【遂に真相告白 落合監督 だから私は立浪はずした】
大下氏(以下大):監督、優勝おめでとう。本当ならお酒を酌み交わしながら
話をしたいところじゃがのう。
落合監督(以下俺):ありがとうございます。おかげさまで優勝できました。
大:中日が優勝してワシもうれしい。練習はウソをつかんということを証明し
てくれた。12球団で一番練習するのが中日だ。かつてカープが練習量でNo.1と
いわれていたころと比べても中日のほうが多いじゃろう。
俺:大下さんも知っていると思いますが、中日は以前ぬるま湯だった。1年目に
(一、二軍)全員でキャンプをやったのも意識を変えるためです。お前は今、
チーム内で何番目なんだということを自分の目で確認する作業が必要だった。
控えは「オレは頑張らないと28人の中に入れない」となるし、レギュラーも
「今の地位を人に渡したくない」となる。ゼロとは言わないまでも、選手か
ら不平不満は出てないと思う。それに縁故関係とは言わないが、私はこの選
手を好きだから使う、嫌いだから使わないというのは一切ない。そういうの
も一掃した。
大:今年はキャンプで監督が目指している野球ができているのを見て「これは
勝てる」と思った。ただフタを開けてみたら井端の3番はビックリじゃった。
中日の攻撃陣は何といっても荒木、井端の1、2番よ。2人がつながったら
相手は脅威を感じる。いまだにあれはわからんのじゃが・・・。
俺:荒木、井端と組んだ方が相手が嫌がるのは分かってます。ただ、どうやっ
てもセンターラインを固めなければいけなかった。アレックスの守備も落ち
てきたし、近い将来のためのセンターを作らないといけない。誰が近いとい
えば藤井だった。あの守備力と肩があれば、あとは2番の仕事ができるかど
うか。3番・福留が一番いいというのも分かっていたが、ウチには5番がい
ない。それで3番は井端にした。ただ藤井には2番が荷が重かったので5試
合で入れ替えしましたけどね。そのへんの見極めは早いですよ。
大:素早い決断がよかったと思う。それともうひとつ、立浪をどう使うかが、
今年の鍵だったんじゃないか。あれだけ実績を残した生え抜きをどう扱うか。
それをうまくやったね。
俺:立浪が3割を打っていれば、代えづらかった。状態が上がってこなかった
し、7月1日の広島戦で二塁走者が三盗をした際、立浪がサードベースに入
りきれなかった時には考えさせられた部分もあった(翌2日から立浪はスタ
メン落ちしている)。前日(6月30日)に立浪は5打数5安打を放ってい
る。でも、ウチは守りで失点を防いできた。まして両サイド(一塁・ウッズ、
三塁・立浪)に爆弾を抱えているワケだから・・・。それを見過ごして、そ
のままにしておくのは監督としての怠慢になる。
大:立浪がへばってきていた時に、ケガをしていた森野が戻ってきた。そのタ
イミングもよかった。
俺:それと荒木が抹消されて、森野を最初、セカンドで使ったでしょ。使うご
とに森野は打率を上げていった。それで荒木が戻ってきた時に森野をポコン
とサードに入れられた。いろんな絡みがうまくはまった。
大:偶然だろうけど、それを逃がさないのがすごい。だから立浪も不平を漏ら
さなかったし、それが後々の代打での活躍につながったんじゃないか。
俺:スタメンを外れた当初、タツ(立浪)の中にも相当、葛藤があったと思い
ますよ。ところが時期がいつごろからかは分からないが、あいつが一番練習
するようになった。1時半ごろに私が球場に入ると室内練習場からバッティ
ングの音が聞こえてくる。若いヤツが打っているんだろうなと思ったらタツ
だった。4打席打っていたのが量が減っていくから、それを補おうとする。
そうなれば若手も「立浪さんがやってるならオレらも頑張らなきゃ」となる。
有形無形の財産が立浪から生まれてきたんです。スタメンから外れても私は
フォローはしていない。ただ使い方として一番いい場面で(代打で)使おう
とは思っていた。
俺:名古屋は生え抜きに対して甘いところがあるんです。あいつを外すことに
よって、どれだけ監督が非難にさらされるかタツも知っているハズ。「なん
で立浪を使わないんだ!」という声が私の耳にも入ってきました。でもね、
それを甘んじて受けられる監督は悪いけど12球団で私しかいない。他の監
督ならできないと思う。大下さんが監督でもできないと思いますよ。
大:そりゃあ、ワシでもできんよ。落合監督の大殊勲じゃ。
俺:タツはシーズン前「レギュラーをとれなくなったらユニホームを脱ぐ」と
言っていた。あれが私の中にはひっかかっていた。「レギュラーじゃなきゃ
野球選手じゃない」「一振人生は嫌だ」となれば困ったなと・・・。立浪は
バット持たせたら、技術的にはウチでNo.1の男です。ただレギュラーなの
か代打なのか。これからのことを考えると、レギュラーをとるのは至難の業。
でも今は交流戦もある。シーズン中なら代打。そして日本シリーズならDH
もある。左でも右でもウチで一番対応できるのはタツです。戦力として絶対
必要なんです。
大:みんな注目せんけど、ここだよ。だからタイガースが追い上げてきても勝
てた。立浪から不況和音が出ていたらひっくり返されとったじゃろう。とな
ると興味がわくのは、次に日本シリーズでどんな戦いをするのかだ。
俺:フフフ・・・。
明日に続く