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>>2はいつもハムスレに粘着してるよね
毎日決まった時間に関連スレageてるし
1. 宣告
「―――……リ―――…チョリ―――起きろ!ヒチョリ!」
「ハニャ?」
ぺちぺちという頭を叩かれる感触に、森本稀哲(46)はようやく眠りから覚めた。
重い目を擦りながら起き上がる。どうやらコンクリートの床の上で眠っていたらしく体の節々が痛んだ。
完全に上体を起こすと今度は背中をバシッ!と叩かれる。
「〜〜〜…ったー!」
「ったく何やねん『ハニャ』って。もっとシャキッとせいや!」
「ってツボさん!?」
なぜここに?と森本は疑問に思う。
故障によりキャンプからの離脱を余儀無くされ、現在は鎌ヶ谷でリハビリに励んでいると聞いていた坪
井智哉(7)が目の前にいるのだ。
もちろん仲の良い先輩の元気な姿を見られるのは喜ばしい事である。
だが今日はキャンプ最終日。坪井がわざわざここ・沖縄まで戻って来る必要は無いだろう。
そう。つい先程、北海道日本ハムファイターズの2006年度春季キャンプは打ち上げられたのだ。
選手会長の金子がいつもの緩い調子で手締めを行い、すぐに移動を開始するという指示の下チームメ
イト達と一緒にバスに乗り込んで―――
「……………あれ?」
それからの記憶が無かった。
恐らく森本はバスの中で眠りに就き、そのまま現在に至っているのだろう。
辺りを見回す。
その筈なのに―――ここはどう考えたってバスの中ではない。
今森本が居るのは、床そして四方の壁がコンクリートで打ち固められた閉塞的な部屋である。
お世辞にも広いとは言えない室内に、バスに乗っていた選手全員が詰め込まれているようだった。
彼らもまた森本と同様に困惑した表情を浮かべている。
「お前らの話はさっき他のヤツから聞いた」
「じゃあまさかツボさんも!」
「俺は……調整で、鎌ヶ谷におったんやけど。ほらよく推理物で、クロロホルムだったかが染み込んだ
ハンカチを口に当てられて気を失う、ちゅうシーンあるだろ?あれ見事にやられて気付いたらこん中や」
「ちょ、ちょっとそれって誘拐されたようなもんじゃないですか!」
「……ほんま気味悪いわ」
「気味悪いどころじゃないですよ!!〜〜っあーもう何なんだよっ、俺らが何したって言うんだ!?」
「……あのさぁ、ヒチョリ。お前、」
とその時だった。バーン!という大きな音に一同が振り返る。
見るとコンクリートに埋め込まれた鉄の扉の向こうから白井一幸ヘッドコーチが出てくる所だった。
人混みを掻き分けながら部屋の奥へと進んで行く。足取りはどこか重たげだ。
白井はステージに上がり(森本の位置からは見えなかったのだがこの部屋は小さな体育館のような構
造になっているらしい)その中央に立った。
俯いたままの白井を、選手達が無言で見つめる。
すると彼は意を決したように顔を上げた。顔面は蒼白だった。
「―――単刀直入に言おう。お前らには、これから殺し合いをしてもらう」
2. ルール
「今からお前ら一人一人にカバンを配る。中には全員共通の支給品と、武器がランダムに入っている。
誰にどんな武器かは当たるかは判らん。お前らの運次第だ。お前らはそいつを使ってチームメイトを殺す。
時間に制限は一切無い。ゲームが終わるのは、生き残っている者が投手・捕手・内野手・外野手各1名
ずつになった時だ。だが仮に投手が残り1人になったとしても他が揃うまでは帰れない。揃った時点で4
人を一斉に解放する。もう一度言うぞ。投手1人、捕手1人、内野手1人、外野手1人だ」
そこで白井は一呼吸置いた。
相変わらず顔色は思わしくなかったが、話す様子は普段のミーティングで見せるそれとそう変わらない。
しかし現実離れした話の内容に呆然とする選手達を横目で見ながら白井は続けた。
「それからここには禁止エリアという物があって、入った奴は無条件で死ぬ。禁止エリアは12時間毎の
放送で発表されだんだん増えていからな。放送は死亡者の名前も流れるからしっかりと聞いておいた方
がいい。なお全員がスタートした30分後にこの部屋と周囲一帯は禁止エリアになる。覚えておけ。それ
とここは島だ。島の外に出た場合もお前らは死ぬ。その、首輪が爆発して」
皆はっとして首に手をやる。指先が冷たく硬い何かに触れた。
それが銀色の首輪であることを、隣の坪井の首元を見て確認した森本は絶望的な気持ちになった。
嫌な汗が背筋を伝う。
「何か質問はあるか?」
「ふっ、ふざけないで下さい!!」
思わずして視線が声のした方へと移る。そこには戸惑いの表情を隠せない金村暁(16)がいた。
「殺し合いって一体何なんですか!?僕達はプロ野球選手なんですよ!ただの一スポーツマンに過ぎな
いんです!その僕達がどうして、どうしてそんな事を……」
言葉を噛み殺す金村。
すると皆恐怖が憤りに変わったのだろう、口々に「そうだそうだ!」「冗談も大概にしろ!」等と白井に
不満をぶつけていく。
森本も便乗しようと口を開いた。が、上手く声が出せなかった。
喉がからからに渇いていた。
だがそんなささやかな抵抗も重厚な鉄の扉の開く音によって掻き消される。
今度は兵士のような出で立ちで、背の高くがっしりとした男がずかずかと大股に歩を進めて行く。
彼は一気にステージを駆け上がり白井の隣に立つと、肩に担いでいた大きな麻の袋を乱暴に床に叩き
付けた。
それを見た白井はごくりと唾を飲み、ひとつ瞬きをしてこちらに向き直る。
「……これが何だか分かるか?」
答える者はいなかった。
兵士の男がその反応を確かめるようにして部屋中をぐるりと見渡す。すると彼は満足げな笑みを浮か
べながら袋を持ち上げ、紐で結ばれた口を解いた。
中から姿を現したのは―――それは、紛れもなく我らがトレイ・ヒルマン監督の体だった。
おびただしい量の血液を全身に浴びている。
カッと開かれたままの瞳。微動だにしない手足。
全てが、もう彼の生命は途絶えているのだという事を物語っていた。
「本来ならばルール説明は彼がやる予定だった。だが彼はそれを断固として引き受けようとしなかった。
喜べ、お前らの監督は身を挺して可愛い愛弟子達を守ろうとしたって訳だ」
何の感情も篭っていない白井の言葉が、がんがんと頭の中で反響する。
森本の思考回路は既にぐちゃぐちゃだった。
(監督は、死んだ。俺達を守ろうとして、死んだ。だが恐らく俺達は、殺し合いを始める事になるだろう。
じゃあ監督の死は何だったんだ?白井さんは……白井さんは俺達を守ろうとしてはくれなかったのか?
でもあの様子じゃ脅されて仕方なくやっているのかもしれない。ああ、でも結果的に白井さんは俺達を
見捨てたのだ。その上監督を見殺しに……いや!違うそんな筈ない、きっと何か、なにか、理由が)
「質問しても構いませんか」
その声に森本ははっと我に返る。坪井だ。
「何だ?」
「ツーさんは―――新庄剛志は、どこにおるんですか?」
一瞬、誰もが虚を突かれたような顔をした。
言われてみると確かにそうだ。この部屋のどこにも彼の姿は無い。
確かめるまでもなかった。あんなにも目立つ人間が、この狭い空間の中で目に止まらないはずがない
のだから。
「……彼は別の場所で待機している。今回のゲームには参加しない」
「参加免除って訳ですか」
「ああ。彼は球界に不可欠な存在だからな」
坪井は少しだけ顔をしかめ、物言いたげに口を開いた。だが言葉を発する事無く閉口した。
「最後のルールだ。24時間誰も死ななかった場合は、全員の首輪が爆発する」
ステージの奥の方ではいつの間にか現れた兵士の男数名がカバンを山のように積んでいる。
いびつな形のカバンも有ればそうでない物も有った。
だがその中のどれが自分を生へと導くのか。森本には判らない。
「これから背番号順に名前を呼ぶ。呼ばれた奴は前に出て好きなカバンを選んでから出発しろ。外に出る
までは誘導があるから心配するな。
―――ではゲームを開始する。背番号0、古城茂幸」
>>1が何をしたいのかよくわからんし、そもそもバトロワスレって面白いか?
とりあえず古城がトレードなり自由契約なりで帰ってくるまでスレストしてろや
ハムバトキタキタキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!待ってました!!
今年の冬辺りに球団バトロワの存在を知ってから実は
>>12の議論板もこっそり見てたりしました。
続き期待してます!
15 :
井場:2006/07/22(土) 23:50:35 ID:Se9yG0cg0
うぎゃあああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ
おおー、ついに始動か。新庄がどんな役回りになるのか…
職人様、期待してます。
期待しつつ保守
「回想」
白井一幸は自分の唇が冷たく、震えているのにやっと気付いた。
彼はいま自分が夢でも見ているのではないかと思ったが、それは空しい願望でしかなかった。
「白井くん、趣旨は理解してくれたかな?」
普段であれば対峙することも無いであろう人物が、機械的な声をかける。
白井はふるえる口を数度ひらき、喉の奥が乾いてひりつく感覚を覚えた。
「この計画は数年前から僕らの元にあったのだよ。ただね…前オーナー…
よく知ってるだろ、親父のこと…前オーナーが、頑なに拒否していたんだ。
愛していたからねぇ、君たちを。こんな不良債権のどこに愛しさを感じるんだか…
僕には理解しかねるがね」
冷たく言い捨てたせりふも耳に入らず、白井は落ち着き無く息を何度も吸った。
「オーナー…理解…できません。なにを、理解しろと…」
一言、単語を発するだけで汗が浮き出た。
馬鹿な。
こんな馬鹿なことがまかり通ってなるものか。
彼は目の前の現実と、自分の中で築き上げた常識、ふたつを天秤にかけて
後者を取った。
選手たちに殺し合いをさせる?
裏で大きなものが動いている?
金か?権力か?
そんなことはどうだっていい。肝心なのは、これが馬鹿げた茶番だということだ!
「俺は、夢を見ているんだ」
ぽつりと、白井は呟く。大社はくすりと笑って白井を哀れそうに見やった。
「そうか。残念だ。君は……なんといったかな、そう、ヒルマン、
あの外人の男と違って、まだ頭の柔らかい男だと思ったが、私の見込み違いだったらしい。
…非常に残念だ」
男はため息とともに、ドアの入り口に立っている男に目で合図した。
黒いスーツの付き人は、機械のような動きでドアを出て行き、程なく戻ってくる。
大きな袋とともに戻ってきた途端、むっとする臭気に、白井は顔を歪めた。
知っている匂いだ。しかし、これは…。
「オーナー、これは、一体…」
白井の言葉は、そこで途切れた。
取り払われた布から出てきたそれに、絶句したからだ。
「彼はねぇ…僕にひどい罵声を浴びせたよ。多分、球場で言ったら退場処分になる
んじゃないかな。だからね、彼にはこのゲームから『退場』してもらったんだ」
それは、息絶えた人のかたまりだった。
高い鼻梁と薄い唇が、苦悶に歪められたその表情。
赤いそれは、白井の全ての思考力を奪い去るには十分すぎるものだった。
「ヒルマン監督…!」
穏やかに笑う彼は、今は冷たい塊となって白井を驚愕と恐怖のどん底に突き落とした。
「あ……あ……」
「今君に頼んだことと全く同じことを頼んだだけ、ですよ。
全ての段取りはこちらでやる。君はただ、選手たちにルールの説明をして、進行を見守るだけでいい。
簡単だろう?」
恐怖は人を、簡単に、変える。
おおー、職人さん乙です!
期待してますので頑張って下さい!
それにしても昼マンは良い人だけに惜しまれるなぁ(・ω・`)
>>12ですが、禿しくネタバレですので職人志望以外の方はご注意ください。
引き続き議論中・書き手募集中ですのでご意見等いただけるとありがたいです。
期待保守
23 :
ゲーム開始 1:2006/07/25(火) 00:11:10 ID:d704BP8M0
その日、北海道日本ハムファイターズの選手たちは、球場の外に待機していたバス2台に乗り込んだ。支配下選手ほぼ全員の大所帯である。
オープン戦の登録メンバーは、目的地に着いてから発表されるとのことだった。「乗っている全員にチャンスがある」出発前のミーティングでトレイ・ヒルマン監督(88)が告げた。
密度の濃い練習をこなしてきた体は、勿論疲労はあったが、それよりも大きな充足感で満ちていた。
到底満足できるものではなかった昨年の成績、しかし今年は、今年こそは実りある秋を迎えるのだ。自信はある。そのための力も付けてきている。
皆それぞれ思うところはあっても、胸の内は確かに同じ希望に燃えていたのだった。
窓枠に頬杖をついて外を眺めている川島慶三(39)、彼もまた静かに闘志を燃やしていた。
ルーキーとはいえ自分は大卒、即戦力として期待され入団した身だ。1年目から結果を残していかなければならない。
やってやる。俺は絶対にこの世界で生き残るんだ。
こうしている間も逸る気持ちを抑えながら、流れていく外の風景を見つめていた。
切れ間無く続く木々の行列。どこを走っているのか、…どこへ向かっているのか。――そういえば今は何月何日の、何時何分何十秒だろうか?
こうして見ていると、段々と思考が、感覚が、意識さえも森の中に吸い込まれていくようだった。どろりと重たく瞼が垂れ下がってきて、川島は目を閉じた。
無色無臭のガスが車内に充満し始めていた事など、彼が気付く筈もなかった。
24 :
ゲーム開始 2:2006/07/25(火) 00:11:43 ID:d704BP8M0
そして今、彼は呆然と白井の説明を聞いていたのであった。
ヒルマン監督、尊敬すべき指導者、自分たちの指揮官、が、死んだ?
入団発表の席で、自分の肩に手を置き、「期待している」と笑ってくれたのに。
ついさっき、バスに乗る前には確かに生きて、自分たちの前に立って、シーズンの抱負を熱く語っていたのに。
惨たらしいその亡骸を見せられ、微かに鼻に届く血の臭いに嫌悪感こそ湧いても、未だ現実感は湧かなかった。
わけがわからない。あれは本当に監督なのか?本物の…なのか?
すぐ側のコンクリートの壁に触れる。ひやりとした感触が掌に伝わった。とりあえず、残念ながら、夢ではないらしい。壁は確かにそこにある。
「いいか、余計なことを喋ったり、変な行動を取ったりするな。これは、お前たちのために言っている。黙って出て行け」
白井が付け加える。表情は変わらず固く暗く凍り付いている、ように見えた。その後ろで古城茂幸(0)がもう荷物を受け取っている。
おかしい。明らかに異常事態だ。それだけは理解できた。それだけしかわからなかった。
25 :
ゲーム開始 3:2006/07/25(火) 00:13:42 ID:d704BP8M0
狼狽し辺りをキョロキョロと見回す。と、すぐ近くに寝転がっている人物に気付いた。奈良原浩(4)だ。
あれだけ騒がしかったのに未だ熟睡している。とにかく起こそう。川島は奈良原の肩を揺すった。彼の呼ばれる順番はすぐに来てしまう。
「奈良原さん。起きてください奈良原さん。起きなきゃ何か、マズイです」
奈良原はなかなか起きない。薬物を想定以上に深く吸い込んでしまったのだろうか、小柄な体故に効き過ぎたのだろうか。
その時、兵士たちのリーダー格らしい男が耳に手を当てた。小型マイクで何事か話しているようだ。彼らは白井ではなく、別の誰かから指示を受けているらしい。
不意に、その男の目だけが動いた、のが見えた。正確には、目と目が合った。川島の心臓が跳ねる。――見つかった!
リーダーは白井に歩み寄り、何事かを囁く。白井の顔が曇った。それを見るや、川島は必死になって奈良原の体を揺さぶった。
「奈良原さん!奈良原さん!!」
「ん…?え?川島、何?何の話してた?ミーティング?」
ようやく奈良原が目を覚ました。川島がホッとしたのも束の間、ザッザッと靴を鳴らして、銃を持った男が近づいてきた。起き上がった奈良原はまだきょとんとした顔をしている。
「白井さん?えっ、皆何でユニなんか着てんの?何?この人。うわっ、他にもいっぱいいる!もしかしてドッキリ?」
「…聞いてなかったんだな、奈良原。時間があまりないんだ。俺は、二度は説明しないぞ」
白井の声が、微かに震えたように思えた。何だかわからない、わからないがとてつもなく嫌な予感がして川島は立ち上がった。
「待ってください!」
途端に兵士たちの銃口が一斉に向けられ、そのまま立ち竦む。
「何だ川島。勝手な言動は慎むようにと言ったばかりだぞ」
「…す、すみません。でも待ってください。お願いします。何をするのかわかりませんが、今、これから奈良原さんにしようとしてることを止めてください」
自分でも何を言っているか怪しかったが、とにかく一気に捲し立てる。白井は少しの間押し黙ったが、やがて自嘲気味な笑みを含んだ声色で言った。
「…いい度胸をしてるな。うちのスカウトも捨てたもんじゃあなかったというわけだ。だが、無理だ」
最後の言葉が合図になる。
26 :
ゲーム開始 4:2006/07/25(火) 00:15:27 ID:d704BP8M0
ガガン!!と耳を劈くような音がして、同時に奈良原の体が弾け、川島の顔に生温かいものが降り注ぎ、灰色のコンクリートに大小様々の真っ赤な水玉模様ができる。
声を上げる間もなく、何が起こったのか理解する時間もなかっただろう、ぐにゃりとその体から力が抜けて、奈良原が事切れた。
グズグズにされた前面と、目が見開かれたままの死に顔が、視界に強烈に叩きつけられた。
「ひっ」
川島は息を呑んだきり、壁にへばり付いて動けなくなった。
「うわああああああああああああああああ!!」
あっという間に、室内が悲鳴と怒号で溢れ返る。思わずその場から飛び退く者、名前を叫ぶ者、罵声を浴びせる者。
「静かにしろ!!」
白井の一喝が騒然とした空気を切り裂いた。
「次に指示に従わなかったものは即射殺する。俺はもう同じ事は、言わない。わかるな川島」
強張った顔のまま、川島はずるずると床に座り込んだ。半ば気を失っていたかもしれない。
「…仕切り直しだ。行け、古城」
扉のところにまだ突っ立っていた古城が、少しだけ目を伏せて出て行った。
【×奈良原浩(4) 残り59人 1+1+1+1=4人でゲーム終了】
奈良さん死んじゃったぁぁぁぁぁぁ
職人さん乙です。ハムヲタですが、楽しみにしとります。頑張ってください。
奈良さんがああああああ
乙です!
いきなり奈良さんか…orz
捕手
期待保守
ほ し ゅ
捕手実松
35 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/07/29(土) 22:08:03 ID:nNxHiJuZO
あげ
木元邦之(10)はドアを開け一人森を目指し歩いていた。この『ゲーム』になにぶん熱い感情を抱く訳でも乗り気な訳でもなかった。武器は黒いダガーだった。
「ともあれまずは拠点を決めなければ。とりあえずどこかにロッジがあるだろう。」と漠然とした考えで歩いていた。
しばらく歩き続けていると木元は違和感を感じた。背後からの視線とどことなく重なって聞こえる足音。
数歩前に歩いて意を決し後ろへ向かい跳びかかる。相手を押し倒すと相手は怯えていた。相手は飯山裕志(57)だった。
「・・・お前か。」顔には出さなかったが木元は安心した。
「『お前か』じゃないっすよ!俺が何したんすか!」憤慨する飯山。「疑われるようなことするからだ。」
「それは・・・すいませんでした。で、どちらへ?」
「拠点を探している。ロッジくらいはあるだろう。」
「俺も行きます!一人は嫌なんで!」
「・・・好きにしろ」
何はともあれ二人はどこかにあるであろうロッジ目指し歩き始めた。
小一時間歩き続けただろうか。言葉少なに会話を交わしたが飯山はとりあえず早く帰りたいようであり、武器はコルトの掌サイズほどの銃だった。
更に30分ほど歩き続けていると、見かけロッジとは言い難いがとりあえずロッジらしきものを見つけた。
軋むドアを開けると中に誰も居ないのを確かめて二人は大きく一息ついた。
それからしばらくして二人は野球の話をしはじめた。
「いやあ、今年こそプレーオフに進みたいな。」
「そうですね。」
「飯山も出番少ないけど頑張らないとな。」
その途端、飯山の目つきが変わった。
「・・・誰のせいで俺がサブに回ってると思ってんですか。正直あなたには守備では勝ってると思ってる。あなたさえいなけりゃ・・・俺はレギュラーになれるんだ!俺は行きて帰る。その為にあなたには、死んでもらう!」
飯山はポケットから小さな銃を取り出した。
瞬間、飯山のコルトが火を噴いた。が、木元の左を通過し壁に小さな弾痕が残った。その隙に木元は二階へかけあがる。なおも飯山は連射するが当たらない。
そして飯山のコルトが火を噴くのを止めた瞬間。木元は飯山の背後へ飛び降り、刹那、木元のダガーは飯山の心臓を背中から貫いた。「悪く思うな。俺は周り全てが敵と思ってる。ハナッからお前を信じちゃいなかったよ。」
「・・・ははっ・・・ゴホッ・・・やっぱり・・・あなたは・・・越え・・・」
言葉半ばで飯山はこと切れた。木元は一蔑し、ロッジのドアを開け薄暗い森へ消えた。
もしかすると木元はこのゲームの前から気付いていたのかもしれない。自分の中に殺戮を好む悪魔という同居人が居ることを。
飯山裕志(57):死亡
残り58人
乙
飯山(;Д\)でもマーダー化した木元がこれからの楽しみ
ついてねぇ…。
全くついてねぇ…。
彼は生い茂る緑の中を、世の中の絶望を一身に受けたような顔つきで歩いていた。
「なんで…?なんで、俺なの…?俺、悪いことした?」
歩くたびに背中の荷物がゆさゆさと揺れた。
それは、今の彼にとってはとてつもなく重く感じる。
「俺、悪いこと、したかなぁ…した…かなぁ…」
ぶつぶつと呟きながら歩く姿は、滑稽でもあり物悲しくもあった。
彼はもう数度目となるため息をつき、ここ数日の嘘のような出来事を思い返した。
「岡島くん、今日何故呼ばれたのか…ある程度予想はできていることと思う」
都内某所に、滝鼻オーナー直々に呼び出された岡島は頷いた。
時期はキャンプ終了後、うだつのあがらない中継ぎ左腕、年俸に見合った働きをここしばらくしていない、若手ではない投手…。
様々な要因から自分の処遇がどのようなものになるのか判らない程、彼は能天気でも馬鹿でもなかった。
つまり岡島は、覚悟を持ってこの場に挑んだ。
覚悟とは、すなわちトレードの。
「はい…」
神妙な顔で頷いたが、内心はがっくりと肩を落としている。
愛妻家と言えば聞こえはいいが、嫁にベタ惚れのこの男はできることなら妻と一緒に暮らしたいと思っている。
つまり実家から通いたいわけで、そうなると希望する球団は限られる。
もっとも、関東圏でない球団のほうが多いのだが…。
案の定、できれば関東圏でという願いは全く無視され、言い渡された球団はあろうことか北海道。
顔が引きつったのが自分でも手に取るようにわかった。
「ほっかいどう、日本ハム、ですか…」
「リリーフ左腕が欲しいそうだ。しっかり働いてきて欲しい」
「…はぃ…」
野球を続けたい思いは本物だ。彼に断れる権限などあるはずもない。
岡島は蚊の鳴くような声で、返事をした。
(ついてねぇ…。俺って、なんか、ついてねぇ…)
滝鼻オーナーに丸めた背中を見せ、帰ろうとした瞬間、
「あ、大事なことを忘れていた」
「………は、い?」
唐突に、わざとらしい声がかかる。
岡島はこの時、瞬間的に脱兎のごとく逃げ出したい衝動に駆られた。
理屈なんて無い。ただ、嫌な予感がしたのだ。そして、嫌な予感ほど当たるものだ。
「これから日本ハムファイターズの選手たちは殺し合いをすることになっている。
この球団の処理を、できればシーズン開幕までに済ませたい。
そこで、君はこのゲームをスムーズに進めるために扇動要員として働いてもらいたいのだ。
大丈夫、君は僕たちが手厚く保護するから、安心して扇動してもらいたい」
聞きなれない単語の羅列。
岡島は数分間にわたって滝鼻の言葉を噛み砕き、ようやく、発する言葉を探し当てた。
「……………はい?」
策士 ◆G3W/VKTTlk さん、
>>12の掲示板に目を通していただけるとありがたいです。
バトロワSSリレーのガイドライン
第1条/キャラの死、扱いは皆平等
第2条/リアルタイムで書きながら投下しない
第3条/これまでの流れをしっかり頭に叩き込んでから続きを書く
第4条/日本語は正しく使う。文法や用法がひどすぎる場合NG。
第5条/前後と矛盾した話をかかない
第6条/他人の名を騙らない
第7条/レッテル貼り、決め付けはほどほどに(問題作の擁護=作者)など
第8条/総ツッコミには耳をかたむける。
第9条/上記を持ち出し大暴れしない。ネタスレではこれを参考にしない。
第10条/ガイドラインを悪用しないこと。
(第1条を盾に空気の読めない無意味な殺しをしたり、第7条を盾に自作自演をしないこと)
リアルタイム書き投下のデメリット
1.推敲ができない
⇒表現・構成・演出を練れない(読み手への責任)
⇒誤字・誤用をする可能性がかなり上がる(読み手への責任)
⇒上記による矛盾した内容や低質な作品の発生(他書き手への責任)
2.複数レスの場合時間がかかる
⇒その間に他の書き手が投下できない(他書き手への責任)
⇒投下に遭遇した場合待つ事によってだれたり盛り上がらない危険がある。(読み手への責任)
3.バックアップがない
⇒鯖障害・ミスなどで書いた分が消えたとき全てご破算(読み手・他書き手への責任)
4.上記のデメリットに気づいていない
⇒思いついたままに書き込みするのは、考える力が弱いと取られる事も。
文章を見直す(推敲)事は考える事につながる。過去の作品を読み込まず、自分が書ければ
それでいいという人はリレー小説には向かないということを理解して欲しい。
テンプレに入れておくべきだったな。
というより、バトの書き手をやりたいなら最低限これくらい知っておくべきだと思うんだが。
>>36-40はリアルタイム投下だろう。しかも携帯から
流れもちゃんと読んでいないみたいだし、スルーした方がいいんじゃないか。
「次は…背番号2。…小笠原道大」
名を呼ばれた小笠原がゆっくりと立ち上がる。
彼は、本来ならこんな所にいるはずのない人間だった。
WBCのメンバーとして予選を勝ち抜き、もうすぐ行われる本選に向けてアメリカへ出発しなければならない。
だから、「行く前に皆に挨拶しておきたいから」と何の前触れもなく球場にやってきたとき、その場にいた全員が仰天したのだった。
「いいんですかガッツさん、練習は?」「こんな忙しい時に、わざわざ沖縄まで」
忽ちの内に小笠原の周りを取り囲んで人の輪ができる。
「大丈夫だ。王さんも快く送り出してくれた」
「とか言って、ほんとは勝手に抜け出したんじゃないすか?」
今年から選手会長の座を受け継いだ金子誠(8)がボソリと言う。小笠原はただ笑うだけだった。
ステージへ登ってきた小笠原の、その無言のプレッシャーに、白井は知らず息を呑んだ。
ついさっき、奈良原が射殺された時、あの喧噪の中でも彼は一人泰然と胡座をかいたまま微動だにしなかった。
しかしその顔が得も言われぬ凄まじさを帯びているのを白井は見取っていた。
黙っていられずに自分から声をかける。
「お前は本当ならこんなことに巻き込まれずに済んだのにな…」
「それはナラさんに言ってください。残っている皆にも」
低い声で返事があった。表情は見えない。顔をこちらに向けようとしない。当然の事だろう。
荷物の山から一つを選び、紐を無造作に引っ張る。山が崩れ二、三個のカバンが床に転がって音を立てた。その全ての動作の端々にも、緊張は一切見られない。
最後までこちらには視線を向けずに、小笠原は出口へ向かう。思わずほっと息を吐いたのも束の間、すれ違いざま、白井は思いもよらない言葉を聞いた。
「白井さん。俺はもう知ってる」
白井の表情が一変する。
「小笠原、お前」
ステージ下の選手たちには二人の声は聞こえない。
振り向いた時には、小笠原の姿は既になかった。
背番号2が扉の向こうへ消えたとき、室内に溜め息のような音が響いた。
誰のものということもなく、それが選手たちの総意を表していた。
何も言わず、こちらを振り向くこともなく行ってしまうなんて。
あの小笠原がそういう態度を取ったことに、裏切られたような、悲しいような、心細いような気持ちを皆少なからず覚えていたのだった。
壇上の白井は戸惑ったようにステージ下と扉を見比べていたが、やがて腹を決めたのか、リーダー格の兵士に何事か囁いた。
リーダーは少し考える素振りを見せた後、顎をしゃくった。『行け』の合図らしい。白井はたった今小笠原が出て行った扉を開ける。
「お前ら、くれぐれも勝手な行動はするなよ」
振り返り、そう選手たちに白井は告げて、扉を閉めた。
「小笠原」
まさにゲートから出て行こうとしていた小笠原が、白井の息を切らせた声に振り向く。その顔に歓迎の色はなかった。
「知ってて参加したんだな。自分が参加者から除外されてることを、知ってて。何故だ」
「そんな事を聞くために追ってきたんですか。…聞かなきゃわかりませんか?」
小笠原の声はあくまで冷たい。返す言葉もなく、白井は項垂れた。額から瞼に流れてきた汗を拭う。
「…お前に渡す物がある。役目を代わってもらったんだ」
今走ってきた通路の奥を見遣った。そこには一人の兵士が待機しており、手には銃を構えている。迂闊なことはできないだろう。
「これを持って行け。お前の武器が入っている」
そう言って白井は一つのカバンを差し出す。
「無理矢理にでもお前を連れ去ることも考えたが、その場で自殺でもされちゃ困る。それよりだったら、今は思う通りにさせてやる方がいいだろう。
だが参加する以上、お前を簡単に死なせるわけにはいかない。極力こちら側でもサポートさせてもらう、との事だ」
オーナーの言葉をそのまま伝える。苦い物が混じるのが自分でもわかった。
本来なら小笠原は、新庄と同じく参加免除のはずだったのだ。
日本代表に選ばれるほどの打者をみすみす死なせるのは流石に忍びない、このゲームの『首謀者たち』が考えるのも至極当然の事だ。
また、彼ほどのリーダーシップを持つ選手がいるとゲームの進行に支障を来しかねない、というのも理由の一つだった。
だからWBCで彼がチームを離れている内に全てを済ませてしまうことになっていた。
が、どういうわけか小笠原はここに来てしまったのである。
全く想定外の出来事に『首謀者たち』は焦った。小笠原を参加させてはいけない、しかし計画を全て彼に告げるわけにもいかない。
そうして導き出した苦肉の策が『彼を優先的に生き残らせる事』であった。
「こちら側から干渉できるのはここまでだ。何とか…生き残ってくれ」
「こちら側…ですか。そこからの、命令ですか?それは」
何を言わんとしているのかは察しがつく。つい口から出そうになったものを、ぐっ、と喉に力を込めて押し止めた。
小笠原は続ける。
「俺はここに来る事を自分で選んだ。自分で決めた事だ」
「……」
「皆と同じように、自分が選んだものでいい。そっちの思惑通りにはならない」
カバンの紐を握る手を、強い力が押し返した。
「だからこれは受け取れません」
それだけ言うと、小笠原は白井に背を向けた。肩には先程荷物の山から自分で選んだカバンを掛けている。
何が振り当てられたかわからない、全くの役立たずかもしれない、そんなものに己の命運を任せるのだという。
「…それで、本当に生き残れると、思ってるのか」
小笠原の足が止まる。
「殺し合いなんだ小笠原。ここは、そんな意地だの勇気だの、希望だのそういう一切が踏みにじられる所なんだ。
見ただろうお前も。理不尽に人が殺されるところを。バカげているが、マジなんだよ。そんな所でつまらん片意地を張って、生き残れると思うか?」
泣きそうになりながら殆ど叫びのような言葉を投げかける。それは白井の、自身への叫びだった。
あの時、ヒルマンの死体を見せられた時、自分は何もかもを捨てた。ただ甘んじて服従することを決めたのだ。
元より選択の余地などなかったのかもしれない。自分のような人間には。
息を荒げ熱くなった耳に、はっきりとした声が聞こえた。
「生き残るかどうかは問題じゃない。俺は俺の意志を貫くだけだ」
それを聞いた瞬間、白井は目を見張り、ガクリ、とその場に膝をついた。すぐに待機していた兵士が駆け寄り、腕を掴んで立たされる。
視界から背番号2が遠ざかる。再び歩き出した彼は、もう振り向かなかった。
ゲートの外は森だった。見渡す限り黒々とした木々が屹立し、曇天と相俟って暗鬱な空気を醸し出している。
あまり気分のいい場所ではないな。…まあ、晴れやかな気分になどなれるはずもないのだが。
出口に立っていた兵士が、早く行け、と無感情に言い放つ。小笠原はその顔に鋭い一瞥をくれると、物言わずその横を通り過ぎた。
【残り59人 1+1+1+1=4人でゲーム終了】
(つД`)
やべぇ、ドキドキしてきた
保管庫をつくる予定はあるのですか?職人さんたちは大変だと思うので、(自分は詳しくないので出来ないけれど)誰か作ったらよいと思います!!
他力本願かYO
誰か作ったらよいって…なんだそりゃ
今、保管庫が必要だというならお前が作ればいいだろ
できないなら、それを必要だと思って作ってくれる人を黙って待て
なんだその言いっ放しの他人任せ
53です。不必要な発言すみませんでした。ただ自分が、あったらいいなぁ、って思ったのでつい書いてみちゃったんです。皆さんの意見もっともだと思います。ごめんなさい。私としては、もしパソコン技術とかが上達したらぜひ作りたいです!本当に申し訳ありませんでした。
53=41
職人さん乙乙乙。
ガッツかっけー(゚∀゚)
他のバトみたいに参加者一覧があったら良いと思うんだが。
良かったら俺作って貼るけど、職人さん問題無いですか?
61 :
59です:2006/08/01(火) 00:28:02 ID:mWtUtxmC0
【北海道日本ハムファイターズ選手名簿】
内野手
0 古城 茂幸
2 小笠原 道大 ★本来参加免除だが参加中
3 田中 賢介
4 奈良原 浩
5 セギノール
6 田中 幸雄
8 金子 誠
9 マシーアス
10 木元 邦之
23 尾崎 匡哉
24 陽 仲寿
39 川島 慶三
50 市川 卓
51 小田 智之
54 稲田 直人
57 飯山 裕志
58 高口 隆行
62 :
59です:2006/08/01(火) 00:28:33 ID:mWtUtxmC0
外野手
1 SHINJO ★参加免除
7 坪井 智哉
31 小谷野 栄一
41 稲葉 篤紀
44 森 章剛
46 森本 稀哲
52 紺田 敏正
53 工藤 隆人
55 佐藤 吉宏
65 鵜久森 淳志
投手
11 ダルビッシュ 有
12 鎌倉 健
13 須永 英輝
14 井場 友和
15 横山 道哉
16 金村 暁
17 トーマス
19 清水 章夫
20 矢野 諭
21 武田 久
22 建山 義紀
25 立石 尚行
26 糸井 嘉男
27 江尻 慎太郎
28 正田 樹
29 八木 智哉
33 橋本 義隆
34 吉崎 勝
35 木下 達生
36 MICHEAL
38 武田 勝
40 岡島 秀樹
43 星野 八千穂
45 佐々木 貴賀
47 菊池 和正
48 中村 渉
59 金森 敬之
60 伊藤 剛
61 押本 健彦
66 ディアス
67 リー
捕 手
30 高橋 信二
32 中嶋 聡
37 小山 桂司
40 実松 一成
56 駒居 鉄平
62 今成 亮太
63 渡部 龍一
64 鶴岡 慎也
※サネと古城は移籍前の背番号で表記。
※外人選手は一応入れたけど、もし出ないんだったら削ります。
※誤字や抜けなどミスあったら指摘願います。
(……もう一度言うぞ。投手1人、捕手1人、内野手1人、外野手1人だ)
先ほどの、白井ヘッドコーチの発言を、鶴岡慎也(39)は何度も頭の中で
何度か繰り返していた。
幸いなことに、捕手登録は8名。全ポジションで最小。
生き残れる確立は単純に1/8ってことか。
……おいおい、ほかのポジションよりかなりマシとは言え7/8で死ん
でしまうのかよ。冗談じゃないぜ。鶴岡は頭の中で悪態をついた。
だが……。殺すのなんてイヤだが、もし争いとなるのならば……。一番
恐れるべきなのは1軍の3人の人たちだろう。鶴岡は、そう思いながら、
このファイターズの選手が集められた、ただっぴろい部屋の中をその三
人の選手の動向を少しでも探ろうと、視線を彷徨わせた。
一番最初に目に止まったのは、高橋信二(30)さんだった。
パンチの効いた打撃は、野球に関しては到底ボクなんかがかなう相手で
は、無い。
たが、殺し合いとなると……?
不穏な考えを打ち消すように、フルフルと頭を振る。
その信二さんは、この事に何を思っているのだろう。
相変わらず自分には読めない表情をしながら、信二さんは眼を細め、神
経を集中するようにただ一箇所を見ていた。
何を見ているのだろう?
ふと、気になり自分は、信二さんが見ているであろう視線の先へと、眼を
移す。そして、硬く鋭い瞳で見つめた視線の先には、怯えた表情で縮こっ
ている實松一成(40)さんがいた。
(實松さん……)
鶴岡にとって、實松は一学年上だが、年が近いこともあり、いわゆる兄貴
分として大変良くしてもらった。
だが、この場所では戦わなくてはいけないのか・・・?
(戦う?實松さんと?)
ダメだ、さっきから頭が混乱している。
鶴岡は先ほどもしたように、再度フルフルと頭を振る。
(落ち着かなくては……)
そう思いながらも、やはりどうしても落ち着かない。
これからの事、今までの事。それらの事がぐるぐると頭をよぎって落ち着
かない。
鶴岡は、落ち着かない体を持て余すように、立ち上がりうろうろと部屋の
中をせわしげに体を動かす。
だが、視界に入ったモノに一瞬体が止まる。
(……え?)
あの時から、決して視界に入れないようにしていた、その奈良原さんの姿。
それはやはり、みんなも同じなのだろう。奈良原さんの一角だけ、避ける
ように人の姿は無かった。
だが、一人だけそんな奈良原さんに近づいていった人がいた。
(中嶋さん……。)
中嶋聡(32)は、奈良原さんの横にどっかりと座り、奈良原さんに、もう聞
くことが出来ない相手に向け、静かに喋り始めた。
(何を喋っているのだろう……。)
相当静かに喋っているのだろう。距離もあり中嶋さんの話している内容は
聞こえないが、中嶋さんは、温和な表情で奈良原さんにひっそりと語り続
ける。
どれくらい、そうしていたのか。
やがて、中嶋さんは、喋りかけるのをやめると、視線を奈良原さんから外
し、白井さんへと向けた。
その視線は、先ほどの奈良原さんへと向けられたものとは全く違う、敵意
と決意をむき出しにした始めて見る表情だった。
その、中嶋のあまりに鋭い視線と表情は今までチーム仲間の先輩として一
緒に付き合ってきた中で始めて見るものだった。
その鋭い表情に、鶴岡はただごとではないと、体を硬くすることしか出来
なかった。
【残り59人 1+1+1+1=4人でゲーム終了】
68 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/08/01(火) 13:23:30 ID:5t72hPrm0
支援
鵜久森出るならがんばれ、鵜久森
アンタ甲子園の時から応援してるよ
岩下…
GJ!!はっ…早く続きを…
【北海道日本ハムファイターズ選手名簿】
投手
11 ダルビッシュ 有
12 鎌倉 健
13 須永 英輝
14 井場 友和
15 横山 道哉
16 金村 暁
19 清水 章夫
20 矢野 諭
21 武田 久
22 建山 義紀
25 立石 尚行
26 糸井 嘉男
27 江尻 慎太郎
28 正田 樹
29 八木 智哉
33 橋本 義隆
34 吉崎 勝
35 木下 達生
36 MICHEAL
38 武田 勝
43 星野 八千穂
45 佐々木 貴賀
47 菊池 和正
48 中村 渉
59 金森 敬之
60 伊藤 剛
61 押本 健彦
69 岩下 修壱
岡島 秀樹
72 :
ずれた…:2006/08/01(火) 17:20:21 ID:ghv2Mb7S0
捕 手
30 高橋 信二
32 中嶋 聡
37 小山 桂司
40 実松 一成
56 駒居 鉄平
62 今成 亮太
63 渡部 龍一
64 鶴岡 慎也
内野手
0 古城 茂幸
2 小笠原 道大 ★本来参加免除だが参加中
3 田中 賢介
4 奈良原 浩 ★出発前に死亡
6 田中 幸雄
8 金子 誠
10 木元 邦之
23 尾崎 匡哉
24 陽 仲寿
39 川島 慶三
50 市川 卓
51 小田 智之
54 稲田 直人
57 飯山 裕志
58 高口 隆行
外野手
1 SHINJO ★参加免除
7 坪井 智哉
31 小谷野 栄一
41 稲葉 篤紀
44 森 章剛
46 森本 稀哲
52 紺田 敏正
53 工藤 隆人
55 佐藤 吉宏
65 鵜久森 淳志
59氏のを勝手に修正してみた。
開始時60人だったので外国人選手は含まれないんだと思う。
59氏、71氏、乙です。
76 :
59です:2006/08/01(火) 22:36:39 ID:mWtUtxmC0
>>71さん
お手数かけてすいません、訂正ありがとうございます。
そうか、俺のトーマスは出ないのか…。
>>65-67 職人さん乙です!
捕手たちのキャラがそれぞれ立ってて、これからどう出るのか楽しみだ
兵士に抱えられるようにして戻ってきた白井は、先程よりも更にくたびれて険しい表情だった。
「白井コーチ!小笠原さんは」
「賢介」
思わず声が出た田中賢介(3)を、強い声で白井が制する。兵士たちが即座に構えかけた銃を、揃って元の位置に戻す音がした。
「こちらで待たせておいてすまんが、これからは余計な時間を取らずサクサク行ってもらう。次はお前だ背番号3、田中賢介」
矢継ぎ早に白井が言う。何か酷く疲れているようだった。
賢介は何か言いたげだったが、無駄だと思ったのか、口をつぐんで立ち上がった。そろそろとチームメイトの間をすり抜け、壇上に登る。動きは固いが怯えた様子はない。
念入りに選んだ荷物を一つ掴み取り、扉を開けると、賢介はそこで立ち止まり、後ろを振り返った。そして何かを確かめるように小さく頷いた。
リーダー格の兵士が近づく。
「何してる?」
「何も」
短い答えとほぼ同時に扉が閉まる。タッタッタッと通路を走っていく足音があっという間に小さくなっていった。
兵士はそちらを見ていたが、すぐに銃を持ち直して荷物の前へと戻った。
彼は、まだそう遠くには行っていないはずだ!
今ならまだ――合流できるかもしれない!
間に合え!急げ!!捜すんだ!!
「小笠原さーん!!」
森へ入るなり、賢介は有らん限りの大声で叫んだ。彼と自分の他はまだ誰もいない、はずの、その空間にこだまする。
「小笠原さーん!!どこですかー!?」
『いいか、賢介。ガッツと合流しろ。初っ端に、どんな方法でもいいから捜すんだ』
小声でそう言ってきたのはベテランの田中幸雄(6)だった。彼は賢介の真後ろに座っていた。
その隣で兵士の様子を窺っている小田智之(51)も、彼の計画に乗ったのだという。
突如肩を引き寄せられたので肝を冷やした賢介だが、相手が幸雄と知ってすぐに安心した。
彼の計画とは、即ち仲間を増やすこと。
単独行動は危険だから集まる、というのは至ってシンプルだが確かに安全なように思えた。
幸雄の提案なら尚更だ。
小笠原とは離れていて、監視されている中で計画を伝えるのは到底無理だった。
兵士の動きを横目で確認しながら幸雄が続ける。
『ナラが…いなくなってしまったから、俺がお前の次だ。すぐに後を追う。まずはガッツを捜せ』
『幸雄さん。もし、小笠原さんと会えなかった時は…』
言いかけたその時に白井が戻ってきた。
はっとして前を向いた賢介の背中に、幸雄の言葉が聞こえた。
『行ってこい。その時はその時だ』
「小笠原さーん!!田中です!賢介です!俺、敵じゃないです!ここにいまーす!合流してくださーい!!」
「幸雄さんも味方なんです!すぐ後から来まーす!お願いです!いたら返事してくださーい!!」
言葉を思いついた側からとにかく叫んでいく。
どれ程進んだだろうか。一向に小笠原の姿は見えない。
走るのを止めて、木々の間の小さな空間で立ち止まる。曇り空でも僅かな木洩れ日が差し込み、仄かに足元を照らしている。
かなりの時間が過ぎたように感じる。もう幸雄より後の人も出発している頃かも知れない。
それでも構わず、賢介は声を張り上げた。
「小笠原さーん!!俺はここです!!」
その時、背後で微かに草の揺れる音がした。
それだけでも飛び上がりそうなほど驚いた(実際飛び上がった)が、その音がこちらに近づいてくるのがわかって、全身が金縛りのように硬直した。
ガサガサと近づいてきたものは、動けない賢介の真後ろで止まった。ハァ、ハァと荒い呼吸音だけが聞こえる。
に、逃げられなかった…。俺のバカ…!
小笠原さんかな?そうであってほしいんだけど…いや、野生の生き物の類かもしれない。
こんな得体の知れない森だ、得体の知れないバケモノがいたって不思議じゃない。かも。
待てよ、もしかしたら殺し合いなんてのはウソで、さっきの兵士たちが待ち伏せしてて皆殺しにする気なんじゃ…?
だったら、だったらどうしよう!?
怖ろしい考えばかりが頭に浮かぶ。
だめだだめだ、何で悪い方にばかり考える。よし、まずは落ち着こう。そしたらゆーっくり後ろを向くんだ。
一つ深呼吸をし、決心して、おそるおそる振り向く。――と、そこにいたのはクマ…ではなく、息を切らせて膝に手をついている幸雄だった。
「幸雄さん!」
「お前…速いなあ。声はすれども姿は見えず…ってやつだよ…本当に」
途端にヘナヘナと力が抜けて、賢介はその場に座り込んだ。なーにやってんだ、とゼーハー言いながら幸雄が笑い、続けて聞いた。
「ガッツは?」
「それが…まだ。いや、もう…」
「俺がどうしたって?」
二人とも丸くした目を見合わせて、声のした方を見る。
そこに立っていたのはまさしく、小笠原道大その人だった。
「ガッツ!!」「小笠原さん!!」
「あんなデカイ声で呼ばれたら、島中どこにいても聞こえるよ」
苦笑混じりにそう言われ、賢介は極り悪く頭を掻いた。
「スイマセン。あれしか思いつかなかったんで」
「いや、でもよくやってくれたよ、賢介は」
幸雄がいつもの笑顔で言う。頭に手をやったまま、今度はそれに照れ笑いを返した。
「集団で、ですか」
腕組みをしながら計画を聞いていた小笠原が、確認するように言った。
「うん。一人でいるよりは固まってた方がいいだろ。
それに、必然的に同じポジションでの争いが真っ先に起こるはずだ。
それを、事前に説得して止める。まだ始まったばかりだ。内野の奴を見つけ次第捕まえて集める」
二人の会話を、顔を交互に見ながら聞いていた賢介が、はたと気付いた。
「内野手だけ、ですか?」
「…ああ」
「他のポジションの人もいた方が安心できるんじゃないかと思うんですけど…。
だって初めからその、殺す、対象じゃないわけだし。
やるなら皆で団結した方が良くないですか?」
『殺す』という言葉を口に出すのにさえ、既に抵抗を感じる。幸雄は少し考え込むような様子で黙っている。
そこに、思いがけない一言があった。
「…コユキさん。俺は一緒には行かない」
「えっ?」
思わず賢介は甲高い声を上げる。幸雄の表情が険しくなった。
「…理由は?」
「一人がいい。やることがあるんです。その為には身軽な方がいい。――それと」
一呼吸おいてから、付け加える。
「俺の予想が正しければ、あなたはとても酷い事を考えてる」
賢介は今度は幸雄の方を見る。酷い事って何、と目だけで問う。
幸雄は険しい顔のまま黙っていたが、やがて口を開いた。
「そうだ。俺は確かに酷いことを考えてる。…俺は、内野手さえ集められればそれでいいんだ」
予想した通りの答えだったらしく、小笠原が目を伏せた。
「幸雄さんどういうことですか!」
「聞けよ、賢介。これは同ポジションでの殺し合いだぞ。そう言われただろ。
加えて、24時間以内に一人も死ななければ、全員が死ぬんだそうだ。
お前は殺されたいのか?――誰か別の奴に、違うポジションの奴らに犠牲になってもらうしかないだろう」
空気が凍った、のがわかった。
『仲間』として集まることは、『敵』がいなくなることだから、内野手だけは殺し合う必要がない。
投手、捕手、外野手。残りのポジションの選手たちが殺し合う間に、内野手だけで脱出の方法を考える。
「そんな、そんなこと…」
「俺だって本当は嫌だ。自分がどうしようもなく非道なことを言っているのはわかってる。
でもな賢介、ガッツ。現実に、ナラが死んでる」
ビクリと体が震える。人が死ぬところを見てしまった、それを思い出してしまうのさえ怖い。
「俺はもう、誰かがあんな事になるのは見たくないし、自分でもできない…。
だがな、それよりも、自分があんな事に、なりたくないんだ。…酷いと思うか?
…俺にも、お前らにも家族がいる。帰りたいんだ。無事に。お前らだってそうだろ?違うか?
もしかしたら、皆で集まったって脱出なんか不可能かもしれない。
でも、ほんの少しでもいい、限りなく0に近くたっていい、最後まで生きていられる可能性に賭けたいんだ」
幸雄の目には涙が浮かんでいた。
「俺は死にたくない」
チーム1のベテランが、こんなにも弱さを、人間の汚い部分を、自分たちに見せるのは初めてだった。
こんな言葉を、この人の口から聞くなんて。
…幸雄さんだって、悩んで、苦しんでるんだ。俺と、きっと俺たちと同じように。
賢介が思わずもらい泣きしそうになった時、小笠原が言った。
「それが、コユキさんの答えですか」
「…ああ、そうだ」
重苦しく答える幸雄に、小笠原は短い沈黙の後、告げた。
「俺は一人で行く」
「…小笠原さん」
「…そうか。なら止めない」
俯いた幸雄に向かって小さく一礼すると、小笠原は二人に背を向けて森の中へ歩いていった。
【残り59人 1+1+1+1=4人でゲーム終了】
小谷野栄一(31)は、田中幸雄が出て行くところを目で追っていた。
(幸雄さん…)
彼のあんなにも不安げな表情を見るのは初めてだった。いつだって、おおらかに笑って、チームメ
イトを和やかにしてくれる人なのに。
(幸雄さんが死んだら、どうしよう、どうしよう、どうしよう)
先ほどの奈良原の遺体は、まだある。それも目の前にだ。
彼は誰よりも、田中幸雄の身を案じていた。
奈良原のように、田中幸雄もなるのだろうか?それを考えると、恐怖で身がすくんだ。
小谷野がプロに憧れたのは、田中幸雄という選手がいたからと言っても過言ではなかった。
キャッチボールをするだけで緊張した。この人と一緒に野球ができるだけで、嬉しかった。
そのくらい、彼にとって田中幸雄という人物は特別だった。
沈鬱な表情をしているのを見かねたのか、紺田 敏正(52)は小さく小谷野をつつく。小谷野は、
ハッとして振り向いた。
「おい、大丈夫か」
「え?あ、あぁ」
気付かれないように、視線を外して小さな声で安否を尋ねてくる。小谷野も小さく返事をした。
「随分出ていったな。もうデカい番号のやつらしか残ってないじゃん」
さっきまでひどく人口密度の高い空間だったのが、あっというまに少なくなった。そのせいか、寒
さまで感じる。
両腕でひじの辺りをさすっていると、紺田は続けた。
「…お前、わかってるか。先に出ていったやつらのほうが有利なんだぞ。待ち伏せだってできるし
、罠だって張れる」
「え?」
紺田は抜け目無く視線を張り巡らせながら、ぼそりと呟いた。小谷野は面食らった。
(今、こいつ、何を?)
「だから、そろそろ行くだろ、お前。気をつけろよな」
「え…まさか、お前、先輩たちがこんなふざけたゲームに乗るって思ってるのかよ…」
「お前、顔に似合わずのんきな奴だなぁ」
あきれたように言われて、小谷野はむっとした。
「実際一人殺されてるんだぜ。皆死にたくないって思うだろ」
「そりゃ、そうだけど」
「っと、やばいな、これ以上のおしゃべりは。気をつけろよ」
ぽんと尻を叩き、紺田はさりげなく小谷野から離れた。
気付けば、心拍数は随分と上がっている。
(呼ばれたら、俺も、出て行かなきゃいけないんだ…)
殺しあう場所に。
そしてまた、自分も誰かを殺すかもしれないのだ。
(嫌だ…死にたくないし、殺したくない…どうしよう、どうすればいいですか、幸雄さん…)
白井の声が、無常にも彼の背番号を呼んだ。
【残り59人 1+1+1+1=4人でゲーム終了】
84ですが、選手の一覧を投下してくれた方々ありがとうございます。
非常に助かってますw
一体どこまで続いているのだろうか。
出口の見えない深い森―――木々の間を、しかし坪井は迷う事なく歩いていた。
その目は怒りに満ちている。
感情の矛先はもちろん白井、あるいはそのバックに付いているであろう実態の見えない存在に対して向け
られているに他ならない。
抑え切れず、先程呑み込んだ疑問を頭の中で言葉にする。
(『球界に不可欠な存在』って何だ?)
(確かに新庄剛志は球界に不可欠な存在だ。それは判る)
(だったら俺達は何なんだ?)
(あいつらにとっての俺達は、球界に不可欠ではない存在、なのか?)
(だからこんなゲームを始めたって言うのか?ツーさん抜きで)
つまり、自分は「いなくなっても構わない存在」と言われたに等しいのだ。
自分だけではない。あの瞬間、白井は、あの場にいた選手全員の、今まで積み重ねて来た努力の全てを、
この上なく理不尽な形で踏みにじったのである。
努力家だと自負している坪井にしてみれば、それは許される事では無かった。
(お前らは必要ない、だから適当に頭数絞って残りは皆死ねば良い。要はそういう意図なんやろ)
(んな普通ヤるか!主催は絶対頭イカレとる!)
できる事なら殺し合いなど放棄して、全員で一緒に帰りたい。
だがそれは叶わぬ夢だ。
赤く染まった亡骸。錆び付いた血の匂い。目が、鼻が、奈良原の死を鮮明に覚えていた。
(気の毒やったなぁ……。川島も)
途端に悲しみが沸き上がる。そんな心境の変化に合わせるようにして歩調が緩んだ。
そこで初めて、坪井は自分がとんでもない速さで歩いていた事に気付く。
後ろを振り返れば一面の森。スタート地点はもう見えなかった。
彼は小さく溜め息を吐くと、ひとまずカバンの中身を確認しておこうと考え、背の高い草の茂みに足を踏
み入れた。
カバンのジッパーを開き、まず水と食料が入っていた事に坪井は心底ほっとした。
その下には折り畳まれた島の地図、黒と赤の水性ペン、安っぽいコンパス、そして―――小振りなナイフ
が、一つ。
坪井はそれにゆっくりと手を伸ばし、柄を握った。
どこにでも売っているような普通のナイフだ。恐らく果物を切るのに使う類の物だろう。
白井は、これを、武器だと言う。
(これを使って俺は、人を、殺すのか?)
答えはノーである。
他人を殺してでも生き延びたい、だなんて自分には到底理解できない感情だ。
少なくとも、今は。
だが他の人間が何を考えているのか判らない以上、武器は武器らしく身に付けておくのが賢い選択と言え
るだろう。
坪井は果物ナイフを鞘ごとユニフォームの後ろポケットに突っ込んだ。カバンを手に立ち上がる。
(とりあえず誰かに会わな話にならへん)
今最も会うべき「誰か」。
浮かんだのは、激情を露に部屋を飛び出した背番号2の背中だった。
(……………探そう、小笠原を)
「お、7番出発。このまま森を抜けると灯台か……待ち合わせでもしてんのかぁ?」
『……ねぇ古城さん。報告は良いんです、何か、こう、もうちょっとアクションを起こせないものですかね』
「だから何度も言っただろ?目出し帽とウィンドブレイカーで何ができるって言うんだよ」
坪井がいた位置から数メートル後方の、反対側の茂みの中で。
言いながら、古城は自分に与えられた武器の頼りなさを自嘲的に笑った。その手にはトランシーバー。
『それを見て考える事は一つじゃないですか』
「ハハ、コンビニ強盗にでもなれってか?」
『良いですか、あなたは人を殺傷する能力を持つ武器を持っていないんです。それはこのバトル・ロワイ
アルの参加者の人数を減らす身としては致命的だ。だからまずは奪わなくちゃいけない。他人の武器を、
理想はカバンごと」
「……簡単に言うけどな。それって凄く難しい事だと思うぞ」
『でも今の所それしか道が無いんですよ。武器の交換を認めるなんて話は聞いてませんし』
「考えてもみろよ、もし相手が、」
『目出し帽を被れば当然顔は判りません。加えてウィンドブレイカーを羽織れば背番号だって判らない。
これは大きいですよ、あなたはステルスマーダーだという事を知られずに行動できる』
「ス、ステルス……?て言うかお前、俺の話聞いてる?」
『聞いてますよ。無視しているだけで』
古城は、はぁぁ、と深い溜め息を吐いた。
多分何を言っても無駄だ。想像していたよりも厄介な仕事だが、やらなければならないだろう。
「……ったく。頭の良い奴っていうのは随分と薄情なんだな、東大卒の遠藤良平君よぉ」
【残り59人 1+1+1+1=4人でゲーム終了】
すみません……意味が判りづらいので訂正させて下さい。
×『でも今の所それしか道が無いんですよ。武器の交換を認めるなんて話は聞いてませんし』
○『でも今の所それしか道が無いんですよ。いくらあなたがこちら側の人間であるとは言え、別の武器の支
給を認めるなんて話は聞いてませんし』
(――クソが!)
苛立ちを隠さずに森を進む。ただひたすらに、奥へ奥へと。
ダルビッシュ有(11)。野球ファンもそうでない者も彼の名前を聞いたこと位はあるはずだ。
彼は今まで、常に人の視線を浴びる存在だった。
早くからその才能はマークされ、投げる試合にスカウトが来るのは当たり前、
190cmを超える長身とルックスも相俟って、高校1年生当時で既に追っ掛けの女性ファンまで付いていた。
まだ記憶に新しい甲子園での活躍、当然のドラフト1位指名で入団後も人気は収まるどころか加速していくばかりだった。
一挙手一投足に注目が集まり、その言動が逐一スポーツ紙の紙面を飾る。
何をやっても目立つ。だから、隠し事などできるはずもない。
不祥事が二度もスクープされて、『アイドル』は『悪ガキ』へと、勝手にイメージチェンジを図られた。
言い訳をさせてもらえば、あれは自分だけが悪いんじゃない。
憂さ晴らしにちょっと遊んでいただけだったんだから。
そういう境遇の、とにかく全てが鬱陶しかったから。うんざりだったんだ。
ちょっとの間ぐらい、面倒臭い事から解放されたかっただけだ。
結局は逆効果になってしまったが、アイドルなんていう女々しい代名詞が外れてくれたのは、まあ不幸中の幸いかもしれない。
そう思うことにしてやった。
ひねくれ者の高卒ルーキーは、自分で出端を挫いたものの、シーズン半ばには自分で一軍行きの切符を掴み取った。実力で周囲を黙らせたのである。
――それから。
一個の戦力として扱われて、良いも悪いもある程度経験して、
綺羅星の如きプレーヤーたちの中で、所詮『甲子園の星』である自分の肩書きなどこれっぽっちの意味も持たないことに気付かされて。
すっきりした。あれだけ持て囃されていた自分が、数多いる者たちの内の一人にしか過ぎない。
その事がむしろ、彼にとっては心地良く感じられたのだった。
ここでは誰も、俺を特別扱いしない。俺だけが、ジロジロと無遠慮に隅から隅まで見られることは、ない。
ファイターズが2005年の戦いを終える時まで、彼はその一員であり続けた。
――そうして。
彼は生まれ変わったような気分でいた。
やっと周囲の関心も以前より薄れてくれた、と思った。
もう自分は特別じゃない。北海道日本ハムファイターズの、一人の選手なんだ、と。
禊を済ませたように、清々しい気持ちで新たなるシーズンの幕開けを迎えられる、はずだったのだ。
――この状況は何だ。
「馬鹿にしとんのか」
感情をそのまま声にする。小枝を踏みつけ、草を掻き分け、奥へ奥へ。
音がしようがお構いなしに。いちいちそんなことを気にしてはいられない。
こんなくだらない事で、この俺から貴重な時間を奪うなんて。自由を奪うなんて。野球を奪うなんて!
勝手に決めやがって、と白井の説明を聞き終えた時でさえも思っていた。
今の彼を突き動かすものは『やりたくないこと を やらされてる』という怒り、ただ一つ。
子供じみた忿懣を腹に抱えながら、プロ2年目、19歳の若者が進む。
歩けども歩けども、怒りは一向に収まらず。
「殺すぞ」
矛先を誰に向けるともなく毒突いた。
それがいやに響いたように、どこか感じられて、思わず足が止まった。
シン、と、途端に静まりかえった森の中。
自分で自分に怯えたみたいだったのが格好悪くて、余計腹立たしくなった。
「アホか」
一言吐き捨てる。
…森の空気でも吸ってみたら、少しはマシな気分になれるだろうか。
ふと、そんな考えを持って顔を上げる。
その項に冷たく濁った空気が纏わりつき、汗と共にするりと背筋を這った。
瞬間。肝と一緒に頭も冷える。
いきなりだった。今自分が置かれている、本当の状況をまざまざと思い知った。
この沈黙の中に潜むもの。自分の目の届かない所に。
『殺すぞ』
その言葉、何度も、殆どは冗談で使った言葉が、急にシャレにならない重みを持って迫ってくる。
何気なく口にしてきた、ふざけて親しい人間にも言ってきた言葉。その意味。
――今更気づいたのか?
どこかで誰かが嗤う。自分自身の心の声か、こんな運命の歯車を仕掛けた奴か、それとも。
――ころすぞ。
(…ふざけるな。)
「…殺されて、たまるか」
どこからだ。今度はどこから俺をジロジロ見てやがる?
これまでいつもそうだった。そしてきっと、これからもそうなんだろう。
また、俺に見えない所から俺を見下ろしてやがるんだろう?
「思い通りになってたまるかよ」
何も変わっちゃいなかった。
握りしめた両の拳が震える。心にうっすらと、だが確かに滲んだ恐怖のためにでは、ない。
「ムカつくんじゃ!!」
ダルビッシュ有は、再び歩き出す。今度は幾分慎重に。
自分の信じる方向を真っ直ぐに見据えながら。
若い憤りを込めた拳と、
まだ幼さの残る表情は、固い。
【残り59人 1+1+1+1=4人でゲーム終了】
糸井は投手のまま?
このスレので文章書いてる人はハムファンじゃないみたいですね。
今年のシーズン直前って設定じゃなかったっけ?
だったら糸井は投手でOKのはず。
職人さん乙です。まだ始まったばっかりだけど投下されるたびにwktkしながら読んでます(゚∀゚)
職人の皆さん乙です!
作品が矢継ぎ早に投下されて嬉しい。
s
99 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/08/04(金) 23:14:25 ID:dF8xggQ+0
1
高橋信二
( ^ω^)ぼくはひとりだぉ
( ^ω^)・・・
( ^ω^)誤爆じゃなくて捕手だぉ
hosu
うはーオモシロス!それぞれ個性が出てていいね。
ダルも頑張れよ
いつか新庄が出てきそうなのは気のせいかww
104 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/08/07(月) 22:13:34 ID:/Hy//xHpO
あげ
hosyu
107 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/08/09(水) 12:12:58 ID:j+kjRyxr0
あげ
保守
ほしゅ
んんー
出口を出ると、人の手が入っていない木々が天に伸びていた。
季節はまだまだ寒いはずなのに、ユニフォームだけでも大丈夫だ。
かなり南西に位置する島なのだろうかと武田久(21)は思った。
(寒くないのは・・・俺が興奮してるだけかな)
興奮というにはまだ生ぬるい。もはや体温や気温などに意識が行く状態ではなかった。
目の前で人間が一人死に、それなのに、現実は淡々と過ぎていく。確かな狂気を孕んで。
それを興奮と呼ぶには、まだ平和すぎる。誰かの精神から病んでいってもおかしくは無い状況だ。
その中で、幾分かは冷静だと、彼は自分でそう判断した。
「気分はノーアウト走者2塁3塁、1点差、9回ウラ…ってトコかな。
うん、ひとつだけなら四球も大丈夫、だし」
誰もいないからか、自然と独り言が出た。
スパイクが地面の草を踏んで、ガサリと音を立てる。
彼は実年齢よりも幼く見える顔を歪めて、指の腹で鼻を擦った。
「…さて、どうしようか。殺し合えって言われたけど…そんな簡単に人って殺したりできるもんなのか…?」
例えば、自分が誰かを?
…とても、それを現実とは思えなかった。
そもそも、誰を殺すと言うのだ?彼は、誰も憎んでいない。
まだ、この状況を完全には受け入れられていないのかもしれない。
武田は物思いにふけったようにしばらく歩いたあと、太い木の根元に腰を降ろし、鞄を開けた。
誰もいないのだ。質問しても答えが返ってくるわけではない。それならば、今ある状況をまず確認しようと、鞄
の中を確認することから始めてみる。
そこには食料と水、地図、そして黒っぽいレザー状のものが入れられていた。
「なんだこりゃ…」
持ってみるとずしりとした重みがあるそれを広げると、黒いレザーのベストのようなものだった。
「ぼ、防弾チョッキ…?」
たまにテレビでやっている警察モノのドラマでお目にかかる、それ。
人生で本物を見る機会などあろうとは、夢にも思っていなかった。武田はそれを隈なく触って、観察してみる。
仰々しいことだと思った。
だが、次の瞬間、とんでもない結論に至る。
「…こんなもんが支給されてるってことは、誰かには拳銃が支給されてるってことか?」
考えて、ぞっとした。
何十人もこの『ゲーム』に参加しているのだ、自分のような穏健派ばかりではあるまい。
もしかしたら、既にこの島のどこかで殺し合いが始まっているかもしれない。
「…着よう。カッコ悪いけど」
彼はもそもそとそれを羽織った。
仰々しいと感じたそれが、今では頼りなく感じた。
支給されたペットボトルの水を一口飲み、武田は立ち上がった。
「よし…とりあえず誰か探さなきゃ」
誰か。
すぐに、武田の脳裏に一人の選手が浮かぶ。
「…建山さん、かな。やっぱり」
建山は、彼らブルペン組みの精神的支柱だった。
明るく快活な性格と、兄のような温かみがある人物。建山がいるだけで、ブルペンは和やかだった。
投手陣なら、おそらく建山を頼るはずだ。
しかし、武田のなかに、小さな疑惑が浮かぶ。
(……仮に、建山さんがこのゲームに乗ってたら……。いや、まさか。まさか…何を疑ってるんだ。大丈夫だ、
信じろ。仲間だろ。信じるんだ)
ふとよぎった不安。
それを打ち消すように、彼はぶるぶると首を振った。
(信じろ)
信じること。
それがこの『ゲーム』のキーワードということに、彼はまだ気付いていない。
信じることができなくなったとき、人は、人を殺す。
そういうシステムに、なっている。
信じるものが無くなったとき、それはこのゲームに組み込まれるときだ。
「信じるということ」
ここまでです。
乙です!
久ガンガレ!
名を呼ばれ、武田勝(38)は顔を強張らせながら起立した。
『そこ』を見ないで通り過ぎようとしたが、思わず足が止まる。引き摺られるように、吸い寄せられるようにその方向を見た。
奥に川島が座っている。というより、辛うじて「座った」体勢を保っている状態だった。
ユニフォームには既に赤い斑点が飛び散っていて、まだ顔に付いた血を拭ってもいない。
放心状態で灰色の壁を見ている。
どうしても放っておけなかった。次は彼が呼ばれる番なのだ。
できるだけ手前の『それ』には目を遣らないようにしながら話しかける。
「川島。大丈夫か」
聞こえているのかいないのか、ぼんやりと遠い目をした表情は変わらない。
「生きて、また会おうな」
勝はそう告げると、まだ馴染まないチームメイトの間を掻き分けるように歩いていった。
「背番号39、川島慶三」
名前が呼ばれた瞬間、抜けていた魂が戻ってきたように、川島はビクリと身を震わせた。
「早くしろ。後がつかえてる」
壁に寄り掛かりながらもどうにか立って、隣を見ると、そこにはまだ奈良原が横たわっている。
背に当たる壁はやはり冷たい。夢じゃない。何もかも消えてはくれない。現実に、『それ』は『そこ』にある。
「近くの奴ら、道を…」
空けてやれ、と言おうとしたであろう白井の声を遮るように首を振る。ぐっと唇を噛み締めて、川島は奈良原の骸を跨ぎ、歩み出た。
フラフラと今にも倒れそうに歩いていく川島に、同い年だがプロでは4年先輩の佐藤吉宏(55)が声をかけた。
「川島、しっかりしろ。死ぬんじゃねえぞ」
川島はそちらを見なかった。
薄暗い森の中を当て所なく彷徨う、川島の目は虚ろだった。足だけがまるで機械のように前へ前へと体を急かす。
何なんだ?
俺はプロ野球選手じゃなかったか?野球をするために、この世界へ入ってきたんじゃなかったのか?
初めてのキャンプが終わったばかりなのに。もうすぐオープン戦も始まるっていうのに。
それがどうして、今、こんな所を歩かされている?
何やってんだ、俺?
…わからない、わかりたくもない。
さっきから、川島の頭はちゃんと働くことを拒否していた。
深く考えようとしたり、思い出そうとしたりすることを避けていた。
『それ』をしてしまったら、何か自分がとんでもないことになってしまいそうで。
無意識の内に意識的に、彼は考えるのを放棄していた。
どこまで行っても、木、木、木。似たような景色を見た覚えがある。それも、つい何時間か前の事だ。
切れ間無く続く木々の行列。どこを走っているのか、…どこへ向かっているのか。――そういえば今は何月何日の、何時何分何十秒だろうか?
また頭がぼうっと霞がかってくる。しかし今度は先程とは違う。
頭の奥、後頭部のやや下の方に感じられる部分で、何度も何度もリフレインするたくさんの声が聞こえてきた。
「――単刀直入に言おう。お前らには、これから殺し合いをしてもらう」
「お前らはそいつを使ってチームメイトを殺す」
「…これが何だか分かるか?」
「もう一度言うぞ。投手1人、捕手1人、内野手1人、外野手1人だ」
「…いい度胸をしてるな。うちのスカウトも捨てたもんじゃあなかったというわけだ。だが、無理だ」
「わかるな川島」
「生きて、また会おうな」
「死ぬんじゃねえぞ」
「チームメイトを殺す」
「もう一度言うぞ。投手1人、捕手1人、内野手1人、外野手1人だ」
「内野手1人」
『 ひ と り 』
『期待している』
突然、止まっていた川島の思考回路が動き出した。
ここがどんな所かは知らない。何故ここにいるのかもわからない。
だが何をすればいいのかは知っている。
言われた通りにするんだ。今はそれしかないだろう。
自分なら、できるはずだ。
急速に考えがまとまっていく。足の動きと同調するように、どんどん前へと進められていく。
何か忘れている気がしたが、そんなことはもう、その時はどうでもよかった。
ルーキーとはいえ自分は大卒、即戦力として期待され入団した身だ。1年目から結果を残していかなければならない。
――やってやる。俺は絶対にこの世界で生き残るんだ。
その瞳に光が宿った。
乙。川島豹変のヨカーン
保守る
久も勝も頑張ってほしい。
川島イ`!
保守
ダル20歳おめ
>>123 ダ「二十歳かぁ…。これで酒もタバコも『殺すぞ!』も解禁か…」
最後は違うぞ、ダル。
125 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/08/14(月) 13:35:10 ID:7CzDF2yT0
あげ
出口を出る時、市川卓(50)はかなり警戒しながら、ドアを閉める。
そして勢いをつけ、その場から猛スピードで走っていく。
みんながみんなやる気になっているとは思わないけど、出掛けを襲われたらこっちは武器を持っていないからな。
誰がやる気になっているのか、はたまたやる気になっていないのか。
それらはわからないまま、もっと言えば、この狂った「ゲーム」とやらが、何の目的で行なわれているのかなんて
さっぱりわからないままだ。
「ふざけるなよ……」
足を止め、市川は思わず小さい声で呟いた。
20分ほどは走っただろうか、だいぶ先ほどのスタート地点の『会場』からは、離れた計算だ。
ここからは、プランを持って慎重に行かなければな。冷静に考えろ。オレ。
誰がやる気になっているかわからないが、まずは生き残るために殺される危険性が少ない、内野手以外の人を見つけよう。
さすがに一人で闘うには、ちょっとキツすぎる。
市川は、そう考えをまとめると、バックの中から武器のアーミーナイフを取り出し『仲間』を探し始めた。
どれくらい歩いたのだろうか、『会場』から離れるように離れるようにと歩いていた市川は、目の前に大きな建物を見つける。
(ん、これは中学校か?)
すでに廃校になった、荒れ果てた小規模な建物ではあったが、それは確かに学校だった。
(ここなら、誰かいるかな?)
市川はゆっくりと学校内部へと入っていく。
小規模な学校だったのだろう。
ざっと見た感じ、1階層に教室らしいものはわずかに4クラス。3階建てなので、全部で多くても15クラスって所だろうな。
市川はそうメドをつけ、ゆっくりと階段を上がる。
知らない学校とは言え、学校の作りはどこも似たようなものだ。
どこか懐かしさを感じながら市川はゆっくりと進んでいく。
が。
「市川くん?」
3Fに上がった頃、突然背後から声をかけられ、身を硬くする。
声の持ち主には見当がついていた、わざわざ声を掛けるということは大丈夫なのだろう。市川はそう判断し、ゆっくりと振り向く。
「ああ、やっぱり佐々木さんだ、脅かさないでくださいよ、ちょっとビックリしちゃいましたよ。」
そう言って、市川は目の前に相対する佐々木を見つめる。
「ああ、市川くんだ! 会えてよかったよ」
佐々木貴賀(45)はいつものようにそういうと、ニコニコと穏やかな笑みを浮かべている。
「こっちもちょっとビックリしちゃいましたよ。」
(佐々木さんかー)
市川は会話をしながら、出会ったのか佐々木であったのは、幸福なのか不幸なのか考え始めていた。
殺される危険性は温和な佐々木さんなら、まず無い。
だが、仲間と考えるには頼りになる感じじゃないし、ちょっと貧弱じゃないか?そんなことを考えながら、ピリピリとした警戒を解いていく。
「ちょっと、警戒しちゃいましたよ。で、これからどうします?」
市川は佐々木から視線を外し、3Fの窓から外を見る。ココなら周りから一段高い感じだし、警戒するにはいい場所だ。
(最悪……、ここなら迎撃するにはいい感じだな。)
外から見たときでは感じなかった、場所の利点について市川は思いをめぐらせる。
「そっか、でも市川くんだよね。そのくらいじゃないとリアリティないし、ボクも良く考えてるなー」
(……え?)
佐々木さんはなにを言っているのだろう。あわてて視線を佐々木へと戻す。
「ばーん!」
佐々木のふざけた口調とともに、響くような銃撃音が周りの木々を揺らす。
(え、え 何?)
市川は現状を理解する間もないまま、頭部に衝撃を感じていた。
「ざんねーん、市川くん、ばとろわ失格でーす。」
市川は薄れゆく意識の中、最後にそんな声を聞いていた。
【残り58人 1+1+1+1=4人でゲーム終了】
tyowwww
最後の背番号――69番が出ていった瞬間、白井は緊張の糸が切れたようにその場に膝をついた。
今度は、銃器を装備した兵士は反応せず、白井を抱え起こさなかった。
「すまない……みんな……すまない……!」
涙と鼻水が顔を汚し、だがそれを拭う気力さえわかず、白井はただただその場に突っ伏した。
どのくらいの時間が流れたのか。
白井は汚れるのにも頓着せず、濡れた顔を袖でぐいと拭った。そして『事前に命じられた通り』その部屋を出て
、同じ建物にある別室に移動した。
その部屋は、この島における心臓部とも言える場所だった。
白井が知る限り、外と連絡がつくのはここだけだ。ただし、彼が命ぜられた事以上のことをすれば、待っている
のは背後からの銃弾の嵐。この場で白井に自由は無い。
目の前には大きめのスクリーンがその存在を主張し、手元にはマイクと操作ボタン、無線がいくつかある。
白井は、ここで『ゲーム』の進行を見守らなければならない。
選手たちの生き死にを、逐一把握しなければならないのだ。
白井の耳に、大社の声が蘇る。
『きみは、一定時間毎にスクリーンに映る選手たちの生存状況を島内に放送する。あとはそれだけだよ、それだ
けで君はこのゲームのエンディングを迎えられる。いい役柄だと思わないかね』
傲岸なその声に、白井は泣き声交じりに叩きつける様に叫んだ。
『あなたは!私に、選手たちを死地へ赴かせるだけでなく…その生死までも見届けろと言うんですか…!』
ただでさえ重く圧し掛かる罪の意識。
それを助長させるように、その生死の監視までやれという残酷さに、白井は唇を震わせて叫んだ。
が、大社はため息をついただけだ。
『君は…選手たちが殺しあうというのに、それを知っているというのに、自分だけ見ないフリをしてゲームを抜
けようとするのか。そのほうが、よっぽど卑怯で卑劣だとは思わないか?』
その言葉に、白井はぐっと言葉に詰まった。
卑怯で卑劣…。
その通りだと白井は思う。
ヒルマンのように自身の意思を通すでなく、事実を知りながら逃げようとしているのだから…。
『君の苦悩もドラマ性があっていいがね…、これをゲームだと思えば随分とラクになれるのではないか?白井く
ん、これは文字通り『ゲーム』なのだよ。莫大な金がかかった、大人のゲーム。
操作しているのは、私じゃない。私もゲームの中にいる』
『……え?』
意味ありげな言葉で、そのシーンの記憶は途切れている。
大社と面会したのは、そこまでだったからだ。
ひとつの島を用意する資金、ひとつの球団に殺し合いをさせることの出来る権力。
ゲームのコントローラーを握っているのは、誰だ?
白井に分かるはずもない。彼は考えることを許されない、ただのコマの一つなのだ。
白井は全ての考えを放棄し、震える指先でスクリーンの電源を、入れた。
白井の目から、もう僅かな感情も見出すことはできなかった。
131 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/08/15(火) 15:21:35 ID:YpFwII5TO
白井さん…
続きが気になる!書いてる人お疲れさまです。
ほしゅ
134 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/08/16(水) 23:33:16 ID:U5+1Qcwz0
ヒルマン。・゚・(ノД`)・゚・。
続きは気になるけど
好きな選手達が死んでいくのもツラいな…。
作家様マーダーかよ!
続きが23しく気になる。
捕手
138 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/08/19(土) 01:04:28 ID:WTpd2k6BO
保守
139 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/08/20(日) 18:39:22 ID:WZLG659dO
続きマダー?
高橋信二
鶴岡慎也
142 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/08/21(月) 14:45:16 ID:rsQOjEvR0
中嶋聡
糞スレあげるな。
こういうくだらないので喜ぶやつもいるんだろうが、
選手の名前でのガキじみた殺し合いを書かれることで
不愉快になるファンの方が多いんだ。
>>143 アンチのレスはおまいさんだけのようだが
いやでも人を選ぶスレなのは間違いないよ。自分は楽しみにしてるけど。
この板って保守するにはagesage関係ないんだっけ?
だったらできるだけ下のほうにスレがあったほうがいいとは思う。
というわけで新作期待しつつサネサネ
でもたまにageないと1日で落ちるときがある
出口を出た紺田敏正(52)は緊張の糸が解けたのか急に座り込んだ。
「まさか奈良原さんが・・・・」
しかし落ち込んでいる暇がなかった。すぐにでもここから離れなかったら
誰かに殺されてしまう。
「まずは誰か探すとするか・・・はぁ・・・なんでこんなことになるんだよぉ」
紺田は走り出して行った。
10分ぐらい走ると紺田は木々が生い茂った森についた。
「まずはどこか隠れるところを探して自分の持ってる物を確認するか・・・」
少し進むと草に囲まれて隠れられそうな場所があったのでそこへ入った
まず紺田は鞄のなかを確認した。
「えーと食べるものに水と地図。それに・・・拳銃か・・・やっぱり誰かを
殺さなくちゃ駄目なのかなぁ・・・」
しかしほとんどの人間が思うように誰も殺したくないと思っている。
だが生き延びるには誰かを殺さなくてはならない。プロ野球の世界が同じように・・・
その二つの考えが紺田の頭の中で葛藤していた。
少し考えたあとで1人ぐらい会わないと心細いからな・・・誰か会わなくちゃ
と紺田は思った。
するとどこからか足音が聞こえてきた。
だ、誰だろう?
紺田は持っていた拳銃をぎゅっと握り締めた。
そしてその足音が近づいてきたところで立ち上がった。
「誰だ。武器を下げないと撃つぞ」
紺田はそう叫びながら銃口を向けた。
すると聞いたことのある声が聞こえてきた。
「や、やめてくれ!大丈夫だ。俺は何もしない!」
「何だ小谷野かよ・・・びっくりしたよ・・・」
小谷野は紺田と同い年だ。紺田、小谷野と大卒で仲も良い。
「よかったよ。紺田と会えて・・・誰とも会わなかったから不安だったんだ」
「俺も小谷野と会ってよかったよ。お前はこれからどうするんだ?」
小谷野は少し悩んでから言った。
「俺はみんなと合流し説得して誰も殺さない道を選ぶよ」
「じゃあ俺も小谷野についていくよ。皆無事でいるのかな・・・」
その後、紺田と小谷野は野球の話やプライベートの話などをしながら歩いていた。
すると島中にアナウンスが鳴り響いた。
「こちら白井だ。生存者は58名だ。脱落者は奈良原、市川だ。以上」
紺田と小谷野は唾を飲んだ。
「市川が・・・殺された・・・誰が殺ったんだよ。そんな酷い事が出来るかよ!」
小谷野は叫んだ。隣にいた紺田は考えた。
もしかしたら俺だって小谷野に殺されるかもしれない。殺されないなんて
保障は無いんだ。小谷野は俺の警戒心が解かれるまで油断させているだけ
かも知れないんだ。
紺田に信じるという心は消えた。そして今あるのはただ生き延びるために
どんな方法でもいいから助かりたいという考えだけだ。
それが人を殺すという方法でも・・・
そして紺田は鞄に入れておいた拳銃を取り出した。
それに気づいた小谷野は「何やってるんだよこんt」
バーンと銃声が森の中にこだました。
「ごめんな小谷野。生きるためにはこれしかないんだよ」
そして紺田は動かなくなった小谷野を背にして生きるために走り出した。
【残り58人 1+1+1+1=4人でゲーム終了】
あとタイトル付け忘れました。すみません・・・
一応タイトルは「生きるために」です
151 :
死への恐怖:2006/08/21(月) 23:11:56 ID:UPsYX6Y00
紺田に撃たれた小谷野はまだ息があった。
「くっなんで紺田が・・・」
小谷野はまだ混乱していた。
あの紺田に何があったんだ。人を殺そうとする奴じゃないはずだ。
皆も紺田のように殺そうと考えているのか。
なぜ俺たちは戦わなければならないか?仲間じゃないか。
最後まで生きて何になる?皆を殺した罪悪感しか残らないだろう。
なんとかしてこんな馬鹿げた戦いをやめさせなければ。
しかし小谷野は立ち上がることが出来ない。そんな体力は無い。
「くそ・・・俺は何も出来ないのか。ただ死を待つだけなのか・・・」
小谷野はそんな自分の無力さを感じていた。
そして小谷野はせめて誰かにメッセージを伝えるために支給された地図の裏に
自分の血で文を書いた。いわば遺書のようなものだ。
「こんな戦いは無意味だ。戦って何になる。止めるんだ」と・・・
それから時間が経ち
「俺・・・・・・もう駄目なのかな・・・」
小谷野は泣きじゃくりながらしゃべりだした。
「死にたくねーよ。死にたくない」
立派な大人が小さな子供のように泣いている。本当に死が怖いのだ。
どこかでまた銃声が聞こえる。
また無意味な戦いがあると小谷野は悲観し、そしてこの戦いが一刻も早く
終わって欲しいと祈りながら小谷野は息絶えた・・・
【残り57人 1+1+1+1=4人でゲーム終了】
(君はこのゲームには欠かせない一人だ。互いを疑心暗鬼にさせ、一人でも多くの選手を混乱と恐怖に導いて欲
しい。そのための道具は、何でも用意する。遠慮なく言ってくれたまえ)
リフレインする言葉に、岡島は絶望を感じて空を見上げた。
「…たまえ、って…じじぃ頭おかしい、絶対おかしいぜ…」
ころしあい、だなんて。
そんな非現実的な言葉を、簡単に信じることなどできる訳がなかった。
その疑惑は表情にありありと出ていたのだろう、滝鼻はゆるい笑みを浮かべ、岡島を尚一層不愉快にさせた。
(信じていないね?これを見てもらおうかな)
滝鼻の胸のポケットから数枚の写真が出される。恐る恐る覗き込んだ岡島の目に映ったのは、馴染みの無い外国
人の遺体だった。
(うぇ……え…?)
真っ赤に染まった衣類、白人特有の白さとはまた違った、血の通わない肌の白さ。
一体このグロテスクな写真は、何だ?
岡島は顔をしかめてよくよくその写真の主を見て、思い当たった顔に愕然とした。
よく見れば、その遺体は他球団の外国人監督だ…。
岡島は胸にせりあがってくる嘔吐感を覚え、口を手で押さえた。
(私の言う言葉の意味がわかったかね?ゲームを放棄した者の末路は、これだ。君は、もちろん僕も、既にゲー
ムの中にいる。リタイアするもしないも君の自由だ。しかし、リタイアするということがどういうことかは、わ
かるだろう?)
見開かれた瞳、おびただしい血液…。
リタイアすること即ち死だとするならば、岡島には事実上の拒否権など微塵も残されていないではないか。
じんわりと背中に冷たい汗が滲む。
嘘だろう?
嘘に決まってる。
自問自答も、無駄なことだ。
何故ならそれは、嘘でも夢でも、ましてや趣味の悪い冗談でさえ、無い。
(君が望むなら本物もお見せするが。少々時間はかかるが信じられないと言うのならば本物の遺体を、)
(いいいいいいいえ結構ですっ!!)
誰が好き好んで死体など見たいものか。岡島は頭を振って辞退した。
更に言えば、誰が好き好んで死地に赴くというのか。
しかし、彼の望むと望まざるとに関わらず、ゲームは進む。
進むにつれ、心の隅ですがっていた「まさかこんなことが現実なワケがない」という自身の常識も、希望も、本
物の銃器や毒物を見せられ徐々に消え失せていった。
彼の心に残ったのは、絶望だけだ。
彼にとっては正に夢のように現実感を持たない時間は刻々と過ぎ、気付けばこの離島に身をおいている。
彼はこの島のルールと、いくつかの銃器や薬物の使用方法を覚えさせられた。
この島のルール……それは耳を覆いたくなるものだ。
投手、捕手、内野手、外野手各種につき1名の生存枠があり、それを賭けて殺しあう。
島には「禁止エリア」が存在する。
入った奴は無条件で死ぬ。
禁止エリアは12時間毎に増えていく。
島の外に出た場合も死ぬ。
死とは、各々につけられた首輪の爆発による。
岡島はぞっとして、自身にもつけられた鈍く光る首輪に触れた。
「俺、ただの扇動要員じゃねぇの?なんで俺にもコレ、つけんだよぉ…」
気付きたくは無いが、岡島もその枠に入るために戦わなくてはならないということだった。
めそめそととめどなく泣き言が漏れる。
「ついてねぇ、ほんとに、俺、ついてねぇ…」
うまく扇動できたら君の希望は全てかなえるようにするよと、優しげに言われたって嬉しくない。
おとなしくパ・リーグの、北海道の球団で野球やってりゃいいんだろと思っても、その北海道の球団こそが消滅
の危機なのだ。
文字通り、消滅の。
「結婚するとき、野球やめりゃよかったよぉ…」
綺麗な空の色はますます非現実性を帯びて見え、岡島は延々と歩き、延々と独り言を言い続けた。
体を動かし口を動かしていなければ、不安で仕方が無かった。
だが動くということは、誰かと遭遇する可能性も孕んでいる。
そしてその可能性は、現実となった。
長く続く木々や茂みで視界が悪いせいか、人の気配に気付かなかった。
前方の茂みが、がさりと音を立てて、そこに何かがいることを告げた。
「……!」
誰かに遭遇することなど何も考えていなかった彼は、すぐさま身を翻して逃げようとした。
何もかもが恐ろしく、何もかもが嫌だった。岡島にとって、日本ハムファイターズの選手たちは本当の意味での
他人であり、ただただ恐ろしいだけの存在だ。
問答無用で攻撃されるかもしれない、としか岡島には考えられなかった。
しかし、その茂みからは、どこか場違いなほどの間延びした声が聞こえた。
「あの、すみません」
丁寧な呼びかけに岡島は逃げかけた体を何とか押しとどめた。その声に攻撃性を感じなかったからだ。
だが距離を取ったまま、いつでも逃げられる体勢で返事をする。
「は、い。なにか、俺に?」
「すみません、俺、今年初めてプロに入ったもんで、あんまり接点の無いポジションの方のこと実はよくわかっ
てなくて…でも一人じゃ怖くて、ですね。ようやく誰かに会えたんで、もしよければ、ちょっとお話でも…」
その男はゆっくりと、茂みから喋りながら姿を現した。
【残り57人 1+1+1+1=4人でゲーム終了】
すいません、話自体は仕上がってたんですが何度も推敲してるうちに
何がなんだかわからなくなって・・・
とりあえず投下。
『次、背番号16、金村暁』
自分の名を呼ぶ事務的な声が狭い空間に響き渡るのをどこか空々しく聞いてより後のことを、金村はよく覚えていない。
殺し合いって何だ、僕は何の変哲もない一小市民…ではないかもしれないが、少なくとも軍人や警官ではない、勿論ヤクザの類でもない。
生まれてこのかた、殺し合い…というような言葉が現実に発せられるような世界に生きては来なかったはずだ。
それがどうしてこんなことに、いや、どうしてこんなことを。…思考が堂々巡りする。
「おっと」
不意に、金村は声をあげた。知らぬ間に目の前へ大木の幹が迫っており、もう少しで額をぶつけるところだったのだ。
立ち止まって振り返れば、いつしか辺りは昼なお薄暗い森の中になっていた。風景の変化に気づかないほどに自分は熟考していたらしい。
しかしその甲斐あってか、金村は金村なりに、疑問に対する暫定的な答えを出した。
『なぜ僕らがこんなことを』、その疑問は先刻、金村自身が白井に直接ぶつけたばかり。しかも回答は得られていない。
替わりに明示されたのは…、自分たちをかばったためにヒルマン監督がすでに殺されているという、最悪の事実がひとつだけ。
勿論、理由もなく殺し合いをさせるなんてことがあるはずがない、何かしらの意図があるはずだとは思う。
しかし、それを考えようにも今はその材料となる情報が少なすぎる………。
つまり、今は考えても仕方がないということだ。
そこまで考えが辿り着いたことを自ら認識すると、金村は細い目を幾分余計に細めて、今歩いてきたほうを眺め、それから息を長く吐いたとき…、
『禁止エリアは12時間毎の放送で発表されだんだん増えていくからな』
『放送は死亡者の名前も流れるからしっかりと聞いておいた方がいい』
『24時間誰も死ななかった場合は、全員の首輪が爆発する』
一時思考を止めた金村の脳裏に、先刻の白井の言葉が不意に蘇った。
何か考え事をしていないと不安で仕方がないとでも言うように、脳が勝手に新たな問題を提示する。
しかし今は、今はこれ以上考えたくない。考えればきっと頭痛がする…。
「ま…、元々みんなチームメイトなんだし、いきなり動きがあるわけもない…」
言葉にして、口に出してみる。答える者はない。一陣の風に森がざわつく。
「少なくとも半日は身を潜めて…、静観、かな…、」
とりあえず保留。そう自分を納得させれば、幾分緊張を緩めることができた気がした。
今できることは何もない、とにかく12時間毎に流れるらしい放送を待って、なにか情報を得たら、また考えることにしよう。
そう決めて、どこか身を隠せる場所を探そうとまた前へ足を踏み出したそのとき。
遠く銃声が響いた。
動いた…、そう、いきなり誰かが動いたのだ。しかも、銃なんていう圧倒的な殺傷力をもつ武器を手にした誰かが!
新たに与えられたその事実がひとかたまりの電撃となって脊髄を一気に駆け上り、脳を容赦なく震わせる。
「…甘かった。それどころじゃない」
今、最優先で考えるべきは、何故自分たちが殺しあわねばならないのか、ではない。
それはどうせ今後まとわりつく問題だ。後でいい。とりあえず、とりあえず今は…、
「どうやって生き残るか、だ」
職人さん達乙です。
しかし改めて各ポジションで生き残れるのが
一人だけってのはキツイっすね・・・
特に投手なんかは、壮絶な争いが繰り広げられるのだろうか・・・wktk
ほしゅ
ほとんどの選手が出て行った部屋で今成亮太(62)は
ついさっき起きた奈良原が殺された
事を何度も思い出し一人怯えていた。
今年入団した同期の選手は皆、出て行ってしまった。
なので一人でいるしかないのだ。
はぁ〜なんでプロ野球選手になったのにこんなゲームに参加
しなくちゃならないんだよ…
人殺しなんて出来るわけねーだろ。夢なら覚めてくれよ…
今成はため息をついた。
特にする事もないので今成は冷たくなった奈良原を
出来るだけ見ずに何も考えないでいた。
すると急に誰かが自分の名前を呼んだ
「今成。早くバックを取り、出て行くんだ」
そう白井に言われると今成は一番近くにあったバックを
取って、ドアを開け外に出た。
「まぶしいなぁ」
長い間冷たく薄暗い牢獄のようなところにいた今成は
久しぶりの日の光がまぶしいと感じた。
うーん…まずは何をしようかな?まあまずは誰かを探すか!
そう決心して今成は歩き出した。
やっぱりここは中嶋さんにあうべきだな。
今成は捕手として大先輩にあたる中嶋にあることをきめた。
「あの人なら頼りになるし、ほかの人も中嶋さんを探して合流してる
かもしれない」
今成もやはり他の選手と合流し出来るだけ死者を出さない方法が
いいと思っている。
やはりまだ18歳というついさっきまで高校生だった今成は
誰かと一緒にいたいのだ。一人だと不安なのだ。
その時はまだ今成は人を信じる心があった。
けど何でこんなゲームを始めたのかな。
ふと今成は思った。
っていうか誰がこのゲームを考えたんだ?
もしかして俺の父さんもかかわっているのか?
今成の父親はファイターズのスカウトをしている。
今成はそんな父を尊敬している。
しかしもしかしたら父がこのゲームの主催者側の人間で
自分の子も必要がないと思っているのかという考えが
今成の脳裏に浮かぶと、とてつもない絶望感に浸った。
そして今成は涙を流しながら、小さく
「父さん助けて…」と呟いた。
18歳の子供にこんな生きるか死ぬかという重圧が耐えられるわけが
なかった。
今成は座り込んでしまった。
もう殺されても良いかもしれない。どうせ自分は親にさえ
必要のない人間だから…
それから30分は過ぎただろう。どこからか足音が聞こえてくる。
しかし今成はそれを見ようともしない。
殺したっていいよ…
今成は死を覚悟した。
「今成ー」
聞いたことのある声だ。
その人物が近くに来ると今成は口を開いた。
「中嶋さん…」
中嶋だった。さっきまで今成が探していた人だ。しかし今はどうだっていい。
「何しているんだよ。こんなところに座っていたら、殺されるかもしれない
んだぞ」
中嶋が今成を立たせようすると
「やめてくださいよ中嶋さん。俺はここで死にますから」
今成は投げやりに言った。すると中嶋が怒鳴った。
「何言ってるんだよ今成。死にたいなんていうなよ!」
今成はそれに反論した。
「何言ってんすか。同じ捕手として生き残るために俺を殺したほうが
得ですよ。どうせあんたの心の中じゃ俺をいつ殺すか考えてるんでしょ。
そんなきれごと言って…この偽善者が…」
その言葉に中嶋はキレた。そして今成の顔をおもいっきり殴った。
「お前はまだ生きてるじゃないか。助かる希望があるんだよ。なのにナラは…
ナラは…殺されたんだよ。もう二度と元に戻れないんだ。
もう俺は二度とこんな目に誰も合わせたくない。だから皆で助かるんだ」
殴られた今成は死んだ奈良原のそばに行って悲しそうにしていた中嶋の姿
を思い出した。
その姿を思い出した今成は立ち直った。
「分かりましたよ…中嶋さん…皆で助かりましょう…」
今成は皆で助かるという希望を信じた。
今成は立ち上がると、中嶋の後を着いていった。
皆で奈良原の為に主催者側と戦い。そして皆で助かるために…
投下します。
「とりあえず、今は」で、時間軸が進んじゃっていますが、
その前のお話として考えてください。
途中で押してしまいました。
時間軸としては
「慎重に慎重に」と「操縦者」の間に入るべきお話です。
投下遅れて申し訳ないです。
ようやっと、ようやっと終わりだ。役目が、役目がコレで終わる。
白井一幸は、これから決して幸せになれないであろう選手を不憫に思いながらも
目の前で奈良原以外の惨劇が行なわれないことに心底ホッとしていた。
「じゃ次、ラストだな。背番号69。岩下修壱!」
心からホッとする気持ちを代弁するかのように、発した声はリノリウム上の
床に反射して、ひどく廻りに響いていた。
コレで最後だ。
そうして、最後の選手である岩下修壱(69)を促そうと、視線を向ける。
視線を向けると、その促すような視線を感じたからか、岩下はゆるゆるとやる気
なさげに立ち上がる。
「一つ確認なんだが?」
岩下は立ち上がると、突然白井へと問いかける。
「ん、なんだ?」
突然の岩下の問いかけに、思わず息を呑む。
(頼むから、面倒なことは止めてくれよな。目の前で死体はこれ以上見たくないんだ!)
白井は正直そう思いながら、岩下に言葉の続きを促す。
「全員がスタートした30分後にこの部屋と周囲一帯は禁止エリアになる。」
「一人づつカバンを持って行く。」
岩下は先ほど白井が説明したセリフを繰り返す。
そして、一拍おくと再び岩下は喋り始める。
「先ほどの説明は以上だった。つまり30分以内なら、この部屋に再び入ってくるのも
可能だってことだよな?」
「え……」
白井は思わず息を呑む。
岩下の表情からは、何も読めないが言おうとしていることは、明らかに揉め事だ。
(武器を持って再びこの部屋に入ってくる?!)
「ええと…」
白井は思わず後ろの軍服の男達に裁定を願おうと後ろを見る。
「あぁ、そう言う訳じゃない。」
白井の考えを先読みするように、かったるそうに右手を振って、否定する。
そして岩下は白井に向けふたたび喋り始める。
「一人カバンは一個。 でも今、カバンは2個あるんだ」
岩下はそう言って、背後にあるカバンを指差す。
そこにはカバンは確かに二つ存在していた。
「つまり、一つ持って部屋を出た後、30分以内ならこの部屋に入ってもう一つ持って
行ってもいいんだろうな、って思ってね」
カバンは人数分用意されていた。
つまり奈良原の分のカバンが余りとして確かに存在していた。
「んん、ん?」
余りにも予定外の設問、想定外の質問に白井は言葉を発することが出来ないでいた。
『なるほど、説明不足だ』
突然、スピーカーから機械で合成されたようなくぐもった声が流れる。
後ろに控えていた軍服の男たちまでもが、ビクリと緊張することを白井は驚いていた。
岩下と白井、そしてどこか緊張した面持ちの兵士の男たちまでも、視線を天井に付いて
いるスピーカーへと移す。
『この男は説明下手だな。』
スピーカーから、ゆっくりと、酷く苦々しげに、白井への叱咤の言葉が流れる。
『残念ながら、この建物はお前が出て行ったら進入禁止だ。だがー』
そこで言葉は一旦切られる。
『……発想は悪くない。かまわんよ。カバンを今、二つ持って行きたまえ』
そして、ブツッとマイクを切る嫌な音と共にスピーカーからの音声は切られ、
部屋を奇妙な静寂が支配する。
スピーカーから視線を外すと、岩下の視線は、すでに白井に向けられることなく、
ゆっくりとした動作で白井の脇をすり抜ける。
そうして、岩下はカバンを二つ持って部屋を出て行った。
◆ ◆ ◆
うらぶれた、ひどく寂れた臭いのする村落。
岩下修壱(69)は、その村落の一つの民家に隠れ潜んでいた。
いや、隠れ潜んでいると言う表現は間違いなのであろう。
うらぶれた村落の中でも、とりわけ立派な日本家屋の中で、岩下は
悠然とバックに入っていたものを整理していた。
そのバックの中には、地図、食料品、そしてボウガンが一丁入っていた。
岩下は表情も変えず、付随として付いていたボウガンの説明書をパラパラと
興味なさげに読み始める。
「ーなるほどねぇ。」
ひとしきり読み終えて、岩下は納得したような、それでいて馬鹿にしたよう
な声を漏らす。
その声からは、これから行なわれるであろう『ゲーム』についての考えなど
全く伝わってこない。物事に対してどこか突き放しているような、冷めたよ
うな声色だった。
「まぁ、これでもいいか。」
岩下はそう呟くと、先ほどまでの間で整理し終えたバックを背負い、ゆった
りとした動作で机の上において置いたメタリックに輝くボウガンを左手に持つ。
その表情からは、なんら読み取れるものはなかった。
「さてと……」
ボウガンを持った反対側の手、右手に持ったモノを岩下はチラリと見る。
右手の手の中のモノは、携帯にそっくりな形をした機械。
機械付いているモニターの中では、無数の赤い点滅がうごめくように動いていた。
以上です。お目汚しすいません
ドキドキ
マーダー岩下の予感
しかしロワを受け入れるの早いなw
172 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/08/23(水) 09:42:32 ID:0U/ChUXyO
何これ?
あーあ、大変な事になっちゃった。
正田樹(28)は心の中で呟いた。
今、彼は海岸沿いを一人で歩いている。
森には入らなかった。
周囲を見回して、唯一木々のない開けた方角に向かってただまっすぐ歩いてきた。
そうしたらここに出たのだ。
本当に島なんだ…てゆーかここ、日本?
ヤシの木とか、後何か見たこともないやつが生えてるし。沖縄のどっかかな。
多分そうだよな。海きれいだもんなあ。空も青いし。
正田は左手を翳し、遠くを見遣った。
泳いで帰ろっかなあ。
無理か。体力ないし。水冷たそうだし。まず陸が見えねぇし。
…あ、島から出たら死ぬんだっけ。危ね、素で忘れてた。
どこまで離れたらアウトなんだろう。空中は?
手はそのまま、今度は空を見上げる。
無理か。そもそも俺、飛べないもんなー。
取留めもないことを考えながら、特別早くも遅くもないスピードで砂浜を歩く。
こちらの方向に先に来た選手はいないらしく、砂の上にはまだ誰の足跡もなかった。
近くに人の気配も感じられない。聞こえるのは波の打ち寄せる音だけ。静かなものだ。
気付けばあの建物から、随分と離れた所まで来てしまった。
あそこで経験した出来事が嘘のように思えるほど、ここはとても穏やかな場所である。
『――単刀直入に言おう。お前らには、これから殺し合いをしてもらう』
殺し合いをしてもらう、か。
頭にやけにくっきりと残るその言葉を、頭の中で反芻してみるが、その内容にも、今現在の状況にも何ら変わりはない。
口元に何となく笑みを浮かべたような表情を正田も変えない。
こんなきれいな所なのになあ。
正田はさっきから海ばかり見ている。
自分の、今は背中側に位置する、原生林のような木々の群には一切視線を向けていない。
ダラダラと目的なしに歩いているようでも、足は自ずとそこから遠ざかることを選んでいた。
ちょうど出発した時、その方向から銃声が聞こえたからだ。
殺し合いに乗った人間がいる、ということがわかった。
何だ、もうやってるんじゃねーか。
その時、そう思った。理由としては充分だった。
危ない所には近づきたくない。当然の心理だ。
それに俺、虫嫌いなんだよね。
いそうじゃん、虫。ぶわっと。
無論それだけではない。
表情と裏腹に、正田は出発した時からずっと重大な不安を抱えていた。
こんな物で大丈夫なのかなあ?
カバンから取り出して手に持ったままの、一応、支給『武器』ということになっている物、不安の原因を眺める。
『ランダムに入っている』っつってたけど…。
…オモチャじゃねぇの?これ。マジックグッズとか日用雑貨、とかそっち系の。
最初見たときはちょっといいじゃんって思っちゃったけど。でもさあ。
銃なんてもらって、実際にもう使ってる奴もいるみたいじゃん。
それで、これだとさ。
ああ俺ってやっぱ甲子園で運使い果たしたんだぁー、とか、思っちゃうでしょ?
ピンキリにも程があるよ。ショボすぎ。マジで。
てゆーかさあ。
こんな道具で、ちゃんと人を殺せんのかなあ?
付けたり外したり引っ張ったり、日に翳してみたりするが、『それ』以上何か特別な仕掛けが施されているわけでもない。
これだけか。やれやれと一つ息を吐く。使い方をよく考えなければならないだろう。
彼はとても不安だった。
その時である。
再びの、銃声。
何ともなしに足が向かっていた方向から、それは聞こえてきた。
正田は顔を上げた。彼方に小さく、灰色の建物がいくつか見える。
離れていても、腹の中に響いてジワリと残るような嫌な音が確かに伝わってきた。
「…うわぁ」
こっちもかよ。
少し眉を顰める。
くるりと振り向き、不気味に静まりかえった森を見る。背後に蹲っていたそれは、昏く大きな口を開けて待ち構えているように見えた。
再び利き手を目の上にやり、遠く見えるその『入り口』を注視する。
もう波の音は聞こえない。その代わりザワザワと微かに、見慣れない異形の木々が身を揺すり手招きをする音。
顔だけを向けてもう一度、立ち並ぶ建物のシルエットを眺める。今いる所からの距離はこちらの方が近い。
うーん。どうしよう。
ずっと散歩してるのも悪くないけど、そういうわけにはいかないんだろう、多分。
嫌だなー。心配だなー。でも、案ずるより何とかって言うしなー。
後はあれだ、何とかに入らずんば…えっとー…何だっけ。
まあいいや。何はともあれ。
「まずは『実践』ありきだよな」
何気なく呟いた言葉の、残酷さには気付いているのかどうか。
正田はゆっくりと、今まで背を向けていた森の方へ向き直る。
そして「オモチャみたいにショボい」武器を、ビュン、と振り回した。
ほしゅ・いってつ
細かくして投下しようとしたら、「行数が長すぎます」という趣旨のエラーが出るのだが。100字程度でもこうなるものなのですか?
179 :
小さな心臓:2006/08/24(木) 01:14:14 ID:khdsgUmkO
寒い。怖い。動悸の激しい心臓が痛い。恐ろしさのあまり頭も働かず、もう何がなんだか分からない。
いきなり殺し合いしろって言われて、カバン持たされて、外に出されて…。
いったい自分は何でこんなところにいるんだろう。昨日まで、自分は野球選手だったと思う。野球選手って「コロシアイ」っていう仕事するんだっけ…。
180 :
小さな心臓:2006/08/24(木) 01:16:01 ID:khdsgUmkO
鎌倉健[12]は、草むらのど真ん中ににぺたり、と座り込んでしまった。自分がどこら辺にいるかも分からない。
強心臓とはいえない今年22歳になる右腕のサイドスローは、いつも「体だけは大きい」と言われる。
恥ずかしがり屋で、優しい性格。皆には好かれ、可愛がられているが、その性格が仇となって負けることも多々あった。
昨年オフには肘の手術もした。麻酔が切れたあととても痛くて何度も泣いたが、1軍でまだまだ投げたいという思いが、鎌倉を少し強くした。辛いリハビリにも励んだ。
しかし今は。弱い気持ちが心を占拠している。
「なんでだよう…」
じっと自分の右手を見つめる、その視界がぼやける。
「帰りたい…」
溢れる涙はぽたぽたと滴り、右手を濡らした。
181 :
小さな心臓:2006/08/24(木) 01:17:45 ID:khdsgUmkO
少しして落ち着いた鎌倉は、カバンを見た。これには武器や食料、地図などが入っていると言っていた。
開けて中を見てみる。
「…こんなもの」
初めに目についたそれを恐る恐る手に取って。
「どうやって使うんだよ…」
自分はこれで人を殺すのだろうか。
(嫌だ、そんなこと出来ない!)
それとも、このような武器で殺されるのだろうか。
(死にたくない…!)
もうやる気になっているチームメイトはいるのか。一緒に野球をやってきた仲間は。
自分を殺しにくる、投手たち。殺しやすそうな奴からいくかな。それならほら、鎌倉か?あいつなら弱そうだしすぐ死ぬだろ。
あそこに、ここに、そこにも、殺すために群がってきている。誰を殺すために?それはもちろん自分。弱くて、殺しやすそうだから。
「うわぁぁぁあっっ!!」
恐怖のあまり、握り締めていたその武器を取り落とした。
「うぅぅっ…うぇっ…ぅぅ…」
そしてまた、泣き始める。
すると、大声に気づいた誰かが、後ろの草むらから顔を出した。
「小さな心臓」投下完了しました。先ほどはすみませんでした。改行が足りなかったようで。
「ところで。球団は先日、君をジャイアンツへ移籍させる事を決めた」
「……え?」
2005年初冬。
プロ野球選手にとって、ある意味もう一つの戦場と言えるであろう契約更改の場にて。
古城茂幸はたった今ファイターズの事務所で契約書にサインをしたばかりだった。
「ジャイアンツ側からは岡島、こちら側からは君とそして実松という2対1のトレードになる」
「え、あの、」
「本当につい最近まとまった話なんでな、君には悪いがこの場で伝えておく事にした。ただし実際に公表されるのは
来年度のペナントが始まる直前になるだろう」
「……はあ」
話が次第に現実味を帯びて行く。そもそもトレードは古城自身も覚悟を決めていた事だ。
もう何年もの間目の前に立ち塞がっていた(しかしさほど高くはない)『日本ハムの正ショート』の壁を、古城は結
局越える事ができなかった。
今やその控えも他のポジションも若い力で溢れ返っている。今回の話が持ち出されるのは時間の問題だった。
とは言え、やはりショックが無い訳ではない。
今日自分が契約を更改したのは来年もまたこのチームに籍を置くという前提があっての事だ。
古城の頭の中で、複数の感情がぐるぐると渦を巻いて入り混じる。
「このチームに残りたい、と思うか?」
「えっ?」
生ぬるい。そう言われる事も少なくなかったが、そんなファイターズ独特の空気が古城は寧ろ好きだった。
確かにこのトレードは自分にとって大きなチャンスとなるだろう。だが正直な所、今はまだぬるま湯に浸かっていた
いという気持ちの方が強かった。
―――このチームに残りたい、と俺は、思う。
自分の気持ちにそう整理を付けた古城は質問の答えを口にしようとした。
だが相手は既に古城の目を見てはいない。そして次の瞬間、古城は俄かに信じ難い言葉を耳にするのだった。
「と言うか君に選択肢は無いな。古城君、君にはこれから来年の春期キャンプに入るまでの間、読売関係者の下でい
くつかの訓練を受けてもらう」
「く、訓練ですか?」
「そう、生き残る為の訓練だ。日本ハムファイターズの選手として、そして一人の人間として」
「一人の……人間、として」
「そうだ。バトルロワイアル、と言えばもう判るだろう?キャンプ終了後選手達はとある無人島に隔離される。君が
もし最後まで生き残り、尚且つゲームの進行をより円滑なものとするよう努めてくれた場合、君のファイターズ残留
を約束しよう」
「バトルロワイアルって、ま、まさか、そんなっ」
「詳しい事は追って伝える。今はもう時間だ、さあ」
そう言われ、古城は半ば強制的に部屋の外へと追いやられた。
何も理解できないまま。
何に対しても納得できないまま。
ただ一つ確かなのは。仮に古城がこのチームに残れたとして、しかしそれは間違いなく彼が愛したファイターズでは
ないのだという事。それだけだった。
それ以来、古城は月3〜4回程度の割合でマーダーとしての指導を受けた。
おかげで銃器の扱いは大方覚えたし、何十種類もの薬の特徴や効用も知識として身に付けた。
最初は渋々言われた通りにしていた古城であったが、自分が徐々に未知の世界へと足を踏み入れて行くのを体感する
内に、それはそれで楽しいものだと思えるようになった。
しかしそれとこれとは話が別だ。
『ゲームの進行をより円滑な物とするよう努める』事が、イコール仲間の命を奪うという現実に繋がるのは古城も十
二分に判っている。
けどだからといって自分にどうしろと言うのか?
もし主催側に逆らえばその先には何が待っているだろうか?
答えはとうに見えている。
古城には、わだかまりを誰に伝える事も無く行き先の知れたバスに乗り込む他、道は残されていなかった。
「と言うか君に選択肢は無いな。古城君、君にはこれから来年の春期キャンプに入るまでの間、読売関係者の下でい
くつかの訓練を受けてもらう」
「く、訓練ですか?」
「そう、生き残る為の訓練だ。日本ハムファイターズの選手として、そして一人の人間として」
「一人の……人間、として」
「そうだ。バトルロワイアル、と言えばもう判るだろう?キャンプ終了後選手達はとある無人島に隔離される。君が
もし最後まで生き残り、尚且つゲームの進行をより円滑なものとするよう努めてくれた場合、君のファイターズ残留
を約束しよう」
「バトルロワイアルって、ま、まさか、そんなっ」
「詳しい事は追って伝える。今はもう時間だ、さあ」
そう言われ、古城は半ば強制的に部屋の外へと追いやられた。
何も理解できないまま。
何に対しても納得できないまま。
ただ一つ確かなのは。仮に古城がこのチームに残れたとして、しかしそれは間違いなく彼が愛したファイターズでは
ないのだという事。それだけだった。
それ以来、古城は月3〜4回程度の割合でマーダーとしての指導を受けた。
おかげで銃器の扱いは大方覚えたし、何十種類もの薬の特徴や効用も知識として身に付けた。
最初は渋々言われた通りにしていた古城であったが、自分が徐々に未知の世界へと足を踏み入れて行くのを体感する
内に、それはそれで楽しいものだと思えるようになった。
しかしそれとこれとは話が別だ。
『ゲームの進行をより円滑な物とするよう努める』事が、イコール仲間の命を奪うという現実に繋がるのは古城も十
二分に判っている。
けどだからといって自分にどうしろと言うのか?
もし主催側に逆らえばその先には何が待っているだろうか?
答えはとうに見えている。
古城には、わだかまりを誰に伝える事も無く行き先の知れたバスに乗り込む他、道は残されていなかった。
だからカバンの中身を知った時、古城は心底がっかりした。
今まで繰り返してきた葛藤は何だったのだ。
教えられた技術も経験も、こんな武器とも言えないような代物を前にして一体どう生かせと言うのだ。
すっかり気落ちした古城がカバンの底に眠るトランシーバーの存在に気付いたのは、それよりもう少し先の事だった。
『古城さんってば、遅すぎ』
「っ、はぁ?」
『もう実松君が出発しちゃうじゃないですか。全く、これから彼にも同じ説明をしなくちゃならないって言うのに……大体
白井さんも間隔考えずに次から次へと出発させ過ぎなんだよ、本来なら前の選手が出てから3分は待たせる規則
なのに。多分小笠原さんが勝手に出て行っちゃったから焦ってるんだろうなぁ』
「ちょ、ちょっと待て、お前ひょっとして」
『ああすみません、カバンを選ぶ時にこれにしろ、ってこっそり白井さんに指示されたでしょう?あなたと実松君の
カバンには予め通信機を入れておくよう指示したんですよ、僕が。ただそれは支給品を仕込む前の話なのであなた方
にどんな武器が当たったのかまでは知らないんですよねぇ。あ、古城さんの武器何でした?』
「……目出し帽と、ウィンドブレイカーだけど」
『そうですかそれはお気の毒に。っと、申し遅れました、僕は今回あなた方を外部から補佐する事になります、』
「っお前遠藤だろ!遠藤良平!」
『覚えていて下さって嬉しいですよ、古城さん。それではまた後程』
遠藤良平。
東大卒のプロ野球選手として注目を浴び、かつて2年間ファイターズに在籍した彼は現在球団職員として働いている。
古城とは入団した年や年齢が近い事も有り現役時代はそこそこ親しい間柄であったように思う。
しかし最近は顔を見る事すら無かったこの後輩と、まさかこんな形で再会しようとは。
それからしばらく遠藤からの通信が入る事はなかった。
その間に古城は、例の物凄い速さで歩く坪井の姿を発見し、少し迷ったが跡を付ける事を決意、その後ようやく遠藤
からの通信が入りどうするべきか尋ねた所尾行を続けるようにと言われ、そのまま現在に至る訳である。
そして今、古城は目の前で起こった出来事に目をぱちくりとさせていた。
「……遠藤。坪井さんが道の真ん中にカバン置いてどっか行った」
『それって思いっ切り罠じゃないですか』
「いや、そういう仕掛けとかをしている様子は無かった」
『古城さん、あなた坪井さんがこの島でどんな行動を取ったのか、その一部始終を把握している訳ではないでしょう?
彼がいつどんな仕掛けを施したか判ったもんじゃないですよ。それとこれはあくまで僕の推測ですが、恐らくあなた
の尾行はバレてます。自分が仕掛けた罠の実験台にあなたを選んだのか、或いはあなたの尾行の目的を探ろうとし
ているのか。坪井さんがカバンを置き去りにした理由はこのどちらかと考えるのが自然だと思いますけど』
う、と古城は軽いうめき声のようなものを上げた。
遠藤の意見は正論だ。実を言うと彼の言葉のほとんどを古城は聞き流しているのだが(いちいち全てを聞こうとして
いては身が持たない)あの遠藤がいかにも正しいように言うのだから、きっとそれは正しいのだ。
しかし、と古城はふと疑問に思う。
昔から多少毒舌家じみた所がある男だと思ってはいたが。
彼は、こんな話し方をする人間だっただろうか?
「変わりゆくもの」ここまでです。二重投稿してしまってすみません。
「あ〜あ…どうしようかなぁ…」
廃屋に隠れていた飯山裕志(57)は悩んでいた。
ドラフト2位という高い評価で入団をしたのだが昨シーズンまでぱっとしなかった。
いい守備をしても打撃はイマイチで、なにより自分のポジションには不動のレギュラー
がいるためなかなか1軍にいても出番がなかった。
そんな彼が悩んでいる事はこの後する事であった。
誰かに殺されないように廃屋に逃げたのは良いがこの後何をすればいいのか
よく分からなかった。
まあ武器でも確認するか…
持っていたバックの中を開けた。
「これって機関銃かな??」
飯山が選んだバックには小型の機関銃が入っていた。
当然、銃器に詳しくない飯山は機関銃は分かっても名前は
分からない。
「ふーん強そうじゃん。まあこれで誰かを撃ったら一撃死だな」
冗談で言ったつもりだったがその言葉は冷たく感じた。
「まあここを拠点にして動こうかな。近くに川と森があるし…」
飯山には川と森になんらかの食料があると思っていた。
もし自分の食料が無くなった場合、手に入れやすい。
「自分の拠点地も決めたことだし、どうするか決めないとな」
飯山が一番悩んでいたのは皆で協力して何とかこの島から脱出するか
それともどんな手でも使ってでも生き残るかをだった。
飯山はラフな性格だったのでどちらでもいいと思っていた。
誰かについていっても良いけど裏切られて殺されるのも嫌だし
生き残るにしても下手したら誰かを殺す可能性もあるし…
飯山はそんな感じでずっと考えていたがなかなか考えがまとまらなかった。
1時間が過ぎてもまだ悩んでいた飯山はついに考えをきめた。
「こんなことを考えても結局決まらないから。ここはギャンブルで決めよう」
飯山はコイントスをしようと思ったがコインがない。
「うーん。しょうがないけど靴投げで決めるか…普通こういうのは
コイントスでやるんだけどなぁ…かっこ悪…」
そういうと苦笑いをしながら飯山は靴を蹴り上げる準備をして
「表だったら誰かと行動して助かる。裏だったら一人で行動する」
そして飯山は靴を蹴り上げた。
すぐに靴が落ちてきた。そして飯山はその靴を見た。
「……裏か……」
そして飯山は機関銃を手に持った。
「それじゃあ。このゲームのりますか!」
少し飯山は楽しみという感じだった。
俺は絶対に生き残る。妻と息子のためにも!!!
飯山はそう決心すると勢いよく扉をあけ外に出た。
191 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/08/24(木) 17:02:42 ID:aRTfkC08O
飯山!!
メッシーもマーダーになったのか(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル
職人及び職人志望の方へ。
>>12の議論板ですが大分スレ数が増えて来ましたので、
・本編
・ルール・状況確認スレ
・ゲームの舞台について
・選手状況確認スレ
以上のスレには最低限必ず目を通し、
それから勿論ですが本編のリレー小説の方も熟読してから投稿するようお願い申し上げます。
「さて、と」
田中幸雄が、両手で、パン、と腰を叩いた。
「賢介、お前はどうする」
ほんの一瞬の迷いがあった後、田中賢介は答えた。
「俺は…俺は、幸雄さんと一緒に行きます」
「いいのか?」
「はい。…正直、さっきの話はショックだったけど。…俺も帰りたいのは同じですから」
視線を落とし、足元の草むらにぼんやりと描かれた自分の影を見る。
「誰も死なないでくれって、殺し合いにならないでくれって、願ってますけど。…それしかできません。
一人は嫌だし。やっぱり、怖いんです。俺…あの人みたいに強くなれない」
そう言って、小笠原の去った方向を見る。
自分はきっと卑怯者だ。しかし。
だから、どうしろというのか。自分に何ができると?こんな、たかが一人の、野球しかやってこなかった男に。
唐突に、白球ではなく命の遣り取りをしろと言われて、できるはずがあるだろうか。
ましてやそれを、「嫌だ」と撥ね付けることも。
――幸雄にできないのだから、自分には到底無理なのだ。
卑怯者にでもなるしかない。それよりほか、何もできない。
ちっぽけで無力な自分を守る以外は。
「行っちゃいましたね…」
「ああ…。でもな」
右肩に、大きくてしっかりした手が置かれ、それは力強くそこを掴んだ。
「もう一度、お前が呼んだら、すぐに戻ってくると思うよ」
「え、いや、そんなの」
きっと無理ですよ、と、その顔を見ようとした瞬間。
グサリ。
おかしな感触が右腕に突き刺さった。
「え?」
ぶれる両目が捉えた顔は、確かに幸雄だ。田中幸雄だった。
しかしそこに張り付いていた貌は、幸雄のものではなかった。
「ほら、呼べよ。あいつを」
ズボッ。
真っ赤に染まった大振りなナイフが引き抜かれた。と同時にドロリとした液体が溢れてアンダーシャツを黒く浸食していく。
「えッ?」
肩を掴んでいた手が離れる。体が一旦、ふらっ、と左に傾き、右腕を抱え込むようにして半回転し、倒れた。
「ぐああああああああああああァ!!」
腕を貫通する激しい痛みに賢介は絶叫した。
「おいおい、悲鳴までデカイんだな。鼓膜破れっかと思ったぞ」
そう言って、幸雄は耳を塞ぐ真似をした。悲鳴は苦しげな呻き声に変わっている。
「コユキ…さん!」
幸雄が顔を上げると、悲鳴を聞いて引き返してきたのだろう、小笠原道大が物凄い形相で彼を睨みつけていた。
「おーお帰り。ちゃんと戻ってきたか。そうだろうな。…よしよし、もういいよ。ご苦労さん」
と言って、倒れている賢介を爪先でつついてみせる。
挑発的な行動に、小笠原の顔がカッと燃え上がった。
「何のつもりだ」
声だけは低く、感情を押し殺している。
対照的に明るい声で、独特な形をした刃を突きつけながら幸雄は笑う。
「お前が乗らねえから、計画だの何だの、面倒臭くなっちまった。
どのみちやらなきゃならないんだし、どうせなら、今、サシで勝負しようや。その方が早え」
ザア…と風に撫でられた草の波が二人の間を別った。
「…ゲームに乗った、ということですね」
幸雄は一瞬考えた後、ふっ、と微笑んだ。
「まあ、そうなるかな」
「幸雄さん…なンで…」
苦しげな息を吐きながら賢介が呻いた。屈み込むように倒れた体の、顔だけは幸雄に向けて、その目には涙が滲んでいる。
「何で?…言わなきゃわからないか?
ああ、お前にはわからないかもな。あんな甘ったれたこと言ってるようじゃあ。
俺は確かに酷いこと考えてるって言ったがな、全部答えたわけじゃない。
まあさっきのは半分正解、というとこかな。ガッツ」
そう言って小笠原を見遣る目付きは、普段の、つい先程までの幸雄とは別人のものだった。
「殺し合いだと言っただろ。生き残り人数はポジション別に決まってる。内野は1人!
たった1人だぞ?それ以上生き残ったって消されるんだ。
24時間以内に誰か死ななきゃ全員死ぬ、これも言ったよな?聞いてなかったのか?
誰も死なない、殺し合いにならないわけがねえだろう。バカかお前は?
俺が何のためにお前と小田に声をかけたか、これでもまだわかんねえか!?」
「あ…あ…、ま…さか…」
「邪魔なんだよ、お前ら。お前も小田も、ガッツも、他の内野手全部だ。
お前らは、俺が生き残るために、邪魔だ」
賢介の目から、今度こそ涙がこぼれ落ちた。小笠原は無言で、ただ幸雄を睨んでいる。
集めておいて、油断させて、一気に消すつもりだったのだ。
ただ、自分が生き残りたかっただけ。彼は、本当にそれだけだった。
「若いのが二人、たまたま近くにいて良かったよ。小田には『出発したらまず俺を捜せ』と言ってある。
できるだけ他の内野手連中を見つけ次第声をかけておけ、とも。あいつは番号が後ろだからな。
その途中でゲームに乗り気な奴に始末されれば、その時はその時だ」
「…あ…」
『その時はその時だ』
「あれは…もし…小笠原さんが見つからなかったら…俺を始末するだけだってこと…だったんですね…」
幸雄が賢介の側にしゃがみ、首にナイフを突きつける。
「そういうことだ」
ボロボロと泣きじゃくりながら、なおも賢介は続けた。
「信じてたのに…俺、幸雄さんのこと…小田さんだってきっと…何で…何でこんなすぐに裏切れるんですか…?
ついさっきまで…仲間…だったのに」
なかま、と呟くと、幸雄の顔に複雑な色が浮かんだ。しかしすぐに、フーッ、と一つ大きな溜め息をつくと、それは笑顔に変わった。
「教えてやるよ、賢介。『プロ』の仲間ってのァな、仲良し小良ししてりゃいいってわけじゃない。
殺るか殺られるかの敵同士でもあるんだぜ。
7年この世界にいても、まだそこンとこが、わかんねぇかなお前は、なァ」
笑いながら血に濡れたナイフで首筋をヒタヒタと叩く。まるでそこに赤い絵の具を塗りつけているようだった。
「お前は俺の、同じ内野手の、敵だ」
いつものように優しい笑顔、でもその質が明らかに違う。賢介は諦めたように目を閉じた。
もうこの人は、俺の知っている幸雄さんじゃない。尊敬できて頼りになるベテランの、ファイターズの象徴、田中幸雄じゃない。
彼を変えてしまったものがあるとすればそれはきっと――
「ナラが死んだとき」
口だけが、何かが取り憑いたように動く。
「真っ先に思ったのは、『死にたくない』って事だったよ。
それだけでもう、俺の答えは決まってたんだ」
「コユキさん」
小笠原の低い声が、幸雄の動きを止めさせた。右手を隠すように後ろに回している。
「やる気になったか」
「やらないと言ったら、あなたはその内、ろくでもないことをし始めそうだから」
と首筋に当てられたナイフを見る。幸雄は少し頭を傾げて、「勘がいいな」と言うと立ち上がった。
「やっぱり遠くには行ってなかったしな。お前をやれば、後はだいぶやりやすくなるだろうな。…で?得物は何だ」
背後にやった右手を、慎重に前にもってくる。握られている『それ』が姿を現すにつれ、幸雄の表情から笑みが消えていった。
ベレッタM92FS・センチュリオン。
積み上げられた荷物の山から、小笠原が自らその右手で選び出したものの名前だった。
「銃まで支給されてんのかよ…参ったなこりゃあ」
「もういいでしょう。もう、いいじゃないですか」
「…お前は銃で、俺はナイフか。――…ハハ。
…でもなあガッツ、銃ってのは、人に向かって撃てなきゃ意味ないんだぜ」
小笠原の眉が僅かに動いた。
その小さな隙を衝いて、幸雄が突進する。
地面を勢いよく蹴ったその足から、草と土の細かな欠片が飛び散る。
赤黒い兇刃がギラリと輝く。
「お前に撃てるか!!」
乾いた発砲音に、周囲の空気が震えた。
その後に続いて、ギャアギャアという鳥の声と羽音があちこちから起こった。
幸雄は驚愕の表情で、地面に片膝をついている。その左肩にはじわじわと赤い色が滲んできていた。
「俺は…撃てますよ、コユキさん」
銃口をピタリと幸雄に向けながら小笠原が言った。
痛みが襲ってきたのか、幸雄が顔を歪める。そうしながらも、ほんの少しだけ口元に笑みを作る。
「…全くの偽善、潔癖の正義漢ってわけじゃなさそうだな。こいつは意外だ」
「…行ってください。無意味に撃ちたくはない」
「意味なんて求めるなよ。殺さなきゃ後悔することになるぞ」
「その怪我じゃろくに動けないでしょう。充分だ。――俺が、討つべき奴は他にいる」
再び風が草木を揺らし、ザワザワと細波のような音を立てる。
暫しの間があった。
やがて、幸雄は無事な右肩だけをすくめて、言った。
「死にたくない、ってのは本当だからな。ここはお言葉に甘えることにするよ」
右手で体に付いた草や土をパンパンとわざとらしく払ってみせるが、左手はだらりと垂れたままだ。
深い傷らしいことは傍目にもわかる。それでも幸雄は、ニッと笑った。
「じゃ、お互い生きてたらまた会おう」
森の奥へと、左肩を庇うようにして消えていく姿を、小笠原は無言で見つめるだけだった。
目を伏せて、小笠原は少しの間そこに佇んでいたが、やがて重々しい動作で銃を持つ手を下ろし、蹲っている賢介の方に近づいた。
「賢介。大丈夫か」
返事がない。小笠原の顔が瞬時に険しくなった。
慎重に体を仰向けると、賢介は目を閉じたままぐったりとしている。
まさか、と胸に耳を当てる。
微弱ながら、心臓が確かに脈を打つのがわかった。
小笠原の表情がごく僅かに緩む。
その時、頭の後ろから、鼓動よりも大きな「音」が響いてきた。
顔を上げて、「音」のする方向、賢介の顔を見る。――彼は、すやすやと、安らかな寝息を立てて眠っていたのだった。
一瞬固まった後、小笠原は呆れと安堵の入り混じった息を吐いた。
だが、安心はできない。この傷は一刻も早い手当てが必要だ。
バッグの中身を打ちまけるが、応急処置に使えそうな物は入っていない。小笠原は小さく舌打ちをした。
とりあえず止血だけでも、と、アンダーシャツの左袖を破き、包帯代わりに傷をきつく縛る。
その間も賢介は、さっきまでの痛がり方が嘘のように全く反応しない。図太い奴だ。
散らばった支給品の中からコンパスと地図を拾い上げる。地図では島の輪郭が縁取られ、ブロックごとに区切られている。
『市街地』と書かれた囲みの中に、いくつかの建造物の存在を指し示すマークがぽつぽつと描かれていた。
確か、最初に目を通したときに、診療所というのがあったはずだ。
そのマークはすぐに見つかった。場所は――C−2。今いる所は恐らくD−4かC−4付近、ここから北へ、ほぼ真っ直ぐ。『診療所』と書かれたその場所を確認する。
コンパスの紐を首に掛け、二人分の荷物を襷掛けにする。最後に賢介を背負い上げたとき、少し離れた所に転がるバッグに目が留まった。
幸雄が置いていった物だ。恐らく地図も何もかもあの中に入ったままだろう。
それは小笠原の動きをほんの僅かの間止めさせたが、すぐに視線は外れ、北の方角を向いた。
今は、余計なことに気を取られている暇はない。
予期せぬ大荷物を背負い込むことになった小笠原は、できる限りの最高速度で歩き出した。
「暗転」ここまでです。
乙です
毎回展開わかんないから楽しみ
乙です!
わああああコユキさぁあん!ケンスケと一緒に凄いショック受けてた…
乙です!
幸雄さんマーダーになるの?((((;゚Д゚)))と思ったけどこれはこれでなんかカッコイイ
保守。どっちの田中も容態が気になる
生き残るために必要なこと。それはまず冷静であることだ、と金村はすぐに思い立った。
冷静さを失わず、限られた事実をよく観察し、最大限に情報を得て、合理的に判断を下す。これだ。
つまりは至極あたりまえのことを、金村はここで再認識した。
銃声を聞いてよりやや速くなっていた心拍が、すうっと落ち着いていくのがわかる。
そうと決まれば、まずは自分について把握しなければならない。そういえばここまで、引き当てた鞄の中身も確認せずに来た。
急ぎ肩から鞄を下ろし、ファスナーを引くと、まず一番上に支給武器に関して書いたらしいメモ紙が見えた。
それを軽く流し読みし、奥に入っていた支給武器らしきものを掴んで、取り出したそのときだ。
背後で、パキ…という物音がした。それは、足元に落ちた木の枝を踏みつけたときに出る音。
金村は右手を背後に隠し、音のしたほうを振り返る。
「誰か、いるのかっ」
…しばしの沈黙ののち、木陰から声がした。
「こ…、攻撃しないで、くださいよ」
きわめて弱々しい声で、そう言いながら姿を現したのは、身の丈190cmを誇る巨漢、背番号15番の横山道哉だった。
「…お前か」
「あ、あの、」
「動くな! 両手を挙げろ」
駆け寄ろうとした横山を、金村は強い語勢で牽制した。
「金村さんっ」
「悪いけど、先に確認させてもらう。武器は何だ」
「これっ、こ、腰に、下げてるやつ、ですっ」
「……」
言われたとおり、横山の腰には、長めの刃物が下がっているように見える。
つまり銃器は所持していない…、ということか。
「俺、あの、その、あ、あなたに危害を加えたりとか、そういうことではなくて…、」
黙したままに、ただ刺すように見つめてくる切れ長の目がおそろしいのか、横山は矢継ぎ早に言葉をつなぐ。
「嘘じゃありません、俺、あそこを出たら一人でどうしていいかわかんなくて、
どうしようかって思ってたら、すぐ金村さんが出てきてっ、でも、でも声がかけられなくて、それで…」
…マウンドでは数々の修羅場を潜り抜けてきたはずのこの男も、
突然殺し合えなどと言われればこんな有様になってしまうものか、と金村は少し、哀れに思った。
「…わかったから、少し落ち着けよ」
「あ、あの、信じて…、」
金村は相変わらず何も言わなかったが、そのかわりに少しだけ首を縦に振った。
「よ、よかった…」
横山は崩れるように金村に歩み寄り、そして両膝に手をついた。
「疑って、ごめん」
横山の頭上から、金村が謝罪する。
「いえ、そんなこと…、それより、金村さんは、武器、何でしたか」
横山に武器を尋ねられ、金村は右手に持った物をチラと見せた。それは手のひらに収まるサイズのスプレー缶。
じっくりとは見られなくても、それが強力な武器でないことは明白だ。
「コレ、…虫よけ…、みたいだけど」
「…あんまり使えそうじゃないっすね」
「まあね」
「…俺も、こんな武器で、どうしようかと思って」
金村の素っ気ない言葉にどこか違和感を感じつつ、横山は腰につけた革製のホルダーから刃物を引き抜いて、
目線より少し低いところまで持ち上げ、金村に見せた。
「ナイフなら、悪くはないんじゃないの?」
返事をしつつ、金村はその刃物を子細に観察する。刃渡りは20cmほどで形状は真っ直ぐ、
刀身には相当の厚みもあり、作りはとても頑丈そうに見える。
「でも、さっきの、銃声、聞きましたよね。銃が相手じゃひとたまりもないですよ…」
「確かにね」
…刃物よりもさらに弱い、とても武器とは呼べないようなものを支給されているというのに、
さほど動じる様子を見せない金村を、横山は少し不審に思った。
…ガラスとはいえやはりエースの称号に相応しい男なのか、それとも、あるいは…?
「…金村さん、怖くないんですか。そんな、ガラクタを掴まされたってのに」
「中身はバラツキがあるって話だからね。運がなかったってことかな」
「成程、じゃあ…、」
フ、と横山が視界の脇へ動く。金村の脳は素早くその視覚情報を認識したが、しかし遅かった。
間髪を入れず、顎の下からヒヤリとした触覚情報が伝えられてくる。これは鉄の感触。…首に、ナイフを当てられている!
「運がなかったついでと思って、知ってることを話してください」
横山がごく強い語調で言い放った。
「な、何のことだよ」
「とぼけないで下さい。あんたの態度には余裕がありすぎる。聞いたんでしょう、あの銃声を!
俺は怖くて仕方がない、それなのに、あんたは怯える様子もないじゃないか!」
「……」
「それに、そうだ、ガッツさんが出て行くとき、あわてて白井さんがついていった、そして白井さんはしばらく戻ってこなかった!
あれはガッツさんに何か、用があったってことだ。
はじめから中心選手は有利になるように、このゲームは仕組まれてるんだ。
あんたも一応うちのエースだから、だから、殺されないから、そんなに落ち着いていられるんだろう!?」
「そんな、ことは、ない、少なくとも僕は…、何も知らない」
搾り出すようなかすかな声で、金村が答える。しかし横山は勿論納得しない。
「嘘をつくな! 殺されたいのかッ」
こいつ、随分動揺しているな、と金村は思った。首元でナイフが震えているのがわかる。
最早何の言葉も通じるまい、このままでは嘘か真かに関わらず、殺されてしまうだろう。…気は進まないが、仕方がない。
「…わかった、言う、けど…、」
「何だッ」
「ナイフが、近すぎる…、これじゃ、喋るだけで、切れるだろ…」
金村の言うことはもっともだった。横山は最大限に警戒しつつも、皮膚から距離にして1cmほど、刃を浮かせた。
「…お前の言う通りだ、生き残りは初めから決まっている。僕も含まれているが、あとは知らない…。その他の、残りは…、」
「残りは!? …どうなるんだッ」
「残りは…、明後日の夜までに、不定期で、首輪が、爆発する」
「な………!!」
驚きと絶望のあまり横山の全身が強張るのを、金村は見逃さなかった。
あっ、と横山が思ったときにはすでに、金村の頚動脈は刃から10cmほども後ろへ退いていた。
上体を半回転させると同時に金村は右手を左の脇の下からスッと現わし、そこから間髪入れずに霧を噴き出した。…スプレーだ!
「は……、ぐあッ!」
思わず目を閉じたが、一瞬遅い。クソッ、不意をつかれた、逃がしたか! だが所詮は虫よけスプレーだ、こんなもの、すぐに…、
「ガ…、ガハ…ッ、ゲホ、ゲホ…ッ」
何かがおかしい。咳が止まらない。両目が、鼻の奥が、喉が、すべての粘膜が刺すように痛い。
これは…、い、息が…、
スプレーを噴射すると同時に金村は息を止めて瞼を閉じ、大きく右足を後ろへ引いて一歩、さらに左足を引いて二歩、
素早くあとずさっていた。横山の激しく咳き込む声が聞こえる。
そしてキッと目を見開けば、前も見えないまま闇雲に前へ走り出そうとした横山の、
足が思うように動かずバランスを失ってその場に膝をつく姿が見えた。
時間は充分だ、とにかくこの場を逃げ去るため走り出そうとしたそのとき、金村の脳内に、声が響いた。
――『殺せ』
ドクン、と全身が脈打つ。
相手は当分動けない、殺す必要は…、
『殺さなければ奴はお前を恨むだろう、そしてお前の話は島中に広がるぞ』
頭の芯から聞こえる声が、頭蓋の中に反響する。
『殺せ! 殺すのだ!』
土を蹴る、音。
横山の首に何かが巻きついた。どうにか息を吸い込もうとする喉笛が、きつく圧迫されている。
背後にベタリと張り付いた金村の体温が不気味に背中から伝わってくる、…首を絞められているのだ!
平時ならば自分のほうが体格で勝っている。あの痩身を振りほどけないはずがない。
…が、今はとにかく咳が止まらない、息ができない、酸素が足りない、身体に力が入らない!
「…死ねッ」
金村の口走ったそれが、横山の聞いた最後の言葉だった。絞めつけはさらにきつくなり、最早意識も遠のいて…。
ゴキ、という音が辺りに響いて、かわりに咳き込む声が突然止んだ。
金村が腕を放すと…、頭部をあらぬ方向へ向けた横山が、ドサリとその場に崩れ落ちる。
「…やっちまった、のか…」
そうつぶやいて、金村はユラリと立ち上がり、その死体を見下ろした。
ひとり殺した、その事実に反して、気持ちはひどく落ち着いている。
一体どうしてしまったのか、自分でもよくわからない。
「お前は信じてくれなかったけど、本当にさ、僕は何も知らないんだよ」
ぽつり、話しかけてみる。
「でもお前、嘘は一発で信じたな…、僕ってさ、そんなにさ、」
死体は答えない。
「…いや、仕方がないね…。成り行きだ、僕も、お前も」
木々の葉が風にそよぐ音だけが聞こえる。
「…もう、聞こえないか……」
両目を閉じて合掌したあと、二つの鞄とナイフを手に、金村はその場を立ち去った。
後には物言わぬ肉塊がひとつと、手書きのメモらしき紙が一枚。
『北海道のアウトドア必須アイテム、熊撃退スプレー! これを使いこなせるあなたは立派な道民球団選手!』
再び一陣の風が吹き、紙はどこへともなく飛ばされていった。
「虚実」以上です。
職人さん乙です!
ああ…ハイパー地味様がマーダーになってしまった…。
乙です
ヨコヤマン確かにクマッポス
茂みから姿を現した男は、黒目がちの、穏やかそうな男だった。
自称ルーキーの割には、あまり若くは見えない。その男は岡島の姿を確認して、不思議そうな顔をした。
「…あれ?もしかして、このゲームにはジャイアンツの方々も参加してるんですか」
読売ジャイアンツのユニフォームを指差して、彼は疑問を口にする。
岡島は何と言えばいいのか言葉につまる。
(俺は扇動要員です、ってか?言えるワケねーだろ!)
岡島は自分の身分を心で反芻してみて、それを明かすことは自身の寿命を縮めることだと改めて理解する。
岡島は彼らにとっては、身分を明かせないまぎれもない『敵』なのだ。
「俺はつい最近日ハムにトレードされたから。ユニフォームはまだ無いからこのまま参加だ。…お前は?」
簡潔に尤もらしいことを言っておいて、あとは相手に話を振る。
これ以上自分のことを話すと、ボロが出そうだった。
相手も、それ以上詮索しなかった。
「俺は今年入団した武田といいます。武田勝です。え…っと、あなたのことはテレビで見たことがあります…
岡島、投手、ですか?」
「…ああ」
顔が知られているのは、悪い気分じゃない。
岡島は単純だと自分で思いながらも、この武田という男に対して悪い感情は抱かなかった。
彼が人の良さそうな顔をしていたからかもしれない。
「そうですか。あの、最初にひとつ質問なんですけど…岡島さん…このゲームに乗り気だったり、します?」
武田も、十分に距離を取って。
そこに緊張が走る。
岡島はちっと舌打ちした。
「何で俺がこんなゲームに乗り気になんなきゃいけねーんだよ…冗談じゃねーぜ全く。
人殺しなんてカンベンだし、殺されたくもねーっつーの」
彼は紛れも無く『扇動要員』ではあったが、今のせりふは本心だった。
殺されるのも、殺すのもカンベンだ――。
当たり前のことだ、『日常』であれば。
だが今は、『日常』ではない。とびきりの『非日常』だ。
それでも岡島は、いまだその『非日常』を受け入れることができない。だからこそ、このせりふだった。
「…そう、ですよね。よかった…」
武田はわずかに警戒心を解いたようだった。
彼もまたこの『非日常』を受け入れることのできない人間だということだ。
ゆっくりと武田が歩いてくる。
何かあれば身が守れるように、念のために岡島はそっとポケットに手を入れて『それ』を確かめたが、杞憂に終
わったようだった。武田に攻撃の意思は微塵も見られない。
「あの、岡島さん。これからどうしますか?」
「…どう、ってなぁ。どうもこうも無いよなぁ」
「ですよねぇ。とりあえずですね、森って危ないと思うんですよ。視界悪いし。
鞄の中に地図が入っていたんで見てたんですけど、町があるみたいなんですよね。
ちょっと足伸ばしてみませんか」
武田はポケットから小さく畳んだ地図を出して広げて見せた。
岡島はそれを覗き込んで「うーん」と首を傾げてみせる。
「えーと…市街地って2つあるぞ。っつーか俺たち今どこにいるんだ?」
「今俺たちはF−4の下のほうにいます。南方の市街地のほうが近いですね。E−5の橋を渡ればすぐだ。
この距離なら暗くなる前に着けると思うので、ちゃんと屋内で寝られるかもしれませんよ」
「寝られる…って、お前こんな非常事態で寝床の心配なんかしてんのかよ。
寝たまま起きねぇ事態になるかもしれないんだぞ」
「寝たまま死ねたらそれはそれでいいんじゃないですか。苦しまないで逝けるってことですよね」
「…そーゆー冗談、真顔で言わないでくれ」
ぴくりとも表情を変えずに物騒なことを言われて、岡島はげっそりとした顔をした。
性格が掴めない。岡島は嫌そうな顔をしてみせたが、武田は驚いたような表情で
「俺、いつ冗談言いました?」
と言って岡島を尚一層疲れさせた。
(つ、掴めない…こいつの性格が掴めない…)
コミュニケーションを取るにあたって、相手の性格が掴めないことほど疲れることはない。
岡島はこの非常識ともいえる状況の中で、あまりに涼やかな表情を崩さないこの武田という男に
一抹の恐怖と疲労を感じ、がっくりと肩を落とした。
「……お前のポジションってピッチャーだろ」
「はい。よくわかりましたね」
「いや…なんとなく。ランナー背負っても顔色変えないタイプだろ、お前」
「いえ、そんなことはありませんよ。ランナー背負うと怖いです。俺、球速くないですし」
嘘つけ、と岡島は呟いた。
「こんな状況でもシラーッとしてるじゃねぇか。フツーの心臓じゃねーよ」
「シラーッとしてますかね?怖くて怖くて仕方ないですよ。泳いで日本列島まで帰りたい気分です」
「…真顔で冗談はやめろって」
「…冗談なんて、俺、いつ言いました?」
再び、がくりと岡島は肩を落とす。
とにかく疲れる会話に、岡島は口を閉ざす。
ちらりと隣を見ると、やはり武田の表情はちっとも変わらない。
「俺、やっぱりついてない……なんか…変なやつと行動することになっちまった…」
ぽつりと呟いた言葉は、武田には聞こえていないようだった。
ここまでです。
よ、読みにくい・・・次から改行気をつけます・・・
>>147-151は『放送』が含まれている為、時間軸が動いてしまい、現在その扱いを
協議中です。
読者の皆様方は、申し訳ないですがそのお話自体は棚上げ扱いにして保留として
いただければと思います。
江尻慎太郎(27)は、高まる鼓動を抑えられなかった。
(あった……。ようやっと見つけた……)
江尻は、古ぼけた工場の片隅。決して磨かれてはいない古びた等身大以上の
大きな姿見の鏡の前で興奮していた。
だが決して、自らの鍛え抜かれた身体に興奮しているわけではない。
目的はただ一つだった。
江尻はずいっと鏡に近づき、アゴヒゲをそる時のようにぐいっと首を伸ばす。
視界に写るのは無骨な忌々しい銀色の首輪。
(こんなモノのせいで、俺たちは言いなりにならなくちゃいけないのか)
江尻は苦々しい気持ちでいっぱいだった。
『最後のルールだ。24時間誰も死ななかった場合は、全員の首輪が爆発する』
白井さん……、いや、白井の奴が説明した最後のルール。
(全員が死ぬ……だって?)
始め聞いたときは、漠然とした単なる違和感だった。
だが、考えれば考えるほど違和感は疑念に、そして確信へと変わっていく。
なんの為かは知らないが、この狂った主催者は『殺し合い』をさせたがっている。
その為には今迄で体感した中でも莫大な費用、人員、手間が掛かっているので
あろうことは江尻にも軽く推測できた。
だからこそ、思う。それらを『24時間誰も死ななかった場合』と言うだけで
この舞台をご破算にしてしまうのだろうか。
(そんなルールはハッタリだ……)
江尻には確信めいた思いはあった。
だが、その反面ヒルマン監督、そして奈良原の死は主催者側の本気さ、そして
強硬な姿勢を現している。
この首輪自体は、爆弾が爆発するかどうかはともかく、間違いなくホンモノなので
あろう。
江尻は体を傾け、鏡に向けしげしげと写し、首輪の一点を観察する。
出発前、そして今まで鏡も無く自分で色々と首輪を触っていた感触。そして出発前
に他の人の首輪を見ていたときに気が付いていた、首の後ろの小さな1ミリ角大の
穴。
その穴は道具(六角レンチ?)でもあれば、突っ込めるのであろう穴ではあった。
……最も、穴に道具を突き刺した、その結果がどうなるかはともかく。
思わず嫌な想像をし、江尻は身震いする。
とは言え、コレさえ外れることが出来れば……自分だけではなく、みんなを救う
ことが出来る。
(とりあえず、道具が無けりゃ始まらない。道具を探そう。)
江尻は鏡からきびすを返し、工場内を歩いていく、
自分を救うため、そして皆をこの馬鹿げた舞台から、降ろす為に。
『銀色の枷』以上です。
226 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/08/27(日) 06:51:47 ID:lQpmB/hoO
勝くんの流れで笑ってしまったw
選手の性格がよく出てると思います!
続きが楽しみです。
職人さん乙です!
薄幸そうな岡島のエピソードが好きだ
あとエジリンがんばれ!
まだ出てきてないけど稲葉が楽しみ。
マーダーと化すのかみんなと協力し合うのか。
マイケルはいつ出るんだ
続き楽しみにしてます。
須永に期待!
wktkしながら保守
「生きるべきか、死ぬべきか……」
遠くで鳴く甲高い動物の声を聞きながら、橋本義隆(33)は難しい顔でこの先の自分の在り方
を模索していた。
橋本義隆、彼は自らも認めるように、プロ野球選手としては個性のありすぎる――正直に言って
しまえば一風変わった――男だった。
本をこよなく愛し、深く思索することを好む。
体育会のノリの極地である場に身を置きながら、橋本自身は
微塵もそういう部分を感じさせない。
酒やら肉やらを強靭な体力と若さに任せかっ食らう同僚を傍目に、菜食に偏り、なにやら仙人の
ようだと自分でも思いながらも他に合わせることができない。
どうやら自分は不思議の国から来てしまったらしい――と彼は思うことにする。
そしてまた、この状況においても深く深く思索に沈み、己の在り方はどうあるべきかと自問自答
している。
「どうやら俺はとんでもないことに巻き込まれたみたいだが……さて……」
白井曰く。
これは殺し合いのゲームであるらしい。
生き残りの枠は各ポジションごとに一人、狭すぎる枠だ。
「…1軍にあがることよりも難しい……が、難易は…まぁ、この際置いておくとして、人を殺す
ということについて……。俺には理解しかねる…」
橋本がこの球団に身を置いて、早2年。
もちろん辛いこともあったが、個性の強い先輩も、後輩も、橋本にとっては大切な同僚であり
同志だ。
否、それ以前に赤の他人であっても、殺すという意識は芽生えない。
彼は腕を組み、ついには立ち止まってしまう。
「一体俺達に何をさせたいのか……殺し合いをさせたいのなら、俺はそれに乗るべきか、否か…
…そもそも俺は人様の命を奪ってまで生きる価値のある人間なのかどうか……」
自称投げる哲学者は、平素から哲学書を好んで読む。
そのせいか、非常に理屈っぽい…と、自分でも理解している。
今回も例に漏れなかった。
「何故こんなことに」というところから思索は遥かに乖離して、己の価値、人間の価値
などという部分にまで至っている。
もう十数分も経って、ようやく橋本は腕組みを解いた。
「…よし。とりあえず、落ち着ける場所を探そう。考えるのはそれからでも遅くない」
こんな森のど真ん中では落ち着けないと判断した彼は、ひとまず鞄の中を確認する。
水、食料、島の地図、黒と赤の水性ペン、コンパス、それに、武器がひとつ。
「…アイスピック…」
やや大ぶりケースの中には、アイスピック。
おそらく高価なものなのだろう。金属部はなめらかな銀色が先端で光を弾き返し、柄の部分には
細かい装飾が入っている。
ケースの中にはメモのようなものも挟まれていて、橋本は目を通す。
そしてその文面に大きく顔を歪めた。
【硬い氷も一突きで砕けちゃうよ☆やわらかい人間に使ったら…使ってみてからのお楽しみ☆】
「……なるほど」
橋本は人を小馬鹿にした悪意に満ちたそのメモを握りつぶす。
主催者側の意図は明白だ。
白井の言う言葉に何の含みも偽りも無い。
ただ、殺しあえ―――そういうことだ。
しかし。
「俺がそれに乗る理由は、何も無いな」
小さく、だが強い語調で呟く。
彼は地図を開き、予定通り落ち着けそうな場所を探し、ひとつ、目を留めた。
「よし、俺の行き先はここだ」
ほぼ東へまっすぐ。
漁港と書かれた場所を目指すことにする。
それは両親が漁業を営む漁師であることに起因する。
己のルーツが、そこにある。
「さて。生きるべきか、死ぬべきか…」
先程と同じ呟きを漏らし、橋本はゆっくりと歩き出す。
ここまででございます。
>>222 自己レス&協議結果
>>147-151は『放送』が含まれている為、時間軸が動いてします。
その扱いを 協議していましたが、原案を生かしつつリライトすることになりました。
読者の皆様には、先に投稿された
>>233-235の「生きるべきか死ぬべきか」後のお話として考えてくださいませ。
出口を出た紺田敏正(52)、は緊張の糸が解けたのか急にヘナヘナと座り込んだ。
「まさか奈良原さんが……」
しかし出口を出た場所であるこんな場所で、落ち込んでいる暇がなかった。
すぐにでもここから離れなかったら 誰かに殺されてしまう。
「はぁ……なんでこんなことになるんだよぉ」
紺田は恐怖心を拭い去るように、そして身を隠す為、走り出した。
10分ぐらいは走ったのだろうか。紺田は木々が生い茂った森についていた。
「まずはどこか隠れるところを探して、自分の持ってる物を確認するか……」
そう思いながら、森の中を進む。
やがてちょうど良く草に囲まれて、人ひとりがすっぽりと隠れられそうな繁み
を紺田は発見する。
(お、ちょうどいいや……。)
紺田は、繁みの中に入りワサワサと鞄のなかを確認する。
「えーと、食べるものに水と地図。それに……拳銃か……やっぱり誰かを
殺さなくちゃ駄目なのかなぁ……」
黒光りする拳銃を握り締め、不穏な考えが頭の中をよぎっていく。
ほとんどの参加者、選手が思うように誰も殺したくないと思っているのだろう。
それは自分も同じだ。紺田は思う。だが、その一方でこの強制された『ルール』では
生き延びるには誰かを殺さなくてはならない。
(どうするべきなんだろう……。)
紺田はいつまでもグルグルと頭の中で葛藤していた。
ガザガザッ!
突然、後方から人が歩いてくるであろう音で紺田は思考を寸断される。
(だ、誰だろう? )
紺田は持っていた拳銃をぎゅっと握り締め、ヒッソリと身を隠す。
あいにく、音を立てている人物はこちらには気が付いていないようだ。
「誰だ。武器を下げないと撃つぞ」
そう叫びながら、紺田は勇気を振り絞り、やってきた人物の背中に銃口を向けた。
すると聞いたことのある声が聞こえてきた。
「や、やめてくれ!大丈夫だ。俺は何もしない!」
「何だ小谷野かよ……びっくりしたよ……」
小谷野は紺田と同い年だ。紺田、小谷野と大卒で仲も良い。
「よかったよ。紺田と会えて……誰とも会わなかったから不安だったんだ」
「俺も小谷野と会ってよかったよ。お前はこれからどうするんだ?」
小谷野は少し悩んでから言った。
「俺はみんなと合流し説得して誰も殺さない道を選ぶよ」
「じゃあ俺も小谷野についていくよ。皆無事でいるのかな……」
その後、紺田と小谷野は他の選手を探す為に歩いていた。
いつものように、野球の話やプライベートの話などをしながら、ゆったりと
歩いていく。
それは練習風景後にあるような、紺田と小谷野、特有の時間。
時間が進むのが遅いようなほのぼのとした時間は、現在の殺伐とした状況や
時間が経つのを二人に忘れさせていた。
『ウーウーウー』
突然、島中に甲高いサイレンとともにアナウンスが鳴り響く。
サイレン後、一人の男がザワザワとした機械音とともに喋り始める。
『……白井だ。先ほどのゲームの説明だが、少し説明が不足していた。』
(え、白井さん?)
先ほどまで、『案内役』として選手たちを案内していた白井さんの声。
その声色は、先ほどまでの強張りながらも自然だった声色とは明らかに違っ
ていた。
なぜか、紺田には、壊れてしまった目覚まし時計を思い起こさせた。
そして、矢継ぎ早に白井は喋り続ける。
『死亡者については、禁止エリア発表時に合わせて発表する。』
『禁止エリアについては12時間おきに発表する、キチンとメモを取るようにな。』
簡潔に、それだけを言うと最後にとんでもない事を白井はざらついたスピーカー音と
ともに放送する。
『特別サービスだ。本来なら死亡者は12時間おきに発表なんだがな…
現在生存者は57名。 死亡者は奈良原、市川、そして横山。……以上だ』
それだけを言うとブツリと言う雑音とともに放送は終わった。
紺田と小谷野はお互い今の放送にショックを受け、唾を飲んでいた。
「市川が……殺された……誰が殺ったんだよ。そんな酷い事が出来るかよ!」
小谷野は絞り出すような声で叫んだ。
そしてそんな小谷野を見ながら隣にいた紺田は思案にくれていた。
もしかしたら俺だって小谷野に殺されるかもしれない。殺されないなんて
保障は無いんだ。小谷野は俺の警戒心が解かれるまで油断させているだけ
かも知れないんだ。
紺田の心に巣食った疑心の芽は、みるみると紺田の心を支配していく。
紺田は、自然なしぐさで、すっとバックに入れておいた拳銃を取り出した。
まるで、煙草を吸う人が煙草を取り出すような感覚で。
(ん?)
それに気づいた小谷野は思わず声をかけようとする。
「何やってるんだよこん…」
バーンと銃声が森の中にこだまする。
「ごめんな小谷野。生きるためにはこれしかないんだよ」
哀れむような口調で紺田は、それだけを言うと、動かなくなった小谷野を背にして
振り向かずに走り出した。
その瞳には生きるために、と言う決意のようなものが現れていた。
修正投稿は、以上です。
原案を生かしつつも、ココで切っていますので小谷野の生死については
現状不明確です。
243 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/08/31(木) 00:32:13 ID:UH0r7oiH0
捕手
ほすほす
保守代わりにまとめ行きます。
【北海道日本ハムファイターズ選手名簿】
捕 手
30 高橋 信二 出発前、実松をじっと見ているのを鶴岡が目撃。武器;不明
32 中嶋 聡 白井(主催者側?)に敵意を持っているのを、鶴岡が目撃。 投げやりだった今成を諭し合流中。 武器:不明
37 小山 桂司
40 実松 一成 出発前、怯えている様子を鶴岡が目撃。武器:不明
56 駒居 鉄平
62 今成 亮太 投げやりになっていたが、中嶋に諭され合流中。 主催者側と戦いたいようだが……。武器:不明
63 渡部 龍一
64 鶴岡 慎也 出発前、ライバルの捕手陣の様子を観察。落ち着きたいと思っているが…。武器:不明。
【北海道日本ハムファイターズ選手名簿】
内野手
0 古城 茂幸 遠藤と通信会話中。 バトル訓練を受けるなど開催側と組んでいる。坪井を監視していたが……。武器:目だし帽&ウィンドブレーカー
2 小笠原 道大 本来参加免除だが参加。 幸雄さんと対峙し賢介を救出。 賢介の怪我を考慮し、診療所へ向かう。武器:ベレッタM92FS・センチュリオン
3 田中 賢介 幸雄さんに右腕を切りつけら負傷。小笠原に助けられる。武器:不明
4 奈良原 浩 【出発前に主催者側の銃撃により死亡 武器:支給前=バックは結果的に岩下に】
6 田中 幸雄 賢介を切りつけ、対峙する。小笠原の武器を見て、荷物を放置し、逃走。 武器:ナイフ
8 金子 誠
10 木元 邦之
23 尾崎 匡哉
24 陽 仲寿
39 川島 慶三 生き残る決意を決める。手段は不明 武器:不明
50 市川 卓 【慎重に行動していた(?)が45佐々木に撃たれ死亡。 武器:アーミーナイフ】
51 小田 智之
54 稲田 直人
57 飯山 裕志 コイントスならぬ靴の裏表でゲームに乗ることを決意。武器:機関銃系統
58 高口 隆行
【北海道日本ハムファイターズ選手名簿】
外野手
1 SHINJO ☆参加免除
7 坪井 智哉 小笠原と合流したがっている。 バックを道の真ん中に置いて移動するのを古城が確認。武器;果物ナイフ
31 小谷野 栄一 ゲームに対抗するために紺田と組んだが、疑心暗鬼の紺田に撃たれてしまう。生死不明 武器:不明
41 稲葉 篤紀
44 森 章剛
46 森本 稀哲
52 紺田 敏正 疑心暗鬼の心に支配され小谷野を撃って走り出す。 武器:拳銃系
53 工藤 隆人
55 佐藤 吉宏
65 鵜久森 淳志
【北海道日本ハムファイターズ選手名簿】
投手
11 ダルビッシュ有 馬鹿げたこの状況に不満 武器:不明
12 鎌倉 健 泣いている。誰かに出会うが……。武器:不明
13 須永 英輝
14 井場 友和
15 横山 道哉 【疑心暗鬼になり、金村に襲い掛かるも、返り討ちに合う。 武器:ナイフ(死亡後、金村に奪われる)】
16 金村 暁 ★成り行きで横山を殺害。自分でも自分の行動が理解できない。武器:熊撃退スプレー缶&ナイフ(横山から奪う)
19 清水 章夫
20 矢野 諭
21 武田 久 不安ながらも人を信じたい 武器:防弾チョッキ
22 建山 義紀
25 立石 尚行
26 糸井 嘉男
27 江尻 慎太郎 工場にいて、自分や皆を救うため、首輪を何とかできないかと道具を探している。 武器:不明
28 正田 樹 実践ありき、と無邪気に(?)武器を振り回す。 武器:ムチ形のモノ.(詳しくは不明)
29 八木 智哉
33 橋本 義隆 殺し合いを心理的には否定。漁村を目指す。 武器:アイスピック
34 吉崎 勝
35 木下 達生
36 MICHEAL
38 武田 勝 ひょんなことから岡島と合流。勝ワールドの会話に引きずり込む。ほのぼの。武器:不明
43 星野 八千穂
45 佐々木 貴賀 ★様子がおかしい?学校にて市川を殺害 武器:銃系統
47 菊池 和正
48 中村 渉
59 金森 敬之
60 伊藤 剛
61 押本 健彦
69 岩下 修壱 白井(開催者)と交渉の上、二つのバック(奈良原と自分の物)を手にする。真意は不明。 武器:ボウガン&携帯形の機械(?)
※ 岡島 秀樹 トレード(?)により参加中。ツイてないとぼやく。武田勝と合流。勝ワールドの会話にペースを乱される。 武器:不明
【その他出演者】
白井一幸 選手への説明役を終える。主催者により監視役を言い渡される。ただのコマの一つと諦める。
ヒルマン 【ルール説明等監視役を強く拒否。主催者側に殺される】
遠藤良平 運営役の一角? 古城とトランシーバーで会話。
主催者 詳細は不明。白井と連絡をしている人物の喋り口調からは男と推測されるが……。
兵士達 ゲームの運営役補佐。人数は数名? 銃器を持っている。 奈良原を殺害。 ヒルマンもおそらく彼らにやられたものと思われる
以上です。
乙ほしゅ
職人さん、まとめさん、乙です。 そして保守。
あの息も詰まるようなコンクリート剥き出しの部屋を出ると、辺りは不気味なほどにシンとしていた。
皆死んでしまった後の世界に自分一人が取り残されたかのような気がして、森本稀哲(46)は思わず身を震わせた。
行くあてもない、これからどうしたらいいのかもわからないが、とにかく、ここを離れなければならない…。
それから、どのくらい歩いただろうか。気づくといつのまにか林道を外れていた。
木々は鬱蒼と生い茂り、辺りは昼というのに薄暗い。
気味が悪い…、と思った途端に辺りが変に気になりだして、森本は周囲をキョロキョロ見回した。
…すると、右手やや前方、大きな岩の脇のあたりに、自分と同じユニフォームの背中が見える。
背番号は…、8番。選手会長になったばかりの金子誠だ。地面にしゃがみこみ、下を向いているように見える。
さてどうするか、森本は一瞬迷ったが、幸いにして自分は外野で金子は内野手、生存枠を賭けて戦う相手ではない。
ならば、答えはひとつだ。
「金子さん」
背後から不意に驚かせてしまわないよう、大きく側面に回りこみ、まずは3メートルほど離れたところから遠慮がちに声をかけてみる。
すると金子は首だけをこちらへ向けたが、森本を一瞥しただけで、すぐに視線を足元へ広げた紙に戻してしまった。返事もない。不安がよぎる。
敵でなければ用はないというのか、まさかそういう人ではない…、とは思うが…。
「森本です、あなたと戦うつもりはありません」
ポジションが違うとはいえ、まずは害意のないことだけ伝えると、金子はまた森本のほうを向いて、今度はその目をジッと見返してきた。
しかし、やはり返事はない。疑われているのか…、いや、それを自分から疑い出せばキリがないのだ。
「金子さん…、森本です!」
「二度も名乗らなくても、誰がお前を見間違えるか。早くこっちこい」
ようやく口を開いたかと思えばそんな台詞を吐き、金子は面倒くさそうに手招きしている。
「え」
「ボサッと突っ立ってんな。早くここへしゃがめ」
すっかり肩透かしを食らった森本をよそに、金子はいつもの仏頂面のような面をしたまま、自分の横の地面を指先で軽く叩いている。
すっかり相手のペースに飲まれた森本は、とりあえずそれに従いつつ、ひとつ疑問を口にした。
「あの…、失礼ですが、あんたこんな所で何やってるんですか」
「遊んでるように見えたか。聞かないでも、見ればわかるだろ」
「見てもわからんから、聞いてるのです」
「隠れてんだよ」
「背番号見えてましたけど…」
「いいから、一応隠れてたんだよ、道からは見えないように! それをこんなところまでフラフラ入って来るのがどうかしてる」
「それは…」
金子さんも同じなんじゃないですか、と森本が言いかけたとき。ターン、と遠くで銃声が響いた。
「うわ、今のって…、」
森本が目で同意を求める。金子はそれに頷いた。
「案外、やる気出してる奴は多いみたいだな」
金子はそう言って、鼻をフンと鳴らした。森本はそれに不快感を覚える。
皆が進んで殺し合いをしているとでも言いたいのか、しかも鼻先で笑うなんて。
「それは…、違うんじゃないですか。やる気出してる、って言うよりは、不安だったりとか、身を守るためとか」
「へぇ」
苛立ちから少し強い語調で展開された森本の主張を聞き、金子は口元に歪んだ笑みを浮かべ、しかし目は笑わないままに言葉をつなぐ。
「不安から殺すのと進んで殺すのに、何か違いがあるとでも言うのか?」
「ありますよ! 不安から疑い深くなってるだけなら、信じられるもんがあれば救われます。
普段からチームの柱…っていうか、頼りにされてる人が出て、みんなに呼びかけたりとかすれば…、」
「チームの柱ね。例えば」
「例えば…、幸雄さんとか」
「幸雄さんは、笑いながら賢介を刺したぞ。ガッツさんがいなくなって、二人になった途端にな」
「まさか」
笑いながら賢介を刺す幸雄さん…、を森本は脳内に思い浮かべようとしたが、その試みは失敗に終わった。
田中幸雄を悪役として思い描くのは絵的に無理がある。
「…ネタですか」
「ネタじゃねぇよ」
「でも想像つきませんよ。ネタとしか思えません。笑わそうと思ってテキトーな事言ってるでしょ、タチが悪いですよ」
「お前を笑わして俺に何のメリットがあるんだよ。そこまで暇じゃねぇよ。まあ俺より幸雄さんを信じたい気持ちは俺にもわかるが…」
「……、じゃあ、その、話に出てきたガッツさんは」
「戻ってきて、ためらいもなく幸雄さんを撃った」
賢介を刺した幸雄さんを撃つガッツさん。…こっちはどうにか想像がつく。
「でも金子さん。なんでそんなことを知ってるんですか」
「偶然見たんだよ、それ以外ないだろ」
「偶然にしては出来すぎじゃないですか、その、タイミングとか」
「出来すぎだろうが、見たもんね、この目で」
「それなら、なんで止めに入らないんですか!」
「バッカ」
金子は片方の眉を上げ下唇を突き出してまず悪態をつき、それから言葉を続けた。
「ガッツさんと幸雄さんがマジで戦ってんだぜ、俺ごとき何ができるかっての。
ノコノコ出て行ったって近づく前にオーラで弾き飛ばされるね。平たく言うと役者が違う。それに」
二度ほどまばたきをして、金子は声の調子を低める。
「うちは馴れ合いチームだ。団結力があって仲良しだが、多分一人になると弱い。
お互いを疑わなきゃならんような事になればなおさらだ。
とすれば、お前の言う通り、チーム内に影響力のある奴の動向が、いずれこのゲームの行方を少なからず左右するだろうね。
そのうち二人の動きを見られるとなれば…、わかるだろ、危険を冒して割って入る理由なんかないってこと」
森本は黙ってしまった。金子の言うことに諸手を挙げて賛成することはできないが、少なくとも無茶を言ってはいない。
そうしてにわかに場を支配した沈黙を切り裂き、突如サイレンが鳴り響いた。
続いて白井の声でアナウンスが入る。曰く、ルールの追加説明と、それから…、
『現在生存者は57名。 死亡者は奈良原、市川、そして横山』
「えっ…」
暫し自分の耳を疑った森本をよそに、金子はペンをサラサラと動かし、放送された内容をメモしている。
「はぁね、事情はわからん…にしても、あれからもう二人も死人が出たってわけか。こいつはノンビリしてる場合じゃなさそうだな…」
そう言うと金子は足元へ広げていた地図を手に、よっこらしょ、と立ち上がった。森本もつられて腰を上げる。
「地図によるとだ、ここから南下して川を渡れば市街地があるらしい。俺はそこを目指そうと思うわけ」
「行って、何するんですか」
「決まってんだろ、家捜し。それからついでに、ねぐらの確保。人間、まずは食事と屋根だぜ」
金子はテキパキと地図を畳むと、それをポケットへ突っ込み、脇に置いてあった鞄を肩へひっかけた。
「さて、行くぞ。行動するなら早いほうがいい」
行くぞ、と当然のように言われ、森本は戸惑った。一緒に行くなんて話は一度もしていないのに。
これまでの言葉から見て、冷静で合理的だがそれほど仲間想いでないように見えるこの人は、果たして信用に足る仲間なのか…。
「…あの」
「なんだ来ないのか?」
…もしかしたら、尋ねるだけ無駄なのかもしれない。だが、改めて問わずにはいられない。
「できれば、ひとつ聞かせて下さい。金子さんは、このゲーム、やる気…なんですか」
「…愚問だな」
刺すような森本の視線をかわすように、金子はヘラリと笑う。
「俺を誰だと思ってる」
腰に手をあて、立てた親指で喉元を指して、『やる気なし』を高らかに宣言する選手会長、金子誠。
このとき森本の目に映ったその姿には、確かに後光がさしていた。
【残り57人 1+1+1+1=4人でゲーム終了】
259 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/09/03(日) 03:10:18 ID:CL0I0OpmO
なかなかいい文章書きますな。いつも拝見しています。
「会長と俺」ここまでです。
乙、乙。
やる気のなさに期待…なんかしないよ会長。
か、会長…幸雄さんとはまた違った感じでかっこいいよ会長…
き、期待なんかしないんだからね!!
ほしゅ
銃を撃つときには、思ったより衝撃が来るんだなぁ。うおー。リアルー。
佐々木貴賀(45)は、今自分の行なった行為についてボンヤリとそんな事を考えていた。
そして、佐々木はクスリと笑う。
昔から、よくリアリティのある夢を見ていた。
そして、夢の最中に「コレは夢だな」なんてことに気がつくのも、たびたびのことだ。
だから、自分自身でも驚いていた。影響を受けすぎだなぁ。ボク、と。
昨夜、パソコンを立ち上げ、時間が過ぎるのも忘れるほど読みふけり、引き込まれていた。『千葉マリーンズバトルロワイアル』なる読み物。
内容と言えば、選手同士が殺しあうと言うショッキングな内容だったが、むしろそういった過激さながら物語として非常に良く出来ていた。
もし、ファイターズで、同じようなお話があったどうなるのだろう?
昨日、その読み物を読んでからと言うもの、不謹慎ながら佐々木はずっとずっとそんな事を考えていた。
だから、キャンプ打ち上げ後、バスに乗り込み、多少不謹慎ながらも、移動中にもそんな事を考えながらうつらうつらとー。
(小笠原さんはやっぱり武器は日本刀だよな。あと、幸雄さんとか中嶋さんは頼りになるベテランだから……)
◆ ◆ ◆
気が付いた時、この舞台にいた。
昔から、よく見ていた、リアリティのある夢の舞台。
コレが現実な訳が無い。
もし現実なら……。なぜ夢想していた通り、奈良原さんが最初に殺される?
もし現実なら……。なぜ、ボクの想像しやすい武器が与えられている?
もし現実なら……。なぜ銃を持っていた危険なボクに対し、市川は隙だらけだった?
そう、これはきっといつも見ている夢の世界。
佐々木は与えられた武器である、拳銃ニューナンブM60をしげしげと眺める。
大好きだった警察のマンガのキャラクターが持っていた、黒光りする一丁の拳銃。
それをしっかりと握り締め、近くの教室へとふらふらと入っていく。
放置され、使われてはいない雰囲気の教室内には、生活の匂いがしないものの
どこか懐かしさを感じさせる。
今となっては佐々木には小さい感じのする、三十個ほどのスチールパイプ製の脚を持つ机と椅子。
一段高くなった教壇。そして、大きな黒板には、3cmほどに短くなったチョークが数本。
ほら、やっぱり、どこかで見たような場所だ。
佐々木はそう思いながら、拳銃を教壇に置くと、黒板へと向かいその短くなったチョークを掴む。
そして、静かな教室内にカツカツと黒板に書かれる音が響き渡る。
(ふぅ、できた。今回はなかなか良い出来だなー)
いつものように、暇があるときにしている落書き。
古ぼけた黒板に描かれたいたのは神々しい女神の姿。
その女神の表情は佐々木の不安を吹き飛ばすように、自愛に満ちた表情をしていた。
「狂夢」以上です。
ハムよええ
268 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/09/03(日) 22:26:46 ID:fwbhg5770
あげ
画伯wwwwwwww
画伯マジオタクwww
ベルダンディー描いてんじゃねえよwwwww
>>12の議論板のほうで話は進めていたのですが
保管庫作成しました。
http://fsbr.no.land.to/ まだできていない部分ありますが後々作っていく予定です。
それと地図ですが、某バトの地図を改変しているものでして、
建物や森等の位置は変わりませんが後日デザインだけ変える予定です
(といっても描くのは私ではなくある職人さんですが)。
まだ避難所兼掲示板設置してないので、何か不備等あればメールか本スレにお願いします。
「次、押本!」
白井が自分の名前を呼んだ。
「はい」
押本健彦(61)は立ち上がった。
そして他のチームメイトがしていたように押本も数少ないバックの中からひとつ選んだ。
ここから出たらゲームが始まるのかぁ…
押本は多くの不安を抱えながら出口をでた。
「まあまずはここの地形を把握しなきゃな」
押本はカバンから地図を出そうとした。
「これが俺の武器かぁ…まあそれはいいとして地図を探さなきゃ」
地図をカバンから出すと広げた。
「ふーんここは島なのか。川、森はあるらしいな」
地図をカバンに入れると周りに見える森へ進んだ。
「森を抜ければ自分がどこに居るか分かるな」
森を入って少し進むと座り込んで
「よしここならあまり目立たないな」
押本は自分のバックを開けて武器を取り出した。
「ふーん銃か…ん?なんか入ってるな…説明書か」
説明書を読むとどうやらこれはAK47という銃のようだ。
使い方はシンプルである。
「一応使い方は分かった。じゃあ行くとするか」
確か各ポジション生き残れるのは一人と言っていたな。
押本は考え出した。
俺たち投手は大勢いる。その中から一人だろ……
絶対俺たち若手は狙われる…
これから生き残るためには出来るだけ周りに隙を見せちゃいけないな
押本は顔を引き締めた。
まるで自分が登板しているようだ。
30分は経っただろうか色々迷ったりもしたが森も出口が見えた。
「ふー…やっと出れるなぁ」
やっと森から出れる。押本はそう思ったその時。
バーン
どこから銃声が鳴り響いた。
「このゲームに乗った奴がいるのか!?やばいな…俺も狙われる前に逃げないとな」
押本は急ぎ足で進みだした。
さっきの銃声が押本の脳裏に浮かんだ。
このゲームに乗った奴がいるって事は下手したら俺も殺られる。
やっぱり一人で行動したほうがいいのか?
もし誰かが味方と装って俺を殺しにきたらどうしよう…
しかし何人かで行動したほうが安全だなぁ…
まあ色々考えても仕方がないな
押本は森を出た。
そういえば俺ってどこにいるんだろう?そう思うと地図を広げた。
「周りの様子から考えて俺はF4にいるのか…じゃあ向こうに見える灯台にでも行こうかな」
押本が向いた先には灯台が見える。
「さーて。狙われる前に行くか!」
そう言うと押本は駆け足で灯台へ向かった。
【残り57人 1+1+1+1=4人でゲーム終了】
「建山さん…」
背後から聞こえた小さな声に、建山はゆっくりと振り返った。
振り返った視線の先には、誰も居ない。少なくとも建山の視界には入らない。
建山の死角に隠れているのだろう。
殺し合いを強要されているこの状況下では仕方ないとも言える。
だが建山は慌てた様子を見せずに、笑みさえ浮かべて見せた。
「出てこいよ。俺に害意は無いぜ。その声、久だろ?」
相手を刺激しないように穏やかな声で。
建山の言葉のあと一呼吸置いて、意を決したように木陰から武田久が姿を現す。
その表情は緊張で強張っていた。
「……すみません、建山さん……俺…俺、建山さんのこと、信じてないわけじゃ…」
「ああ、わかってる。気にするな。疑うなっていう方が無理だぜ」
建山は荷物を地面に放り投げて、両腕を広げて見せた。
何も持っていないとでも言うように、自身の言葉を証明するように。
無防備な姿を武田に晒す。
武田はハッとして、慌てて建山に走り寄った。少しでも建山を疑った自分が恥ずかしかった。
「建山さん、すみません、ほんとにすみません、俺…」
武田は地面に転がっている建山のバッグを拾いながら何度も謝る。
自分はこんな建山をどうして疑ったんだろうと自分に腹が立った。
荷物を受け取った建山はぽんと武田の背中を叩いて笑った。
「暗い顔すんなよ。俺のこと信じたから声掛けてくれたんだろ?ありがとな、久」
建山の言葉のひとつひとつに、救われる。
武田は泣きそうになるのを堪えて、下唇を噛み締めた。
「俺、建山さんのこと探してたんです。一度は建物から大分離れたんですけど…戻ってきて隠れ
ながら森の中ぐるぐるして建山さんのこと探してました…。何人か見かけたんですけど、銃声は
聞こえるし、白井さんが…放送で…あんなこと言うから、怖くて誰にも声掛けられなくて……
だんだん不安になってきて……」
「ああ……誰だって怖いよな…こんな…状況じゃ…」
短い言葉の中に、強い憤りがあった。
この理不尽な状況と、信じがたい放送。建山にとって、恐怖や不安よりも、押し付けられた理不
尽さへの怒りのほうが強かった。
建山は武田に向き直り、武田の肩に両手を置き、ぐっと力を込めた。
「武田、皆を集めよう。ピッチャーやってるやつ、全員。皆で助かる方法を考えよう」
「えっ」
真っ直ぐな視線は、死を恐れてはいなかった。諦めも無い。
一瞬武田は怯み、声を失う。
「……で、でも、建山さん、各ポジション一人しか生きられないって…」
「じゃあお前、皆でぶっ殺しあって、最後の一人になりたいか?」
建山の言葉に、武田はぞっとした。
各ポジションの生存枠は一人。彼はその言葉の重みをリアルに思い描いてなどいなかったのだ。
否、思い描くことを拒否していただけだ。
一人しか生存枠が無い――。
それは、一人を残して全員が何らかの形で命を落とさねばならないということ。
武田は建山に投げかけられた言葉に首を振る。
「殺し合いなんか、したくない」
武田の言葉に、建山は頷く。
殺し合いなんか、したくない――。
その言葉だけで十分だった。
「そうだよな、久。俺も嫌だね。死んでも嫌だ」
「…俺も、嫌です。自分が死んだって、殺し合いなんか、嫌だ」
「ああ。皆そう思ってるよ。絶対。だって、俺たち12球団で一番仲がいいチームなんだぜ?」
誇らしげに言う建山は、にやりと武田に笑いかける。
武田は何度も頷いた。
仲が良いなんて、そんな良い言葉で馴れ合っていることをごまかしている。
だからチームが強くなれないと言われたこともある。
けれどそれは、彼らにとっては誇り。
全員で助かること、それは甘い考えで、やはり馴れ合いなのかもしれない。
でも、それでも武田はそれが悪いことだと思えない。
泣きたくなるほど大切に思えた。
「……俺、このチームで、よかった…」
小さく呟いたせりふに、建山はもう一度にやっと笑った。
「俺もだよ」
【残り57人 1+1+1+1=4人でゲーム終了】
ここまでです。
ちょっと関西弁全然わからんので全部こんな感じでいかせてもらいます。
誰にも会いませんように。もし会ってしまうとしたら、できれば『彼』でありますように。
高口隆行(58)は、祈りながら森の中を歩いていた。
地図を見ていないので、現在の正確な位置はよくわからない。それどころか荷物を開けるのもまだだ。
他の中身とぶつかり合ってカチャカチャと音を立てている、武器さえ確認していない。
この中に入っているのは、人を殺すための道具だ。俺に人殺しをさせるための。
例え何であれ、そんな物を見れば気が変になってしまうかもしれない。
皆だってきっと同じだ。今は異常事態で、ここは異常な場所なんだ。
突然何かのスイッチが入ってしまう人だって、いてもおかしくはない。
そのスイッチが入った音、銃声を、高口は二度聞いている。
最初の一発。生まれて初めて聞いた(今後聞くこともないと思っていた)それに愕然とした。
――先程の、死亡者の名前を伝える放送。この音によって命を落とした人がいた。
そしてその直後の二発目。今度は音そのものよりも、銃を使う人間が他にもいるという事実に全身が総毛立った。
高口自身が未だそのスタートボタンを押せないでいるのに、ゲームは既に始まり、進行していた。
あの放送と、銃声二つは、『入ってしまった』人がいるってことの証拠だ。
だから他の人には会いたくない。何をされるか、何をしてしまうかわからないから。
…『彼』は、大丈夫だろうか。
バッグを開けないことが、このゲームに対し高口ができるささやかにして唯一の抵抗、『放棄』だった。
できればこのまま何も起こらないでほしい。そんな儚い希望を抱きながらも、非現実的な現実から逃げるように歩を進めていた。
背の高い木々が行く手を遮るように立っているその場所で、初めて足が止まった。
カサリ、と。
背後で小さな音が聞こえたのだ。
直感、ただの勘に過ぎないが、葉擦れの音ではないように感じた。
恐らく、人為的な、何かの。
「誰…ですか」
乾燥してくっついた唇を引き剥がし、声を絞り出す。新人の立場上自然と敬語になった。
本当は会いたくはない。気のせいだといい。
お願いだから出てこないでくれ。そしてこのままどこかへ行ってくれ。
「いるんなら、出てきてください。自分は攻撃する気はありません」
森の静けさにつられるように、小声で、本心とは裏腹な言葉を続けた。
ややあって、右斜め後方から、
「わかった」
という返事があった。
ドキリ、と高口の胸が一際大きい鼓動を打つ。
…しかし、今の声は。
聞き覚えがあるような気がした。
不安と多少確信めいた期待をもって、高口は振り返った。
振り返ると同時に呟いた。
「…八木」
「おう」
木の陰から現れた八木智哉(29)が、短い返事と共に手を挙げた。
「ラッキーだな俺ら」
八木はそう言って笑ってみせた。
「確かに、そうだな」
高口もつられて苦笑する。
出発した時は「とりあえず頼れそうな人を捜そう」と思っていた。
高口にとってまず頼れそうな相手といったら、大学の先輩の小谷野栄一(31)か、この八木だった。
特に昨年まで4年間チームメイトだった八木であれば、気心の知れた仲だし安心だろうと考えていた。
だから、銃声を聞いた時は「どうか、撃ったのも撃たれたのも八木ではありませんように」と、
放送を聞いてからは「できることなら八木に会えますように」とずっと祈り続けていたのだ。
しかしこうも簡単に、実際に会えるとは思っていなかった。
確かに相手の言うとおり幸運だ、と、ほっとしていた矢先。
「なあ、お前もう誰かやった?」
「…えっ」
一瞬耳を疑った。あまりにも唐突に、あまりにも普通にそんなことを言うものだから。
聞き間違いかと思ったのだ。
「人を殺したかどうか聞いてるんだよ。で、どっち。殺った?殺ってない?」
ようやく意味を理解して、すぐにブンブンと首を横に振る。
まさかそんなこと。とんでもない。有り得ない。
平然と、何てことを言うんだろう。この男は。――こんな男だったか?
「そっか。じゃあさっきのは違う奴ってことだな。よかった」
「当たり前だろ。俺が撃つわけない…ってか俺まだ武器が何かも知らないんだよ」
今度は八木が驚きと呆れで目を丸くした。
「何だよそれ!しょうがない奴だな。そんなんじゃこの先生き残れねえぞ?ていうか生き残る気あんの?」
何も返せず俯く。と、勝手にバッグをひったくられた。
「何すんだよ!」
「開けるんだよ。開けて見なくちゃ始まんねえだろ」
だから始まるのが嫌なんだ、という心の声など届くはずもなく、ファスナーが開けられて否応なく中身が取り出された。
八木の手に握られていたのは――金槌と、釘の入ったケースだった。両方とも何の変哲もない、ごく日常的に目にする物。
「大工にでもなれってか。ほら、自分で持てよ」
「…」
ぐいと押し付けられた物を高口は無言で受け取る。
「俺のも見してやるよ。こういうのはイーブンでないとな」
そんな事を言いながら八木は、高口の返事も待たずに自分の荷物からそれを出して見せた。
「『H&K Mk23』。SOCOMピストルって言うんだって。アメリカの特殊部隊で使われてるらしいぜ。スゲーだろ」
得意げに見せびらかすが、暗い顔で項垂れた高口が「ああ、スゴイな」などと言えるはずもなかった。
ご自慢の銃に対する反応が悪かったことにちょっとムッとした様子で、八木はその顔を覗き込んだ。
「何凹んでんだよ。そりゃ俺のに比べたら全然だけど、一応それだって使い方によっちゃ強力じゃねぇの?」
「俺…嫌なんだよ。何もしたくないんだ」
ピクリ、と八木の片眉が上がったのに、目を伏せていた高口は気付かない。
「本当は、誰にも会いたくなかった。さっきも、お前だとわかるまで死ぬほどビビってたんだ。
放送で流れた人たちを殺した、そんなことをできるような人だったらどうしようって思って…。
でもよかった。他の人に会いたくないのは本当だけど、流石にずっと一人じゃ心細かったし。
…武器を確かめなかったのは、見たら自分までおかしくなっちゃうと思ったからなんだよ。
やっぱり俺、このゲームを、どうしてもやりたくない…」
「甘ったれんなよ」
自分の言葉を断ち切った声の低さ、無機質さに驚いて顔を上げた。そこにあった表情も同質で硬く、突き放すような目をしていた。
その目のままで八木は続ける。
「なあ、お前さ、殺すのと殺されんのとどっちがいい?」
「そんな、そんなの、こ…殺し合いなんて無理だよ。できっこないに決まってんじゃないか。
誰かに殺されるかもしれない、嫌なら誰かを殺せなんて言われても」
「じゃあ生きるのと死ぬのとどっちがいいわけ?俺はそれを聞いてんの。生き残りたかったら殺さなきゃ駄目だぞ」
「…どっちも嫌だよ。死にたくないし、殺したくない」
「話になんねぇな」
やれやれ、といった風に溜め息をつかれる。
相手の言うことは尤もだ。ここではそういうルールなのだ。聞かされたし見せられたし思い知らされた。
そうなのだろうが自分はどうしてもできない。頭でわかっていても、実際にやれと言われて到底できるとは思えない。
だったら。そう言うなら。
一つ、気になったことを口にした。
「お前は…できんのかよ?」
そこで八木は高口から視線を外し、呟いた。
「人ひとり殺すくらい、どうってことねぇよ」
「…本気で言ってるのか?」
「あのなあ高口」
視線だけが戻ってくる。それは再び、さっきよりも更に冷たいものだった。
「死にたくないなら戦え。戦いたくないなら死ねよ。『逃げる』なんて選択肢はここには無いんだよ」
言い放たれた言葉は、耳よりも心に重く響いた。
かつての頼もしいエース、唯一絶対に味方だと思っていた人間がまるで別世界の住人になってしまったような、絶望的な宣告。
高口は暫し言葉を失った。
ごくり、と唾を飲み下し、さっきはできなかったもう一つの質問をする。
「…なあ、八木」
ふと思いかけて腹の底に沈めたその考えが、今の台詞でまた浮かび上がってきたのだ。
「俺も、殺すつもり、なのか?」
その心中を察してか、八木は口の片端だけを上げて薄く笑みを作った。
「お前の甘ったれ具合には流石に呆れたけど、まあ今までの付き合いもあるし。
それにポジションが違う。殺す理由も必要もないだろ。それはいいとしてさ」
緊張を解きかけた高口に対し、今度は逆に問いがあった。
「もう誰か、チームで仲いい奴できたか?てか、喋った?他の人と」
「いや…まだ、あんまり。少ししか」
「だろ?全然打ち解けるまでは行ってない、性格もわからない、よな。当たり前だけど。
そんな人らと遭遇して、『殺さないから殺さないで』なんて言われて、信じられるか?
向こうだって同じ事考えてるだろ。――つまり、俺たちなんか、同じユニ着てても殆ど敵だってことだよ」
思わず目を見開く。そんなこと考えもしていなかった。
言われてみればそうだ。自分は未だ、このチームの事をあまり、いや、全く知らない。
「このままだと俺たち、真っ先に殺られるぞ」
高口はぞっとした。
しかし同時に、八木が「俺たち」という言葉を使ったのに少しだけ安堵を覚えていた。
一応まだ自分を完全に見捨てたわけではないらしい。そう思った。
果たして八木を信頼していいのかどうかはわからなかったが。
「奈良原さん、だよな。ベテランの名選手」
いきなりその名前を出されて、高口は知らずの内に身構えた。
「あれほどの選手でも、あんな簡単に殺されたんだぜ?お前見てただろ」
今でもあの惨状を克明に思い出せる。眩しい物を見た後のように、瞼の裏に焼き付いている。
「まして、俺たちなんか…ゴミみたいなもんだきっと」
はっきりと言い放たれるその言葉は恐ろしかった。あまりにも真実味を帯びて感じられたからだ。
そこで少しの間があった後、八木はまた喋りだした。
「いや、でもまあ、ある意味では対等だと言えるかな?
死んじまえば皆ゴミと一緒だ。優先順位なんか関係ないのかもしれない。
それにさ、ここぞとばかりに気に入らねー奴を消そうと思ってるのもいるんじゃないか?
ルール上はルーキーもベテランも関係なし、同じポジションで最後まで生き残った奴が勝ち、なんだからさ。
全員にチャンスがある、ヒルマン監督も言ってたし。もう死んじゃったけど」
最後の方は殆ど独り言だった。
高口は再び背中に冷たいものを感じた。
彼は、もう恐ろしいほどに割り切っている。
『入ってしまった』んだ。
不意に、八木の銃を持った左手が持ち上がった。どこかぼんやりと高口はそれを見る。
その、銃口と視線は何を狙っているのか。脳がそれを認識すると同時に、凍結した。
――自分?
「え…」
驚いて身を縮める間もなく、SOCOMピストルの銃口が、拍子抜けするほど小さな音と共に銃弾を吐き出した。
次いで背後から「ギャッ」と短く悲鳴が上がった。
「やったか?」
咄嗟のことに驚いて固まっている高口を尻目に、八木は大股で声のした方へ歩み寄る。
ガサガサと乱暴に草を掻き分ける音の後、いささかガッカリしたような声が聞こえた。
「何だ。ネコか」
そこでやっと高口の呪縛が解けた。慌てて後ろを振り返る。
「い、いきなり、撃つなんて」
「バーカ何言ってんの、相手が先に撃ってくるかもしれないだろ」
草むらから戻ってきた八木は、サプレッサー付きの銃身で左肩をトンと叩いた。
その表情のどこにも悪びれる様子はない。こんな状況下とはいえ、一つの命を奪った事に何の感傷も覚えていないようだ。
やはりもう既に、どこか麻痺してしまっているのか。
「何?その顔。お前のことを撃つとでも思った?」
首を振って否定すると、八木は「あっそう」と満足げに笑った。
違う。確かに違う。
躊躇いもなく引き金を引けるお前が、ただ怖かっただけだ。
【残り57人 1+1+1+1=4人でゲーム終了】
スマソ 訂正
×「「ラッキーだな俺ら」
○「ラッキーだな俺ら。お互い最初に会えるなんてさ」
で脳内補完おながいします
↑はスルーで。何度もスイマセン
書き込むつもりはなかったorz
作家様いつもいつも乙です
八木KoEeeeeeeeeeeeeee!!
乙です。
八木…笑顔はかわいいのに…真顔でそんなことされたら余計怖いよ((((;゚Д゚))
294 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/09/05(火) 12:23:00 ID:CuStpGT/0
あげます。
職人様乙です。八木怖い・・。
捕手・大宮
職人様乙です!
うわあお、八木は勝手に非マーダーキャラだと思い込んでいたのでびっくりだ…
木元邦之(10)は、高まる鼓動を抑えられなかった。
(あった……。ようやっと見つけた……)
木元は、市街地の一角、その中でもひときわ大きい屋敷内の一室にいた。
そして、かつてはピカピカだったであろうゴージャスな等身大の姿見の鏡の前で興奮していた。
だが決して、自らの鍛え抜かれた身体に興奮しているわけではない。
目的はただ一つだった。
木元はずいっと鏡に近づき、アゴヒゲをそる時のようにぐいっと首を伸ばす。
視界に写るのは無骨な忌々しい銀色の首輪。
(こんなモノのせいで、俺は言いなりにならなくちゃいけないのかよ)
木元はいらだたしい気持ちをおさえられずに、思わず舌打ちをした。
だが……。彼らは本気なのであろう。
ある種、球団の功労者である奈良原さんを見せしめで殺害していたのをみてもそれは、
明らかだった。
その本気度を見れば、この首輪とやらも、ちょっとやそっとでは外せないのであろう。
木元は苦々しい思いを抱きながらも考える。
……ましてや、首輪を外しに掛かる。そんなことは向こうさんも想定のうちで、何らかの予
防策をしているのだろう。 あの席では説明されなかったが、無理に首輪を外しに掛かると
安全装置が作動して爆発するとか、そういった恐ろしい予防策が施されていたとしてもなん
ら不思議ではない。
けれども……。木元は思うのだ。殺し合いをさせたいと言っている彼らが、そんなことで、
駒を殺してしまい、『殺し合い』と言う結果を出さない行為に出るだろうか、とも。
だから、木元は一つ試してみることにしたのだ。
結果が上手く行けば、誰もがハッピーになれる、それだけのコト。
そうして、木元はポイっと、あるものを放り投げた。
◆ ◆ ◆
間違いだったのだ。
あれが、間違いだったのだ。
菊地和正(47)は、白井さんにゲームの説明をされた、あの一室での決断を悔やんだ。
30人近い投手陣。生き残れるのは、その中でもたったの一人。
ルールを聞いたときに非現実的だったそのルールが、奈良原さんへの銃撃や
徐々に出発していく人たちを見るに付け、それが現実であると強く認識されていった。
だから、思わず頷いてしまったのだ。
「パートナーはお前が良いや、一緒に行動しようぜ。」
隣にいた木元さんが、こっそりと話しかけてくれた。その時の決断の事を。
その後は以外にもトントン拍子だった、会場の一室を出て木元さんの言うとおり南へ
南へと進んで、誰にも出会わずに、木元さんの姿を見かけたときには思わず合流で
きた喜びと感激で、涙が出そうだったくらいだ。
その後、お互いに与えられた武器を見せ合い
「木元さん、ひどい武器ですねー」
なんて、半分笑顔で話していたのはほんの十分前のことだ。
だが今。木元さんは、ボクに与えられたショットガンを持ち、よりによってボクに
向けて構えている。
そうして、木元さんの武器「十得ナイフ」を自分に放り投げ、こう言い放ったのだ。
「さっ、頑張って首輪を外してみようか」と。
木元さんの行動に最初は何を言っているのか判らなかった。
……判りたくも無かった。
◆ ◆ ◆
(なるほど、そう言う訳ね。)
木元はしゃがみながら、なにかを拾い上げ、目の前のモノをしげしげと観察すると、
やおら背伸びをするように立ち上がる。
「……こりゃあ、やっかいだわ」
木元は、思わず呟くと、拾い上げたナイフの残骸をピンと指で弾き飛ばす。
(……つう感じなら、どうすっかなー。めんどいなー)
木元は鏡のある部屋からきびすを返し、ボリボリと頭をかきながら屋外へと
出て行く。
部屋には、首輪のない、そして頭部も無い「47」の背番号のユニフォームの死体だけが
残されていた。
【×菊地和正(47) 残り56人 1+1+1+1=4人でゲーム終了】
『実験』。以上です。
職人さん乙
でも一人称と三人称をちゃんと分けて書いたほうがいいかもね
職人さん乙!木元外道!!ww
職人さん乙です!
…木元、お前はやはりそっちに行くのかorz
奈良原がその命を絶ったとき、清水 章夫(19)の心もまた、その姿を変貌させた。
飛び散る血、驚愕で目を見開く川島の整った顔、遠くで強張る中嶋の表情…。
スローモーションのように、圧倒的な質量となって清水の脳に流れ込んできた衝撃的な情報。
血と、恐怖と驚愕と、それ以上の非現実的な事実。
それを処理することができなくなった彼は、もはや光の無くなった目をうつろに漂わせながら、
されるがまま、言われるがままにその体を動かし、枷付きの自由を与えられ小さな島に放り出さ
れた。
何も考えることができない、目に、耳に入る情報を処理できない。
彼はただ機械的に足を動かし、歩き続けた。
その視線を虚空に漂わせたまま、足を引きずるように長いこと清水は歩き続けた。
遠くまでビル一つ無い自然のままの風景、遠くで鳴く鳥の声、手にずっしりと体重のかかるバッ
グの重さ…。
どれもが清水にとっては遠くの出来事で、曇り硝子を一枚隔てた向こう側で起こっている出来事
のようにも感じた。
しかし、1発…2発。
響いた銃声。
その後の、白井の放送。
遠くで轟くその音が、機械的に流れる音声が、清水の目に光を呼び起こした。
うつろだったその目に力が戻り、あたりの風景はリアルさをもって清水の目に映る。
その黒い瞳には光が戻る。
だがその光はもとの彼のものではない。その光は狂気を帯びたものだった。
「…殺される」
ぽつりと呟く声。
自分の声は自分の耳に入り、その声はますます清水本人を追い立てる。
清水は「殺される」と呪文のように繰り返した。
「…怖い」
そして、怖い、と何度も呟いた。
「怖い、怖い、怖い、怖い怖い怖い怖い怖い…怖いよ…怖い…怖い…」
彼はその場に頭を抱えてうずくまる。体が震え、その瞳には涙が浮いた。
「怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い……」
彼の心を支配したのは、恐怖。
それは死を恐れる動物的で根源的な本能だった。
そしてそれは、根源的だからこそ、強い。
「怖い、怖い…殺される…殺される…殺される…殺さなきゃ、殺される…」
清水は恐怖に駆り立てられるようにバッグの中をまさぐり、武器を探り当てた。
それは刃渡り20センチほどの園芸用の草刈鎌だった。
誰もがどこででも安価で買えるような、安っぽい刃物。
だがそれは使うものによっては凶器になる。今まさに、それは凶器として清水の手に握られた。
「ころさなきゃ、ころされる、ころさなきゃ、ころされる、ころさなきゃ、ころさなきゃ」
ガクガクと不自然に震える手。
鈍く光る刃物を握り、清水は泣きながら呟き続けた。
そして突然清水は立ち上がる。
荷物が膝から滑り落ち、ドサッと地面に落ちた。
「ころさなきゃころされる」
地面に荷物は落ちたまま。
清水は夢遊病者のようにふらふらと歩き出した。
自分の命を守るためという名を借りた殺人者となるために。
【残り56人 1+1+1+1=4人でゲーム終了】
以上です。
乙。
清水はどこへゆく…
川島の行方も心配だな
勢いよく扉を開け、大股に一歩目を踏み出した稲田直人(54)は、しかし二、三歩歩いただけで立ち止まり、ぐるり
と後ろを振り返った。
じぃっ、と今出たばかりの建物を凝視する。
(俺の次って誰だっけ?55番だから……あぁー、ゴリか)
通称ゴリ、もとい佐藤吉宏と言えばいつも鎌ヶ谷で一緒にプレーしている後輩だ。
そのあだ名の示す通り、見掛けは少し動物的で、確かにちょっと怖いのだが根は優しい。佐藤という男を、少なくと
も稲田はそう認識している。
(大丈夫、あいつはこんなゲームになんか乗ったりする奴じゃない。はず)
と、その時。
目の前の扉が軽く振動した。
キィ…と音を立てながら、ゆっくりと、焦らすように開いていく。
(えっ、ちょ……早過ぎだろ!俺が出てからまだ1分も経ってないって!いや、待て待て待て待て心の準備が)
ところが、姿を現したのはまるで見当違いの人物―――兵士の男の一人であった。
大柄で体格の良い用兵の中でも一際目立つ、がっしりとした体つき。ぱっと見て一番の武闘派である事が推測できた。
肩にライフル銃を背負ったその男は、鋭い眼光を、見下ろすようにしてこちらに向けている。
その視線から、稲田は目を逸らす事ができなかった。
逸らせば男はライフルに手を掛け、たちまち自分の心臓を撃ち抜いてしまうような気がしたからだ。
最もこのまま睨み合い(と言うにはかなり一方的な状況だが)を続けていてもそうなってしまう可能性は十分に有る
のだが。いずれにしろ、このままだと埒が明かないのは確かである。
稲田は恐るおそる、じり、じり、と後退し始めた。
足が重く、思うように動いてくれない。
その様子を見てだろうか。
男は突如眉を吊り上げ、あと数センチで稲田の額に付くだろうという程の距離にピタリと銃口を構えた。
「早く行け」
男がそう言い終える前に、稲田は彼に背を向けて走り出していた。
「ハァ、ハァ、ハァ……っ」
木偶の棒のような足をやっとの思いで回転させ、幾度となく転びそうになりながら、それでも稲田は何とか森林地帯
へと駆け込んだ。
少しずつ足の回転を歩く速さのそれへと変えてゆく。のろのろと、森の奥に向かって歩き始めた。
(あれは、キツい。キツ過ぎる)
自分の目と鼻の先に銃口を突きつけられたあの感覚が蘇る。背筋をぞわりと悪寒が走った。未だに嫌な感触の残る額
を、指の腹で撫ぜてみる。
もう一度同じ経験をして来いと言われたら、多分稲田は卒倒してしまうだろう。
怖かった。恐ろしさに固くなった自分の体を突き動かす程に、ライフルを構えたあの男はその何倍も恐ろしかったのだ。
肩でする呼吸が止まらない。それは全力疾走をしたせいだけでは、なかった。
とにかくも呼吸を落ち着かせようと周りの景色に目をやる。
木々の背は高く、上の方では迫り出すように生い茂った緑が空の大部分を隠していた。幹も人一人身を隠す程度の太
さは優にある。
稲田はその内の一本を選び、今歩いてきた小道に面している面とは反対側に隠れると、木の根元に腰を降ろした。
(……ここで、誰かが来るのを待とう。もう別にゴリじゃなくても構わない。出会い頭に拳銃突きつけたりとか、ナ
イフ首筋に当てたりとか、そういう奴じゃなきゃ誰でも良いから)
部屋を出て、まず最初に考えた事。それが、『信頼できる仲間と行動を共にする』事だった。
ゲームには50以上の人間が参加しているのだ。いくらこのチームの気質が穏やかであるとは言え、いずれは殺し合
いに乗る者も生まれてくるだろう。考えたくもないが。
いつ、どこで、誰が自分を監視しているか判らない―――そんな森の中を、これ以上一人で散策する気には到底なれ
なかった。
増してや出発早々あんな目に遭ってしまったのだから、その思いは強くなるばかりである。
稲田は天を仰ぎ、軽く溜め息を吐いた。
そうして待つ事10分。しかし小道を通る者は一向に現れない。
(みんな違う道から行ってるのか?でもここ、出口の真正面だしなぁ。みんな敢えて避けてんのかな。って、あ)
ふと視線を投げ出すと、隣に置いた自らの鞄が目に入る。そう言えばまだ開けてすらいなかった。
(なるほどな。その辺に隠れて武器を確認してる人もいるかもしれない、って訳か)
考えてみれば、出発後まず最初に自分の荷物を確かめるのは当然とも言うべき行動だ。
この島の上では誰かに出会うまで、或いはむしろその誰かが既にゲームに乗っている者だとしたら、頼りになるもの
は己の武器しかないのである。
つまり、武器は自分にとって最高の相棒なのだ。
稲田は傍らのカバンへと手を伸ばす。
―――そうする事が無ければ、彼は気付かなかったかもしれない。
クシャ、と小さく、草の踏まれる音がした。
『それ』に対して稲田の体は即座に反応し、伸ばし掛けた左腕が動きを止める。どんなに微かな音も聞き逃さないよ
う、両耳をそばだてる。
草の音はもう聞こえない。どうやら背後の相手は、その場に立ち尽くしているらしかった。
またしても、膠着状態。
これを破ったのはやはり稲田だった。この類の空気に耐えられないたちなのかもしれないと自分自身を考察する。
状況を打破するべく、稲田は、唐突に後ろを振り返ったのだった。
そこに在ったのは。
びっくりしたような、苦虫を噛み潰したような、そんな表情を浮かべた一つ下の後輩、工藤降人(53)の姿だった。
両手にはぐるぐると巻かれたテグス。透明な糸が工藤の胸の前でピンと張っている。
(あぁー……それで、俺の首を絞めようとしてたのね。背後から近寄って、こう、ガッと。あの、工藤が)
その事実に、稲田はなぜかひどくショックを受けた。
恐怖は無いに等しかった。目の前の相手を恐れていたのは、むしろ工藤の方だったのかもしれない。
今にも冷や汗を流し出しそうな工藤は、口を固く結び、何か訴えるような視線をこちらに向かって投げ掛けている。
睨み合いの始まり―――かと、思われたが。
「なっ……ちょ、ちょっと、工藤さん!あなた何やってるんですか!」
佐藤の声だ。
今になって、ようやく彼が小道を通ったのだ。
あの位置から稲田の姿を見る事はできないはず、つまり佐藤は、テグスを構えた工藤の姿を見て声を上げたのだろう。
一方当の工藤は、名前を呼ばれたのに対し小さく肩を震わせたかと思うと、二人に背を向け、そのまま森の奥へと走
り去っていってしまった。
その背中が見えなくなるのを確認し、稲田はふぅ、と胸を撫で下ろす。
結果的には佐藤の一言が、自分を窮地から救ってくれた。
(……な、ゴリはこんなゲームに乗るような奴じゃなかっただろ?俺を助けてくれたんだ。大丈夫、ゴリは俺にとっ
て、信頼できる…………、俺、なんで、こんな事、考えてる?)
「って、稲田さんじゃないですか!そんな所で一体何を……ま、まさかケガでもしたんじゃ」
言いながら慌てて自分の下に駆け寄る佐藤。稲田の両眼が、そんな彼の姿を捉える。
―――最悪のタイミングで。
佐藤は、右手に武器を持っていた。
後になって思い返せば、その時佐藤が、それを稲田に向けて振り下ろそう等と考えていた訳ではないのだと思う。
きっとたまたま、それを構えているような形になってしまったのに違いない、と思う。
しかし当時の稲田は少し錯乱していた。
チームメイトが彼にとって先輩である自分を殺そうとしたという事実は、少なからず稲田の心を傷付けたのだ。
稲田にとっての『信頼』が、いかに脆いものであったのか。
工藤が稲田に与えたのは、恐怖ではなく、失望感。
だから、佐藤の武器―――斧の、顔と同じ位の大きさを誇るであろう刃が鈍く鉛色に輝くのを見た瞬間。
稲田の中で、何かがプツリと音を立てて切れた。
「もう……嫌だ……嫌だあああああああああああぁぁぁ!!!!!」
「い、稲田さんっ!?」
稲田は頭を抱え、ふるふると首を横に振る。
そして佐藤が次の言葉を紡ぐのを待たずに、無我夢中で駆け出した。
途中、どこか遠くで銃声が聞こえた。
サイレンに続いて放送が流れ、奈良原の他に市川と横山が死んだのだという事が報ぜられた。
その度に稲田の心はズキン、と痛む。
(信じるって何?)
(あいつは大丈夫、とか、信頼できる奴、とか。それって俺が、決める事?)
(信じるって……あぁーもう、何だんだよっ!)
判らない。
もう、全てから逃れてしまいたい。
そんな思いを胸に、稲田は、出口を求めて走り続けた。
【残り56人 1+1+1+1=4人でゲーム終了】
「受難」ここまでです。
職人様乙。稲田のキャラ表れてていいと思う
毎度毎度職人さん乙です!
稲田も壊れたか…
保守
木々の間をひとり進んでいる、須永英輝(13)の足取りは重かった。
不安げな顔は、微かな物音がする度にビクリと強張った。
(嫌だ…嫌だ…嫌だよ…。)
ゲームが始まってから今まで、ずっと思い続けている。
押し寄せる不安にいつ潰されてもおかしくなかった。
(誰か…誰か…誰か…。)
仲間が欲しかった。
このゲームの趣旨が殺し合いで、尚かつ殺すべき相手がチームメイトであること。
そんなことは知っている。奈良原のあれほど無惨な姿を見せられて、信じないわけにもいかなかった。
知っているからこそ、須永は誰かに側に付いていてほしかった。
( 一人じゃダメだ…頭が変になっちゃいそうだ…。)
人が殺されるところを見てしまった。
今度は自分たちがそれをやるのだ、と言われた。
そして、外に放り出された。
今、側には誰もいない。
あの建物の中で、呼ばれる順番を待っている。
この森のどこかに、バラバラに散らばっている。
手には武器を持って。
(…嫌だ!!)
もう既に恐怖と孤独に追いつめられて、ギリギリの所で踏みとどまっている状態だった。
――誰か。
須永は心の中で、未だ会えない仲間に助けを求めながら歩き続けていた。
と、その時。
「うわぁぁぁあっっ!!」
絶叫。悲鳴という方が正しいか、とにかく誰かの叫び声が聞こえた。
びっくりして、周囲をキョロキョロと見渡す。今のはかなり近い所からだった。
(どこだろう?)
(この先から聞こえたはずだ。とにかく行ってみよう。)
一本ずつ木の陰に隠れながら、恐る恐る進んでいく。
少し歩いたところで、須永は再び、微かな声を聞いたような気がした。
歩いていくにつれ、その声が何かわかってきた。
(誰かが、泣く声…?)
前方に、少しだけ木々の途切れた場所があるのが見えた。
そこに一人だけで座り込んでいる人物がいた。
(いた!)
誰かを確認する前に、体はもう草陰から飛び出していた。
ガサッ、という音がした。
その瞬間、心臓が止まったと思うほどの衝撃に全身が震えた。
どうしよう、どうしよう。見つかってしまった。
今、後ろに誰かがいる。
自分を殺しに来た誰かだったらどうしよう。
どうしよう、もう逃げられない。
震えながら、鎌倉健(12)は振り向けないでいた。
すると、背後から、こちらも酷く怯えたような声がかかった。
「か、鎌倉さん…?」
その弱々しさに少しだけ警戒心が解れる。
それでもまだ震えながら、鎌倉はゆっくりと後ろを見た。
草むらの中に突っ立っている須永と目が合う。
「…須永?」
名前を呼ばれた途端須永の表情が笑顔になり、空気が抜けるようにその場にへたり込んだ。
鎌倉は慌てて涙を拭い、立ち上がった。
「大丈夫か?」
長身を屈めるようにして聞く鎌倉に、座ったままこくんと頷いて答える。
「すいません、ちょっと、安心したら力が抜けちゃって…」
自分に会えて安心した、という後輩を鎌倉は少し複雑な思いで見つめる。
泣いているところを見られてみっともないのもあるが、まだ相手を完全に信用しきれていなかったからだ。
そんな心中をよそに、須永がぽつりと言った。
「仲間を捜してたんです」
「仲間?」
「はい。それで、歩いてたら、叫び声が聞こえて。
誰かに会えるかもって、それだけでここまで来たんです。
もしかして誰かが危ない目に遭ってるんじゃないかって、自分も巻き込まれるかもしれないって思ったけど、
でも、それでも、一人じゃどうしても心細くて…」
俯いた顔から涙がこぼれ落ちるのが見えた。
「怖いんです…。
俺には…できません。できないです、こんなの。
こんなの嫌だ」
膝を掴む手が震える。だけでなく、全身が震えている。
身を縛っていた緊張が解けた途端、今まで溜め込んでいたものが全部溢れ出した。――怖い。寂しい。わからない。嫌だ。助けて。
水滴が次々と、土を、ユニフォームを濡らす。
そこに鎌倉がいるのも、自分が今どこにいるのかも忘れて、ただひたすら体を丸めて嗚咽する。
(俺と同じじゃないか。)
一人じゃない。鎌倉は、ほっとしたような、同情するような気持ちだった。
少しでも、彼を疑っていた自分を恥じた。
「…俺も嫌だ」
その言葉に須永が顔を上げる。
お互い憔悴しきった顔、目は真っ赤に腫れて、血の気が失せた唇は震えている。
「さっき、泣いてたのは…怖かったからなんだ。
恥ずかしいけど、怖くて怖くて死にそうだった。
誰かが殺しに来るんじゃないかって…武器を見てる内に、すごく不安になって」
武器。須永の顔がサッと曇る。鎌倉は「あれだよ」と、視線だけを地面に落ちた武器の方に遣った。
そこには小さな銃が転がっていた。正式名称はベレッタM3032・トムキャット。
拾いに行こうとはせず、続ける。
「あんなのを使って、人を殺すなんて、それどころか傷付けるのだって俺は嫌だ。
だって、そもそも俺たちはチームメイトじゃないか。
何で、すごく辛くて怖い思いして、あんな、酷いことをしなきゃならないんだ?」
「あんな」という言葉が、奈良原の事を指しているのは須永にもわかった。
そして、全く同じ思いだった。
「チームメイト…ですよね」
縋るように言った。
「殺し合いなんか、できないですよね?」
鎌倉ははっとする。
須永はチームメイトを信じているのだ。いや、信じようとしていると言うべきか。
だから、自分を見つけた時も全く疑うことなく声をかけてきた。そして会えただけで泣くほど「安心した」と言う。
自分が彼をすぐには信用できなかったのとは違う。
それはすごく危険なことかもしれない。でも。
自分は、最初からチームメイトを、『仲間』でなく『敵』だと思っていなかったか。
殺される、それだけを考えて、それだけが怖くて。
目の前にいる須永とは、ルール上は戦わなければならない『投手』同士だ。
しかし今は彼を殺そうなどとは毛頭思わない。そんなこと思えない。
他にもそう思っている、初めから戦意のない人だっているはずじゃないか。
何でそんな大事なことを考えもしなかったんだろう。そうだ、自分たちはファイターズの仲間なんじゃないか。
「鎌倉さん?」
答えがないので、須永が心配そうに呼ぶ。
「あ、うん。そうだな。そうなんだよな」
気がついて、慌てて返事をした。最後は自分自身確かめるように。
もう涙は乾いてしまった。
再び座り込むわけにはいかない。
自分はこいつより一年先輩なんだから、と少しだけ心を強くもって。
右手を差し伸べる。
「とにかく、歩こう。立てるか?」
須永は、やがてぐしょ濡れの顔に安堵の色を浮かべて、同じように手を差し出した。
「鎌倉さん、頬っぺたのここんとこに跡付いてる」
「えっ、マジ?」
「どんだけ泣いてたんですか」
「お前だって人の事言えないだろー。目真っ赤じゃん」
笑いながら、鎌倉が軽く小突いてくる。
緊張感のない遣り取りに鎌ヶ谷の日常を思い出して、須永もやっと心からの笑顔を見せる。
大の男が二人、一人は一人の陰に隠れるように歩く。少しばかり妙な光景だ。
後ろを歩く13番は、前を行く12番の背中を見つめる。信頼すべき仲間の背中を。
会えて良かった。彼は心底そう思っていた。
その更に後ろをつけている人間がいるとも知らずに。
「泣き虫同士」以上です。
乙です。鎌倉と須永カワユス
背番号から察するに・・・
やな予感だなぁw
背後にすぅっと気配が走るのを感じ、立石は息を止めて周囲に視線を張り巡らせた。
緊張の糸が長く引く時間が続く。
今度は前方でわずかな草擦れの音がして、たまらず立石は「誰だ」と茂みに向かって問うた。
わずかな時間を置いて前方の茂みから出てきたのは武田久で、立石は自分がどうすべきかわからない様子でその口を引き結んだ。
敵意や殺意でなく、困惑がその空気の大半を占めていた。
にらみ合いと言うには弱々しい視線が交錯した後、
「立石さんは、人を殺す気がありますか」
と武田は押し黙る立石に向かって、挨拶もないまま疑問を直に口にする。
相手がこのゲームに乗り気か否か、もちろん本当のことを言葉に出すとは限らないが、
今後人と会ったとき真っ先に確認しなければならないことがそれだということは、
形はどうあれ既に彼らの意識がこのゲームに組み込まれていることを示していた。
立石は、武田の疑問に首を振る。
「殺す気は無い。殺される気も無いけどな。わざわざ姿を見せたってことは、お前も殺意は無いのか?」
「はい」
武田の返事のあとに、「俺もな」と立石の背後で声がする。
弾かれたように振り向くと、そこには建山がいた。
「建山…」
「すみません、驚かせる気はなかったんですけど。立石さんがこのゲームに乗り気じゃないっていう確証が無かったんで」
建山はおどけたように肩をすくめたが、立石の表情は軟化せず、強張ったままだ。
「俺が久に攻撃する素振りを見せたら、背後からお前にやられてたってことか」
「殺す気はありませんけどね」
「…そうか」
立石は脱力したようにその場にしゃがみ込んだ。
「もう、緊張しっぱなしで疲れたよ」
「はは…俺たちもですよ」
建山と武田は顔を見合わせて苦笑した。
緊張が絶えることが無いのは、マウンドでも同じだ。
彼らは同じ投手という立場にあって、それを十分理解している。
それでも、命のやり取りをするということに関しては半ば半信半疑のまま、
しかし現実に人間が殺されるシーンを見せ付けられてしまった彼らは、かつてない恐怖を抱いたまま緊張の中に身を置いている。
疲れ方は尋常ではなかった。
しばらくうつむいていた立石は、ふと顔を上げた。
「…ところで、お前らこの先どうする気だ?」
殺す気は無いと建山は言った。
しかし殺し合いがこのゲームの趣旨なのだ。その趣旨に則らず、どうするのだろうかと疑問に思った。
「立石さん、俺たちはこのゲームの抜け道を探してみようと思うんです」
「抜け道…?」
「各ポジションに1人の生存枠なんて、馬鹿げていると思いませんか。どうせなら全員が助かる方法を探そうって。今、投手をやってるやつを集めてるとこなんです」
必死で訴える武田の目が、立石にも一緒に来てほしいと言っている。
建山と武田。
信用に足る人物だ。
『普段であれば』。
立石はしばらく考えた末、首を振った。
建山の眉がぴくりと動き、「どうして」と武田が驚きの声をあげた。
「投手を集めてるって言ったな」
立石が確かめるような口調で問う。
建山が頷き、それを受けて立石はもう一度首を振った。
「確かに人が集まりゃ安全かもしれない。相手が大人数じゃ返り討ちに会う確率のほうが高いからな。けど、リスクもあることに気付いてるか?」
「…リスク、ですか」
「ああ。例えば、だ。俺がお前たちに付いて行くとして、この後も何人か集まったとする。例えば5人。
全員がひとつの家屋に集まったのを見計らって、俺がその家屋に火をつけて逃げたとしたらどうだ?もちろん最初から計画的だった。
これで自分以外の投手がお前らも含めて7人もまとめてリタイアしてくれることになる。
俺やお前らがそうだって言ってるんじゃないよ。そういう奴がいるかもしれないっていう、仮定の話だ。
でも、可能性はゼロじゃないだろ」
建山は表情一つ変えずにいたが、武田が我慢しきれず口を挟んだ。
「だから、殺し合いをしないようにルールの抜け道を探すんですよ、全員で助かるために…!」
「証拠は?そんなものがあるっていう、証拠。ルールの抜け道なんて本当にあるのか?」
鋭い言葉に、武田はぐっと言葉に詰まった。
現段階では、全員が助かる方法の糸口さえ掴めていない。そもそも、それが本当にあるかどうかさえわからない。不確かな希望にすがっているだけだ。
それをものの見事に突きつけられ、返す言葉が無く押し黙る。
「…きついこと言って悪かったな。でも、そんな用意周到で狡猾な奴でなくとも土壇場で裏切るやつは絶対に出てくる、
集団が大勢であれば大勢であるほどな。皆自分が一番かわいいんだ。
皆が皆、お前たちみたいに……強いわけじゃない。それに、俺たちには時間制限がある。
悠長に解決策を考えてる暇なんて無いんだ。
禁止区域が多くなって、大所帯が狭い区画にひしめきあってるところを想像してみろ。血みどろの地獄絵図になるぞ。
そんなところを一番見たくないのは皆で助かりたいと考えてるお前たちじゃないのか」
反論したくとも反論する言葉が無い。
悲しさなのか悔しさなのか、武田は肩を震わせ、込み上げる憤りに耐えている。
建山は「わかりました」と立石に背を向けた。
「俺たちは考え方が違いすぎる。一緒に行動はできませんね」
「…そうだな」
「そこまで考えている立石さんは、これから先どうするんですか」
一瞬返答に窮したように間が出来た。そして
「俺は何もしないよ。隠れて、皆がつぶし合ってくれるのを待つ」
と自虐的な嗤いを含んだ声で返答した。
「…それがあなたの答えですか」
返事は無かった。
建山はひとつため息をつき、言葉も無く歩き出す。慌てて武田が建山の後を追う。
「建山さん、いいんですか…」
建山は何も言わない。眉根にしわを寄せ、きゅっと口を結んだまま。
武田は何度も立石を振り返った。
「…弱くて、ごめんな」
小さく呟いた立石の独白は誰の耳にも届かず消えた。
背後に佇んでいた立石の姿が遠くなっても考え込んだ様子で何も言わず大股で歩く建山を追い、武田は既に小走りになっていた。
追いかける武田に意識がいかないのか、黙々と歩を進めている。
が、
「うあっ」
突然ブレーキをかけた建山の背中に小走りだった武田は激突し、鼻をぶつけてうめいた。
「あ、わりぃ」
「いたたた……いえ、大丈夫です、けど…どうしたんですか」
「いや、うん」
言葉を選んでいるのか、建山は自分で顎を撫でながら空中に視線をやり、ようやく口を開く。
「先にルールの抜け道を探さなきゃ駄目ってことか…」
「え?」
「だからさ、皆助かりたいって思ってるのは事実なわけで…でも俺たちについてくるより、
殺し合いに参加したり、殺し合ってるのを傍観したりするほうが助かる確率が高いってことだよ、現段階では」
淡々と喋る建山の言葉に、武田は悔しそうに口をゆがめた。
その通りだと頭ではわかっていても、感情が追いつかない。
「仲間を集めるより先に、『皆が助かる方法がある』っていう証拠が必要ってことだ…」
「証拠…」
「ああ。それを探すのにも人数は多い方がいいわけだが…難しいもんだな。
少なくとも抜け道を探しながら、会えたやつには駄目で元々って割り切って話をしていくしか無いってことだ」
大きなため息と、一瞬だけの憂鬱な表情。
しかし直後には明るい声で、
「考えてもわかんねぇし、とりあえず歩き回ってみるか?」
とバッグから地図を出す。
武田はマス目で区切られ無機質な印象を与える地図を覗き込んだ。
小さな島だ。
一体どこに位置しているのだろうかと、ぼんやり思う。
建山は元気付けるように武田の肩をぽんと叩く。
「とにかくな、こういう木とか草しか無いとこを歩いてても始まらないだろ。何かありそうなところを調べてみよう」
彼らはこのゲームにおいて最も困難な道を選んだ。
前の見えない混濁した中を、あるのかどうかもわからないものを求めて歩かなければならない。
自分の気持ちが途切れてしまわないだろうかと武田は一抹の不安を覚える。
せめて、と。
せめて、誰の命も奪わない自分でありつづけていますようにと彼は願った。
せめて、それだけの強さは最後まで持てる自分でありますようにと。
【残り56人 1+1+1+1=4人でゲーム終了】
以上です。
職人さん、乙でした。 保守しときまつ。
追いついた。期待保守
捕手・サネマツ
338 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/09/10(日) 10:02:25 ID:WyUoP+eA0
須永と鎌倉・・・。
カワイイな。
生き延びてくれ・・・
「あれ?」
テーブルの上に置いたものと、今自分が手に持っているもの。
鞄の中身を全て確認し終えた尾崎匡哉(23)は、それらをもう一度交互に見直した。
「え……なに、武器が入ってるんじゃないの?」
『武器』と言ったら、拳銃とか刃物とか。
戦う為の道具ではないにしても、せめて煙幕だとかまきびしだとか、生き残る上である程度は自分を補佐してくれる
ものを想像するだろう。
それなのに。
「俺の武器って…………もしかして、これ?」
上質な黒皮のハードカバー。
至ってシンプルなデザインの表表紙には金色の文字で“2007-2016”と記されている。
パラパラとページを捲れば、それはもう、どう見たって『十年日記』で。
「確かに、角で思いっ切り殴られたらちょっとは痛いかもしれないけど…」
しかしそれは頭にすっぽ抜けたストレートを当てられるのに比べれば、ずっと些細な痛みだろう。
大の大人、しかも鍛え抜かれたスポーツ選手である参加者の面々に僅かでもダメージを与えられるとは思えない。
たとえ、これがどんなに高級な品であろうと。
ひとたび拳銃を持った相手に出くわしてしまえば、こんなもの。抵抗のしようがない。
「俺……クジ運最悪じゃん」
こんな事なら、もったいぶらずにさっさと確かめておけば良かった。
まずは白井の言う『周囲一帯』を脱しようと、尾崎はここまでひたすらに歩いて来た。
森を抜け橋を渡ると、そこには小ぢんまりとした集落が広がっていた。
全く同じ形をしたログハウスが十数軒。
今、尾崎が居るのはその一番奥に立つログハウスのリビングルームである。
「でも拳銃なんかが入ってたって、きっとなーんにも出来ないだろうしなぁ、俺」
尾崎には、この主催側の陰険な企てに乗ってチームメイトに手を掛けようとする気などこれっぽちも無かった。
と言うよりも、彼はこのゲームについてあまり深く考えようとせずにいる、と言った方が正しい。
(自分達がこんな目に遭わなければならない理由は、何だ?)
(先刻の放送で、白井が奈良原だけではなく市川と横山の名前をも挙げたのは、なぜ?)
(それよりも少し前に聞こえた、二つの銃声が意味するものは、……何だ?)
どれも答えはシンプルなようで、奥が深い。
考えれば考えるほど思考は泥沼へと嵌っていく。
決して先に光の見える状況ではないが、それでも俯き加減に歩を進める事を、尾崎は嫌ったのだ。
今はまだ、何も考えなくていい。
目の前に在るものを一つ一つ確認していけば、それだけで十分だ。
出来るだけ前向きに。気持ちをマイナスの方向に持って行ってはならない。
―――自分の心を失うのだけは、絶対に嫌だ。
「……もしかしてこの日記、実はなんかすっごい機能が付いてたりとか、しないかな」
ぽつり、と呟く。それは半分願望だった。
こんなたかが紙切れの集まりを武器と言われては、流石に心細い事この上ない。
「あ、毎日ちゃんと日記を書いたら無条件で助かるとか!…………でででももしサボったら首輪が爆発する、とか?
いやでも、うん、多分俺なら大丈夫だよ。ブログだって、もう半年続いてるし」
尾崎匡哉は、ファイターズには数少ないブログ持ちの選手である。
とは言えプロ野球選手としてはまだ育成中の身、当前の事ながら一流のプレイヤーのそれに比べればコメントもアク
セス数も遥かに少ない。
だが数はどうであれ、それが大切なファンからのものである事に変わりはない。彼らの言葉は尾崎にとって大きな励
みになっている。
キャンプ中は更新こそ出来なかったが、家に帰ったらその間に起こった数々の出来事を隈なく報告するつもりでいたのだ。
「……ブログ、かぁ」
頬杖を付き、テーブルの上の十年日記をじっと見る。
ややあって、尾崎は支給品の一つである黒いペンを手に取ると、今日の日付のページを開き、書き始めた。
『こんにちは。
突然ですが、なんだか大変なことに巻き込まれてしまいました。
正直どうすれば良いのかわかりません・・。
今、僕の中ではっきりしているのは 死にたくない!!!ってことだけです。
でもそれはつまり小笠原さんや幸雄さんのような人が、日ハムの内野手の仲間が、みんな死んでしまうということだから。
だから、やっぱりどうするべきなのかわかりません。
ちゃんと考えておくべきなのかなぁ??なんかどんどんネガティブになっていっちゃうような気がするんですよね。
それってあんまり良くないと思うんですけど。どうなんだろう?
とりあえず、誰かに会いたいな。』
最後に、付け加えるようにしてそう書いた。
パタンと日記を閉じ、放り出された全ての荷物を鞄の中に詰め込んでいく。
そして鞄を肩に掛けると、玄関扉の前へと足早に歩き、ゆったりとした動作でドアノブに手を掛けた。
【残り56人 1+1+1+1=4人でゲーム終了】
「I am ...」ここまでです。
乙です。
毎度毎度楽しみにしてます。頑張って下さい。
ほすしときます。
それは、例えば、彼が大切にその胸へ抱いた一塊の硝子玉、
そのつめたく光る表面を曇らす擦り傷を嫌うあまり、そこへ浅い角度でノミを押し当て、
そっと木槌を振り下ろすかのように。
金村は鞄を二つ背負って、いつしか緩く上り坂になりはじめた林道を歩いていた。
随分鍛えられたはずの心肺機能、しかしいくらもしないうちにその呼吸が荒くなりはじめる。
「…重いな」
それは横山の死体から掠奪してきた2つめの鞄に対する言葉だ。武器はこのナイフのはず、そのほかに何が入っているというのか?
その点を是非解明すべく、肩から鞄を下ろして口を開くと、中には何やら長い物が折りたたまれているのが見えた。
取り出してみると、それは銃身だった。付属の説明書に従い、手間取りつつ組み立ててみる。
出来上がったものは、全長1メートルを超える、大型のライフル銃。
つまり例のナイフはこの銃に付属の銃剣だったというわけだ。
その銃剣に関する説明もある。銃剣とは頑丈にできており、また様々の場面で工具として役に立つが、
工場出荷時には刃がついていないので、刃物として使用したければ使用者が自分で研ぐ必要があるらしい。
さらに一枚、自分の鞄にも入っていたような、メモ書きの紙がくっついている。曰く。
「迫力満点、軍用ライフル☆ ただし自衛隊海外作戦仕様につき実弾はナシよ☆」
…これを横山はつぶさに読んだだろうか。最早推測の域を出ることはないが、答えは恐らく否だ。
銃を脅しに使わなかったのは単に組み立てる時間がなかったためだろうが、
銃剣がそのままでは斬れないと知っていれば、それを首へあてるような真似はするまい。
勿論「斬れない」というだけで、突けば殺傷力をもつに違いないが、横山はそれをしなかった。
その意味するところは…、彼は明確な殺意をもって近づいてきたのではないということの裏付けではないか。
殺すつもりがあったなら、そのための道具の説明くらいは読んでおくだろう。少なくとも、自分ならばそうする。
疑心より暗鬼を生じ、襲い掛かってきたことは事実だが、話せばわかりあえた仲間ではなかったか?
嘘をついて騙した挙句、息の根止めてしまわねばならないような相手だったのか、
殺す必要はあったのか、なかったのか、確かめる術はなかったのか、それを…、
片膝をつき、両手のひらの上へ水平に載せた長い銃身を見つめたまま、金村は自問した。
周囲への警戒も忘れ、無防備とも言える姿勢のままに。
突如、その静寂を裂いて、耳障りなサイレンが何かを告げようとする。
意識を引き戻された金村は、耳を澄まして、その放送内容へと注意を向けた。
『死亡者は奈良原、市川、』
白井の声がつらつらと事務的に物事を述べる、その最後に告げられた、金村にとって目新しくもない情報。
『そして横山』
その名が、呼ばれた。
奴は死んだのだ。当然だ、僕が殺したのだから。
殺した。人を殺した。この舌で欺き、この腕で首を絞め、勢い余って頚椎を折った。
それなのに。
それなのに…、
「…なぜ、何も感じないんだ」
人をひとり殺しておいて、人間はこんなにも平静でいられるものなのか。
もしかしたら、自分は誰よりも早く、この島を覆った狂気に、すっかり飲み込まれてしまっているんじゃないのか…、
……。
僕は狂ってしまったのだろうか…?
いつのまに…?
正気と狂気の境界線を探して、金村はここまでの記憶を必死に手繰った。
春季キャンプを打ち上げたあと、チームごとどこかの孤島へ攫われ、これから殺し合えと云われ、
監督の死体を見せられ、さらに目の前で奈良原が殺され、追い立てられるように野外へ放り出され、銃声を聞いて…、
それから…、
横山に会った。
会って、少し話をして、
意志の疎通に失敗し、結果、
絞め殺した。
ヒトを殺した、確かに殺した、殺した、殺したのだ!
その記憶を手繰り寄せようとする、その作業は苦痛を伴う、吐き気のする、身の毛もよだつような行為であるはずだ、そうでなくてはならない。
「殺した」
どうやって?
「この腕で、首を折った」
どんなふうに?
どんなふうに。そこで関連付けられてくるはずの映像が、なぜか浮かんでこない。
それが欠け落ちてしまったのか、初めから存在しなかったのか、当の金村は見分ける術を持たない。
…『絞め殺した』、その言葉だけが頭蓋の中、具体的なイメージを伴うことなく、高速で駆け巡る。
まるで人など殺していないかのように、
ただ、そう紙に書かれた一文を、字面を追って流し読みした後のように。
僕は、人を殺したのだろうか?
殺したのか?
…本当に?
――かつてフロイトは説いた。
著しい苦痛を伴う観念、感情、思考、空想、記憶は、その表面上の安定を保つため意識より締め出され、無意識下に沈殿される、
これを即ち「抑圧(repression)」と云へり、と。
「…頭が、痛い…」
暫しの間、石のようにその動きをピタリと止めていた金村が、ボソリと呟いた。
頭の芯が軋むように鈍く痛む。どこか休める場所が欲しい。
束の間の安住の地を求め、金村は腰を上げた。頭痛のせいか、一瞬、立ち眩みを覚える。
手にした長すぎる銃身を杖のように突いて、バランスを確保してから、彼はその銃を少し見つめた。
実弾が装填されていないから、銃としては役に立たない。それを考えると、恐らく5キロはあるだろう、この装備は重すぎるか。
置いていくべきか…、いや、銃剣としては使える、もし接戦になればリーチは重要だ。それに、威嚇には充分使えるだろう。
運よく本物の銃器が手に入るまでは、手放さずにおくべきだ…。
どこか他人事のようにそう結論を出して、肩へライフル銃を背負い、一つに纏めた鞄を手に提げ、金村はふたたび歩き出した。
一人にひとつ、支給品として武器が与えられている、この条件下で『本物の銃器が手に入る』とはどういう状況を指すか。
それを理解しているのか、いないのか、金村はただ黙々と斜面を登る。頭痛が余程ひどいらしく、時折こめかみや眉間を押さえながら。
足元を確かめるように、一歩、また一歩と地面を踏み、金村はまた思考の続きを巡らせようとした。
…僕は何を考えていたのだっけ。
……。
…僕らは、なぜ、殺し合いを…、
殺し合えというのなら、それが避けられないというのなら、その意義はどこにあるのか。
願わくば、その答えがみつかるまでは、自分が誰かと殺し合うような局面が訪れませんように。
それが答えの出ない問いだというなら、永遠にその局面が訪れませんように。
金村はこのとき確かに、心よりそう願ったのだ。
その切実な想いが、自らの手によって、すでに真黒く塗りつぶされていることも忘れて。
硝子玉はその表面の一部分を剥離し、欠片は音もなく砕け散った。
後、どのくらいの衝撃に耐えるだろうか。あるいは最後の一片まで削り取られ、粉々になってしまうのか。
その時へのカウントダウンが、始まった。
【残り56人 1+1+1+1=4人でゲーム終了】
「Repression」ここまでです。
職人様乙です!
金村…ガンガレ…
ハイパー地味様キタコレ、職人様乙です!
ちょ、何かいきなりヤバイ雰囲気がΣ(゚д゚;)シッカリシロエース!
乙保守
358 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/09/13(水) 07:55:47 ID:tqvlVxH1O
ハイパー地味様ガンガレ!壊れた地味様なんて見たくないよ…
捕手の鶴岡
捕手の小山
361 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/09/15(金) 07:50:02 ID:fv2iMnSjO
小谷野が死んだのか気になるなぁ。
希望としては生きててほしい。
保守しとく
鶴岡
364 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/09/17(日) 07:52:58 ID:rMNledlAO
あげ
ざわざわと風が葉を揺らす音がする。
緑の匂いを打ち消す強い鉄の匂いが鼻を刺激した。
小谷野はぼやける視界が、出血によるものなのか、涙によるものかさえ判別できず、嗚咽を漏らした。
(撃たれた…紺田に、撃たれた…なんで…どうして…)
至近距離で放たれたその弾は、小谷野の右肩を貫通した。
その右肩がひどく痛む。それと同時に、小谷野の心をひどく傷つけた。
まるで警戒していなかった小谷野を、紺田はまるで肩の埃を払うような自然さで、撃った。
その事実が肩の傷よりも深く彼の心を傷つけ、痛みを与えた。
痛くて痛くて、そして悲しい。
小谷野は地面に這いつくばったまま、嗚咽とともに涙を流した。
撃たれた肩はじわじわと出血し、熱を帯びている。
目がかすみ、ぼんやりとしてくる。
(俺…死ぬのかな…)
ふわふわする感覚で、小谷野は泣きながら思った。
(仲間に撃たれて死ぬなんて……なんでだろ……どうして…)
そのとき、後方でかさりと草を踏む音がした。
人の気配、息を飲む音。
小谷野はぼんやりとしながらも、誰かに見つかったことを悟る。
だがそれが誰かを確認する気力も無い。
おそらく、今度こそ本当に殺されてしまうのだろうと彼は横たわったまま思った。
あんなに仲の良かった紺田でさえ、彼を殺そうとしたのだから。
だが、小谷野が覚悟した痛みも衝撃も、いつまで経っても訪れない。
変わりにその誰かは、決して軽い体格ではない小谷野を抱き起こし、その体を担ぎ上げて背負った。
そしてゆっくりと歩き出す。
肩からの出血が、背負う人間の白いユニフォームを赤く染めていく。
背番号も見えず、やや茶色がかった髪と焼けた首筋しか視界に入らない。
「誰…ですか…」
小谷野はからからに乾いた口をなんとかひらいた。
背負っている誰かは、そこでようやく小谷野に意識があることに気付いたようだった。
「なんだ…起きてたのか」
「ね、寝てたわけじゃないですよ…」
「そんなの見ればわかる。喋ると体力消耗するから黙ってろ」
そう言うと、彼は黙ってしまった。小谷野も黙らざるを得ない。
そうして黙々と歩いている最中に、「ああ、俺は伊藤だ」とオマケのように呟いた。
「…伊藤さん…」
小谷野はチームメイトの顔を順番に思い出し、その顔にようやくたどり着く。
伊藤剛、ポジションはピッチャーだ。
右肘筋挫傷や相次ぐ故障で、つかの間の一軍生活の後は二軍暮らしだった投手…。
球団も、今期こそは彼をふるいにかけるだろうことは、傍目からもわかった。
小谷野の脳裏を知りえる情報が駆け巡る。
ようやくその人となりを認識する。
そして彼が、小谷野とはさしたる関係が無いことも。
「なんで…助けてくれるんですか…」
呟いた言葉が明確に伊藤に伝わったかどうか。
伊藤は返事をしないまま、そしてその返事を待たず、小谷野の意識は途切れていった。
ここまで
職人さま乙です!
小谷野生きてて良かった(つД`)
伊藤のキャラ知らないから、これから職人さんがどう書いていくかとても楽しみ
ほすしておこう。
乙でつ
373 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/09/19(火) 12:22:24 ID:grtt6xiC0
職人様いつも乙です!
小谷野生きててよかった・・・
くだらないスレあげるのやめて欲しいんだけど・・・
殺し合いマニアは人目につかないところでやってよ
新作期待保守
その手で引き当てた小型の機関銃と、靴を投げて得た決意を腕に抱えて、飯山は道の真ん中を大股にズンドコ進んでいた。
この島は戦場、ならば俺は戦って生き残る。他に選択肢はないはずだ。邪魔になるものはすべて打ち払い、戦って戦って、俺は家族のもとへ帰るんだ。
いくつもの死線、ときに仲間の屍も乗り越えて、這ってでも、帰りを待つ家族のもとへ。コレって男が戦う理由としては充分じゃない?
少し想像を逞しくすれば、そこは砂塵吹き荒れる戦場、破壊された建造物が遠く砂嵐に霞んでいる。
遠い異国、部隊は離散、土にまみれたカーキ色の軍服に身を包み、味方はなく、戦況はまさに絶望的…、しかしそのとき男の脳裏にふと、妻の笑顔が浮かぶのだ。
「俺は…、必ず帰ると決めたんだ。だから何としても生き残らないといけない、なあそうだろ、相棒?」
飯山はひとりニヒルな笑みを浮かべて、手にした機関銃を一丁前に構えてポーズをとり、その銃に話しかけた。当然返事はない。かわりにカラスが間延びした声で阿呆と鳴いているのが遠く聞こえる。
現実へ戻ればそこにいるのは孤高の軍人ではなく、背中にデカデカと番号名前の明記された野球のユニフォームを着た自分がひとり。
カッコつかねぇな、と飯山はまた思った。さっきコインのかわりに靴を投げたときと同じように。
恰好がつくとかつかないとか、そんなことが今、なにかにつけ飯山の脳裏をチラついていた。
もっと他に考えるコトあるだろう、と自分のことながら思う。
つまりは余裕あるってことか。俺って結構落ち着いているな、とも思った。
これならやれるかもしれない、多分やれる。誰を殺してでもいい、俺は家へ帰るんだ…!
鞄の底に見つけた説明書によればこの銃はは短機関銃、つまりサブマシンガンという奴で、連射はきくが射程は短く、野戦よりも市街地に向く、銃弾は拳銃弾で一撃のもとに致命傷を与える威力をもつものではない、らしい。
長さは5〜60センチか、重さはおそらく3キロ程度、予備の弾倉は3本だ。
「好都合だろ、こっちゃシロートなんだし、一発必中よりも、こーゆー奴のほうがさ」
安全装置もすでに外してある。臨戦態勢は万全だ。
この銃を使うことに躊躇しない、誰を殺しても生き残る、そう心に決めてしまえば、最早迷うことなんてない。
むしろ早く誰かに会わないかとすら思う、ヒトをコロスってどんな気分だろうね!
知らず残酷な顔をしていた飯山の耳が、そのとき、何か足音のようなものを捕らえた。
ドタバタと走るような音、こちらへ近づいてくる、前か、後ろか、……、前だ!
高低差のある地形を少し切り出して作られたらしいその道は前方で少し右へカーブしており、不幸にしてその先の見通しがきかない。
足音は近づいてくる、飯山は咄嗟に道路の脇へ寄って短機関銃を構えた。
全身の毛穴が開くような間隔とともに体が汗ばむのを感じる、五感がいやに冴え渡っている、心臓が高鳴る、腕が震える、これが武者震いってヤツか。
誰だか知らんがいつでも来い、こっちは準備万端、とっくに覚悟もできてるぜ……!
そして。
視界に人影が飛び込んでくる、同時に飯山は、気合一閃、銃を構え夢中で飛び出した。
「うおりゃあああぁッ!!」
「ひ、ひあっ!」
突如として襲い掛かられたその人影は、少しの抵抗も見せることもなく、情けない声を出してその場に尻から崩れ落ちる。
信じられないという顔でこちらを見ている、恐怖に染まったその瞳の名は。
「な…、直人……?」
驚きのあまり足がもつれて、だらしなくも地面に尻餅をついたその男は、飯山裕志無二の親友、稲田直人その人だった。
「ゆ、裕志、おま、おまっ、おまえも、かっ」
両目を見開き、奥歯をかたかた鳴らしながら、稲田はようやくそれだけ口にした。
「おまえも…?」
「こんな、こ、殺し合えだなんて、イキナリ、無茶言われてっ、おまえらなんで、そんな、すぐにさっ」
「おまえらって、」
「なんで、なんで、おまえらオカシイよ、なんでだよッ」
聞き返す飯山の言葉なんてまるで届いていない様子で、稲田はただウワゴトのように「なんで」と繰り返す。その断片的な言葉から推測すれば、おそらくここへ来るまでの間になにか怖い目に遭ったのだろうと飯山は思った。
そしてとにかく走って逃げてきて、今度は出会い頭に銃をつきつけられた、と。それなら確かに、腰を抜かすには充分だ。
「だってさ、俺たちこれまで、ずっとッ、ウ…、ゲホッ、エホッ」
「お、おい、大丈夫か、何があった」
息を切らして走ってきて、いきなりわめき散らしたのがいけなかったのか、稲田は急に激しく咳き込みだした。飯山は思わず駆け寄り、稲田を抱き起こして背中をさする。
「ケ、ケホ…、そ、外出て、モタモタしてたら、早く行けって、ゴツイ奴に銃で脅されて、んで、そのあと、く、工藤が、俺を殺そうとして、んで、ゴリが助けてくれた、けど、」
…自分が出る直前の集団が纏まってそんなことをやっていたとは、どうりで自分は誰にも出会わなかったはずだと飯山は思った。幸か不幸か、ひとり廃屋で靴を投げるより前の飯山は、最初に目指した方向を、少しだけ彼らと違えたのだ。
「そのっ、ゴリが持ってた斧に、俺、ビビッっちゃって、た、助けてもらったのに、なのに、俺…ッ、ゲ、ゲホッ」
「ま、まあ、落ち着けよ」
そこまで一気に喋り、稲田はまた激しく咳き込んだ。かわいそうに、色々散々な目にあったらしく、相当動転しているようだ。だが見たところ外傷はないようだから、とにかく落ち着かせれば大丈夫だろう、そんなことを考えながら飯山は稲田の背中をさすり続ける。
「さ、サンキュ、もう、大丈夫、大丈夫だから」
「無理すんな」
まだ少し咳き込みながら立ち上がろうとする稲田を、飯山が制した。今無理して立ち上がらせれば、貧血や眩暈を起こしかねない。
そうしてしばらくの間続いた沈黙を破り、いくぶん落ち着きを取り戻した稲田がぼそりと口を開く。
「…なあ裕志、やっぱ、みんな、俺と同じで、怖いのかな…」
「……そう…かもな」
稲田のそのうつむき加減の面持ちがほんとうに沈痛そうで、飯山もつられて心が痛む。
「だってさ、工藤なんて外野じゃん、俺とはポジションも違うんだぜ、それなのにさ、」
ポジション。
稲田が何気なく口にしたその言葉に、飯山の中の全神経細胞がビクンと震えた。
俺は生き残ると決めたんだ。生きて家族の元へ帰るには、戦って生き残るしかない。
生き残るためには、自分と同一のポジションにいる他の選手が全て死ぬ必要がある、それがこの島でのルールだったはずだ。
しかるに、いま目の前にいるその男、これまで苦楽を共にした親愛なる稲田直人は、果たしてどこのポジションだったか?
考えるまでもない。
自分と同じ…、
内野手だ!!
おいちょっと待て、待て待て、チョットマテ俺、てーことはアレだ、アレだよ、要は生きて帰りたきゃコイツも殺さなきゃなんないってコト……?
そうだよ、なんでそれに早く気づかないんだよ! 靴ひっくり返してカンタンにゲーム乗るとか決めやがってよ、アホかっつの俺、コロスってどーいう事だかもちっとよく考えとけって、
あっでも考えたところでどうなんの、結局殺すか死ぬかからどっちか引くしかナイんじゃないの? なにそれ? 当たりナシ? ヒドくね?
それってアレじゃない、つまり家族か直人か選べってコト? ちょ、マジキツすぎ、そんなん選べるワケないじゃんかよ、でもどうしても選ばないとなんないとしたら…、あ、でも家族か直人かって思ったけどそれって違くない? 実は俺か直人かじゃない?
でも俺が死ぬと家族に会えないし、それでいくとやっぱ家族か直人かって事になるし、そういやあの、大いなる〜大志を抱いて〜♪の続きって明日へ飛び出せだっけ駆け出せだっけ、あ、飛びたてだっけ?
いやいやいや今それはどうでもよくてさ、シッカリシロ俺、現実逃避すんな、目の前を見ろ、直人がいるよな? で、俺は生きて帰って家族に会いたいけど、そのためにはコイツを殺さないとなんないワケで、
でもコイツは俺とはすっげ仲いいし、殺すとかできるわけないんだけど、コイツを殺さないとなると俺が死ぬしかなくて、そうすっと帰れないワケで、
まとめるとアレだ、つまり、どっちか、選べってコトか!?
マジかよ!
どうする!?
…勿論、今更言うまでもなく、その選択こそがこのゲームにおける最大の苦悩であり、この島にいる誰もが始めに背負う十字架である。
どの段階でそれに気づくか、敏感な者そうでない者、それぞれ差はあっただろう、しかし最後は誰かといえば、この飯山裕志をおいておそらく他にはあるまい。何故今まで気づかずにいられたかと言えば、それは単なる能天気の類ではなかっただろう。
その事実を受け止めるだけの精神力を持ち合わせないと判断した優秀な頭脳が、当面は脳内物質でテンションを上げ、その選択から目を逸らすよう手早く手配したのだ。
しかしそれも所詮は先延ばし。早々に選択を終える者、そうでない者、それぞれ差はあれど、その答えはいずれ、この島に揺らめく魂の数だけ導き出されねばならない。
いま不幸にして、飯山にも、選択の時が訪れた。
頭のなか軸を外してしまいそうにグラグラと揺れる天秤、
果たして、飯山は……、
「…裕志、おい、裕志…?」
突如黙り込んでしまった友の名を、稲田は恐る恐る呼んでみる。すっかり自分の中へ入り込んでしまっていた飯山の意識は、その呼び声によって急激に外界へ引き戻された。そして次の瞬間。
「うおおおあああぁぁぁッ!」
稲田の背中をその腕に支えたままで、突如、飯山が大声をあげた。
「ひ、ひぇっ」
突然の大声だけでも充分に驚くというのに、飯山はさらに稲田をドンと突き飛ばし、急に立ち上がって銃を構えると、数歩後ずさった。
撃たれるのかなどと考える隙も、何が起こったのかを理解する隙も与えぬ、素早い動き。
そして。
「きょっ、」
強張った顔で、飯山が口を開く。そして、震える顎を懸命に動かし、叫んだその言葉は――。
「…今日のところはッ、み、見逃してやるからなあああぁぁぁッッ!!」
揺れ動いたままの天秤を勢い任せにひっくり返し、「あ」の音の余韻だけをその場に残して、脱兎のごとく飯山は駆け出した。頭で考えるよりも先に、身体が本能的に逃げたのだ。
「お、おい、」
状況の飲み込めぬまま、稲田はとにかく飯山を呼び止めようとしたが、咄嗟に腰を上げることができなかった。
後には稲田と、少し長く伸びはじめた影法師だけが取り残され、ただ、その場に呆然と佇んでいる。
「あいつも…、大変だな…」
自分のおかれた立場も暫し忘れ、稲田は、たった今走り去った友に少しだけ同情した。
工藤がダメ、ゴリからは逃げちゃって、裕志もダメ、か…。
俺、これからどうしたらいいんだろう…、そんなことをぼんやりと考えながら。
後ろを振り返ることなく、飯山は走った。どこへ向かうとも知れずに、ただひたすらに風を切って。
今はとにかくこれ以上考えることができない、結論が出ない、今の俺には、直人は、撃てない…!
畜生、でも、俺は、俺は…、
「それでも俺はっ、生きて、帰りたいんだよ…ッ!」
…また少し決断を先延ばしして迷走する飯山の、その搾り出すような願いの言葉は、発した本人の耳にさえ届かなかった。
きっと、天にも届かない。
ただ、その腕に後生大事に抱えられた短機関銃だけがひとり、その言葉を静かに聴いていた。
【残り56人 1+1+1+1=4人でゲーム終了】
「Run Away」ここまでっス
乙でした〜。
飯山wwww
シリアスな悩みのはずなのになんか笑えるww
387 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/09/21(木) 18:53:16 ID:XAmtOAfi0
明日へ駆け出せ〜♪だよ、飯山〜ぁ。
乙ですー。
そして頼むからageないでくれorz
乙です!
飯山、このままあっさりマーダー化するのかと思ったら…w
ほし ゅ
391 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/09/23(土) 01:09:38 ID:tlty9DjM0
選手を使って殺し合いを妄想するような
悪趣味なスレはsageてもらえませんか?
非常に不愉快なんですが。
>>374の言うように人目のつかないところでやって下さい。
お願いします。
携帯から保守
最近投下ペースが落ちたね。心配
職人さんだって色々大変なんだ 期待保守
このスレでの金村の運命がどうなるのか非常に楽しみになってきました保守
今、金村のことは言わないで……保守
ほしゅ
続きが気になる!!
399 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/09/26(火) 09:36:30 ID:UxjCuXMn0
金村くんは?
ヒルマンを殺ろうとして、帰り討ち
>>399 あげないでください。不快な思いをする人がいることを忘れないで。前のレスみてたら分かることですが。
続きが気になる!!
403 :
same:2006/09/26(火) 20:35:07 ID:sFwtXEK0O
勝った?
404 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/09/26(火) 20:45:07 ID:6ytoAEngO
金村ファイターズ
405 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/09/26(火) 21:06:54 ID:diWLuSTF0
勝ったー
8対0
捕手・駒居
ってか、あげるなよ
勝利祈念保守
優勝祝賀保守
優勝捕手中嶋
現実が劇的すぎて、職人さんたち書きづらいかも。
がんばってください。
頑張って
現実では横山・画伯以下数名がアウトになりました…(´・ω・`)
☆ゅ
hosyu
415 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/10/01(日) 21:32:38 ID:IjsjNbaK0
えのきどいちろうって何で巨人ファンなのにハムヲタのふりしてんの?
416 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/10/02(月) 17:45:41 ID:8KHSCs6MO
仕事がなくなるから
あれ?昔から公ファンなんじゃないの?
418 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/10/03(火) 00:58:27 ID:QAnJs38j0
捕手・駒居
捕手・鶴岡
捕手・渡部龍一 背番号68(w
422 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/10/05(木) 19:35:14 ID:tRGE3kP70
捕手・山中
423 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/10/05(木) 20:52:01 ID:DbFUuUPH0
捕手・田口
プレーオフ勝ち抜け祈念
あらたな ときをきずけ あつくあつくもやせー
みまさーかだんじのこころいき すすめほこりたかくー
30捕手
426 :
道民某:2006/10/07(土) 19:46:25 ID:lnAd3tjw0
北海道シリーズ プレーオフ
北海道日本ハムファイターズ(3塁側)VS 第1ステージ勝者(1塁側)
2006年10月11日(水)会場予定 16:00/試合開始 18:00
札幌ドーム アッパー指定席1塁側Cゾーン34通路56列135
上記の内容のチケットを所有しておりますが、一身上の都合で他の方に
譲りたいと考えております。
興味のある方はいらっしゃいますでしょうか?
POの応援で職人さんもバトロワどころじゃないんだろうなあ
428 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/10/09(月) 02:48:11 ID:AbLQ7nEy0
ほっす
sage
431 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/10/11(水) 21:34:48 ID:DvdpHCZp0
432 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/10/11(水) 21:37:56 ID:+twbWsZa0
リーグ優勝おめでとう
リーグ優勝おめでとう
リーグ優勝おめでとう
リーグ優勝おめでとう
リーグ優勝おめでとう
リーグ優勝おめでとう
リーグ優勝おめでとう
リーグ優勝おめでとう
リーグ優勝おめでとう
リーグ優勝おめでとう
リーグ優勝おめでとう
だけど今年のロッテの様に来年はなると思われる
433 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/10/12(木) 21:04:41 ID:83Hyrupb0
_
/ `ヽ ___
(⌒ヽ、_,,, rヽ. ◎(’ヽ _ / / / /
ゝ、.______| __ (二 二l ヽ、_) 丿丿/ / 、、. / /r-、 優 勝
r───┐ワワ丿ノ r 、| |rヽ、 rー´ ノ/ / ヽ `ヽ./ ゝ'´ ヽ
ゝー──┘ (__ノ (_丿| |ヽ、,) (_ノ/ / ゝ、__,ノゝ、_ ,,、‐´ゝ、_.,)
 ̄  ̄ ̄
来た来た来た来たぁあああ!!!!!
∧_∧ .。.:*・゜゜・*:.。. .。.:*・゜゜・*:.。. .。.:*・゜☆ ∧_∧
( ・∀・)/ヽ /\(・∀・ )
ノ つつ ● ) 。・:*:・゚☆ ネ兄 イ憂 月券 ,。・:*:・゚☆ ( ● ⊂⊂ !、
⊂、 ノ \ノ ヽ/ !、、 ⊃
し' ☆゜゜・*:.。. .。.:*・゜゜・*:.。 .。.:*・゜゜・*.。. ∪
ほす
今週の信ちゃん
優勝したのに過疎だなw
現実の方が面白すぎて、創作どころではないのでは。
気長に待つことにしましょうw
441 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/10/16(月) 23:59:35 ID:OKfb6o9h0
糞スレをあげるなと何度言えば分かるんだ
保守
捕手
いざ出陣
446 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/10/21(土) 19:40:40 ID:thS9WAE4O
本スレ暫定スレ
447 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/10/21(土) 19:59:08 ID:f6EMZznh0 BE:31015924-2BP(0)
448 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/10/21(土) 21:02:54 ID:4SiBRQxq0
449 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/10/21(土) 21:15:38 ID:4SiBRQxq0
他のバトスレが検索にひっかからないんだけど…
ハムバトもひっかからなくなった!
452 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/10/21(土) 22:38:19 ID:aj1Nz8e50
次スレですね
453 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/10/21(土) 23:10:54 ID:aj1Nz8e50
本スレ暫定スレ
454 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/10/21(土) 23:28:59 ID:o/yNdbUrO
雑魚ハム憐れ (笑)
455 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/10/22(日) 19:26:45 ID:k4ovnyYj0
そんなことはない
捕手
457 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/10/23(月) 01:58:10 ID:omYOFZGs0
ほ
し
460 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/10/24(火) 21:14:38 ID:a8DNjWb+0
ゅ
461 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/10/24(火) 21:16:54 ID:T4EYbLMmO
道民の分際で 道罠がっ
ほ
463 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/10/25(水) 23:28:02 ID:pgiTROIr0
あ
し
465 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/10/26(木) 07:48:52 ID:/tIC6rGr0
か
466 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/10/26(木) 20:28:12 ID:8HCF2FpdO
ず
ゆ
. / ./∠ ──‐‐-.ヘ. ヽ、
/"..://´‐.T.丁¨ T ー 、 Y ',ヽ
/./ .:./:./ :.:./l:.! i.:. !:.:. ヾ..i:. !:.:ヽ
/ / .:./.:/ :.:./ !:!:. ハ:.: ',:.:.:. `!: l:.:.:ハ 日 本 一 !!
/.:, イ.:;'.:.`:ト 、バ:.ヽ\.:ヽ,.:.:.:.:.!: !ヘ:.:ハ
/ / イ.:.!.:.!:.!, --ヽ、\ ゝ久_丈i:. ! ハ:.ハ ヽYvV/
/:./ !.:.!.:.i.:f ィ´::ヾ ´f´::::ヽヾ :!ヽ l:.ハ ,; ⌒ヽ、ノ `ヽ、,,r'⌒ヽ
/:./ , !.:.!.:.iハ マ_;;;ノ , マ_;;ノ j:. j/ j:.:ハ ( ( ) / \ ( ) )
/:/∧,」 !.:.!.:.!ヘ "" r==ォ "" ,/:.イ!ハ┘:!ヾ ミ / ,ィ・ニゝ、ィ・ニゝ、ミ'
//!:.バ:.:.:| |.:.ハ.:V ゝ、 丶 / ィ/:./:.:i/^l:.! ヽ ,;彡 .,,..rー''´(CiC)ヽミ;、
レ' !:.! i.:.:.ヾ!ヽハ.:V.:.:.:.:>, _ ィ´V.:/.:.:/ リ:| 彡 / .). )ミ、
!:i !.:.:.:.:.:.:.:{ハ.:V'´ /′ .少'/`ー| /j/ 彡 人 ヽ、 _,,;;r へ_ ,ィ/ミミ、
ヾ ヽ_, '7// /-、 -/ " /フ ヒ=ヽ 彡彡 ヽ ⌒| |::ノミミミ゙
ハ ヽ. /// /'´ ̄/ /// ,`弋 \ 彡ミミミ彡``ヽ ー||シミ゙
/ { y'// ,'---/ //- ′.Y´ , `ヽ`l Y´⌒` r‐-‐-‐/ |
/ ヽfl l l ! / //〈 `ー〈::....ノ V. |; ⌒ :; |_,|_,|_,h ヽ
/ !l l !. ! ./ /// ヽ_ー 、 `ヾ_/ // .|. .| `~`".`´ ´“⌒⌒)
. / _∧ l ! !ロj /// フ-、`ー┴‐-〃 | 人 入_ノ´~  ̄
. / / ハヾ l l /// ヽ | l / /
俺の好きなスレがばたばたと落ちていく保守
470 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/10/27(金) 19:05:44 ID:TJDqMBID0
日本一になったのでこれも終了w
実松の夢ヲチってことでw
保守
__
------ 〈〈〈〈 ヽ +
/::::::::... ヽ 〈⊃ } + + +
__|;;;F;;;;;___| | | + + +
| 0/0 彡;;( ! ! + + +
. |ム 6)彡.| / + + +
| ∀ /」ζ〆 + + +
ン\_/ / + + + +
/ i Fighters / + +
⊂ ノ | 1 /
, -‐ ' ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄/ ̄ ̄ ̄/ ̄ ̄/ ̄ ̄ ̄/
/(○), 、(○) / / / /
/ ,,ノ(、_, )ヽ、,, / / / /
./ `-=ニ=- ' / ./⌒ヽ / /⌒ヽ /
/ ____ / _/ ( 0) /__/_/ ( 0)/_/⊃ニ
 ̄ ヽ人_ノ ̄ ̄(´⌒ヽ人_ノ ヽ人_ノ
∧_∧
_( ´_ゝ`) マルチコピペ厨は氏ね!!
/ ) _ _
/ ,イ 、 ノ/ ∧ ∧―= ̄ `ヽ, _
/ / | ( 〈 ∵. ・( 〈__ > ゛ 、_―
| ! ヽ ー=- ̄ ̄=_、 (/ , ´ノ
| | `iー__=―_ ;, / / /←
>>473 !、リ -=_二__ ̄_=;, / / ,'
/ / / /| |
/ / !、_/ / 〉
/ _/ |_/
ヽ、_ヽ
ホッシュー
476 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/10/30(月) 23:41:41 ID:q2Z78GGr0
保守
今はじめて読みました。
飯山と稲田の作者さんの様な書き方は大好きです。「どうすんのよ、俺!続!」
のセリフがでてくるんではないかとw
そうしてガッツとこゆきさんとの違いににやにやがとまりませんw
この作者さんにガッツとこゆきさんを書いてもらったらどんなことになるんだろうと保守がてら。w
>>478 誰に書いてほしいとかそういうのは微妙に書きづらくなるから
ネタでも止めた方が…
480 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/11/01(水) 18:29:40 ID:momc2yeVO
はい
捕手
保守」はツル
保守
484 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/11/04(土) 08:19:36 ID:U9m7mrzzO
はい
捕手中嶋
ほしゅ
488 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/11/06(月) 23:45:05 ID:jc11zZ5C0
つるちゃん
490 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/11/07(火) 17:15:39 ID:bBBmIJ/f0
491 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/11/07(火) 19:41:22 ID:o+UugPJa0
捕
ガッツ流出か・・・。
すれも消滅か・・・・。
保守
494 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/11/09(木) 14:09:37 ID:dJzOPf9V0
495 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/11/09(木) 15:02:33 ID:VfE9unnW0
北海道日ハムシリーズ優勝おめでとさん。だけどアジアシリーズで昨年の
ロッテみたいに勝てるかな〜?
496 :
L:2006/11/09(木) 15:04:38 ID:h8Hoh42p0
ぎゃー、見守るスレ落ちてる
じっと保守