369 :
代打名無し@実況は実況板で:
9回裏2-2、またも同点だった。
次の打者はアジアの大砲の二つ名を持つ長距離打者だ。
一発喰らえばゲームは終了する。
表の回、味方は「いつも通り」好機を逸して追加点を取れなかった。
たとえここで踏ん張って延長に持ち込んでも、恐らく逆転は望めないだろう…。
そして、今夜もあの男が見せしめのように最終回まで投げさせられる事になるのだ。
誰よりも力強く、誰よりも辛抱強く戦い続けてきたあの男が。
代打を出される事も無く、援護をもらうことも無く、
今夜もボロボロになるまで孤軍奮闘させられるのだ。
あの愚将の所為で。
選手達は皆知っていた。
「もう、限界だろう……」
悲しい事だが、彼等にはもう勝ってその男を助けてやる力は既に無かった。
ならば、彼を助ける為に出来る事はただ一つ…。
(矢野さん、本当にいいんですね)
(ああ、俺たちがあいつにしてやれるのはこれだけだ。
あいつを…こんな馬鹿げたじゃれあいの為に壊すわけにはいかん)
バッテリーは戦犯の汚名を被る覚悟を決めていた。
かけがいの無い「仲間」を守る為、マウンド上のエースは
最後のその一球を投げた……。