませてみる。
漫画か何かならここで相手の殺気を感じ取ったりするのだが、残念ながら人がいるのかどうかも分から
なかった。
ただ、襖を通して漂ってくる冷気が鼻先に触る。やはりこの部屋の窓か扉か―――外からの進入口が開
いていたらしい。
誰かいるのか。
呼びかけようとして、喉がカラカラに渇いて声が出ない。
誰かいたら、どうなる?何が起こる?
問いかけて望み通りの答えが返らない時は?
結局声が出ないまま襖を開けた。ライトで照らす。
開いているサッシから差し込む薄い月明かり。何もない、誰もいない。
―――いや、いた。
部屋の隅で膝を抱えて座っている。光を顔に受け、眩しそうに目を細めるのは巨人の二岡だ。
なんと呼びかければ、と言葉を選ぶほんの一瞬、光の円の中から二岡の姿が掻き消えた。
「!?」
そして次の一瞬。
腹の真ん中に、どん、と太いもので突かれた感触。胸に押し付けられる二岡の肩を抱きとめる形になり、
倒れずに踏み留まる。マグライトが落ちて床に転がった。
「何だよ…」
怒りでも恐怖でもなく、ただ泣いてしまいそうになる。
「おかしいのは俺の方か?」
違和感に気づいて、二岡が素早く体を離した。三浦の腹に埋まったサバイバルナイフの切っ先が、ごり
ごりと音を立てて跳ね上げられた。
その腕を上から捕まえる。間合いから出られては困るのだ。歯を食いしばり、思い切り頭を前に振る。
ふっと相手の重心が動いた。鼻を叩き折ってやるつもりだったが、命中したのは顎だった。二岡が呻き
ながら腕を振り払う。
チリッと額が熱くなり、襖が背に当たって倒れ派手な音を立てた。
血の臭いと共に目の前に何か散り落ちる。髪だ。ナイフが額を掠って、リーゼントが少し削れている。
二岡は顎を押さえて後ろ向きにたたらを踏みながら、ユニフォームの切れ端が引っ掛かったサバイバル
ナイフの刃を見る。そして薄く笑った。
「これは分かんなかった」
三浦の足元には二つに裂けた漫画雑誌が落ちていた。二階の部屋に落ちていたもので、気休めというか
半ば冗談のつもりで腹に仕込んでみたが、何でもやっておくものだ。
とは言え、やはり少しは届いているらしい。臍の上あたりがじくりと痛んで濡れた感じがする。
動けない痛みではなかった。素手で銃器とやり合う気は無いが、ナイフならば何とかなる…と思いたい。
額の血を拳で拭い、三浦は立ち上がった。
「三浦!」
鈴木の声と共に別角度からマグライトの明かりが差した。三浦と、無造作にナイフを提げている二岡とを
見比べて、和室の入り口に立ち尽くしている。まだ頭は痛むのだろう、肩が小さく上下していた。
三浦はそれを横目で見ながら叫んだ。
「スンマセン先行って下さい!すぐ追っかけます!」
「…!」
『逃げろ』と言っても聞き入れないのだ。下手な嘘だが、せめて騙されたふりくらいはして欲しい。
「大丈夫です」
全く意外なタイミングで、二岡が三浦の欲しかった言葉を口にした。暗くてよく見えないが、笑っているらしい。
「鈴木さんも、すぐですから」
GJ!
二岡問答無用だなw
そして何だかばんてふかっこいいよばんてふ
うおおおおビリバト復活来てたー!!
>>1さんGJ!
そして
>>22-24 職人さん乙です。ど、どうなるんだ…。
『善意と後悔と』(後編)
鈴木が去り際に何かつぶやいたが聞こえなかった。多分バカとかそんな事だと思う。
目の前の敵は腕をだらりと下げて動かない。甘さの代償を払えと言うのだろう。
三浦は雄叫びを上げて跳んだ。
無防備な首にハイキックが決まる。―――決まった、と思った。
その足を空中で(信じられないことに片手で)取られ、ぐるんと視界が回転する。壁際の棚に背中を
打ち付けられ、畳に胸から落ちて呼吸が詰まった。
本能的に背を丸めて腹を守ろうとする。その腕ごと、さっきとは比較にならない衝撃が腹を突き抜け
る。スパイクで蹴られたのだ。庭まで弾き飛ばされ、地面でしたたかに背中を討つ。
苦しくて僅かに身を捩る。こふ、と空咳と共に血が溢れた。
起き上がらなければならないが、腕に上手く力が入らない。やっと上体を起こした時、奥から進み出
る二岡が見えた。後ろ手で腰に挿していた何かを抜き取り、こちらへ構える。
銃口が月明かりに光った。
ふらつきながら表へ出た所で、何かが激しくぶつかる音がした。
はっとして振り返った拍子に強い眩暈がして、鈴木はがくりと膝を着く。
「三浦…」
闘っている。自分を逃がすためだ。先に行けと言ったが、もうどうしようもない程の予感がある。三浦は
追ってはこない、と。
(畜生…!)
きん、と耳鳴りがした。深く瞑った目の中に光が差す。
目を開けると、景色が驚くほど鮮明になっていた。まるで写真を見るようだ。いつのまにか昇っていた月
の、冷たい光の所為だろうか。
鈴木はそれを素直に美しいと思う。割れるようだった頭の痛みも薄らいでいた。
それに気づくと急に体が軽くなった。
庭の方へ回り込む。大丈夫。何をすれば三浦を助けられるのか、ちゃんと分かっている。
生垣の外から、庭に転がる三浦とそれに照準を定めた二岡を認める。と、二岡がぎくりと驚いたように顔
を上げた。
三浦避けろ、と叫び、手にしたモロトフカクテルのピンを引き抜く。それを聴いて三浦が這いずって生垣
と壁の間に入り込む。
二岡がまっすぐにこちらを見ている。今にも泣き出しそうな、子供のように澄んだ瞳だと思う。まだ幼い自分
の娘を思い出す。
何だよ泣きたいのはこっちだと言ってやりたいが、凶器がもう指を離れる所だった。
そこで今更、爆発の程度によっては自分も無事では済まない事に思い当たる。
(まぁいいか…)
後輩を、ベイスターズのエースを助けることができる。とりあえずこの場だけは。あとは自分で頑張って貰おう。
(ごめんな、何処までも中途半端で)
思い切り腕を振った。
鋭くまっすぐの軌道で飛んで行く―――筈だったそれは、ふうわりと柔らかい弧を描いて、二階の
窓ガラスを破った。
その短い爆発音と、二岡が庭へと身を躍らせるのとはほぼ同時だった。
火の粉が頭に降りかかる。さっきまで寝ていた2階の部屋があっというまに炎に包まれた。
かと思うと木材の軋む音がして、やがて梁が天井を突き破って焼け落ち、和室も火の海となる。
生垣を踏み割って入り、三浦を助け起こす。血の臭いが鼻を突くが何とか歩けるようだ。
二岡は何故か追って来なかった。振り返ると、まだあの庭に立って炎上する家を見つめている。
どこか安らいだ表情で、うれしそうに。
あれを置き去りにしていいものだろうか、と、奇妙な後ろめたさが残っていた。
【残り51名 年俸総額109億6580万円
30 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/11/27(月) 06:56:27 ID:qkSPx3Ca0
二岡さん、二岡さん!!!!あぁ、好きな選手なのに狂っちゃうの??
1さん乙っす!
職人さんもGJ!
これからどうなるのだろう・・ハラハラドキドキ
職人さん乙!
ああ、タコさんもだんだん何かに影響されていく…
モー村さんもちょっと変だったしな…
ハッ…次はやはり今岡の胴が延(ry
守備かdie・・・
それは古木だね保守
二岡に物悲しさが
ほしゅら
他の7番達はどうなるのかな
他の7番というと、
大村・鈴木・野村・今岡か。
漏れら極悪非道の佐賀ブラザーズ!
今日もネタもないのに佐賀するからな!
 ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
∧佐∧ ∧賀∧ 佐賀県
(・∀・∩)(∩・∀・) 佐賀県
(つ 丿 ( ⊂) 佐賀県
( ヽノ ヽ/ ) 佐賀県
し(_) (_)J
野球の神よ。
ヾ; " i "; *; ヾ ヾ* ; ; "i " ; * ;
もしも居るのならば俺を、;ヾ; "i ";* ;ヾ ; " *
ヾ*;";"i";*;ヾ;"*"i;;ヾ ヾ*;" ;"; * ;ヾ ; "
『野球選手』村松有人を;* ;;ヾ ;;"/" *; *;ヾi"ヾ
ヾ*; "; "i ";*;ヾ "i";
もうこれ以上嫌いにならないでくれ。《《|i;;iii"i";*;
《|l!||i ll|リ/i
|;l!::i |l|
|:ll:|| |l|
嫌いになるのならいっそ、 |:l|ii:: |l|
|:l|::li |l|
|:l|;i|| |l|
.∧_∧ |:l|@: |l|
{@ω@} |;l!:!: ||||
∪ | . ||ii::li: ll|
し--J ノ;||i:: !!l::し
''"""~"~"""' ''""~""'' ''"""~"~"""' ''"" ''"~"~""' '
殺してくれ。
保守
ほっしゅっしゅ
>>38ー39
そういや二岡の他にも7番ていたんだった!
職人さんGJです。
タコさんまでちょっと変になっちまった…。
礒部組が気になりつつ保守
48 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/12/04(月) 01:47:12 ID:wlmLSVoT0
age
捕手
ほっしゅ[`Д´](‘ ε ’)ほっしゅ
自分も礒部組は気になる。
元捕手(6∀6)
ほす
もう一回
『WHO ARE YOU?』
日が落ちた。
心を奪う朱焼けは僅か十五分足らずで終演し、夜の帳が孤島を覆った。
ゴツン、ゴツン……
よって明かりを灯していない暗く沈んだ部屋で、ベッドにあぐらを掻きながら
下柳剛は壁に後頭部をぶつけながら天井を眺めていた。
ゴツン、ゴツン……
揺りかごのように身体を揺らす。疲れているはずの身体をもう一度休めようとして
も、すっかり冴えてしまった頭がそれを拒否した。今眠っても、ロクな夢は見れそう
にない。
桧山の行水に付き合い、湖の畔で夕日を見送った下柳は、矢野が眠る寝室とは別
の――客室とおぼしき一室のベッドに潜り込んだ。
だが、取ろうと思っていた仮眠はものの一時間もしないうちに無遠慮なモーニング
コールに打ち壊された。
窓を閉め切っていても聞こえるフルコーラスに舌打ちしながら、枕元に置いて
あったカバンから地図と名簿とペンを取り出し――
「……あーあ」
溜息が短い回想を断ち切り、下柳は首を捻って窓の外を眺めた。
日が落ちた。
命の灯も落ちた。
そいつは生真面目な男だった。
こと野球に関しては真面目すぎるほど真面目で、真剣に受け止めすぎて自身を
追いつめてしまっているところすらあった。
年は下柳の一つ下なのに、顔は5歳は老けていた。顔の皺の数は彼が背負って
きた苦労の証なのかもしれない。
プライベートでは非常に豪快な男で、機転も利き話術に長けていた。特に、後輩
にはよく慕われていたように思う。
思えば、彼とは一年のブランクを置き、ファイターズとタイガースを通して実に
十年以上の付き合いになる。
ならば、今感じている虚無感にも納得がいく。彼と共に過ごした10年間の記憶
が、ぽっかりと失われてしまったのだから。
たった今、あまりにもあっさりと。
第二回定時放送が伝えた、片岡篤志(T8)の死亡報告が、下柳の胸に暗い影を落
としていた。
カサリ、と、力なく垂れた指先に、乾いた紙の感触が触れる。放送が終わると
同時に、放り出した名簿。今は触れたくもないそれに、何とはなしに目を落とす。
チーム別一覧の、阪神タイガースの欄に並べられた親しい名前。
その中から、背番号8が消えた。
(金本知憲――片岡篤史――矢野輝弘――下柳剛――桧山進次郎)
自然と、リストから浮き上がるように目に飛び込んできたのは、ごく年の近い者
達の名前だ。
彼らと、岡田監督と酒の席を設けたのは、シーズンが終わってすぐのことだった
だろうか。
岡田監督は情に厚い男だった。選手を信じることの出来る監督だった。
それが嬉しくもあり――時には、危うくも感じた。時には非情な判断を下さねば
ならぬのもまた、監督という役割だからだ。
酒が入り、上機嫌にお約束の手品を始めた監督を適当に持ち上げながら、仲間達
と来シーズンの展望を語り合った夜の出来事が蘇る。
酔うと口が滑らかになる片岡は、岡田監督と熱心に野球論について語り合っていた。
その隣で酒豪金本は有り得ないペースで杯を乾かし、酒の弱い矢野は時折ぼんやり
としながら、笑って人の話を聞いていた。普段からハイテンションな桧山は酔って
いるのか酔っていないのかよく分からなかった。
そういえば、あの席には町田もいたなと思い出す。あの時の面子で、このくそやく
たいもないゲームへの参加を免れたのは彼だけだ。喜ばしいことだ。
無事でいてくれたらそれでいい。
(俺は――どうしてたっけ)
最近のことなはずなのに、記憶がおぼろげにしか残っていない。
金本のペースに付き合って飲んでいたから、途中で限界が来て眠ってしまったの
だろうか。眠って――
(眠い……)
眠くないはずなのに、眠い。
(眠って……)
「おい、シモ! シモ!」
「……ぁ?」
「あ、ちゃうわ。いつまで眠っとんねん。置いてくで?」
ぼやけた視界に飛び込んできた矢野輝弘が、眉間に皺を寄せて下柳の身体を
揺すっていた。
「……俺、どれくらい寝てた?」
「30分くらいちゃう?」
頭を掻いて身を起こす。どうやら、テーブルに突っ伏して眠ってしまっていた
らしい。
薄暗い灯りと、店内に流れるBGMが心地良く耳を通り過ぎる。
「ほっとけ、矢野プー、勘定はそいつ持ちじゃ」
聞き捨てならない台詞に顔を上げると、すでに席を立っている金本が人の悪い笑み
を浮かべていた。
「おま、半分以上お前の酒代だろうが」
別に払ってやっても良かったが、ここは反論しておく。
「じゃあシモさん、あとはヨロシクお願いします」
「おい」
便乗してそそくさと席を立とうとする片岡の襟首をひっつかんで引き戻す。すかさず
腕を巻き付け技を決めると、片岡が年甲斐もない悲鳴を上げた。
わざと大げさにしているのかと思ったがそうでもないらしい。老けた顔にいつも
以上に皺を刻んで、脂汗すら浮かせている。……そういえば、酒が入って力加減が
上手くできていないかもしれない。
「まあいっか」
「よくないッスよ! ギブギブ!!」
すでにギブアップしている片岡の脇で、何故かカウントを取り出す桧山。
そんなやりとりに、矢野が声に上げて笑った。野次を飛ばす金本の後方で、町田
が引率の先生のような笑みを浮かべている。岡田監督の姿は見えない。先に支払い
を済ませて出ていったのかもしれない。
「そっか……そうだよな」
おかしな夢を見ていた気がする。酷く悪趣味で、下らない夢。
(くだらねぇ)
日常とはかくも愛おしいものだったのかと思わざるを得ない。
そこに彼らがいて、笑っているという事実にすら感謝したくなった。
そう、あれは夢だ。現実には有り得ない悪夢。
(これが、現実――)
コンコン
ノックの音に急に意識が覚醒し、傾きかけていた姿勢を下柳は慌てて正した。
戻ってきた景色は相変わらず薄暗かったが、それは飲み屋の人工的な薄暗さでは
なく、誰の手も施されていないが故の夜の暗さだった。
整ってはいるが人の温かみにかけた客室。もう何日も掃除もされていないのだろう。
窓から漏れ入る月明かりが、部屋に舞う埃をはっきりと映し出していた。
(そっか、俺、眠って……)
何事もなく、彼らと過ごしていたあの時に戻ればいいのに。
そう思った愚かな願望が見せた数瞬の夢。
「そんな都合良く行くわきゃねーか」
自虐の笑みを浮かべ、呟いた下柳の声と、ドアノブが回される音が重なった。
「シモさん? 入りますよ?」
ノックをしたものの返事がないので勝手に入ることを決めたのだろう。顔を覗かせ
た桧山の顔が、いつになく青白く見えたのは、今宵が月夜だからという理由だけでは
ないはずだ。
「聞きました?」
「あぁ」
ドアを閉め、他に誰がいるわけでもないのに声を潜めて聞いてくる。
短く答えると、桧山が嘆息で返した。
「参ったな。あっちゃん――片岡が死ぬなんて」
「ええ……まさかあっちゃんが……」
声こそしっかりしていたが、落胆の色は隠せない。桧山は片岡はチームでは数少ない
同級生で、特に親しくしていたチームメイトの一人だ。
「矢野さんに報告……」
「しないといけないだろうな」
ですよね、と肩をすくめる桧山。部屋の中央で立ち止まった桧山を一瞥してから、
下柳は大げさに頭を掻きむしった。
「あーあ。めんどくせぇ。絶対暴れるぞアイツ」
「今から出発する、とか言い出さなきゃいいですけど」
あの人、頭良いくせに子供っぽいとこあるから、と付け足す桧山の表情を見る限り、
下柳の懸念は十分に伝わっているようだった。
と、同時に、ドアノブが静かな音を立てて回された。
「げっ、矢野さん」
背後霊のようにそこに佇む矢野に、桧山が呻いた。
先程の放送で起きてしまったのだろうか。眠っていたはずの病人は、おぼつかない
足取りで入室し、ドアに凭れるようにして動きを停止した。
様子から察するに、熱が下がったわけではないのだろう。だが、熱で火照っていた
はずの顔は、今は血の気が失せたように青ざめている。
脂汗の浮き出る顔に、だが眼光だけは鋭く――虚空を睨み付ける矢野の表情に気圧
されたというわけではないが、何となくかける言葉が見つからず、相手の言葉を待って
下柳は口を閉ざした。
「俺は……俺は信じへんぞ」
反応は、予想していたよりも静かなものだった。
呟き、血の気のない唇を噛み締める。
だが逆にそれが、マグマを地底に溜めた休火山のような静かな怒りを感じ、下柳
は様子を探るように矢野の目を見返した。
(そうか――)
下柳は気付いた。その言葉に、気付かされる。
形容しがたい喪失感があるにも関わらず、ただ一滴の涙も出ない理由。
現実味がないのだ。
この状況で生きていると信じられる程都合のいい思考回路は持ち得ていないが、
それでも、画面の向こう、無表情のニュースキャスターが事故記事を読み上げる声
のような、現実でありながらどこか現実味のない感覚がまとわりついいている。
「矢野さん、俺も信じたくないです。でも――」
現実から逃げるのはどうなのか、と言いたげな桧山の言葉は、自主的に途中で
飲み込まれた。
言葉を捜しあぐねいたように、普段陽気な後輩が、振り返って何かを訴えてくる。
その視線を受け、下柳は小さく嘆息した。
つい先程、夢オチに逃れようとした下柳が言えた義理ではないが、逃げて事態が
好転するわけでもない。
だが、実際に死体を見たわけでもない今、情報を鵜呑みにしない、というのも一つ
の手のようには感じた。
何も、直面する必要のない絶望にあえて直面することはない。
ただ問題はその願望に飲まれ、現実と希望的空想の区別がつかなくなることだ。
迂闊な判断は死に直結する。
「で、どうする?」
黙する司令塔に指示を仰いだ。
「あっちゃんの死の報告の真偽は分からない。それでいいとしよう。――それで?」
信じられない、だから今すぐ確かめに行く。そういう展開も十分に考えられる流れだ。
下柳自身、真偽の分からない報告を鵜呑みにし片岡の死に絶望するのも、希望的観測
に縋り付こうとするのも気に入らなかった。
出来るならば確かめて、もし本当ならば、出来る限りの形で弔ってやりたい。
だが――
「分かってる、今日は休養や」
下柳と桧山の視線を受け、矢野は静かにかぶりを振った。
片岡の死が本当だとしたら、早急に、可能な限り早く、このゲームに対抗する手段
を講じなければ行けない。
少しでも解答に近づくため、ヒントになり得るものを探すために行動を起こしたい。
そんな逸る気持ちが矢野にもあるのは間違いない。
「明日朝一で北の灯台に行く」
今から行くと言い出さなくて良かった。
(大丈夫だ。こいつは)
現実との区別が付いている。割り切っている。自分の状態、置かれた状況を冷静に
把握することが出来ている。
片岡の死を確かめに行くとか、今すぐに向かうなど言い出すようなら、殴ってでも
引き留めるつもりだった。
「分かった」
息を吐き出し、下柳はひと言でその場を締めくくった。
「今日は、寝ろ」
物音。
僅かに聞こえた、木の床を体重のあるものが踏み込み軋らせる音に、うっすらと
矢野の意識は浮上した。
普段ならこの程度のことで起きることはないはずだ。熱のせいで敏感になっている
のかもしれない。
自分の現在の体温を知ることが出来ないのは幸運だった。高熱なのは間違いないが、
数字を見た瞬間、気持ちで負けてしまいそうだ。
時間を確認しようと、枕元に置いた腕時計を探る。目的の物とは別の物が手に触れ、
矢野はそれの存在を思い出した。覚えておくほどの価値もなさそうなものだ。
枕元には、矢野の支給品であるジェット風船が置かれていた。
正真正銘のジェット風船だ。良くある四つ入り。色は白で、頭の部分には黒で
プリントされたロゴがある。ドームを出るときに見かけた、スタッフが来ている
シャツにプリントされたロゴと同じ物であることには、すぐに気付いた。
『Billionaire Battle Royale』
膨らませば、そう刻まれたジェット風船が音を立てて空へと飛び上がっていくの
だろう。
その姿を一瞬想像し、ジェット風船が自分のチームの象徴的な応援の儀式である
ことを考えると、酷く不愉快な気持ちにさせられた。
時計を見ると、21時15分を回ったところだった。
(う……頭痛い……)
さっきまで眠っていたはずなのに、夢の中で真剣にミステリー小説のトリックでも
考えていたような疲労感が頭痛を伴って残っている。
(なんやっけ……)
確かに直前まで見ていたはずの夢が、おぼろげな断片としてしか思い出せない。
とても大事なことを分かりかけていた気がするのだが。
記憶を掻き集めようと真剣に頭を抱えていると、一瞬、何かの映像がフラッシュ
バックした。
「地図……」
そう、地図だ。
(何か……何かがひっかかるんや)
スクリーンに大写しにされた地図を見た瞬間感じた、気味悪さと違和感。
(アレは……何でや?)
熱で霧がかる大脳皮質の一部が、早く気付けと叫んでいる。
(くそ……いつからこんなに頭が悪くなったんや、俺は)
50ピースのパズルに四苦八苦しているような苛立たしさを感じる。
地図にも、このゲーム自体にも。
そして、その苛立ちを霧散させるように、もう一度床下から木板が軋む音が聞こえた。
「……っ」
息を飲み、ベッドに耳をつけて様子を探る。断続的に聞こえる、床を踏みしめる音。
間違いない。階下に誰かがいる。自分の意識を浮上させたのがその物音であること
を、矢野が確信するのにそう時間はかからなかった。
足下の方に視線を向けると、桧山がベッドの脇に突っ伏してイビキを立てていた。
自分を監視か、看病かしていてくれたのだろう。しかし桧山も、体調は崩して
いないとはいえ、突然よく分からない場所に放り出され、走り回らされたのは変わり
ない。顔には出さないが、相当疲労は溜まっているはずだ。
そんな彼を起こさないように、そろそろとベッドを降りる。靴は履かず、足を忍ばせ、
矢野は階下へと向かった。
明かりのない廊下。急な階段を手すりを頼りに降りながら、矢野は首を伸ばして
一階の様子を探った。
この屋敷の造りとして、階段を降りてすぐが玄関に繋がっている。一階その奥が
ちょっとしたロビーになっており、さらに廊下が続いているはずだ。
全てを確認したわけではないが、無駄に部屋数は多そうだった。
『侵入者』の姿はすぐに見つかった。
巧みに月明かりを取り入れた窓の配置のおかげで、うっすらと見て取れる人影。
ユニフォームも、背番号も判別することは出来ないが、少なくとも彼がいる位置
はこちらから常に観察できた。
ロビーの中央に佇み、無防備にきょろきょろと辺りを見回している男の目的が何か
は分からない。
敵意があるかもしれない。ないかもしれない。武器を持っているかもしれない。
持っていないかもしれない。
ともかくこの状況では、相手に対する情報がなさ過ぎる。
少し強引だが、矢野は先手を打つことに決めた。
「手ェ挙げろや」
出来る限り敵意を込めた声を演じ、右手を男の頭部に向かって突き付ける。
落ち着きなく動いていた男の動作が止まった。
勿論銃は持っていない。
はったりだ。
この状況で、敵意がなければ無抵抗で弁解もするだろうし、攻撃する気があれば
襲ってくるはずだ。
しかしこちらが丸腰の状況ではどうしようもない。矢野は、唯一強力な攻撃の手立て
を持っている下柳のいる客間の位置を頭に思い描いた。
すぐに二階に駆け込めるように階段の手すりに手をかけ、膝に力を込めながら、
再度相手の反応を探る。
「誰や?」
【残り51名 年俸総額109億6580万円】
>>55-63職人さん乙です!
ってか誰や―――――――――!!!!?気になる・・・。
65 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/12/08(金) 06:59:06 ID:MQMsb4eS0
ややや、やのっちーーーー!!!男前NO,1キャッチャーのあなたをねらう
人なんて・・・。ひーやんもしもさんもはやく気づいてあげて!!!
乙です!
うわわ矢野っち!大丈夫か!?ビリバトは誰がどうなってもおかしくないから怖い怖い。
乙です!
うぅぅ、誰なんだ?!
侵入者も気になるが
矢野が地図に何を見出した(そして忘れた…)のかが気になる!
危なっかしいんだか頼りになるんだかよくわからん感じが実に矢野っぽい
職人さん乙です
『光』
窓の外、夜空に溶けてしまいそうな水平線の向こうに、かすかな明かりが規則的
に点滅している。灯台があるらしい。
そこに、誰かいるのだろうか。何も知らない、平和な島人が住んでいるのだろう
か。
礒部公一(E8)は、膝の上に置かれたショットガンに目を落とした。この武器の
所有者、岩隈は、部屋の奥で仮眠を取っている。その少し奥に斉藤。二つの寝息が
混じりあって聞こえてくる。
「こんな状況でよう寝られたもんや」
眠る二人をなかば呆れたように見やり、礒部は小さく笑った。正面に座る柴原も
それに倣って笑う。どこか愛嬌のある歯並びの下で、金属製の首輪がきらりと
光った。
午後十時の少し前、エリアはG−3。
四時間ほど前、第二回の放送があった。新しい犠牲者は九人を数え、それは礒部
ら四人に危機感を与えるのに十分すぎた。柴原と斉藤の所属するホークスの選手は
今のところ全員生存しているようだったが、そんなことは何の安全保障にもならな
い。
ホークスの選手達を探しに行かなくてもいいのだろうか? 赤の他人と言っても
いい自分や岩隈と一緒に隠れている場合ではないのだろうか? 礒部は疑問に
思った。
だが、斉藤は放送の後にこんな提案をした。
「二人ずつに分かれて、交代で仮眠と見張りやりましょうよ。いつ襲われるかわか
らへんし、休めるときに休んどかな」
確かに理に適った案だった。岩隈も柴原も賛成した。もちろん礒部も同意したが、
あれだけ城島達の安否を気に掛け、自分達に食って掛かってきた斉藤の剣幕を思う
と、なんとなく腑に落ちなかったのも確かだ。
礒部は、もう一度部屋の奥に目をやった。規則正しい呼吸音が聞こえる。
「なあ、柴原」
呼びかけると、柴原がこちらを向いた。また口が開いている。
「お前ら、城島とか探しにいかんでええんか?」
少しの間の後、柴原は「……あー、」と空気の抜けるような声を上げた。
「そりゃ、心配ですけど、」
柴原はそこで言葉を切り、手の中のベレッタに目を落とした。あまり口上手なタ
イプではないらしい。方言と敬語が混じった、テンポのゆっくりとした喋り方だ。
「……ジョーとか小久保さんとか信頼しとるし。あの人たちが簡単に死ぬなんてあ
りえないですよ」
「そうか」
「それに……外出るの怖いし」
柴原はそう付け加えて、ちょっと情けなさそうに笑った。
「そうやなあ……いざ出てって、襲われたとして、撃たれるのも撃つのも、どっち
も勘弁やな」
礒部はため息混じりに言った。それは、今日何度も考えた、二つの恐怖。
銃を向けられる恐怖と、銃を向ける恐怖。
斉藤に銃口を向けられたとき、礒部は何もできなかった。無事で済んだからよ
かったものの、次はどうなるかわからない。
あの時の岩隈のように毅然と立ち向かう勇気は、果たして自分の中に潜んでいる
のだろうか? 自分や岩隈を守るために、この手の中の銃を使う勇気があるだろう
か? そして、果たしてそれは、勇気と呼べる代物なのだろうか?
「そこ行くと、岩隈くんなんかカッコよかったなあー」
窓の外を眺めながら、柴原は楽しそうに続けた。
「あの時、和巳、完璧に迫力負けしとったもん……ま、弾は入れてなかったんです
けどね。和巳は知らんかったやろうけど」
礒部は目をむいた。
「ええ?」
「やって、もし本当に撃ったりしたら取り返しつかないでしょ。ま、和巳に人撃つ
ような勇気があるっても思わんけど、念のため」
柴原は、あっさり「人を撃つ勇気」と口にした。
「和巳はすぐカッとなるから。チームのことだと特に。来年からは選手会長やし、
責任感もあると思うんですけど……行き過ぎんようにストップかけてやらんと」
そう言って、柴原はわずかに微笑んだ。
チームメイトを思い、他人に銃を向けた斉藤。
その裏で、後輩を思い、弾を込めていなかった柴原。
礒部はそこに、常勝軍団と謳われるホークスの、かたい絆を見た気がした。
「うらやましいな」
口をついて出たのは、素直な羨望だった。
柴原は目をまるくして礒部を見た。また口が開いている。
「俺は……俺たちのチームは、そんなふうに信用されてたんやろうか?」
礒部は灯台の明かりを見つめた。
「こんなチーム、どんなにがんばっても自力で優勝できるわけないって、最初っか
らイーグルスはそう思われとったんやろか」
それは、このゲームの趣旨を告げられてから、振り払おうとしても払えない
ショックだった。
(なあ、嘘やろ? 三木谷さん)
「やあ、君が選手会長の礒部君だね。よろしく。優勝に向けて一緒に頑張ろう」
差し出された手は、確かに厚く、温かかった。
今から一年前、逃げるようにしてたどり着いた仙台。傷つき疲れ果てた礒部を迎
えたのは、楽天のオーナー。三木谷浩史だった。
産声をあげたばかりのチームで、初代選手会長に任命されたのが礒部だった。ほ
どなくして、岩隈もそれを追うようにやってきた。二人にとって、どんなに非難さ
れようとも譲れない決断だった。寄せ集めのチームだろうとも、ユニフォームすら
できていないチームだろうとも、いざシーズンが開幕して負け続けようとも、礒部
は満足だった。優勝できると信じていた。自分の決断は間違っていなかったと断言
できた。イーグルスは礒部にとっての救いだった。
商売っけを優先する三木谷のやり方には批判も少なくなかったが、それでも礒部
は彼に感謝していた。救いの手を差し伸べたのは、紛れもない、オーナーである三
木谷だったからだ。
けれど、その三木谷がたった一年で出した結論がこれだった。
生き残ったら楽天。そうでなければ、死。それ以上でもそれ以下でもない。関係
ない他のチームをも巻き込んだ殺し合いだ。
<優勝に向けて、一緒に頑張ろう>
(あれは本心やなかったんか)
<よろしく頼むよ、礒部君>
(俺は信用されてなかったっちゅうことか)
<礒部君だけじゃない、エースの岩隈君も来てくれた。私はこのチームが優勝でき
ると信じている>
(俺も、クマも、みんな信じてもらえてなかったっちゅうことか)
たった一年前の記憶が、今では夢のように不確かなものに思えた。
自分の辿ってきた道が本当に正しかったのかどうか、今となってはよくわからな
かった。
文字通り、礒部は自信を失っていた。
重い沈黙を破ったのは柴原だった。
「礒部さん、俺ね、」
礒部は顔を上げた。柴原も同じように窓の外の海を見つめている。口は――閉じ
ている。
「生き残ったら楽天行きだなんて、まだ信じられないんですよ。てか、本当に殺し
合いがあってるのかも、いまいち実感湧かんし」
灯台の明かりが、ちかり、ちかりと点滅する。
「実際に十五人も死んでるっていうでしょ。だからジョーたちのことは心配やけど、
あいつらが死ぬなんて、やっぱり思えんし。けど――」
柴原が何を言おうとしているのか、礒部にはなんとなくわかる気がした。
「ジョーたちのことを信頼してるからとか言ったけど、結局自分が怖いだけなんで
すよね。和巳だって、出発したときこそあんなやったけど……本当に人が死んでる
ってわかったら、やっぱり怖いんだと思うんですよ。外に出て、殺されるのも、殺
すのも」
「俺かて同じや。びくびくしとるだけ、ただの臆病もんやで」
そう答えると、柴原はふっと笑った。
「でも、礒部さんはカッコイイですよ」
「は?」
いきなり向けられた矛先の意味がわからず、礒部は素っ頓狂な声を上げた。
「俺、去年、すげーなって思って見てましたもん。俺にはあんなふうにできないな
って。俺、いつもボーっとしてるとかリアクション遅いとかよく言われるし、先頭
に立ってみんなを引っ張るとか、率先して何かを主張するとか、できないですもん。
いつも周りに流されるばっかりで」
「やめぇや。おだてたって何も出ぇへんぞ」
「ほんとですって。俺のほうこそ礒部さんが羨ましいですよ。歳はそんなに変わら
ないのに、何でこんなに違うんだろうって。間違っても選手会長なんかできるよう
なキャラじゃないし、俺」
そこまで言って、柴原は礒部のほうに向き直った。
「あんな大変なことがあって、すぐ次の年からはできたばっかりのチームも引っ張
るなんて、俺なんかには絶対できないですよ。でも、俺みたいな、その他大勢の中
の一人にも、ちゃんと役割があるんじゃないかって思うんです。……じゃなくて、
あー……なんか、自分が何言いたいのかわからんくなってきた」
柴原が照れたように笑った。茶色い髪の毛が、よく磨かれた板のようにぴかりと
光って揺れた。
「いや、ようわかるで。……ありがとな」
礒部も笑った。柴原なりの、拙い励ましだった。少しだけ救われた思いがした。
思えば不思議な夜だ。こんな機会でもなければ、柴原とこんな話をすることも、
こうやって、柴原洋という男の優しくも不器用な人となりを知ることもなかっただ
ろう。これも運命のようなものかもしれない。
そして、礒部はこの夜を忘れることはないだろうと思った。残酷な運命に翻弄さ
れ、道を見失った夜。その中で見つけた、一つの小さな光。
「おまえらと合流できてよかったよ」
礒部は、心からそう告げた。
その瞬間だった。
ドォン――!
物凄い轟音と昼間のような白い閃光が、礒部の意識を闇へと叩き落とした。
【残り51名 年俸総額109億6580万円】
2夜連続!職人さん乙です!寝る前に確認してよかった。
にしても、なんかこっちも大変なことに・・・(((゜Д゜;)))
職人さん乙です
べっち・・・
職人さん乙です。投下が続いて嬉しいわ(・∀・)
べっちも柴原もがんばれー
職人様乙です!
(T^ω^)べっち頑張れお 応援してるお
>>77 てつだいらも早く大台突破して参戦できるようになれよ!
79 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/12/09(土) 20:15:49 ID:ehS9YE7Z0
ほしゅ
職人さん乙です!うわあああぁ
SB&楽天連合はどうなるんだ…
81 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/12/10(日) 17:35:40 ID:mUbNjroX0
あわわ、ドォンってなに!?
楽天&SB組も密かに応援してるのに・・・。
ほしゅ
ヽ( ’ー’)人(6∀6)人[~ ε ~]人[`=´]ノ
>>83 4人とも無事でいますように(-人-)ナムナム
保守の王子さま
楽天ソフバン連合軍がんがれ保守
金本さん&野口さんが激しく気になる・・・。
定期的保守
捕手矢野
[`ー」ー]
ジョージ・マッケンジー
hos
(ゝ○_○)
94 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/12/15(金) 21:32:27 ID:zz/w6tFSO
ホシュ↑
(^・ω・){えへっ
( アゝレ) <ほしゅ
ほしゅ
(゚▽´)<保守
98 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/12/17(日) 20:38:38 ID:KxVPS99X0
捕手
ほしゅ
保守
ラスボスは多分鈴衛
鈴 衛 保 守
さ
す
が 鈴
衛
104 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/12/19(火) 15:22:53 ID:sgNynm7D0
二岡さん、目を覚まして・・・。
。
〉
○ノ イヤッホォォ!
<ヽ |
i!i/, |i!ii ガタン
 ̄ ̄ ̄ ̄
リレー開始から2年たって今なら面子もだいぶ変わっているな。
引退、メジャー挑戦、逆にメジャーから復帰、減俸で一億以下になった人、年俸うpで新たな参加資格者になった人…
108 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/12/19(火) 23:47:29 ID:iHEDbjuA0
>>107 そうだよな、年俸3億になった鈴衛がカープの4番定着したり佐々木が未だに抑えでがんばってるもんな。
捕手が保守
>>108 ダウト
年俸3億とカープは両立しないぞ
>>110 それ以前に突っ込むところがあるd(以下略
_
▼^ `▼
イ fノノリ)ハ 出張保守…
リ(l|゚ .゚ノlリ
_(__つ/ ̄ ̄ ̄/_
\/___/
ほしゅのせんいち
114 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/12/21(木) 20:09:53 ID:hp/Z84oTO
ほしゅしてほしゅーの
ほす
hoshu
[`ー」ー]捕手が保守
クリスマスイブ保守
120 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/12/24(日) 17:12:16 ID:HLeFD57LO
(^-^)/三浦誕生日イブ
ほしゅ
123 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/12/26(火) 02:43:11 ID:+aoxusFEO
保守
松中誕生日保守
保守
ほしゅ
保守
ほしゅ
そっと捕手
hosyu
こっそり保守
あけおめ
ことよろ
ほしゅ
135 :
代打名無し@実況は実況板で:2007/01/02(火) 11:14:38 ID:lSWNWqJqO
ほしゅ
保守だ!
小久保は和巳や松中と再会できるのかなほしゅ
138 :
代打名無し@実況は実況板で:2007/01/03(水) 18:12:57 ID:GdfFOB4f0
二岡さんは、正気に戻れるかな・・・。
乙さんとモー村さんのその後が気になって仕方ありません
斎藤隆がまともにそこそこ生きますように
アレ様の命運は、佐伯とモナが握っている気がしてならない
佐伯とモナが無事でいますように。
ほしゅ
145 :
代打名無し@実況は実況板で:2007/01/07(日) 01:11:51 ID:HwvhuYOIO
深夜の保障
保守
平和ボケ日本代表が保守
「ベイスターズばんざぁぁぁぁい!!」
∩∩
∧ ∧ . ノ ノヽヽ
∩`Д´] (‘ ε’)
平和⊂) . ヽボ ヽ 「はいれぇ!」
ヽ/ ) . ) ケ )
(_)J 人 Y
.(( L_ L_) ))
「俺のベイスターズ愛が通じたのか……?」
「勘です」
こいつら大好きw
∧_∧ ∧_∧
. 将棋でもすっか!>[ `Д´] ∬ ∬ (‘ ε ’ ) <まぁ別にやってもいいモァン
( ∪ ∪ 旦 旦 U U )
と__)__) ┳━┳ (__(_ つ
将棋といえば古田が強いんだったな
まあ、この世界ではヤクルツ皆揃ってダークサイドに行ってしまったから遊戯どころじゃないだろうが…
ヽ(゚ 歯 ゚)人(´-_-`)人 ( ゚∀゚)ノ<10億リスト軍団が保守
( ・w・)<h▼Φo※sδ●hu∂><´θ` >
(訳:保守)
保守
ほす
☆
[`ー」ー]捕手や
(( ))ノ
__________ ( ) ))
////////// /\((⌒ ))
////////// /(⌒((⌒)) )),
////////// /(⌒( ⌒ ) ⌒ )
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| ( (( ⌒ )) )
| | ̄ ̄| | (( ⌒ )) )), .
| | |. | 从ノ.::;;火;; 从))゙ ヽ○ノ
| | | | 从::;;;;;ノ );;;;;从 (へ
| | | | 从;;;;;::人;ノ;;;;;从人 く
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
保守
保守
ほす
『Fake』
暗闇の中、フェイクの銃を突き付けられた侵入者は、小さな動作でこちらを振り
向いた。
口元を引き締め、矢野輝弘は慎重に相手の動向を観察した。
相手はゆっくりと手を上げ、降伏の意を表明する。敵意はない、ということらしい。
だが、慌てて弁解する様子もなかった。
「やっぱり先客がいましたか」
ひどく落ち着いた声。聞き覚えがあるような気もするが、誰かは全く判別がつか
ない。
しかし、この状況で、あまりにも『普通すぎる』相手の反応に、矢野は戸惑いを
隠せずにいた。暗がりのため、こちらの表情を相手に見られていないことが救いだ。
「銃持ってないでしょ?」
笑いを含んだ声。
舌打ちしそうなのを堪え、矢野はピストルの形を作った右手を、もう一度男に向け
直した。
「バーン」と、口の中で小さく呟き、撃つ動作をしてから、腕を下ろす。
男の肩が小さく揺れた。笑ったのかもしれない。
「俺、目だけはいいんですよ」
自分の目元を指したらしく、男の右腕が上がる。
(――右利き)
男は誇るでもなく続けた。
「それに、いきなり人を撃ち殺すほどやる気満々の人は、こんなところに泊まら
ないと思いますよ」
「それもそうやな」
冷静な観察眼だ。ここは相手の落ち着いた判断に白旗を挙げざるを得ない。
身を隠すのが最優先のこのゲームで、こんな目立つ建物に泊まるのは、余程
追いつめられて判断力を失っているか、やむを得ない事情がある者か、はたまた
何も考えていない者か――
右利きの男。口調は敬語だが、イントネーションに聞き覚えのある訛りが混
じっている。背は高い。並べば矢野よりかなり大きいだろう。横幅はそれほど
でもなく、ひょろりとした細身の印象だ。
ここまで四言。話して誰か絞れないのだから、セリーグの選手ではないのだろう。
五感で得られる情報を最大限に活用し、脳内の選手名鑑を捲っていく。
「あ、もしかしてまだ俺が誰か分からないっぽいですか? うーん……やっぱ
俺地味なんですかね。矢野さん?」
少し残念そうなトーンで、一歩、二歩、相手が近づいてくる。まだこの男が
無害と決まったわけではないが、ここまでの気の抜けるやりとりで大方の警戒心
は解けていた。だが念のため階段の手すりを握り直し、腰を引いてすぐにでも
逃げられる準備だけはしておく。
闇の中から一人の男が浮き上がってきた。次第に、相手の輪郭、口元、目元が
肉眼で判別できるようになり――
「なんや……金村か……」
「なんやって何ですか」
見たことのある顔だが接点はほとんどない。宮城県出身で高校は仙台育英だった
か。矢野も仙台とは縁がある。その程度の共通点だった。
「お前は?」
「え?」
「え、ちゃうわ。こんな夜中にコソコソ人んち忍びこんで何しとんねん」
「アンタの家ですか、ここ」
金村が笑う。そんな彼の仕草の一つ一つが、不自然なほど『日常』であることに、
矢野は違和感を感じていた。
「家を探してたんです」
「家?」
珍妙な解答だ。
毒気を抜かれ、矢野はオウム返しに聞いた。
「どうせならこの島で一番広い家に住みたいと思って」
「お前、ずっとこの島に住むつもりなんか?」
「さぁ……」
いよいよ呆れる。自分の置かれた現状を把握していないのか、把握した上でこの
調子ならば誰かが一発殴って覚醒してやった方が親切というものかもしれない。
「そんな調子やと、すぐ死んでまうぞ」
脅すつもりはないが、奇妙な出会い方をした縁として忠告しておく。それでなく
とも、先の放送で親しかった同僚の名前を聞いた衝撃は大きい。
こんな風に今までほとんど話す機会のなかった相手でも、今こうやって顔を突き
合わせている人間が、今日明日死亡者報告に名を連ねる状況は避けたかった。防衛
することは、少なくとも延命には繋がる。
矢野の言葉に、金村は一度黙って、何かを考えるように虚空を見上げた。
やがて、視線を矢野に引き戻す。
「落合さんが死んだんです」
「――!」
心臓が凍り付きそうになる。
それは、先ほどの放送で名を呼ばれた、同じリーグの投手だった。
彼は、落合の死を目の前で見たのかもしれない。
そして、落合の死の確証は、片岡の死の証明とも成り得る。
「たった10分――15分、俺が目を離しただけで、さっきまで普通にしゃべって、
生きていたのに」
「…………」
言葉が出なかった。
「どう思います?」
答えを急かすように、金村は間を置かず口を開いた。
「10分ですよ」
10分。
生々しい数字に、答える術が見つからない。陳腐な弔いの言葉も、同情の言葉も、
この場には相応しくない気がした。
「俺思うんですよ」
だが不思議なのは、その衝撃の事実を語る金村の顔は、その人の死を悼むよりも
――もっと何かを悟った者のように淡々と、落ち着きを払っていることだ。
「落合さんは、俺がいない10分間の間に誰かに殺されたけど、もしかしたら、
今この島にいなくて、落合さんが自宅に帰るために車を運転していたとしても
――同じ時間に、あの人は交通事故で死んだかもしれない」
滑り落ちる言葉は、矢野が考えたこともないような思考論だった。
「結局、人の命ってそんなもんなんじゃないかなって」
それには異議を唱えたかったが、とっさに反論が思い浮かばなかった。感情的
には納得できないが、否定できる材料もすぐには見当たらない。
「だったら、悩むのも怖がるのも馬鹿らしいでしょう」
それは開き直りというものではないのか。
「普段普通の生活をしていて、俺は今日10分後トラックに追突されて死ぬかも
しれない、なんて考えて生きていましたか?」
「それは……」
考えたこともない。むしろ、一日24時間、一年間365日、1分1秒をそんな
ことを考えて生きていたらそれこそ気がおかしくなってしまうだろう。考えても
仕方がないことを考えるよりは、意識せずに今日明日を精一杯生きる方が生産的だ。
そこまで考えて――矢野は金村の言いたいことを、理解してしまった。
「一緒なんですよ。どこにいても一緒だ。確率が高くなるか、低くなるか、それだけ」
そう、一緒なのだ。今、自分はこの世界で、五分後、十分後、死ぬかもしれない
危険性を考えながら生きている。それこそ頭がおかしくなりそうな程。体調を崩す程。
(考えても、仕方がない――?)
はたしてそうなのだろうか。
「だから俺は普通に生きます。無理に生きるのも、無理に死ぬのも、俺はやりたく
ない。普通に生きて、普通に死にます」
矢野の葛藤をよそに、金村の中ではすでにそれで完結しているらしい。言い切り、
金村はようやく最初の矢野の質問に答えた。
「その為に住む家を探していたんです」
「それは――」
逃げではないのか――そう言いかけた言葉を矢野は咄嗟に飲み込んだ。
反駁を加えたいことは山ほどある。
しかし、ここで金村にお前は間違っていると頭ごなしに否定するのは、また違う
気がしたのだ。
これは、彼流の立ち向かい方だ。
少なくとも、彼は彼なりに考え抜いた上で、その結論に達したのだから。
「俺は……そんな覚悟は決められない」
呟く。『普通に生きて普通に死ぬ』――簡単に言うが、実行するのは簡単なもの
ではない。
(これは逃げじゃない)
受け入れるのもまた勇気なのだ。
「それで……落合はどうしたんや?」
話題を変える。ここまで話して、彼の生き方が全く自分とは違うベクトルを向いて
いることは良く分かった。このまま話していて、どちらかがどちらかに説得される
ことは――恐らく、ないだろう。
「とりあえず、近くに診療所があったんでそこまで運んで、隣の空いてるスペース
に穴掘って埋めました。それが一番、死んだ人にとっては自然かなと思って」
「自然……」
呻く。確かに道端に死体が転がっているよりは幾分か自然だ。
しかし――
診療所が、おそらく人が集まりやすい場所であるのは間違いない。
彼の次にそこに踏み込んだ人間は、人一人埋められるほどの大きさに掘り返された、
真新しい跡の残る地面に気付くだろうか。
「しばらくそこに留まってたんですけど、でもやっぱり診療所で暮らすのも、死んだ
人と一緒に暮らすのも普通じゃないから、そこは落合さんに譲って、俺は新しい家探
しをしてました」
「話は分かった」
やはり彼の理屈は理解しがたい部分が多すぎる。ただでさえ頭が重いのに、頭痛
が酷くなりそうで矢野は適当なところで話を回収した。
「好きに使いや。俺らはお前を襲う気はないし」
二階にある寝室は矢野が独り占めして、今は桧山がベッドに凭れたまま居眠りを
しているはずだ。同じく二階の客間は下柳と桧山が交互に仮眠に使用している。
ベッドこそないが、一階の応接室には寝心地の良さそうなソファがまだ残っている
はずだ。
「こんだけデカイ家やし、多分探したら他にも部屋が……」
「お気遣いなく。イイ物件を見付けたので下見に来ただけです。空き家だったら
そのまま住もうと思ってましたけど、先客がいるなら追い出すのもなんなので、
近くにキープしている家があるのでとりあえずはそっちに住むつもりです。こじん
まりとしてるけど、割合住み心地も良さそうなんで」
「ヘンなやつ……」
こちらから場所を提供したのに拒否されてしまった。
そこにも彼なりのこだわりや、基準があるらしい。
「そっか」
気を遣っても仕方がない相手なので、ここはあっさり納得しておく。
「俺ら、明日の朝にはこの家を出て北に向かうつもりやねん。だから、その後お前
に譲るわ」
他人の家なのだから譲るも何もないのだが、そう言ってやることが、彼に対して
してやれる最大限の親切のように矢野は思った。
「寝室のベッド、結構寝心地ええで」
「皆さんがいなくなってから、また見学に来ます」
金村が笑みを浮かべ、会釈する。矢野も笑い返した。決して居心地は悪くないが、
奇妙な沈黙が落ち――小さな、電子音が聞こえた。
「何か鳴ってるぞ」
「あー、ムシですよ、無視。しつこいんですよねー、コレが」
いたずら電話にウンザリするような口調で金村が答える。
「それじゃあ、俺はこれで」
一体何が鳴っているのか気になり、詮索しようとした矢先に、金村が別れを切り
出した。
「――あっ、金村!」
名残惜しさも何もなく、玄関に向かった金村を引き留める。
立ち止まり、振り返った金村に、矢野は先ほど言えなかった自分の意見をぶつけた。
「俺は何が何でも生きるつもりで、生きるわ」
向こうだけ自分の言いたいことを言ってすっきりするのは不公平だ。
「ここで死ぬことが俺は普通だとは思わない。多分これで死んだら、俺はめちゃくちゃ
悔しいと思う」
それに、彼にとってこんな考えのヤツもいるのだと知ることは、決して無駄には
ならないと矢野は思った。
「お前みたいに割り切れないし、生きたいと思っているのに生きられない悔しさなんて
想像するのも嫌や。でもそれ以上に、やれるだけのことをやりたいと思ってる」
悟ることが出来たら楽だろう。死を受け入れ、恐怖を持たなくなれば、それはある
意味このゲームの勝者なのかもしれない。
「いいんじゃないですか」
そう言って、『勝者』は笑った。
「それじゃ、失礼します」
まるでグラウンドに向かってそうするように、慣れた仕草で頭を下げた金村が姿
を消し――矢野は一人、彼が出ていった玄関の扉を眺めていた。
ぽかっ、と軽く自分の頭を拳で殴る。
「だから、頭が固いって言われるんや」
いつか、偉大な先輩に言われた言葉を思い出す。
悪い癖だ。
これが正しいと思いこむと、それ以外に目がいかなくなってしまう。柔軟性に欠
けるのだ。
年を取るごとに少しずつ改善していっていたつもりだが、こんな事態になって
またぶり返していたらしい。
(大切なのは、広い視野を持つこと――)
自分のやろうとしていることが間違っているとは思っていない。
だが、それだけが正しいわけではないと思い知らされた。
矢野は、生きるためには立ち向かわなければいけないと思った。努力しなければ
いけないと思った。
しかしそれは、生きるための努力をすればする程、死んだときに打ちのめされる
諸刃の剣でもある。
金村は抗うことを選ばなかった。死といういずれ訪れる自然の摂理に身を任せる
ことに決めた。
66人いれば、66通りの道の見つけ方がある。
ふと気になることがあった。
彼らはどうなのだろう。
(シモと、ヒーは……)
自分に協力を請われあっさり承諾した下柳と、なし崩し的に仲間になった桧山。
己が彼らの道の選択に少なからず影響を与えていることに、矢野は改めて自らが
背負う十字架の重さを実感した。
一試合の勝敗どころではない。
大切なチームメイトの命という、押し潰されそうな程大きな十字架。
自分が背負っている責任の大きさにゾクリと、全身に鳥肌が立った。
「何してんの?」
「――シモ!」
上階から声をかけられ、矢野は慌てて振り向いた。
「何で起きて……」
「居眠りしてたアホが騒いでた」
どうやら叩き起こされたらしい下柳が、眠そうに大あくびをする。すると、特に
呼んでもいないが、呼ばれたかのように上の階からドタバタと騒音が近づいてくる。
「ややや矢野さーどわせqあwせdrftyふじこlp!?」
派手な騒音を立て、階段の最後の数段を転げ落ちた桧山がよく分からない悲鳴を
上げながら、しばし痛みにうずくまっていた。
「なんで抜け出すんですかああー! どこ行ったのかと心配したやないっすかー!
シモさんに殺されるやないっすかー!」
やがて痛みが引いたのか、バネ仕掛けの人形のように飛び上がり、泣きつく、と
いう表現がぴったりな様子で迫ってくる。
目が覚めて、見張っていたはずの矢野がベッドからいなくなっていたことに相当
動揺したらしい。心配しているのが矢野の身なのか、自分の身なのかは微妙なところだが。
「ひー」
ぽかん、と後頭部をゲンコツで叩かれ、ようやく桧山は自分の傍らにいたもう一人
の先輩の存在に気付いたようだった。
「交代」
「えっ! いいんですか!?」
見張り交代の合図に、桧山が目を輝かせる。
「じゃあちょっと寝てきます。睡眠不足はお肌の大敵……」
「次の放送までな」
「ってええっ!? あと二時間しかないやないですか! それはないですよぉ〜!」
うきうきと客間に向かおうとしていた桧山の悲鳴を聞き流す下柳。
そんな二人に苦笑しながら、矢野は下柳に促される前に寝室に向かった。
月が出ていた。
満月には少し足りない、いびつな月の明るい夜だ。
「金もっちゃん、どこにおるんやろ……」
ベッドに腰をかけ、湖面に映るそれを窓越しに眺めながら矢野が呟いた。
「あいつがおったら、心強いのになぁ」
下柳にとっても同級生で、同じ年に移籍してきた腹を割れる友人だが、矢野に
とっては大学時代から、十八年来の旧友だ。
「いいからとっとと寝ろ、病人が」
人のことばかり気にかける矢野を強制的に寝かしつける。
「一回くらい、3人でお立ち台立ちたいしなー」
「まだ根に持ってんのか」
横になった矢野が、大人しく寝ればいいのに話の種のように言ってくる。
優勝した今年、下柳と金本が二人でヒーローになったことがあった。もちろん
下柳は嫌がったのだが、監督命令と言われコーチ選手全員にベンチから担ぎ出され
た状態だ。
あのとき矢野が自分も行きたいと盛んにアピールしたが、結局広報の許しが出ず、
彼が後々まで膨れることになった。小学生の仲間はずれでもあるまいし、と思わな
いでもないが、彼なりに真剣に熱望しているらしい。
そういえば、金本も同じようなことを言っていたなと思い出す。
年寄り3人で甲子園のお立ち台。何が楽しいのかは知らないが、二人が口を揃え
て言うのだから、今度そんな機会があれば無理矢理連れ出される覚悟はしなければ
いけないだろう。
くだらない、と思う反面、今そうやって自分を必要としてくれる人たちの笑顔に
囲まれて生活していることを、随分と恵まれているなと感じる。
「帰ったら、立ちゃいいじゃねーか」
「絶対立てや?」
「……一回だけな」
「約束な」
「ああ」
一回恥ずかしい思いをするのを我慢するだけで、揃って来シーズンを迎えること
が出来るなら、幾らでも約束する。
そんなことを思い、下柳はらしくないな、と苦笑した。
条件付きのゴールに執着し過ぎると、後々後悔する。そんなことは分かっている
はずなのに。
(それに)
ようやく寝息を立てだした矢野の傍らで、下柳は大切な存在に思いを馳せた。
(俺には残してきたヤツがいるからな)
忙しいからちょうど友人に世話を頼んでおいて良かった。
あいつは勘が鋭いから、主人の置かれた窮地を察知して暴れたりしていないだろう
かと心配になる。
(ちゃんと寝てるか? 飯食ってるか? 散歩には連れてってもらってるか?)
窓の外に視線を向けると、少し位置の変わった月が見下ろしていた。
湖畔に佇む洋館が月明かりに照らされる様は、さぞかし幻想的な光景だろう。
あいつを連れて、月夜の散歩というのも洒落ている。
(ラガー……)
愛おしい存在のぬくもりを思い出しながら、下柳剛はその島で最初の夜を過ごし
ていた。
【残り51名 年俸総額109億6580万円】
172 :
代打名無し@実況は実況板で:2007/01/17(水) 19:49:10 ID:hJd4LLhy0
捕手
久々の新作キター!!乙です!!
ほおー、侵入者は[^∀^]だったか…ここの[^∀^]は中々かっこいいなー
そして虐げられる桧山ワロスw
『回想・福留孝介の記憶』
自分は何と馬鹿なことをしてしまったのだろう。
(ああ、俺はバカだ)
脅えたように見開かれた石井琢朗(YB5)の目が、ぎっと吊りあがった瞬間。あ
の映像がぐるぐる、ぐるぐると福留の頭をまわる。
(スイマセン、先に撃った俺が悪かったんスよね。謝りますから)
塁間を盗む速さで石井が接近してくる。
(俺だって怖かったんスよ。だって、殺し合いなんて。ねぇ。冗談じゃねぇって。
それでちょっと混乱しちゃったんすよ。ごめんなさい、謝りますから)
石井がバールを振り上げる。
(マジで頭だけはカンベンしてくださいよ、すげー痛えから)
衝撃。その瞬間、天と地がひっくりかえる。最後に記憶へ焼きついたのは、青い
空と、そして、
「避けろ! 孝介!」
(……川上さん?)
――世界が暗転する。
「……ッてェ……」
頭が何倍にも膨れ上がってしまったかのようだ。鈍い痛みの中、福留孝介(D1)
は重いまぶたを押し上げた。世界が、赤い。目が充血しているのかもしれない。あ
るいは、目に血が入っているせいかもしれない。よくわからないが、焦点が定まら
ない。ぼんやりと赤い視界だ。なんとか目に神経を集中させる。天井のようなもの
がようやく認識できてくる。そのまま、ゆっくりと視線を移動させた。
すぐ隣に、横たわったものが見える。――人だ。白っぽい、青のラインが入った、
でもところどころ赤い模様が滲んでいて……いや、そんなことより、重要なのはぼ
んやりと見える数字の6。顔も、ああ、そうだ――福留は、よく力の入らない腹を
絞るようにして声をかけた。
「井端さん……井端さんっすよね? 寝てんすか?」
返事はない。井端は動かない。
「寝てんのか」
福留は考えた。
(俺を助けて、ここまで運んでくれたのは川上さんと井端さんなのかな?)
そう。石井に襲われたときに聞こえたあの声は川上のものだった。だが、その後
の記憶はぷっつりと途絶えている。今、川上の姿は見あたらない。席を外している
のだろうか。
(俺、重いしなぁ……)
井端と福留では、体格がだいぶ違う。川上と二人がかりで運んできたとしても、
井端にとってそう簡単なことではないだろう。
(井端さん、俺を運ぶのに疲れて寝ちゃったんですね。すんません。俺ほんっとバ
カで)
福留は心の中でそっと謝った。井端は動かない。置物のようにじっと横たわって
いる。
(これ、井端さんだよなあ……?)
じっと見ていると、福留は、横に居るのが本当に井端なのかどうか疑わしい気持
ちになってきた。よく見えないせいもあるのだろうが、まるでゲシュタルト崩壊の
ように、見れば見るほど混乱してくる。
(井端さん、いばたさんだよね?)
動かない。よく見えない。動かない。
(いばたさん、いばたさん……いばたさん?)
よく見えない。世界が赤い。視界が狭い。
(いばたさん……って、なんだっけ?)
福留は、その動かないものから目を逸らした。何かがおかしい。自分の中の何か
がおかしい。今まで当たり前だと思っていたものが、さらさらと崩れていく気がす
る。自分にとって当たり前なもの。野球。ドラゴンズ。白と青のユニフォーム。
チームメイト。野球人・福留孝介を構成しているものたち。縦糸と横糸を繰るよう
にして織り上げてきた人生の記憶。
(……なんか、へんだ。俺、なんかおかしい)
頭が重い。水を吸って膨らみ、ぶよぶよにふやけてしまった感じがする。
福留は天井を見つめた。
(俺、何してるんだろ? ここ、どこだろ?)
思い出せない。天井を見つめる。見つめているもの。天井。……見つめているも
の。
(……あれ、何だったっけ?)
見ているものが何なのかわからなくなってくる。映像と記憶が一致しない。つい
さっきまでわかっていたはずなのに。思い出せない。その恐怖に、福留は慌てて目
を瞑った。
(何で頭が重いんだろう)
福留は思い出せない。頭が重い。ふやけて膨らんでいく。大事な記憶たちがどん
どん体の外に追い出されていくのを感じる。自分が自分でなくなっていく。
(なんなんだよコレ……俺が、俺が悪かったよ、謝るからさ、誰か、誰か助けてく
れよォ……)
誰か。
福留は、記憶の海の中で溺れていた。いくつもの顔が脳裏に浮かぶ。大切だった
はずの人たちの、顔、顔、顔。しかし、その映像が、記憶と一致しない。白と青の
ユニフォームを着た彼ら。これは、誰だっけ。あいつは? 知っているはずなのに。
大切だったはずなのに。仲間だったはずなのに。
(誰か!)
その頬には、いつしか涙が伝っていた。しかし、もう福留には自分が泣いている
ことすらわからなかった。
(誰か……)
死は、今、福留のすぐ傍まで忍び寄っていた。
<……選手、サインお願いします!>
どこからか聞こえてきたのは、紛れもない。幼い頃の自分の声だった。
(ああ……そうだ)
霧散していこうとしていた記憶が、最後に、ただ一つの方向へと集まっていくよ
うな気がした。そうだ。どうして忘れられるだろう。自分の原点を。あの背番号3
を。
それは、福留孝介をプロ野球界に導いた存在だった。
(立浪さん……ごめんなさい)
それが福留の、最期の記憶だった。
ガラス窓の外から、午後の陽光が差し込んでいる。白い光の帯の中、細かい埃が
きらきらと舞っている。横たわる二人の仲間。その前に、一人の男が立ちすくんで
いた。
「孝介……」
川上憲伸(D11)は、自分が間に合わなかったことを知った。診療所からかき集
めてきた治療道具、汲んできた水。全て間に合わなかった。自分は、また、間に合
わなかった。ようやく見つけた井端が既に死体になっていた時と同じだ。
「畜生……!」
跪き、床にこぶしを叩きつけた。埃が舞いあがる。
血に汚れた福留の頬には、涙の流れた跡がひとすじ、残っていた。
【福留孝介(D1)・死亡】
【残り51名 年俸総額109億6580万円】
ドメー!!!。゚ノД`)・゚。
ああ中日の早死に連中はみんなせつない死に方ばっかりで。
憲伸、出番ない間もちゃんと行動してたんだな。
岩瀬には間に合ったんだから、がんばって生き延びろー
職人さん乙です!
職人様方、投下乙です!
孝介を呼んだのは憲伸だったんだな。なんとなくそんな気はしてた。
それにしても憲伸、井端も孝介も岩瀬も(昌も?)回収したことになる…のか?
ストレスで2323が進行すr
もし同じ診療所の話だとしたら、
同じ日の同じ午後に[^∀^]が英二さんを外に埋葬してるんだよなあ…
>>180 落合が夢の中で昌に会ったとき、「さっき孝介にも会った」って昌が言ってたから
孝介が死んだ時刻は落合よりも前じゃないのか?
だとすると、孝介が生きているうちに治療道具を探しに来た憲伸と、死んだ落合を診療所まで運んで埋葬する金村が出会う可能性は低い。
特に矛盾はないように思う。
182 :
代打名無し@実況は実況板で:2007/01/19(金) 22:34:55 ID:g8gyWmla0
クソスレ
みんな生き残ってほしいよ。各球団みんな。
保守
ほしゅ
避難所のAAが秀逸すぎる
うおっ、IDがべっちだw
>>186 見てきた。SCENE 91に泣いた
金村も矢野も下柳もカッコエエ
桧山ワロス
職人さんありがとう
億バトスレにはフラ職人さんいないのかな
190 :
代打名無し@実況は実況板で:2007/01/22(月) 18:41:35 ID:wd9hDyUP0
センターと自己採点終わったので久々に来てみたら新作来てて嬉しいよ
>「Fake」
侵入者は金村だったか・・・
今思い返してみれば金村だというヒントはあったんだよな・・・
金村も阪神勢も頑張って欲しい。特に阪神バトでは短命だった下柳には余計に。
>「回想・福留孝介の記憶」
ドメ・・・゚ノД`)・゚。
見せ場が無いまま死んでしまって可哀想だと思ってたけどよかった・・・
石井を撃ったのはtanisigeみたいに積極的にゲームに乗ったからじゃなくて
井端みたいにテンパったからだったんだな・・・
>立浪さん……ごめんなさい
セツナス。でもその立浪は悪魔と化しているんだよなあ・・・・
長文スマソ。
あと上げてしまってスマソ
礒部は無事なのか
>>192 集まってる場所で何か起こった、みたいな終わり方だったしな。
べっちも気になるが、シヴァも気になる。
億バトではシヴァが一番好きだ
なんつーかすげー柴原らしい
個人的に動向が気になるのは松坂だな。どこで何をしてるのやら
個人的に生き残ってほしいのはシヴァだが…無理かな…
生き残るところを想像できない orz
保守
ヽ[…ε…]人[ー。ー]人( ‘∀‘)人( ´昌`)人()Φ._ Φ()ノ
『夜の中へ』
死亡者の名を全て聴き終え、福浦、と思わず呟いていた。
ベッドの傍らで同じように放送に耳を澄ませていた村松と目が合う。張り詰めていたものが少しだけ解けた
気がして―――その後がよく思い出せない。
どうやらまた気を失うようにして眠ってしまったらしい。
桑田は福浦を殺していなかった。
あの時の桑田の口振りをまるでからかわれているように感じていたが、その通りやはり遊ばれただけなのか
もしれない。そうなると実に格好悪い。
福浦が現れたのも偶然で…では、福浦が現れなかった時はどうするつもりだったのか?自分があのまま撃
ってしまっていたら、桑田は確実に死んでいた。
たまたま生まれて、たまたま死ぬ。
そう言った時、あの銃を草の上に投げ出した時、桑田はどんな顔をしていただろうか。そして、あの最後の言
葉は?
清水は夢うつつに思考を彷徨わせながら、一方の意識では歌を聴いていた。
低く静かに響く男の声だった。村松だろうか。…歌なんか歌う人だったのか、こんな時に。
村松有人。
俊足巧打の左打者。塁に出すと面倒な存在。対戦相手としてのデータは頭に入っていたが、その人物につい
て、と言われると困る。
先のアテネ五輪で共に戦った仲間ではあっても、じっくり話すような機会はなかった。物静かで真面目そうな印
象があるくらいだ。
(…にしても変な歌やな)
民謡のようにも演歌のようにも聴こえる、独特の節回しだった。ゆっくりと意識が浮上する。
…しんじつふーこーこーせつはんにゃーはーらーみぃーたー…
「…般若心経?」
半笑いで目をあけた。
室内は随分暗くなっていて、数本の蝋燭が頼りなく炎を揺らしている。灯りが洩れぬようにと締め切ったカ
ーテンの外から、読経は聴こえているらしい。壁の時計が19時を指しているのが辛うじて読み取れた。知
らぬ間にかなり眠り込んでしまっている。
自分を保護し、傷の手当をしてくれたのが村松だと知らなければ、相当怖い状況に違いない。様子を見に
行って惨殺されるパターンだ。…惨殺されるのか?
右半身だけでなんとか起き上がり、静かにベッドを降りてみる。熱っぽい頭が揺れるのを堪えて、一歩。
歩ける。
一足ごとに全身を貫く痛みがあるが、もう足元が波打ったりはしなかった。
ベッドからほんの5、6歩の距離をえらく苦労して進み、清水は古びたガラス窓をあけた。
潮騒と共に冷えた空気が頬を撫でる。深い闇の中、月明かりを映して光る海と、遠い海面に瞬く小さな光が―
――多分別の島の灯台の灯りが見えた。
「起きたか」
村松が窓枠のすぐ下からこちらを見上げていた。
何故かアンダーシャツの上に白衣を羽織って地べたに正座している。気づけば村松のユニフォームは自分
が着て寝ていたのだった。
「あの、これ」
「いい。まだ着てろ。…気分は?」
「大分よくなりました。なんか頭ふわふわしますけど、意外と動けます」
「薬が効いてるんだ。無理するな」
そこで話が終わってしまった。元々口数が少ないのか、それとも何かに腹を立てているのか分からない。
清水は窓枠に体を預け、元の姿勢に戻って動かない村松の横顔を盗み見た。
(ちょっと変わった人、なんかな)
興味を惹かれている。
放送を聴きながら、村松もまた誰かの名を確かめようとしているように見えた。殺し合いが大前提のこのゲー
ムの中、人を助けるという選択をした村松が、どんな想いでいるのかを知りたい。
「清水」
「はい?」
「誰に撃たれたか訊いてもいいか」
「…うちの福浦です。俺が桑田さん撃とうと…殺そうとしたから、それ止めようとして」
「……」
「自業自得って奴です。俺が勝手にテンパって、あいつもそれ見て慌てて…。撃たれた時ね、こら死んでも
しゃあないって思ったんですよ。生きたいのか死にたいのかも決められてなかったし、人を殺そうとしたんや
から当然の報いっていうか、あーもーええわ、すんませんでした、て。けど、寝てる間はもー全っ然、死ぬの
嫌で嫌で、福浦のボケもなんかムカツクし。俺、自分の事もうちょっと潔い人間やと思ってたんですけど」
もー、かっこわる…とため息まじりに呟く。
「色んな事が思い浮かんで、それ全部、一つも諦められなくて…結局、生きたいとしか思えなかった」
皆そうだったんだ、と思う。死んだ15人の選手達も皆、生きたいと願っていた筈だ。その最期の瞬間まで。
「だから…生きる以外、無いんですよね」
思えば簡単なことだ。なのにこんな目に遭うまで分からなかった。
「怒られたんやなぁ。うだうだ迷っとらんと、ちゃっちゃとすることせぇ、って」
「・・・誰に?」
「神様、ですかね。野球の神様」
言ってみたら意外と照れくさくて笑ってしまった。村松は目を伏せた。
「それで、この後はどうする」
「診療所に行こうかと思ってます。福浦は俺が生きてると分かったら探すでしょうから…もういないかもしれま
せんけど、追っかける手がかりくらいは見つかるかも」
「・・・会うのか」
村松の大きな目が射抜くように見つめる。
「止めようとしたってのは、お前の主観だ。福浦が始めから殺す気でいたとしたら」
怖くはないのか、と無言で問いかける。清水はきっぱりと答えた。
「それでも会わなならんと思います。福浦が何を考えてるとしても。…こうなったの、他にちょっと心当たりもあるんで」
少しの間村松は黙っていたが、やがて小さく頷いて立ち上がった。
「早いほうがいい。支度しよう」
「!…いえ、俺一人で行きます。あんたをこれ以上巻き込む訳には」
「一人で行けると思うか。その体で」
語気を強められ、返す言葉がなかった。
「このままお前を一人にして死なれたんじゃ寝覚めが悪過ぎる。すまないが面倒見させてもらうぞ。お前が何を考えて
るにしても、だ」
「村松さん…」
「それに、俺もここには居たくないんだ。怖い人食い鬼が来るから」
真顔で言うので「人食い鬼」とは何のことか聞きそびれてしまった。
ちょっと待ってろ、と言って村松はいなくなり、すぐにリヤカーを引いて戻って来た。どうやら清水の意思を確認す
るまでもなく、これに乗せて移動するつもりで準備していたらしい。
二人分の荷物と数点の医薬品、そして否応無く鼻まで毛布で巻かれて不機嫌なフクロウのようになった清水を載
せて、リヤカーはゆっくりと動き出した。
「寝てていいぞ」
「起きてます。…なんか変な夢見そうやし」
マグライトを出し、後ろから村松の足元を照らすことにした。
まだ話さなければならないこともある。桑田のこと。金村のこと。
そして自分の『武器』のこと――――いや、これはまだだ。
言えば今度こそ確実に巻き込んでしまうことになる。それ以外の道はないのかもしれないが、せめてあと少し時間
が欲しい。あと少しだけ。
清水はライトが途切れた先の暗闇を見た。今ようやく自分のゲームが始まった、そんな気がしている。この闇の中
へ入って行かなければならない。座り込んで傍観できる場所など、始めからなかったのだ。
「村松さん、俺も訊いていいですか?」
何でお経なんですかと問えば、答えてくれるだろうか?さっきほんの一瞬、ばつの悪そうな顔になったのを清水は見
逃していない。
夜の中、不恰好な車輪の音が行く。林を通り抜け、北へ。
【残り51名 年俸総額109億6580万円】
205氏、投下お疲れ様です。
連続になりますがこちらも今から投下させていただきます。
『月光』
閃光に白く焼け付いたまぶたをどうにか引き剥がした。轟音が残響となって波打
ち、頭を芯から揺さぶる。礒部公一(E8)は飛び起き、無我夢中で自身の体を探っ
た。痛みはない。出血もない。窓から差し込む月明かりが室内を仄かに照らしてい
た。しかし、その様子にも特に変わったところはない。
「柴原、無事か!?」
意識を失っていたのはほんの数瞬だったようだ。礒部は、つい先程まで会話を交
わしていた柴原――今は目の前にうずくまっている――を揺さぶった。
「……すっ、げぇ音……一体、なんなんすか」
彼にも怪我はない。安堵し、礒部は転がっていたショットガンとベレッタを拾っ
た。まだぼうっとしている柴原にベレッタを押し付ける。
「わからんけど、とにかく危険や。おい、クマ、斉藤! 無事か?」
岩隈と斉藤も、頭を押さえながらのろのろと起き上がった。
「何の音や?」
「……かなり近いですね」
落ち着いた岩隈の一言に、暗い室内がしんとなる。礒部の背筋に、なにかぞっと
するものが這った。
声をぐっと抑え、礒部は言った。
「みんな荷物持て。俺たちが居るって気づかれんに越したことはないけど、もし見
つか」
ガチャ
四人全員の視線が、一斉にひとつの方向へと突き刺さった。
……ガチャ、ガ、ガチャ
そう、扉は開かないはずだ。ドアノブには鍵をかけた。気休め程度ではあるが、
バリケードも施してある。だが。
扉を隔てて、外と内。双方に沈黙が降りた。礒部は背中で、誰かの喉が鳴るのを
聞いた。
「……誰か、中に、おるね?」
ふふっ。
扉のすぐ外で発せられたその笑い声に、礒部はかすかな聞き覚えがあった。くせ
のある、その、高く柔らかい声。
それが合図だった。
ガアン! ガアン!
狂ったように蹴り上げられ、扉がきしむ。本能的な危険を察知し、礒部は背後の
三人に向かって叫んだ。
「あかん、下がれ!」
ガガ、ガ、ガギィッ!
「うわっ!」
四人が飛びのいたのと同時に、凄まじい破壊音が響いた。
ガシャン!
飛びのいた拍子に、礒部の腕がテーブルの脚にぶつかる。手から離れたショット
ガンが部屋の隅まで転がった。
(しまった!)
しかし、それを拾う間は与えられなかった。
硝煙くさい冷気が室内に流れ込む。鍵を壊されたドアノブはあっけなく回された。
ずる、ずるりと、扉の前に積んだ木製のボロ椅子やポリタンクが押しやられる。
代わりに姿を現したのは、一つの人影だった。
月光に煌く銃口から煙が白く立ち上っている。
「やあ、こんばんは」
桑田真澄(G18)が立っていた。
ザッ、と室内に足を踏み入れられる。四人は反射的に後ずさりした。
「へぇ」
珍しい、とでも言いたそうな顔で桑田が笑った。
「礒部君、柴原君、そして斉藤君に岩隈君か。妙な組み合わせだね」
順繰りに見渡して微笑み、桑田は屈んで短機関銃を足元に置いた。そして、一緒
に降ろしたカバンの中に片手を差し入れ、何かをつかみ上げる。その手に乗ってい
たのは、スタン・グレネード――閃光音響手榴弾――であった。
「うるさくしてすまなかったね。コレの威力を試そうと思って海に投げてみたんだ
けど、まさかこんな近くに君らが隠れてるなんて思わなくてね。せや、せっかくや
から感想聞いとこうかな。……どやった?」
しかし、誰も何も答えられない。まるで未確認生物に出くわしたかのような四対
の視線を浴び、桑田は肩をすくめた。
「室内にいる相手にはいまいちだったみたいだね。轟音と光で相手を失神させると
は言ったものの、寝ている相手を起こすくらいが関の山だと考えた方がいいのか
な? 参ったなあ。あと七個も残ってんねんけど」
桑田が笑う。
礒部は、混乱する頭でどうにか状況を整理しようとしていた。まず、どこからど
う見ても好意的ではない。殺傷能力はないとはいえ、手榴弾を投げた。さらに発砲
して扉を破壊してまで入ってきたのだ。危険すぎる。だが、この呑気な話し振りは
どうだろう? 殺意があるならばとっくにこちらへ発砲しているはずだ。銃を持っ
ているのだから。
礒部の思考は、そこではたと止まった。銃と、手榴弾。
「どうして、武器を二つも持ってるんですか?」
同じことに気づいたのだろう、そう訊いたのは岩隈だった。
「ええ観察眼やね」
桑田は嬉しそうに笑った。
「これはもともと江藤のものやったんけどねぇ。僕がもろうた」
江藤智(G33)は第一回の放送で名前を呼ばれていた。ということは――
「桑田さんが、江藤さんを殺したんですか?」
岩隈は、臆することなく核心を突いた。桑田の口元がますます満足そうに吊りあ
がる。そして、
「そうだよ」
あっさりと答えが出された。
「どうして殺したんですか?」
また、岩隈。
「偶然だよ。そこに江藤がいた。僕は引き金を引いた。それだけや」
桑田は、岩隈に向かって微笑みかけながら続けた。
「清水君……マリーンズのだけどね。彼も君と同じことを訊いてきたよ。――なぜ
撃つのか、どうして殺すのか――ってね。僕のほうこそ知りたいんやけど、こんな
異常事態で、どうして君らはそうなんかな? 殺す理由、殺される理由……そんな
ものはどこにもないよ。生まれてくるのも、死ぬのも、すべて天命に任せきりとい
うことと、同じや」
その内容とは対照的に、桑田の声は、医者が患者をいたわる優しさで響く。礒部
は、つい飲まれてしまいそうになっている自分に気づいた。
……飲まれてはいけない。
そう思ったとき、礒部の背後で一人の男が口を切った。
「さっきから聞いとりゃ、何やねん? アンタ」
不機嫌な声の主は斉藤だった。普段より一層つりあがった目が桑田を睨みつけて
いる。
「死ぬも生きるも天命やから何してもええっちゅうんか。やからってよりによって
チームメート殺したんか。ええ? おかしいやろ、そんなん」
「チームメイト、か」
桑田はその剣幕に臆するどころか、笑みさえ浮かべて斉藤に向き直った。品定め
をするような目が、斉藤の頭からつま先までをゆっくりと這う。
「そうやねぇ……斉藤君。君はまさにそんな感じだね。チームの絆、信頼。そうい
った甘ったるい精神論が好きやろう? 僕もそういうのは嫌いじゃないけれども
ね」
「……何やて?」
『甘ったるい』。その一言で、斉藤の声に怒りの色が増した。
「よく考えてごらん」
桑田が一歩近づいた。斉藤を除く全員が一歩後退する。
「今日、殺し合いが始まった。死んだらアウト。生き残ったら楽天行き。選ぶ余地
はない。……どうや? 今まで僕らが戦ってきたチームのことなんか、一体どこに
考慮されてる? 今まで僕らが身を削って尽くしてきたチームのことなんか、この
ゲームのどこに組み込まれてるというのかな? そんなもの、もうどこにも在りは
しないんだよ」
斉藤も負けじと切り返す。
「アンタ、あんなうそっぱちのルールなんか真に受けとるんか。それでまんまと人
殺しに成り下がったんか。ええ? オーナーどもの思う壷やな」
斉藤のそれはほとんど嘲笑のようだったが、桑田は演説でもするかのように自信
たっぷりに続けた。
「うそっぱちだって? ああ、君は実際に殺し合いが起こっていると理解できない
……いや、わかっていても信じたくないんだね。その気持ちはようわかる。今まで
仲良くやってきた仲間が同じ仲間を殺している。そんなこと、誰だって信じたくな
いよね。わかるよ。……わかるが、甘いな。外に出て見てごらん。死体はいくらで
も転がってるよ」
ぐっと唾を飲み込み、斉藤は言葉に詰まった。桑田の演説はいよいよ饒舌さを増
す。
「清水君も言うてたなあ。『俺が帰りたいのは俺のチームだけです』とね。ははっ」
「――それの何がおかしい!」
「おかしいなんて言うてないよ。結構結構。素晴らしいチーム愛だ。やけどなぁ」
桑田は高らかに笑い、しかし次の瞬間、まるで別人のような厳しい目で斉藤を睨
みすえた。
「そんな寝言は、生き残ってから言え」
空気は今、限界まで張りつめていた。
「柴さん、銃貸して。……こいつだけは許せへん」
斉藤の声は怒りに震えていた。柴原がそれを諌めるより先に、桑田が口を挟んだ。
「柴原君、貸してやってくれるかな?」
「……でも」
「僕と斉藤君がいいと言っている」
柴原は渋々ベレッタを差し出した。ひったくるようにして受け取り、斉藤は桑田
へ照準を合わせた。
「銃身が高い。それに手が震えとるやないか。それじゃ当たるもんも当たらんよ」
「やかましいわ!」
斉藤が桑田のペースに飲まれているのは、今や誰の目にも明らかだった。礒部は、
まるで夢の中にいるように足元がおぼつかないのを感じていた。この空気。桑田の
作り出すこの空気。この現実感のなさ、この不条理さ。それを痛感しながらも、対
抗する術が見つからない。
「ああ、そうだ。斉藤君。いいことを教えてあげよう」
ゆったりとした動作で短機関銃を拾い上げながら、桑田が言った。
「さっき、城島君と会ったよ」
斉藤の全身が硬直した。礒部にもはっきりそうとわかった。
「動きが鈍かったんだけど、そうだ、彼は最近足を折ったばかりだったねぇ。今思
い出したよ。あんな状態のキャッチャーを一人にして、エースピッチャーは何をし
ていたのかな?」
「てめェ……城さんに何したんや!」
「質問しているのは僕だよ」
桑田は声を張り上げた。
「チーム愛がどうの、仲間がどうのと言いながら、一体君は何をしていたんだと訊
いているんだ」
「……野郎ッ!」
斉藤がトリガーに指をかけるのと、桑田がそうするのはほぼ同時だった。
「和巳!」
しかし、桑田の短機関銃から弾丸が発射されたのと、柴原が斉藤を突き飛ばすよ
うに飛び出したのもほぼ同時だった。
「っあ……!」
いくつもの銃弾を腹に埋め込まれ、柴原が、ゆっくりと崩れ落ちていった。
「柴原ッ!」
「柴原さん!」
その瞬間。
――ふふっ。
礒部は確かに聞いた。
――ふ、ふふっ。
桑田が、穏やかに笑っていた。
(……コイツはもう人間やない)
頭の中で何かが弾けた。
(化け物や!)
瞬間、礒部の視界の端で茶色い何かが光った。それが何だったかを思い出すのに
一秒、ひっつかんで投げつけるのに、もう迷う時間は要らなかった。
「う、あああああああッ!」
硫酸の瓶が桑田の左肩あたりで弾けた。じゅう、と白い煙が上がり、嫌な臭いが
たちこめる。桑田は短機関銃を取り落とし、顔を覆って絶叫しながらのたうった。
その拍子に、カバンの隙間からいくつかの閃光手榴弾がばらばらと転げ落ちる。
「……礒部ッ!」
溶けゆく指の隙間から、憎悪を凝縮したような桑田の眼が礒部を捕らえた。しか
し、それはほんの一瞬だった。桑田の視線が斜め上にずれ、その表情は一変した。
「……早く行ってください」
見ると、隣で岩隈がショットガンを構えていた。照準はまっすぐ、桑田の眉間。
「早く。……撃たないでいる自信がないです」
片手で荷物をかき集め、桑田は脱兎のごとく飛び出していった。
「……クマ」
逃げる足音が聞こえなくなっても、岩隈は入り口に立ったまま銃を構えて降ろさ
なかった。
「礒部さん。……柴原さんを」
しかし、その声は震えていた。
「柴原ッ」
駆け寄り、斉藤もろとも血だまりに崩れ落ちている柴原の腹に手のひらを添えた。
何かぬるぬるとはみ出したものの感触を捕らえる。温かい血液が指から肘へと伝い
流れていく。眩暈がした。
「……キャラに合わんことは、するもんじゃなかね……」
弱々しい笑みをかたちづくった唇の端から、とろりと血が流れ落ちた。
「ええから、喋るな」
礒部の嘆願には涙が混じっていたが、柴原は耳を貸さなかった。彼は自らに残さ
れた時間を完璧に把握していた。
「和巳」
物言わずうなだれていた斉藤の肩が、びくりと跳ね上がった。
「よう聞き。……ジョーは死んでないよ」
風が流れ、血と薬品の匂いがかき混ぜられる。
「死ぬわけなかろ? ……あんな、タフな奴が。簡単に殺されるわけなかろ? お
前が一番よう知っとうやろ?」
「……柴さん」
かしゃん、と音を立て、斉藤の指にひっかかっていたベレッタが床へと転げ落ち
た。
「和巳、惑わされるなよ。お前は、お前が見たもんだけ……お前が正しいと思った
もんだけ、信じろ」
よかね?
そして柴原は、濁った目だけを礒部の方に向けた。
「礒部さん、こいつのこと、よろしく、お願いします」
――こいつ、一人じゃ危なっかしいから――
柴原の口元に刻まれた笑みが、そのまま、永遠のものになった。
ぎぃ、ぎぃ。
開け放たれ、潮風に揺れる扉の向こう、夜空に溶けてしまいそうな水平線が見え
る。その上には、いまいち円くなれない月が浮かぶ。
それを、岩隈は一人、二つの押し殺した嗚咽を背に睨みつけていた。
彼と一緒に居たのはたった半日だった。
<何よお前>
<……いや、柴さんにちょっとでも期待した俺があかんかったです>
<……何が?>
ぼんやりと窓の外を眺めてばかりいる人だった。
<人の話ちょっとちゃんと聞いとけな、柴原……>
<……すんません>
けれど岩隈は、ひょっとしたら柴原のような者が一番強いのではないかと思って
いた。柴原は、のんびりと、気を抜いた時には口をあけて、いつも微笑んでいるよ
うに見えた。自分がこの異常な島で何とか平静を取り戻せたのは、ひょっとしたら、
彼と一緒にいたことが一番大きいのではないかとも思っていた。
眠れないまま、こっそり聞いてしまった。礒部と柴原の、あの会話。
<でも、俺みたいな、その他大勢の中の一人にも、ちゃんと役割があるんじゃない
かって思うんです>
岩隈はもう一度月を見あげた。完全な円を描かないそれ。
(役割――)
当たり前のようにそこにあって、辺りを柔らかく照らすもの。
喪われてしまったその存在を想い、岩隈は涙を流さずに泣いた。
【柴原洋(H1)死亡】
【残り50名 年俸総額108億1580万円】
職人さん方、乙です!
・・・柴原ぁ・・・。
地味様、とりあえず助かって良かった。村松はなんか、達観しちゃった?
新作乙です。
地味様が結構大丈夫そうで良かったと思ったら柴原・・゚ノД`)・゚
そろそろ4人組の中で死者が出そうな予感がしてたが案の定来てしまったか・・・
轟音の犯人は(●`∀´●)だとばかり思ってたが・・・
[∴∵∴]もグレネード持ってたのはすっかり忘れていたw
それにしても2週連続で投下が来るとは嬉しい。職人さんにはこれからもがんばっていただきたい。
職人様、乙です。
シヴァが…シヴァが死んじゃった…・・゚ノД`)・゚
前回フラグが立ってる気はしたのですが、本当に亡くなるとは…
村松が持ってきたリアカーは、
金村が落合英を運ぼうとしたのと同じモノですかね?
シヴァ…(つд`)
職人さん乙
圧倒されて言葉が出ないよ
とても柴原らしい最期だった
職人様乙です!
桑田が怖過ぎる…。あの声、あの喋りで脳内再生してみたらもう…(((;゚д゚)))ガクガクブルブル
皆様、いつも保守・感想・AA投下等ありがとうございます。
前スレがdat落ちしており、新規の読者さんにおかれましては作品の章番号がわか
りにくい事態が発生するのでは? との意見が出ましたので、念のために補足して
おきます。
>>22-24 87 善意と後悔と(前編)
>>27-29 88 善意と後悔と(後編)
>>55-63 89 WHO ARE YOU?
>>69-73 90 光
>>162-171 91 Fake
>>174-177 92 回想・福留孝介の記憶
>>198-202 93 夜の中へ
>>204-211 94 月光
なお、保管庫未収録作品(83章〜86章)は避難所に仮収録してあります。そちらも
合わせてご参照ください。
職人さんたちいつも乙です。
柴原いい奴だ。・゚・(ノД`)・゚・。
つか桑田怖すぎ((((;゚Д゚))))
桑田は赤星に写真撮ってもらえ
スピンアウトにAA来てた
AA職人さん、いつもありがとう
>>221 硫酸で溶けた指でピースをしつつ
ふふっと穏やかに笑うくわわを想像した
怖い
くわわは何故こうも怖いのか
桑田の人気に嫉妬
和巳と城島
地味様と福浦
この二組の再会が怖いような楽しみなような。
>>226 同意
福浦のその後が気になる
城島がマーダーだと知ったら斉藤はどうすんだろう
和巳は小久保に出会えるかどうかで大きく違うと思うけど
シヴァの一件で強くなってくれ・・・
このスレ立ってたって知らなかったよ!
職人さん乙です
このメンバーがこのバトロワの中で一番好きなグループだった
シヴァ…・゚・(つД`)・゚・ その前のシヴァと礒部の会話もよかった…
シヴァ、死んじゃったよ…
シヴァがいなくなってどうするんだよ、和巳…
和巳と城島ってリアルだとあまり仲良くないイメージあるんだけど(他球団ファンですが)
出合ったらどうなる…?
>>230 仲良くないっつうか、仲はいいけど必要以上に馴れ合わない人達ってイメージ(同じく他球団ファン)
前田神が気になる
232 :
あ:2007/01/31(水) 04:37:06 ID:t7852hKQ0
あ
hosyu
職人様乙です!礒部・和巳組は一番好きです。
だからしヴぁが死んだのは・・
(つд`)
保守。
「光」「月光」と話がきれいにリンクしている(同じ職人さんだから当たり前だけど)のが
いいと思ったな。(シヴァに生き残って欲しかったけど…・゚・(つД`)・゚・)
礒部が、この状況の中で、小さな光を見つけた思いがしてて
岩隈が月を見ながら「当たり前のようにそこにあって、辺りを柔らかく照らすもの。」と
柴原を想うところがうまくリンクしてるな、と思った。哀しかった。
西口・大村組はあれからどうなったのか気になる。
236 :
代打名無し@実況は実況板で:2007/01/31(水) 18:30:01 ID:YbDLy0n10
保守
ふと思い立ってスレを火狐で見てみたら
■ おすすめ2ちゃんねる 開発中。。。 by FOX ★
このスレを見ている人はこんなスレも見ています。(ver 0.20)
ポケモンが前田智徳と戦うスレ [ポケモン]
お前らwww
自ら保守
ほしゅ
hosyu
ほす
【95】真実への激情
A−3の灯台で井川と別れ、午後六時の放送を聞いた後、豊田清(L20)は島の
北東部を探索していた。あと一時間もすれば日付が変わる。
抜き身のまま豊田の手に握られていた短ドスは、放送を境に鞘の中へと収められ
ている。炎の激しさで渦巻いていた殺気は薄れ、かわりに豊田の全身を色濃く包ん
でいるのは、いま、焦燥だった。
今日、何度となく凝視した名簿をもう一度確かめる。それは両面印刷になってお
り、表が年俸ランキング順、そして、裏に記載されているのが、豊田の復讐への手
がかり――すなわち、森を殺した犯人へとつながる手がかり――となる、退場順名
簿となっている。
上から三番目に印刷された、「森慎二」の文字。
森の名前を挟むのは、上が福留孝介、下が立浪和義。
福留孝介。
(……こいつだ)
豊田は、森を殺したのは福留ではないかと疑い始めていた。
その考えに至った経緯はこうである。
(福留と井端が死んだ?!)
午後六時、第二回定時放送。尋ね人ふたりの死を知らされた豊田の脳裏に、ある
光景が甦った。浮かんだのは、妙に小さいあのドームでの出来事だった。
(そうだ、あいつらは出発前あんなにビビッてたじゃねぇか)
豊田はそれを見ていた。
(原さんの死体見て叫んでたのも井端だし、首輪がどうのっつって真っ青な顔して
たのも福留だった)
覚えている。オーナーに勇ましく楯突いた福留の顔から、表情がするすると抜け
落ちていくその過程を。離れていた豊田にも手に取るようにわかった。あれは、ま
るで舞台役者の演技のように鮮明だった。異常だった。
(テンパって手当たり次第に攻撃したとか……それで、そのうち返り討ちに遭って
死んじまったとか。そうだ、そうだろ)
豊田は可能性を考える。
――混乱した福留か井端が、出発してすぐにパ・リーグ側のゲートに向かい、タ
イミング悪くその場に居合わせた森を殺した。
そこで豊田は名簿を見、こうも思いつく。
(井端じゃちょっと無理じゃねぇか?)
森と井端がゲートのすぐそばで遭遇するには、出発時刻のタイムラグが長い気が
するのだ。もし森がゲート付近に留まっていたとしても、井端がやってくるより先
に西口と合流できるはずだ。豊田が森の死体を発見したとき、辺りには西口はおろ
か、人影一つなかった。どうも不自然だ。
(……福留だ)
――森のすぐ前に出発した福留が、パ・リーグのゲートまで移動、待ち伏せ、直
後に出てきた森を殺した。
これが最も自然な気がする。
(畜生、福留かよ、ふざけんなよ!)
しかし、その推理が当たっていたとしたら、復讐に燃える豊田としては非常に納
得がいかないのである。
(俺が殺しに行く前に勝手に死にやがって!)
森の敵を討つことは、今や豊田の唯一にして最大の目的となっていた。生きがい
と言ってもいい。一度走り出したらどこまでも突き進む激情家・豊田とあってはな
おさらである。それに、生きがいを奪われては行く当てがない。
(どうせ死ぬんならいっぺん生き返れ! そんで改めて俺に殺されやがれってん
だ)
むちゃくちゃではあるが、それが豊田が豊田たるゆえんである。
<……分からないのに探せるんですか>
ふいに、夕方聞いたあの台詞を思い出す。
(うるせぇよチクショウ、てめぇのせいだ)
井川に出会うまでは、手当たり次第に容疑者の四人――豊田より先に出発したド
ラゴンズの選手――を探せば、そのうち犯人にぶち当たると信じて闇雲に歩き回っ
ていた豊田であった。むしろそれ以外は何も考えていなかった。
それが、井川に会って変わった。
(あいつが左利きがどうのとかプレステがどうのとか言うからいけねぇんだよ)
推理ゲームを解くようにして豊田の利き手を言い当てた井川。あのとりとめもな
いやりとりが、豊田の思考回路を刺激したのかもしれない。
……推理ゲーム。
(そういやアイツ、探偵ものの何とかいうアニメが好きだったっけか)
記憶を引っ張り出す。小学生が殺人事件に遭遇し、巧妙なトリックを解き明かす
とかいうものだったか。本当だか井川のあのキャラが作り出す伝説だか知らないが、
彼はアニメが見られない怒りを試合にぶつけ、結果、ノーヒットノーランを達成し
た。そんな逸話を聞いたことがある。
それぐらい好きで見ているのならば、殺人のトリックにも詳しいだろう。
――これだけ材料があれば、もしかすると、井川なら犯人を言い当てられるかも
しれない。
(井川に相談してりゃ良かったのか……?)
振り返り、豊田はA−3の方向へと目を向けた。月明かりが円筒形のシルエット
をくろぐろと浮かび上がらせている。
が、戻るには遠い。後戻りは性に合わない。
(めんどくせぇな)
まだ井川が灯台に留まっているとも限らない。
豊田はもう一度名簿に目を落とした。暗がりの中、目を凝らす。今夜の夢に出て
きそうなくらい繰り返し見たのに、真実は見えてこない。
この中に、確かにいるはずなのだ。森を殺した誰かが。それが豊田の推理通りに
福留だとしても、あるいは別の誰かだとしても、必ずいるはずなのだ。
<真実は、いつもひとつ!>
いつかCMで耳にした、件のアニメの決め台詞が浮かんだ。
なるほど、豊田が求めている真実は一つだ。まさかこの状況でアニメの台詞に感
心することになろうとは思ってもいなかったが、森を殺した誰かは、この島に必ず
いるはずなのだ。
(真実は一つ、か……)
でも、それが福留だとしたら豊田にはどうしようもない。死んだ人間を相手に敵
討ちはできない。井川に「魂が揺らげば、おのずと分かる」と反駁した豊田だった。
が、その魂が抜けてしまっていてはどうしようもないのだ。
(一体誰なんだよ、チクショウ。やっぱり福留なのかよ。それとも立浪さんか?
井端? タイムラグがあっても殺せないわけじゃねぇし、川上? いや、でも川上
だと……)
一度走り出した思考は止められなかった。
疑問符の海であがく豊田の耳に、
「――おい、誰だ?!」
思いもよらない声が飛び込んだ。
「――!」
豊田は反射的に身構え、ベルトに差した短ドスの柄に手をかけた。それが目視で
きたのだろう。相手は声を張り上げた。
「やめろ、俺はやる気じゃない!」
薄い月明かりの下、近づいてくるマグライトの灯り。その持ち主は――
「松中?」
「あ、豊田さんでしたか! すいません」
松中信彦(H3)だった。豊田の姿を認めるなり、松中はハッとしたように頭を下
げた。おそらく、年上の豊田に命令口調で話しかけてしまったことを謝っているの
だろう。
「気にすんなよ。こんな状況で年上も年下もねーしさ」
それに、この松中が年下だというのが、なんとも腑に落ちない豊田である。何と
なく毒気を抜かれ、ドスを鞘に戻した。
「お前丸腰で何してんの」
見たところ、松中は荷物も武器も持っていない。マグライト一つと地図一枚だけ、
という頼りない装備だ。
「荷物はあの家に」
松中は東の海岸を指差した。見ると、数十メートル先の海べりにログハウスのよ
うなシルエットが確認できる。
「あそこを拠点にして、小久保さんを探してるんです。豊田さん、見かけませんで
したか」
「いや、見てねぇな。随分歩き回ったけど、ほら、だいぶ前にあっちの灯台で井川
に会っただけだ」
豊田が顎で灯台のほうをしゃくると、松中もその方角を見た。
「井川は、やる気でしたか?」
「いーや。あいつも乗ってないみたいだったな」
「そうか……良かった」
松中は心底救われたような顔をし、そして、豊田に向き直った。
「豊田さんも乗ってないんですよね?」
「あ? ああ、まあ」
叶うなら人を一人殺しに行こうとしている豊田だが、ゲームに乗ったわけではな
い。自分はただ森の敵討ちをしたいだけだ。しかし、それをこの男に説明すると面
倒なことになりそうなのでやめておいた。それに、少なくとも嘘はついていない。
「……よし」
松中は、多少うろたえた豊田の返事を露ほども疑わず、こう畳み掛けた。
「豊田さん、一緒にゲームを壊しましょう」
「へ? どうやって?」
「……方法はまだ思いつかないんですけど」
「だめじゃん」
「いや、でも、同じようにゲームに乗る気のない人を集めれば、何とかなるんじゃ
ないかと思うんです。だから小久保さんを探そうと」
「小久保ねぇ……」
松中がどれほど小久保に傾倒しているかは説明を待たない。同じリーグで好敵手
としてやりあってきたのだ。話に聞くどころか、彼らの人柄や絆の強さなど、この
目でありありと見てきた。
「そりゃ、あいつは間違っても人なんか殺さねぇわな」
そう呟くと、松中が力強く頷いた。
豊田は思った。
自分と松中は似ている。根本は同じだ。絶対に正しいと信じるもの――自分だけ
の正義とでも言えるだろう――がある。そして、意志を決して曲げない。一度信じ
たらどこまでも突き進むのも同じだ。復讐とゲーム壊しではあまりにも違うが。
「ゲーム壊しか」
腕組みをし、豊田は唸った。「……悪くねぇな」
松中の表情がぱっと輝く。豊田は少しだけ心を痛めながら続けた。――自分にも、
決して譲れない意志がある。
「でも、今はだめだ」
松中の輝きは一瞬にして失われた。
「どうしてですか?」
「俺は、森を殺した奴を探してる」
そう告げながら、豊田はこう思っていた。
松中ならわかってくれる。松中ならきっと、亡くしたチームメイトを想うこの気
持ちを、深く汲んでくれる。と。
しかし、松中の反応は、豊田の予想とは違っていた。
「森って……」
それは、明らかに「森」という名前に反応した声だった。いや、声を聞くまでも
ない。松中の目が明らかに揺らいだ。心が揺らぐのがわかった。魂が揺らぐのがわ
かった。
脳内に電流が走る。――こいつは何か知っている!
豊田は松中につかみかかった。
「知ってるのか!」
「いや、誰が殺したかは知らないです。けど、」
「けど?!」
「出発してすぐに、立浪さんが、森が殺されるところに遭遇したんです。それで、
止めに入ろうとしたそうなんですよ。その時立浪さんも撃たれたらしいんですけど、
誰が撃ったのかはよく見えなかったそうで」
「出発してすぐ? 立浪さんが……?」
思考がつながった瞬間、豊田は落胆した。
豊田の推理は当たっていた。――復讐は、潰えた。
(ノータイムで立浪さんが巻き込まれたなら、撃ったのはやっぱり福留じゃねぇ
か!)
そうなる。立浪より先に出発したのは、和田と福留、そして殺された森本人だけ
だ。あの底抜けのお人よしの、優しさという面では松中の複製みたいな和田が、絶
対にチームメイトを殺したりするわけがない。――じゃあ、やっぱり福留じゃない
か。
「そんなもん、殺ったのは福留に決まりじゃねぇか。だいたい、素人がそんな姿も
見えないほど遠くから狙い撃ちできるわけないだろ? 顔もユニフォームも見えな
いなんてありえねぇよ」
豊田は苛立ちを隠そうともせずにまくし立てる。松中は痛みをこらえるようにう
つむいた。
「実は、俺もそう思ったんですよ。出発してすぐ撃たれたってことだし、それじゃ
あ福留以外考えられないでしょう。でも……」
言葉を詰まらせた松中の様子に、豊田はあることを思い出した。
「あ、そっか。福留と立浪さんは……」
有名な話だ。
小学生だった福留が中日ドラゴンズのキャンプを訪れ、立浪のサインをもらった
こと。
それが福留をプロ野球界に、ひいては立浪の所属するドラゴンズに導くきっかけ
になったこと。
その福留が森を殺した。
いや、「その」福留が、あろうことか立浪を撃った……?
「福留に撃たれたのがショックだったとか、奴をかばってる、ってことか?」
「そうだと思うんです。それに、親友の片岡さんまで殺されてたんですよ。だから、
こっちもあまり追求できなくてですね……」
立浪和義。
所属リーグの違うその男に対して、豊田はあまり知識を持ち合わせていない。撃
たれてまでも後輩をかばうような男だと言われたら、そうかもしれないとも思う。
後輩や親友の死がどれほど心をかき乱すかは、この自分がよくわかっている。
だが、実際に対面してみないことには何とも言えない。何より、真実が知りたい。
「立浪さんはおまえと一緒にいるんだな?」
「はい。あの家で休んでます。怪我は大したことないんですけど、少し熱があるみ
たいで」
「そうか」
豊田は、草と潮の匂いのする冷気をふかく吸った。――冷静になれ。
「わかった。松中、おまえに協力する」
松中の表情が動いた。
「でも、その前に立浪さんと話をさせてくれ。俺はどうしても森を殺したのが福留
かどうかを確かめたい」
しかし、松中は何とも複雑そうな顔をして黙り込んだ。立浪が福留を想う気持ち
と、豊田が森を想う気持ち。その狭間で揺れ動いているのだろう。
「頼む、松中。俺は真実が知りたい。わかんねぇままじゃ何にも手につかねぇんだ
よ。このままじゃ一生後悔すんだよ」
「…………」
三秒の沈黙。
そして、松中は口を開いた。
「一番奥の部屋です」
豊田の心臓が弾かれた。
「玄関を入ったら廊下がまっすぐ続いてます。立浪さんは突き当たりを向かって右
の部屋にいます」
「ああ。……松中、感謝する」
松中はようやく笑顔になり、ぐっと頷いた。そして、こう続けた。
「豊田さん、周辺の警備もお願いできますか? 立浪さんの支給武器がちょっと頼
りなくて」
「何なの?」
「盗聴器です。ほら、コンセントの中なんかによく仕掛けてあるっていう……」
――盗聴器。
「何じゃそりゃ……そんなもん支給して何になるってんだろな」
呆れると同時に豊田は確信した。容疑者としてリストアップされていた立浪だが、
これで完全にシロだ。盗聴器で人を殺せるわけがない。
「警備するのはかまわないんだけどよ、おまえは武器も持たないで大丈夫なの?
コレ貸すか?」
ベルトから短ドスを引き抜こうとした豊田を制し、松中はポンと胸を叩いた。
「防弾チョッキ着てますから」
「へー」
豊田は、ホークスの球団ジャンパーに包まれた松中の胴をまじまじと見た。そう
言われてみれば、多少膨らんでいるようにも見える。いや、これはもともとの体型
か。
「なんかおまえにピッタリな武器だな」
松中はほんのちょっとだけ笑った。さっきの笑顔とは質の違う、程よく力の抜け
た笑顔だった。
「じゃあ、俺はもう少し見回りしてきます。そうだ、放送に間に合わないかもしれ
ないんで、メモ取っといてもらえますか」
豊田は頷きかえした。放送の近い今なら、その場に留まっている選手が多いだろ
う。人探しをするには都合がいい。
「わかったけど、あんまり無理すんなよ。気をつけろよ!」
「ありがとうございます!」
走り去る松中の背中を見送る。踏みしめられた草から立ち上る匂いを、潮の匂い
が冷たく運び去っていく。辺りは暗闇で、手には小さなマグライト一つで、小久保
がどこにいるのかはわからないのに、松中は確信を持って駆けていくように見えた。
――きっと見つかる、きっと生き残れる、きっとゲームを壊せる、と。
「……いいヤツだな」
真実を知りたい意志は変わらない。だが、復讐が叶わない今、松中に協力するの
も悪くない。豊田は心を決めた。
闇の中心に消えていく松中に背を向け、豊田は、一歩をまっすぐに踏み出した。
そこで待ち受ける「真実」に向けて。
【豊田清(L20)・松中信彦(H3)支給品:防弾チョッキ・立浪和義(D3)支給品:盗聴器セット A−6】
【残り50名 年俸総額108億1580万円】
ウオ------!!新作キタ------!!
コナンネタワロスww
立浪と豊田のやり取りはコナンというよりもデスノートみたいな心理戦になりそう
豊田ktkr!二人ともすげぇかっこいいのになんか笑えるw
立浪とのガチ対決はあるのか?騙されたままチームに加わるのか?
うわすげー気になる
253 :
代打名無し@実況は実況板で:2007/02/04(日) 16:22:25 ID:AcslQb+d0
うわぁ、新作!!
立浪さんも豊田さんも、頭が切れるから、かなり心理戦になりそう・・・。
豊田だ、豊田がいる
ぐいぐい引き込まれる文章だ
最近頻繁に投下されるから嬉しい。職人さん達応援してるッス
新作キテタ――(゚∀゚)――!!!!
豊田は次回がひとつの山場になりそうで松中しく気になる…
ところで、森が立浪にやられた回、どっか読めるとこ知ってる人いない?
ビリバトスレ途中から読み出したので初期の話は保管庫さんが頼りなんだがこのエピソードが載ってない。
何らかのバトロワ規約アウトがあって除外されたかと推察するが、一応どんな話か読んでみたい。
>255
そもそも最初からその辺りの具体的な描写はされてなかったと思う。
おいおい明らかになっていくんじゃないか?
257 :
255:2007/02/05(月) 01:19:16 ID:BshBuRqE0
258 :
:2007/02/05(月) 12:25:06 ID:ZhXQwrNM0
岩瀬と憲伸も楽しみだけどすぐ死んでしまうのもなあ・・・、
最後まで残ってくれたらいいorz
中日はその2人と野口くらいしか残ってないから、
是非とも頑張ってほしいな。
岩瀬が死神マーダーになるとか。
これからのネタバレ↓
やっとのことで松坂に出会えた和田(L)。
しかし「和田さん怪我無くて良かったですね!」のひとことで突如マーダーに変貌する。
>>261 2323バト思い出しちまったじゃないかw
>>262 あー23バト有資格者で溢れてるからな、ここww
【96】ダウト
「アイタ!」
「大村! 気を付けて」
前方不注意で右腕を枝にぶつけた大村直之(H7)が悲鳴を上げる。
「もうちょっとだから、頑張ろう」
「えらいすんまへん」
左肩を担いで励ます西口文也(L13)に対し、申し訳なさそうに頭を下げる大村。
そんな彼に一度笑みを向けてから、西口は口元を引き締め、他に障害になりそう
なものがないか周囲を確認してから再び歩を進めた。
木々がまばらに立ち並ぶ林を横断するのは、気を付けてさえいればそれほど難しい
ことではない。ただし、健常であればだが。
崖からの転落で右腕を骨折した大村は、ユニフォームを千切ったもので腕を吊し、
応急手当を施していた。
数え切れないほどの打撲や擦り傷。頭も打ったらしく、包帯代わりに巻いた白い
ライオンズユニフォームに滲む血が痛々しい。
幸い命に別状はなさそうだが、一刻も早くちゃんとした処置を施したい。
西口も左肩を負傷している状態であるため、貸すのが右肩で済んだのは不幸中の
幸いだった。
負傷者に肩を貸しながらの診療所への強行軍は、かなりの労力を費やした。
もっとも、傷をおして動いている大村はその比ではないだろうが。
大きく息を吐き、西口は空を見上げた。
東から昇るネイビーブルーの夕闇が、ゆったりと島を浸蝕していく。
少しずつ、視界の明度が落とされていく。
日が暮れようとしていた。
林を突き抜けたところで、視界が開ける。少し先に沼が見えた。
その向こう、対岸に白いこぢんまりとした建物が、薄紫色の空をバックに佇んで
いた。
「あれが診療所か」
目的の場所にたどり着き、自然と顔がほころぶ。
少し疲れが回復した気がし、揚々と一歩を踏み出そうとしたところで――西口は
立ち止まった。
「おわっ? どないしましたん、急に……」
「待て! 誰かいる……」
「……!」
沼側――つまりこちら側に向けて、大きめの窓が口を開けている。カーテンは掛
かっていない。確かに、そこに一瞬、人影が見えた気がした。
息を凝らし、二人は対岸の様子を探った。
変化はすぐに訪れた。チカ、チカ、と室内が点滅し、やがて診療所の内部に照明
が灯る。
「…………」
明らかな先客。いやそれよりも――
確かに日も暮れかけ、普通ならばそろそろ電灯を付けだしておかしくない頃合い
だが……今は殺し合いのまっただ中だ。そこまで何も考えていない人間がいるとは
思い難い。
わざわざ自分がそこにいることを知らせるような行動をするのは何故だ?
(罠か……?)
おびき寄せようとしているのだろうか。
「罠ですかね……」
大村も同じ事を思ったらしい、吐き出した声には、些かの落胆の色が混じっていた。
「どうしますか?」
更に歩かなければいけなくなるので気は進まなかったが、致し方ない。同じよう
な治療器具が揃っていそうなのは学校の保健室だが……
「距離的には、近いよな」
そこまで行ってみることにした。
負傷者が負傷者を連れての移動だ。地図で見ればそう遠くはないはずなのに、
ようやく目的地にたどり着いた頃にはすっかり日は暮れ、もうすぐ定時放送の時間
が近づいていた。
あれから死者の数が増えていないことを祈りながら、古ぼけた靴箱の並ぶ玄関口
を通り過ぎ、校内に足を踏み入れる。
通常、保健室は一階だろう。自らの古い記憶と照らし合わせながら、西口は大村
を連れ、シンプルな造りの校舎の廊下を慎重に進んだ。
学校にも先客がいたらどうしようもない。幸い教室はたくさんあるので、どこか
一つに潜んでじっとするしかないだろう。
「あそこか……」
消えかけた文字で『保健室』とかかれたプレートを認め、二人は立ち止まって耳
を澄ませた。
話し声が聞こえた。
片方がひどく切迫した声を上げている。
「隠れて!」
大村の言葉に、慌てて廊下の角に身を隠す。
「谷……!」
縋るような男の声。
間を置かず、一人の男が保健室から飛び出してきた。そのまま身を翻し、廊下の
窓から飛び出す。
その背中を見送り、西口はそこに記された背番号と名前を何度も確認した。
「谷さん……?」
「あの声は……村松さんですな」
大村の確信に満ちた囁きを最後に、辺りがしんと静まりかえる。
村松は今一人だろうか。直前に聞こえた会話の細部までは聞き取れなかったが、
何とも言えない、緊迫した空気が漂っていた。
「やっぱり先客か……」
「しゃーないですわ」
呟いた西口に、大村が肩をすくめ、さばさばと応えた。
「あちらさんもずっとおるか分からんし、しばらくはここでじっとしときましょ」
彼らに動きがあればすぐ分かるように、用心して二つほど教室を挟んだ、同じ階
の一室に二人は落ち着くことにした。
そこはごくスタンダードな学校の教室だった。
ほぼ長方形の形をしている、古ぼけた板敷きの部屋。前に黒板と教卓があり、
ドアは教室の前と後ろに一つずつ。
その廊下側、真ん中から後方寄りの壁に背をつけ、西口は膝を丸めて暖を取った。
夜の肌寒さが冷たい板床から伝わり、軽く身震いする。
「暗い教室で三角座りをしていると、なんや、肝試しの脅かし役で待ってる見たい
ですねぇ」
ともすれば沈黙と寒さで沈みきってしまいそうな雰囲気を和ませようとしている
のか、何も考えていないのか、大村が暢気な口調で無邪気な感想を述べてくる。
それに僅かに口端を歪めて笑みを浮かべ、西口は隣で両手を擦り合わせている
大村を見た。
「何ですか?」
視線に気付いた大村が、掌に息を吐きかけながら聞いてくる。
「なあ大村……俺は、お前にすごく感謝してるよ」
「何ですか、突然」
大村が戯けて笑う。
しかし西口は笑わなかった。
「お前がいなかったら、俺は俺でいられなかったかもしれない」
それは心からの言葉だ。
同じチームでプレイしたことはないが、何十年も苦楽を共にしてきた親友にも
等しい親しみと感謝の念を抱いている。
誰とも知れない――だが間違いなく顔見知りであり、同じプロ野球選手の誰かに
撃たれて、痛みと孤独に打ちひしがれながら森の中を彷徨って――あのまま大村の
優しさに触れなければ、自分は今の自分ではいられなかったかもしれない。
皆誰かを殺すつもりで生きているのかと。
自分もその一人になってしまうのではないかと。
そんな不安に苛まれながら、独りで増え続ける死者の数を聞いていたら――
こんな風に、誰かに「ありがとう」と言える人間でいられただろうか。
(お前はどうなんだろう?)
彼の中の矛盾に気付いてしまったのは不幸だ。
無条件に開きかけていた心の扉が揺れている。
「俺も西口はんには感謝してますよ」
「――っ……」
その言葉に、西口は知らず拳を握りしめた。
彼の優しい言葉に反して、軋んだ音を立てて扉が閉じようとしている。
何度も反芻しすぎて、記憶棚の表面にこびり付いてしまった言葉が蘇った。
『柴原さんも、他の奴らを待つつもりやったみたいやし』
(お前、誰にも会わなかったって……)
口に出しそうになった言葉を、慌てて飲み込む。
問題はそこではない。
問題は、なぜ『嘘をついたか』だ。
大村は、西口が気付いたことに気付いていないだろう。あの時から、彼の自分へ
の接し方は変わらない。
下手に問いただすことで、彼を刺激するのは危険だ。
問いただされ、嘘がばれたことを知った瞬間、彼は――どうするだろうか。
(逃げた方が……)
心拍数がじわじわと上がる。ホラー映画の、主人公が気付いていない背後から
何者かが近づいてきて、肩に手を置く直前のような、凍てついた緊張感が支配する。
(なぁもしかして――)
信じたくない、考えたくない疑念が否応なしに湧き上がる。
噴き出した疑念は時間と共に、外気に晒された溶岩のように冷え固まっていく。
「あんたがおらんかったら、俺、話し相手がいなくて死んでまいますわ」
最初は寡黙な男というイメージだったが、大村直之は実際に親しくなってみると
実によくしゃべり、よく笑う男だった。のんびりとした関西弁も柔らかで、ユーモア
に富んでいる。
(お前は俺を騙すつもりなのか?)
自ら「口から生まれた」と笑う相手に、西口は自然に笑えなかった自分を自覚して
いた。
どれくらい時間が経過しただろうか。
腕の時計を見るともうすぐ20時を示そうとしていた。
「あれ?」
「どうした?大村――」
「しっ……」
唐突に、何かに反応した大村が口元に手を当ててくる。指示されるままに口を
つぐむと、西口も彼が何に気付いたのか理解した。
「ほら、なんか聞こえますよ。こりゃあリアカーかな?」
最初は何の音か判断が付かなかったが、確かに言われてみればリヤカーを引き
ずる音に聞こえる。
「もしかして、出ていったんかな?」
この時間に出ていくとは、どういうつもりなのだろう。
18時きっかりに行われた定時放送で指定された禁止エリアはG5。
確かに地図で見ても学校の敷地と隣接しており、用心のため移動を考える人間が
いてもおかしくはない。
あるいは、リヤカーを引っ張っているということは、人か物かを運んでいると
いうことだろう。もし自分で動けない重傷人を運んでいるのなら、夜の闇に紛れて
移動した方が安全は安全だ。
(俺たちも離れた方がいいのかな……)
人が離れると、急に、この敷地は大丈夫なのかと心配になってくる。地図を見る
限り学校はギリギリG5には届いていないように見えるが、一体これがどこまで精密
なのか分からない。本当ならば、余裕を見て確実に範囲に入っていなさそうなところ
に避難するのが賢い判断なのだろう。
あと三十分。
ようやく落ち着いたというのに、もう一度外に出なければいけないのは気が進まない。
迷いが生じたとき、西口はあることを閃いた。
(これは――チャンスじゃないか?)
大村に気付かれないよう、後ろ手に荷物を掴む。
今なら「ちょっと様子を見てくる」と言って、外に出てそのまま逃げられる。
夜道を一人で歩くのは心許ないが、誰かに襲われるかもしれない道を独りで歩くの
と、自分を騙しているかもしれない男と二人で一夜を過ごすのと、どちらが精神的に
マシかと言われれば前者だ。……このまま、無事に夜を過ごせるとも限らない。
「ちょっと様子を見てくる」
「あきませんよ」
立ち上がった西口を、間髪置かず大村が引きとめた。
怪我の割には異様に強い力で引かれ、西口の背筋に冷たいものが走った。
「一人で外に出るのは危ないでしょう」
宥めるように浮かべた穏やかな笑みに、こちらの焦りを見透かされているような気がした。
(逃げよう)
これ以上、彼の側にいるべきではないと確信する。
(逃げて今日のところは手近な民家に転がり込んで、明日起きたら、同じチームの
仲間を探しに行こう)
手負いの彼を置いていく後ろめたさと、何かの間違いかもしれないという己の優柔不断
さが、もしかしたら取り返しのつかないところまで自分を連れてきてしまったかもし
れない。
(松坂は――松坂はまだあそこにいるだろうか)
なぜ彼を信用するのかと、同じチームの仲間で一緒に生きて帰ろうと言った後輩の
顔が浮かんだ。
「行くなら一緒に行きます」
立ち上がろうと膝をついた大村の身体が、ガクンと傾いだ。
「イタタッ」
「いいよ、おまえは腕折ってるんだから、大人しくしてろ」
右腕の痛みに顔を歪める大村を慌てて支える。
この男は手負いだ。西口も全くの無傷というわけではないが、負傷の度合いを考え
れば、襲われたとしても跳ね返すことは出来そうだ。
だがもし、彼が他にも武器を隠し持っていたとして、隙を突いて攻撃されたら、
これだけ近くにいて無傷で逃れることが出来るだろうか。
そもそも襲われる危険性がある者と、なぜ一緒に過ごさねばならぬのだろう。
やはり逃げた方が良い。そこまで考え、西口はその結論に達した。
先程よりも強い口調で、だが内心の企みを気付かれぬように大村に言い含める。
「ちょっと確認しに行くだけだから……」
ドンドンドン!
「……っ!?」
その時、教室前方のドアが、何者かによって荒々しく殴られた。
【残り50名 年俸総額108億1580万円】
新作来た来たー、乙です!!
読んでてこっちもドキドキする…(;゚ペ)
新作乙です!
>>260 てかタイムリー年俸だったら岩瀬と憲伸はまず狙われるセットなんだなwww
時の流れとは恐ろしいもので・・・
投下乙です!
そう、その柴原に会ったのに会ってないって嘘ついてるやつ気になってるんだよ
柴原はもういなくなっちゃったし…
モーさんは本当のことを話してくれるのかな
乙です。
うわあ先が気になる…
大村は何考えてるか分からない、と、ずっと思ってたんだが
なぜ西口とは行動したがるんだろう、シヴァとは一緒に行こうとしなかったわけだし
意図的な気がするんだよなあw 絶対、なんかあると思うんだよなあw
>>277 西口に対して、それはどうだかわからんがw 逆転の発想というか
大村が柴原を好きなんで(変な意味じゃなく)あえて行動を別にしたとかないかな
ま、予想とかはいけないんだよね、職人さんの次回作をwktkして待ってます
保守。これだけじゃ何なので俺的名ゼリフ。
YB鈴木の
(ごめんな、何処までも中途半端で)
ってやつがすげータコさんらしくてツボった。
大村と柴原は仲良しw
にしても大村は気になるな。
モーさんが、シヴァの死を知った時にどうなるか
今から凄く気になる。
あの桑田に毅然と立ち向かった岩隈が、実は最強なのかも試練
と思いながら保守
ついでに松坂が今どうしてるのか気になる
保管庫のAAが更新されてたので保守
ほしゅ
保守
あげますよ
保管庫さんが半年近く更新されてないが、どうしたんだろう
保守
にしぐちさんどこいくんですか〜
/⌒ヽ __
((( ・◎・)〜 | L ,|_
ノ) ) ) )) Σ<´θ`;>ノ エ、エート…ソノ…ピコーン
/ ̄ ̄ ̄ ̄\
|) ○ ○ ○ (|
/″ ν "\
/________ \
292 :
代打名無し@実況は実況板で:2007/02/13(火) 17:27:52 ID:35JV7RWi0
>>290 緊迫したふいんき(ryが一気に緩んだww
(゚▽´)人(・。。・)人( ‘∀‘)人(ゝ○_○)人[`ー」ー]
【97】D26
「清水、起きてるか?」
「起きてますよ」
返ってきた声はしっかりとしていた。即答してきた相手に苦笑しながら、村松は
スパイクの歯を地面に食い込ませた。
「向こうに沼が見える、もう少しだ」
言いながら、正面を見据える。
人工灯を持たない夜独特の黒い景色が続く。だがその数百メートル先の地面に、
まるで何かの目印のように、白い円が描かれていた。
上空に浮かぶ球体を映したそれが、そこが土ではなく水面であることを示していた。
前進していくと、徐々に沼の輪郭がはっきりしてくる。対岸には林と、ぽつぽつ
と建物らしき影も見えた。
地図を参考にするなら、沼のこちら側に診療所があるはずだが――
「あれかな」
正面右手に見える小さな建物は、月明かりを受け、清潔な乳白色をしていた。
「っ……」
近づこうとして、あることに気付き、村松は立ち止まった。
建物の裏側――つまり村松達が見ている側に、同じようなリヤカーが1台止まって
いるのだ。
「…………」
清水も気付いたらしく、息を飲んでそれを注視する。
「ちょっと待ってろ」
返事を待たずに村松はその場を離れた。ひとり、慎重にもう一台のリヤカーに近づく。
車輪の手前で膝をつき、マグライトで地面を照らしてみた。
「……人が来たか」
周辺には、まだ新しい車輪跡があった。自分達がこの島に連れてこられるもっと
前から、ここに放置されているリヤカーである、という線は消えたようだ。
そもそも診療所も、人が集まりそうな場所ではある。先客がいることを想定して
いなかったわけではないが、かといって代替策も特には考えていなかった。とにかく、
あの場所から離れることが第一だったから。
一度、清水が乗っているリヤカーを振り返る。表情までは見えないが、身を乗り
出してこちらの様子を見守っているようだった。大丈夫だと手を振ってから、今度
は建物の表口に回る。
沼に面して佇む診療所は、開放的な造りをしていた。
正面に大きめの窓がある。カーテンはかかっていない。そこから、村松は中を
覗き込んでみた。
まず正面に、こちらに背を向けて設置されたデスクがある。その奥に、簡素な
造りのドア。向かって左手には薬棚や本棚が見えた。右手は布で仕切られている。
ここが診療室なら、ベッドが置いてあるのだろう。
勿論電灯はついておらず、中に誰もいないようだった。
玄関から侵入し、一通り室内も確認してから、村松は清水の元に戻った。
「行こう。誰もいない」
「どっか行ったんですかね」
「そうみたいだな」
残りの短い距離をリヤカーを引きずり、正面の入り口の前につける。
仕切り布の奥のベッドに清水を寝かせ、村松は改めて部屋を観察した。
薬棚に近づき、中を確認してみると、包帯、消毒薬、痛み止めなどが目減りしていた。
やはり、誰かが以前にここに立ち寄ったのは間違いないようだ。
ごっそりとなくなっていても良さそうなものだが、よほど良心的な人間だったらしい。
「有り難いことだ」
おかげで清水に使える分がある。前の人間に習って必要な分だけ包帯や痛み止め
を取りだし、その場を離れる。先の学校の保健室でもいくつか持ってきたし、これ
でしばらくは事足りるだろう。
窓際に近づき、薄汚れた窓の強度を確認する。カーテンは古くなって取り外した
のか、元々ないのか、カーテンレールだけが寂しげに存在を主張していた。
夜は灯りをつけなければ問題ないが、昼間は危険だ。明るければ、外から中の様子
が丸見えになってしまう。
ここに長く留まるつもりなら、いずれ代用できそうな布で即席カーテンをつける
必要がある。
そこまで確認し、村松は患者用の丸イスをドアの横の壁際まで持っていった。腰
を降ろし、足を組んで壁にもたれかかる。
「ふぅ……」
大きく息を吐く。ようやく落ち着けた気がした。
人一人乗せたリヤカーを引っ張っていくのも結構な体力仕事だったが、それ以上に、
今日一日で色々あって、疲労はピークに達していた。
(あと少しだけ診療所の周辺を観察をしたら、寝てしまおう)
どうせもう数時間したら、耳障りなほど軽快な音楽に叩き起こされるのだろうが。
あまり休みすぎると惰性で動けなくなりそうなので、村松は早々に見回りに出る
ことにした。面倒なことは早く終わらせるに限る。
玄関から一歩を踏み出すと、目の前に黒々とした湖面が広がっていた。
相変わらず、地に堕ちた白い月が、風に煽られてゆらゆらと輪郭を震わせている。
「風情があるな」
つい、そんな言葉が口をついて出たが、感傷に浸るだけの余裕はない。
何かおかしなものはないか、家の周りだけ確認し、明るくなったらもう少し範囲
を広げて周辺を見回ろうと、頭の中で今後の予定を立てながら、用心して光量を落
としたマグライトで地面を照らして歩く。
「ん?」
建物の角まで来て折れ曲がろうとしたとき、村松は人工の灯りに照らし出された
モノに目を留めた。
「石……」
一抱えほどありそうな石が、不自然にそこに転がっている。
「花……?」
その手前に添えられた、数本の花に気付く。花の種類までは分からないが、沼の
周りに生息しているのと同じようなものだ。
(もしかして……)
「これは――」
――墓石。
慌てて一歩足を引き、目を凝らして地面を観察する。
よく見ると、診療所の脇の一部に、新しく掘り返された跡が残っていた。
ちょうど、人一人を埋めて余裕がありそうな。
そして、壁に立てかけられた、大きなスコップが一つ。
それは、明らかに即席の『墓』だった。
「誰が……」
名の呼ばれた18人のうち誰かが眠る墓。
土のついたスコップが、誰かがここで死んだのだと――誰かが絶望と哀しみに暮れて
ここに彼を埋葬したのだと教えてくれる。
その瞬間、今まで実感の伴わなかった死に対する観念が、恐ろしいほどの現実味を
帯びて村松を襲った。
誰かの死。今まで側にいた者が、突然死体となって横たわる時。
自分もいずれ、こうやって誰かを弔う時が来るのだろうか。
(例えば――)
血の気の失せた顔で眠る清水直行。
無意識に脳裏に浮かんだイメージを抹消する。
(俺は……嫌だ……)
彼は――今ここで眠る彼は手遅れだった。
ならばせめて、清水直行だけは――
(あいつは助けてやってくれ)
清水を助けたのは偶然だが、それでも、村松は彼の命を救ったのだ。
死者の魂の前に、村松は祈った。
「それにしても、一体誰が……」
無造作に捨て置かれたリヤカー。土の付着したスコップ。鎮座する石と、添えら
れた花――
余程思い入れのある人物だったのか、穴を掘って埋めるだけでも重労働だ。
一体誰の墓だろう。
気になったが、さすがに道具もないのに墓石に墓標を彫ることは出来ないだろう。
若干の期待を寄せて石を照らすが、案の定、のっぺらぼうの灰色い面が村松に笑い
かけるだけだった。
「ん……?」
添えられた花の下に不自然に敷き詰められた石に気付き、村松はそっとその花を
横に避けた。
「D……26……?」
辛うじて読み取れる、石で象られたアルファベットと数字。
「落合……英二……」
それは、18時の定時放送で名を呼ばれた男を示す記号だった。
「なんてこった……」
無意味な言葉が唇から漏れる。震える口元を指で押さえると、湿った土の味がした。
込み上げてくる感情に名前が付けられない。
畏怖か、同情か、感銘か――おおよそそのようなものが混じり合い、心臓と肺の
間で渦巻いて喉の奥から迫り上げてくるような。
唇に触れていた手を額に当て、村松は瞑目した。
涙腺が圧迫される。眼球の奥が熱くなるのを感じながら、村松は数時間前に、ここ
に立っていたであろう男のことを考えた。
墓標の代わりに、地面に埋め込まれた背番号。
同僚だろうか――こんな立派な墓を作ったのは。
大きさの揃った石を、これだけ集め、埋め込むだけの作業を、彼はどんな思いで
やり遂げたのだろう。
どんな思いで、黙々と背番号を刻んだのだろうか。
孤島の沼のほとりに人知れず佇む墓が――D26を背負う者が、確かにこの世に
存在したのだと主張している。
落合英二の魂と、彼を弔った者に敬意を表し――
村松は跪いた。
【残り50名 年俸総額108億1580万円】
新作乙です。
金村・・・おまいはやっぱ最高だよ
村松と地味様も落合の分まで頑張ってほしい
新作乙です。
憲伸がちゃんと後続のために薬を残していってるのにちょっとほろりときた
その徳のおかげで、落合は金村にきちんと埋葬してもらえたのかもしれんな
億バトは話が巧妙にリンクしてていいなあ
これからも楽しみにしてます
連投すまん
放送で名前を呼ばれたのは18人じゃなくて15人じゃない?
>>302 指摘ありがとうございます
18人→15人に脳内変換お願いします
すみませんでした
保守
新作キテタ!乙です
落合は幸せもんだなぁ・・・
金村と村松が出会うことはあるのだろうか
保守
h
ほしゅ
最近名前が出てこない選手って誰がいるかな。
松坂とか。
【98】快楽の座
「殺し合わないな」
殺人を厭わぬ者同士の派手な戦闘が繰り広げられる筈だった。ところが鈴木は二岡と
戦わずに逃げてしまい、二岡もそれを追わずに呆けている。
渡邉恒雄は目に見えて不機嫌だった。
「申し訳ありません。チップの動作不良があったようです」
傍らに立つ巨人軍オーナー・滝鼻卓雄は、精一杯の平静を装いながら内心は脂汗をか
いていた。
起こりうる事故ではあった。鈴木に取り付けられたチップは動き始めたばかりで、そ
もそも適応が上手く行っていない。その不安定なパルスが、一時的とは言え二岡にも
影響を与えてしまったのである。
研究員の言う通り、やはり早すぎた。安定するのを待ってからぶつけるべきだったの
に。
しかしまさか「あなたの下らん思いつきのせいですよ」と告げる訳にもいかない。
「二岡のはちゃんと動いているじゃないか」
「適応度合いに個人差があるとかで」
「渡邉さん」
二人の遣り取りを聴いていたオーナー達の一人が手を挙げた。
「そのチップというのは何なのか、我々にもご説明願えませんかな」
「おお、これは失敬」
渡邉はにこやかに応え、無言で滝鼻に目配せした。
慌てて席に着き、手元のパネルを操作する。円卓の中央に新しいウインドウが立ち上
がり、小さなコンピュータチップが映し出された。
「こちらは今回の協賛企業の一つ、然る機器メーカーが開発中のBMI…ブレイン・マ
シン・インターフェイスの一種です」
画像はズームアウトして、ヒトの脳の模擬図に切り替わる。米粒ほどの大きさになっ
たチップが延髄の辺りに取り付いていて、無数の細い触手のようなものが外皮を突き
抜けて脊髄を伝い、脳を包み込むように伸びる様子がアニメーションで示された。
「BMIは脳の電気信号を読み取り、また外部から信号を与えることによって脳や肉体
の機能の欠損を補う、世界中で実用化されつつある技術ですが、今回我々が協力して
いる実験では―――」
淀み無く語り続けるにつれ、滝鼻の意識は別の所へと離れていった。
私は何をしているのだろう。
読売新聞東京本社社長である自分が、何が悲しくてこんな所で、こんな小僧の使いの
ようなマネをしていなければならないのか。
そんな疑問を挟む者はこの場には誰一人としていないだろう。あの三木谷の若造でさ
えも、だ。
―――私も、オーナーなのだが。
肩書きが移ったとは言え、巨人の実際の所有者は今も変わらず渡邉恒雄である。それ
が誰の目にも厳然たる事実だ。ここにいる者たちにとって、滝鼻卓雄は渡邉の代理、
いやそれ以下の使い走りに過ぎないのだろう。…だがそんな事は最早どうでも良い。
原が死んだことで、密かに暖めていた社内クーデターの計画も完全に潰えた。元より
渡邉はそれを見通して滝鼻をここへ呼びつけ、原の死体を見せつけたのに違いない。
ここで渡邉への忠誠を示す以外、社会的にもそれ以前にも、滝鼻の生きる道は残され
ていないのである。
尚も説明を続けながら、集った顔ぶれについて考える。去年の同じ頃と比べて、半分
近いメンバーが入れ替わっていた。
渡邉が対等と認めている者。傀儡としてこの場にいることを許している者。正直な所、
追い出すこともできず御しかねている者。
心からこのゲームを楽しむ者もあれば、そう見えるように必死で装っている者もある。
可哀想に、自軍の選手達を愛していてはさぞ辛いことだろう。
この内の何人かにとっては、このゲームは問いかけなのだ。余興として乗ることはで
きるか、選手を生贄に差し出せるか、渡邉恒雄に従うか、と喉元に突きつけて試して
いる。
モニターが切り替わり、頭に電極を差し込まれたネズミがうろうろと迷路の中を動き
回っている。指示通りに動けば電極が脳の快楽中枢を刺激する仕組みだ。
次に二岡の横顔が映し出された。あどけなく満ち足りた表情で、轟々と燃える家を見
つめている。頭の中では誰か近しい者と語らっているのかもしれない。
その人の命令に従い、その人から褒めてもらう。それが二岡の脳が紡ぎだした幻影ら
しかった。
それがなければ、彼の精神は一秒たりとも耐えることができない。
「――――以上の方法によって、人間の頭脳及び肉体の潜在能力を効率良く引き出し、
また行動を制御することができます。今回のようなゲリラ戦闘において高い有効性を
発揮するという訳です」
「漫画ですな。子供騙しだ」
誰かが鼻で笑うのが聞こえた。はっとして隣の渡邉を見る。動じる様子も無く、泰然
と葉巻の煙を吐き出して言う。
「左様、こんなものはゲームを盛り上げるほんのスパイスに過ぎません。本当の醍醐
味はもっと別の所ですよ」
滝鼻は密かにため息をついた。
ここまでされて「こんなもの」扱いでは二岡も浮かばれまい。例の企業は選手達を実
験材料としか見ておらず、チップを取り除いて元の体に戻す方法など考えてもいない
だろうから。
―――それでも君の方が幸せじゃないか。私には頭を撫でてくれる者などいないのだ
よ。
その時、ゲームに動きがあったことを知らせるアラームが鳴り、ウインドウが島の
どこかの景色を映す物と入れ替わった。喜色を孕んだ低いどよめきが起こる。
オーナー達の関心が完全にそちらへ移ったのを見て、滝鼻は説明を打ち切った。
【残り50名 年俸総額108億1580万円】
うおおおお、なんかものすごいのキタ!
職人様GJGJGJGJGJ
滝鼻とナベツネの確執が面白い
こっちの展開も楽しみ
乙です!
二岡はやっぱりもう、戻ってこられないのかねえ…
(´;ω;`)ブワッ
新作乙です。
二岡だけでなく尚典も埋め込まれているのか・・・
尚典・三浦組の今後が心配だ・・・
>>308 ヤクルト勢。
ここが動くと面白いと思うのだが・・・
新作乙です。
そんなもんが埋め込まれてるなんて、それじゃ今岡・佐伯コンビや大村・西口コンビは今後どうなるんだー
保守
【99】True or False
黒板と教壇が置かれた側、つまり教室前方のドアが激しく鳴った。無論、自然現象
などではない。何者かが荒々しくドアを叩いているのだ。
「誰や……!?」
小声で呟き、大村が咄嗟に水鉄砲構えた。
西口も、慌てて支給品を出す。この状況で役に立つモノとも到底思えないが、
片手で掴めるほどそれを身体の前に構えた。
柔らかい触感。意外にしっとりとした手触り。
最近めっきりエロくなくなったエロズリー……もとい、日本ハムファイターズの
マスコットキャラクター、B・Bベアのぬいぐるみである。
(これでどうやって戦えってんだよ!)
ピンチになったら目から光線が出るとか、安全な場所にワープさせてくれるとか、
そんな魔法のような便利アイテムだったら言うことはないのだが、まず有り得ない
だろう。
それでも丸腰よりはマシ――
(でもないか)
無理に自分に言い聞かせるのも虚しくなり、西口は胸中白旗を挙げた。
「有効な武器なし――と。作戦決行」
どこからかそんな、呟く声が聞こえた気がした。
ガシャン!
突然、派手な音を立てて窓ガラスが内側に飛び散った。抱えるほどの大きさの石
が室内に投げ込まれたのだ。
ほぼ同時に、そこから一人の男が飛び込んでくる。
うっすらと月明かりが差し込む教室に降り立った人影。
仁王立ちするその者のユニフォームの色すら、白か、それに近い薄系統であること
しか判別出来ない。
分かるのは、体格からそれが男だ、ということだけだ。――もっとも、今この島
には男しかいないはずだが。
「くそっ……」
デイバッグを掴んだまま後ずさり、西口は壁に張り付いているスイッチを乱暴に
殴りつけた。
瞬きながら、蛍光灯の灯りが教室を照らし出す。
闇夜に慣れた眼球が一瞬、急に光量の増した視界に戸惑う。
素早く瞬きを繰り返し視力の回復を急ぐと、間を置いて侵入者の姿が判別できた。
岩村明憲(S1)だった。
男らしい相貌で睨み付けてくる岩村の口端が上がる。銃口を西口と大村の中間
辺りに固定したまま、一歩、前に足を踏み出す。
「クソ……っ」
呻き、大村が身を翻した。2対1といえど、ろくな武器も持たないまま、負傷者
二人で何とか出来る相手ではないと判断したのだろう。
後ろのドアから逃げようとする大村を見て、ゾクリと背筋を這い上がるモノを感じた。
(何だ……?)
嫌な予感がした。
「西口はん、何やっとるんですか! はやく!」
こちらに銃を向けてくる岩村は、にやにや笑いながらも撃ってくる気配はない。
そのことに違和感を感じ、西口はすぐさま大村に従うことが出来なかった。
もたもたする西口に苛立ったように、勢いよく引き戸を開け、大村が教室を飛び
出そうとする。
「あ――」
スルリと、喉の奥で絡まっていた糸が解けた。
岩村は『窓硝子を割って』教室に侵入してきた。
その前に、『教室の前方のドア』を何者かが叩いた。
(もう一人いる――!)
「大村! ダメだ!」
「え……うわぁ!」
咄嗟にユニフォームを引っ張り、西口は大村の身体を教室内に引き戻した。反動
で、もろとも倒れ込みそうになるのを何とか踏みとどまる。
飛び出そうとした大村の頸動脈を僅かに切り裂き損なった銀の爪がその胸元を
引っ掻いた。致命傷にこそならなかったが、血を撒いて一閃する刃に、大村の悲鳴
が反響する。
死角から姿を現し、出口を塞ぐ形で仁王立ちするのは宮本慎也(S6)だ。拳に嵌め
られた奇妙な形の刃物が、赤く濡れている。
(待ち伏せ――!)
前方の扉を叩き反射的に獲物を後方へと追いつめて、窓から別の人間が侵入する
ことで脱出口を一つに狭め、おびき寄せた。
――確実に、二人を殺すために。
進退を塞がれた大村と西口を、二人の殺し屋が笑う。
逃げ場はない。
彼らは――本気だ。
(もう……ダメだ……!)
「うおおおおぉぉ!」
西口が絶望しかけた時、突如咆哮を上げ、大村が出入り口を塞ぐ宮本を突き飛
ばした。
「うわっ!?」
禍々しい刃物に正面から向かってくるなど予想もしていない。虚をつかれた
格好で、大村の渾身の体当たりを受けた宮本が後方へ突き飛ばされた。それでも、
わざわざ間合いに飛び込んできた相手に対して、とっさに右拳を一閃する。
拳から伸びる四本の刃に右肩から二の腕にかけてを深々と切り裂かれ、悲鳴を
上げる大村から鮮血がほとばしった。骨折した右腕を吊していたユニフォームの
切れ端が、ほどけて床に落ちる。
自らバグ・ナウの餌食になりにいった大村は、それでも倒れなかった。激痛を
全身の気力を総動員して封じ込めるように大声で叫び、西口を伴って廊下を走り
出していた。
「何仕留め損なってるんですか!」
背後から言い争う声が聞こえる。
言い争う、というよりは岩村が一方的に語気を荒げている。このまま仲間割れを
してくれている間に逃げられれば――西口の薄っぺらい希望はあっさりと潰えた。
「こんな回りくどいことなんざしないで、最初からこうしときゃ良かったんだ!」
ちらりと視線を後方にやると、今度こそ本気で撃つ眼で岩村が銃口を向けていた。
何の障害物もない学校の廊下で、がら空きの背後を打たれれば一溜まりもない。
「くそっ……!」
無我夢中で、西口は手にしていたB・Bベアを投げつけた。
「ちっ……!?」
くるくるとでんぐり返りを繰り返しながら飛んできたニヤケ顔のぬいぐるみに
惑わされ、的はずれなところに一発撃ち込む岩村。
地面に叩き付けられ、無惨に踏みつけられるB・Bベア。散弾が天井の蛍光灯
に当たったらしく、硝子が割れて地面に叩き付けられる耳障りな破壊音が響いた。
「待て! バカ、何のためにこの作戦を――」
「無駄打ちするな! 弾がもったいない!」
焦ったような宮本の声に被って、もう一人聞き覚えのある男の声が聞こえた気がした。
だが、もうそんなことはどうでもいい。言い争うような声を背中に、少しでも距離
を広げようと両脚に力を込める。
最初は気合で西口の手を引いていた大村だが、今は完全に西口の方が大村を引き
ずっていた。
身長こそ西口の方が高いが、体重は大して変わらない。がむしゃらに大村の身体
を担ぎ、可能な限りの速さで駆ける。途中で玄関とは逆方向に走っていることに
気付いたが、引き返すことは出来ない。ここは一階だから、西口がかつて通っていた
学校と似たような造りならば、逆側の突き当たりにも非常口か、裏口か、そんなもの
があるはずだ。
汗が目に入りそうになり、片方の手を大村から離して顔を拭う。その時鼻についた
濃度の高い血臭に、思わず噎せ返った。
すぐ隣で荒い息をつく男を振り返る。
刃物を構えている人間に、相手が吹っ飛ぶほどの勢いで正面から突っ込んだのだ。
深々と抉られた腕は、神経すら切断されているはずだ。この薄暗い廊下にも、
おぞましい量の血痕が自分たちの逃走路を描いているに違いない。
失血に、大村の顔は死人のように白くなっていた。医学など毛ほどもかじっていない
西口でも、彼が取り返しも付かないほどの致命傷を負っているのは容易に理解できた。
彼がまだ、自分の足で走っているのが不思議なほどだ。
血に塗れるのも構わず、西口は必死に大村の身体を支えながら通用口へと走った。
「何とかなるよ」
大村に、そして自身に言い聞かせるように西口は呟いた。
先程まで彼から逃げようとしていたことなど爪の先程も覚えていなかった。彼を
置いて逃げようとも考えつかなかった。
大村がついた嘘や矛盾よりも、彼が身を挺して活路を開き、自分の手を引いて
くれたというその事の方が何よりも明確な事実だ。
「死ななきゃ、何とかなる」
そうだ。絶対に死なないし、死なせない。
「大村、俺はお前を信じてるし、信じたい」
彼を信じる。そう決めた。
だからこそ今、はっきりと聞かなければいけない気がした。
「何で嘘付いた?」
自分達の足音に混じる、血が床に跳ねるこの不快な音のように、二人の信頼に
紛れ込む、小さな雑音。
たった一つの嘘が気に掛かっていた。
「やっぱ気付いてはりましたか」
息も絶え絶えに応えた大村の台詞には、どこか余裕のようなものすら含まれていた。
それは、死が近づいてきていることを覚悟している男の、達観というものかも
しれない。
一瞬過ぎった思考を、西口は慌てて振り払った。
「いやぁ、同じチームの人間の誘い断って一人で行動していた人間なんて、なんや
企んでると思われてもしゃーないですやん」
「…………」
「ほんまのところ企んでたんですけど」
「…………」
沈黙は先を促していたというよりは、目的地に進むのに精一杯だったと言った方が
正しい。自分の吐く荒い息で、彼のか細い声が掻き消えそうなことに苛立ちながら、
必死に聴覚を研ぎ澄ませる。
今、大村の言葉を一言一句、聞き逃してはいけない気がした。
「具体的には何も考えてなかったんですけど、あの時は自分の身の振り方のひとつ
に、このゲームに乗るという選択肢もあったということです」
あの時というのは、この場合、柴原の誘いを断った時のことだろう。
決めあぐねていたのだと、彼は言った。
(じゃあ、今は――?)
そう口にしようとした時、薄暗闇の中に、ぼんやりと浮かぶ鉄扉が見えた。
「良かった……通用口――!」
自分の賭が成功したことに安堵する。すぐさま突き当たりの壁に大村を凭れさせ、
重そうな鉄扉を開けようとノブを探す。
古い閂型の扉だった。錆び付いてざらざらした鉄棒を思いっきり引っ張る――が、
動かない。
「カギ!?」
鍵をかけられていては手の施しようがない。扉に張り付き、顔を近づけてよく
見るが、錠はされていなかった。長く使われていなかったために錆びがこびりついて
しまったらしい。
「クソッ!!」
震える手でがちゃがちゃと閂を動かす。摩擦された部分の錆が削れ落ち、錆臭
い匂いが宙を舞う。
(早く――早くしないと!)
彼らが追いつけば終わりだ。
「今はどうなのか、気になるんちゃいますか?」
隣で、壁に背を預けていた大村が口を開いた。
「柴原さんの誘いを断って、何の関係もないあんたと一緒になって――どういう
つもりなのか」
「…………」
「西口はんに会って、何でか助けてしまったんですけど、気付きましたわ」
彼の言葉を横に聞きながら、西口はあえて何も返さなかった。ただ無言で鉄棒
を掻き動かして、錆を刮ぎ落としていた。
「俺は傷付いてる人を見過ごせへんし、自分のために誰かを殺したりも出来へん
人間なんやって」
大村の声は随分と静かだった。
静かで、穏やかで。
まるで遺言のような。
(俺は――大村を疑った!)
襲い来る後悔の渦に、西口はどうしようもない自己嫌悪に陥った。
人のために身体を張った男を疑った。
自分が彼を疑っていたことを、大村は気付いていただろう。その罪悪感に辿り着き、
己の情けなさに涙が出そうになる。
この罪を償う方法を、西口は一つしか思い付かなかった。
(今度は俺が、こいつを助けないと)
何があっても、彼を助けなければいけない。一緒に帰らなければいけない。
一緒に。
あの猫と一緒に。
『全てが終わったら迎えに来てやりましょう』
(すべてが終わったら――)
「……よしッ! 大村、これで――」
ようやく閂を抜き取り、振り返った時、大村はいやに遠い目をしていた。
ドキンと、心臓が飛び跳ねた。
「嘘をついたことは謝ります」
「もういいから! 後で聞くから!!」
相当痛みと疲労が溜まったのか、動きの鈍い大村に焦る。複数の荒々しい足音と
一緒に、男の声が近づいてきた。岩村だ。
「ここから逃げられたらいくらでも言い訳なんか聞いてやるし、全部笑って許して
やる! だから今はとにかく逃げよう……!」
「いえ、今……」
ゆらり、と壁から背を離した大村が、ゆったりとした動作で西口と向かい合った。
「今言っとかんと……」
なかなか動かない大村に業を煮やし、西口はまず自分がドアを押し開け、外界に
出て大村を導き出そうとした。だが――
「大村……?」
負傷していない方の腕を引いても、大村は扉の前から一歩も動こうとしない。
「何してるんだ! 早く……!」
「無理です。俺なんか連れて逃げたらアンタも死ぬ」
「――っ!」
大村の言っていることは正しかった。
重傷の男を連れてどこまで逃げられるのか。どれだけ必死に逃げても、何よりも
確実な『足跡』が残る限り、いずれ追いつかれる。
(それでも俺は……こいつを見捨てて逃げるなんて出来ない……!)
「これは最初に、チームメイトの差し伸べてくれた手を取らなかったバチが当たった
んですわ、きっと」
自分を見捨てて逃げろといい、あまつさえ薄い笑みすら浮かべながら、大村は
動かない右腕を垂らしたまま、ゆっくりと左手を上げた。こちらに向けて片掌を
広げる姿が、まるで大仏かなにかのようだと西口は思った。
「あんたは俺とは違う。だからあんたは――生きてください」
その手が急に胸元を押し、西口は後方へ突き飛ばされた。
五段ほどの低い階段を転げ落ち、打ち付けた背中の痛みに息を飲む。
「大村……っ!」
身体を起こした時には、すでに外開きに開いた鉄製の扉を、大村が閉じようと
しているところだった。
「……んで……俺なんか……」
震える唇から掠れた声が漏れ、西口は、自分が泣いていることを自覚した。
「もう拾った猫は見捨てないって決めたんですわ」
笑顔で、大村直之は応えた。
「ほな、お元気で」
この場にそぐわない、彼らしい挨拶と共に、大村の微笑が鉄扉の向こうに消える。
西口は立ち上がっていた。
だが、もう一度、その扉に縋り付くことはしなかった。
それは、間を置かずに、壁の向こうで閂を差し込む音を聞いたせいかもしれない。
重い音を響かせて閉ざされた扉が教えてくれた。
彼が文字通り命がけで作ってくれた生き延びるチャンスを無駄にすることは、彼
の想いを裏切ることになる。
「大村ーーーーーーーー!!」
廃校に背を向け、西口は泣き叫びながら走り出していた。
その後ろで、もう一度、銃声が聞こえた気がした。
「手間かけさせやがって……」
大村が死の間際に閉鎖したらしい鉄扉を開き、外に出る。狭い空間に立ちこめて
いた血臭から解放され、爽やかな夜の冷気が肺に流れ込んでくる。
いびつな月を見上げて目を細め、岩村は大きく伸びをした。
その傍らで、宮本がグラウンドに膝をつき、懐中電灯で地面を照らしていた。
おそらく大村の血が付いたのだろう、スパイクの赤い跡が点々と続いている。
しかしグラウンドの渇いた土も味方して、西口の足の裏の血も吸収してしまう
だろうし、跡を追いかけても途中で途切れてしまうのがオチだろう。
「とっととずらかりましょう」
騒ぎに気付いてもう片方のグループが駆けつけても面倒くさい。村松がやっかいな
武器を持っていたから襲撃を見送ったのに、また鉢合わせてしまうのもアホらしい話だ。
実際のところ、岩村はそれでも一向に構わなかったが、このグループの『頭脳』様
がそれを許さないはずだ。
「ああ……あれ、上原は?」
「ここです」
立ち上がってユニフォームの汚れを払った宮本に上原が呼応する。
「どこ行ってたんや?」
「ちょっとトイレに」
暗闇から突如現れた上原がしれっと応え、その会話はそこで終了した。
「一人逃したが、もういい。こっちは予定通り無傷だ。また別の作戦を練ろう」
「予定通りねぇ……」
締めくくり、この場を立ち去ろうとした宮本を後目に、上原の目がもう一人の
メンバーを向く。
「ちっ……」
銃弾の残数を計算していた岩村が、ワルサーを片手に舌打ちした。
「あと6発しかねぇ……」
「だから言ったやろ」
鼻から息を吐き出し、呆れたように口を突っ込む上原。
使わなくて良い相手に使うのはもったいない。それが上原の持論だ。
計画遂行前にも無駄な玉を使うなと口酸っぱく言われたにもかかわらず、結局二発
も使ってしまったのだから、岩村にとって、この空気は居心地の良いものではない。
「アンタの計画では一発も撃ち込まずに二人殺せるって話じゃなかったのか」
半ば八つ当たり気味に、不機嫌に上原を睨み付ける岩村。
「一人取り逃したのは俺のミスだ。まさかこんな物騒な獲物に向かって突っ込んで
くるほど命知らずとは予想しなかった」
険悪な雰囲気を漂わせた二人を制するように宮本がフォローを入れる。
昼の放送後に三人が合流した後も、度々このような衝突を見せる上原と岩村に
対して、その都度仲介に立つのは宮本の役目だった。
上原と違い、宮本はもともと岩村の参入を歓迎した様子ではなかった。
何かにつけて、上原に対して挑発的な態度を見せる彼の性を恐れてのものかも
しれない。
「フンッ……」
自ら責任を被ってこの場を収めようとする先輩に免じて、岩村は鼻を鳴らして身
を引いた。
上原たちと今後の行動指針について話し合った時、岩村としては、強力な武器を
持っている奴らを襲って武器を奪ってしまえばいいのではないかと思ったが、その
提案は却下された。
まだゲーム序盤のこの時期に、リスクの高い行動を起こし負傷でもしたら今後の
見通しが立たなくなるから、という実に理屈の通った言い分だ。
危険人物たちは勝手に奪い合い、殺し合い、体力をすり減らしていってくれれば
いい。
いささか悠長すぎる構えな気もするが、岩村としても反論の余地はなかった。
「くれぐれも、くだらないことで仲間割れなんてするなよ。行くぞ」
引率の先生のように二人を引き連れ、今度こそ学校を後にしようとする宮本に
岩村は素直に従ったが、上原は聞いていないのか、明後日の方向――校舎裏の方
を向いたままその場に佇んでいた。
「……上原?」
「あー、行きましょうか」
気付き、何事もなかったように二人の後に従う上原。
「ったく世話の焼ける……」
年長者の気苦労に嘆息する宮本。
校舎裏、ひっそりと佇む警備員用の小屋の中から、息を潜め彼らの動向を見守る
二つの視線に、宮本慎也は気付かなかった。
「行ったか……?」
「はい……」
校舎裏、裏門の傍らに位置する警備小屋から、高橋由伸(G24)と阿部慎之助(G10)
は息を潜めて三人がグラウンドを去るのを見送っていた。
「はぁー……」
完全に彼らが視界から消えて、さらに数分息を詰め、ようやく危機は去ったと
確信し高橋は大きく息を吐いた。
異様な空気を醸し出す谷に、遠くに逃げようと提案したのは阿部だ。
それを、小屋に隠れて様子を見ようと言ったのは高橋だった。
学校に来たのには特に意図はなかったが、人が集まりやすい場所であるのは確か
だった。来るときにも逃げ出す和田を見て、そして谷がやってきた。
危険は承知で、ここに留まったのにはワケがある。
会いたい男がいた。
もしかしたら会えるかもしれない。なんとなく、会えるような予感がした。
高橋の予感は的中していた。期待していた形の再会ではなかったが。
「上原……」
気が付けば姿を消していた友人。
「何でいなくなっちまったんだよ……」
高橋からすれば、当然上原は一緒に行動するものだと思っていた。後輩の阿部が
頼り無いわけではないが、やはり彼が一緒にいてくれたら心強い。
「そりゃあ俺とお前じゃ年俸高いかもしれなけどさ」
それでも阿部も含め、3人で10億はいかない。
「おまえがいない間に、俺は人殺しになっちまったんだぞ……」
彼がいたら止めてくれたかもしれない。持ち前の機転を利かせて、殺さずとも
若田部を止める方法を思いついたかもしれない。ヘンな知恵だけは働くやつだから。
彼が自分たちの前から黙って姿を消した時も、裏切られたとは思わなかった。
年俸が高い人間同士で組むのは狙われやすくて危険だと思い、あえて身を引いた
のかもしれない。そう思っていた。
(なのに……)
「なんで……あいつらと一緒にいるんだよ!?」
一階のある教室から漏れる人工の灯りが、夜のグラウンドの一部を照らす。
そこに佇む三人の姿を、高橋ははっきりと認識した。
宮本慎也、岩村明憲――上原浩治。
拳に付けた凶悪な武器を無造作に振り、血を落とす宮本。
手にした銃を掲げて覗き込みながら、何かを毒づく岩村。
そしてそんな二人に、余裕の笑みすら浮かべながら近づく上原。
我が目を疑う光景だった。
この狭い小屋の中から、18時の放送直前に谷が学校を去ったのを見届けた。
うとうとしかけたところで、いきなり校舎の窓ガラスが割れる音に度肝を抜かれた。
その後、何度か響いた銃声。
「だれか……死んだのかな……」
「そんなこと、考えちゃダメですよ、由伸さん」
阿部も、上原の姿には気付いただろう。だがそのことには触れずに、高橋を労る。
「やっぱり、ここは危ないかもしれませんね」
「ああ……」
魂が抜けたような返事をする高橋に、阿部が眉を更に下げ、心配そうに先輩を
見やった。
ここは人が集まりやすい分、狙われやすい。
そして、ここに残る理由はもう――なくなってしまった。
「こっちはあまり目立たないみたいだけど、時間の問題かな」
あまり心配をかけまいと、意識してしっかりとした声を出し、高橋は今後の方針
を打ち出した。
目的は達成した。考え得る限り、最悪の形でだが。
「明日、明るくなったらここを離れよう」
「はい」
大村直之(H7)死亡 【残り49名 年俸総額106億9980万円】
意外な展開に、言葉が出なかった
ちょっと予想外の展開だった
あああああああああ…大村さん………
凹んだ…
職人さん、乙です
乙です。
モー村さんが…予想外だった。
うわああああああモーさん…
職人さん乙です。上原組(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル
新作乙です。
モーさーんーーー!!!。・゚・(ノД`)・゚・。
侵入者は谷だと思ってたが、まさかここで10億リスト軍団が来るとは…
10億組も由伸・阿部組も久々だなあ…
宮本はいつから標準語になったんだ?
新作乙です!
まさかモーさんが…
10億リスト組は不穏な空気が漂ってるなぁ…
乙です。
大村が、裏切ってたんじゃなくて本当に良かった…
初登場時の、のんびりと暖かい印象のまま、
この二人はやっぱり名コンビでした…
。゚(つд`)゚。
そして10億リストチーム、待ってましたっ!
ま、おのおの、感想はあるだろうけど、大村は完璧に西口を裏切ると思っていたので
自分の予想が裏切られたwww
鷹外野陣、相次いで亡くなっちゃったな
(松中も一応外野を守れるがw)
…実は予想してたwさらに上を行かれたけどw
ほんとおもしろくなってきたなあ。久しぶりの人らも出てきたし。
341 :
代打名無し@実況は実況板で:2007/02/21(水) 10:50:11 ID:ba6XnHfb0
乙なんだけどキャプテンの台詞には違和感あるかも・・・・
43氏の書いた章では関西弁だったような
>>336>>341 脳内変換しかないと思う
細かいこと言えば、この話に限らずほかの章でも、ちょっと上下関係のしゃべり具合としては
おかしいな、と思ったり、日本語としておかしいな、と思う文章や台詞があるけど
職人さんも年齢関係まではなかなか熟知できないし、前の台詞とつながるように
極力なさってても、やっぱり、同一人物じゃないと抜けてしまったりするだろうし
>>341 自分に文句があるなら、ここでレスアンカーつけて言えばいいのに?
別にあなたは変なこと言ってるわけじゃないじゃん
>>343 それはすまなかった
ただ、職人さんがレスできることをわざわざ他の人が言うことはないと思う
指摘した側からすれば「何で?」ってことになるし
空気読め
>>336>>341 本当だ……二言目は関西弁で書いてるのになんでその後標準語……('A`)
ご指摘ありがとうございます
保管庫掲示板の方に修正依頼を出しておきます
お騒がせして申し訳ないです
いつも保守&感想ありがとうございます
>>347 乙です
今回は見事に騙されましたよw
面白かった
それにしても保管庫さんはいつ更新されるんだろう・・・
プロローグ合わせて100話到達したので再び選手登場話をまとめてみました。
死亡した選手にはxがついてるので全部読んでない人は見ないほうが良いかも。
作中で見掛けた程度の登場はカウントしていません。
間違いがあっても脳内補完でお願いします。
読売ジャイアンツ
清原和博 ┃15/61/
上原浩治 ┃0/30/44/56/99
高橋由伸 ┃0/19/30/32/39/49/65/99
工藤公康 ┃5x
小久保裕紀.. ┃26/79
桑田真澄 ┃28/62/94
仁志敏久 ┃37/45
清水隆行 ┃34/3745x
江藤智 ┃28x
二岡智宏 ┃19/32/50/86/87/88
阿部慎之助.. ┃19/30/32/39/49/65/99
前田幸長 ┃41/79
岡島秀樹 ┃19x
元木大介 ┃15/61
横浜ベイスターズ
佐々木主浩.. ┃2/58/72/83
斎藤隆 ┃2/58/72
三浦大輔 ┃16/44/87/88
鈴木尚典 ┃16/44/87/88
石井琢朗 ┃48/68
佐伯貴弘 ┃20/40/58/66/72
若田部健一.. ┃49x
中日ドラゴンズ
谷繁元信 ┃8/11/52/60x
立浪和義 ┃18/77
岩瀬仁紀 ┃25/68/82
山本昌 ┃25/68x
川上憲伸 ┃57/82/92
福留孝介 ┃0/48/92x
井端弘和 ┃0/39/50x
落合英二 ┃63/80x
野口茂樹 ┃22/36/52/60
阪神タイガース
金本知憲 ┃6/14/22/36/52/60
今岡誠 ┃40/58/66/72
井川慶 ┃33/58/74
片岡篤史 ┃43/45x
矢野輝弘 ┃4/6/47/89/91
下柳剛 ┃4/6/47/76/89/91
赤星憲広 ┃13/46
桧山進次郎.. ┃42/47/76/89/91
ヤクルトスワローズ
古田敦也 ┃36
宮本慎也 ┃44/56/99
岩村明憲 ┃1/11/56/99
五十嵐亮太.. ┃8x
広島東洋カープ
前田智徳 ┃12/27/31/73/75
緒方孝市 ┃12/27x
佐々岡真司.. ┃12/27/31/51/53/61x
黒田博樹 ┃12/20/27/31/51/71
野村謙二郎.. ┃12/27/31/51/71
・パシフィックリーグ
ソフトバンクホークス
城島健司 ┃5/16
松中信彦 ┃18/77/95
柴原洋 ┃9/21/69/90/94x
斉藤和巳 ┃9/21/69/90/94
大村直之 ┃7/54/70/96/99x
西武ライオンズ
松坂大輔 ┃54
和田一浩 ┃59/81
豊田清 ┃1/74/95
西口文也 ┃7/54/70/96/99
森慎二 ┃x
北海道日本ハムファイターズ
小笠原道大.. ┃0/24/46/73/75
金村暁 ┃10/63/80/91
千葉ロッテマリーンズ
小林雅英 ┃55/73/75/79
福浦和也 ┃62/81/84
清水直行 ┃10/38/62/67/78/93/97
オリックスバファローズ
谷佳知 ┃35/65/78/80
村松有人 ┃23/67/78/93/97
東北楽天ゴールデンイーグルス
岩隈久志 ┃3/9/21/69/90/94
礒部公一 ┃3/9/21/69/90/94
モーさんは、結局シヴァが死んだことを知らないままに死んじゃったのか。
となると、控え室ネタを投下してくれる職人さんをwktkして待ってます。
>>349 乙です。
古田・城島といった辺りが長いこと出てないなあ…
今のところ一番出番が多いのは由伸みたいね
>>355 それがちょっと残念だったけど、亡くなる前に、柴原の誘いを断ったバチが
あたったんだろう、と言ったし、気にはなってたんだろうな、と思った
きっと向こうでキャッチボールしてるだろ、となんとなく思ってる
>>349 乙です
こうしてまとめてみると、中日に死亡者が多いね
保守
hoshu
ほす
平和ボケ日本代表の二人が気になる
はいれぇ!
保守
シーズン始まったらこまめに保守しないと…
ほしゅ☆
☆
♪
保守
ほしゅ
ほしゅ
捕手
保守。
☆ゅ
保管庫はもうどなたも管理していらっしゃらないのかなあ
文字化けで読めないページがひとつあるから、ほんとは直して欲しいんだけど
書いてもおいでじゃなさそうだからと思って、掲示板に書いてないけど
>>375 なんか文章がおかしかったですか?
ここか?訂正しておくか
「文字化けで読めない章があるから、ほんとは直して欲しいんだけど」
「掲示板にその旨書いても、管理人さんがおいでじゃなさそうだからと思って書いてないけど」
まとめサイトが非常に見づらい…これからビリバト見ようと思っているのだが…
まとめサイト、ケータイで見ようとすると文字化けするのな
>374
連絡取る方法ないんだっけ?
管理者行方不明の場合は大体その人と連絡可能ならば取って、
不可能ならスレで後継サイトを作りたいと宣言したらいいんではないかと
というか作って下さい
自分が作ればいいんだろうけど最近読み出したから過去ログ持ってないのよorz
もしよかったらwikiなら借りてくるけどまとめサイトに掲載されてない部分を貼ってくれる方はいるんだろうか
まとめサイトは結構な割合で文字化けが起こる。
エンコードいじって何とかなることもあるから、取り合えずやってみろ。
って、前に見守るスレで相談した時に言われた。
PCで見た限りでは文字化け確認できなかったな。
未収録分は全て保管庫掲示板にうpされてるみたいよ。番号も振ってある。
捕手ル
/⌒ヽ
(・◎・) ……。
ノ) ) ) ))
/⌒ヽ
(・◎・) みんな、わいがしんでもかなしまんで。
ノ) ) ) ))
/\ /\
/ \/ :::\
/ :::::\
/ ● ● ::::::::\
| / ̄\ ::::::::::::::::| わいはみんなの心に生き続けるで
| (/~ ̄ヽ) ::::::::::::::::|
\ |L13u/ ::::::::::::::::::/
\ | /| | ::::::::::::::::::/
// | |
U .U ボリボリ
>>384 ちょwww
西口せっかく生き残ったのに食うなwwwww
モーさんwwwwww
>>384 うわあああああああああああああああああああ(AA略
これからが本当の戦いだというのか・・・モーさんw
(^亮^)
391 :
無駄に声デカ高坂( ゚∀゚) :2007/03/08(木) 22:07:37 ID:2TajFDgJ0
マジカイ!!! 豪快やんけ! ( ゚∀゚) アハハハハノヽノヽノ \ / \ / \
メスゴリラ末松! 氏ね!
保守
ほしゅ
ほす
保守
誕生日オメデト保守(6∀6)
べっち誕生日なのか。おめ!
岩隈と礒部と斉藤はどうするんだろうなあ
398 :
代打名無し@実況は実況板で:2007/03/13(火) 11:11:36 ID:U8MH3JYD0
朝から全話読破していてさっき読み終わった。
佐伯&今岡コンビ頑張れ!
>>397 柴原がいなくなって斉藤はどうするかねえ
小久保や城島と出会えたらいいけど
城島に先に会うか小久保に先に会うかで
大きく展開が変わってくるね。
城島はマーダーやってるからなあ
小久保と松中は、柴原の死に、ショック受けそうだな
斉藤はメンタルの弱いところをズバズバ突かれてたからな。
心配だ。シヴァの遺言を胸に強くなって欲しい
>>400 城島よりに先に小久保と会えたとしても、小久保は城島がマーダーだって知ってるんだよな
どっちにしても斉藤にとっては不幸か…
というか、永久に会えない可能性だってあるわけで……
べっちとクマーがフォローしてくれることを祈ってるさ
クマーまじいい奴。
ここの岩隈は毅然としてるよなあ
いずれマーダーになるんだろうか
ドラファンとしては、川上と岩瀬のコンビがやっと見れたのが嬉しい
リアルでは一番仲のいい組み合わせだが、意外にもバトでコンビになったのはここが初めてのような
間違ってたらすまん
斉藤が小久保や城島に会えないかもしれない、というのは
もちろん、斉藤死亡の可能性もあるが
小久保たちが先に逝くという可能性もあるわけだから
>>407 岩隈は桑田を撃てなかったし(結果的に逃がしたし)どうだろう
クマーはいまんとこ正義の人だと思うが、べっちを失ったことがあとあと響いてきそうではあるな
しかしここ以外のクマーがだいたいヘタレだから余計毅然として見えるよなw
生きてる人々も気になるけど、
控え室で再会した(であろう)シヴァとモーが気になる。
シヴァのことだから、何事もなかったように許すだろうけど。
あと山に入ったまま行方不明になってる仁志タンとか。
仁志タンこそ、小久保に会わせたいなあ。どうなるかわからんけど。
>>411 (・◎・) < しばはらさん、いっしょに、こうどうせんでかんにんな
[~ε~] < 全然?気にしてないよって?いうか?
>>412 GJGJ
つうかシヴァwwwww
岩隈は危なっかしい気がする
今のところあのグループ内では一番しっかりしてるけど、出発の時は混乱してたし
>>409が言ってるようにべっちに何かあったら豹変しそうな予感がする。勝手な予想だがね
続きを楽しみに待つとするか
あんまり展開を予想すると書き手さんがやりにくいかもよ?
……一見冷静な岩隈を心配してるのは自分だけじゃなかったか。
今後の展開にわっくわく
うむ、今後の展開にwktkして待とう
ほしゅ
☆
>>407 そうだったな。前作たしか憲伸は人間不信に陥って殺されて、
岩瀬は観覧車のったあと自殺だったか。
できればあの二人には最後まで生き残って色んな人を助けて欲しいな。
>>418 ドラで生き残ってる四人のうち、立浪も野口もマーダーなんだよね
(野口は正当防衛だけど、野口が殺したtanisigeもマーダーだったし)
川上と岩瀬はどう動くんだろうな。楽しみだ
そういえば、昌の武器ってまだ明らかになってないよな
燕が(五十嵐以外)全員マーダーと判明した時は怖かったなぁ…
なにげに燕最恐
wktkしながら保守
【100】六十六分の一
ピピピピピピピピ――
スクリーンに映し出された選手リストに敷き詰められた数字が、急激に増減を繰
り返す電子音の中、13人の男達の静かな雑談が続いていた。
――静かと言うには、些か不穏な空気を含んではいたが。
「まったく子供騙しだ! ――いや、不良品と言った方がいいか?」
「口が過ぎますぞ――殿」
「何が――だ。先程の――のどこに――の余地があったんだ?」
「滝鼻氏が言うには――も――なのだろう?」
「適応度合いに個人差があると先程申したとおりです」
「――殿のお気持ちも分かりますよ。動いていない方が多いのでは――だ」
「しかし渡邊さん、こんなことで本当に――」
「おや、D−3で何か動きがあったようですな――」
この島で一番立派な屋敷を出て、金村暁(F16)は予め目を付けていた民家に向かって
いた。
(『向かう』じゃないか)
とりあえず今夜一晩はそこを我が家にするのだから、家路につく、と言えば正しいか。
青白い光が夜道を照らす。
月夜の散歩というのも気持が良いものだ。
振り返ると、湖が大分遠くにあった。黒く塗りつぶされた湖面が、月光を受けて薄白く
浮かび上がっている。
不意に、沼のほとりに佇む診療所を思い出した。
金村が診療所を離れたのは、落合の死の知らせを放送で聞いてしばらくしてからだ。
最後に見た彼の墓は――昇り始めた月の柔らかい光に包まれて、ひっそりと横たわっていた。
落合を埋葬したのは、それが「普通」だと思ったから。誰が埋められているか分から
ないままでいるのは、まるで犬か猫のようで「普通」じゃないと思ったから、自分なり
に知恵を絞って彼の墓標を刻んだ。
ただ、それだけの理由だ。そう、恐らくは。
もし自分以外の誰かが彼の墓を見付けて、そこに眠る者の名に気付いたら、墓参りを
してくれるだろう。
それが死者にとっての「普通」であるはずだ。
そうなればいいと思う。
物思いを止め、金村は立ち止まった。
やけに縦に長い人影が、向かいから近づいてくることに気付いたからだ。
「こんばんは」
横浜ベイスターズの、斎藤隆投手(YB11)だった。
「こんばんは」
まるで隣近所の住人とたまたま鉢合ったかのように、夜の挨拶を交わす。
「月が綺麗な夜ですね」
「本当に」
爽やかに笑う人だ。
「たまには夜の散歩もいいもんですね」
3メートル程の距離を置き、ごく普通の、穏やかな会話が続く。
ここに第三者がいれば、二人の不自然な程自然なコミュニケーションに疑問を抱いた
かもしれない。ここが死闘の場であることを忘れたかのような、平和な雑談。
「でも、こんな夜に出歩くのは危険じゃない?」
「それは、お互い様でしょう」
金村とは違い、斎藤はそんな疑問を挟む程度の自覚は持ち合わせていたらしい。
それでものんびりと小首を傾げた斎藤に、金村ものんびりと返す。
「まあね」
合点した、というように斎藤が一度、首を上下に動かした。
「でも俺は――連れがいるから」
心臓の裏側に強烈な衝撃が走った。
唐突に吐き気が込み上げ、金村は右手を口元に宛がった。
ゴポッ……とホースから溢れた水のように喉を這い上がってきたモノが掌を濡らす。
青白い月光の下でも、それは紛れもない鮮血だった。
「あ……」
手が震えている。
恐怖ではなく痛みや、失血による生理的反応だと理解できた。
声にならない声が喉の奥で渦巻く。
ゴポポッ……
意味のある言葉の代わりに、壊れた蛇口のように右手を赤く濡らす液体が零れ落ちた。
胃液と混じり合った血液は随分と粘着質で、どろりと指の間をこぼれたそれを、
金村は他人事のように観察していた。
状況を理解して、金村は目の前の男を見た。
斎藤隆の立ち位置は、先程から変わっていない。表情も、変わらず穏やかな笑み
を湛えている。
初めて出会った時から唯一変わっているとすれば――少しだけ、彼の足下に付き
従う影が短くなったことくらいだろうか。
月はもう大分その高度を上げており、長身で足の長い斎藤隆の影がこんな短足短身
なのが少し可笑しかった。
(なんだ、可笑しいのか)
笑えるだけの余裕があれば笑っていただろう。
死は恐くはない。
ただ、酷くつまらないものだと感じた。
(こんなもんか……)
金村は死後の世界を信じてはいない。
清水相手に、その場のノリで三途の川などとふざけたことを言ったが、当然その
ような幻想の産物の存在など信じてはいない。
信じてはいないけど人並みに墓参りもするし、先祖にも挨拶するし、神社仏閣に
行けば賽銭を投げる。
信じてはいないが……あまりにも呆気ないそれに拍子抜けする。
「銃を使うと、弾がもったいないですよ」
先程の会話の延長線のように、斎藤が話しかけてきた。
――否、金村に語りかけるようにしながら、その背後にいる何者かと話している。
「ナイフを使うと血が飛ぶだろう。ユニフォームが血で汚れると面倒臭い」
声は、すぐ首の後ろから聞こえた。
「それに、武器なら山程ある」
「さすがですね」
斎藤が笑った。月に感嘆したときと、同じ顔だった。
そこで背中を強く押され、ぐらりと身体が傾いた。地面が近づいたかと思うと、
すぐに頬に砂利が張り付く。
自分を殺した相手の顔が分からないのは不満ではなかった。どこかで聞いたこと
のある声だったが、思い出そうとは思わなかった。あるいは、思い出せるほど脳が
活動していなかったのかもしれない。弾丸に食い破られた心臓は、もう血液を体内
に循環させる機能を果たしていない。
まあ、こういうことも普通にあるのだろう。
人ごとのように彼らの会話を聞きながら、金村は独り納得していた。
暗い夜道の帰り、背後から突然通り魔に刺し殺される人間も、これまで世の中
にはごまんといたのだろうな、などと、的はずれな感想が思い浮かぶ。
――彼らが自分ほど己の死を達観していたとは思わないが。
死の恐怖なんてどこにでも転がっているものだ。
散歩中の町内の曲がり角でも。
球場帰りの車道の上でも。
見知らぬ孤島の道端でも。
『ここで死ぬことが俺は普通だとは思わない。多分これで死んだら、俺はめちゃくちゃ
悔しいと思う』
死の間際に浮かんでくる声が、大して今まで縁もなかった、遠いチームの先輩で
あることに苦笑する。
どれだけ悔しくても。どれだけ抗おうとしても。
(人の死なんて、簡単に訪れるもんなんですよ)
そう――簡単に。
こんな、一瞬にして。
(それでもあなたは「生きたい」と言い続けますか?)
そんな生き方も羨ましいな、と思った。
少しだけ。ほんの一瞬。
何故なら、死を受け入れて死ぬことは、辛くはないけど、別に嬉しくもないのだから。
(ああでも)
思い直す。
(それは俺の生き方じゃないから)
多分、生き方は、勝ちとか負けの問題ではないのだと思う。
正しいとか間違っているとか、そんな測り方は出来ない。
『ヘンなやつ……』
そう言いながらも、彼は自分を否定してはこなかった。
金村暁という人間の考え方を受け入れた上で、矢野輝弘は自身の生き方をぶつけてきた。
彼自身の思惑がどこにあったのかは分からないが、そういう人もいるのだと、受け
入れることを学んだのも確かだ。
教えたのはこちらなはずなのに、逆に教えられた気がした。
66人いれば、66通りの生き方がある。
誰かを否定する必要もないし、自分が正しい必要もない。
(ずっと馬鹿馬鹿しいと思ってた)
こんなゲームに巻き込まれて、人殺しになるのも。
こんなゲームに巻き込まれて、殺されたくないと脅えるのも。
(でもそれは、六十六分の一)
『俺は何が何でも生きるつもりで、生きるわ』
それも六十六分の一。
『だから俺は普通に生きます』
それも六十六分の一。
俯せに死ぬのはなんとなく普通じゃない気がして嫌だったので、金村は最後の力
で仰向けに身を転がした。
空に浮かぶ月は無表情に濃紺のスーツを着込んでいる。
見下ろしてくる顔は随分と冷ややかで、こんな孤島に転がる男の末路など気にも
とめていないようだった。
そのことを、今更悲嘆するような金村ではなかったが。
(まあ、別にいいさ)
月にとってはつまらない線香花火のような瞬きでも、その一つ一つの輝き方が違う
ことを知っているのは、自分たちだけでいい。
(まあ、いいか)
六十六分の一の生き方を貫いた自分を、誇らしく思っておけばいい。
(そういや、最期に、どんな顔しとけばいいんだろう?)
普通の生活をして普通に死ぬ人は、死ぬときどんな顔をしているんだろう。
(……ま、いっか)
とりあえず、笑っておくことにした。
「案外簡単だったな」
完全に事切れた金村を見下ろし、佐々木主浩(YB22)は淡々と感想を述べた。
最初の殺人計画は拍子抜けするほど簡単に成功した。もう少しくらい、抵抗される
かとも思ったのだが。
「何ヘンな顔してるんだ?」
「いえ、……」
死体を挟んで向かいに立つ斎藤が、神妙な顔のまま言葉を切った。
「気味の悪い死体だなと思って」
微笑っていた。
「そういえばそうだな……」
後ろから刺し殺されて笑いながら死ぬなどということがあり得るのだろうか。
単独で夜道をふらふらし、突然声をかけてきた不審人物にも警戒の色を見せなかった
ところからして、少し妙な男だったが――
(まぁ、どうでもいい)
死者の思いを知ることなど出来ないし、する必要もない。
そう割り切り、佐々木は一度、まだ硝煙の匂いの香る拳銃に目を落とした。
「…………」
マイクの内蔵されたそれを見つめていると、耳の中に入った銃弾が疼く気がした。
もちろん交信を取る気はない。
一人殺したら連絡を入れろとも言われていないから、放っておいても良いのだろう。
「行くぞ、隆」
「ハイ」
自己完結し、まだ不気味がっている斎藤を促す。
佐々木主浩は足早に、月光に晒される死体の側を離れた。
モニターに映る佐々木の顔に十三対の視線が集まり、やがて、溜息や呟きと共に
それらが外されていった。
「渡邉さん、佐々木に与えた物ですが、あれは……」
「無駄になるよりはいいだろう」
「すみません」
目を伏せて謝る。こっそりと鼻で息を吐き出し、滝鼻は各々に雑談を交わし出す
オーナー達の一角を一瞥した。
「あちらの意向には添えなかったが……まあいい」
「今後のことを考えると、悪くないでしょう」
先程の、些か期待はずれな一件に比べて、渡邉の機嫌が上昇傾向にあることを見て
取り、比較的楽観的な意見を述べる滝鼻。
「これはこれで面白い」
案の定、渡邊が顎をしゃくりながら同意してくる。
「彼らの期待に添える働きをしてもらわなければな」
佐々木の背中を最後に、室内のスクリーンが切り替わった。文字や数字が敷き詰め
られた黒い画面が広がる。
絶え間ない電子音と共に佐々木の欄の数値が勢いよく変化していた。
「ゲーム前の様子も流したのですか」
「当たり前だよ、全ての情報は開示しなければならない」
鷹揚に頷き、跳ね上がる数字に満足しながら、渡邊はにやりと笑った。
「ベッドはフェアじゃなければいけない。それがルールだ」
(…………)
内心の思うところはあえて口には出さず、滝鼻は話題を変えようと腕の時計を覗いた。
「ゲーム開始18時間で18人ですか」
「まあまあなペースだな」
正確にはまだ午前零時まで一時間以上ある。これ以上に死亡者の数が増える可能性
も十分に考えられる。
「良い具合にやる気になってくれてる奴らがいる。予想以上だ」
「数名、向こうの要望もあって細工を仕掛けた者もいますが、彼らがいなくてもゲーム
は進行したかもしれませんね」
滝鼻は率直な感想に、多少のリップサービスをつけて応えた。
「野球選手なんて肉体労働者はそもそも動物に近いからな。然るべき場所に解放して
やれば、本能とやらが蘇るんだろう」
普段から選手を蔑んでいる彼らしい台詞だ。
彼にとって選手とは、奴隷上がりの剣闘士と大差ない存在なのかもしれない。
ピピピピピピ――
佐々木の数値はまだ止まらない。
「なんですか? この数字は」
一人の老人が、手を上げて質問した。元阪神タイガースオーナー、久万俊二郎だ。
「説明したはずですが……」
「寝ていて聞き逃したんでしょう」
あきれ顔で滝鼻の台詞を奪い、渡邊は久万を見やった。
「今、このゲームは全世界に配信されている」
「誰が生き残るか――この、動いている数値が彼らの現在のベットです」
滝鼻が補足する。名前、球団、背番号、年齢、身長、体重……筋力やその他身体能力
などが事細かに数値として表されているデータ。その端で、細かく動き続ける数字がある。
「そういえば久万さんはまだ参加しておりませんでしたな」
渡邊が手元の画面に触れた。スクリーンが切り替わり、選手の顔写真、チームを表す
アルファベットと背番号が並ぶ。
久万俊二郎はというと、スタッフが隣に立ち根気強く説明したところで、一応は
理解したらしい。フンフンと携帯電話の使い方を孫に学ぶ爺のように頷きながら、
老人らしく痩せ細り節くれ立った指をふらふらと画面上に漂わす。
「じゃあ私は、金本に」
触れた顔写真が大写しにされた。ヤクザじみた風貌の、いかつい男だ。
ベンチプレス150キロを越える巨腕。三十代後半にして今だ衰えぬ身体能力と筋力――
金本知憲。元広島カープ、現阪神タイガースの四番打者である。
その回答に、渡邊がピクリと眉を上げた。気にくわなかった、というよりは意外
だったのだろう。
「確かにあなたのチームでは一番前評判は高かったが……」
顎をしゃくりながら、今までの金本の言動を脳内で再現するように斜め上方に視線
を与える。
「ゲームの進行状況を見る限り、戦意に欠けているようだが」
これに関しては、滝鼻も同意だ。別に彼が無謀な賭に出ようが滝鼻も渡邊も痛くも
痒くもないのだが、この老人がやっぱりゲームの主旨を理解していないのではないか
という一抹の不安が過ぎる。筋力番付ではない。
「いくら肉体的な強さがあっても、戦う意志がなければこのゲームでは生き抜けませんよ」
「なぁに単なる儂の勘ですがね」
欠伸をかみ殺し、久万は眠そうに椅子に背を埋めて応えた。
「この程度で終わるような男はちゃいますよ。彼はね……」
【残り49名 年俸総額106億9980万円】
出先から失礼します
金村暁(F16)死亡 【残り49人 年俸総額105億8380万円】
です。失礼しました
48人だ・・・
もちつけ、自分orz
乙です。
金村、金村ぁああぁぁ…
こんなに早く逝くなんて全く考えてなくて…
金村が・・・
生きていて欲しかったな
金村かっこいいな。
「絶対ゆるさない」とか血の気のおおいイメージが強いから
ちょっと受け入れがたい最期だな…金村(´;ω;`)
あとササ願チーム結成しててびびったw
金村ぁぁぁぁ!!!
439 :
代打名無し@実況は実況板で:2007/03/19(月) 16:14:25 ID:BbYEq4Ds0
なんか、金本さんへの意味深発言がひっかかるなぁ〜。
金村も仙台出身なのにな。
乙です。運営側の思惑が気になりますね。
差し出がましいようで申し訳ないんですが
>>428の11行目、
『後ろから刺し殺されて〜』というのは記述ミスでしょうか?
>>441 『後ろから撃ち殺されて〜』の間違いです
すみません
保守
職人さん乙です
おお、☆ファソの自分としてはこの二人怖いなw
個人的に琢朗にはなんとなく生き残って欲しい
生き残りそうなキャラじゃないけど
でも金村あああぁぁ・・・キャラがすごい好きだったよ・・・
HJ様死んじゃったのか… 好きだったのになあ
タカシとササキの感性にちょこっとズレを感じた
この二人どうなるのか気になる
保守
ササキ様はともかくタカシさんが怖い…
今岡佐伯コンビはこの二人をよく撃退できたなぁw
そりゃなんてったって天下のメカモナコンビですからw
布団ちゃんのおかげです
布団最強w
この二人が唯一の和みだ
そっと保守
ほしゅ
hosyu
保守
hosyu
【101】無痛病
「じゃあ、行ってきますね。放送には間に合うように帰ってきますんで」
扉の手前で立ち止まり、松中は心配そうにこちらを振り返った。
「……ああ。気ぃつけてな」
声をかけられたら、返事をするまで少し間を持たせること。何か別の考え事をし
ていたふりをすること。面を上げるときはのろのろと、億劫そうにすること。それ
以外は、できるだけ、顔をうなだれさせておくこと。――
扉が閉まり、松中の背が視界から消える。足音が十分遠ざかったのを確認し、立
浪和義(D3)はベッドに上体を起こした。足の痛みは、痛いなりに落ち着いたもの
になっている。首をこきこきと鳴らし、細く息を吐いた。
(これはこれでなかなか骨折れるなー)
最初のキャラクター作りが大袈裟すぎたかもしれない。片岡が死んでいたのを見
つけたときには、あまりの都合のよさに内心小躍りした立浪であった。が、福留ま
で死んでいたとは。おまけに、ドラゴンズの死者は判明しているだけで計五名。彼
らの名前が読み上げられて以降、松中はこちらが申し訳なくなる程気を使ってくれ
ている。
順風満帆。さすがの立浪も少し怖いくらいだ。
(うまくいきすぎや。そのうち頭垂れすぎて床にまでついてまうわ)
喉の奥で笑い、部屋を見渡す。電気は通じていたが、おおっぴらに点灯するわけ
にもいかない。布をかぶせて明度を落としたランプが一つ、床に置かれているのみ
だ。艶をうしなった床面に、埃が白く積もっているのがわかる。
(灯火管制みたいやな。まさに戦時中ってわけか)
立浪は、自分ひとりだけが高見の見物をしているような気分を味わっている。撃
たれた足のおかげで、わずらわしい「小久保探し」を手伝わなくてすむ。隠れ家も、
食べるものも、着るものも、滅入っているふりをしているだけで勝手に用意される。
それは、まるで仮病のような、後暗く甘い休息だ。
(でも、ただ演技してるだけってわけにもいかへんよな。後々のことも考えな)
腿の傷を刺激しないようにゆっくりと身を乗り出し、立浪はベッド脇の床に置い
たデイバックを引き寄せた。内ポケットのファスナーを引っ張り、手を差し入れる。
微熱に温まった指の先を冷やすのは、冷たい硬質の黒。
――グロック19。
その時、空気が破裂した。
左太腿の側面に肉を摘み取られるような痛みが走る。体中の熱がその一箇所に
引っ張られ、悪寒が代わりに全身を満たした。
「痛っ……」
撃たれたのだと悟った途端、立浪はこらえきれなくなった。地面に左膝をつく。
「すっ、すみません! 大丈夫ですか!?」
バタバタと駆け寄ってくるのは、西武ライオンズのユニフォーム――森慎二
(L11)だった。立浪の左腿に広がりつつある赤色を認めるなり、森は立浪の前に
飛び込むようにして両手をついた。
「ごめんなさい、すみません! 撃つつもりじゃなかったんです、ただ、いきなり
後ろから足音がしてびっくりして……」
土下座する森の後頭部と、さかさまになった背番号。
「どうしよう、どこか怪我の治療をできるとこありませんかね? 立浪さん、歩け
ますか? 無理ですよね、俺、背負います」
頭を下げたまま、森は矢継ぎ早にまくし立てる。動悸に合わせ、腿の銃創がズク
ズクと痛む。だが対照的に、立浪の胸中は不思議なほど静まっていた。撃たれたと
いうのに、不思議と憎しみは感じなかった。
(変な奴……撃ってきよったくせに土下座して謝るんか)
むしろ、森が申し訳なさそうにすればするほど、何故だか立浪は可笑しい気持ち
になる。
(殺し合いゲームで「撃ってごめんなさい」やって)
耐え切れず、立浪は声を立てて笑った。
「……え?」
森はぎょっとしたように顔を上げた。その目尻は真っ赤に染まっている。
「なんやお前、おもろいな」
立浪がそう告げたその時の森の表情は、なんとも筆舌に尽くしがたいものに覆わ
れていた。申し訳なさと、安堵、そして、訝しさ。森は口をわずかに開いたまま絶
句した。
「ええよええよ、別に怒ってへん。許したろ」
立浪が笑いをこらえながら告げると、森の表情がゆがんだ。泣き笑いのようだっ
た。
「……立浪さん、」
「そん代わりっちゃあ何やけど、コレ、俺が貰うわ」
乾いた音をたて、枯葉が舞い上がった。
森が放心した一瞬の隙を、立浪は見逃さなかった。森の支給武器――グロック
19――は既に立浪の手中に収められていた。
「え? ちょ」
「悪いなあ」
パァン!
発砲の反動が掌に堪える。立浪の手元は衝撃で大きく狂い、弾丸はあさっての方
向へ飛んでいった。
「え?」
森はぽかんと口を開けて正座したままだ。立浪は膝でにじり寄った。
「ごめんな、外したわ。もう一度や」
空気が破裂する。
「え? 嘘、」
もう一度。
森は、鮮血で染まった左胸に手のひらをあてた。そして、墨汁に浸した筆のよう
にたっぷりと血をはらんだそれを目の前にかざす。
「何、これ……? 熱……」
そのまま、どうっと仰向けに倒れた。糸を切り離されたマリオネットのような
あっけなさだった。
立浪は膝立ちのまま森の顔を覗きこんだ。
その死に顔に焼き付けられた表情は、恐怖でも憎しみでもなく、「疑問」だった。
――何で?
何故森を撃ってしまったのか、立浪自身にもよくわからなかった。森の断末魔と
同じく、それは「何で?」に満ちていた。森とて、何故撃ったのか、撃たれたのか、
よくわからないまま死んでしまったのだろう。
(俺にもようわからんわ)
人殺しをしたのに何故こうも落ち着いていられるのか。片岡や、福留らチームメ
イトの死に何故心を痛めることができないのか。あの時森に撃たれたのは足ではな
く、本当は心の方だったのかもしれない。
心が麻痺している。痛いはずなのに、痛いとも思えない。
いずれゲームが終わるとき、誰かを――例えば松中を殺す必要があったとして、
それでもやはり、自分は何の罪悪感も感じないのだろう。あんな善人を騙し、利用
するだけ利用して、終にこの銃を松中に向ける瞬間、自分は笑ってさえいるだろう。
立浪は目を閉じた。
記憶の視界を写真のように思い浮かべる。高校時代。試合前、早朝のグラウンド
で、まだ朝露の残る草を片岡と二人でむしったこと。ナゴヤドーム。投げる山本の
熊のような背中、どこかつかみ所のない落合、谷繁、井端、そして何より、自分を
慕っていた福留。
彼らは死んだ。片岡の死などこの目で確かめた。
傷ついているはずの心は、しかし、一滴の血も流さない。撃たれた足は絶え間な
く鈍い痛みを主張しているというのに。
(堪忍やで、みんな)
立浪は、何もない暗闇に向って銃を撃つふりをした。
(俺、泣けへんのや)
その時玄関から聞こえた物音が、つかの間の物思いから立浪を目ざめさせた。
(クソ、もう帰ってきたか)
放送ギリギリまであたりを探索すると言っていたわりに、ばかに早い。銃を仕舞
おうと慌ててベッドから身を乗り出そうとしたところで、太腿に強い痛みがうずい
た。舌打ちをしかけてやめ、銃を毛布の中に隠す。あとで機をうかがって改めて隠
せばいい。松中相手ならどうとでもなる。立浪は演技の仮面を急いで貼り付けた。
軽快な足音が部屋の前まで近づいてきて、そして止まった。コンコン、と扉が鳴
る。
(何や?)
妙な違和感を感じ、立浪は顔を上げた。ノック? 今さら何故? 普通に入って
くればいいものを?
「失礼します」
外から聞こえたその声は、松中のものではなかった。小久保のものでもない。
立浪は隠したばかりの銃を引っ張り出し、構えた。
扉の隙間から明かりが漏れたか、あるいは松中がこの家から出るのを見られたか。
とにかく自分の所在を知られた。相手の戦意、および武器の有無は不明――しかし、
油断すれば、死ぬ。
扉が開かれ、立浪の構えたグロックの先に一人の男が現れた。――西武ライオン
ズのユニフォーム。一瞬、森の亡霊かと思う。勿論違った。
「……こんばんは」
豊田清(L20)だった。明かりのよく届かない廊下に立っているせいで表情まで
は読み取れない。
「何の用や」
立浪はすばやく豊田の装備を確認した。左手にマグライト、肩にカバン、腰には
刃物を差しているが、臨戦態勢ではない。
「外で松中と会って、ゲーム壊しの手伝いとココの警備頼まれたんスけど」
『ゲーム壊し』。この男が松中と会って話をしたのは間違いなさそうだ。立浪の気
が一瞬緩みかける。
しかし豊田が部屋へ足を踏み入れた瞬間、明かりに浮かび上がったその表情は険
しかった。
「話が違うなー」
後ろ手に扉を閉め、それに寄りかかり、射抜くような目で豊田は続けた。
「なんで銃持ってるんすか」
【残り48名 年俸総額105億3980万円】
>>432>>2氏
残りの年俸総額について業務連絡です。
何度計算しても105億3980万円になったので、とりあえずはこう表記しておきます。
お手すきのときにご確認頂ければ幸いです。こちらが間違っていたら申し訳ないです。
職人さん乙です!
うわあああ…これはいきなりヤヴぁい対決になりそうだ
新作乙です!
立浪…銃を構えたのが裏目に出たな…
果たしてうまく切り抜けられるのか…
何でだろう、立浪が物凄く哀しいな。
職人さん乙です。
この展開はもしかしてもしかして…
>>465>>571氏
確認したところ105億3980万円でした。
紛らわしい間違いをしてしまって申し訳ありません。
今後かなり重要になってくる部分なので、訂正して頂いて助かりました。ありがとうございます。
>>470 いえいえ、以前はこちらがやらかしてしまったこともありますしw
こうやってフォローしあって頑張っていけたらいいですね。
住民の皆様、いつも捕手、感想ありがとうございます。励みになります。
職人さん乙です。
職人さん達のレベルが高すぎて新作が投下される度に涙腺が緩む
チームメイト殺された豊田ガクブル
立浪はほんとう悲しい子だな・・・いつ気づくんだろうか、気づかないんだろうか・・・
保守
保守
【102】魂が揺らぐとき
「何で銃持ってるんすか」
動揺するものと思っていた。
「立浪さんの支給武器、盗聴器だって聞いたんだけどなー」
嘘がばれたら普通、誰だって気まずいだろう。
「別に銃を持ってるのがおかしいとかじゃなくって、なんでそれ隠してたのかって
聞いてるんスけど?」
なのにどうしてこの男は。
「……何でそんなにヘーゼンとしてるんスか」
豊田の中で確立しかけていた犯人のイメージ。その首から上だけが雲散霧消する。
森に向けられた銃を持っているその腕。中日ドラゴンズのロゴ。続いて現れる顔は、
もう福留のものではなくなっていた。
(福留、疑って悪かったな。……井川、やっぱり推理なんて俺には向いてなかった
わ)
どうかしていた。灯台で井川に息巻いたとおり、信じるべきは直面した相手の肌
から読み取る己の直感だ。
「俺、まだるっこしいの嫌いなんっすよ。単刀直入に訊きます」
人間には魂がある。ほんとうのことを指摘されたとき、人間の魂は揺らぐ。魂が
揺らげば、おのずと分かる。
「森を殺ったのはアンタだな、立浪さん」
一。二。三。
「……バレてもうたか」
たっぷり三拍おいて剥がされた能面の下で、立浪が表情をゆがめた。
「てめえ!」
持ち物をすべてかなぐり捨て、豊田はドスを抜いた。「何で殺した!」
「勘違いすんな、撃ってきたのはあっちが先やで?」
立浪はしっかりと銃を構えたまま、毛布をめくりあげた。太腿に巻かれた布に血
が滲んでいる。
「わかるか? 森が撃ってきよったんがこの傷や。殺されるよりはと思ってやり返
した。そしたら死んだ」
「森が……?」
「せや。正当防衛は無罪――おまえかて、それくらい知っとるやろ。そんなもん仕
舞え。俺はこれ以上無意味な殺し合いなんてしたない」
立浪の列挙する事実の一つ一つに、目の裏側で赤い火花がバチバチと爆ぜる。合
点はいく。論理的にはすべてつじつまが合っている。正当防衛くらい知っている。
頭ではわかる。
だが。
「うるせぇ!」
小さなスツールが派手な音を立てて部屋の隅へ転がっていった。向う脛に鋭い痛
みが走り、それを蹴り飛ばしたのが自分だと知る。
「ンなこと知るか! 俺は何が何でも森の敵を討つって決めたんだよ!」
「敵討ち? 何や、お前こそ話が違うやないか」
立浪はあくまで穏やかに続ける。
「お前さっき、松中の……俺らのゲーム壊しに協力するって言うたやないか。敵討
ちするやなんて、ちゃんと松中に言うたんか? 敵討ち言うたら聞こえはいいかも
しらんけど、自分の意志で殺る以上、好き好んで殺しまわっとる連中とそう変わら
んで?」
目の前が真紅に染まる。ドスの柄を握り締める豊田の指が真っ白に染まる。
「違う! ……違うッ!」
(違う、そうじゃない、俺が思ってるのはそういうのじゃない!)
元気だった頃の森の面影と、あの死に顔が赤い脳裏にせわしなくフラッシュバッ
クする。――森が先に立浪を撃った? 知るか、そんなことどうでもいい。あのバ
カ、なんだってそんなバカな真似しやがったんだ、なんで死ぬんだ。なんでお前が
こんなところで死ななきゃなんねぇんだ。俺はお前にいったい何をしてやれるって
いうんだ。復讐くらいしか考えつかなかったのに、復讐だってただの人殺しと変わ
らない? この感情も、そこらの殺人鬼と同じ――?
(違う、違う……!)
豊田は唇を小刻みに震わせ、絶句した。
この遣り場のない想いを、うまく言葉にして伝えられないことがもどかしかった。
「……慎二……」
口にできたのは、ただ、その名前一つだった。
「でもな、豊田」
立浪は銃を毛布の上に置いた。こちらを見ている。豊田はわずかに顎を上げた。
「お前の気持ちは、俺にもようわかる」
そう言ったところで、立浪は腹を据えたような面持ちで腕を組んだ。
「俺を殺してお前の気がすむんなら、殺してもかまへん」
すうっと、首筋が冷えた。
「正当防衛やろうが何やろうが、俺が森を殺したことに変わりないからな。俺を殺
してお前が満足するなら、やったらええ。俺も親友やら後輩やらみんな死んでもう
て、正直もうアカン。悲しいとか、そんなことも思われへんようになった。こんな
抜け殻が生き延びるのも何やしな、やりたいならやったらええ」
立浪は逆向きに銃を取り上げ、豊田へ差し出した。
「森の銃や。これで敵討ったらええ。森が満足するかどうかはわからへんけど」
震える手を伸ばし、豊田は銃を受け取る。ひんやりと黒光りする銃身の側面に、
弱いランプの明かりがにじんでいる。――この銃で森が殺された。
「撃て、豊田。帰ってきたら松中は驚くかもしれへんけどな。俺がやってしまった
ことやからしゃあない。松中にもよろしゅう伝えとってくれ」
なおも震える上腕。照準がぐらぐらと定まらない。立浪が手を伸ばして銃身をつ
かみ、銃口を自身の左胸へあてた。――何を怯んでいる。俺は復讐するんだ。復讐。
……復讐?
「心臓や。このまま撃て。――俺が殺したねんぞ。森の敵はこの俺やぞ」
――森。慎二の敵。
「撃て!」
――――
全ての音が掻き消えた。
豊田の人差し指にかかった重みとひきかえに、立浪の体が大きくバウンドした。
「殺した……?」
ベッドの上で仰向けになったまま、立浪はぴくりともしない。当たり前だ。心臓
を至近距離から撃ち抜いたのだ。撃ったのはこの自分だ。
「これが……復讐?」
いつしか汗まみれになっていた手から、絡みつく蔦をはらうようにして銃をもぎ
とった。かしゃん、という軽い音が床板を震わせる。
激情は静まっていた。否、さっきまで心の真ん中に通っていたふとい芯のような
ものが、そっくり抜け落ちてしまったような感覚だ。
これが、復讐?
豊田はふらふらと立ち上がった。立てる。胸に手を当てた。筋肉の板を跳ね上げ
る鼓動はちゃんと感じられる。でも、何かが――何か大切なものが――
ベッドで大の字になっている立浪にもう一度目をやった。動かない。スパイクの
つま先が何か硬いものを蹴った。見ると、落ちていたのは短ドスだった。拾い上げ
る。ついさっきまで握り締めていた柄はびっくりする程熱かった。
さっきまでの自分と今の自分は、あらゆる意味で温度の違う生き物になってし
まった――?
<復讐は、おすすめしませんよ>
今の今まで耳に逆らっていたあの忠言の真意を、たった今思い知った。
(井川……)
でも、遅すぎた。
(俺、間違ってた……?)
豊田はあの灯台を思い浮かべた。夕日に赤く染まる円筒形と、その奥にきらりき
らりとたゆたう水面を。自然と、足が部屋の出口へと向った。
(井川、俺やっぱ、間違ってた?)
なあ、教えてくれ、井川。俺は――
パァン!
その時、空気が破裂した。
何が起こったのかわからず、豊田は眼前に迫りくる扉の下桟だけを見ていた。
「形だけでも復讐できて満足したやろ?」
降りかかった笑い声。
「おまえらみたいな奴は扱いやすいし、騙しやすいわ。ちょっと落として持ち上げ
たったら思うツボやないか。張り合いないなあ」
左胸が熱い。豊田は肘で床を押し、首をもたげて振り返った。
「なん……でだよ……」
「お前、俺の支給武器は知ってて、松中の支給武器は何か聞いとらんのか」
立浪はグロックで自らの胸をぽんと叩いた。その仕草。さっき松中がしたものと
同じ仕草。
「松中の防弾チョッキなあ、ご親切に二つ入っとったんやで」
デイパックを拾い上げ、立浪はそれを肩にかけた。
「お前おかしいと思わんかったか? あのお人好しが、手負いの俺を丸腰で……も
ちろん、松中は俺が銃持ってるなんて知らへんからな、武器も持たせずに置いてく
なんてするわけないやろ。ホンマに知らんかったんか」
「てめ……騙し……」
「まあ、おかげで俺は助かったわ。防弾チョッキなんか、胴以外狙われたら意味あ
らへん思ってぜんぜん期待してへんかったけど、ものは使いようやいうこともわ
かったしな。味方失うのも痛いけど、また他の誰かを騙せばええことやし。でも、
次は松中みたいに何でもペラペラ喋るようなやつはごめんやな」
喉の奥から熱い血液がこみ上げてくる。ぐらつく視界の向こうで、白い何かが端
に寄せられた。次に、潮の匂いがした。立浪はいつの間にかバルコニーに立ってい
る。
「……待……て、こ、の……!」
血を吐きながらはいずる。短ドスを握るのは右手、左肘で床を押して体を乗り出
し、右膝で床を蹴る。
立浪は豊田を振り返った。
「――そんなに俺が憎いか」
その問いかけは、豊田の耳には入っても、もはや頭の中にまでは溶け込まない。
体中の血液をぶちまけながらそれでも必死に自分を追ってくる男を見、悪魔の表情
が、一瞬だけ、とうとう――揺らいだ。
「……俺は、お前が羨ましいわ」
そして、すぐに悪魔の笑みに戻った。
「ほなな」
ひらり。と、カーテンが舞う。
その向こうに残ったのは、漆黒の闇ばかりだった。
(……気づけよ、松中……立浪は……騙され……)
血で描かれた豊田の軌跡。
その凄絶なダイイングメッセージの先端で、一つの魂が潰えた。
「立浪さん! 豊田さん?」
銃声を聞きつけ、その体格に似つかわしくない速度でログハウスに駆け戻ってき
た松中信彦(H3)が扉を開けたとき、そこは妙に静まり返っていた。部屋を出ると
きには点いていたはずのランプが消えている。何も見えない闇の中、正面から吹き
つける潮風が窓の開いていることを教えていた。
「立浪さん、豊田さん、」
ぴしゃり。踏み出した足もとで何かが跳ねる。松中はマグライトのスイッチを押
した。
「な……」
松中は膝をついた。骨と床のぶつかり合う鈍い音が響いたが、もはや豊田は反応
を示さなかった。
豊田は死んでいた。死してなお何かを追いかけはいずるようにした右手に握られ
た短ドスは、カーテンの揺れる窓にまっすぐ向けられている。
もぬけのからになったベッド。その奥の窓の外へと向けられた殺意。ここまで鮮
烈に見せつけられて何もわからないほど松中は愚鈍ではない。
「俺のせいか……?」
呆然と吐き出された言葉が、血潮の風に乗った。
【豊田清(L20)死亡】
【残り47名 年俸総額103億980万円】
【103】TOWER
22時。
それはほんのかすかな物音に過ぎなかったが、安っぽい虚勢を揺るがすには十分だった。
井川は椅子を蹴立てて螺旋階段を駆け上がる。回転上昇と跳ね返る自分の足音に酔い始めた頃、灯台の展望部へ出た。
地上30メートルから見渡す島は、月明かりを受けても尚暗い。
航海のしるべとなる筈の大きなランプは光を燈さず、井川の背後でただ沈黙を守っている。さっき機関室を隈なく調べてみたが、どうしても点灯しないのだった。
井川が好む方の『ゲーム』で言えば、まだフラグが足りないということになるが、それが何であるのかも未だ見えなかった。
今は風景に目を凝らす。
東側の海と岩場。まばらに建つ幾つかの小屋。遠くの高台は確か公園だ。中央の低い山の後ろにはあの偽物の東京ドームが隠れている。
森の影の向こうからぼんやりと白く立ち上る、あの煙がそうだろうか。あの爆発音―――爆発音に聞こえた、遠くからの振動は。
特定する事もままならず、できた所でどうにかなる距離でもない。それが分かってしまうと、たった今まで急いていた気持ちがあっけなく萎んで行く。
ため息をついて、コンクリートの手摺に額を乗せた。じんと響くほど冷たい。
それでも治まらずに燻り続ける火がある。豊田をあのまま行かせた、今更のような後悔。
『魂が揺らげば、自ずと分かる』。面白いことを言う人だ。もう少し話してみたかった。だから―――無事でいて欲しい。
そんな願いは身勝手で子供っぽく、滑稽だと思う。心配ならついて行けばよかったじゃないか。
寂しいだけだ。
あの人も、あの人も、死んでしまった。
別れの言葉を交わすこともできず、その死だけを告げられるという理不尽さ、人が次々と死んでゆく現実の重さに耐えかねた、これはただの感傷だ。
「しょーもな…」
冷静な判断の邪魔になる。
そう言い聞かせても揺らぐ部分があった。15人もの死を見過ごして、一体何の為の冷静だというのか?
死者の名が口をついて出そうになるのを堪え、代わりに苦い息を吐く。もう自分の慰めの為に呼んでいい名ではなかった。振り切る為に、もう一度顔を上げた。
目の前の闇がざわざわと蠢いているように見えた。そこに何か呟く声が混じるような。
それは吹き付ける風の所為か、静まらぬ心の所為か。
(……?)
今、何かを見たような―――いや、あるべきものが見えなかった、か?どちらとも言えない奇妙な引っかかりがあった。
もっと良く見ようと身を乗り出しかけた時、ぎぃ…と鉄扉の軋む音がした。
続いてゆっくりとコンクリートの床を踏む足音。
もしや豊田が、と階下を覗き込もうとして、そこで立ち止まる。
気配がおかしい。
井川はじっと耳を澄ませた。
言葉に出さずとも知れてしまう空気というものは、確かにある。それを井川は試合中、打者との対峙で何度も経験していた。矢野によればそれが投手の勘なのだと言う。豊田が言う「魂」には、その意味もあるのだろうと解釈していた。
その経験則から言って、冷たいものが足元から這い上がるようなこの感じは――――少なくとも好ましくない。
「誰ですか」
短い呼びかけは塔の中を跳ね返って落ちて行く。と、下の空気が大きく乱れた。
次の瞬間、鋭い銃声が塔の上までを貫いた。
硬い足音が残響を踏んで螺旋階段を駆け上がる。
井川は身を翻した。窓際に大蛇のように蹲るロープの塊があった。シミュレーションを1秒で済ませる。多分行ける。
「…うっし」
その端を手摺にくくりつけると、残りを外へ放った。一抱えもあるロープがばらりと解けて外壁に垂れ下がる。
長さは十分。ささくれ立つ感触がふと気になり、ジャンパーの袖で掌を包んでからしっかりと掴み直す。
さようなら短い安息。適当に狭くて居心地の良かった居室に胸の中で別れを告げ、井川は手摺の上に立ち上がった。
「降下」
ロッククライミングの経験者が見たら血相を変えて止めに入りそうな体勢で、とん、と一足。
落下の感覚が思いの外怖い。あわててロープを握り、足で外壁にブレーキする。見上げると15m程落ちていた。
再び跳躍しようと腹に力を込めたその時、バルコニーから足音が降ってきた。
はっと見上げた手摺に人の頭が覗いた、と思うや否や、2発目の銃声が肩スレスレのところを飛んでゆく。
思わず身を竦めた瞬間、海側からごぅ…と風の音が届いた。あっと思った時には、井川の体は突風に煽られ宙を舞っていた。
これは終わったかもしれない。ほんの一瞬の筈の、妙に鮮明な光景を眺めて思う。
青く透き通る夜空、風に踊るロープ、光る海、月明かりに黒々と浮き上がる灯台の影、それらがぐるぐると回って――――
骨が折れる音にしては数が多い。細い木の枝だ、と気づく。
低木か何かの茂みに落ちたようだった。
落下が止まっても井川は起き上がれなかった。やっと一度だけ上げた目線の先に、びっくりするほど遠くなった灯台が見えた。その方向から何か叫ぶような声がする。
悲鳴なのか高笑いなのか、風に歪められて分からないものを聴きながら、井川は気を失った。
【残り47名 年俸総額103億980万円】
うわあ、ごめんなさい、ボーっとしてたら投下用の改行入れ忘れてたorz
ごめんなさいごめんなさい
乙です。
豊田ー!!!
マーダー立浪の今後も気になる。
職人さん乙です!!
ああ…どっちかが死なないと収まらないだろうと思っていたがやはり豊田か…しかも豊田と一緒に騙されたorz
そして井川がどうなるのかも23しく気になる
新作乙です。
豊田…結局森と同じ結果になってしまったか…
井川を襲ったのは誰なんだろう…
489 :
代打名無し@実況は実況板で:2007/04/01(日) 19:15:41 ID:PgZATatt0
と、豊田さん・・・・。
豊田のファンでもなんでもないのに涙がとまらない
松中はこれからどう動くんだろうか。
ほっしゅ
保守
☆ゅ
ほす
保守
保守
498 :
代打名無し@実況は実況板で:2007/04/07(土) 01:19:53 ID:7ds7LU9e0
あげ
捕手!
500 :
代打名無し@実況は実況板で:2007/04/09(月) 01:13:10 ID:6v2rTnQB0
ほしゅがてらネタふり
おまいらの好きな台詞教えてください
桧山の「お二人が殺し合いしとったら、さすがの俺も誰も信じれんくなるところでしたわ」かな。
ずっとそのままのキャラでいて欲しいな、桧山…
佐伯(吹っ飛んだ!)
布団が
布団が吹っ飛んだで笑う日がくるなんて…
【104】Wheel of Fortune
六畳の和室に石鹸の香りが立ち込めている。
水道は機能しなかったが、昼間に井戸から汲んできた水が残っていた。思えば、
ユニフォームを手洗いしたことなどなかったかもしれない。泥汚れを想定して洗濯
しやすい生地が使われているユニフォームだが、果たして血と体液で汚れることも
勘定済みだったのだろうか。冷たい水でもあんがい綺麗になるものだ。
梁に引っ掛けたユニフォームのすそに手を触れた。ほとんど乾いている。やがて
持ち主が起きたら着てもらえるだろう。
『IWASE 13』
電熱器の赤い光に浮かぶその背番号を、川上憲伸(D11)は初めて見るもののよ
うな気持ちで眺めた。マウンドに君臨するとき、それは無慈悲な守護神になる。マ
ウンドを離れると、それは親友になる。親友は、この背番号を身につけていないと
き、一人の素朴な人間になる。人見知りで、ストレスをためやすくて、着る服ひと
つ自分で選べなくて、一度も愛知を離れて暮らしたことのない親友。年上なのに年
上とも思えない内気な親友。
あれから六時間。岩瀬は目覚めない。
六時の放送が終わるか終わらないかという時近くの森から聞こえた悲鳴に、川上
は確かに覚えがあった。聞いたこともないような絶叫だったが、他ならない岩瀬の
ものだとわかった。
<俺を、殺してくれよ>
ぞっとする。岩瀬を見つけたのが自分でなければどうなっていただろう。例えば
石井琢朗だったとしたら。ためらいもなく福留を撲殺した石井だ、間違いなく殺さ
れていただろう。いや、あのまま誰にも見つけられなかったとしても岩瀬は死んで
いたかもしれない。地図で確認するまでもなく、岩瀬が座り込んでいたあの場所は
禁止エリアぎりぎりだった。
(俺達は、まだ見放されていない)
川上は改めてそう思った。マウンドで川上から岩瀬へと繋ぐ勝利の方程式。バラ
バラでは意味がないのは、今だって同じだ。自分と岩瀬を引き合わせてくれた運命
に感謝した。まだ勝利への道は閉ざされていない。
やがて音楽が鳴った。『野球場へゆこう』。川上はペンを取った。
『お待たせいたしました。第三回、定時放送をお知らせいたします。
1日目18時より、2日目0時現在までの死亡者――
福岡ソフトバンクホークス 柴原洋 背番号1 1億5000万円
福岡ソフトバンクホークス 大村直之 背番号7 1億1600万円
西武ライオンズ 豊田清 背番号20 2億3000万円
北海道日本ハムファイターズ 金村暁 背番号16 1億6000万円
以上 4名 総額6億5600万円
これによりまして、残り47名。現在の年俸総額は、103億980万円となり
ました。
続いて、禁止エリアの発表を行います。
2時30分 B−5
2時30分 B−5
該当するエリア内で行動中の参加者は速やかに移動して下さい。
次の定時報告は、午前6時を予定しております。
皆様の御健闘をお祈りします』
読み上げられた名前に傍線を引き、地図に時刻を書き込む。岩瀬の分にもチェッ
クを入れておこうと目を上げたとき、川上ははっとした。
岩瀬の目はいつしか見開かれていた。
「目、覚めましたか」
黒目をくるりと動かして、岩瀬は川上の姿を認めた。
「放送がきこえたから」
掠れ声で言うと、岩瀬は何かを思い出したふうに飛び起きた。慌てて何かを言お
うとし、同時に何かを見つけて、やめた。視線を辿る。それは吊るされた岩瀬のユ
ニフォームだった。山本の腹部に包帯代わりに巻かれ、血みどろになっていたユニ
フォーム。――
「昌さんも運んできてくれたんだ?」
「はい。隣の部屋に――」
川上は、少し迷って、こう付け加えた。
「孝介と、井端も一緒に」
岩瀬は、ほっとしたような哀しそうな顔をして「そう」と呟いた。そして、
「憲伸、ごめん」
その視線を膝に落とした。
「いいんスよ」
川上は岩瀬の枕元に腰を下ろした。「でも、ま、さすがに四人も運ぶのはしんど
かったっすけど」
できるだけ神妙にならないように努め、川上はぐきぐきと肩を鳴らしてみせた。
「ごめん」
だが、岩瀬の横顔は対極のもの憂さに沈んでいた。
「……だーかーら、気にしないでいいっすから。距離もそんなになかったし、第一、
二人いっぺんに運ぶわけじゃ」
「そうじゃなくて」
岩瀬は静かな声でさえぎった。
「殺してくれとか、みんないなくなったとか言って、ごめん」
川上は言葉を飲み込んだ。
「生きてる意味ないとか言って、ごめん」
赤っぽいオレンジに染まった障子に、二つの黒い影が伸びている。
「放送聞いてさ、頭、真っ白になったんだよ。昌さん冷たくなってるし、じゃあ今
呼ばれたみんなも死んだんだって思ったら、どうしていいかわからなくなった」
川上は、あの森の中で岩瀬を見つけた時のことを思い出していた。「俺を、殺し
てくれよ」「俺の投げてたドラゴンズは死んだんだ」――岩瀬の口からそんな消え
入りそうな台詞を聞くことになるなど、川上は考えてもいなかった。内気と弱気は
似ているようでまったく違う。
「バカだよなあ、俺。お前も野口も立浪さんも、まだ生きてんのにさ。なんか、バ
カだよなあ。なんで一人になったって思ったんだろうな」
そこまで言い、岩瀬は少しだけ喉を引きつらせ、それでも続けた。
「けどさ、昌さん、冷たかったんだよ。俺知らなかったんだよ。昌さんがあんなに
冷たくなるなんて知らなかったんだよ」
川上は思った。自分も忘れられないだろう。死んでしまったものがいかに冷たく、
意志のない体がいかに重く背に圧し掛かるかを。――それがいかに孤独を痛感させ
るかを。
「もう、いいですから」
ようやく言葉になった。
「やっとこうして合流できたんだし、もういいですから。今はとにかく生きて帰る
ことだけ考えましょうよ」
泣きたいような気持ちを振り払うように、努めて明るく川上は続けた。
「ただし、もう二度とあんなこと言わないって約束してくださいよ?」
「……わかった。約束する」
袖で目元をぬぐい、岩瀬は弱々しく微笑んだ。声は力強かった。
笑い返しながら、川上は考えた。
(まあ、込み入った話は明日でもいいか)
岩瀬から聞かなければならないことはたくさんある。一つに、山本は誰に殺され
たのか。夕方聞いた「俺には復讐なんてできないし」という言葉の背景を確かめた
い。そして、福留を死に至らしめたのが石井だということ、井端の遺骸を見つけた
ときのこと――気がめいる業務連絡は山ほどあるが、今は見送ろう、川上はそう決
めた。やっと冷静さを取り戻せた岩瀬を再び揺るがすのは避けたい。
それに、問題なのは「誰が殺したか」ではなく「誰が危険なのか」。最優先すべ
きは、生き残ることだ。生き残ることが勝利だ。復讐など眼中にもないのは川上も
同じことだった。オーナー達への復讐ならば話は別だが。
――とりあえずは無難そうな業務連絡から。
川上は山本のデイパックから手のひら大の黒い箱を取り出した。岩瀬の目の前に
差し出す。
「何これ」
川上にとっては意外な反応だった。
「知らないんですか? これ、昌さんの支給武器みたいなんスけど」
「いや、知らない。武器なんか必要ない、って昌さん言ってたし」
山本らしい。そう思いながらも、中身はどうしても気になる。いかにも宝石が
入っていそうな箱だが、サイズも重みも宝石にしては大きすぎるような気がする。
「……開けてみますか?」
「うん」
疲れのピークに達していた川上が沈むように就寝した後、岩瀬はその隣室で三人
の遺体を見下ろしていた。
井端、福留、山本。
川上が発見した順に並べられ、顔に白いタオルをかけられた彼らは、しかし、も
う同じ温度まで冷え切っていた。岩瀬は彼ら一人一人の枕元に膝をつき、その体に
触れた。
(俺はこの冷たさを忘れない)
ボールの縫い目を確かめる真剣さで瞑目する。決して忘れない。死んでしまった
もののこの冷たさを忘れない。川上をこんな冷たいものにしてたまるものか。
(俺は一人じゃない)
一人ではない。守るべき、そして守ってくれる存在がいる。それは何と有り難い
ことだろう。彼を喪ってしまったら、自分は今度こそ狂ってしまうだろう。
岩瀬は最後に山本の顔にかけられたタオルを捲った。そこにあったのは、変わら
ず安らかな表情だった。
(……昌さん)
彼が遺してくれたもの。
込み上げそうになったものをやり過ごし、岩瀬はポケットに収めたバングルを取
り出した。
――『Wheel of Fortune―運命の輪―』……?
――説明書とかは?
――ない。このカードだけ。
――タロットカードってやつっすかね?
――よくわかんないな。まさかただのバングルってわけでもないよなあ?
――とりあえず一つずつ持っときますか?
箱から出てきたのは、まったく同じ銀製のバングルが二つだった。何の変哲もな
い装飾品。しかし、まだ装着する勇気はない。それは二人に忌まわしい枷となって
いる首輪を連想させた。不用意に着ければとんでもないことになるかもしれない。
説明書がないのは本当にただのバングルであるからなのかもしれないが、思わせぶ
りに同封されていたタロットカードがどうもひっかかる。「運命の輪」。そのカー
ドの持つ意味は?
(それに、二個セットってのもひっかかるんだよなあ……)
山本の顔にタオルをかけ直し、立ち上がる。どうして二個でなければならないの
だろう? 二つあって初めて出来ること。二つでなければ意味がないもの。
(……あ)
二つでなければ意味がないもの。
(通信――!)
確かめてみる価値はありそうだ。もっと明るい場所でよく調べれば、ごく小さな
マイクが埋め込まれているのがわかるかもしれない。最近の通信機器には米粒より
も小さいものもあると聞く。そう、例えば盗聴器とか――川上の持っているもう片
方とマグライトを求め、岩瀬は『運命の輪』を手にしたまま廊下に出た。
きんと冷えた床が足の裏に痛い。なんとなく、背にした玄関を振り返った。
冷気がつま先から一気に全身を貫いた。
(――誰かいる)
ガラス張りの引き戸の向こう、玄関のすぐ外に黒い人影があった。
今夜のような明るい月夜でなければ見逃していたような、でも確かに人の形をし
た黒い塊が、ぼこぼこと厚く、向こうをよく透かさないガラスの向こうに揺れてい
る。
迷わず腰に携帯していた麻酔銃を手にする。いつでも撃てるようにと、さっき
セットしたばかりのダートを確かめる。
殺傷能力のない武器でよかった。もう躊躇はしない。殺されてたまるか。あいつ
を殺されてたまるものか。
引き金にしっかりと指をかける。壁に張り付くようにして、岩瀬はその瞬間を
待った。
がらり。
鍵の掛かっていなかった引き戸が開き、四本の指がのぞいた。
(今だ!)
確かな命中の手応えがあった。ユニフォームに身を包んだ訪問者がゆっくりと崩
れ落ちる。声一つ立てなかった。岩瀬の予想より小柄だったその男は、手にしてい
た銃を取り落とした。見るなり、岩瀬はそれを廊下の奥へと蹴り飛ばした。全身が
心臓になったようにドクドクと音が鳴り響いている。
訪問者はまったく動かない。
意識を失ったと見極め、次に岩瀬は何者かを確かめようとした。
「どうしたんスか!」
物音で起こされたらしい川上が部屋から飛び出してきた。岩瀬は、うつぶせに
なっている男を慎重に抱え起こした。
ひっくり返したその男の顔は、なぜだろうか、煤に汚れて真っ黒になっている。
二人は顔を見合わせた。
二岡智宏(G7)だった。
【残り47名 年俸総額103億980万円】
511 :
代打名無し@実況は実況板で:2007/04/10(火) 20:26:12 ID:H/cP7XY40
うわわ、二岡さんだって!!??
お二人、気をつけてください!
職人さん乙!
これまた緊迫感漂う取り合わせだ…
のぐちんと立浪が岩瀬の頭から忘れ去られていなくて何よりw
職人さん乙です!
あれ、井端を殺したのって…
乙かれさまです!
二岡キター!
川上&岩瀬コンビは好きなだけに続きが気になる
うわー憲伸と神だけはラストまで残って欲しいのによりによって二岡・・・orz
岩瀬の言葉を意外と重くうけとめてた憲伸がなんだか切ないな。
ふたりには最後まで生き残って欲しい。
(ヽ`_´)ノ○ ○ヽ( ゚ー´ )hosyu
517 :
代打名無し@実況は実況板で:2007/04/13(金) 02:01:46 ID:fZvvyabq0
あ
捕手
>>516 運命の輪かw
意味は転落、好転、どちらで使われるんだか・・・
お絵かき掲示板にも神と髪w
『真夜中の報せ』
それは、ゲーム開始のコールから約18時間後。
東経135゜の子午線を基準にして午前0時に差し掛かろうという時間だった。
東出輝裕(C2)の携帯電話が盛大な着信音を鳴らしたのは、すでに彼が浅い眠りに
くるまっている時だった。
耳慣れた音が睡魔の巣から己を引き上げる。実に不快な目覚めに頬を叩かれ、
東出は眉根を寄せた。
夜中なのにマナーモードにしていなかった。明日は自主トレで球場に向かうため、
午前中に起きるから、アラームをつけていたのだ。せめて着信音くらいはサイレント
にしておけば良かったと東出は後悔した。
「……誰だよ」
半ば切れながら、布団の中から手を伸ばし、枕元の携帯を乱暴に拾い上げる。
「ハ――」
「ひがしでーーー!!」
計測したら何フォーンくらいだろうか。携帯越しに叫ぶには少々常識を逸した声量
に、東出は寝ぼけた頭を貫かれた。
「新井さん?」
広島カープの先輩選手、今季ホームラン王に輝いた新井貴浩(C25)だった。
携帯を耳から離し、ぎゃあぎゃあと何やらまくし立てる新井の要領を得ない言葉
を頭の中でまとめる。眠気は一瞬で吹き飛んでしまった。
「金本さんと連絡が取れない〜?」
聞き返すと、受話器越しに激しく頷く新井の気配を感じた。
(やっぱり金本さん絡みか……)
壁に枕を立てかけてもたれ、東出は後頭部を掻いた。
彼がこんな夜中に泣き喚きながら電話をしてくる理由など限られている。敬愛す
る兄貴分のことになると見境をなくす彼に付き合わされるのは、日常茶飯事とまで
はいかないが、決して珍しいことではない。
彼の話を要約すると、金本は今日、在阪局での番組収録が終わり次第、新幹線で
広島に一時帰省する予定だったのだという。
当然その際に会う約束をしていた新井だが、いくら待っても連絡が来ない。こちら
から連絡しても繋がらないというのだ。
金本はいい加減だが、約束を破るような男ではない。それに、やむを得ず行けなく
なったのなら連絡の一つくらいはよこすだろう。
携帯を忘れたのか、何か急用が出来たのか、考えた末、新井は兵庫の自宅の方にも
電話をかけた。
が、電話に出た奥さんは旦那は予定通り番組収録のために局に向かったと言う。
どうやら携帯もちゃんと持って行っているようで、家にはないことが分かった。
いよいよおかしい。
テレビ局にも電話をかけた。最初はおざなりに追い返されたが、新井がしつこく
電話をかけると、とうとう相手も訪問記録を確認してくれた。収録時間前に訪れ、
収録後に帰った記録が確かに残っていると伝えられた。
「ほっ……ほんどうはぎょういっじょにメジ食うよでいだったのに……」
鼻声で濁音が混じっていて実に聞き取りにくい。
いい大人が泣き喚くな、と言いたいが、彼にとっては一大事だ。もちろん、東出
だって見知った人間が行方を眩ましたというのは気持ちが悪い。この時間まで一人
で必死に探していたのかと思うと、少々かわいそうな気もした。
「すっぽかされたってわけですか」
同情しているにしては配慮に欠けた。
単刀直入な感想に、新井はさっくりと傷付いたようだった。受話器の向こうに
しばらく沈黙が落ちてから、気を取り直したように再び話し出す。
「ジッ……ジムにもさっき直接行って聞いたんじゃが……っやっぱり今日来るって
言っとったのに来とらんって……!」
こんな夜中に直接来られたらジムも迷惑だろう。
「じゃけぇ心配で心配で……ぐすっ……びーっ」
「ちょ……っ鼻噛むなら携帯から離れてくださいよ!」
不快な音が耳元で聞こえて顔を顰める。
「あっ……あ兄貴……何でワシに連絡してくれんのじゃーっ!」
「捨てられたんじゃないですか」
「あqwせdrftgyふじこlp;!!!」
何やら声にならない声を上げる。
いい加減錯乱ぶりが鬱陶しくなり、冷たく突き放した東出だが、余計に鬱陶しい
状況に追い込んでしまったことを若干後悔する。
新井の話す内容を聞いているだけでは、嘆くだけ嘆いていて、なぜわざわざ自分
に連絡してきたのかさっぱり分からない。
が、経験則から言わせてもらうと、おそらく助けを求めているのだろう。
「一緒に探せ」ということだ。
(うっわめんどくさ……)
内心、正直な感想を漏らす東出。寝ているところを無理矢理起こされたので
少々機嫌が悪い。
「もう今日は遅すぎて、何も出来ませんよ」
この時間に情報を求めても、どこに連絡しても迷惑なだけだろう。
「明日球場に行く予定でしたから、そっちで話しましょう。チームの誰かが来てた
ら、何か分かるかもしれないし」
あうあう、とよく分からない呻き声が聞こえたが、どうやら納得したようだ。
(誰か、ねぇ……)
自分で言っておきながら、その可能性はかなり低いように思えた。金本はもう
広島の人間ではないのだから。
新井を収めるための方便でもあるが、実際、可能性は低くともそこから当たって
いくしかない。
しかし、チームでも彼の近況を最もよく知っているはずの新井が知らないと言う
ことは――
(阪神、に聞く必要があるかな。めんどくさいなぁ……まったく新井さんは……)
下手したら、とてつもなく面倒臭いことに巻き込まれるかもしれない。
わざわざ自分からやっかい事に首を突っ込むのは遠慮したいが、彼がここまで大騒ぎ
している以上、そういうわけにもいかないだろう。
「じゃあお休みなさい。新井さんもゆっくり寝た方がいいですよ。明日、もしかしたら
遠出しなきゃなんないかもしれないし」
最後に相手を気遣い、通話を終える。ああは言ったものの、彼が安らかな眠りに
つけるとは到底思えなかった。
携帯の音量設定をいじり、東出は今度こそ着信をサイレントにした。
立てかけていた枕を直し、身を沈める。
(……変なことにならなきゃいいけど……)
自分も残念ながら、安らかな眠りには遠そうだ。
せめておかしな夢を見ずに眠れるように祈りながら、東出は枕の位置を正し布団
に潜り込んだ。
【残り47名 年俸総額103億980万円】
タイトル 【105】真夜中の報せ です。
職人さん乙です!
粗いさんと東出か…救出にはあんまり期待できな(ry
捨てられたんじゃないですかバロスwww
やらかしコンビ(当時)の今後に期待
職人さん乙です
新井と東出キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
東出という字を見ただけで23バトだったっけとスレの名前を確認した俺を許してw
俺もあれ23バトと間違えた?って見直したw
職人さん乙です。
東出も尊敬する前田がいなくて新井さん並に錯乱したら面白いのだけど…
職人さん乙です
髪神組も外部組も動きが・・・、これからどうなるんだろ
ちょw外部救援部隊マジ期待できねえwwwwww
おまけに新井の取り乱し方が某BRの福留みたいで噴いたw
よりによってこの二人www
ほしゅ。はいれぇ!
そっと捕手
いけめんよやすらかに
hosyu
537 :
代打名無し@実況は実況板で:2007/04/20(金) 04:04:57 ID:ADyP8AWy0
最下層まで来てたので緊急浮上させまーす。
保守します
>>520 タロット風だな、ビリバト絵は場違いっぽかったが。
>>501の保守ネタに今さら乗っかってみる
くわわ「そんな寝言は、生き残ってから言え」
読んだのが夜中だったのもあってちびりそうになった
昨日球場で「野球場へ行こう」を聞いて、億バトを思い出してしまった…
♪だから大好きなんだ 野球場へ行こう〜
って曲?どの辺で思ったか、kwsk
>>542 確か昼の定時放送のBGMがこの曲だった。
何話だったか忘れたけど地味様が出てる「Dream park」って話。
ほしゅ
545 :
代打名無し@実況は実況板で:2007/04/24(火) 06:50:32 ID:mXdEDHKEO
浮上
ho
【106】人狼
死亡者の中に、井川慶の名は無かった。
その事実は彼を落胆させたが、すぐに別の光景と感情が頭の中を満たした。
木の葉のように風に煽られて吹っ飛んで行く井川を見た時の。
井川がどこかの地面に叩きつけられ、血肉をばら撒いて横たわる姿を想像し
た時の。
あの、今までにない程の昂り。
声を吐き出すその瞬間までは分からなかった。
人を殺めた恐怖と後悔なのか。
敵を排除し征服した、歓喜の叫びなのか。
耳をつんざくようなそれが、他でもない自分の声だと気づいて驚く。そして。
俺のせいで――――
――――いや、俺が仕留めた。
後者を、選んだ。
とてもすんなりと腑に落ちた。
そう、あの感じは中々良かった。
井川がまだ生きているなら、探してまた殺せばいい。それでもう一度味わえる。
それに、あいつじゃなくてもいい。まだ沢山いるのだから。
いくらでもいる。いくらでも殺せる。
胸の中で繰り返す。それはとても楽しい事、得難い快楽のように思える。
そして獲物を屠る肉食獣のことを考えた。
彼らが逃げる者を追い詰め、その肉に牙を突き立てる瞬間の胸の高鳴りは、
きっとこんな音ではないだろうか。
―――獣。
―――そうだ、獣だ。
鋭い目、速い脚、何も逃さない牙。
今までずっと頑張ってきたのは、愚直なまでに続けてきた努力は、そういう強
い生き物になるためではなかったか。
何も恐れない、何者にも脅かされない、強い強い生き物に。
その長かった願い事が、今こうして叶いつつあるのだ。
―――強く、誰よりも強くなって、そして―――
小さく誰かの笑い声がする。誰だろう、こんな時にこんな所で―――
―――あぁなんだ、俺か。
―――そうだな。楽しもう。
今は密やかに、誰にも見られぬ場所で。
その生き物は一人、笑った。
【残り47名 年俸総額103億980万円】
549 :
代打名無し@実況は実況板で:2007/04/24(火) 19:56:48 ID:Gzo9yhQv0
きてたきてた!!!
誰!!???誰!!!??生き物って誰よ〜!!!
新作乙です!
うわーこれ誰なんだろう。かなりいっちゃってるなw
>>549 sageような
職人様乙です!
この人ほんと狂ってますね・・。くわわ並に怖い
ほしゅ
hosyu
保守
555 :
代打名無し@実況は実況板で:2007/04/29(日) 01:56:24 ID:GAvmMb8a0
ほしゅっとな
☆
なぜか億バトが知らんうちにアニメ化されている夢を見た・・・
ちょうどモナと男前の『風変わり風任せ』の回ですげーおもしろかった
俺にも見せろ
>>557 アニメ化されたら、面白い回はいいが、贔屓選手が殺される回は
アニメとわかっていても見るのが辛いな、見られないだろうな
ま、ありえないんだがwww
アニメだったらくわわの声は
石田彰
561 :
557:2007/04/29(日) 21:33:00 ID:BP6/4qN40
ちなみにアニメ絵はAAの三頭身のヤツ
>>560 くわわに石田はちょっと若すぎる気がするな〜
自分はにおくんかハイパー地味様が石田でくわわは子安武人のイメージ
やはり声は選手がやるべき・・・ってアニメ化夢ウラヤマシスw
俺なんか井端と烏龍茶の夢だった・・・orz
>562
子安かー。
じゃあ清原は?玄田哲章?
>>564 さすがに玄田はちょっと老けすぎかな
小山力也くらいだね
ちなみに元木は田中一成で佐伯は小野坂昌也って感じ
まああんまり声優ネタ続けてるとウザがられそうなのでこの辺で自重しようか
>>565 sageのsが全角になってるのはわざと?
いや、前からちょっと気になってたもんで
>>566 いわれてはじめて気が付いたorz
これで直ってるかな?